[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

JP5320303B2 - 音響再生装置および映像音響再生システム - Google Patents

音響再生装置および映像音響再生システム Download PDF

Info

Publication number
JP5320303B2
JP5320303B2 JP2009553355A JP2009553355A JP5320303B2 JP 5320303 B2 JP5320303 B2 JP 5320303B2 JP 2009553355 A JP2009553355 A JP 2009553355A JP 2009553355 A JP2009553355 A JP 2009553355A JP 5320303 B2 JP5320303 B2 JP 5320303B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sound
peak
frequency characteristic
frequency
speaker
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2009553355A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2009101778A1 (ja
Inventor
祥司 田中
亮 小笠原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Corp
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Panasonic Corp
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Corp, Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Panasonic Corp
Priority to JP2009553355A priority Critical patent/JP5320303B2/ja
Publication of JPWO2009101778A1 publication Critical patent/JPWO2009101778A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5320303B2 publication Critical patent/JP5320303B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H03ELECTRONIC CIRCUITRY
    • H03GCONTROL OF AMPLIFICATION
    • H03G5/00Tone control or bandwidth control in amplifiers
    • HELECTRICITY
    • H04ELECTRIC COMMUNICATION TECHNIQUE
    • H04RLOUDSPEAKERS, MICROPHONES, GRAMOPHONE PICK-UPS OR LIKE ACOUSTIC ELECTROMECHANICAL TRANSDUCERS; DEAF-AID SETS; PUBLIC ADDRESS SYSTEMS
    • H04R5/00Stereophonic arrangements
    • H04R5/02Spatial or constructional arrangements of loudspeakers

Landscapes

  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Acoustics & Sound (AREA)
  • Signal Processing (AREA)
  • Circuit For Audible Band Transducer (AREA)
  • Stereophonic System (AREA)

