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JP5338489B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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JP5338489B2 JP2009134880A JP2009134880A JP5338489B2 JP 5338489 B2 JP5338489 B2 JP 5338489B2 JP 2009134880 A JP2009134880 A JP 2009134880A JP 2009134880 A JP2009134880 A JP 2009134880A JP 5338489 B2 JP5338489 B2 JP 5338489B2
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Description

本発明は、燃料電池システムに係り、特に、水素循環流路内の水素ガスを送流させる水素ポンプを備えた燃料電池システムに関する。
燃料電池は、水素と酸素を電気化学反応させて発電する高効率でクリーンな発電装置であって、燃料電池を搭載した車両が盛んに開発されている。車両に搭載される燃料電池は、複数の膜電極接合体とそれを分離する複数のセパレータとが交互に積層された燃料電池スタックとして使用されている。なお、燃料電池では、電気化学反応により水が生成し、また、空気は加湿されてスタックに供給されるため、水素極側にも水分が存在している。
図4(a)に、水素極側のセパレータ50の模式平面図を示す。図4(b)は、図4(a)の丸で囲んだ部分(水素流路出口52)の拡大図である。図4(a)に示すように、セパレータ50は、平板の一方の面に水素ガスを流通させる水素流路51が、他方の面に図示しない冷却水流路が、それぞれ形成されたものである。一般的に、燃料電池システムの発電運転を停止するときには、水素流路51に残留する水を除去するために掃気運転を行うが、水素流路出口52は、図4(b)に示すように、複数の流路に分岐して総断面積が上流側よりも大きくなったくし歯形状を有していることから、水がたまり易く(詰まり易く)なっている。水素流路出口52に水が残留した状態で、気温が氷点下になった場合には、水素流路出口52が凍結閉塞して再起動時の電圧低下が発生する可能性がある。したがって、水素流路出口52の水を十分に除去するため、掃気時間が長くなっていた。
本発明に関連する技術として、掃気運転時における水素ガスの送流方向を変更する燃料電池システムが開示されている。例えば、特許文献1には、第1の水位検知部が気液分離器の貯留水の水位が低下したことを検知した場合に、水素ガスの循環ポンプの回転を逆回転させるポンプ制御部を備えた燃料電池システムが開示されている。そして、特許文献1には、循環ポンプの順回転、逆回転を繰り返すことが記載されている。
また、特許文献2には、発電停止信号の入力を検知したとき、反応ガス流路に反応ガスを流す方向を逆転させて流す通流方向逆転工程を備えた燃料電池の発電停止時制御方法が開示されている。そして、特許文献2には、発電停止処理時に乾燥ガスを反応ガス流路に逆方向に通じて電解質膜を所定の乾燥程度まで均一に乾燥させるとともに、反応ガス流路からも水分を除去するようにしているので、停止時には、反応ガス流路には水分がなく、且つ電解質膜が所望の均一な湿潤状態に保持された最適な水分残留条件が成立していと記載されている。
特開2007−242381号公報 特開2005−209609号公報
上記のように、特許文献1に開示されたシステムは、循環ポンプの順回転、逆回転を繰り返すので、セパレータの水素流路出口に水がたまること解消することはできず、また、掃気運転時間の短縮の観点からも改良の余地がある。
特許文献2に開示されたシステムについても、反応ガス流路には水分がなく且つ電解質膜が所望の均一な湿潤状態に保持された最適な水分残留条件が成立させるために、長時間の掃気運転が必要であるから、掃気時間の短縮の観点から改良の余地があり、また、長時間の逆流運転により気液分離器の貯留水が再循環(逆流)して、セパレータの水素流路出口にまで達することが想定され、水素流路出口に水がたまること解消することは困難である。
本発明の目的は、短時間の掃気運転によって、セパレータの水素流路出口における水の残留を防止することが可能な燃料電池システムを提供することである。
