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JP5311561B2 - 耐熱性チョコレート - Google Patents

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本発明は、チョコレートの耐熱性付与剤、該耐熱性付与剤を含有した耐熱性チョコレートおよびその製造方法に関し、より詳しくは耐熱性(耐熱保型性、耐熱非付着性等)を有し且つチョコレート本来の持つ風味と食感、口溶け易さを損なわない耐熱性チョコレートおよびその製造方法に関する。
チョコレートは古来より世界中の多くの人に好まれ、おいしさ、栄養価、バラエティーの豊かさ、また近年においてはチョコレート中に含まれるポリフェノールの効能が注目されている。
しかしながら、固形チョコレートは一般的に熱に弱く、特に夏季などの高温雰囲気下では融解しやすく、そのため保型性に劣り、また溶けて手や衣服等に付着しやいという問題がある。すなわち、チョコレートはカカオ豆を原料として加工した油脂分の多い菓子であり、そのチョコレートの主成分であるココアバターは融点が28℃前後であることから、チョコレートがそれ以上の高温度環境下に置かれた場合は溶融し保型性が無くなり、べた付いて商品としての価値が無くなるという欠点を持っている。
通常の固形チョコレートが融解・再結晶化した場合、チョコレートの表面が白く粉をふいたような「ブルーム現象」が発生するという問題もある。
そのため、従来より、チョコレートに耐熱性を付与し高温下や夏季に溶解しないチョコレートの研究開発が数多く行われている。その多くは、チョコレート中に配合されている油脂や糖類あるいは他物質の添加といった化学的な作用に着目したものである(特許文献1、2)。
すなわち、一般的に耐熱チョコレートと言われているものの多くは、高融点の油脂を配合したり、ココアバターの結晶安定化を図るために油脂を添加したり、乳化剤を添加したりしている。しかしながら、高融点の油脂の使用はチョコレートの特性である口溶けや食感を阻害することとなり、そのため耐熱性は多少向上するもののチョコレートの品質を低下させる結果となる。
また、糖類や他物質の使用もチョコレートの風味(食感や食味等)、品質保持、生産性、コスト等から問題が多い。
従って、耐熱チョコレートないしは耐熱性を有すると言われるチョコレート製品は実用化されていないのが現状である。その一方、チョコレートメーカーはもとより、チョコレートの流通・販売業者、消費者、また熱帯等の高温度帯地域に住む人達にとって、高温環境下に置かれても、溶けて形が崩れたり、柔らかくなって、べた付いたりすることがなく、しかも口溶けがよく、さらにチョコレート本来の食感や食味を損なうことがなく、おいしく食べることができる耐熱性チョコレートが切望されているのが実情である。
特開平10-165100号公報 特開2006-340682号公報
本発明は、固形状のチョコレートの耐熱性が向上し、しかも口溶けがよく、チョコレート本来の食感や食味を損なわない、チョコレートの耐熱性付与剤、該耐熱性付与剤を含有した耐熱性チョコレートおよびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、増粘ゲル素材であるキャンデー生地に着目し、該キャンデー生地をチョコレートに均一に混合することにより、チョコレート本来の味、品質、口溶けを損なわずにチョコレートに耐熱性を付与することができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るチョコレートの耐熱性付与剤は、キャンデー生地からなることを特徴とする。前記キャンデー生地は、糖類を主原料とし、さらにゲル化剤および水分を含有しているものが好適であり、とりわけ気泡を含んだ発泡キャンデー生地であるのが好ましい。
本発明の耐熱性チョコレートは、前記チョコレート生地にキャンデー生地が均一に混合されてなるものである。
本発明に係る耐熱性チョコレートの製造方法は、チョコレート生地とキャンデー生地とを溶融状態で均一に混合し、次いで、得られた混合生地を成形し冷却固化することを特徴とする。
本発明によれば、前記キャンデー生地からなる耐熱性付与剤をチョコレートに均一に混合することにより、チョコレート本来の味、品質、口溶けを損なわずにチョコレートに耐熱性を付与することができるという効果がある。そのため、夏季や高温環境地での製造販売、冷蔵保管や保冷輸送から常温保管・常温物流への転換とエネルギーコストの削減などが可能となる。また、チョコレートにキャンデー生地を混合するだけであるから、製造が容易であり、製品の安全性にも優れているという効果もある。
