以下、実施の形態に係るスイッチング電源について説明する。同一要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は、第1実施形態に係るスイッチング電源の回路図である。
スイッチング電源10は、コア部としての磁芯CR1を含む第1トランス1と、コア部としての磁芯CR2を含む第2トランス2とからなるトランス部の入力側に接続された第1インバータ回路INV1及び第2インバータ回路INV2、トランス部の出力側に接続された複数の整流回路3a、整流回路3aの後段に接続された平滑回路3b、電源Vin、キャパシタCi1、及び、インバータ回路INV1,INV2の高電位ラインと電源Vinとの間に介在するカレントトランスL1を備えている。なお、スイッチング電源10の出力側には負荷Zが接続され、複数の整流回路3aはセンタータップ型整流回路であり、平滑回路3bと共に整流平滑回路3を構成している。また、本実施形態では、センタータップ型整流回路には、センタータップ型全波整流回路を採用している。センタータップ型全波整流回路は、半波整流回路を2つ備えたものであり、半波整流回路では破棄していたトランスの出力も同極性に整流するため、電力変換効率が高く、リプル電圧が低くなるという利点がある。
第1トランス1及び第2トランス2は、トランス部を構成し、空間的に離隔した2つの磁芯CR1,CR2の周囲に複数のコイルがそれぞれ配置されている。このようなトランス部に適用できる磁芯CR1,CR2としては、EEコア、EIコア、UUコア、UIコアなどを用いることができる。トランス部の1次側には、第1、第2、第3及び第4の1次側コイルLp1,Lp2,Lp3,Lp4が設けられており、トランス部の2次側には、第1、第2、第3及び第4の2次側コイルLs1,Ls2,Ls3,Ls4が設けられている。なお、1次側コイルLp1,Lp2,Lp3,Lp4の巻き数NLp1,NLp2,NLp3,NLp4は、以下の関係を満たしている。
・NLp1+NLp2=NLp3+NLp4
・NLp1+NLp3=NLp2+NLp4
インバータ回路INV1,INV2は原則的には同相で駆動される。各トランス1,2は同時に駆動されるため、これらのトランス1,2の出力端子間電圧は等しくなる。
第1トランス1は、脚部として一方向に延びる磁芯CR1を有する。第1トランス1の1次側には、磁芯CR1の周囲を囲む第1の1次側コイルLp1と、第3の1次側コイルLp3とを有し、2次側には、磁芯CR1の周囲を囲む第1の2次側コイルLs1と、第2の2次側コイルLs2とを有している。
第2トランス2は、脚部として一方向に延びる磁芯CR2を有する。第2トランス2の1次側には、磁芯CR2の周囲を囲む第4の1次側コイルLp4と、第2の1次側コイルLp2とを有し、2次側には、磁芯CR2の周囲を囲む第3の2次側コイルLs3と、第4の2次側コイルLs4とを有している。
なお、本実施形態においては、各トランス1,2内のコイルは好適には平面コイルであって、厚み方向に積層されており、全体の寸法が縮小されている。すなわち、第1トランス1では、1次側コイルLp1と2次側コイルLs1が隣接しており、1次側コイルLp3と2次側コイルLs2が隣接している。さらに、1次側コイルLp1,Lp3同士が隣接している。第2トランス2では、1次側コイルLp4と2次側コイルLs3が隣接しており、1次側コイルLp2と2次側コイルLs4が隣接している。さらに、1次側コイルLp1,Lp3同士が隣接している。
詳説すれば、1つのトランスにおいて、2次側コイル、1次側コイル、1次側コイル、2次側コイルがこの順番で積層されているが、これは、1次側コイル、2次側コイル、2次側コイル、1次側コイルの順番に積層してもよい。
1次側コイルLp1と1次側コイルLp2は、端子S1を介して接続され、インバータ回路INV1の出力端子X1,X2間において、直列に接続されている。また、1次側コイルLp3と1次側コイルLp4は、端子S2を介して接続され、インバータ回路INV2の出力端子Y1,Y2間において、直列に接続されている。詳細は後述するが、インバータ回路INV1,INV2は、ある期間において出力端子X1から出力端子X2に電流を流すと同時に、出力端子Y1から出力端子Y2に電流を流し、次の期間において、出力端子X2から出力端子X1に電流を流すと同時に、出力端子Y2から出力端子Y1に電流を流し、以後、この動作を継続する。
2次側コイルLs1の一端は、チョークコイルLch1、節点Aを介してキャパシタCoutの一端に接続されている。キャパシタCoutの他端は、節点Bを介して、ダイオードDs1のアノードに接続され、ダイオードDs1のカソードは2次側コイルLs1の他端に接続されており、ダイオードDs1の順方向に流れる電流ループを構成している。
2次側コイルLs2の一端は、端子C、チョークコイルLch2、節点Aを介してキャパシタCoutの一端に接続されている。キャパシタCoutの他端は、節点Bを介して、ダイオードDs2のアノードに接続され、ダイオードDs2のカソードは2次側コイルLs2の他端に接続されており、ダイオードDs2の順方向に流れる電流ループを構成している。
2次側コイルLs3の一端は、チョークコイルLch2、節点Aを介してキャパシタCoutの一端に接続されている。キャパシタCoutの他端は、節点Bを介して、ダイオードDs3のアノードに接続され、ダイオードDs3のカソードは2次側コイルLs3の他端に接続されており、ダイオードDs3の順方向に流れる電流ループを構成している。
2次側コイルLs4の一端は、端子D、チョークコイルLch1、節点Aを介してキャパシタCoutの一端に接続されている。キャパシタCoutの他端は、節点Bを介して、ダイオードDs4のアノードに接続され、ダイオードDs4のカソードは2次側コイルLs4の他端に接続されており、ダイオードDs4の順方向に流れる電流ループを構成している。
このように、複数の整流回路3aは、第1のセンタータップ型全波整流回路と、第2のセンタータップ型全波整流回路とを有している。
第1のセンタータップ型全波整流回路は、端子Dをセンタータップの接続位置として、2次側コイルLs1,Ls4を接続し、各2次側コイルLs1,Ls4を流れる電流の方向を規制するダイオードDs1,Ds4によって構成されている。
第2のセンタータップ型全波整流回路は、端子Cをセンタータップの接続位置として、2次側コイルLs2,Ls3を接続し、各2次側コイルLs2,Ls3を流れる電流の方向を規制するダイオードDs2,Ds3によって構成されている。
さらに、2次側コイルLs1又はLs4から電流が流れ込むように接続された第1チョークコイルLch1、及び2次側コイルLs2又はLs3から電流が流れ込むように接続された第2チョークコイルLch2、及び第1及び第2チョークコイルLch1、Lch2の一端の節点Aと、節点Bとの間に接続されたキャパシタCoutからなる複数の平滑回路3bを有している。この平滑回路3bには、出力端子を通じ負荷Zが接続される。
ここで、複数の平滑回路3bは、チョークコイルLch1とキャパシタCoutからなる第1平滑回路と、チョークコイルLch2とキャパシタCoutからなる第2平滑回路とを併設してなるものであり、それぞれ共通のキャパシタCoutを具備するものであるが、これらは複数の平滑回路であるとする。なお、チョークコイルの位置は、単一の平滑回路に少なくとも1つ備えていればよく、単一の平滑回路が、複数の位置に分割して複数のチョークコイルを備えている構成を採用することもできる。
上述のように、ある期間において、第1インバータ回路INV1の出力端子X1から出力端子X2に電流が流れ、第2インバータ回路INV2の出力端子Y1から出力端子Y2に電流が流れるとする。すると、第1トランス1の1次側コイルLp1,Lp3には、左回転の電流が流れ、同時に、第2トランス2の1次側コイルLp4,Lp2にも、左回転の電流が流れる。2次側コイルの中で、これらの電流とは逆の向きの電流が、それぞれに接続されたダイオードの順方向電流に相当するコイルは、それぞれの2次側コイルが接続されたダイオードの向きを考慮すると、2次側コイルLs2、Ls4である。残りの2次側コイルLs1,Ls3は、1次側コイルの電流によって誘起される電流の向きが、それぞれのコイルに接続されたダイオードの逆方向電流の向きとなるため、これらには原則的には電流は流れない。
2次側コイルLs2、Ls4に電流が流れると、それぞれ第2チョークコイルLch2、第1チョークコイルLch1を通って、節点Aに電流が流れる。そして、後段のキャパシタCoutとチョークコイルLch1,Lch2からなる平滑回路3bによって出力の平滑化が行われる。
双方のインバータ回路INV1,INV2が電流P1F,P2Fを各1次側コイルに供給している場合には、2次側コイルLs4から、端子D及び第1チョークコイルLch1を介して、矢印方向にキャパシタCoutに電流が流れ込み、且つ、2次側コイルLs2から、端子C及び第2チョークコイルLch2を介して、同様にキャパシタCoutに電流が流れ込むように結線されている。