本発明に係る燃料電池システムは、流路出口の水素流路を複数の微細流路に分けることで、流路出口以外の部分における水素流路総断面積よりも大きな水素流路総断面積として、流路出口の圧力損失を低下させたセパレータを含む燃料電池本体と、水素タンクと燃料電池本体とを接続する供給流路と、燃料電池本体から排出された水素ガスを燃料電池本体に再供給するための循環流路と、循環流路内の水素ガスを送流させる水素ポンプと、水素ポンプの駆動状態を制御する制御部と、を備え、発電運転を停止するときに掃気運転を行う燃料電池システムであって、制御部は、発電運転を停止するときに、水素ガスの循環容積を水素ポンプの掃気流量で除して得られた時間を最長掃気時間として、水素ポンプを発電運転時と逆方向に駆動させて逆転掃気を行い、セパレータの流路出口の微細流路を掃気することを特徴とする。
また、循環流路内の水素ガスを外部に排出する排気弁を備え、制御部は、発電運転を停止するときに、水素ポンプを発電運転時と逆方向に駆動させながら、排気弁を開いて水素ガスを排出することが好ましい。
また、燃料電池本体のインピーダンスを測定するインピーダンス測定器を備え、制御部は、逆転掃気終了後又は逆転掃気中に、インピーダンス測定器による測定値が予め定めた閾値以上であるときには、逆転掃気時間を延長することが好ましい。
本発明に係る燃料電池システムによれば、制御部は、発電運転を停止するときに、水素ガスの循環容積を水素ポンプの掃気流量で除して得られた時間を最長掃気時間として、水素ポンプを発電運転時と逆方向に駆動させて逆転掃気を行うので、短時間の掃気運転によって、セパレータの水素流路出口における水の残留を防止することが可能になる。即ち、水素流路出口における残留水の除去が難しいため長時間の掃気運転が必要であったところ、水素ポンプを逆転駆動させて、水素流路出口から水を吸い込むことにより、短時間で該残留水を水素流路出口から除去することが可能となった。したがって、セパレータの水素流路出口が凍結閉塞することがなく、再起動時の電圧低下の発生を抑制することができる。
また、制御部は、発電運転を停止するときに、水素ポンプを発電運転時と逆方向に駆動させながら、排気弁を開いて水素ガスを排出する構成とすれば、水素ガスの排出時において、水素ガスが発電運転時の送流方向(順方向)に流れることを抑制して、セパレータの水素流路出口に対する水の再流通による詰まりを防止することができる。
また、制御部は、逆転掃気終了後又は逆転掃気中に、インピーダンス測定器による測定値が予め定めた閾値以上であるときには、逆転掃気時間を延長する構成とすれば、例えば、発電運転を停止する直前に多量の生成水が発生した場合等であっても、水素流路出口等の凍結閉塞防止の観点から十分な排水レベルを確保することができる。
本発明に係る実施の形態における燃料電池システムの概略構成を示すブロック図である。 図1に示す燃料電池システムによる逆転掃気運転の制御手順を示すフローチャートである。 図1に示す燃料電池システムによる逆転掃気運転の制御手順の変形例を示すフローチャートである。 図1に示す燃料電池システムに適用される水素極側のセパレータを示す模式図である。
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。なお、以下では、燃料電池システム10は、車両に搭載されるシステムであって、車両を駆動させるための駆動系15を有するものとして説明するが、例えば、各種施設(工場、オフィスビル、家庭等)の設置電源などにも適用することができる。
図1を用いて燃料電池システム10の構成を説明する。図1に示すように、燃料電池システム10は、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生する燃料電池セルを複数積層した燃料電池スタック11を備える。そして、燃料電池システム10は、燃料電池スタック11に水素ガスを供給する水素系12と、空気(酸素ガス)を供給するエア系13と、燃料電池スタック11を冷却する冷却系14と、燃料電池スタック11で発電した電力により車両を駆動させる駆動系15と、システム全体の動作を統括的に制御する制御部35と、を有する。
燃料電池スタック11は、電力を発生する燃料電池本体であって、図示しない複数の膜電極接合体とそれを分離する複数のセパレータとが交互に積層された構造を有する。セパレータの形態としては、特に限定されることなく、ストレート型やサーペンタイン型などを用いることができる。