Description

本発明は、テレビ受像器などの映像再生装置と一緒に用いられる音響再生装置、および音響再生装置と映像再生装置とを組み合わせた映像音響再生システム、特にステレオ方式やマルチチャンネル方式で音を再生する音響再生装置および映像音響再生システムに関するものである。
近年、鮮明な映像を再生する薄型大画面テレビ受像器と、優れた音質を有するスピーカと増幅器で構成された音響再生装置とを組み合わせて、家庭内でいわゆるホームシアターを楽しむユーザーが増えてきている。通常、テレビ受像器はテレビラックや、高さの低い台(以下、ローボードと略称)などの家具の上に置かれて用いられている。このため、テレビ画面の中央の高さは、視聴時における視聴者の目線の高さに近くなる。しかし、音響再生装置において音を発生させるスピーカは、テレビ画面の中央の位置より下方に配置される場合が多い。
テレビ受像器に内蔵される音響再生装置においても同様な配置状態を持つ装置が多い。例えば、テレビ受像器の横幅をできるだけ小さく抑えるために、スピーカをテレビ画面の下側に取り付ける場合である。
上記のようないずれの場合においても、音が映像とは異なった位置から聴こえてくるため、映像と音像が一致せず、視聴者は違和感を覚えるという問題があった。例えば、喋っている人の顔がテレビ画面の中央に映っているのに対して、その人の声がテレビ画面よりも下の方から聴こえてくるような場合などは、視聴者は著しい違和感を覚える。したがって、下方にあるスピーカからの再生音の音像を上昇させることが可能であれば、上記のような問題を解決することができる。
上記のような問題を解決するために、テレビ画面より下方に配置されたスピーカからの再生音の音像を上昇させることを目的とした音響再生装置が、日本の特開平5−219597号公報に提案されている。この従来の音響再生装置ついて図21、図22および図23を参照しつつ説明する。
図21は、特開平5−219597号に開示された従来の音響再生装置の構成を示すブロック図である。図21に示す従来の音響再生装置は、入力信号源44からの信号が位相補正回路48により位相が補正されて、ミキシング回路50の一方の端子に入力される。また、入力信号源44から7kHzを中心とする信号成分がフィルター回路43により抽出されて、ブースト回路47で増幅された後に、ランダム信号発生器49aからの信号によって作動するスイッチ回路49bにより制御された信号が、ミキシング回路50の他方の端子に入力される。ミキシング回路50においては、位相補正回路48により位相が補正された信号と、スイッチ回路49bにより制御された信号とをミキシングして、スピーカ41に出力する。スピーカ41においては、ミキシングされた信号を再生する。
なお、ブースト回路47などにおける位相推移が極めて少ない場合には、位相補正回路48を省略することができる。スイッチ回路49bは、ブーストされた信号に切り替えた瞬間に音像上昇感が最も強いため、絶えず信号を切り替えるために設けられている。
図22は、音源が聴取者の真正面に配置されたとき、ずなわち、スピーカの放射軸(中心軸)が水平であり、その中心軸上に聴取者の耳が配置されている時を正中面0°とした場合において、正中面上方30°(+30°)の位置と、正中面下方30°(−30°)の位置とにある音源から聴取者の耳に届く音に対する耳の感度を示す音圧周波数特性図である。正中面上方30°(+30°)とは、正中面において音源が水平線に対して鉛直上方へ30°の仰角を持つ線上に配置されている場合である。また、正中面下方30°(−30°)とは、正中面において音源が水平線に対して鉛直下方へ30°の伏角を持つ線上に配置されている場合である。
図23は、図22に示した正中面下方30°(−30°)の耳の感度を示す音圧周波数特性を0dBの軸で上下に反転した逆特性と、正中面上方30°の耳の感度を示す音圧周波数特性とを加算した音圧周波数特性図である。図21に示す音圧周波数特性においては、7kHzを中心とする周波数帯域に1つのピークが形成されている。
図21に示した従来の音響再生装置においては、図23に示した音圧周波数特性に基づいて、フィルター回路43により7kHzの周波数を中心とする周波数帯域を抽出し、抽出された7kHzの周波数を中心とする周波数帯域をブースト回路47によりブーストして、スピーカ41において再生している。なお、近年ではもっぱら、耳の感度を示す音圧周波数特性は頭部伝達関数と呼ばれているため、以下の説明においては頭部伝達関数の用語を用いる。
正中面下方30°(−30°)の位置に音源がある場合、正中面下方30°の頭部伝達関数を0dBの軸で上下に反転した逆特性の信号を形成して、その信号によりスピーカ41から再生することにより、正中面0°の方向(聴取者の真正面)から音が聴こえるように補正される。さらに、この逆特性に正中面上方30°(+30°)の方向の頭部伝達関数を重畳することにより、正中面上方30°(+30°)の方向から音が聴こえるように補正ができる。したがって、スピーカが聴取者の耳より下方にあっても、聴取者の耳より上方にスピーカがあるかのごとく聴こえるように、補正することが可能であると考えられていた。
また、『J.BLAUERT “Sound Localization in the Median Plane”, ACUSTICA vol.22, 205-213, 1969/70(以下、BLAUERTと略称)』には、8kHz付近の音は頭上から聴こえるような感覚を人間に与えるという実験結果が示されていた。このような文献から、7〜8kHzの周波数帯域の音を強調することにより、テレビ画面の中央よりも下方にスピーカが配置されている場合であっても、そのスピーカによる音像を上昇させて、音像と映像の位置を一致させることができるとした音響再生装置が提供されている。
特開平5−219597号公報
J.BLAUERT "Sound Localization in the Median Plane", ACUSTICA vol.22, 205-213, 1969/70
しかしながら、特開平5−219597号公報に示されたように7kHzを中心とする周波数帯域をブーストして再生する音響再生装置、或いはBLAUERTに基づいて7〜8kHzの周波数帯域の音を強調して再生する音響再生装置では、音像上昇効果が乏しく、またその効果が個人差により大きく異なるという問題点があった。さらに、必要な音像上昇効果を得ようとすると、7〜8kHzの音を大幅に強調しなければならず、再生音の音色が大きく変化して、音にクセのある不自然な音質になるという問題点があった。これら問題点については、後述する本発明の実施の形態1の説明においても詳しく説明する。
本発明は、上記のような従来の音響再生装置における問題点を解決するものであり、高い音像上昇効果が個人差により異なることなく得られて、音像と映像を一致させることができるばかりでなく、音にクセのない自然な音質が得られる音響再生装置および映像音響再生システムを提供することを目的とする。
本発明に係る第1の観点の音響再生装置は、映像再生装置の画面中央よりも下方から音を放射するスピーカと、前記スピーカを駆動する増幅器と、補正した周波数特性を有する信号を前記増幅器に出力する周波数特性補正部と、を備え、
前記周波数特性補正部は、聴取位置へ前記スピーカより放射される再生音の音圧周波数特性が第1のピークと第2のピークを有するように周波数特性を形成し、前記第1のピークの中心周波数を6kHz±15%の範囲内、前記第2のピークの中心周波数を13kHz±20%の範囲内とし、
前記スピーカから放射される再生音の音圧周波数特性は、中心周波数が8kHz±10%においてディップが形成された特性曲線を有している。このように構成された第1の観点の音響再生装置は、実際の人間の平均的な頭部伝達関数に合致した正中面方向の高精度の音響特性補正が可能となる。このため、第1の観点の音響再生装置は、高い音像上昇効果が個人差により異なることなく得られて、音像と映像が一致するばかりでなく、ピークのレベルを極端に高くする必要がなくなるために、音にクセの少ない自然な音質を得ることができる。また、このように構成された第1の観点の音響再生装置は、より一層、頭部伝達関数に合致するように正中面方向の高精度な音響特性の補正ができるため、音像と映像をより一層一致させることが可能となる。
本発明に係る第2の観点の音響再生装置は、前記第1の観点の音響再生装置における前記第1のピークのレベルを3dB以上12dB以下の範囲内とし、前記第2のピークのレベルを3dB以上25dB以下の範囲内としている。このように構成された第2の観点の音響再生装置は、音色の変化を小さくできるため、より一層、音にクセのない自然な音質を得ることができる。
本発明に係る第3の観点の音響再生装置は、前記第1の観点または前記第2の観点の音響再生装置における前記第1のピークまたは前記第2のピークが、前記スピーカ自体の音圧周波数特性を利用して構成されている。このように構成された第3の観点の音響再生装置は、周波数特性補正部の構成を簡単にできるため、音響再生装置のコストアップを抑えることが可能となる。
本発明に係る第4の観点の音響再生装置は、前記第1の観点または前記第2の観点の音響再生装置における前記ディップが、前記スピーカ自体の音圧周波数特性を利用して構成されている。このように構成された第4の観点の音響再生装置は、周波数特性補正部の構成を簡単にできるため、音響再生装置のコストアップを抑えることが可能となる。
本発明に係る第5の観点の音響再生装置は、前記第1の観点乃至前記第4の観点の音響再生装置における前記第1のピークまたは前記第2のピークのレベルまたはQ値が調整可能に構成されている。このように構成された第5の観点の音響再生装置は、音像上昇効果と音の自然さのバランスを自由に調整することができる。また第5の観点の音響再生装置は、スピーカの設置場所に応じて音像上昇効果を自由に調整することが可能となる。
本発明に係る第6の観点の音響再生装置は、前記第1の観点乃至前記第4の観点の音響再生装置における前記周波数補正部が、聴取位置へ前記スピーカより放射される再生音の音圧周波数特性における高域レベルを所定レベルだけブーストするよう構成されている。このように構成された第6の観点の音響再生装置は、音像上昇効果と音の自然さのバランスを自由に調整することができるとともに、特定のスピーカ、例えばスピーカの前面がパンチングネットで覆われている場合や、横長楕円形のスピーカの場合において生じる高域の減衰現象を解消することが可能となる。
本発明に係る第7の観点の映像音響再生システムは、前記の第1の観点乃至第6の観点の音響再生装置と、映像再生可能な映像再生装置とを組み合わせて形成されている。このように構成された第7の観点の映像音響再生装置は、個人差により異なることがなく、音像と映像が一致した、音にクセの少ない自然な音質により映像を楽しむことができる。
本発明によれば、高い音像上昇効果が個人差により異なることなく得られて、音像と映像が一致するばかりでなく、音にクセのない自然な音質が得られる音響再生装置および映像音響再生システムを提供することができる。
本発明に係る実施の形態1の音響再生装置を含む映像音響再生システムと視聴者との関係を示す図 本発明に係る実施の形態1の音響再生装置の構成を示す正面図 本発明に係る実施の形態1の音響再生装置の構成を示すブロック図 本発明に係る実施の形態1の音響再生装置のセンターチャンネルの周波数特性補正部の周波数特性図 本発明に係る実施の形態1の音響再生装置のセンターチャンネルのスピーカの放射軸上から正中面上方20°(+20°)の音圧周波数特性図 正中面0°方向の音源に対する頭部伝達関数の周波数特性図 正中面下方約20°(−22.5°)の方向の音源に対する頭部伝達関数の周波数特性図 正中面0°方向の音源に対する頭部伝達関数から、正中面下方約20°(−22.5°)の方向の音源に対する頭部伝達関数を減算した周波数特性図 本発明に係る実施の形態1の音響再生装置の効果を示す視聴実験結果のグラフ 本発明に係る実施の形態1の音響再生装置の効果を示す視聴実験結果のグラフ 本発明に係る実施の形態1の音響再生装置の効果を示す視聴実験結果のグラフ 本発明に係る実施の形態1の音響再生装置の効果を示す視聴実験結果のグラフ 本発明に係る実施の形態1の音響再生装置の効果を示す視聴実験結果のグラフ 本発明に係る実施の形態2の音響再生装置を含む映像音響再生システムの構成を示す正面図 本発明に係る実施の形態2の音響再生装置の構成を示すブロック図 本発明に係る実施の形態3の音響再生装置を含む映像音響再生システムの構成を示す正面図 本発明に係る実施の形態3の音響再生装置の構成を示すブロック図 本発明に係る実施の形態3の音響再生装置のフロントチャンネルのスピーカの中心軸上から垂直上方10°であり、且つ水平30°の位置で聴取した再生音の音圧周波数特性図 本発明に係る実施の形態4の音響再生装置を含む映像音響再生システムの構成を示す正面図 本発明に係る実施の形態4の音響再生装置の構成を示すブロック図 従来の音響再生装置の構成を示すブロック図 従来の音響再生装置における、正中面上方30°(+30°)および正中面下方30°(−30°)の音源から聴取者の耳に届く音に対する耳の感度の音圧周波数特性図 従来の音響再生装置における、正中面下方30°(−30°)の耳の感度特性の逆特性、および正中面上方30°(+30°)の耳の感度特性とを加算した音圧周波数特性図
以下に本発明の音響再生装置を実施するための最良の形態について、添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施の形態においては、本発明の音響再生装置を映像再生装置である薄型大画面のテレビ受像器と組み合わせて映像音響再生システムとして用いた場合について説明する。ただし、以下の実施の形態の構成は例示であって本発明をこれらの実施の形態の構成に限定するものではなく、同様の技術的思想に基づくものは本発明に含まれるものである。
(実施の形態1)
本発明に係る実施の形態1の音響再生装置の構成について、図1から図5を参照しつつ説明する。図1は、実施の形態1の音響再生装置を含む映像音響再生システムの構成を示す側面図であり、実施の形態1の音響再生装置が映像再生装置である薄型大画面のテレビ受像器と組み合わせて用いられている場合の視聴者との位置関係を示している。図2は実施の形態1の音響再生装置が映像再生装置と組み合わせた映像音響再生システムの正面図であり、図3は実施の形態1の音響再生装置の内部構成を示すブロック図である。図4および図5は実施の形態1の音響再生装置における周波数特性図の例示である。
図1に示すように、実施の形態1の音響再生装置が映像再生装置と組み合わせた映像音響再生システムにおいては、ラック1dの上に、いわゆるプラズマテレビや液晶テレビなどの薄型大画面を有するテレビ受像器である映像再生装置5が置かれている。映像再生装置5が置かれているラック1dの内部には3つのスピーカ1a、1b、1cが配置されている。したがって、各スピーカ1a、1b、1cは、映像再生装置5の画面5aの下側に配置されて、画面5aより下方から音を放射する構成である。
図2に示すように、ラック1d内に設けられた3つのスピーカは、ラック1dの左側に配置されたフロントLチャンネルのスピーカ1a、ラック1dの中央に配置されたセンターチャンネルのスピーカ1b、そしてラック1dの右側に配置されたフロントRチャンネルのスピーカ1cである。このため、フロントLチャンネルのスピーカ1aは画面5aの左下側から音を放射し、センターチャンネルのスピーカ1bは画面5aの中央下側から音を放射し、そしてフロントRチャンネルのスピーカ1cは画面5aの右下側から音を放射する構造である。各スピーカ1a、1b、1cはいずれも同じ口径6.5cmのフルレンジユニットである。
図3の音響再生装置のブロック図に示されているように、それぞれのスピーカ1a、1b、1cは、フロントLチャンネルの増幅器2a、センターチャンネルの増幅器2b、およびフロントRチャンネルの増幅器2cによりそれぞれ駆動される。実施の形態1の音響再生装置においては、各増幅器2a、2b、2cの出力はいずれも50Wである。
各増幅器2a、2b、2cの前段にはそれぞれフロントLチャンネルの周波数特性補正部3a、センターチャンネルの周波数特性補正部3b、フロントRチャンネルの周波数特性補正部3cがそれぞれ接続されている。これらの周波数特性補正部3a、3b、3cはそれぞれDSP(Digital Signal Processor)を用いたデジタルフィルター回路である。ソースから入力された信号は、信号出力器4において各チャンネル用の信号にデコードされて、各周波数特性補正部3a、3b、3cに入力される。各周波数特性補正部3a、3b、3cにおいては、後述するように周波数特性を補正、変更して各スピーカ1a、1b、1cに所望の信号を出力する。実施の形態1の音響再生装置における各周波数特性補正部3a、3b、3cは、周波数特性を補正、変更するイコライザで構成されている。
図1に示した実施の形態1の音響再生装置を組み合わせた映像音響再生システムにおいて、床面から各スピーカ1a、1b、1cの放射軸(中心軸)までの高さH1は、約37cmである。ラック1dの高さは約45cmであり、チェストなどの家具に比べてやや低めである。高さH2は、各スピーカ1a、1b、1cの中心軸から映像再生装置5の画面5aの中心までの高さである。したがって、床面から映像再生装置5の画面5aの中心までの高さは、H1+H2である。
高さH3は、床面から視聴者6の目と耳までの高さである。視聴者6において、一般的に床面から目の高さと耳までの高さは殆ど同じである。D1は、各スピーカ1a、1b、1cのエッジから視聴者6の耳までの水平距離であり、D2は映像再生装置5の画面5aから視聴者6の目までの水平距離、即ち視聴距離である。スピーカ1a、1b、1cまでの距離D1と、画面5aまでの距離D2は、実質的に同等の距離である。
図1において、α1は、視聴者6の耳の位置から各スピーカ1a、1b、1cの中心位置までを結ぶ線と、視聴者6の目(または耳)の位置から映像再生装置5の画面5aの中心位置とを結ぶ線(目線)との間の伏角である。α2は、視聴者6の耳の位置から各スピーカ1a、1b、1cの中心位置までを結ぶ線と、視聴者6の耳の位置の水平線との間の伏角である。
床面から映像再生装置5の画面5aの中心までの高さH1+H2は、床面から視聴者6の目と耳までの高さH3と、近い値である。各家庭において、ラックやローボードの上にテレビ受像器を置いて座って視聴する場合、画面5aの中心が目の高さ近くになるように調整することが通常である。したがって、2つの伏角α1と伏角α2はほぼ同じ値となる。
Figure 0005320303
表1は、図1に示した実施の形態1の音響再生装置を組み合わせた映像音響再生システムにおける映像再生装置の各種画面サイズと視聴距離D2[mm]を変化させたときの伏角α1[deg]を示す一覧表である。表1において、太い斜字で示した伏角α1は最大値であり、各種視聴距離D2を各種画面サイズにおける視聴最少距離とした場合である。この各種視聴距離D2とは、高品位テレビジョンの高精細度画像を見ることができる最少距離である。この最小距離は、一般的に画面サイズの縦寸法の2倍の距離とされている。
表1から分かるように、伏角αは最大でも約25°であり、一般家庭での通常のテレビ受像器の視聴距離の1.5m〜3m程度の距離においては、伏角αは15°から20°の範囲の値になる。
したがって、実施の形態1の音響再生装置においては、上記の実際の一般家庭での使用実態に合わせて、テレビ画面より下方に配置された各スピーカ1a、1b、1cの音像を上昇させる角度を20°程度を目標とした。即ち、伏角α1は伏角α2とほぼ同じ角度であるので、実施の形態1の音響再生装置においては、正中面下方の伏角20°(−20°)の音源の音像を視聴者6の真正面の位置に上昇させるよう構成した。以下、音源の音像を上昇させる方法について詳細に説明する。
図4は実施の形態1の音響再生装置におけるセンターチャンネルの周波数特性補正部3bの周波数特性図である。図5は実施の形態1の音響再生装置におけるセンターチャンネルのスピーカ1bの放射軸(中心軸)から垂直上方20°の再生音における音圧周波数特性図である。図5において、実線Aは実施の形態1の音響再生装置における周波数特性補正部3bが機能している場合を示し、破線Bは実施の形態1の音響再生装置において周波数特性補正部3bが設けられていない場合を示している。
図4に示すように、センターチャンネルの周波数特性補正部3bの周波数特性曲線は、第1のピークP1と第2のピークP2の2つのピークを有している。第1のピークP1の中心周波数は6kHz、レベルは6dB、Q値は7であった。また、第2のピークP2の中心周波数は13kHz、レベルは10dB、Q値は4であった。ここで、Q値とは一般的に下記式(1)で定義される。