次に、第1インバータ回路INV1の出力端子X2から出力端子X1に電流が流れ、第2インバータ回路INV2の出力端子Y2から出力端子Y1に電流が流れるとする。この場合、1次側コイルLp1,Lp3,Lp2,Lp4には、同時に右回転の電流が流れる。2次側コイルの中で、これらの電流とは逆の向きの電流が、それぞれに接続されたダイオードの順方向電流に相当するコイルは、それぞれの2次側コイルが接続されたダイオードの向きを考慮すると、2次側コイルLs1、Ls3である。残りの2次側コイルLs2,Ls4は、1次側コイルの電流によって誘起される電流の向きが、それぞれのコイルに接続されたダイオードの逆方向電流の向きとなるため、これらには原則的には電流は流れない。
なお、本実施形態では、上記のように、第1トランス1では、1次側コイルLp1と2次側コイルLs1が隣接しており、1次側コイルLp3と2次側コイルLs2が隣接している。さらに、1次側コイルLp1,Lp3同士が隣接している。第2トランス2では、1次側コイルLp4と2次側コイルLs3が隣接しており、1次側コイルLp2と2次側コイルLs4が隣接している。さらに、1次側コイルLp1,Lp3同士が隣接している。
電流の流れない2次側コイルに磁気的に結合した1次側コイルは高インピーダンスとなり、電流の流れる2次側コイルに磁気的に結合した1次側コイルは低インピーダンスとなる。したがって、低インピーダンスを実現すべく、電流の流れる1次側コイルと、電流の流れる2次側コイルとは隣接させ、僅かでも、磁気的結合が高くなるように配置している。また、高インピーダンスを実現すべく、電流の流れる1次側コイルと、電流の流れない2次側コイルとは、僅かでも、磁気的結合が低くなるように、離間して配置している。
2次側コイルLs1、Ls3に電流が流れると、それぞれ第1チョークコイルLch1、第2チョークコイルLch2を通って、節点Aに電流が流れる。そして、後段のキャパシタCoutとチョークコイルLch1,Lch2からなる平滑回路によって出力の平滑化が行われる。
上述のように、インバータ回路INV1,INV2が電流P1R,P2Rを各1次側コイルに供給している場合には、2次側コイルLs1から、第1チョークコイルLch1を介して、矢印方向にキャパシタCoutに電流が流れ込み、同様に、2次側コイルLs3から、第2チョークコイルLch2を介して、キャパシタCoutに電流が流れ込むように結線されている。
以下、詳説する。
各コイルは好適には平面コイルであって、一方の面からみると例えば左巻きであり、1次側コイルへの通電に伴って発生した磁界を打ち消す方向に、2次側コイルに電流が流れようとする。一般に2次側コイルには、1次側コイルとは逆方向の電流が誘起するため、これらが隣接する場合、表皮効果及び近接効果により、交流抵抗(インピーダンス)は低くなり、1次側コイルに隣接する2次側のコイルの出力電流を、ダイオードの逆方向耐圧などを利用して阻止すれば、1次側コイルの交流抵抗は高くなる。
直列接続された1次側コイルLp1、Lp2に、インバータ回路INV1から、一方向の入力電圧が入力されると、1次側コイルLp1、Lp2に電流P1Fが流れる。ここで、1次側コイルLp2はダイオードDs4の順方向電流が流れている2次側コイルLs4に対して、より近くに配置されているので、2次側コイルLs4と相対的に密に磁気結合する。
このとき、1次側コイルLp2と2次側コイルLs4とはトランスの原理上、電流の流れる向きが互いに逆向きになるので、1次側コイルLp2では、電流の流れる向きが同一であるコイル群同士を近接させた場合もしくは電流が流れていないコイルを近接させた場合と比べて、近接効果により交流抵抗が低くなる。
一方、1次側コイルLp1は、ダイオードDs2の順方向電流の流れている2次側コイルLs2に対して、より遠くに配置されているので、2次側コイルLs2と相対的に疎に磁気結合する。このとき、電流が流れていない2次側コイルLs1に対して、より近くに配置されているので、1次側コイルLp1では、1次側コイルLp2と比べて、近接効果により交流抵抗が高くなるが、本実施の形態では、1次側コイルLp1及び1次側コイルLp2は互いに直列に接続されているので、1次側コイルLp1及び1次側コイルLp2には互いに等しい電流が流れる。
直列接続された1次側コイルLp1、Lp2に、インバータ回路INV1から、逆方向の入力電圧が入力されると、1次側コイルLp1、Lp2に電流P1Rが流れる。ここで、1次側コイルLp1はダイオードDs1の順方向電流が流れている2次側コイルLs1に対して、より近くに配置されているので、2次側コイルLs1と相対的に密に磁気結合する。
このとき、1次側コイルLp1と2次側コイルLs1とはトランスの原理上、電流の流れる向きが互いに逆向きになるので、1次側コイルLp1では、電流の流れる向きが同一であるコイル群同士を近接させた場合もしくは電流が流れていないコイルを近接させた場合と比べて、近接効果により交流抵抗が低くなる。
一方、1次側コイルLp2は、ダイオードDs3の順方向電流の流れている2次側コイルLs3に対して、より遠くに配置されているので、2次側コイルLs3と相対的に疎に磁気結合する。このとき、電流が流れていない2次側コイルLs4に対して、より近くに配置されているので、1次側コイルLp2では、1次側コイルLp1と比べて、近接効果により交流抵抗が高くなるが、本実施の形態では、1次側コイルLp1及び1次側コイルLp2は互いに直列に接続されているので、1次側コイルLp1及び1次側コイルLp2には互いに等しい電流が流れる。
直列接続された1次側コイルLp3、Lp4に、インバータ回路INV2から、一方向の入力電圧が入力されると、1次側コイルLp3、Lp4に電流P2Fが流れる。ここで、1次側コイルLp3はダイオードDs2の順方向電流が流れている2次側コイルLs2に対して、より近くに配置されているので、2次側コイルLs2と相対的に密に磁気結合する。
このとき、1次側コイルLp3と2次側コイルLs2とはトランスの原理上、電流の流れる向きが互いに逆向きになるので、1次側コイルLp3では、電流の流れる向きが同一であるコイル群同士を近接させた場合もしくは電流が流れていないコイルを近接させた場合と比べて、近接効果により交流抵抗が低くなる。
一方、1次側コイルLp4は、ダイオードDs4の順方向電流の流れている2次側コイルLs4に対して、より遠くに配置されているので、2次側コイルLs4と相対的に疎に磁気結合する。このとき、電流が流れていない2次側コイルLs3に対して、より近くに配置されているので、1次側コイルLp4では、1次側コイルLp3と比べて、近接効果により交流抵抗が高くなるが、本実施の形態では、1次側コイルLp3及び1次側コイルLp4は互いに直列に接続されているので、1次側コイルLp3及び1次側コイルLp4には互いに等しい電流が流れる。
直列接続された1次側コイルLp3、Lp4に、インバータ回路INV2から、逆方向の入力電圧が入力されると、1次側コイルLp3、Lp4に電流P2Rが流れる。ここで、1次側コイルLp4はダイオードDs3の順方向電流が流れている2次側コイルLs3に対して、より近くに配置されているので、2次側コイルLs3と相対的に密に磁気結合する。
このとき、1次側コイルLp4と2次側コイルLs3とはトランスの原理上、電流の流れる向きが互いに逆向きになるので、1次側コイルLp4では、電流の流れる向きが同一であるコイル群同士を近接させた場合もしくは電流が流れていないコイルを近接させた場合と比べて、近接効果により交流抵抗が低くなる。
一方、1次側コイルLp3は、ダイオードDs1の順方向電流の流れている2次側コイルLs1に対して、より遠くに配置されているので、2次側コイルLs1と相対的に疎に磁気結合する。このとき、電流が流れていない2次側コイルLs2に対して、より近くに配置されているので、1次側コイルLp3では、1次側コイルLp4と比べて、近接効果により交流抵抗が高くなるが、本実施の形態では、1次側コイルLp3及び1次側コイルLp4は互いに直列に接続されているので、1次側コイルLp3及び1次側コイルLp4には互いに等しい電流が流れる。
このように、本実施の形態では、1次側コイルLp1,Lp2(Lp3,Lp4)が互いに直列に接続されているので、交流抵抗の大きなコイルにも大きな電流が流れることとなる。そのため、トランスの線間容量と、トランスの励磁インダクタンスと、トランスの漏洩インダクタンスとによるLC共振によって生じる、トランスの出力交流電圧に発生するリンギングを、高い交流抵抗によって減衰させることができる。その結果、トランスにおけるコアロスやトランスの交流抵抗による発熱量が低下し、効率が向上する。
以上のように、2次側のチョークコイルLch1,Lch2を配置することにより、1次側コイルに一方向に電流が供給されている場合には、キャパシタCoutには、第1及び第2チョークコイルLch1,Lch2の双方を通った電流が、第2及び第4の2次側コイルLs2,Ls4から流れ込む。逆方向の場合には、第1及び第3の2次側コイルLs1,Ls3からの電流が第1及び第2チョークコイルLch1,Lch2の双方を通ってキャパシタCoutに流れ込む。
いずれの場合も、第1及び第2チョークコイルLch1,Lch2を流れた電流の合計がキャパシタCoutと負荷Zに流れる。この構造の場合、第1チョークコイルLch1を流れる電流と、第2チョークコイルLch2を流れる電流が均等化され、出力が安定化する。なお、詳細は後述する。
