JP5315951B2 - 超高圧放電ランプ - Google Patents
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絶縁破壊後、直流領域で陰極となる電極の表面から水銀が蒸発して放電が開始され、電極表面に付着していた水銀が蒸発して、数十Vの水銀アークが行われる(水銀アーク領域)。次に、水銀が完全に蒸発して枯渇すると、数百Vのグロー放電が行われる(グロー放電領域)。グロー放電により陰極が十分加熱されると、陰極からの熱電子の放出が容易となり、ついには数十Vのランプ電圧を有するアーク放電に移行する(熱アーク領域)。
下記の特許文献1,2には、ランプ始動時、特にグロー放電期間において、電極構成材料が発光管部内壁に付着することを防止し、黒化を防止する技術が開示されている。
とりわけ、このような水銀アーク期間における異常放電は、水銀と共に封入されたバッファガス(すなわち希ガス)の封入圧が低い場合に、高い確率で発生する傾向がある。
このようにして、ランプの点灯動作のたびに水銀アーク期間異常放電が発生することによって発光管の黒化が進行し、光透過率が低下し所定の照度が得られなくなり、ランプが短寿命となってしまう。
前記電極の外周面に、発光管部と封止管部の境界に近接した位置に放電空間に開口する溝が複数形成され、前記溝は、電極の周方向に伸びる環状の溝からなることを特徴とする。
また、石英ガラスからなり、発光管部と当該発光管部に連設された封止管部とを有する発光管の内部に、0.15mg/mm3以上の水銀を封入するとともに、一対の電極が各々その軸部の基端部が前記封止管部に埋設されて保持されることにより対向配置されてなる超高圧放電ランプにおいて、
前記電極には、その先端部近傍にコイルが巻回されてなり、
前記電極の外周面に、前記コイルよりも後方の位置に放電空間に開口する溝が複数形成され、
前記溝は、電極の周方向に伸びる環状の溝からなることを特徴とすることを特徴とする。
また更に、前記溝は、幅が150μm以下であり、深さが60μm以上であるのがよい。
この結果、異常放電を発生しやすい水銀アーク期間を短くすることができる。
また、電極の封止管部と発光管部の境界に近接した位置において、熱は専ら水銀の蒸発に利用されるようになるため、電極の溝部分が高温化することが抑制され、この部分から放電が発生することが回避されるようになる。従って、水銀アーク期間中に発生する異常放電の発生を回避できるともに、電極構成材料が発光管部の内壁に付着する確率を小さくすることができる。
この結果、点灯点滅を繰り返すような点灯モードであったとしも、発光管部に黒化原因となる電極構成物質の付着が少なくて黒化現象の発生を回避することができるので、超高圧放電ランプの照度を高く維持することができるようになる。
図1は、本発明に係るショートアーク型超高圧放電ランプ(以下、単に「ランプ」ともいう)の全体構成を示す管軸方向断面図である。
ランプL1は、中央部に概略球形の発光管部11と、その両端部から外方に伸びるように形成されたロッド状の封止管部12とを有する発光管10を備えている。この発光管部11には、一対の電極としての陰極20aと陽極20bが対向して配置されている。封止管部12の内部にはそれぞれ、通常モリブデンよりなる導電用金属箔13が、例えばシュリンクシールにより気密に埋設されている。一対の電極20a,20bは、その軸部23における後端部分23Aが金属箔13に溶接されて電気的に接続され、また、金属箔13の他端には、発光管10の外部に突出する外部リード14が溶接されている。陽極20bはタングステンよりなり、先端に電極本体部分21bを備え、軸部23における封止管部12に埋設される部分にはコイルが幾重にも巻き付けられてコイル部22bが形成されている。このコイル部22bは、発光管10の全体が石英ガラスからなるため、タングステンと石英ガラスとの熱膨張係数の差を緩和するためのものである
また、ハロゲンは、沃素、臭素、塩素などが水銀その他の金属との化合物の形態で封入され、ハロゲンの封入量は、10−6〜10−2μmol/mm3の範囲から選択される。その機能はハロゲンサイクルを利用した長寿命化も存在するが、本発明の放電ランプのように極めて小型で高い内圧を有するものは、このようなハロゲンを封入することで発光管10の黒化防止の役割を果たす。