Q=ω0/(ω2−ω1) (1)

式(1)において、ω0はピークにおける周波数、ω1はピークの左側において振動エネルギー(レベル)がピークの半値となる周波数、ω2はピークの右側において振動エネルギー(レベル)がピークの半値となる周波数である。Q値が大きければピークが鋭く波形幅が狭いことを示し、反対にQ値が小さければピークが緩やかで波形幅が広いことを示す。
フロントLチャンネルの周波数特性補正部3aの周波数特性、およびフロントRチャンネルの周波数特性補正部3cの周波数特性において、第1のピークP1の周波数と第2のピークP2の周波数とQ値は、センターチャンネルの周波数特性補正部3bの周波数特性と同じである。しかし、周波数特性補正部3aおよび周波数特性補正部3cにおいては、第1のピークP1のレベルを4dB、第2のピークP2のレベルを7dBとしており、センターチャンネルの周波数特性補正部3bよりもレベルを少し小さくしている。
図5において、実線Aがセンターチャンネルのスピーカ1bの中心軸上から垂直上方20°の音圧周波数特性を示す実線A、および周波数特性補正部を設けない場合の音圧周波数特性を示す破線Bから分かるように、実線Aの音圧周波数特性曲線は、6kHzで約6dBのピークと、13kHzで約8dBのピークを有している。また、発明者の実験によれば、フロントLチャンネルのスピーカ1aの中心軸から垂直上方20°の音圧周波数特性曲線、およびRチャンネルのスピーカ1cの中心軸から垂直上方20°の音圧周波数特性曲線は、それぞれ6kHzで約4dBのピークと、13kHzで約5dBのピークを示していた。
次に、上記のように構成した実施の形態1の音響再生装置の原理、作用、効果について、添付の図6乃至図13を参照しつつ詳細に説明をする。併せて、従来の音響再生装置における問題点についても詳しく説明する。
図6は聴取者が正中面0°の方向(音源の真正面方向)にいる場合の音源に対する聴取者の頭部伝達関数の周波数特性図である。図7は正中面下方約20°(−22.5°)の方向の音源に対する聴取者の頭部伝達関数の周波数特性図である。図6および図7に示す周波数特性曲線は、近年の頭部伝達関数の研究結果にもとづくものであり、数十人に及ぶ被験者の詳細な頭部伝達関数の周波数特性データ(Copyright(c)2001 The Regents of the University of California. Al l Rights Reserved)の中から、代表平均的な4人の頭部伝達関数の周波数特性を重ね描きして図示したものである。
発明者は、図6および図7に示す周波数特性曲線に基づいて図8に示す周波数特性曲線を算出し、刮目すべき特性を見いだした。図8は、図6に示す正中面0°の方向の音源に対する頭部伝達関数から、図7に示す正中面下方約20°(−22.5°)方向の音源に対する頭部伝達関数を減算した周波数特性図である。即ち、正中面下方約20°(−22.5°)方向の音源に対する頭部伝達関数に、図8に示す周波数特性を加算することにより、音源の音像が約20°(22.5°)上昇することが理解できる。
図8の周波数特性図に示されているように、各周波数特性において周波数6kHz付近と周波数13kHz付近のレベルが特に高くなっている。この結果に基づいて、本発明に係る実施の形態1の音響再生装置においては、各スピーカ1a、1b、1cの中心軸から垂直上方20°の位置にいる視聴者6に対して、視聴者の耳にテレビ画面の位置にある音像から届くように、各スピーカ1a、1b、1cの再生音における音圧周波数特性において、中心周波数6kHzに第1のピークを設け、中心周波数13kHzに第2のピークを設けている。
上記のように、実施の形態1の音響再生装置は、各スピーカ1a、1b、1cの再生音の音圧周波数特性に2つのピークが形成されるよう構成されている。実施の形態1の音響再生装置においては、テレビ画面の下方にある各スピーカ1a、1b、1cからの再生音の音圧周波数特性が、視聴者6の真正面にあるテレビ画面の方向から視聴者6の耳に届くときの再生音の音圧周波数特性に近づくように補正されている。このため、実施の形態1の音響再生装置を用いた映像音響再生システムにおいては、各スピーカ1a、1b、1cからの再生音が視聴者6の真正面方向、即ちテレビ画面から到来しているように視聴者6に感じさせることができる。
前述の背景技術の欄で説明したように、従来の音響再生装置においては、7〜8kHzの範囲の1つ周波数の音のみをブーストして再生し、音像を上昇させるよう試みられていた。しかし、このような従来の音響再生装置では、音像上昇効果が乏しく、またその効果が個人差により大きく異なるという問題点を有していた。この問題点は、前述のように音響再生装置からの再生音の周波数特性において2つの特定の周波数帯域にピークを設けることにより解決されることが発明者の実験などから知見された。この知見に基づいて、本発明に係る実施の形態1の音響再生装置においては、音響再生装置からの再生音の周波数特性が特定の周波数で2つのピークを有するように構成して、音像位置を確実に上昇させている。
前述のように、従来の音響再生装置においては、古い頭部伝達関数のデータなどに基づき、補正のための中心周波数を7〜8kHzとしていた。このため、実際の平均的な人間の頭部伝達関数から補正周波数がずれていたことも、音像上昇効果が小さく、また個人差による違いが大きかった要因の1つと考えられる。本発明に係る実施の形態1の音響再生装置においては、正中面の頭部伝達関数のデータとして近年の精度の高いデータを用いて実験を行いその実験結果に基づいて構成されているため、音像の位置を確実に上昇させることができる信頼性がさらに高い装置となっている。
本発明に係る実施の形態1の音響再生装置においては、頭部伝達関数の目標補正角度、即ち伏角αを従来の音響再生装置のように30°〜45°のようにむやみに大きくせず、例えば約20°(22.5°)のように、使用実態と合わせた比較的小さな角度としている。
本発明に係る実施の形態1の音響再生装置においては、従来の音響再生装置と違い、スピーカからの再生音の周波数特性において2つのピークが形成されている。このように再生音に2つのピークを形成することにより、高い音像上昇効果を得ながら、音にクセのない自然な音質を実現することができることが確認できた。この効果について、図9および図10を参照しつつ説明する。図9および図10は、本発明に係る実施の形態1の音響再生装置の効果を確認するために行った、視聴者に対する視聴実験結果を示すグラフである。
この視聴実験は、図1および図2に示したように、実施の形態1の音響再生装置の上に薄型大画面テレビ受像器である映像再生装置5を配置し、その画面5aの真正面に被験者である視聴者6が座った状態で行った。視聴実験において、被験者は、ニュース、映画などを、映像と共にセリフや歌声を一緒に視聴しつつ、音響再生装置における周波数特性補正部の有る場合、および周波数特性補正部の無い場合を切り替えて、音像上昇効果の有無と音のクセが気になるか否かを評価した。
図9は、視聴実験において、音響再生装置の再生音の音圧周波数特性における第2のピークP2の中心周波数が13kHzであり、レベルが8dBとして固定し、第1のピークP1のレベルを変更して、第1のピークP1の好ましいレベルを抽出した。
図10は、視聴実験において、音響再生装置の再生音の音圧周波数特性において第2のピークP2がなく、第1のピークP1を変更して、第1のピークP1の好ましいレベルを抽出した。この視聴実験における被験者は、正常な聴力をもつ20歳台から50歳台の男女、計20名であり、特定の年齢層に偏ることなく分布している。
図9および図10から明らかなように、再生音の音圧周波数特性における第1のピークP1のレベルを高くするほど音像上昇効果は大きくなるが、音にクセがあり不自然であると答えた人も多くなるという実験結果が得られた。
また、図10から理解できるように、第2のピークP2がない場合には、第1のピークP1のレベルを12dBにすれば大部分の人、即ち90%以上の人が音像上昇効果を感じると答えたが、半数近くの人が音にクセがあり気になると答えた。逆に、第1のピークP1のピークレベルを5dBとすれば、音にクセがあると答えた人はいなくなるが、音像上昇効果があると答えた人は半分であった。
一方、図9に示すように、第1のピークP1と共に第2のピークP2を再生音の周波数特性に形成すると、第1のピークP1のレベルが5dBであっても大部分の人、即ち80%以上の人が音像上昇効果があると答えており、且つ音にクセがあると答えた人もいなかった。そして、第1のピークP1のレベルを6dBとすると、即ち実施の形態1の音響再生装置において設定したピークレベルに設定すると、全ての人が、音像上昇効果があると答えており、音にクセがあると答えた人は殆どいなかった。
以上のように、音響再生装置の再生音の周波数特性において第1のピークP1と共に第2のピークP2を形成することにより、音のクセを大きくすることなく、個人差により異なることがない高い音像上昇効果を持つことができ、音像上昇効果を大幅に改善することができる。したがって、上記のように再生音の周波数特性において2つのピークを形成することにより、音像と映像が一致するばかりでなく、音にクセのない自然な音質が得られることが分かった。
第1のピークP1の他に第2のピークP2を形成することにより、上記の改善ができる一つの理由は、第1のピークP1だけの場合よりも、実際の人間の平均的な頭部伝達関数に対応して音像を真正面方向となるように、音響特性に対して高精度な補正ができるためである。
また、第1のピークP1の他に第2のピークP2を形成することにより、上記の改善ができるもう一つの大きな理由は、第2のピークP2を中心周波数が13kHz付近としている点である。このように非常に高い周波数の音は、それ自体の音像定位が曖昧であるため、第2のピークP2の高音を強調することにより、スピーカの音像位置検知を曖昧にするという作用がある。例えば、ブラウン管テレビ受像器の水平発振用トランスが発する15.7kHzのキーンという非常に高い音は、どこで鳴っているのかが分かりにくいことがよく知られている。第2のピークP2の周波数は、13kHz付近であり、人間の耳の感度が低下する高い周波数であるため、第2のピークP2のピークレベルを高くしても音のクセを感じにくいという特性がある。
人間においては、加齢するほど高音域の可聴限界周波数が低下することが知られている。例えば、20歳台では可聴上限周波数は20kHz付近であるが、50歳台では20kHzの高音は殆ど聴こえなくなり、容易に聴き取れるのは16kHz前後までである。したがって、第2のピークP2の周波数である13kHzの高音は、中高年の人にとっては可聴上限周波数に近く、相当にピークレベルを高くしても音のクセを感じない領域である。