上記のように(図4(a)参照)、水素極側のセパレータ50は、平板の一方の面に水素ガスを流通させる水素流路51が、他方の面に図示しない冷却水流路が、それぞれ形成されたものである。そして、水素流路出口52は、流路の総断面積が上流部分よりも大きくなっており、例えば、図4(b)に示すように、くし歯形状を有している。故に、水素流路出口52には、水が詰まり易くなっている。
セパレータ50の水素流路出口52は、圧損を低減するために、上記のくし歯形状を採用している。即ち、水素流路出口52は、水素ガス中の水が集中する部分であるため、流路の総断面積を大きくして、圧損の低減を図っている。ここで、くし歯形状とは、流路の総断面積が上流側流路の断面積よりも大きく、且つ複数の微細流路に分岐した形状であり、各微細流路の断面積は、上流側流路の断面積よりも小さくなっている。このようなくし歯形状を水素流路出口52に採用すると、流路の総断面積が大きくなるため、圧損は小さくなるが、流速も小さくなるので、水が流れ難く詰まり易くなる。
なお、燃料電池スタック11は、燃料電池セルが図4の紙面に垂直な方向に沿って積層されて形成されている。そして、燃料電池スタック11には、水素系12やエア系13等の周辺装置が接続され、例えば、水素系12の水素供給流路17は、図示しないエンドプレートを介してセパレータ50の水素流路51に接続される。一方のエンドプレートから導入される水素ガスは、図示しない入口マニホールド、水素流路51、図4(b)に示す出口マニホールド孔53が連通して形成される出口マニホールドを通り、他方のエンドプレートから排出される。他方のエンドプレートには、水素循環流路18が接続される。
水素系12は、高圧の水素ガスが充填された水素タンク16(その他、水素吸蔵合金を含むタンクとすることもできる)と、水素供給流路17と、水素循環流路18と、水素排出流路19と、気液分離器20と、を備えている。ここで、水素供給流路17は、水素タンク16とセパレータ50の水素流路51の入口(入口側エンドプレート)とを接続する流路、水素循環流路18は、セパレータ50の水素流路51の出口(出口側エンドプレート)と水素供給流路17とを接続する流路、水素排出流路19は、気液分離器20と希釈器26とを接続する流路として説明する。
水素供給流路17は、水素タンク16の水素ガスを燃料電池スタック11に供給するための流路であって、上記のように、水素タンク16とセパレータ50の水素流路51の入口とを接続する。水素供給流路17には、流路を開閉する主止弁21と、流路の上流側圧力を所定の2次圧に減圧する減圧弁22と、水素ガスの流量や圧力を調整するインジェクタ23と、が設けられている。なお、これらの弁は、後述の制御部35によってその動作が制御される。
水素循環流路18は、燃料電池スタック11から排出された水素ガス(水素オフガス)を水素供給流路17に戻して、燃料電池スタック11に再循環させるための流路であって、上記のように、セパレータ50の水素流路51の出口と水素供給流路17のインジェクタ23の下流側とを接続する。また、水素循環流路18には、流路内における水素ガスを送流させる水素ポンプ24が設けられている。
水素ポンプ24は、水素循環流路18内の水素ガスを圧縮・圧送する装置であって、送風機(ファン、ブロワ)や圧縮機と称されるものを広く含む。この水素ポンプ24は、主に、遠心式や軸流式の羽根車等を有する圧縮部、羽根車等を駆動させる電動モータ、及び電動モータの回転方向、回転数を変更・調整するインバータ等から構成されている。なお、適用できる水素ポンプ24としては、特に限定されることなく、ターボ型(遠心式、軸流式、斜流式、横流式など)や容積型(回転式(ルーツ形、ベーン形等)、往復式など)を挙げることができる。
ここで、水素ポンプ24は、燃料電池システム10の発電運転時においては、黒色矢印で示すように、水素供給流路17に向かって水素ガスを送流させるように駆動している。なお、本明細書では、発電運転時における水素ガスの送流方向を順方向と称する。発電運転時及び発電運転を停止する際の掃気運転時における水素ポンプ24の動作は、制御部35によって制御され、例えば、制御部35は、水素ポンプ24のインバータに対して制御指令を出力し、水素ポンプ24(電動モータ)の回転方向や回転数の変更を行う。