電極20aは、円柱状のタングステン棒より製作される。先端が先細りするよう尖塔状に形成された先端部21aと、先端部21aの後ろに連設されて後方に向かって伸びる電極軸部23とを備えて構成され、先端部21aの後方には、導線が巻回されるとともに溶融されて電極軸部23に固着されたコイル部22aを備えている。コイル部22aは、おもに電極ランプL1の始動補助に関与するものであり、ランプ点灯時におけるグロー放電期間中には電極先端部を加熱し、温度上昇を促してアーク放電への移行を容易にするためものである。仮に、このようなコイル部22aを有さない電極においてはアーク放電への移行ができないために放電の立ち消えが生じたり、グロー放電を異常に長い時間経過させなければならなかったりするため、この技術分野にかかる放電ランプにおいて、陰極動作側電極のコイル部22aは、実用上必須構成となる。
電極20aは、軸部の基端部23Aが金属箔13に溶接されるとともに、所定長さ封止管部12の内部に埋設され、軸部23aの一部が放電空間S内に露出した状態で、封止管部12に支持されている。
このとき、電極軸部23の溝24形成部においては、後端側であるため電極先端部よりも温度が低いことと相俟って、溝24が多数形成されていることにより比表面積が大きく放熱が促進されるともに、封止管部に埋設された金属箔を通じて熱が外部に移送されるため最冷点となりやすい。そのため、水銀は電極軸部23の溝24部分に付着して液相に変化し、液化した水銀は毛細管現象によって溝24内部に浸透するため、安定的に溝24部分に溜められる(図3(b))。
電極軸部23においては封止管部12と発光管部11との境界部分Dの近傍に、溝24が多数形成されているため、電極先端から伝わってきた熱が、溝24の内部にたまった水銀を加熱し、その蒸発に利用されるため、水銀が早期に枯渇状態となって水銀の蒸気圧が高まり、圧力が早期に安定状態となって速やかにグロー放電へ移行する。その後、熱アーク状態への移行する。
そして本発明においては、このような作用効果と共に、水銀アークの期間は水銀の蒸気圧が低いため、電極の高温部分から電子が放出してアークが発生しやすいものであるが、水銀のほとんどは電極軸部23に形成された溝24の内部に溜まった状態であるため、電極軸部23における熱は専ら水銀の蒸発に利用されて当該溝24近傍が高温化することが抑制されるため、電極軸部23の根元部分からアークが発生する確率が格段に低くなり、黒化現象を回避することができるようになる。
また、本発明において電極軸部に形成される溝は環状のものに限定されず、軸方向に伸びる溝であってもよいし、らせん状に形成されたものでも構わない。しかしながら、上記実施形態のように溝を環状に形成した場合には、他の態様の溝と比較して電極軸に垂直方向の断面積を小さくできるため、電極の熱が金属箔に移動することが抑えられる。従って、水銀の蒸発をいっそう速めることができる。
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。この実施形態は交流点灯タイプの超高圧放電ランプであり、第1の実施形態と比較して電極形状と電源装置(不図示)について相違するが、発光管の内部に封入する、水銀、ハロゲン、希ガス等の封入物質の基本構成については、ほぼ同様であり、その説明については省略する。
ここで、このような電極50の具体的数値について一例を挙げると、例えば先端から金属箔(不図示)との接合部である後端までを含めた全長は7mm、軸部54の径はφ0.4mm、電極胴部53(太径部)の最大径部の直径はφ1.2mmである。
溝55の深さ、ピッチ等は、上記第1の実施形態の数値に準じて好ましい範囲内で適宜設定可能である。このような溝55が形成されることで、ランプ消灯時において水銀を溜め込み、ランプ始動時に水銀の蒸発を促進させる機能を備え、水銀アークの期間を短縮できて、電極の根元部分(封止管部と発光管部との境界近傍)における温度上昇を確実に抑制することができる。
(1)まず、一対の電極において溝が形成されるのはランプの始動時に陰極動作する電極であり、直流点灯用のランプである場合は、陰極側電極である。交流点灯のランプである場合は、両方の電極において陰極動作する可能性があるため、両方の電極であることが望ましいが、ランプ始動時の極性が決められている場合は陰極動作側の一方の電極にのみ形成しても足りる。
(2)そして、溝が形成される位置については、次の通りである。
(2−1)
この技術分野にかかるランプにおいては水銀が0.15mg/mm3以上となるよう多量に封入されており、電極本体に溝を形成してその容積を稼ぐにはある程度の深さが必要になる。ここで、この種のランプは、電極の軸部の大きさがランプの設計、仕様により様々であり、例えば軸部の径がφ0.5mmに満たない場合に、例えば深さ100〜200μmとなる溝を形成することは適さない。