前述のように、従来の音響再生装置においては、第1のピークP1の周波数が実際の人間の平均的な頭部伝達関数の周波数からずれていたため、音像上昇効果に個人差により大きく異なるという問題が発生していた。また、従来の音響再生装置は、1つのピークしか備えていないため、ある程度の音像上昇効果を得るためには一つしかないピークのレベルを大幅に高くせざるを得なかった。その結果、従来の音響再生装置においては、音のクセが非常に大きくなり、音像上昇とクセのない自然な音質を両立させることができなかった。
例えば、従来の音響再生装置において、再生音の音圧周波数特性の第1のピークP1のレベルを図8に示したように約20dBとして実際に視聴実験を行ったところ、音のクセが大きすぎて実用にならなかった。
実施の形態1の音響再生装置においては、再生音の音圧周波数特性の第1のピークP1と第2のピークP2のレベルについて前述の視聴実験を行って、実用になる好ましい周波数範囲を調べた。その結果、第1のピークP1のレベルについては図9に示すように、半数以上の人が効果を感じるには3dB以上のレベルが必要であり、また音にクセを感じ不自然に思う人を半数以下にするためには12dB以下のレベルにすることが必要であった。
再生音の音圧周波数特性における第2のピークP2のレベルについては、3dB以上に設定しなければ第2のピークP2を設けることによる音像上昇効果の改善が見られなかった。また、ピークレベルが25dBを越えると、音にクセを感じ不自然に思う人が多くなり、好ましくなかった。この第2のピークP2に関するレベルについて、図11を参照しつつ説明する。
図11は実施の形態1の音響再生装置の効果を示す視聴実験の結果を示すグラフである。この視聴実験においては、第1のピークP1の中心周波数を6kHz、レベルを6dB、Q値を7とした。また、第2のピークP2の中心周波数を13kHz、Q値を4として、そのピークレベルを変化させながら、前述の図9および図10の視聴実験と同様に被験者に対する実験を行った。
図11のグラフから明らかなように、第2のピークP2のレベルが2dB以下では、図10に示したグラフにおける第1のピークP1のレベルが6dBの場合と同様の音像上昇効果しか得られておらず、第2のピークP2を形成したことによる効果の向上が認められなかった。第2のピークP2のレベルが3dBの場合は、80%の人が音像上昇効果があると答えており、音像上昇効果の向上が認められた。
一方、第2のピークP2のレベルが30dB以上の場合には、被験者の全員が音像上昇効果を認めたが、殆どの被験者が音にクセがあると感じていた。第2のピークP2のレベルが8dB以上で25dB以下においては、音にクセがあると答えた人が半数以下であった。なお、この視聴実験においては、第2のピークP2のレベルが6dBのときには、被験者の全員が音像上昇効果を認め、音にクセがあると感じた人はいなかった。
本発明に係る実施の形態1の音響再生装置において、フロントLチャンネルおよびフロントRチャンネルの各スピーカ1a、1cの中心軸から垂直上方20°の音圧周波数特性は、第1のピークP1のレベルを約4dB、第2のピークP2のレベルを約6dBとし、センターチャンネルのスピーカ1bからの再生音における第1のピークP1および第2のピークP2の各ピークレベルよりも少し小さく設定している。これは、フロントチャンネルの各スピーカ1a、1cからの再生音にはセリフやボーカルよりも周波数範囲の広い楽器や効果音の信号が多く含まれるためであり、音のクセが分かりやすい音声が含まれる傾向にあることを考慮したためである。
一方、センターチャンルのスピーカ1bからの再生音には、セリフやボーカルが多く含まれる傾向にある。これらの音は楽器の音や効果音に比べて、声のホルマント周波数スペクトルの高域レベルが低いことから、特に第2のピークP2のレベルを高くしても、聴きづらい音になりにくく、視聴者は違和感なく聞くことができる。
スピーカの再生音の音圧周波数特性における第1のピークP1の周波数については、図8から分かるように、頭部伝達関数の個人差から5kHz〜7kHzの範囲がある。実際に実験を行った結果、第1のピークP1の中心周波数をこの範囲に設定することにより、高い音像上昇効果が得られることが分かった。以下、この音像上昇効果について図12を参照しつつ説明する。
図12は、本発明に係る実施の形態1の音響再生装置の効果を確認するために行った、視聴者に対する視聴実験結果を示すグラフである。この視聴実験は、第1のピークP1の中心周波数を変化させながら、図9および図10に示した視聴実験と同様の視聴実験を行った。即ち、第1のピークP1のレベルを6dB、Q値を7とし、第2のピークP2の中心周波数を13kHz、レベルを10dB、Q値を4として、第1のピークP1の中心周波数を変化させながら前述の20名の被験者に音像上昇効果を評価させたものである。
図12に示すグラフから明らかなように、第1のピークP1の中心周波数が5.5kHz、6.0kHz、6.5kHzの場合に音像が上昇したと回答した人が特に多かった。第1のピークP1の中心周波数が5.0kHzの場合と7.0kHzの場合には、音像上昇効果を感じた人が半数程度であり、個人差があった。第1のピークP1の中心周波数が4.5kHz、4.0kHzの場合は音像上昇効果を感じた人が大幅に減り、画面の下方のスピーカから音が出ていることがかえって分かると答えた人が多かった。以上のことから、第1のピークP1の中心周波数は、少なくとも5kHzから7kHzの範囲内に設定すれば音像上昇効果が得られ、特に好ましくは5.5kHzから6.5kHzの範囲内に設定すれば優れた音像上昇効果が得られる。即ち、第1のピークP1の中心周波数は、6kHz±15%を目安に設定すればよい。
スピーカの再生音の音圧周波数特性における第2のピークP2の周波数については、図8から分かるように、頭部伝達関数の個人差から10kHz〜16kHzの範囲がある。実際に実験を行った結果、第2のピークP2の中心周波数をこの範囲に設定することにより、高い音像上昇効果が得られることが分かった。以下、この音像上昇効果について図13を参照しつつ説明する。
図13は、本発明に係る実施の形態1の音響再生装置の効果を確認するために行った、視聴者に対する視聴実験結果を示すグラフである。この視聴実験は、第2のピークP2の中心周波数を変化させながら、図9および図10に示した視聴実験と同様の視聴実験を行った。即ち、第1のピークP1の中心周波数を6kHz、レベルを6dB、Q値を7とし、第2のピークP2のレベルを10dB、Q値を4として、第2のピークP2の中心周波数を変化させながら前述の20名の被験者に音像上昇効果を評価させたものである。
図13に示すグラフから明らかなように、第2のピークP2の中心周波数が12kHz、13kHz、14kHzの場合に音像が上昇したと回答した人が特に多かった。図13のグラフを、図10のグラフにおける第1のピークP1のレベルが6dBの場合と比較すると、第2のピークP2の中心周波数が16kHz以上の場合には、第2のピークP2を設けても音像上昇効果があると答えた人が約75%であり、向上していないことが分かる。これは、周波数が高すぎて聞こえにくくなり、第2のピークP2がない場合と差が無くなるためと考えられる。しかし、第2のピークP2の中心周波数が15kHzの場合には、音像上昇効果が有ると答えた人が若干増えており、向上していると考えられる。
また、図13のグラフを図10のグラフにおける第1のピークP1のレベルが6dBの場合と比較すると、第2のピークP2の中心周波数が10kHzの場合には、音像上昇効果が有ると答えた人が70%であり、第2のピークP2を設けることが逆効果となっている。さらに、第2のピークP2の中心周波数が9kHzの場合は、音像上昇効果があると答えた人が半数以下(40%)に減っている。そして、第2のピークP2の中心周波数が9kHzの場合には、画面の下方のスピーカから音が出ていることがかえって分かってしまうばかりでなく、音にクセがあると答えた人が若干名いた。しかし、第2のピークP2の中心周波数が11kHzの場合には、音像上昇効果があると答えた人が80%近くおり、音像上昇効果が向上していると考えられる。
以上のことから、第2のピークP2の中心周波数は、少なくとも10kHzから16kHzまでの範囲内に設定すれば第2のピークP2を設けることによる音像上昇効果の向上が見られ、特に好ましくは、11kHzから15kHzまでの範囲内に設定すれば優れた音像効果が得られる。即ち、第2のピークP2の中心周波数は、13kHz±20%を目安に設定すればよい。
なお、図8に示す音像上昇特性曲線である周波数特性をさらに検討すると、第1のピークP1と第2のピークP2の他に、8kHz付近の周波数において顕著なディップ(凹み)があることが見られる。そこで、発明者は、各スピーカ1a、1b、1cの中心軸から垂直上方20°の位置にある視聴者6の耳に届く再生音の音圧周波数特性に、中心周波数が8kHz、レベルが−5dB、Q値が7のディップを形成して視聴実験を行った。この視聴実験を行ったところ、更なる音像上昇効果があることが知見された。音響再生装置の再生音の音圧周波数特性において、第1のピークP1と第2のピークP2と共に、少なくとも7.5kHzから8.5kHzまでの範囲内にディップを形成することにより、優れた音像上昇効果が見られた。即ち、ディップの中心周波数は、8kHz±10%を目安に設定すればよい。
したがって、本発明に係る実施の形態1の音響再生装置においては、再生音の音圧周波数特性に、少なくとも5kHzから7kHzまでの範囲内の第1のピークP1、少なくとも10kHzから16kHzまでの範囲内の第2のピークP2、そして少なくとも7kHzから9kHzまでの範囲内のディップを形成することにより、優れた音像上昇効果が発揮されることが理解できる。
なお、実施の形態1の音響再生装置においては、正中面下方20°(−20°)の位置の音源の音像を視聴者6の真正面(正中面0°)に上昇させるように狙って構成して、第1のピークP1、第2のピークP2、およびディップの周波数を特定した。前述の背景技術の欄で述べたBLAUERTに開示された正中面0°の頭部伝達関数と正中面下方27°の頭部伝達関数との差分、および正中面0°の頭部伝達関数と正中面下方15°の頭部伝達関数の差分を計算したところ、角度が大きい方(伏角が27°)が第1のピークP1の周波数が僅かに低下する傾向は見られたものの、第1のピークP1、第2のピークP2およびディップの各周波数はあまり変化がなかった。したがって、映像再生装置から非常に近い位置で視聴する場合、またはある程度遠ざかった位置で視聴する場合でも、前述の第1のピークP1の周波数の目安(6kHz±15%)、第2のピークP2の周波数の目安(13kHz±20%)、およびディップの周波数の目安(8kHz±5%)に基づいて設計すればよいことが理解できる。