水素排出流路19は、循環使用されて水素濃度が低くなった水素ガス(水素オフガス)の一部を外部に排出するための流路であって、上記のように、気液分離器20と希釈器26とを接続する。また、水素排出流路19は、気液分離器20に貯留された水を排出する排水流路としても機能する。水素排出流路19には、排気排水弁25が設けられており、この弁を開放することにより水素ガス及び水が、希釈器26、マフラー27を介して外部に排出される。ここで、希釈器26とは、排出される水素ガス及びエア系13から排出された空気を混合して、水素ガス濃度を減少させる部分である。なお、水素排出流路19は、水素ガスのみを排出する排気専用流路として、その流路に排気弁を設置することもできる。
排気排水弁25の開閉動作(通常は閉状態)は、制御部35によって、水素系12中の圧力や車両の運転状況等に基づいて制御される。例えば、車両が低速走行状態であって発電量が小さいときには、水素ガスの消費量が少なく気液分離器20にたまる水量も少ないので、排気排水弁25は開放され難い。一方、車両が高速走行状態であって発電量が大きなときには、水素ガスの消費量が多く気液分離器20にたまる水量も多いので、排気排水弁25は開放され易くなる。また、掃気運転が終了したときには、排気排水弁25が開放されて、水素系12中の水素ガス及び水が外部に排出される。
気液分離器20は、水素ガス中に含まれる生成水等の水分を分離回収して一時的に貯留する容器であって、水素循環流路18と水素排出流路19との分岐点に設けられる。上記のように、発電運転を終了するときには、掃気運転が行われて、水素流路51や水素循環流路18に存在する水が、この気液分離器20に送られることになる。
エア系13は、大気中から吸入した空気を燃料電池スタック11に供給する機能を有し、燃料電池スタック11のセパレータの酸化ガス流路の入口(入口側エンドプレート)に接続された空気供給流路28を備える。そして、空気供給流路28には、エアクリーナー29、空気を圧送するエアコンプレッサ30、空気の加湿を行う加湿器31が設けられる。また、燃料電池スタック11内のセパレータの酸化ガス流路の出口(マニホールド出口)と希釈器26とを接続する空気排出流路32には、空気圧を調整するための空気調圧弁33が設けられている。
冷却系14は、燃料電池スタック11に冷却水を供給して循環するための冷却水経路、冷却水を圧送するウォータポンプ、ファンを備えたラジエータ、及び冷却水中の導電性イオンを吸着するイオン交換樹脂が充填されたイオン交換部等から構成される。燃料電池は、発電効率確保のために、その温度を一定(例えば、80℃)に維持する必要があり、冷却系14は、燃料電池スタック11の温度を一定に保つ機能を有する。
駆動系15は、車両駆動用の電動機、燃料電池スタック11で発生した電力を蓄えるリチウムイオン電池等のバッテリ、補機駆動用の電動機、及びパワーコントロールユニット等から構成される。パワーコントロールユニットは、DC−DCコンバータ、インバータ、及び制御部35による制御の下、DC−DCコンバータ、インバータの動作を制御するパワーコントロールユニット制御部等から構成される。
また、燃料電池システム10は、燃料電池スタック11のインピーダンスを測定するインピーダンス測定器34を備える。インピーダンス測定器34としては、公知のインピーダンス測定器を用いることができ、例えば、燃料電池スタック11の両端付近、中央付近など幾つかの燃料電池セルに設置される。インピーダンス測定器34の測定値は、対応する燃料電池セル、又は燃料電池スタック11内の水量を特定するために用いられる。具体的な水量の算出方法としては、例えば、制御部35等に記録されたインピーダンス及び水量の関係を示すマップに、測定値を当てはめる方法が挙げられる。
燃料電池システム10は、上記のように、システム全体の動作を統括的に制御する制御部(ECU)35を備える。制御部35は、CPU、ROM、RAM、I/O等を備えたマイクロコンピュータによって構成され、ROM等に記憶された制御プログラムに従って各種演算などの処理を実行する。制御部35には、インピーダンス測定器34、その他図示しない各種センサや測定機器からガス圧、電流・電圧値、温度等の情報やシステムの始動・停止の要求信号、駆動系15等の各負荷からの要求電力信号などが入力される。これらの情報に基づいて、制御部35は、水素ポンプ24や排気排水弁25等の装置や弁などの動作を制御する。
燃料電池システム10は、短時間の掃気運転によって、図4(b)に示すセパレータ50の水素流路出口52における水の残留を防止する機能を有する。この機能を実現するための構成要素として、制御部35は、逆転駆動手段36と、逆転駆動時間延長手段37と、排出手段38と、を有する。