以上、説明したように、それぞれのインバータ回路INV1(INV2)の出力端子間に接続された複数の1次側コイルLp1,Lp2(Lp3,Lp4)は、直列に接続されており、それぞれのインバータ回路毎の1次側コイルLp1,Lp2(Lp3,Lp4)の交流抵抗は、インバータ回路駆動時に交互に高くなるように、複数の2次側コイルLs1,Ls4(Ls2,Ls3)に磁気的に結合しているため、高周波成分を高抵抗成分が吸収し、スイッチング電源のリンギングを抑制することが可能となる。
図2は、インバータ回路の回路図である。
図2(a)に示すように、インバータ回路INV1は、高電位ラインHL1と低電位ラインLL1との間に直列に介在するスイッチQ1,Q2、及びスイッチQ3,Q4を備えている。スイッチQ3とスイッチQ4の接続点は、共振用インダクタLRを介して出力端子X1に接続されている。スイッチQ1とスイッチQ2の接続点は、出力端子X2に接続されている。高電位ラインHL1と低電位ラインLL1との間には必要に応じて逆方向バイアスが印加されるダイオードDA,DBを直列に接続し、これらのダイオードDA,DBに並列に接続されたキャパシタCA,CBを接続し、この接続点に共振用インダクタLRの出力側の一端を固定してもよい。
図2(b)に示すように、インバータ回路INV2の構造は、インバータ回路INV1の構造と同一であり、上述の説明において、出力端子X1,X2をそれぞれ出力端子Y1,Y2に読み替えたものである。
図2(c)は、各スイッチQX(X=1,2,3,4)の回路図である。本例の各スイッチQ1,Q2,Q3,Q4は、電界効果トランジスタからなり、ゲート/ソース間電圧Vgsに応じて、スイッチがON/OFFする。同図に示すように、トランジスタのソース/ドレイン間には、逆バイアス電圧が印加されるダイオード及び当該ダイオードに対して並列に接続されたキャパシタからなる寄生素子が付属している。
第1のインバータ回路INV1において、スイッチQ1、Q4がOFFした状態で、スイッチQ3,Q2がONした状態のとき、端子X1から端子X2に向かう電流P1Fが流れ、図1に示したダイオードDs4に順方向電流が流れる。一方、スイッチQ2、Q3がOFFした状態で、スイッチQ1,Q4がONした状態のとき、端子X2から端子X1に向かう電流P1Rが流れ、図1に示したダイオードDs1に順方向電流が流れる。
第2のインバータ回路INV2において、スイッチQ1、Q4がOFFした状態で、スイッチQ3,Q2がONした状態のとき、端子Y1から端子Y2に向かう電流が流れ、図1に示したダイオードDs2に順方向電流が流れる。一方、スイッチQ2、Q3がOFFした状態で、スイッチQ1,Q4がONした状態のとき、端子Y2から端子Y1に向かう電流P2Rが流れ、図1に示したダイオードDs3に順方向電流が流れる。
図3は、第2実施形態に係るスイッチング電源の回路図である。
第2実施形態のスイッチング電源10と第1実施形態のスイッチング電源10の相違点は、インバータ回路INV1,INV2の前段側における結線である。すなわち、第1実施形態のスイッチング電源10においては、インバータ回路INV1,INV2は、電源Vinに対して互いに並列に接続されていた。
第2実施形態においては、第1インバータ回路INV1と、第2インバータ回路INV2とが、高電位ラインと低電位ラインとの間に直列に接続されている。電源Vinの正極に接続された高電位ラインと、負極に接続された低電位ラインとの間には、キャパシタCi1とキャパシタCi2が直列に接続されている。第1インバータ回路INV1は一対の入力端子G1,G2を有しており、キャパシタCi1は、入力端子G1,G2間に介在している。第2インバータ回路INV2は一対の入力端子F1,F2を有しており、キャパシタCi2は、入力端子F1,F2間に介在している。すなわち、第1インバータ回路INV1と、第2インバータ回路INV2との接続点は、キャパシタCi1とキャパシタCi2の接続点に接続されている。
第1インバータ回路INV1の低電位ラインと、第2インバータ回路INV2の高電位ラインとの間には、図示のように、共通のカレントトランスL1が介在しており、電流を検出している。検出された電流は、インバータ回路のスイッチング制御に利用することも可能である。
第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同一である。
上述の構成の場合、第1実施形態と同一の作用効果に加えて以下の作用効果を奏する。すなわち、この構造によれば、第1及び第2インバータ回路INV1,INV2の入力側に設けられる複数のキャパシタCi1,Ci2の容量が製品毎にばらついた場合においても、これらのキャパシタCi1の両端間の電圧と,Ci2の両端間の電圧がバランスし、出力が安定化する。すなわち、キャパシタCi1,Ci2の容量の違いにより、インバータ回路INV1,INV2への入力電圧VCi1,VCci2が変わりにくくなっている。
1次側コイルLp1とLp3は同一のトランス1に属し、磁束を共有して結合しており、同一方向に電流が流れる。双方の1次側コイルの巻数比NLp1:NLp3が、1次側コイルの電圧の比VLp1:VLp3となる。また、1次側コイルLp2とLp4は同一のトランス2に属し、磁束を共有して結合しており、同一方向に電流が流れる。双方の1次側コイルの巻数比NLp2:NLp4が、1次側コイルの電圧の比VLp2:VLp4となる。NLp1+NLp2=NLp3+NLp4、NLp1+NLP3=NLp2+NLp4であり、端子X1と端子X2の間の電位差と、端子Y1と端子Y2の間の電位差は等しくなる。
インバータ回路INV1のオンデューティ期間においては、端子G1と端子X1、端子G2と端子X2が接続されるか、あるいは、端子G1と端子X2、端子G2と端子X1が接続されることになる。
インバータ回路INV2のオンデューティ期間においては、端子F1と端子Y1、端子F2と端子Y2が接続されるか、あるいは、端子Y1と端子Y2、端子Y2と端子Y1が接続されることになる。
したがって、端子G1と端子G2の間の電位差と、端子F1と端子F2の間の電位差は等しくなる。また、端子X1と端子X2の間に流れる電流Ii1と、端子Y1と端子Y2の間に流れる電流Ii2とは等しくなる。1次側のインバータ回路INV1,INV2は直列に接続され、キャパシタCi1,Ci2も直列に接続されている。キャパシタCi1,Ci2の容量がばらつくと、これらの中点電位は容量の逆比となるように変動しようとする。しかしながら、上述のように、端子G1と端子G2の間の電位差と、端子F1と端子F2の間の電位差は等しくなり、キャパシタCi1,Ci2間の中点電位はVinの2分の1に収束する。
図4は、第3実施形態に係るスイッチング電源の回路図である。
第3実施形態のスイッチング電源10と第1実施形態のスイッチング電源10の相違点は、インバータ回路INV1,INV2に接続される各1次側コイルLp1,Lp2、Lp3,Lp4の接続にある。第1実施形態のスイッチング電源10は、第1インバータ回路INV1に接続された1次側コイルのうち、異なるトランスに属するもの(Lp1,Lp2)が直列に接続されており、第2インバータ回路INV2に接続された1次側コイルのうち、異なるトランスに属するもの(Lp3,Lp4)が直列に接続されていた。
これに対して、本実施形態の1次側コイルLp1,Lp2,Lp3,Lp4は、インバータ回路毎に、同一のトランスに属しており、異なるトランスに属するもの同士は直列に接続されていない。具体的には、第1インバータ回路INV1に接続される1次側コイルLp1,Lp2は、磁芯CR1を有する第1トランス1のみに設けられており、第2インバータ回路INV2に接続される1次側コイルLp3,Lp4は、磁芯CR2を有する第2トランス2のみに設けられている。第3実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同一である。
このような構成においても、各センタータップ型整流回路に接続される一対の2次側コイルLs1,Ls4(Ls2,Ls3)は、それぞれ別のトランスに属しており、ダイオードDs1,Ds4を含むセンタータップ型整流回路の出力はチョークコイルLch1を通り、ダイオードDs2,Ds3を含むセンタータップ型整流回路の出力はチョークコイルLch2を通り、それぞれのチョークコイルLch1,Lch2を含む複数の平滑回路が併設されているため、各チョークコイルLch1,Lch2のインダクタンス差に伴う出力のバラツキを均等化することができる。
すなわち、ある期間において、第2ダイオードDs2と第4ダイオードDs4に順方向電流が流れている場合、これらの電流は、それぞれ、別々のチョークコイルLch2,Lch1に流れ、複数の平滑回路3bは併設されているので、電流の合計値がキャパシタCoutに流れ込む。第2ダイオードDs2を流れる電流は第1トランス1の影響を受けており、第4ダイオードDs4を流れる電流は第2トランス2の影響を受けているので、その合計値は、双方のトランス1,2の影響と、それぞれが流れるチョークコイルLch1,Lch2の影響を共に均等化したものとなる。
また、次の期間において、第1ダイオードDs1と第3ダイオードDs3に順方向電流が流れている場合、これらの電流は、それぞれ、別々のチョークコイルLch1,Lch2に流れ、複数の平滑回路3bは併設されているので、電流の合計値がキャパシタCoutに流れ込む。第1ダイオードDs1を流れる電流は第1トランス1の影響を受けており、第3ダイオードDs3を流れる電流は第2トランス2の影響を受けているので、その合計値は、双方のトランス1,2の影響と、それぞれが流れるチョークコイルLch1,Lch2の影響を共に均等化したものとなる。
