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JP5310193B2 - セメント組成物の製造方法 - Google Patents

セメント組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セメント組成物及びその製造方法に関する。
セメント産業はCO排出量の多い主要業種として位置づけられており、温暖化防止の観点から、CO排出量の削減が望まれている。セメントの製造段階で発生するCOの大部分は、セメントクリンカー原料である石灰石の脱炭酸反応によるものである。したがって、セメント1tを製造する際排出されるCO量は、普通ポルトランドセメントより高炉セメント等の混合セメントの方が少ない。
CO排出量の観点からみると、高炉スラグや石灰石微粉末、フライアッシュ等の混合材のセメントへの活用は重要である。また、混合材は各種セメントの物性改善にも利用されており、CA量の多いセメントに高炉スラグや石灰石微粉末を添加した場合、流動性が改善されることが報告されている(非特許文献1、2)。さらに、都市ごみ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料とした焼成物に混合材を添加し、流動性や強度を改善することも報告されている(例えば、特許文献1)。
特開2004−189546号公報
坂井悦郎,丸屋英二,新大軌,山田貴之:アルミネート相量の異なるセメントの流動性に及ぼす高炉スラグ微粉末の影響,セメント・コンクリート論文集,No.61,pp.8−13,2007 一瀬龍太朗,坂井悦郎,大門正機,丸屋英二:石灰石微粉末を添加したアルミネート高含有セメントの流動性,第62回セメント技術大会講演要旨,pp.32−33,2008
しかしながら、セメントに混合材を添加した場合、セメントクリンカーの配合量が減少することになる。このことは、セメントクリンカーの原料として利用される粘土代替廃棄物の使用量の低減を招き、循環型社会の形成に支障を来たす恐れがある。廃棄物使用量を維持拡大しつつ、混合材を利用してCO排出量を低減するためには、セメントクリンカーの鉱物組成を変え、混合材量を適正に定める必要がある。また、このようなセメントを汎用的に使用するためには、従来の普通ポルトランドセメントと同等の物性(強度発現性や流動性)を有することが求められる。
このように、従来のセメント組成物では、CO排出量の低減と廃棄物使用量の維持拡大、物性の確保という総合的な観点に立脚したセメントの材料構成について、十分に確立されているとは言えなかった。
そこで、本発明は、従来の普通ポルトランドセメントよりCO排出量が低減され、粘土代替廃棄物の使用量が多く、かつ、強度発現性及び流動性に十分優れたセメント組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために、粘土代替廃棄物を原料として使用したセメントクリンカーと、混合材とを含むセメント組成物において、セメントクリンカーの鉱物組成及び混合材の添加条件と、強度発現性及び流動性との関係について詳細に検討した。その結果、粘土代替廃棄物の使用量を低減することなく、混合材を従来の普通ポルトランドセメントよりも多く添加することができ、かつ、強度発現性及び流動性に優れたセメント組成物となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、セメントクリンカー、石膏及び混合材を含むセメント組成物であって、混合材の含有量が5質量%を超えかつ15質量%以下であり、混合材は、高炉スラグ、シリカ質混合材、フライアッシュ及び石灰石微粉末からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機粉末を含有し、セメントクリンカーは、CAF量が9.0質量%未満、かつ、CA量及びCAF量の合計が20.0質量%以上23.0質量%未満であり、CS量が50.0〜70.0質量%であるセメント組成物を提供する。
本発明のセメント組成物は、セメント1t当りで比較すると、従来の普通ポルトランドセメントよりセメントクリンカー原料である石灰石の使用量が少なくCO排出量が低減され、また、粘土代替廃棄物の使用量を増すことができ、さらには、普通ポルトランドセメントと同等以上の強度発現性及び流動性を得ることができる。