逆転駆動手段36は、発電運転を停止するときに、水素ポンプ24を発電運転時と逆方向に駆動させて逆転掃気を行う機能を有する。ここで、逆転掃気とは、水素ポンプ24を逆転駆動させることにより、図1の白抜き矢印で示すように、水素ガスを発電運転時と逆方向に送流して、水素循環流路18や水素流路51内等に存在する水を気液分離器20に送るための処理である。なお、詳しくは後述するように、燃料電池システム10では、水素流路出口52に詰まった水を水素流路51の上流側に吸い込んで除去することを重要視している。
具体的に、逆転駆動手段36は、図示しない車両(車両ECU)から発電運転の終了処理要求信号を取得すると共に、該要求信号を取得したときには、水素ポンプ24のインバータに対して制御信号を出力し、水素ポンプ24を逆転駆動させる。このとき、水素ポンプ24の回転数は、例えば、逆転掃気運転時に適用される予め定められた回転数に設定される。例えば、逆転掃気運転時の回転数は、掃気時間短縮の観点から最大回転数とすることができる。
逆転駆動手段36により実行される逆転掃気時間は、水素ガスの循環容積と水素ポンプ24の掃気流量とに基づいて決定され、具体的には、循環容積を掃気流量で除して得られた時間が最長掃気時間とされる。また、逆転掃気開始前におけるインピーダンス測定器34の測定値に応じて逆転掃気時間を変更して、例えば、インピーダンスが低く水量が少ない場合には、最短掃気時間を水素ポンプ24の運転が可能な最短の時間まで短縮することも可能である。なお、再起動時の電圧低下の防止及び掃気時間の短縮を両立する観点から、好適な逆転掃気時間としては、水素流路51の容積を掃気流量で除して得られた時間から上記の最長掃気時間の範囲内である。
ここで、最長掃気時間を決定する1つの因子である水素ガスの循環容積とは、逆転掃気運転時に水素ガスが流通する部分の容積を意味し、具体的には、水素循環流路18、セパレータ50の水素流路51、気液分離器20、及び水素供給流路17の一部の容積である。なお、循環容積としては、水の存在により多少変化するが、例えば、水が存在しない状態の容積を用いることができる。最長掃気時間を決定するもう1つの因子である水素ポンプ24の掃気流量は、単位時間当たりに送流される水素ガスの容積として表すことができる。この掃気流量は、水素ポンプ24の回転数により変化するが、逆転駆動時における水素ポンプ24の回転数を最大回転数に設定する場合、最長掃気時間を固定値に設定しておくことができる。
具体的な逆転掃気時間としては、水素ガスの循環容積が20L、水素ポンプ24の掃気流量が200(L/分)である場合には、最長掃気時間は、20(L)/200(L/分)=0.1(分)、即ち6(秒)となる。また、セパレータ50の水素流路51の容積が10Lであれば、好適な逆転掃気時間は3秒〜6秒となる。
このように、短時間掃気を実行する燃料電池システム10では、少なくとも水素流路出口52に詰まった水を除去することを目的とする。これは、くし歯形状を有する水素流路出口52に水が残留し凍結閉塞すると、水素流路51に水素ガスが流れず再起動時の電圧低下の発生し易いからである。一方、水素流路出口52以外の部分は、流路径が太くなっているため、幾らかの水が残留したとしても再起動時の電圧低下が発生し難い。即ち、燃料電池システム10は、逆転掃気運転により、水素流路出口52に詰まった水を水素流路51の上流側に吸い込んで除去することで再起動時の電圧低下を十分に抑制できることを見出し、従来のシステムよりも掃気時間を大幅に短縮することを可能とした。なお、上記の逆転掃気時間により、通常、水素流路51や水素循環流路18に存在する水も概ね除去する(気液分離器20に送る)ことができる。
逆転掃気時間延長手段37は、インピーダンス測定器34の測定値に基づいて、水素ポンプ24の逆転掃気時間を延長する機能を有する。上記のように、インピーダンス測定器34の測定値から燃料電池スタック11内の水量を算出することができ、排水レベルを取得することができる。燃料電池システム10では、掃気時間が短時間に設定されるが、発電運転を停止する直前の発電量が多い場合など、短時間掃気では対応できない場合も想定される。したがって、このような場合においても、逆転掃気時間延長手段37によって、水素流路出口52等の凍結閉塞防止の観点から十分な排水レベルを確保することができる。