すなわち、双方の期間において、キャパシタCoutに流れ込む電流は、全て均等化されているという利点がある。なお、かかる利点は、第1及び第2実施形態においても実現されている。
また、第1及び第2実施形態においては、各インバータ回路INV1,INV2において直列接続された1次側コイル対が別々のトランス1,2に属しているため、一方のトランスにおいて電流が多く流れている2次側コイルに近接した1次側コイルは、他方のトランスにおいて電流が多く流れている2次側コイルから離隔した1次側コイルとは別の影響をトランスから受ける。すなわち、2次側コイルを流れる電流を律則する平滑回路の特性差、すなわちチョークコイルLch1,Lch2のインダクタンスの違いにより、図1に示した1次側コイルLp1,Lp2の接続点である端子S1の電位と、1次側コイルLp3,Lp4の接続点である端子S2の電位がシフトし、これに伴って対応する2次側コイルの誘起電圧が変化し、チョークコイルLch1,Lch2を流れる電流が略同一の電流となるように収束し、出力が安定化している。
図5は、比較例に係るスイッチング電源の回路図である。
比較例に係るスイッチング電源10では、1次側コイルLp1,Lp2、Lp3,Lp4を各トランス1,2毎に、図示の如く直列に接続し、各トランス1(2)における2次側コイルLs1,Ls2(Ls3,Ls4)を流れる電流が共に、自身のチョークコイルLch1(Lch2)を流れている点が、第1実施形態のものと異なる。
次に、上述の各スイッチング電源10の動作の詳細について、タイミングチャートを用いて説明する。
図6は、第1実施形態に係るスイッチング電源のタイミングチャート、図7は、第2実施形態に係るスイッチング電源のタイミングチャート、図8は、第3実施形態に係るスイッチング電源のタイミングチャート、図9は、比較例に係るスイッチング電源のタイミングチャートである。
同図中のパラメータは以下のものを示す。
なお、各タイミングチャートにおいて、第1、第2実施形態と比較例との差が分かるよう、チョークコイルLch2のインダクタンスを、チョークコイルLch1のインダクタンスの2倍の値に設定している。
・VgsQ3:スイッチQ3のゲート/ソース間電圧
・VgsQ4:スイッチQ4のゲート/ソース間電圧
・VgsQ1:スイッチQ1のゲート/ソース間電圧
・VgsQ2:スイッチQ2のゲート/ソース間電圧
・VLs2:2次側コイルLs2の両端間電圧
・VLs3:2次側コイルLs3の両端間電圧
・VLs1:2次側コイルLs1の両端間電圧
・VLs4:2次側コイルLs2の両端間電圧
・VLch1:チョークコイルLch1の両端間電圧
・VLch2:チョークコイルLch2の両端間電圧
・VCout:キャパシタCoutの両端間電圧
・VLp3:1次側コイルLp3の両端間電圧
・VLp4:1次側コイルLp4の両端間電圧
・VLp1:1次側コイルLp1の両端間電圧
・VLp2:1次側コイルLp2の両端間電圧
・Ii1:インバータ回路INV1への入力電流
・Ii2:インバータ回路INV2への入力電流
・VDs1:ダイオードDs1の両端間電圧
・VDs3:ダイオードDs3の両端間電圧
・VDs2:ダイオードDs2の両端間電圧
・VDs4:ダイオードDs4の両端間電圧
・IDs1:ダイオードDs1に流れる電流
・IDs3:ダイオードDs3に流れる電流
・IDs2:ダイオードDs2に流れる電流
・IDs4:ダイオードDs4に流れる電流
・ILp1:1次側コイルLp1に流れる電流
・ILp2:1次側コイルLp2に流れる電流
・ILp3:1次側コイルLp3に流れる電流
・ILp4:1次側コイルLp4に流れる電流
・Vout:負荷Zに与えられる出力電圧
・ILch1:チョークコイルLch1に流れる電流
・ILch2:チョークコイルLch2に流れる電流
・Iout/2:負荷Zを流れる出力電流の50%
・VCi1:キャパシタCi1の両端間電圧
・VCi2:キャパシタCi2の両端間電圧
まず、図1に示した第1実施形態のスイッチング電源のタイミングについて、図6を用いて説明する。なお、VLp1〜VLp4は、コイルの巻き始めの黒点がある端子の電位が、黒点のない端子の電位よりも大きい場合に、正とする。また、VLs1〜VLs4は、チョーク側電位がダイオード側電位よりも大きい場合に、正とする。
図2に示したスイッチQ1,Q2,Q3,Q4は、電圧VgsQ1,VgsQ2,VgsQ3,VgsQ4がハイレベルの場合にONし、ローレベルの場合にOFFする。図2に示したスイッチQ3,Q2が共にONの期間において、インバータINV1,INV2の出力端子X1から出力端子X2に電流が流れ、出力端子Y1から出力端子Y2に電流が流れる。また、図2に示したスイッチQ4,Q1が共にONの期間において、インバータINV1,INV2の出力端子X2から出力端子X1に電流が流れ、出力端子Y2から出力端子Y1に電流が流れる。なお、図2において、インバータ回路INV1,INV2の双方にスイッチQ1,Q4が設けられているが、図6はこれらの同符号のスイッチが同期していることを示している。
スイッチQ3とスイッチQ4は交互にONとなっており、スイッチQ1とスイッチQ2は交互にONとなっている。また、スイッチQ3とスイッチQ2は位相シフトしてON/OFFを繰り返しており、スイッチQ4とスイッチQ1も位相シフトしてON/OFFを繰り返しており、このスイッチング電源は位相シフト型のコンバータを構成している。換言すれば、1つの電流経路を生じるスイッチ対のON期間の重複期間において、1次側コイルに入力電圧が印加され、重複期間が長いほど、単位時間当たり出力される電流量が多くなる。
このように、スイッチQ1〜Q4がスイッチングして、スイッチングパルスを送出しているため、1次側コイルLp1〜Lp4には、図示の如く、電圧が印加される。具体的には、スイッチQ3とスイッチQ2が共にONする期間では、端子X1(Y1)の電位よりも端子X2(Y2)の電位が低くなり、端子X1から端子X2、及び、端子Y1から端子Y2に電流が流れる。各コイルの電圧はこのときの電流が流れる際の上流側を高電位とし、下流側を低電位とする。この期間における1次側コイル電圧VLp1,VLp2,VLp3,VLp4の電圧の向きを正とおく。
また、スイッチQ4とスイッチQ1が共にONする期間では、端子X2(Y2)の電位よりも端子X1(Y1)の電位が低くなり、端子X2から端子X1、及び、端子Y2から端子Y1に電流が流れる。この期間においては、1次側コイル電圧VLp1,VLp2,VLp3,VLp4は負方向に振れている。
そして、スイッチQ4がONでスイッチQ1がOFFする期間、もしくはスイッチQ4がOFFでスイッチQ1がONする期間では、スイッチQ3がONでスイッチQ2がOFFする期間、もしくはスイッチQ2がOFFでスイッチQ3がONする期間では、1次側コイル電圧VLp1,VLp2,VLp3,VLp4は、略0Vとなっている。1次側コイルLp3とLp4間の電圧の差、及び、1次側コイルLp1とLp2間の電圧の差については後述する。
各トランス内では2次側コイルLs1,Ls4と、ダイオードDs1,Ds4による第1のセンタータップ型整流回路が構成され、2次側コイルLs2,Ls3と、ダイオードDs2,Ds3による第2のセンタータップ型整流回路が構成されている。1次側コイルLp1〜Lp4の電圧VLp1〜VLp4の変化による電流変化により、1次側コイルLp1〜Lp4の電圧が正方向に振れている期間では、2次側コイルLs2,Ls4の電位が正方向に振れており、1次側コイルLp1〜Lp4の電圧が負方向に振れている期間では、2次側コイルLs1,Ls3の電位が正方向に振れている。
そして、1次側コイル電圧VLp1〜VLp4が、0V付近にある期間では、2次側コイルにかかる電圧VLs1〜VLs4も0Vに近づいた状態となる。なお、2次側コイル電圧VLs2、VLs3の組と、2次側コイル電圧VLs1、VLs4の組との間では、高い電圧、低い電圧、0V付近の電圧のいずれにおいても差が生じているが、これについては後述する。
チョークコイルLch1とキャパシタCoutには、2次側コイルLs1,Ls4からの電圧(合計電圧VLch1+VCout)がかかり、チョークコイルLch2とキャパシタCoutには、2次側コイルLs2,Ls3からの電圧(合計電圧VLch2+VCout)がかかる。VLch2+VCoutの変動幅が、VLch1+VCoutによりも大きい点については後述する。
インバータ回路INV1,INV2への入力電流Ii1,Ii2は、インバータ回路INV1,INV2では常に同じように電流が流れており、並列型コンバータの一方のみに負荷がかからず安定している。
電流Ii1,Ii2は、インバータ回路INV1,INV内の各スイッチを通り、1次側コイルLp1〜Lp4に流れる。各1次側コイルLp1〜Lp4には、同じ電流が流れ、したがって、本タイミングチャートにおいても、Lp1=Lp2=Lp3=Lp4で示されている。
2次側コイル電圧VLs1とVLs3とは同期しており、これにより、ダイオード両端間電圧VDs1とVDs3も同期している。そして、VDs1とVDs3は、同一の電圧となっている。また、2次側コイル電圧VLs2とVLs4とは同期しており、これにより、ダイオード両端間電圧VDs2とVDs4も同期している。そして、VDs2とVDs4は、同一の電圧となっている。
