JP5311762B2 - エネルギー吸収部材 - Google Patents
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Description
(1)車体前後方向(車体長手方向)を押出方向とし、押出形材の押出方向に縦圧壊するステイ(以下、縦圧壊型ステイという)
(2)車体左右方向(車体幅方向)あるいは車体上下方向を押出方向とし、押出形材の断面方向に横圧壊するステイ(以下、横圧壊型ステイという)
一方、上記縦圧壊型ステイは、衝突方向に直交する断面を閉断面構造にすることが可能であり、圧壊変形時には縦方向にアコーディオン状に変形を行うため、比較的高い荷重で長いストロークの間に変形を行い、エネルギー吸収特性に比較的優れるという特性を持ち、横圧壊型ステイに比べて軽量化が可能である。
このため上記縦圧壊型ステイ(クラッシュボックス)として、従来から、その断面形状を六角形、あるいは八角形などの多角形断面形状として稜線の数を増し、さらにこれらを二つ組み合わせて一体化した略8の字断面部材が提案されている(特許文献1〜4参照)。
八角形断面を二つ組み合わせて一体化した前述の略8の字断面のアルミステイは、従来の縦圧壊型ステイを改良したもので、最大荷重以降の荷重の上下動を抑制して、エネルギ吸収効率を増加させることができる。かつ、製造性(押出性)の問題もある程度クリアできる。しかしながら、このアルミステイは、八角形断面が縦方向に2つ並べて配置されていることにより横方向の断面剛性が低下し、そのため圧壊変形時に不安定であり、特に押出方向に長くした場合に圧壊変形時に折れ易く、エネルギー吸収効率が低下するというデメリットがあった。
ここで、偏平化した六角形断面とは正六角形断面を高さをそのままで横方向に拡大、偏平化した形状を意味する。また、略六角形断面とは、断面を構成する各辺の代表線(中心線)が略六角形であるものを指す。コーナー部にアールが付けられたもの、あるいはコーナー部に局部的な板厚の増減があるものなどは正確な六角形から多少ずれた形状(略六角形)となるが、これも本発明でいう略六角形断面に含まれる。
このエネルギー吸収部材は、例えばバンパステイ(クラッシュボックス)として、自動車車体のバンパ補強材とサイドメンバとの間に配置される。
多角形断面を有するアルミニウム合金押出中空形材を縦(軸方向)圧壊変形させたとき、多角形の辺の数が多くなるほど、圧壊変形に伴う荷重の上下変動が小さく安定するが、逆に辺の数が多くなりすぎると、隣接する辺同士の角度が浅くなり、隣接する2辺が同時に圧壊変形し、かえって圧壊変形の安定性が損なわれる可能性がある。圧壊変形の安定性の観点から六角形断面が適当である。また、単位質量当たりの荷重及び単位質量当たりのエネルギー吸収量が、下記表1に示すとおり、六角形断面において最も大きい。
表1に示すように、エネルギー吸収量(EA量)は六角形断面のものが最も大きい。最大荷重(Pmax)、平均荷重、単位質量当たりのエネルギー吸収量も同様に、六角形断面のものが最も大きく、六角形断面が特性上、最も優れている。
さらに、これらの多角形断面を2つ結合して略8の字型断面形状とした場合も、同様な特性の傾向が得られる。
本発明に係るアルミニウム合金押出中空形材は、横方向に偏平化した2つの六角形断面が互いにその一辺を共有して縦方向に重なり一体化された略8の字型の断面形状を有する。ここで、横方向に偏平化した六角形断面とは、先に述べたように、2つの正六角形断面を高さをそのままで横方向に拡大、偏平化した形状を意味し、その代表的な形状を図1に示す。
図1に例示する略8の字型断面形状において、六角形断面1,2はそれぞれ辺3〜8からなり、辺3を共有する。図1(a)の六角形断面1,2は、左右の辺4,5,7,8を横方向に延ばす形態で偏平化したもので、それぞれ稜角(稜を挟んで隣接する2つの辺のなす角度)が2箇所(左右の2箇所θ1,θ2)で120度より小さく、4箇所(θ3〜θ6)で120度より大きい。ここで、θ1とθ2、θ3〜θ6は互いに同一とは限らない。また、上下の辺3,6より左右の辺4,5,7,8の方が長い。図1(b)の六角形断面1,2は、上下の辺3,6を横方向に延ばす形態で偏平化したもので、上下の辺3,6の方が左右の辺4,5,7,8より長い。ここで、稜角の全てが120度とは限らない。
六角形断面1,2は偏平化されているから、各辺3〜8の代表線(中心線)の中点をそれぞれ3a〜8aとし、各対辺間の間隔を各対辺の中点間の間隔と定義したとき、上下の対辺間の間隔(中点3aと中点6a間の間隔)は、左右の2組の対辺間の間隔(中点4aと中点7a、中点5aと中点8a間の間隔)より狭くなっている。