具体的には、逆転掃気時間延長手段37は、逆転掃気終了後に、インピーダンス測定器34の測定値と予め定めた閾値とを比較して、測定値が閾値以上であるときには、排水が不十分であると判断して、逆転掃気時間を延長する。即ち、水素ガスの循環容積と水素ポンプ24の掃気流量とに基づいて設定された逆転掃気時間の経過後に、燃料電池スタック11のインピーダンスを測定し、万が一排水が不十分である場合には、再度設定の逆転掃気時間だけ逆転掃気を行う。そして、この操作は、測定値が閾値未満になるまで繰り返される。なお、インピーダンスの測定・判定は、瞬時に実施されるので、逆転掃気時間を延長する場合に水素ポンプ24を一旦停止する必要はない。一方、逆転掃気中に、インピーダンス測定器34の測定値と予め定めた閾値とを比較する制御とすることもでき、測定値が閾値以上であるときには、設定された逆転掃気時間を測定値に応じて補正し延長することもできる。
排出手段38は、逆転掃気運転終了後、排気排水弁25を開いて水素ガスを外部に排出する機能を有する。排出手段38は、例えば、水素ポンプ24の逆転駆動を停止した後、所定の待機時間経過後に排気排水弁25を開く設定、或いは水素ポンプ24の逆転駆動運転の停止と同時に排気排水弁25を開く設定とすることができる。
また、排出手段38は、排気排水弁25を開くときに、水素ポンプ24を逆転駆動させる機能を有することが好ましい。即ち、排出手段38は、水素ポンプ24を逆転駆動させながら、排気排水弁25を開いて水素ガスを排出する。このような構成とすれば、排気排水弁25の開放時に水素ガスが順方向に流れることを抑制して、セパレータ50の水素流路出口52に対する水の再流通による詰まりを防止することができる。なお、排出手段38は、逆転掃気時間経過後、水素ポンプ24の逆転駆動状態を継続しながら、排気排水弁25を開いて水素ガスを排出することができる。
なお、水素ポンプ24を逆転駆動させながら、排気排水弁25を開いて水素ガスを排出するときに、水素ガスの残圧に応じて水素ポンプ24の回転数を減少させる制御とすることもできる。
上記構成を備える燃料電池システム10の逆転掃気運転にかかる制御について、図2、図3を用いて説明する。ここで、図2、図3は、いずれも逆転掃気運転の制御手順を示すフローチャートであるが、図2に示す逆転掃気運転では、インピーダンス判定を実施し、図3に示す逆転掃気運転では、インピーダンス判定を行わず掃気終了後の水素ガス排出操作時に水素ポンプ24を逆転駆動する点が相違する。
図2を用いて、インピーダンス判定を実施する場合の制御手順、特に制御部35の機能について説明する。まず初めに、発電運転の終了処理要求信号を取得したか否かを判定する(S10)。終了処理要求信号は、例えば、車両ユーザーの操作等に基づいて、車両のECUから制御部35に入力される。
S10において終了処理要求信号を取得したときには、水素ポンプ24の逆転駆動を開始する(S11)。即ち、水素ガスを発電運転時と同じ順方向に送流する順転掃気を行うことなく、例えば、発電運転を停止すると同時に迅速に逆転掃気を開始する。具体的には、上記のように、水素ポンプ24のインバータに対して制御部35から電動モータを逆転駆動させる制御指令が出力される。
次に、設定された逆転掃気時間が経過したか否かを判定する(S12)。逆転掃気時間は、上記のように、水素ガスの掃気時循環容積と水素ポンプ24の掃気流量とに基づいて定められ、例えば、水素流路51の容積を掃気流量で除して得られた時間〜循環容積を掃気流量で除して得られた時間の範囲内で決定される。このような掃気時間とすることにより、再起動時の電圧低下の防止及び掃気時間の短縮を両立することができる。なお、S10〜S12の手順は、逆転駆動手段36の機能によって実行される。
設定された逆転掃気時間が経過したときには、インピーダンス測定器34により測定される燃料電池スタック11のインピーダンス(測定値)が目標インピーダンス(閾値)に到達したか否かが判定される(S13)。S13において、測定値と閾値とを比較し、測定値が閾値以上であると判定したときには、逆転掃気時間を延長する(S14)。測定値が閾値未満であると判定したときには、水素ポンプ24の逆転駆動を停止して逆転掃気を終了する(S15)。なお、S13〜S15の手順は、逆転掃気時間延長手段37の機能によって実行される。
逆転掃気が終了したときには、排気排水弁25を開放する(S16)。この手順は、排出手段38の機能によって実行される。排気排水弁25を開放することにより、水素ガスと共に、主に気液分離器20に貯留された水が、希釈器26、マフラー27を介して外部に排出される。なお、排気排水が完了すると、排気排水弁25が閉じられて、発電運転の停止処理が終了することになる。
次に、図3を用いて、排気排水弁25の開放時に水素ポンプ24の逆転駆動を実施する場合の制御手順について説明する。ここで、S10〜S11までの手順は、図2に示す手順と同一である(説明省略)。