ダイオード電流IDs1とIDs3はが同期し、且つ、略同一であり、ダイオード電流IDs2とIDs4はがやはり同期して、且つ、略同一となる。
チョークコイル電流ILch1と、ILch2は略同一となり、バランスする。この理由は、次の通りである。
2次側コイルLs1,Ls4の電流は、チョークコイルLch1によって支配される。同様に、2次側コイルLs2,Ls3の電流は、チョークコイルLch2によって支配される。このチョークコイルLch1の電流は、2次側コイルLs1,Ls4の電圧VLs1,VLs4によって定まり、チョークコイルLch2の電流は、2次側コイルLs2,Ls3の電圧VLs2,VLs3によって定まる。2次側コイルLs1,Ls2の電圧は、1次側コイルLp1,Lp3との巻数比によって定まり、2次側コイルLs3,Ls4の電圧は、1次側コイルLp4,Lp2との巻数比によって定まる。そして、2次側コイルLs1,Ls2と、1次側コイルLp1,Lp3の電流比は、これら1次側コイルと2次側コイルの巻き数の逆比により定まり、2次側コイルLs3,Ls4と、1次側コイルLp4,Lp2の電流比も、これら1次側コイルと2次側コイルの巻き数の逆比により定まる。なお、2つのトランスに跨る1次側コイルは、直列に接続されているため、1次側コイルLp1,Lp2を流れる電流は等しく、1次側コイルLp3,Lp4を流れる電流も等しい。
したがって、各インバータ回路INV1,IN2の出力や、各トランス1,2、各チョークコイルLch1,Lch2にばらつきがなければ、本来、このスイッチング電源は均衡して動作する。
しかし、例えば、チョークコイルLch1,Lch2のインダクタンスにばらつきがあるとする。そうすると、チョークコイルLch1,Lch2に流れる電流は、それに応じてばらつくことになる。ここで、第1実施形態では、説明のため意図的にチョークコイルLch2のインダクタンスを、チョークコイルLch1のインダクタンスに対し2倍の値に設定している。このチョークコイルLch1,Lch2の値のバラツキにより、定電流源と見なせる各チョークコイルの電流、ILch1,ILch2が異なることとなる。このことは、上述の1次側コイルLp1とLp2を流れる電流、1次側コイルLp3,Lp4を流れる電流が、等しいことと矛盾する。
したがって、トランスの巻き線中点電位、すなわち、1次側コイルLp1とLp2の接続点の電位と、1次側コイルLp3,Lp4の接続点の電位が変化して、直列に結合された1次側コイルの電圧比が調整された結果、前述したように、VLp3,VLp4に差が現れ、また、VLp1,VLp2に差が現れ、1次側コイルの電圧比が調整される。この調整結果、結合している2次側コイルLs1〜Ls4の間の電圧にも差が生じ、図6に示したVLs2,VLs3の差、及び、VLs1,VLs4の差となって現れる。そして、各チョークコイルの電流がばらつく状態から変化して、バランスした状態に収束する。つまり、図6の最下部に示したように、2つのチョークコイルLch1、Lch2に流れる電流ILch1,ILch2が、出力電流Ioutの1/2を中心に略同一となり、収束する。
次に、図3に示した第2実施形態のスイッチング電源のタイミングについて、図7を用いて説明する。
なお、第2実施形態では、電源Vinの入力電圧は、第1実施形態の2倍に設定してある。また、上述のように、第2実施形態のスイッチング電源では、これらのキャパシタCi1,Ci2の両端間の電圧がバランスし、出力が安定化するが、スイッチング電源内における各パラメータの波形は第1実施形態のものと同一である。第2実施形態にスイッチング電源においても、第1実施形態の場合と同様に、1次側コイルの電圧VLp1,VLp2,VLp3,VLp4には、図示の如く差が生じており、最終的な出力電流Ioutの1/2を中心に、2つのチョークコイルLch1、Lch2に流れる電流ILch1,ILch2が略同一となっている。なお、キャパシタCi1,Ci2の両端間の電圧は同一である。
次に、図4に示した第3実施形態のスイッチング電源のタイミングについて、図8を用いて説明する。
第3実施形態においては、インバータ回路INV1に接続された1次側コイルLp1,Lp2が同一のトランス1に属しており、インバータ回路INV2に接続された1次側コイルLp3,Lp4が同一のトランス2に属している。ダイオードDs1を流れる電流IDs1と、ダイオードDs3を流れる電流IDs3は同期し、ダイオードDs2を流れる電流IDs2と、ダイオードDs4を流れる電流IDs4は同期するが、実際には僅かに電流IDs1とIDs3には大きさに差が生じ、電流IDs2とIDs4の間に差が生じる。なお、第1実施形態では、ダイオードDs1〜Ds4に流れる電流IDs1とIDs3とは同期し、且つ、略同一であり、電流IDs2とIDs4とは同期し、且つ、略同一であった。
また、第1実施形態と異なり、1次側コイルLp1、Lp2の電圧VLp1、VLp2は同一であり、1次側コイルLp3、Lp4の電圧VLp3、VLp4も同一である。すなわち、チョークコイルLch1、Lch2に流れる電流ILch1,Ich2は、第1実施形態のようにはバランスしない。
しかしながら、1つのオンデューティ期間においては、ダイオードDs1を流れる電流IDs1と、ダイオードDs3を流れる電流IDs3は、別々のチョークコイルLch1,Lch2を通り、その合計値がキャパシタCoutと負荷Zに流れ、次のオンデューティ期間においては、ダイオードDs2を流れる電流IDs2と、ダイオードDs4を流れる電流IDs4は、別々のチョークコイルLch2,Lch1を通り、その合計値がキャパシタCoutと負荷Zに流れるため、全体としてはキャパシタCoutを含む平滑回路によって、均等に平滑化が行われ、平滑回路の出力は均等化し、図8の最下部に示すように、出力電流Ioutの2分の1の出力は安定している。
その他の動作は、第1実施形態のものと同じである。
次に、図5に示した比較例に係るスイッチング電源のタイミングについて、図9を用いて説明する。
各タイミングは、図6に示したものと同様であるが、比較例では、各トランス1,2内で完結して1次側コイル及び2次側コイルが接続されており、異なるトランスに跨って結線はされていない。そのため、チョークコイルLch2のインダクタンスを、チョークコイルLch1のインダクタンスの2倍に設定した場合、その影響を直接的に受けて、1次側コイルLp1〜Lp4に流れる電流は、ILp1=ILp2、ILp3=ILp4ではあるが、各トランス1,2毎に異なることとなる。そして、この1次側コイルに流れる電流の違いにより、各整流用のダイオードDs1〜Ds4に流れる電流も異なる。具体的には、電流IDs1とIDs3は同期するが、その大きさは異なり、電流IDs2とIDs4はやはり同期するが、その大きさは異なることとなる。したがって、各チョークコイルLch1,Lch2に流れる電流は収束することなく、大きな差のままとなる。
以上、説明したように、いずれの実施形態の場合においても、ILch1とILch2の変動差は、比較例よりも小さく、出力電流Ioutの50%の値の変動も抑制されている。
図10は、3つのトランスを用いた場合の結線関係を示すスイッチング電源の回路図である。
本例では、高インピーダンスの1次側コイルと低インピーダンスの1次側コイルが直列接続された構成となっている。
インバータ回路INV1,INV2の構成は上記のものと同一である。インバータ回路INV3の構成は、インバータ回路INV1と同一であり、その入力端子をJ1,J2とし、出力端子をZ1,Z2とする。
インバータ回路INV1の出力端子X1は、1次側コイルLpA、LpDを介して出力端子X2に接続されている。
インバータ回路INV2の出力端子Y1は、1次側コイルLpC、LpFを介して出力端子Y2に接続されている。
インバータ回路INV3の出力端子Z1は、1次側コイルLpE、LpBを介して出力端子Z2に接続されている。
コイルの巻き始めを一端とし、巻き終りを他端とすると、2次側コイルLsAの一端はダイオードDsAのカソードに接続されており、他端はチョークコイルLchAを介してキャパシタCoutの一端Aに接続され、キャパシタCoutの他端BはダイオードDsAのアノードに接続されている。
2次側コイルLsBの他端はダイオードDsBのカソードに接続されており、一端はチョークコイルLchBを介してキャパシタCoutの一端Aに接続され、キャパシタCoutの他端BはダイオードDsBのアノードに接続されている。
2次側コイルLsCの一端はダイオードDsCのカソードに接続されており、他端はチョークコイルLchBを介してキャパシタCoutの一端Aに接続され、キャパシタCoutの他端BはダイオードDsCのアノードに接続されている。
2次側コイルLsDの他端はダイオードDsDのカソードに接続されており、一端はチョークコイルLchCを介してキャパシタCoutの一端Aに接続され、キャパシタCoutの他端BはダイオードDsDのアノードに接続されている。
2次側コイルLsEの一端はダイオードDsEのカソードに接続されており、他端はチョークコイルLchCを介してキャパシタCoutの一端Aに接続され、キャパシタCoutの他端BはダイオードDsEのアノードに接続されている。