本発明の耐熱性チョコレートは、チョコレート生地に耐熱性付与剤としてキャンデー生地を均一に混合したものである。
本発明におけるキャンデー生地としては、例えば、砂糖、水あめ、糖アルコール類などの糖類を主原料とし、ゼラチン、寒天、アラビアガムなどのゲル化剤、カラギーナン、ガム類など等の安定剤、増粘剤、および水を含み、さらに必要に応じてコーンスターチ等のでんぷん類、香料、色素等を添加したものである。前記糖アルコール類としては、例えばエリスリト−ル、キシリト−ル、ソルビト−ル、マンニト−ル、還元麦芽糖水飴(マルチト−ル)などが挙げられる。
本発明におけるキャンデー生地は、上記各成分に加えて、卵白などの気泡剤を含有した発泡キャンデー生地であるのが好ましい。発泡キャンデー生地は、公知の方法によって製造することができ、例えば、前記した砂糖、水あめ、糖アルコール類などの糖類、でんぷん類を水に溶解させ、これを加熱して煮詰めて糖液を得、これに卵白などの気泡剤およびゲル化剤を加え、高速で攪拌することで製造することができる。発泡キャンデー生地は、必要に応じて、冷却固化させてもよい。
得られた発泡キャンデー生地は、キャンデー中に多量の空気を抱き込んだ弾力性のあるスポンジ状の菓子である。発泡キャンデー生地の例としては、例えばチューイングキャンデー、マシュマロ、ヌガー、メレンゲ、引き飴などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
発泡キャンデー生地は、発泡により固形原料より多いボリュームの空気が混入され、弾力組織を形成すると共に、総量に対して7〜25重量%程度含有される水分が製品の粘度を調整し、より多くの空気の混入を可能にしている。
そのため発泡キャンデー生地は比重が0.2〜0.4程度と軽く、大きい表面積を有する。また、発泡キャンデー生地は融点がおよそ45℃〜50℃であり粘りのあるゲル組織である。
また、チョコレートは水に溶解しないため、水分がチョコレート内に存在すると食感が悪くなるので、通常は水分を含有していない。これに対して、本発明では、水分を含む発泡キャンデー生地をチョコレート生地に均一に混合している。これは、後述するように糖類が網状組織を形成する上で水分が重要な働きをするためである。
本発明におけるチョコレート生地とは、特に限定はなく、一般に定められているチョコレート生地あるいは準チョコレート生地を意味し、例えば、ホワイトチョコレート、ミルクチョコレート、スイートチョコレートなどが含まれる。チョコレート生地あるいは準チョコレート生地とは、カカオマス、ココアバターなどを原料として、必要により糖類、乳製品、他の食用油脂、香料等を加えたものである。また、これらにナッツ、レーズン、アーモンド、ピーナツ、麦、ゴマ、ドライフルーツ、クッキー、ビスケットなどの可食物を組み合わせたものであってもよい。なお、油脂としてベヘン酸(BOB)を添加すると、チョコレート表面が白く変色する所謂ファット・ブルームが発生するのを抑制することができるが、さらに離型性や光沢に対しても有効である。
本発明のチョコレートは、溶融状態のチョコレート生地と、溶融状態の発泡キャンデー生地とを攪拌して、十分に均一に混合し、次いで混合生地を成形・冷却固化することによって製造することができる。
また、本発明のチョコレートは、溶融状態のチョコレート生地に、固形状態の発泡キャンデー生地を混合し加温しながら発泡生地を溶融させ、それらの生地が十分に均一に混合されるよう攪拌し、次いで混合生地を成形・冷却固化することによっても製造することができる。
チョコレート生地に発泡キャンデー生地を添加後の攪拌は短時間でよく、通常約1〜3分間であるのが好ましい。これは、後述するように、発泡キャンデー生地によって形成される網状組織が破壊され、耐熱性が低下するのを抑制するためである。
発泡キャンデー生地のチョコレート生地への混合量は、良好な耐熱性と口溶け性とを有するように適宜決定することができるが、総量に対して発泡キャンデー生地を6〜15重量%程度混合するのが保形性および食感食味のうえから望ましい。
本発明において、発泡キャンデー生地をチョコレート生地に均一に混合することにより、耐熱性が向上する理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。
前記したように、溶融したチョコレート生地中に溶融した発泡キャンデー生地を入れるか、またはチョコレート生地と共に発泡キャンデー生地を加温溶融させ、均一に混合することにより、チョコレート生地は発泡キャンデー生地と一体となり、粘性を有し且つ気泡の入ったスポンジ状のチョコレートとなる。この生地が成形冷却されていく過程の中で粘性を保持していた発泡キャンデー生地はチョコレート中の油脂の影響を受けて粘性が低下し網目状の組織となり、その中にチョコレート粒子が絡み合う構造となることが推察される。