設定された逆転掃気時間が経過したときには、水素ポンプ24の逆転駆動を継続しながら排気排水弁25を開放する(S21)。排気排水弁25を開放すると水素ガスが外部に排気されるが、水素ポンプ24の逆転駆動を継続することにより、順方向に水素ガスが送流することを防止する。なお、逆転掃気時間の経過により一旦水素ポンプ24の駆動を停止して、排気排水弁25の開放と同時に、水素ポンプ24の逆転駆動を開始することもできる。
そして、水素ガスの排出が完了したか否かを判定し(S22)、排出完了判定により水素ポンプ24の駆動を停止する(S23)。S21〜S23の手順は、排出手段38の機能によって実行される。なお、水素ガスの排出完了は、図示しない圧力センサを用いて判定することができる。
以上のように、燃料電池システム10は、発電運転を停止するときに、水素ガスの循環容積を水素ポンプ24の掃気流量で除して得られた時間を最長掃気時間として、水素ポンプ24を発電運転時と逆方向に駆動させて逆転掃気を実行する逆転駆動手段36を含む制御部35を備えるので、セパレータ50の水素流路出口52から流路上流側へ水を吸い込むことにより、短時間の掃気運転によって該残留水を水素流路出口52から除去することが可能になる。したがって、燃料電池システム10によれば、水素流路出口52が凍結閉塞することがなく、再起動時の電圧低下の発生を抑制することができる。
また、制御部35は、逆転掃気終了後又は逆転掃気中に、インピーダンス測定器34による測定値が予め定めた閾値以上であるときには、逆転掃気時間を延長する逆転掃気時間延長手段37と、水素ポンプ24を逆転駆動させながら、排気排水弁25を開いて水素ガスを排出する排出手段38と、を有するので、残留する水の量が多い場合であっても十分な排水レベルを確保することができ、また、水素ガスの排出時において、水素流路出口52に対する水の再流通による詰まりを防止することができる。
10 燃料電池システム、11 燃料電池スタック、12 水素系、13 エア系、14 冷却系、15 駆動系、16 水素タンク、17 水素供給流路、18 水素循環流路、19 水素排出流路、20 気液分離器、21 主止弁、22 減圧弁、23 インジェクタ、24 水素ポンプ、25 排気排水弁、26 希釈器、27 マフラー、28 空気供給流路、29 エアクリーナー、30 エアコンプレッサ、31 加湿器、32 空気排出流路、33 空気調圧弁、34 インピーダンス測定器、35 制御部、36 逆転駆動手段、37 逆転掃気時間延長手段、38 排出手段、50 水素極側のセパレータ、51 水素流路、52 水素流路出口、53 出口マニホールド孔。

Claims (3)

  1. 流路出口の水素流路を複数の微細流路に分けることで、流路出口以外の部分における水素流路総断面積よりも大きな水素流路総断面積として、流路出口の圧力損失を低下させたセパレータを含む燃料電池本体と、
    水素タンクと燃料電池本体とを接続する供給流路と、
    燃料電池本体から排出された水素ガスを燃料電池本体に再供給するための循環流路と、
    循環流路内の水素ガスを送流させる水素ポンプと、
    水素ポンプの駆動状態を制御する制御部と、
    を備え、発電運転を停止するときに掃気運転を行う燃料電池システムであって、
    制御部は、
    発電運転を停止するときに、水素ガスの循環容積を水素ポンプの掃気流量で除して得られた時間を最長掃気時間として、水素ポンプを発電運転時と逆方向に駆動させて逆転掃気を行い、セパレータの流路出口の微細流路を掃気することを特徴とする燃料電池システム。
  2. 請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
    循環流路内の水素ガスを外部に排出する排気弁を備え、
    制御部は、
    発電運転を停止するときに、水素ポンプを発電運転時と逆方向に駆動させながら、排気弁を開いて水素ガスを排出することを特徴とする燃料電池システム。
  3. 請求項1又は2に記載の燃料電池システムにおいて、
    燃料電池本体のインピーダンスを測定するインピーダンス測定器を備え、
    制御部は、
    逆転掃気終了後又は逆転掃気中に、インピーダンス測定器による測定値が予め定めた閾値以上であるときには、逆転掃気時間を延長することを特徴とする燃料電池システム。
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