なお、対辺同士が平行である場合、対辺間の間隔を両辺間に引いた垂線の長さで定義することもできる。偏平化した六角形断面1,2において、3組の対辺(辺3と辺6、辺4と辺7、辺5と辺8)がいずれも互いに平行であるとすれば、上下の対辺間の間隔(辺3と辺6に引いた垂線の長さ)は左右の2組の対辺間の間隔(辺4と辺7、辺5と辺8に引いた垂線の長さ)より狭いということができる。
左右の2組の対辺(辺4と辺7、辺5と辺8)が互いに平行でない場合を含め、圧壊変形時の挙動の安定化のためには、さらに左右の2組の対辺(辺4と辺7、辺5と辺8)間の間隔が同一であることが望ましい。これに加えて各対辺(辺3と辺6、辺4と辺7、辺5と辺8)同士の長さが同一であることが望ましく、この場合、左右の2組の対辺(辺4と辺7、辺5と辺8)は互いに平行であり、かつ各六角形断面1,2はそれぞれ左右上下に対称である。
縦軸(Y軸)回りの断面2次モーメントIYYは、Y軸(縦軸)回りの剛性を示す指標であり、一方、横軸(X軸)回りの断面2次モーメントIXXは、X軸(縦軸)回りの剛性を示す指標である。圧壊変形時の横倒れに対する耐性を向上させるため、本発明に係る略8の字型断面形状の縦軸回りの断面2次モーメントIYYが、基準断面形状の縦軸回りの断面2次モーメントの1.5倍以上になるように、その断面形状を設定することが望ましい。しかし、Y軸回りの断面2次モーメントIYYが自身のX軸回りの断面2次モーメントIXXを大きく上回ると、今度はX軸回りの剛性がY軸回りのそれよりも小さくなり、X軸回りの曲げ変形が生じやすくなるので、Y軸回りの断面2次モーメントIYYは自身のX軸回りの断面2次モーメントIXXより大きくしないことが望ましい。
図2(a)は比較例の断面形状を示すもので、各辺の板厚2mm、一辺の長さ12.27mmの2つの正六角形が一体化された形状を有する。図2(b)は本発明例の断面形状を示し、各辺の板厚、全体の高さ、及び共有の辺を含む水平の辺の長さはそのままで、左右の4つの辺のみを横方向に拡大、偏平化した形態を有する。比較例である図2(a)の断面形状は、本発明例である図2(b)の断面形状の基本断面形状ということができる。
本発明例の偏平化率(本発明例の断面幅/比較例の断面幅)は128%である。偏平化のレベルをこの偏平化率で表現することもできる。また、2つの六角形の形状は同じで、各六角形において前記4つの辺の対辺同士は互いに平行、かつ各対辺間の間隔及び各対辺同士の長さは同一とされている。
断面積とX軸(水平軸)回りの剛性を示す指標であるIXXの値は両者とも大きい違いはない。しかし、Y軸(縦軸)回りの断面2次モーメントIYYの値は、本発明例の方が比較例より1.7倍程度大きく、Y軸(縦軸)回りの曲げに対する抵抗(剛性)が大きいことがわかる。
図4(a)から、正六角形で構成された略8の字型断面の比較例は、圧壊時に次第にY軸回りに外側に折れ曲がっている様子がわかる。また、図5から、外側に折れ曲がることにより変形途中で荷重が低下する傾向がわかる。一方、偏平化した六角形で構成された略8の字型断面の本発明例は、Y軸まわりの剛性が高いため、折れ曲がるような現象は生じず、比較的安定した荷重−変位曲線となり、エネルギー吸収量も大きくアップしている。
3 六角形断面の共有する辺
4〜8 六角形断面のその他の辺
Claims (4)
- 軸方向に衝突荷重を受けて圧縮変形し車両の衝突エネルギーを吸収するエネルギー吸収部材であって、車両前後方向を押出方向とするアルミニウム合金押出中空形材からなり、前記押出中空形材は、横方向に偏平化した2つの略六角形断面が互いにその一辺を共有して縦方向に重なり一体化された略8の字型の断面形状を有することを特徴とするエネルギー吸収部材。
- 前記エネルギー吸収部材は、その壁部に押出方向に対して略直交方向に初期荷重低下のための変形促進エンボスを有することを特徴とする請求項1に記載されたエネルギー吸収部材。
- 前記アルミニウム合金押出中空形材は、0.2%耐力が190MPa以上である6000系又は7000系アルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載されたエネルギー吸収部材。
- 自動車車体のバンパ補強材とサイドメンバとの間に配置され、両者の結合の用途を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されたエネルギー吸収部材。
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