電極軸部の径がφ1mm以上である場合には、設計上深さ100〜200μmの溝を形成することが可能であり、その場合には、発光管部と封止管部の境界に近接した位置であるのがよく、最も望ましくは、電極軸部において放電空間に露出した最外端部の近傍に形成されるのがよい。
(2−2)
電極軸部の径が1mmに満たないような、例えばφ0.5mm以下の場合には、溝の深さを十分稼ぐことができず、軸部に溝を形成しても水銀を保持することができないため、本発明の効果を得ることができなくなる。
従って、ある程度の溝による容積をまかなうために、電極胴部部分(太径の部分)に溝を形成するのが好ましく、その場合は、少なくともコイル部より後方に溝が形成されていればよい。この理由は、電極の先端近傍にあるコイル部は、ランプ始動時には電極先端の発熱を促すものであり、溝によってこの作用、動作を妨げないようにするためである。
よって、溝が形成される位置は、電極先端部にコイル部が形成されている場合には、それよりも後方に形成すれば足りる。そして、コイル部の有無に限定されず、溝が形成される位置は、放電空間における最外端部に可及的に近いことが、最冷部に溝を形成するという観点から、望ましい。
以下、本発明に係る放電ランプの具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
これらの放電ランプにおける放電容器、電極、封入物および電気特性についての具体的な仕様は、以下の通りである。
〔発光管〕
発光管(10)は、材質が石英ガラスであり、全長が60mmである。発光管部(11)の外径は12mmで、内径は6mmであり、放電空間の容積は約180mm3である。封止管部(12)の長さはそれぞれ25mmで、外径は6mmである。
〔封入物〕
発光管(10)内の封入物は、水銀の量が約40mg(約0.22mg/mm3)、臭素の量が5×10−4μmol/mm3、Arの封入圧が13.3kPaとした。
〔電気特性〕
これらの放電ランプは、ランプ電圧が70〜100V、ランプ電流が3〜4A、ランプ電力が300Wである。
陰極(20a)および陽極(20b)の材質はそれぞれタングステンであり、陰極(20a)と陽極(20b)との離間距離は1.5mmである。電極軸部(23)の材質もまたタングステンであり、直径は1.3mmである。陰極先端部には純タングステンよりなるコイルを巻回して配置した。
その、各々の陰極(20a)の軸部に、下記仕様に基いてレーザ加工によって溝を多数形成した。
上記実施例1のランプとは、電極に溝が形成されていないことを除いて、同仕様として比較例に係る超高圧放電ランプ(ランプAという)を製作した。
この結果を図6に示す。なお縦軸は、初期照度を100として相対値で示す照度維持率、横軸は累積点灯時間である。
10 発光管
11 発光管部
12 封止管部
13 金属箔
14 外部リード棒
20a,20b 電極
21a,21b 先端部
22a,22b コイル部
23a,23b 電極軸部
23A 後端部
24 溝
40 発光管
41 発光管部
42 封止管部
50 電極
51 先端部
52 コイル部
53 胴部
54 軸部
55 溝
Claims (3)
- 石英ガラスからなり、発光管部と当該発光管部に連設された封止管部とを有する発光管の内部に、0.15mg/mm3以上の水銀を封入するとともに、一対の電極が各々その軸部の基端部が前記封止管部に埋設されて保持されることにより対向配置されてなる超高圧放電ランプにおいて、
前記電極の外周面に、発光管部と封止管部の境界に近接した位置に放電空間に開口する溝が複数形成され、
前記溝は、電極の周方向に伸びる環状の溝からなることを特徴とする超高圧放電ランプ。 - 石英ガラスからなり、発光管部と当該発光管部に連設された封止管部とを有する発光管の内部に、0.15mg/mm3以上の水銀を封入するとともに、一対の電極が各々その軸部の基端部が前記封止管部に埋設されて保持されることにより対向配置されてなる超高圧放電ランプにおいて、
前記電極には、その先端部近傍にコイルが巻回されてなり、
前記電極の外周面に、前記コイルよりも後方の位置に放電空間に開口する溝が複数形成され、
前記溝は、電極の周方向に伸びる環状の溝からなることを特徴とする超高圧放電ランプ。 - 前記溝は、幅が150μm以下であり、深さが60μm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の超高圧放電ランプ。
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