2次側コイルLsFの他端はダイオードDsFのカソードに接続されており、一端はチョークコイルLchAを介してキャパシタCoutの一端Aに接続され、キャパシタCoutの他端BはダイオードDsFのアノードに接続されている。
第1トランス101は、コア部としての磁芯CR1の周囲に設けられた1次側コイルLpA、LpB、2次側コイルLsA、LsBからなる。
第2トランス102は、コア部としての磁芯CR2の周囲に設けられた1次側コイルLpC、LpD、2次側コイルLsC、LsDからなる。
第3トランス103は、コア部としての磁芯CR3の周囲に設けられた1次側コイルLpE、LpF、2次側コイルLsE、LsFからなる。
ある期間において、出力端子X1からX2に電流が流れ、出力端子Y1からY2に電流が流れ、出力端子Z1からZ2に電流が流れると、2次側コイルにおいて、整流回路3aのダイオードに電流が阻害されない場合には、逆方向の電流が流れ、インピーダンスが低下し、ダイオードに電流が阻害される場合には、インピーダンスが相対的に高くなる。すなわち、1次側コイルLpA、LpC、LpEは高インピーダンスであり、1次側コイルLpB、LpD、LpFは低インピーダンスとなる。これらは各電流経路において、上述のように直列接続されているので、高インピーダンスの1次側コイルLpA、LpC、LpEが発振を吸収してリンギングを抑制する。
次の期間において、出力端子X2からX1に電流が流れ、出力端子Y2からY1に電流が流れ、出力端子Z2からZ1に電流が流れると、2次側コイルにおいて、上記とは逆の現象が生じ、1次側コイルLpA、LpC、LpEは低インピーダンスとなり、1次側コイルLpB、LpD、LpFは高インピーダンスとなる。これらは各電流経路において、上述のように直列接続されているので、高インピーダンスの1次側コイルLpB、LpD、LpFが発振を吸収してリンギングを抑制する。
2次側コイルでは、低インピーダンスのものに電流が流れるが、各トランス内の一方の2次側コイルは、いずれも自身が属するトランスとは異なるトランスに対応するチョークコイルを介してキャパシタCoutの一端Aに電流が流れる。
すなわち、トランス101、102、103にそれぞれ属する2次側コイルLsB、LsD、LsFを流れる電流は、それぞれ、トランス102に属するチョークコイルLchB、トランス103に属するチョークコイルLchC、トランス101に属するチョークコイルLchAに流れる。
また、各トランス内の他方の2次側コイルは、いずれも自身が属するトランスに対応するチョークコイルを介してキャパシタCoutの一端Aに電流が流れる。トランス101、102、103にそれぞれ属する2次側コイルLsA、LsC、LsEを流れる電流は、それぞれ、トランス101に属するチョークコイルLchA、トランス102に属するチョークコイルLchB、トランス103に属するチョークコイルLchCに流れる。
また、第1トランス101は、第1の1次側コイルLpAと、第1の1次側コイルLpAに磁気的に結合した第1の2次側コイルLsAと、第2の1次側コイルLpBと、第2の1次側コイルLpBに磁気的に結合した第2の2次側コイルLsBとを有している。
第2トランス102は、第3の1次側コイルLpCと、第3の1次側コイルLpCに磁気的に結合した第3の2次側コイルLsCと、第4の1次側コイルLpDと、第4の1次側コイルLpDに磁気的に結合した第4の2次側コイルLsDとを有している。
第3トランス103は、第5の1次側コイルLpEと、第5の1次側コイルLpEに磁気的に結合した第5の2次側コイルLsEと、第6の1次側コイルLpFと、第6の1次側コイルLpFに磁気的に結合した第6の2次側コイルLsFとを有している。
第1のセンタータップ型整流回路は、ダイオードDsA、DsFを備えており、2次側コイルLsA,LsFの接続点をセンタータップ位置とし、これにチョークコイルLchAが接続され、これはキャパシタCoutと共に平滑回路を構成している。
第2のセンタータップ型整流回路は、ダイオードDsB、DsCを備えており、2次側コイルLsB,LsCの接続点をセンタータップ位置とし、これにチョークコイルLchBが接続され、これはキャパシタCoutと共に平滑回路を構成している。
第3のセンタータップ型整流回路は、ダイオードDsD、DsEを備えており、2次側コイルLsD,LsEの接続点をセンタータップ位置とし、これにチョークコイルLchCが接続され、これはキャパシタCoutと共に平滑回路を構成している。なお、これらの複数の平滑回路は併設されている。
平滑回路3bに含まれるチョークコイルLchA、LchB、LchCのインダクタンスが異なる場合、直列接続された1次側コイルLpA,LpD、1次側コイルLpB,LpEと、1次側コイルLpC,LpFのそれぞれの中点の電位が、第1実施形態と同様にシフトし、これにより、チョークコイルLchA、LchB、LchCを流れる電流がバランスして収束する。これらのチョーク電流は併せてコイルCoutに流れるため、出力が安定する。なお、同図では出力電圧Voutを電源記号にて示すが、この位置には上述の負荷が挿入される。
以上、説明したように、本実施形態のスイッチング電源では、複数のトランスは、第1、第2及び第3トランス101,102,103を有し、第1、第2及び第3センタータップ型整流回路を有し、第1センタータップ型整流回路に接続された2次側コイルの一方(LsA)は、第1トランス101のコア部に配置され、他方(LsF)は第3トランス103のコア部に配置され、第2センタータップ型整流回路に接続された2次側コイルの一方(LsB)は、第1トランス101のコア部に配置され、他方(LsC)は第2トランス102のコア部に配置され、第3センタータップ型整流回路に接続された2次側コイルの一方(LsD)は、第2トランス102のコア部に配置され、他方(LsE)は第3トランス103のコア部に配置され、2次側コイルの接続関係が各コアを通じて循環している状態とした。本実施形態を応用すれば、インバータ回路INVとコア部が4つ以上の場合おいても、2次側コイルの接続関係がコア全体として循環しているよう構成することができる。これを一般化すれば、mを3以上の整数として、m個からなるコアとセンタータップ型整流回路を想定し、nを2以上m以下の整数とすれば、次のようになる。
n番目のセンタータップ型整流回路に接続された2次側コイルの一方はn番目のトランスのコア部に配置され、2次側コイルの他方はn−1番目のトランスのコア部に配置され、1番目のセンタータップ型整流回路に接続された2次側コイルの他方はm番目のトランスのコア部に配置されていることとなる。
図11は、図10に示したスイッチング電源において、インバータ回路INV1、INV2,INV3の入力側の接続を、第2実施形態と同様にしたものを示す図である。インバータ回路INV1の入力端子G1,G2間にはキャパシタCi1が介在しており、インバータ回路INV2の入力端子F1,F2間にはキャパシタCi2が介在しており、インバータ回路INV3の入力端子J1,J2間にはキャパシタCi3が介在している。入力端子G1は、電源Vinの高電位側に接続され、入力端子J2は電源Vinの低電位側に接続されている。
なお、第1のインバータ回路INV1の出力間において、1次側コイルのうち異なるトランスに属するもの(LpA,LpD)が直列に接続されており、第2のインバータ回路INV2の出力間において、1次側コイルのうち異なるトランスに属するもの(LpC,LpF)が直列に接続され、第3のインバータ回路INV3の出力間において、1次側コイルのうち異なるトランスに属するもの(LpE,LpB)が直列に接続されている。
この場合も、各インバータ回路の入力側に設けられる複数のキャパシタCi1,Ci2,Ci3の容量がばらついた場合においても、これらのキャパシタ両端間の電圧がバランスして、出力が安定化する。
図12は、スイッチング電源に適用されるPWM(パルス波変調)コントローラ100のブロック図である。
PWMコントローラ100は、入力信号SINに応じて出力信号SOUTを生成する。入力信号SINとしては、節点Aにおけるスイッチング電源の出力電圧やカレントトランスL1からの出力電圧を用いることができる。出力信号SOUTは、スイッチQ1,Q2,Q3,Q4のON/OFFの制御信号である。スイッチング電源の出力電圧が増加した場合には、出力信号SOUTに含まれるスイッチングパルス信号のデューティー比を小さくして電流を減少させ、減少した場合にはデューティー比を大きくして電流を増加させる。また、カレントトランスL1から出力される電圧が過度に低下又は増加した場合にも同様に制御する。
以上、説明したように、図1、図3及び図4に示したスイッチング電源10は、コア部をそれぞれ含む複数のトランス1,2と、トランス1,2の1次側コイルLp1〜Lp4を駆動する複数のインバータ回路INV1、INV2と、トランスの2次側コイルLs1〜Ls4に接続された複数のセンタータップ型整流回路(整流回路3a)と、複数のセンタータップ型整流回路の後段に接続され互いに併設された複数の平滑回路3bとを備えている。
また、同様に、図10及び図11に示したスイッチング電源10は、コア部をそれぞれ含む複数のトランス101,102,103と、トランス101,102,103の1次側コイルLpA〜LpFを駆動する複数のインバータ回路INV1〜INV3と、トランスの2次側コイルLsA〜LsFに接続された複数のセンタータップ型整流回路(整流回路3a)と、複数のセンタータップ型整流回路の後段に接続され互いに併設された複数の平滑回路3bとを備えている。