以上のように、実施の形態1の音響再生装置によれば、聴取位置へ放射される再生音の音圧周波数特性に第1のピークP1と第2のピークP2を設け、第1のピークP1の中心周波数を6kHz±15%、第2のピークP2の中心周波数を13kHz±20%としたことにより、個人差のない高い音像上昇効果が得られて、音像と映像が一致し、且つ音にクセの少ない自然な音質が得られた。また、実施の形態1の音響再生装置においては、第1のピークP1のピークレベルを3dB以上12dB以下の範囲内とし、第2のピークP2のピークレベルを3dB以上25dB以下の範囲内としたことにより、一層クセのない自然な音質が得られた。さらに、聴取再生音の音圧周波数特性において、中心周波数が8kHz±10%のディップ(凹み)を形成したことにより、さらに一層高い音像上昇効果が得られた。
なお、実施の形態1における各スピーカ1a、1b、1cは比較的フラットな音圧周波数特性を有しており、実施の形態1の音響再生装置においては、周波数特性補正部2a、2b、2cにより第1のピークP1と第2のピークP2を形成した例で説明した。しかし、スピーカ自体の音圧周波数特性が第1のピークP1または第2のピークP2のいずれかの1つのピークを有する特性であれば、周波数特性補正部においては再生音の音圧周波数特性に1つのピークを作るだけでよい。この点は、音圧周波数特性に形成すべきディップについても同様である。即ち、第1のピークP1、第2のピークP2、またはディップがスピーカ自体の音圧周波数特性に含まれているものであれば、そのスピーカ自体の音圧周波数特性を利用し、不足しているピークまたはディップを周波数特性補正部においては形成すればよい。このように本発明に係る実施の形態1の音響再生装置を構成することにより、周波数特性補正部の構成を簡単にできるため、音響再生装置のコストアップを抑えることができる。
実施の形態1の音響再生装置においては、第1のピークP1のQ値を7、第2のピークP2のQ値を4としたが、本発明はこの数値に限定されるものではなく、音像上昇効果と音のクセとの関係を考慮してQ値が決定される。特に、第1のピークP1については同じピークレベルであっても、Q値が大きい方が音のクセは小さくなるが、音像上昇効果は小さくなる傾向にある。また逆に、Q値が小さい方が音のクセは大きくなるが、音像上昇効果は大きくなる傾向にある。
視聴実験の結果、第1のピークP1のQ値については7前後が適切であり、Q値をあまり小さくすると音のクセが大きくなってしまい、逆にあまり大きくすると音像上昇効果が減ってしまった。Q値は2以上20以下の範囲内にあることが好ましい結果を得た。第2のピークP2のQ値については、第1のピークP1のQ値よりも音質変化に与える影響が小さく聴取者には分かりにくい。このため、第2のピークP2のQ値は、第1のピークのQ値より小さい値でよく、1.5以上であればよかった。
なお、実施の形態1の音響再生装置では、第1のピークP1と第2のピークP2におけるピークレベルとQ値を一定の値に固定したが、周波数特性補正部3a、3b、3cにより、第1のピークP1と第2のピークP2におけるピークレベルとQ値を調整可能に構成してもよい。例えば、ピークレベルを高くする、またはQ値を小さく設定して、音の自然さよりも音像上昇効果を優先したり、ピークレベルを下げる、またはQ値を大きく設定して、音像上昇効果よりも音の自然さを優先してもよい。このように、第1のピークP1と第2のピークP2におけるピークレベルとQ値が調整可能であれば、ソースや視聴者の好みなどに応じてキメ細かく、音像上昇効果と音の自然さを調整することが可能となる。
実施の形態1の音響再生装置においては、フロントチャンネルの各スピーカ1a、1cから聴取位置へ放射される再生音の音圧周波数特性の第1のピークP1と第2のピークP2のピークレベルを、センターチャンネルのスピーカ1bのものより低く設定した例で説明した。しかし、フロントチャンネルの各スピーカ1a、1cからの再生音の音圧周波数特性の第1のピークP1と第2のピークP2のピークレベルを、センターチャンネルのスピーカ1bのものと同じとする設計も可能である。音の自然さよりも音像上昇効果を優先したい場合などは、このように各スピーカ1a、1b、1cからの再生音の音圧周波数特性の第1のピークP1と第2のピークP2のピークレベルを同じ値に設計した方がよい。
本発明に係る実施の形態1の音響再生装置においては、各スピーカ1a、1b、1cから聴取位置へ放射される再生音の音圧周波数特性に第1のピークP1と第2のピークP2を形成することが重要である。一般的に、スピーカの中心軸上0°の音圧周波数特性が高域までフラットな特性であっても、高域では指向性が狭くなるので、スピーカから見て上方に位置する視聴者の耳の方向に対しては、高域のレベルが減衰する場合が多い。特に、実施の形態1の音響再生装置のように、スピーカがフルレンジユニットの場合は、高域の指向性が狭くなりがちである。したがって、このような場合には、高域におけるスピーカの指向特性によるレベル減衰を考慮して、周波数特性補正部において形成するピークレベルを大きく設定した方がよい。
例えば、スピーカの中心軸上の音圧周波数特性に12dBを越えるレベルを有する第1のピークP1があったとしても、視聴者の方向に該当する方向における指向特性では音圧が減衰して第1のピークP1のレベルが12dB未満であれば、当該スピーカの中心軸上の音圧周波数特性における第1のピークP1のレベルが高すぎるということはない。第2のピークP2についても前記の第1のピークP1と同様のことが言える。
なお、スピーカからの再生音の音圧周波数特性において、第1のピークP1や第2のピークP2に対応する周波数でスピーカ自体の音圧周波数特性にディップが存在する場合には、このディップを相殺し、さらに所定のレベルを持つピークレベルを形成するために周波数特性補正部を設ける必要がある。
本発明に係る実施の形態1の音響再生装置においては、各チャンネルのスピーカ1a、1b、1cが同じ口径のフルレンジスピーカで構成した例で説明している。本発明の音響再生装置は、このような構成に限定されるものではなく、各スピーカ1a、1b、1cにサブウーハを追加してよいことは言うまでもない。また、サブウーハをラック1dに内蔵することも、独立に設置することも可能である。
なお、実施の形態1の音響再生装置においては、周波数特性補正部3a、3b、3cにより、周波数特性に第1のピークP1と第2のピークP2を形成した例で説明したが、スピーカ自体の音圧周波数特性の補正などのために、音像上昇とは直接関係がないその他のピークやディップを同時に形成してもよいことは言うまでもない。
実施の形態1の音響再生装置において、聴取位置へ放射される再生音の音圧周波数特性は、無響室などの反射が殆ど無い環境で測定評価するのが望ましい。反射の多い環境で測定評価すると、高音域に較べて中低音域の音圧レベルが高くなり、その周波数特性においてピークとディップが生じている。
さらに、本発明の音響再生装置は、実施の形態1において説明した音響再生装置の構成例に限定されるものでなく、実施の形態1において説明した技術的思想を含む構成であれば、本発明に含まれる。
(実施の形態2)
次に、図14および図15を参照しつつ、本発明に係る実施の形態2の音響再生装置について説明する。図14は実施の形態2の音響再生装置が映像再生装置と組み合わされた映像音響再生システムの正面図である。図15は実施の形態2の音響再生装置の内部構成を示すブロック図である。
図14に示すように、実施の形態2の音響再生装置が映像再生装置と組み合わされた映像音響再生システムにおいては、家具11dの上にプラズマテレビや液晶テレビなどの薄型大画面を有する映像再生装置15が置かれている。映像再生装置15が置かれている家具11dの内部には、ツィータの両側にウーハを配置したセンターチャンネルのスピーカ11bが設けられている。家具11dの両側には、トールボーイ型のスピーカであるフロントスピーカ11a、11cが配置されている。
フロントLチャンネルのスピーカ11a、センターチャンネルのスピーカ11b、フロントRチャンネルのスピーカ11cは、口径8cmのウーハとフラットな音圧周波数特性と広い指向性をもつ口径2.5cmのツィータを備えた、2ウェイ構成の単品スピーカである。各スピーカ11a、11b、11cは、映像再生装置15の画面15aの中央を含む水平線より下方の位置から音を前方(画面15aの向いている方向)へ放射するよう配置されている。
図15に示すように、実施の形態2の音響再生装置は、前述の実施の形態1の音響再生装置と同様に、各スピーカ11a、11b、11cを駆動する各増幅器12a、12b、12cと、信号出力器14を備えている。しかし、実施の形態2の音響再生装置においては、フロントチャンネルの各スピーカ11a、11cが生成する音像位置が映像再生装置15の画面15aの中央位置に近いため、フロントチャンネル用の周波数特性補正部は省略されている。したがって、実施の形態2の音響再生装置は、センターチャンネル用の周波数特性補正部13bだけが設けられている。
実施の形態2の音響再生装置において、増幅器12a、12b、12cと周波数特性補正部13bが一つの筐体の中に収納されて構成されており、この筐体が家具11dには固定されずに任意の場所に配置されて使用される構成である。また、各スピーカ11a、11b、11cも自由な位置に配置されるように移動可能な構成である。例えば、センターチャンネルのスピーカ11bは、図14に示すように、家具11dの上段の棚の上に置くことができ、下段に配置することもできる。家具11dは実施の形態2の音響再生装置とは独立した構成であり、視聴者は任意の家具を使用することができる。
実施の形態2の音響再生装置において、センターチャンネル用の周波数特性補正部13bの周波数特性は、第1のピークP1の中心周波数が5.5kHz、Q値が8である。そして、第1のピークP1のレベルは、0dB以上12dB以下の範囲内で可変できる構成である。例えば、センターチャンネルのスピーカ11bを家具11dの下段に配置した場合、ピークレベルを高めに調整して音像上昇効果を高くして使うことができる。一方、第2のピークP2においては、その中心周波数が11.5kHz、レベルが10dB、Q値が5である。
センターチャンネルのスピーカ11bはフラットな高域の音圧周波数特性と広い指向性を有しているため、聴取位置へ放射される再生音の高域の音圧周波数特性はフラットである。また、センターチャンネルのスピーカ11bより聴取位置へ放射される再生音の音圧周波数特性は、周波数特性補正部13bの周波数特性と同様に2つのピークを有して、音像上昇効果を持っている。