この状態変化によりチョコレートは砂糖や水あめ等の糖類による網目状の糖骨格を持った組織となり、耐熱性と保型性が保持されるのである。発泡キャンデー生地中の主成分である砂糖や水あめはチョコレート中の他成分と一体化し、口中で溶解することで食感や口溶けに違和感のないチョコレートとなる。これは発泡キャンデー生地の中に浸み込んだチョコレートが、キャンデーの糖骨格組織に支えられた状態に変化したためと考えられる。砂糖は融点が150℃以上であり通常の高温下では溶融しないが、綿あめや粉状になった糖類は口中の水分の影響で容易に溶解する。本発明はこのような組織と状態変化で成り立っていると考えられる。
本発明の耐熱性チョコレートは一般的な板チョコレートの他に粒状チョコレート、センタークリーム入りチョコレート、豆類入りチョコレート、糖衣掛けチョコレート、チョコレートバー、クッキーやスナック等の焼き菓子と組み合わせたチョコスナック等として利用できる。
以下、実施例を挙げて本発明の耐熱性チョコレートを詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、%は重量%を意味し、部は重量部を意味する。
(1)発泡キャンデー生地の調製
砂糖35.4% 水あめ35.4% 水15.52% 麦芽糖10.10%を配合した糖類原料を合わせて溶解した糖液を115℃で煮詰めた後 予め水で溶解したゼラチン3.4% 香料(バニラフレーバー)0.08%を加え、生地中に空気を抱き込ませることができる連続ミキサーで攪拌して起泡させ、比重0.3〜0.35に調整した。起泡したキャンデー生地をコーンスターチの粉中に入れ乾燥、水分調整を行い、適当な大きさにカットし、発泡キャンデー生地(水分17%)を得た。
(2)耐熱性チョコレートの調製
チョコレート生地として明治製菓(株)製の「ミルクチョコレートMT66」を使用した。このチョコレート生地200部を湯煎にて溶融させ、常法に従ってテンパリングした後、BOB(ベヘン酸、C22:0の安定な多形(β2型))の6部を添加し、湯煎にて35℃に保温した。
一方、前記(1)で得られた所定量の発泡キャンデー生地を容器に入れ、60℃の湯煎にて加温溶融させた。溶融した発泡キャンデー生地を35℃まで放置し、ついで、この溶融した発泡キャンデー生地14部(総量に対して6.4%)を前記溶融したチョコレート生地200部に加えて、均一な混合物になるようにミキサーで1分間攪拌し、これを台形型に流し込んで成形し、冷却固化して耐熱性チョコレートを得た。
溶融したチョコレート生地に、溶融した発泡キャンデー生地20部(総量に対して9%)を加えて均一に混合した他は、実施例1と同様にして耐熱性チョコレートを得た。
[比較例]
溶融した発泡キャンデー生地を添加しなかった他は実施例1と同様にしてチョコレートを得た。
上記実施例および比較例で得た各チョコレートについて、食感(口溶け性)、耐熱性を調べた。それぞれの評価方法は以下の通りである。なお、食感(口溶け性)および食味または風味については、15名のパネラーによる官能検査で評価した。
(a)食感(口溶け性)
○ 良い
△ やや良い
× 悪い
(b)耐熱性
チョコレートを33℃および40℃の恒温器内にそれぞれ一晩放置した後、以下の基準で評価した。
○ 指で触れても変形せず、且つチョコレートが指に付着しない
△ 指で触れると変形するが、チョコレートが指に付着しない
× 指で触れると変形し、且つチョコレートが指に付着する
これらの評価結果を配合割合と共に表1に示す。
(c)食味または風味
○ おいしい
△ ややおいしくない
× おいしくない
Figure 0005311561
表1から明らかなように、チョコレート生地にキャンデー生地を均一に混合することにより、食感(口溶け性)や食味または風味を損なわずにチョコレートの耐熱性が向上することがわかる。

Claims (2)

  1. チョコレート生地に、糖類を主原料とし、さらにゲル化剤および水分を含有し、かつ気泡を含んだ発泡キャンデー生地が溶融状態で均一に混合されてなる耐熱性チョコレート。
  2. チョコレート生地と、糖類を主原料とし、さらにゲル化剤および水分を含有し、かつ気泡を含んだ発泡キャンデー生地とを溶融状態で均一に混合し、次いで、得られた混合生地を成形し冷却固化する、ことを特徴とする耐熱性チョコレートの製造方法。
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