また、図1、図3及び図4に示したスイッチング電源10では、それぞれのセンタータップ型整流回路には、それぞれ少なくとも一対の2次側コイル(Ls1,Ls4)、(Ls2,Ls3)が接続されており、センタータップ型整流回路毎の2次側コイルは、互いに異なるトランス1,2のコア部(磁芯CR1,CR2)に配置されている。
また、同様に、図10及び図11に示したスイッチング電源10では、それぞれのセンタータップ型整流回路には、それぞれ少なくとも一対の2次側コイル(LsA,LsF)、(LsB,LsC)、(LsD,LsE)が接続されており、センタータップ型整流回路毎の2次側コイルは、互いに異なるトランス101,102,103のコア部(磁芯CR1,CR2,CR3)に配置されている。
上述のスイッチング電源10によれば、それぞれのセンタータップ型整流回路の後段の平滑回路3bの特性がそれぞれ異なっている場合においても、ある期間において、互いに異なるトランスに設けられた一方の2次側コイルの出力を、後段の併設された各平滑回路にそれぞれ入力し、次の期間において、互いに異なるトランスに設けられた他方の2次側コイルの出力を、後段の併設された各平滑回路にそれぞれ入力し、併せて出力することができるため、平滑回路とトランスの出力の特性が均等化され、出力が安定化する。
なお、各平滑回路は、少なくともチョークコイルを含むものであって、共通のキャパシタを具備するものも複数の平滑回路であるとする。
上述のように、図1、図3及び図4に示したスイッチング電源10のそれぞれの平滑回路は、それぞれのセンタータップ型整流回路の出力にそれぞれ接続された複数のチョークコイルLch1,Lch2を備え、チョークコイルLch1,Lch2の後段にはキャパシタCoutが接続されている。それぞれのセンタータップ型整流回路の出力は、センタータップ位置に接続されたチョークコイルLch1,Lch2に入力される。
また、同様に、図10及び図11に示したスイッチング電源10のそれぞれの平滑回路は、それぞれのセンタータップ型整流回路の出力にそれぞれ接続された複数のチョークコイルLchA、LchB,LchCを備え、チョークコイルLchA、LchB,LchCの後段にはキャパシタCoutが接続されている。それぞれのセンタータップ型整流回路の出力は、センタータップ位置に接続されたチョークコイルLchA、LchB,LchCに入力される。
これらのチョークコイルのインダクタンス等の特性が異なる場合においても、ある期間において、互いに異なるトランスに設けられた一方の2次側コイルの出力を、後段の各チョークコイルにそれぞれ入力し、次の期間において、互いに異なるトランスに設けられた他方の2次側コイルの出力を、後段の各チョークコイルにそれぞれ入力し、併せて出力することができるため、図1〜図4に示した各チョークコイルLch1,Lch2、或いは、図10及び図11に示したLchA、LchB,LchCのインダクタンス等の特性が均等化され、出力が安定化する。
なお、トランスの数が、4つの場合、これはトランスが2つのものを、2組備えているものと構成することも、前述のように4つ全体で2次側コイルが循環している構成とすることができ、例えば、5つの場合、これはトランスが2つのものと、3つのものをそれぞれ1組備えているものとすることも、5つ全体で循環している構成とすることもでき、様々な構成を採用することが可能であり、本発明の適用できるトランスの数は、前述した実施形態や上記に限定されるものではない。
また、図1及び図3に示した結線関係を有するスイッチング電源においては、それぞれのインバータ回路INV1,INV2にはそれぞれ少なくとも一対の1次側コイル(Lp1,Lp2)、(Lp3,Lp4)が直列接続されており、インバータ回路INV1,INV2毎の1次側コイル(Lp1,Lp2)、(Lp3,Lp4)は、互いに異なるトランス1,2のコア部に配置されている。
また、図10及び図11に示した結線関係を有するスイッチング電源においては、それぞれのインバータ回路INV1,INV2、INV3にはそれぞれ少なくとも一対の1次側コイル(LpA,LpD)、(LpC,LpF)、(LpE,LpB)が直列接続されており、インバータ回路INV1,INV2,INV3毎の1次側コイル(LpA,LpD)、(LpC,LpF)、(LpE,LpB)は、互いに異なるトランス101,102,103のコア部に配置されている。
この構成の場合、後段の平滑回路特性、換言すれば、チョークコイルの値が異なっている場合においては、1次側コイルの接続点の電位が変動し、これに応じて2次側コイルの誘起電圧が変動し、最終的に各チョークコイルに流れる電流が均等化することとなる。すなわち、チョークコイルのインダクタンスに製造誤差や組み立て誤差がある場合においても、各チョークコイルに流れる電流がバランスすることとなり、出力が安定化する。
なお、上述のスイッチング電源は、DC−DCコンバータであるが、入力信号が例えば、50Hz程度の低周波を全波整流して入力してもよく、またスイッチングパルス信号のデューティー比を適当に調整することにより、AC成分を出力することも可能である。
なお、各実施形態において、平滑回路のキャパシタCoutは、全体で1つとまとめているが、各チョークコイル毎に対応づけてそれぞれキャパシタCoutを設けても良い。
なお、上述の回路においては、直流電源Vin側からインバータ回路INV1,INV2を介して、負荷Zに電力電送を行ったが、これは逆に負荷Zを第2の電源に置換し、この第2の電源Zから直流電源Vin側へ電力伝送を行うことも可能である。すなわち、上述のスイッチング電源は、双方向の電力伝送を行うことが可能である。このような双方向の電力伝送技術は、ハイブリッド自動車や電気自動車における要素技術として有用である。
特に、双方向の電力伝送を行うことが可能なスイッチング電源は、2系統の二次電池を備えた電子機器において、一方の系統の二次電池において、充電の必要性が生じた場合に、他方の系統の二次電池から電力を供給する電力制御などに適用することが可能である。
図13は、逆方向電力伝送を説明するためのスイッチング電源の回路図である。
このスイッチング電源は、原則的には図1に示した第1実施形態のスイッチング電源と同一であり、図1に示した整流回路のダイオードDs1,Ds2,Ds3,Ds4をトランジスタQs1,Qs2,Qs3,Qs4にそれぞれ置換したものである。なお、ここでは、Zを負荷とした場合における、直流電源Vinから負荷Zへの電力伝送を順方向電力伝送とし、負荷Zを第2の電源に置換した場合における、第2の電源Zから直流電源Vinへの電力伝送を逆方向電力伝送というものとする。順方向電力伝送では、キャパシタCi1からキャパシタCoutへ電力が伝送され、逆方向電力伝送では、キャパシタCoutからキャパシタCi1へ電力が伝送される。
トランジスタQs1,Qs2,Qs3,Qs4は、電界効果トランジスタ(FET)からなるが、これらは絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)から構成することもできる。
順方向電力伝送の場合、トランジスタQs1,Qs2,Qs3,Qs4を通常のFETから構成する場合には、これらがダイオードと等価な機能を奏するように、図1に示したダイオードDs1,Ds2,Ds3,Ds4に順方向電流が流れる期間のみ、それぞれのトランジスタQs1,Qs2,Qs3,Qs4のゲート電圧を閾値以上に増加させればよい。なお、このようなMOSFET等を用いた同期整流はダイオード整流よりも損失が小さいという利点がある。或いは、トランジスタQs1,Qs2,Qs3,Qs4を通常のFETから構成する場合において、導電型の異なるソース領域と半導体基板からなるPN接合を、ダイオードDs1、Ds2,Ds3,Ds4と等価な機能を奏するものとして利用することもできる。なお、トランジスタQs1,Qs2,Qs3,Qs4をIGBTから構成する場合には、それぞれのバイポーラトランジスタのエミッタにアノードが、コレクタにカソードとなるように並列接続されたダイオードを利用して、トランジスタQs1,Qs2,Qs3,Qs4のそれぞれに対して並列接続されたダイオードを、上述のダイオードDs1,Ds2,Ds3,Ds4として機能させることができる。
順方向電力伝送におけるその他の作用は、上述の実施形態のものと同一である。
一方、逆方向電力伝送の場合には、トランジスタQs1,Qs2,Qs3,Qs4をスイッチング素子として機能させる。電力伝送に関しては、1次側コイルと2次側コイルの機能が入れ替わり、整流回路とスイッチング回路の機能が入れ替われることになる。
図14は、逆方向電力伝送を説明するためのタイミングチャートである。
Zを第2の電源とした場合、トランジスタQs1とQs3はスイッチングのタイミングが同期しており、これらのスイッチングに応じて、各トランジスタQs1,Qs3に、電流IQs1,IQs3がそれぞれ流れる。また、トランジスタQs4とQs2はスイッチングのタイミングが同期しており、これらのスイッチングに応じて、各トランジスタQs4,Qs2に、電流IQs4,IQs2がそれぞれ流れる。
時刻t1〜t2の間、各トランジスタにはQs1,Qs2,Qs3,Qs4はONしており、これらのトランジスタには電流が流れようとし、チョークコイルLch1、Lch2には電流ILch1、ILch2が増加し始める。