以上のように、実施の形態2の音響再生装置によれば、実施の形態1と同様の効果が得られ、また視聴者の音質の好みに合わせてスピーカを選択することができる。また、センターチャンネルのスピーカ11bを家具11dの任意の位置に置くことが可能であり、置き場所に応じて音像上昇効果を自由に調整することができる。勿論、センターチャンネルのスピーカ11bの置き場所を固定した後に、音像上昇効果と音の自然さのバランスを自由に調整することができる。
なお、実施の形態2の音響再生装置においては、第2のピークP2の中心周波数を11.5kHzとやや低めに設定したが、これは、単品スピーカへの嗜好が強い高齢者を主要なユーザーと想定したためであり、高い周波数に対する耳の感度が低下する高齢者に十分な音像上昇効果を提供するためである。
本発明の音響再生装置は、実施の形態2において説明した音響再生装置の構成例に限定されるものでなく、実施の形態2において説明した技術的思想を含む構成であれば、本発明に含まれる。
(実施の形態3)
次に、図16乃至図18を参照しつつ、本発明に係る実施の形態3の音響再生装置について説明する。図16は実施の形態3の音響再生装置が映像再生装置と組み合わされた映像音響再生システムの正面図である。図17は実施の形態3の音響再生装置の内部構成を示すブロック図である。図18は、実施の形態3の音響再生装置から放射された音圧周波数特性を示しており、視聴者がフロントチャンネルのスピーカの中心軸上から上方10°であり、且つ水平30°の位置で聴取したときの音圧周波数特性図である。
図16に示すように、実施の形態3の音響再生装置が映像再生装置と組み合わされた映像音響再生システムにおいては、家具21dの上にプラズマテレビや液晶テレビなどの薄型大画面を有する映像再生装置25が置かれている。また、家具21dの上には、フロントLチャンネルのスピーカ21a、およびフロントRチャンネルのスピーカ21cが配置されている。フロントLチャンネルのスピーカ21a、およびフロントRチャンネルのスピーカ21cは、口径が8cmのフルレンジユニットであり、小型キャビネットに収納されている。各スピーカ21a、21cは、映像再生装置25の画面25aの中央を含む水平線より下方の位置から音を前方(画面25aの向いている方向)へ放射する構成である。
実施の形態3の音響再生装置には、サブウーハ21eが家具21dの側面外側(図16においては右側)の位置に配置され、床面上に置かれている。サブウーハ21eは、その中心軸(放射軸)がフロントLチャンネルのスピーカ21a、およびフロントRチャンネルのスピーカ21cの各中心軸(放射軸)に対して水平に90°回転した位置となるように配置されている。即ち、サブウーハ21eは、映像再生装置25の画面25aの向いている方向から水平に90°回転した方向に音を放射する構成である。
図17に示すように、実施の形態3の音響再生装置においては、各フロントチャンネルのスピーカ21a、21cは、それぞれフロントLチャンネル用の増幅器22a、フロントRチャンネル用の増幅器22cにより駆動される。サブウーハ21eはサブウーハ用の増幅器22eにより駆動される。
フロントLチャンネル用の増幅器22a、およびフロントRチャンネル用の増幅器22cの前段には、それぞれ各フロントチャンネル用の周波数特性補正部23a、23cが接続されている。周波数特性補正部23a、23cはDSPを用いたデジタルフィルター回路である。ソースからのビットストリームデジタル信号は、信号出力器24においてフロントLチャンネル用信号、フロントRチャンネル用信号、およびサブウーハ用信号にデコードされて出力される。信号出力器24から出力されたフロントLチャンネル用信号およびフロントRチャンネル用信号は、周波数特性補正部23a、23cにそれぞれ入力される。また、信号出力器24においては、いわゆるフロントバーチャルサラウンド処理を行っており、各フロントスピーカ21a、21cだけで後方にサラウンドスピーカを置いたかのようなバーチャルサラウンド音場を形成するものである。
各周波数特性補正部23a、23cにおいて形成される周波数特性には、6.5kHzを中心周波数とする第1のピークP1だけを設けている。その第1のピークP1のレベルは6dB、Q値は5である。また、最も簡単な1次ブースト回路により高域をブーストしており、10kHzで3dB、14kHzで6dB、20kHzで9dBほどブーストしている。
図18は、無響室において、視聴者がフロントチャンネルのスピーカ21a、21cの中心軸上から上方10°であり、且つ水平30°の位置で聴取したときの音圧周波数特性図である。即ち、図18は、フロントチャンネルの2つのスピーカ21a、21cと視聴者が正三角形の頂点の位置であり、且つ視聴者がフロントチャンネルのスピーカ21a、21cの中心軸上から上方10°の位置で聴取したときにおける、スピーカ21a、21cからの再生音の音圧周波数特性を示している。図18に示すグラフにおいて、実線Aは周波数特性補正部23a、23cが設けられている音響再生装置により聴取位置へ放射される各スピーカ21a、21cの再生音の音圧周波数特性を示している。破線Bは周波数特性補正部が設けられていない音響再生装置により聴取位置へ放射される各スピーカ21a、21cの再生音の音圧周波数特性を示す。破線Bから分かるように、実施の形態3の音響再生装置に用いられている各スピーカ21a、21cは、それ自体の音圧周波数特性がレベルは低いながらも14kHz付近の周波数においてピークを有している。このスピーカ21a、21c自体の音圧周波数特性に対して、周波数特性補正部23a、23cの高域ブースト特性により、8dB程度のピークレベルに持ち上げて第2のピークを形成している。
以上のように、実施の形態3の音響再生装置によれば、前述の実施の形態1の音響再生装置と同様の効果が得られる。また、実施の形態3の音響再生装置においては、周波数特性補正部23a,23bの周波数特性が1つのピークと1次の高域ブーストだけであるため、構成を簡単にすることができる。この結果、実施の形態3の音響再生装置のコストアップを大幅に抑えることができる。
なお、実施の形態3の音響再生装置においては、第2のピークP2をスピーカ自体の音圧周波数特性を利用して構成したが、例えば、スピーカ自体の音圧周波数特性が第1のピークに相当するレベルのものが存在し、第2のピークに相当するレベルのものが存在しない場合には、第1のピークをスピーカ自体の音圧周波数特性を利用し、第2のピークを周波数特性補正部において形成するように構成してもよい。
本発明の音響再生装置は、実施の形態3において説明した音響再生装置の構成例に限定されるものでなく、実施の形態3において説明した技術的思想を含む構成であれば、本発明に含まれる。
(実施の形態4)
次に、図19および図20を参照しつつ、本発明に係る実施の形態4の音響再生装置について説明する。図19は実施の形態4の音響再生装置が映像再生装置と組み合わされた映像音響再生システムの正面図である。図20は実施の形態4の音響再生装置の内部構成を示すブロック図である。
図19に示すように、実施の形態4の音響再生装置が映像再生装置に組み込まれた映像音響再生システムであるテレビ受像器においては、家具31dの上にプラズマテレビや液晶テレビなどの薄型大画面を有するテレビ受像器35が置かれている。テレビ受像器35の内部には、Lチャンネルのスピーカ31a、およびRチャンネルのスピーカ31cが設けられている。各スピーカ31a、31cは、口径12cm×6cmが楕円形のフルレンジユニットである。各スピーカ31a、31bの前面は、開口率の低いパンチングネット31fにより覆われている。テレビ受像器35に設けられている各スピーカ31a、31cは、テレビ受像器35の画面35aの下側から音を放射するよう配置されている。
図20に示すように、実施の形態4の音響再生装置は、Lチャンネル、およびRチャンネルの各スピーカ31a、31cが、それぞれLチャンネルの増幅器32a、Rチャンネルの増幅器32cにより駆動される。Lチャンネル、およびRチャンネルの各増幅器32a、32cの前段には、周波数特性補正部33a、33cがそれぞれ接続されている。ソースからの信号は信号出力器34において、Lチャンネル用信号、およびRチャンネル用信号にデコードされて出力される。信号出力器34から出力されたLチャンネル用信号、およびRチャンネル用信号は、各周波数特性補正部33a、33cに入力される。
実施の形態4の音響再生装置における周波数特性補正部33a、33cは、周波数特性に第1のピークP1と第2のピークP2を形成するだけでなく、高域レベルの全体的なブーストも行っている。これは、各スピーカ31a、31bの前面を覆うパンチングネット31fの開口率が低いため、各スピーカ31a、31cからの再生音における周波数特性の高域が減衰することが理由の1つである。他の理由としては、各スピーカ31a、31cが横長楕円形であるため、水平方向の高域指向性が狭く、聴取位置での高域レベルが減衰するためである。これらの理由による著しい高域減衰を補うために、実施の形態4の音響再生装置においては高域レベルの全体的なブーストを行っている。
実施の形態4の音響再生装置において、周波数特性補正部33a、33cにおいて形成される周波数特性には、第1のピークP1の中心周波数が6kHz、ピーク単独のレベルは8dB、Q値は10であり、低音域のレベルを基準にして見た時のピークの高さは18dBである。そして、第2のピークP2の中心周波数は12kHz、ピーク単独のレベルは12dB、Q値は5であり、低音域のレベルを基準にして見た時のピークの高さは28dBである。この結果、聴取位置へ放射される再生音の音圧周波数特性は、第1のピークP1のレベルが5dB、第2のピークP2のレベルが8dBであった。
以上のように、実施の形態4の音響再生装置によれば、前述の実施の形態1と同様の効果が得られ、テレビ受像器の内蔵スピーカ自体の音像を上昇させることができるとともにクセのない自然な音質を得ることができる。
本発明の音響再生装置は、実施の形態4において説明した音響再生装置の構成例に限定されるものでなく、実施の形態4において説明した技術的思想を含む構成であれば、本発明に含まれる。
本発明の音響再生装置によれば、高い音像上昇効果を個人差により異なることなく得ることができ、音像と映像が一致するばかりでなく、音にクセの少ない自然な音質が得られるため、一般の2チャンネルステレオ音響再生機器やマルチチャンネル音響再生機器ばかりでなく、テレビ受像器用音響再生機器、車載用音響再生機器など、多くの機器の音響再生用に有用であり、極めて実用的価値の高いものである。