上記セメント組成物において、流動性をより一層向上する観点から、混合材は、石灰石微粉末及び高炉スラグを含有することが好ましい。また、混合材は、石灰石微粉末及び高炉スラグの合計量を基準として、石灰石微粉末を20〜90質量%含有することがより好ましい。
適度な強度発現性と流動性とを確保する観点から、上記石灰石微粉末のブレーン比表面積は3100〜4300cm/gであることが好ましく、上記高炉スラグのブレーン比表面積は3000〜4000cm/gであることが好ましい。
また、本発明のセメント組成物において、セメントクリンカー1トン当たりの原料原単位は、石灰石が1000〜1200kg、粘土代替廃棄物が220〜400kgであることが好ましい。これにより、CO排出量の低減及び資源の循環に貢献することができる。
また、本発明のセメント組成物において、セメント組成物1トン当たりのセメントクリンカーの原料原単位は、石灰石が850〜1060kg、粘土代替廃棄物が210〜300kgであることが好ましい。これにより、CO排出量の低減及び資源の循環に貢献することができる。
上記本発明のセメント組成物は、SOを2.2〜4.0質量%含むと、良好な凝結特性及び流動性を示すものとなる。
また、本発明は、セメントクリンカー、石膏及び混合材を含むセメント組成物の製造方法であって、混合材は、高炉スラグ、シリカ質混合材、フライアッシュ及び石灰石微粉末からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機粉末を含有し、セメントクリンカーは、CAF量が9.0質量%未満、かつ、CA量及びCAF量の合計が20.0質量%以上23.0質量%未満であり、CS量が50.0〜70.0質量%であり、セメントクリンカーに対し、混合材を5質量%を超えかつ15質量%以下添加する工程を有するセメント組成物の製造方法を提供する。
この製造方法によれば、粘土代替廃棄物の使用量を低減することなく、混合材を従来の普通ポルトランドセメントよりも多く添加することができ、かつ、強度発現性及び流動性に優れたセメント組成物を得ることができる。
本発明のセメント組成物によれば、従来の普通ポルトランドセメントよりCO排出量が少なく、低炭素化社会に貢献することができると共に、廃棄物の使用量が多く、資源循環社会にも貢献することができる。さらに、本発明のセメント組成物は、混合セメントであっても従来の普通ポルトランドセメントと同等以上の強度発現性及び流動性を有し、汎用的に使用することができる。
また、本発明のセメント組成物の製造方法によれば、CO排出量が少なく、廃棄物の使用量が多く、物性にも優れた実用性の高いセメント組成物を製造することができる。これにより、環境負荷の小さいコンクリート構造物を実現できることが期待される。
以下、本発明の好適な実施形態について詳しく説明する。
[セメント組成物]
本発明のセメント組成物は、セメントクリンカー、石膏及び混合材を含み、混合材の含有量が5質量%を超えかつ15質量%以下であり、混合材は、高炉スラグ、シリカ質混合材、フライアッシュ及び石灰石微粉末からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する無機粉末であり、セメントクリンカーは、CAF量が9.0質量%未満、かつ、CA量及びCAF量の合計が20.0質量%以上23.0質量%未満であり、CS量が50.0〜70.0質量%である。
(セメントクリンカー)
セメントクリンカーは、CA、CAF、CS及びCSを含有するものであり、その組成は、ボーグ式により算出することができる。ボーグ式は、セメントクリンカー中の主要な4鉱物の含有量を求める計算式である。セメントクリンカーの場合のボーグ式は、下記のように表される。
S量=(4.07×CaO)―(7.60×SiO)―(6.72×Al)―(1.43×Fe
S量=(2.87×SiO)―(0.754×CS)
A量=(2.65×Al)―(1.69×Fe
AF量=3.04×Fe
式中の「CaO」、「SiO」、「Al」及び「Fe」は、それぞれ、セメントクリンカーにおけるCaO、SiO、Al及びFeのセメントクリンカー全体質量に対する含有割合(質量%)である。これらの含有割合は、JIS R 5202「ポルトランドセメントの化学分析方法」あるいはJIS R 5204「セメントの蛍光X線分析方法」により測定することができる。
A量及びCAF量の合計が20.0質量%未満であると、セメントクリンカー原料として使用する粘土代替廃棄物の量が少なくなり、資源循環型社会への貢献が小さくなる。CA及びCAFの合計量が23.0質量%以上になると、セメント組成物の強度発現性が低下するほか、セメントクリンカーの融液量が多くなり、通常のロータリーキルンで安定的に製造することが難しくなる。より好ましいCA量及びCAF量の合計は、20.0質量%以上22.0質量%未満であり、さらに好ましくは20.0質量%以上21.0質量%未満である。
AF量が9.0質量%以上であると、セメント組成物の強度発現性が低下するほか、環境基準に定められる六価クロム等の重金属含有量が増加する。なお、CAF量が過剰に少ないと、セメントクリンカー原料の融点が上がり焼成が難しくなるため、CAF量は5.0質量%以上とすることが好ましい。より好ましいCAF量の範囲は、6.0〜8.5質量%であり、さらに好ましくは7.5〜8.5質量%である。
なお、CA量が11.0質量%以下であると、粘土代替廃棄物の量が少なくなるほかセメント組成物の強度発現性が低下する。一方、CA量が少ないほど流動性が良好となるため、CA量は15.0質量%以下とすることが好ましい。より好ましいCA量の範囲は、12.0〜14.0質量%であり、さらに好ましくは12.0〜13.0質量%である。
S量が50.0質量%未満であると、中長期的な強度発現性が低下する。なお、同様にCS量が15.0質量%未満であると、長期の強度発現性が低下してしまう。CO排出量が少なく、粘土代替廃棄物の使用量を多くしながら、中長期の強度発現の点で更に優れるものとするため、セメントセメントクリンカーは、CS量が50.0〜65.0質量%、CS量が15.0〜30.0質量%であることが好ましく、CS量が50.0〜60.0質量%、CS量が16.0〜23.0質量%であることがより好ましい。
セメントクリンカー1トン当たりの原料原単位は、石灰石が1000〜1200kg、粘土代替廃棄物が220〜400kgであることが好ましい。ここで、セメントクリンカー1トン当たりの原料原単位とは、セメントクリンカーを1トン製造するための原材料の調合量を意味する。セメントクリンカー1トン当たりの原料原単位は、石灰石が1050〜1200kgであり、粘土代替廃棄物が230〜380kgであることがより好ましく、石灰石が1100〜1200kgであり、粘土代替廃棄物が240〜350kgであることが更に好ましい。これにより、CO排出量の低減と資源循環に一層貢献することができる。
また、本発明のセメント組成物において、セメント組成物1トン当たりのセメントクリンカーの原料原単位は、石灰石が850〜1060kg、粘土代替廃棄物が210〜300kgであることが好ましく、石灰石が900〜1000kgであり、粘土代替廃棄物が210〜250kgであることが更に好ましく、石灰石が920〜990kgであり、粘土代替廃棄物が215〜240kgであることが最も好ましい。これにより、CO排出量の低減及び資源の循環に貢献することができる。
なお、粘土代替廃棄物としては、鉄鋼スラグ、石炭灰及び建設発生土から選ばれる少なくとも1種を使用することが望ましい。鉄鋼スラグとしては、高炉スラグや製鋼スラグが挙げられる。石炭灰は、石炭火力発電所等から発生するものであり、シンダアッシュ、フライアッシュ、クリンカアッシュ及びボトムアッシュが挙げられる。建設発生土は、建設工事の施工に伴い副次的に発生する残土、泥土及び廃土が挙げられる。混合材として使用される高炉スラグや石灰石微粉末は、この原単位には含まれない。
(石膏)
セメント組成物中の石膏は、JIS R 9151「セメント用天然せっこう」に規定される品質を満足することが望ましい。石膏としては、具体的には、二水石膏、半水石膏、不溶性無水石膏が好適に用いられる。
(混合材)
本実施形態のセメント組成物において、混合材は、高炉スラグ、シリカ質混合材、フライアッシュ及び石灰石微粉末からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機粉末を含有するものである。混合材は、JIS R 5211「高炉セメント」で規定される高炉スラグ、JIS R 5212「シリカセメント」で規定されるシリカ質混合材、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」で規定されるフライアッシュ、石灰石微粉末を利用することができる。ここで、石灰石微粉末は、セメント製造用の石灰石を粉砕したものが好適に使用できるが、炭酸カルシウムを主成分とする無機質の粉末状物質であれば、廃コンクリート等を粉砕したものや、化学的に精製した炭酸カルシウム等も代用することができる。