時刻2〜t3の間では、トランジスタQs4,Qs2がOFFし、これらに流れる電流IQs4,IQs2が減少するが(時刻t2)、トータルの電流量の変動は抑制されようとするため、トランジスタQs1,Qs3を流れる電流IQs1,IQs3は増加し(時刻t2)、その後、チョークコイルLch1、Lch2を流れる電流の減少に伴って、トランジスタQs1,Qs3に流れる電流IQs1,IQs3は徐々に減少する。
時刻t3〜t4の間では、トランジスタQs4,Qs2が再度ONし、これらに流れる電流IQs4,IQs2が増加する一方、トランジスタQs1,Qs3を流れる電流IQs1,IQs3は減少し(時刻t3)、その後、チョークコイルLch1、Lch2を流れる電流の増加に伴って、各トランジスタQs1,Qs3,Qs4,Qs2に流れる電流IQs1,IQs3,IQs4,IQs2は徐々に増加する。
時刻t4〜t5の間では、トランジスタQs1,Qs3がOFFし、これらに流れる電流IQs1,IQs3が減少するが(時刻t4)、トータルの電流量の変動は抑制されようとするため、トランジスタQs4,Qs2を流れる電流IQs4,IQs2は増加し(時刻t4)、その後、チョークコイルLch1、Lch2を流れる電流の減少に伴って、トランジスタQs4,Qs2に流れる電流IQs4,IQs2は徐々に減少する。
なお、時刻t5〜t6の間の回路動作は、時刻t1〜t2の間の動作と同一である。時刻t6〜t7の間の回路動作は、時刻t2〜t3の間の動作と同一である。時刻t7〜t8の間の回路動作は、時刻t3〜t4の間の動作と同一である。時刻t8〜t9の間の回路動作は、時刻t4〜t5の間の動作と同一である。
IQs1が流れている場合には、コイルLs1に電流が流れており、IQs3が流れている場合には、コイルLs3に電流が流れており、IQs4が流れている場合には、コイルLs4に電流が流れており、IQs2が流れている場合には、コイルLs2に電流が流れている。
すなわち、時刻t1〜t4の期間(T1)においては、コイルLs1,Ls3に電流が流れている一方、コイルLs4,Ls2にはあまり電流が流れていない。また。時刻t3〜t6の期間(T2)においては、コイルLs4,Ls2に電流が流れている一方、コイルLs1,Ls3にはあまり電流が流れていない。期間T1と期間T2とは一部分が重複しており、時刻t1〜t2、時刻t3〜t4、時刻t5〜t6においては、全てのコイルLs1〜Ls4において若干の電流が流れている。
なお、期間T1の中央の期間t2〜t3においてはコイルLs1、Ls3には電流が十分に流れ、コイルLs4,Ls2には電流が流れない。期間T1の両端の期間t1〜t2、t3〜t4においてはコイルLs1、Ls3には若干の電流が流れる。すなわち、期間T1においては、コイルLs1、Ls3に磁気的に結合したコイルLp1,Lp3に、電流IQs1、IQs3に同期した電流が流れようとする。換言すれば、時刻T1においては、コイルLp1,Lp3が電流源となる。コイルLp1の接続された端子X2と端子X1との間に電位差(V(X2−X1))が発生し、コイルLp3に接続された端子Y2と端子Y1との間に電位差(V(Y2−Y1))が発生する。端子X2から端子X1に充電電流が流れ、端子Y2から端子Y1に充電電流が流れようとする。インバータ回路INV1,INV2が整流回路として機能し、これらの充電電流を直流電源Vinに伝達すれば、直流電源Vinはこれらの充電電流によって充電されることとなる。
同様に、期間T2の中央の期間t4〜t5においてはコイルLs4、Ls2には電流が十分に流れ、コイルLs1,Ls3には電流が流れない。期間T2の両端の期間t3〜t4、t5〜t6においてはコイルLs4、Ls2には若干の電流が流れる。すなわち、期間T2においては、コイルLs4、Ls2に磁気的に結合したコイルLp4,Lp2に、電流IQs4、IQs2に同期した電流が流れようとする。換言すれば、時刻T2においては、コイルLp4,Lp2が電流源となる。コイルLp2の接続された端子X2と端子X1との間に電位差(V(X2−X1))が発生し、コイルLp4に接続された端子Y2と端子Y1との間に電位差(V(Y2−Y1))が発生する。端子X2から端子X1に充電電流が流れ、端子Y2から端子Y1に充電電流が流れようとする。インバータ回路INV1,INV2が整流回路として機能し、これらの充電電流を直流電源Vinに伝達すれば、直流電源Vinはこれらの充電電流によって充電されることとなる。
図2は、インバータ回路INV1,INV2の回路構成を示しているが、これらは整流回路として機能する。
電位差(V(X2−X1))又は(V(Y2−Y1))に同期して、時刻t2〜t3の間において、双方のインバータINV1,INV2のダイオードDBのアノード/カソード間に電流IDB(AK)が流れ、トランジスタIQ1のソース/ドレイン間に電流IQ1(SD)が流れ、インバータ回路が整流回路として機能する。
電位差(V(X2−X1))又は(V(Y2−Y1))に同期して、時刻t4〜t5の間において、双方のインバータINV1,INV2のダイオードDAのアノード/カソード間に電流IDA(AK)が流れ、トランジスタIQ1のソース/ドレイン間に電流IQ2(SD)が流れ、インバータ回路が整流回路として機能する。
図2におけるインバータINV1、INV2を構成していたスイッチQ1〜Q4を整流回路として機能させる場合、それぞれを構成するトランジスタの寄生ダイオード(ボディダイオード)を、整流素子として用いることもできる。逆方向電力伝送の場合、スイッチQ1〜Q4を通常のFETから構成する場合には、これらが整流用のダイオードと等価な機能を奏するように、スイッチングする、或いは、スイッチQ1〜Q4のFETに付属の寄生ダイオード(ボディダイオード)を整流ダイオードとして機能させる。
ダイオードDA及びDBが存在しない場合、もちろん、存在してもよいが、この場合において、逆方向電力伝送の場合にスイッチQ2,Q3に整流作用を奏させる場合、端子X1から共振用インダクタLRに向けて流れた電流は、スイッチQ3を介してキャパシタCi1若しくは直流電源Vinに至り、続いて、スイッチQ2を通って端子X2に帰還する。この端子X1から電流が流出する期間のみ、スイッチQ3とQ2のゲート電圧を閾値以上として、これらをONさせるか、これらの寄生ダイオード内を順方向に電流が流れるようにする。この期間、スイッチQ1とQ4はOFFである。なお、ダイオードDAが存在している場合には、これに端子X1から順方向電流が流れるので、スイッチQ3はOFFした状態でも構わない。
また、これとは逆に、逆方向電力伝送の場合にスイッチQ1,Q4に整流作用を奏させる場合、端子X2からスイッチQ1に向けて流れ出した電流は、キャパシタCi1若しくは直流電源Vinに至り、続いて、スイッチQ4を通って端子X1に帰還する。この端子X2から電流が流出する期間のみ、スイッチQ1とQ4のゲート電圧を閾値以上として、これらをONさせるか、これらの寄生ダイオード内を順方向に電流が流れるようにする。また、この期間、スイッチQ2とQ3はOFFである。なお、ダイオードDBが存在している場合には、これに順方向電流が流れて端子X1に至るので、スイッチQ4はOFFした状態でも構わない。
また、逆方向電力伝送の場合の整流作用時において、トランジスタQ1〜Q4をIGBTから構成する場合には、それぞれのバイポーラトランジスタのエミッタにアノードが、コレクタにカソードとなるように並列接続されたダイオードを利用して、トランジスタQ1〜Q4のそれぞれに対して並列接続されたダイオードを、上記と同様に電流が整流されて流れるように機能させることもできる。
以上のように、図13及び図14に示した例では、センタータップ型整流回路を構成する整流素子(ダイオード)はトランジスタQs1,Qs2,Qs3,Qs4からなり、トランジスタをスイッチング駆動することで整流回路を、同期整流動作を行わせるインバータ回路として機能させ、整流回路の後段に設けられる電源Zから当該整流回路を介して逆方向に電力伝送を行うこともできる。これにより、双方向電力伝送が可能となる。また、逆方向電力伝送の場合において、直流電源Vを負荷に置換することもできる。また、双方向電力伝送の構成は他の実施形態のスイッチング電源にも適用することができる。
1,2,101,102,103・・・トランス、3・・・整流平滑回路、10・・・コンバータ、100・・・コントローラ、CA,CB・・・キャパシタ、Ci1,Ci2,Ci3・・・キャパシタ、Cout・・・キャパシタ、CR1・・・磁芯、CR2・・・磁芯、CR3・・・磁芯、D・・・端子、DA,DB・・・ダイオード、Ds1・・・ダイオード、Ds2・・・ダイオード、Ds3・・・ダイオード、Ds4・・・ダイオード、DsA・・・ダイオード、DsB・・・ダイオード、DsC・・・ダイオード、DsD・・・ダイオード、DsE・・・ダイオード、DsF・・・ダイオード、F1,F2・・・入力端子、G1,G2・・・入力端子、J1,J2・・・入力端子、INV1,INV2,INV3・・・インバータ回路、L1・・・カレントトランス、Lch1,LCh2,LChA,LchB,LchC・・・チョークコイル、Lp1,Lp2,Lp3,Lp4・・・1次側コイル、LR・・・共振用インダクタ、Ls1,Ls2,Ls3,Ls4・・・2次側コイル、Q1,Q2,Q3,Q4・・・スイッチ。