Claims (7)

  1. 映像再生装置の画面中央よりも下方から音を放射するスピーカと、前記スピーカを駆動する増幅器と、補正した周波数特性を有する信号を前記増幅器に出力する周波数特性補正部と、を備え、
    前記周波数特性補正部は、聴取位置へ前記スピーカより放射される再生音の音圧周波数特性が第1のピークと第2のピークを有するように周波数特性を形成し、前記第1のピークの中心周波数を6kHz±15%の範囲内、前記第2のピークの中心周波数を13kHz±20%の範囲内とし、
    前記スピーカから放射される再生音の音圧周波数特性は、中心周波数が8kHz±10%においてディップが形成された特性曲線を有する音響再生装置。
  2. 前記第1のピークのレベルを3dB以上12dB以下の範囲内とし、前記第2のピークのレベルを3dB以上25dB以下の範囲内とした請求項1に記載の音響再生装置。
  3. 前記第1のピークまたは前記第2のピークが、前記スピーカ自体の音圧周波数特性を利用して構成された請求項1または2に記載の音響再生装置。
  4. 前記ディップが、前記スピーカ自体の音圧周波数特性を利用して構成した請求項1または2に記載の音響再生装置。
  5. 前記第1のピークまたは前記第2のピークのレベルまたはQ値を調整可能に構成した請求項1乃至4のいずれか一項に記載の音響再生装置。
  6. 前記周波数特性補正部は、聴取位置へ前記スピーカより放射される再生音の音圧周波数特性における高域レベルを所定レベルだけブーストするよう構成された請求項1乃至4のいずれか一項に記載の音響再生装置。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の音響再生装置と、映像再生可能な映像再生装置とを組み合わせて形成された映像音響再生システム。
JP2009553355A 2008-02-14 2009-02-06 音響再生装置および映像音響再生システム Expired - Fee Related JP5320303B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009553355A JP5320303B2 (ja) 2008-02-14 2009-02-06 音響再生装置および映像音響再生システム