セメント組成物中に含まれる混合材は、5質量%を超えかつ15質量%以下である。混合材量が5質量%以下であると、セメント1tを製造する際のCO排出量を低減し難くなる。また、混合材量が15質量%を超えると、セメントクリンカー量が過剰に少なくなり、鉱物組成を調節しても粘土代替廃棄物の使用量が普通ポルトランドセメントよりも減少してしまう。CO排出量の低減と廃棄物使用量の増加を満足するため、セメント組成物中の混合材の含有量は、6〜15質量%であることが好ましく、7〜12質量%以下であることがより好ましく、8〜12質量%であることが更に好ましい。
混合材は、石灰石微粉末及び高炉スラグのうち少なくともいずれか一方を含有することが好ましく、石灰石微粉末及び高炉スラグの混合物であることがより好ましい。この場合、石灰石微粉末及び高炉スラグの合計量を基準として、石灰石微粉末の割合は20〜90質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましく、60〜90質量%であることが更に好ましい。これにより、セメント組成物の強度発現性をより一層向上でき、さらに流動性も優れたものとすることができる。ポルトランドセメントの鉱物組成を変え、混合材を添加した場合について、このような混合効果や適正割合に関する知見は従来知られていない。
上記石灰石微粉末のブレーン比表面積は、3100〜4300cm/gであることが好ましく、3500〜4000cm/gであることがより好ましい。上記高炉スラグのブレーン比表面積は3000〜4000cm/gであることが好ましく、3200〜3800cm/gであることがより好ましい。
また、本発明のセメント組成物は、さらにセメント組成物中のSO量が2.2〜4.0質量であることが好ましく、2.2〜3.5質量%であることがより好ましく、2.5〜3.5質量%であることが更に好ましい。これにより、セメント組成物は良好な凝結特性が得られ、流動性もより優れたものを得ることができる。なお、SO量は、JIS R 5202「ポルトランドセメントの化学分析方法」あるいはJIS R 5204「セメントの蛍光X線分析方法」により測定することができる。
(セメント組成物の製造方法)
本発明のセメント組成物の製造方法は、セメントクリンカー、石膏及び混合材を含むセメント組成物の製造方法であって、混合材は、高炉スラグ、シリカ質混合材、フライアッシュ及び石灰石微粉末からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機粉末を含有し、セメントクリンカーは、ボーグ式により算出したときに、CAFが9.0質量%未満、かつ、CA量及びCAF量の合計が20.0質量%以上23.0質量%未満であり、CS量が50.0〜70.0質量%であり、セメントクリンカーに対し、混合材を5質量%を超えかつ15質量%以下添加する工程を有することを特徴とする。
本発明におけるセメント組成物の製造方法は、製造設備に制限はなく、既存のセメント製造設備で製造することが可能である。また、セメントクリンカーは、その鉱物組成が上述した範囲を満足するものであれば、その作製条件によらず本実施形態において使用することができる。セメント組成物は、例えば、上記組成を満足するセメントクリンカーを1種単独で使用して調製してもよいし、2種以上のセメントクリンカーを混合して調製することも可能である。石膏や混合材の添加方法も特に制限されるものではなく、セメントクリンカーの粉砕時に添加する方法、又はセメントクリンカーの粉砕物に後添加して混合する方法を用いることができる。
本実施形態の製造方法によれば、従来の普通ポルトランドセメントより多くの混合材を含有し、セメントクリンカーの含有量を低減したセメント組成物でも、粘土代替廃棄物の使用量が多く、かつ、強度発現性及び流動性にも優れたセメント組成物を得ることができる。
本発明のセメント組成物は、強度発現性に優れ、流動性も良好であることから、一般の普通コンクリートや高強度コンクリートのほか、普通ポルトランドセメントと同等の用途に使用できる。また、本発明のセメント組成物は、セメント系固化材、セルフレベリング材等の用途においても、好適に使用することができる。さらに、本発明のセメント組成物は、CO排出量が少なく、粘土代替廃棄物の使用量も多いことから、これを用いたコンクリートや製品は、環境負荷を小さくすることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[使用材料]
セメントクリンカーの原料として、石灰石、珪石及び鉄精鉱と、粘土代替廃棄物である石炭灰及び高炉スラグとを使用した。また、セメントクリンカー中のNaO、KO及びSO量を調整するため、各種試薬を併用した。混合材として、高炉スラグ及び石灰石微粉末を使用した。以下に使用したセメント組成物原料をまとめて記す。
(1)セメント組成物原料
(i)セメントクリンカー原料
石灰石(CaO含有量=55.2質量%)
珪石(SiO含有量=98.8質量%)
高炉スラグ(Al含有量=14.6質量%)
石炭灰(Al含有量=25.7質量%)
鉄精鉱(Fe含有量=64.3質量%)
硫酸カルシウム二水和物(試薬特級、関東化学株式会社製)
炭酸ナトリウム(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)
炭酸カリウム(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)
(ii)石膏
二水石膏:硫酸カルシウム二水和物(試薬特級、関東化学株式会社製、ig.loss=20.51質量%、CaO含有量=31.92質量%、SO含有量=45.57質量%)
半水石膏:上記二水石膏を大気中で加熱調製した。
(iii)混合材
高炉スラグ及び石灰石微粉末の品質を下記表1に示す。なお、高炉スラグの化学組成はJIS R 5202「ポルトランドセメントの化学分析方法」により、石灰石微粉末の化学組成はJIS M 8850「石灰石分析方法」により測定した。ブレーン比表面積はJIS R 5201「セメントの物理試験方法」に従い、試料ベッドのポロシティーは、高炉スラグで0.530、石灰石微粉末では0.470とした。
Figure 0005310193
(2)減水剤
高性能AE減水剤:レオビルドSP8SBsX(BASFポゾリス株式会社製、商品名)
(3)練混ぜ水
イオン交換水
[セメントクリンカーの製造]
上記セメントクリンカー原料を表2に示す配合量で混合し、電気炉(株式会社モトヤマ製)にて1500℃で30分間焼成し、表3に示すセメントクリンカーを試製した。得られたセメントクリンカーについて、JIS R 5202「ポルトランドセメントの化学分析方法」による化学分析及びボーグ式に基づいて、鉱物組成(CS量、CS量、CA量及びCAF量)とSO量を求めた。ここで、表2及び3中、No.2のセメントクリンカーは本発明の実施形態に係るものであり、No.1のセメントクリンカーは比較のための普通ポルトランドセメントクリンカーに相当するものである。
Figure 0005310193

Figure 0005310193
[セメント組成物の調製]
No.1及び2の各セメントクリンカーを、ブレーン比表面積で3200±50cm/gとなるまで鉄製ボールミルを用いて粉砕した後、二水石膏及び半水石膏を添加し、更に高炉スラグ及び/又は石灰石微粉末を添加して、セメント組成物をそれぞれ調製した。セメント組成物中の全石膏量に対する半水石膏の割合(半水化率)は、いずれも50質量%とした。また、実施例2〜4、参考例1及び5では、高炉スラグ及び/又は石灰石微粉末を10質量%添加・混合し、本発明の実施形態に係るセメント組成物を調製した。さらに、比較例1及び2では、高炉スラグ又は石灰石微粉末を5質量%添加・混合し、普通ポルトランドセメントに相当するセメント組成物を調製した。調製したセメント組成物の組成を表4に示す。
[セメントペーストの強度発現性評価]
実施例、参考例及び比較例で調製したセメント組成物100質量%に対し、それぞれ水40質量%を加え、ハンドミキサーで90秒間攪拌することで、セメントペーストを調製した。セメントペーストの調製は、20℃に設定した恒温室内で実施した。得られたペーストを1cm×1cm×6cmの型枠に流し入れ、相対湿度90%以上の環境で1日間静置した後、脱型して水中養生を行い、材齢28日における圧縮強さを測定した。圧縮強さ測定結果を表4に示す。
Figure 0005310193
本発明の実施形態に係るセメント組成物である実施例2〜4、参考例1及び5は、その硬化体が、普通ポルトランドセメントに相当する比較例1及び2のセメント組成物の硬化体に比べ、十分に高い圧縮強さを示した。また、実施例2〜4、参考例1及び5は、セメント組成物1t当りの石灰石原単位は普通ポルトランドセメントより小さく、一方で粘土代替廃棄物原単位は大きい。このように、鉱物組成と混合材添加条件を適正に制御することで、普通ポルトランドセメントよりもCO排出量が少なく、粘土代替廃棄物使用量が多く、かつ、強度発現性に優れたセメント組成物が得られることが確認された。また、混合材として高炉スラグ及び石灰石微粉末を併用した実施例2〜4は、強度発現性が非常に良好である。これは、カルシウムアルミネートモノカーボネート水和物(CA・CaCO・11HO)の生成やCSの水和促進によると本発明者らは推測している。
[セメントペーストの流動性評価]
実施例2〜4、参考例1及び5のセメント組成物100質量%に対し、それぞれ水35質量%及び高性能AE減水剤0.40質量%を加え、ハンドミキサーにて2分間攪拌することでセメントペーストを調製した。セメントペーストの調製は、20℃に設定した恒温室内で行った。調製したセメントペーストを相対湿度90%以上の湿空環境で5分間静置した後、流動性の評価を実施した。流動性の評価は、二重円筒型回転粘度計(Haake社製Rotovisco RV1)を用い、せん断速度を0s−1〜200s−1まで2分間で変化させ、100s−1における見かけ粘度を測定した。セメントペーストの流動性の評価結果を表5に示す。表中の見かけ粘度は、値が小さいほど流動性が良いことを示している。
Figure 0005310193
本発明の実施形態に係るセメント組成物の中でも、高炉スラグと石灰石微粉末を併用した実施例2〜4は、見かけ粘度が小さく流動性が良好である。特に、混合材中の石灰石微粉末の割合が70%である実施例3は、最も流動性が優れている。このように、高炉スラグと石灰石微粉末の割合を適正に制御することで、セメント組成物の流動性を十分に向上することができる。
以上の結果より、従来の普通ポルトランドセメントより多くの混合材を含有し、セメントクリンカーの含有量を低減したセメント組成物でも、粘土代替廃棄物の使用量を多くすることができ、かつ、強度発現性及び流動性に優れたセメント組成物を得ることができることが確認された。本発明のセメント組成物は、普通ポルトランドセメントの代替として、幅広い用途に使用することができる。また、本発明のセメント組成物は、CO排出量が少なく、粘土代替廃棄物の使用量も多いことから、低炭素化社会と資源循環社会に貢献することができる。

Claims (4)

  1. セメントクリンカー、石膏及び混合材を含むセメント組成物の製造方法であって、
    前記混合材は、石灰石微粉末及び高炉スラグを含有し、かつ、前記石灰石微粉末の含有量が、前記石灰石微粉末及び前記高炉スラグの合計量を基準として20〜90質量%であり、
    前記セメントクリンカーは、ボーグ式により算出したときに、AF量が7.5〜8.5質量%、かつ、CA量及びCAF量の合計が20.0質量%以上21.0質量%未満であり、CS量が50.0〜70.0質量%であり、
    前記セメントクリンカーに対し、前記混合材を5質量%を超えかつ15質量%以下添加する工程を有し、
    前記セメント組成物中のSO 量が2.2〜4.0質量%である、セメント組成物の製造方法。
  2. 前記石灰石微粉末のブレーン比表面積が3100〜4300cm/gであり、前記高炉スラグのブレーン比表面積が3000〜4000cm /gである、請求項1に記載のセメント組成物の製造方法
  3. 前記セメントクリンカー1トン当たりの原料原単位は、石灰石が1000〜1200kg、粘土代替廃棄物が220〜400kgである、請求項1又は2に記載のセメント組成物の製造方法
  4. 前記セメント組成物1トン当たりのセメントクリンカーの原料原単位は、石灰石が850〜1060kg、粘土代替廃棄物が210〜300kgである、請求項1〜のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造方法
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