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008032847 2008-02-14
JP2008032847 2008-02-14
PCT/JP2009/000463 WO2009101778A1 (ja) 2008-02-14 2009-02-06 音響再生装置および映像音響再生システム
JP2009553355A JP5320303B2 (ja) 2008-02-14 2009-02-06 音響再生装置および映像音響再生システム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2009101778A1 JPWO2009101778A1 (ja) 2011-06-09
JP5320303B2 true JP5320303B2 (ja) 2013-10-23

Family

ID=40956813

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009553355A Expired - Fee Related JP5320303B2 (ja) 2008-02-14 2009-02-06 音響再生装置および映像音響再生システム

Country Status (4)

Country Link
US (1) US8411884B2 (ja)
JP (1) JP5320303B2 (ja)
CN (1) CN102017656A (ja)
WO (1) WO2009101778A1 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5219927B2 (ja) * 2009-06-03 2013-06-26 三菱電機株式会社 音像定位装置
JP5597975B2 (ja) * 2009-12-01 2014-10-01 ソニー株式会社 映像音響装置
KR101268779B1 (ko) 2009-12-09 2013-05-29 한국전자통신연구원 라우드 스피커 어레이를 사용한 음장 재생 장치 및 방법
JP5757093B2 (ja) * 2011-01-24 2015-07-29 ヤマハ株式会社 信号処理装置
RU2635819C2 (ru) * 2012-06-29 2017-11-16 Сони Корпорейшн Аудиовизуальное устройство
TWI635753B (zh) * 2013-01-07 2018-09-11 美商杜比實驗室特許公司 使用向上發聲驅動器之用於反射聲音呈現的虛擬高度濾波器
EP3069528B1 (en) * 2013-11-14 2017-09-13 Dolby Laboratories Licensing Corporation Screen-relative rendering of audio and encoding and decoding of audio for such rendering
US20160267075A1 (en) * 2015-03-13 2016-09-15 Panasonic Intellectual Property Management Co., Ltd. Wearable device and translation system
US10152476B2 (en) * 2015-03-19 2018-12-11 Panasonic Intellectual Property Management Co., Ltd. Wearable device and translation system

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03128600A (ja) * 1989-10-13 1991-05-31 Mitsubishi Electric Corp 音声再生装置
JPH05219597A (ja) * 1991-02-20 1993-08-27 Onkyo Corp 音像定位補正方法と回路
JP2003102099A (ja) * 2001-07-19 2003-04-04 Matsushita Electric Ind Co Ltd 音像定位装置

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3128600B2 (ja) 1992-07-14 2001-01-29 松下電器産業株式会社 成膜装置の基板加熱方法
JP2007288468A (ja) * 2006-04-17 2007-11-01 Sony Corp オーディオ出力装置、パラメータ算出方法
KR20080063698A (ko) * 2007-01-02 2008-07-07 엘지전자 주식회사 디스플레이 기기 및 디스플레이 기기의 스피커 시스템

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03128600A (ja) * 1989-10-13 1991-05-31 Mitsubishi Electric Corp 音声再生装置
JPH05219597A (ja) * 1991-02-20 1993-08-27 Onkyo Corp 音像定位補正方法と回路
JP2003102099A (ja) * 2001-07-19 2003-04-04 Matsushita Electric Ind Co Ltd 音像定位装置

Also Published As

Publication number Publication date
US20110080531A1 (en) 2011-04-07
CN102017656A (zh) 2011-04-13
JPWO2009101778A1 (ja) 2011-06-09
US8411884B2 (en) 2013-04-02
WO2009101778A1 (ja) 2009-08-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5320303B2 (ja) 音響再生装置および映像音響再生システム
JP4602621B2 (ja) 音響補正装置
US8630428B2 (en) Display device and audio output device
US9374640B2 (en) Method and system for optimizing center channel performance in a single enclosure multi-element loudspeaker line array
US8873778B2 (en) Sound processing apparatus, sound image localization method and sound image localization program
US10516963B2 (en) Adjusting the perceived elevation of an audio image on a solid cinema screen
WO2005064986A1 (ja) 音声出力装置
US8306231B2 (en) Portable device with enhanced stereo image
US20090279721A1 (en) Speaker device
EP4035418A2 (en) Hybrid near/far-field speaker virtualization
WO2019133942A1 (en) Voice-control soundbar loudspeaker system with dedicated dsp settings for voice assistant output signal and mode switching method
JP4418479B2 (ja) 音響再生装置
US11297454B2 (en) Method for live public address, in a helmet, taking into account the auditory perception characteristics of the listener
JP2017050843A (ja) 信号処理方法およびスピーカシステム
JPH10234094A (ja) スピーカ装置
Sigismondi Personal monitor systems
GB2514598A (en) An optimised three speaker stereo sound system
JP2015065551A (ja) 音声再生システム
JPH0276382A (ja) スピーカシステム内蔵型テレビ

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110825

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110825

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130409

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130502

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130702

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130712

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5320303

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees