以下、本発明に係る抵抗測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、本発明に係る抵抗測定装置1の構成について、図面を参照して説明する。
図1に示す抵抗測定装置1は、クランプセンサCS1、およびクランプセンサCS1とケーブル3を介して接続された装置本体部4を備え、測定対象回路5の抵抗(ループ抵抗)の抵抗値Rxを測定可能に構成されている。
クランプセンサCS1は、一例として、図10に示すように、測定対象回路5をクランプするクランプ部2、およびクランプ部2を開閉自在に保持するグリップ部6を備えている。クランプ部2は、図1,10,11に示すように、注入クランプ部11、検出クランプ部21およびハウジング31を備えて構成されている。本例では、ハウジング31は、図10に示すように、絶縁性を有する樹脂材料を用いて構成された第1ハウジング32および第2ハウジング33を備えて、クランプ型のハウジングに構成されている。本例では、第1ハウジング32および第2ハウジング33は、一例として、ほぼ同形状に形成されると共に、互いに対向した状態でグリップ部6に回動自在に取り付けられている。また、第1ハウジング32および第2ハウジング33の各一端部(同図中の上端部)は、同図に示すように、グリップ部6から同一方向(同図では上方向)に突出すると共に弧状に形成されて、互いの先端が突き合わされた状態において全体として環状になるように構成されている。
また、第1ハウジング32および第2ハウジング33の各他端部は、一例として、グリップ部6の中央部位(符号Oで示す位置)において回動自在に軸支されている。また、第1ハウジング32および第2ハウジング33の各他端部の先端には、グリップ部6から突出した状態でレバー部LE1,LE2が形成されている。また、第1ハウジング32および第2ハウジング33は、グリップ部6内に配設された不図示のスプリングにより、第1ハウジング32および第2ハウジング33の各一端部が突き合わされる方向(レバー部LE1,LE2がグリップ部6から突出する方向)に常時付勢されている。この構成により、レバー部LE1,LE2をスプリングの付勢力に抗してグリップ部6内に押し込む操作を行うことにより、第1ハウジング32および第2ハウジング33を互いに逆方向に回動させて、各々の一端部同士を離間させることが可能となっている。
また、第1ハウジング32および第2ハウジング33は、図11に示すように、厚み方向に沿って3つに分割される3ピース構造に構成されている。具体的には、第1ハウジング32は、同図に示すように、中間ハウジング34と、中間ハウジング34の両側に中間ハウジング34を挟んで配置される一対の側部ハウジング35,36とで3ピース構造に構成されている。同様にして、第2ハウジング33は、同図に示すように、中間ハウジング37と、中間ハウジング37の両側に中間ハウジング34を挟んで配置される一対の側部ハウジング38,39とで3ピース構造に構成されている。
次いで、第1ハウジング32を構成する各ハウジング34,35,36の構造、第2ハウジング33を構成する各ハウジング37,38,39の構造、並びに第1ハウジング32および第2ハウジング33の全体構造の詳細について説明する。なお、第1ハウジング32および第2ハウジング33は、上記したようにほぼ同形状に形成され、また全体構造もほぼ同じであるため、図12を参照して第1ハウジング32を構成する各ハウジング34,35,36の構造と、第1ハウジング32の全体構造とについて説明し、第2ハウジング33を構成する各ハウジング37,38,39の構造、および第2ハウジング33の全体構造の説明については、その説明を省略する。
中間ハウジング34は、その平面形状が図10に示される第1ハウジング32の平面形状とほぼ同形状に形成された板状体34a、板状体34aの一方の面に板状体34aの外縁に沿って立設された壁部34b、および板状体34aの他方の面に板状体34aの外縁に沿って壁部34bと逆方向に立設された壁部34cを備えて構成されている。一方の側部ハウジング35は、その平面形状が図10に示される第1ハウジング32の平面形状とほぼ同形状(中間ハウジング34の平面形状とほぼ同形状でもある)に形成された板状体35a、および板状体35aにおける中間ハウジング34との対向面に板状体35aの外縁に沿って立設された壁部35bを備えて構成されている。他方の側部ハウジング36は、その平面形状が図10に示される第1ハウジング32の平面形状とほぼ同形状(中間ハウジング34の平面形状とほぼ同形状でもある)に形成された板状体36a、および板状体36aにおける中間ハウジング34との対向面に板状体36aの外縁に沿って立設された壁部36bを備えて構成されている。このため、板状体35aの壁部35bと板状体34aの壁部34bとが突き合わされ、かつ板状体36aの壁部36bと板状体34aの壁部34cとが突き合わされた状態で、中間ハウジング34の両側に中間ハウジング34を挟んで各側部ハウジング35,36を配置して構成された第1ハウジング32の内部には、図11,12に示すように、板状体35a、その壁部35b、板状体34aおよびその壁部34b間(ハウジング34,35間)に空隙X1が形成されると共に、板状体36a、その壁部36b、板状体34aおよびその壁部34c間(ハウジング34,36間)に空隙X2が形成されている。また、第1ハウジング32の各ハウジング34,35,36と同様の構成を有するハウジング37,38,39によって構成されて、第1ハウジング32と同様の全体構造を有する第2ハウジング33の内部にも、図11に示すように、ハウジング37,38間に空隙X1が形成されると共に、ハウジング37,39間に空隙X2が形成されている。
注入クランプ部11は、一例として、図10,11に示すように、弧状の第1注入クランプ部11aと弧状の第2注入クランプ部11bとで構成されている。また、第1注入クランプ部11aは、第1ハウジング32における一端部側の空隙X1内に配設され、第2注入クランプ部11bは、第2ハウジング33における一端部側の空隙X1内に配設されている。検出クランプ部21は、一例として、図11に示すように、弧状の第2検出クランプ部21aと弧状の第2検出クランプ部21bとで構成されている。また、第1検出クランプ部21aは、第1ハウジング32における一端部側の空隙X2内に配設され、第2検出クランプ部21bは、第2ハウジング33における一端部側の空隙X2内に配設されている。
この構成により、図11,12に示すように、第1ハウジング32の空隙X1内に配設された第1注入クランプ部11aと、同じ第1ハウジング32の空隙X2内に配設された第1検出クランプ部21aとは、第1ハウジング32を構成する中間ハウジング34の板状体34aのみを介して、それぞれの厚み方向(図12中の左右方向。第1ハウジング32の厚み方向でもある)に沿って積層された状態となっている。同様にして、第2ハウジング33の空隙X1内に配設された第2注入クランプ部11bと、同じ第2ハウジング33の空隙X2内に配設された第2検出クランプ部21bとは、第2ハウジング33を構成する中間ハウジング37の不図示の板状体(中間ハウジング34の板状体34aに対応する部材)のみを介して、図11に示すように、それぞれの厚み方向(第2ハウジング33の厚み方向でもある)に沿って積層された状態となっている。つまり、注入クランプ部11に発生する磁界の検出クランプ部21への漏れ込みを低減させるためのシールド材(金属製の板体やシート材)の注入クランプ部11と検出クランプ部21との間への配置を省略した構成となっている。したがって、このクランプ部2(ハウジング31)では、注入クランプ部11および検出クランプ部21全体の厚み(図12中の左右方向の長さ)が大幅に低減されている。
次いで、第1注入クランプ部11a、第2注入クランプ部11b、第2検出クランプ部21a、および第2検出クランプ部21bの具体的な構成について、図12を参照して説明する。なお、第2注入クランプ部11bは第1注入クランプ部11aとほぼ同じ構成を有し、かつ第2検出クランプ部21bは第1検出クランプ部21aとほぼ同じ構成を有しているため、第1注入クランプ部11aおよび第1検出クランプ部21aの構成について説明し、第2注入クランプ部11bおよび第2検出クランプ部21bの構成についての説明を省略する。
第1注入クランプ部11aは、図12に示すように、一方の弧状コア12a、この弧状コア12aに装着された一方のボビン14a、およびこのボビン14aに巻回された一方の巻線13aで構成されている。また、図示はしないが、上記した第2注入クランプ部11bは、第1注入クランプ部11aと同様にして、他方の弧状コア12a、この弧状コア12aに装着された他方のボビン14a、およびこのボビン14aに巻回された他方の巻線13aで構成されている。この場合、2つの弧状コア12a,12aは、図1に示す第1環状コア12が2つに分割されたものである。また、2つのボビン14a,14aは、絶縁性を有する樹脂材料で構成されている。また、2つの巻線13a,13aは、直列に接続されて、図1に示す第1巻線13(既知のターン数:N1)、つまり1つの注入コイルを構成している。
第1検出クランプ部21aは、図12に示すように、一方の弧状コア22a、この弧状コア22aに装着された一方のボビン24a、およびこのボビン24aに巻回された一方の巻線23aで構成されている。また、図示はしないが、上記した第2検出クランプ部21bは、第1検出クランプ部21aと同様にして、他方の弧状コア22a、この弧状コア22aに装着された他方のボビン24a、およびこのボビン24aに巻回された他方の巻線23aで構成されている。この場合、2つの弧状コア22a,22aは、図1に示す第2環状コア22が2つに分割されたものである。また、2つのボビン24a,24aは、絶縁性を有する樹脂材料で構成されている。また、2つの巻線23a,23aは、直列に接続されて、図1に示す第2巻線23(既知のターン数:N2)、つまり1つの検出コイルを構成している。
このように構成された注入クランプ部11および検出クランプ部21は、先端が開閉自在なクランプ型の樹脂材料製ハウジング31に共に収容されている。具体的には、上記したように、第1ハウジング32における一端部側の空隙X1内に注入クランプ部11を構成する第1注入クランプ部11aが配設されると共に、第2ハウジング33における一端部側の空隙X1内に注入クランプ部11を構成する第2注入クランプ部11bが配設され、かつ第1ハウジング32における一端部側の空隙X2内に検出クランプ部21を構成する第2検出クランプ部21aが配設されると共に、第2ハウジング33における一端部側の空隙X2内に検出クランプ部21を構成する第2検出クランプ部21bが配設されている。このため、ハウジング31の開閉動作(各ハウジング32,33の回動動作)に伴い、注入クランプ部11の第1環状コア12、および検出クランプ部21の第2環状コア22が同時に開閉する。つまり、ハウジング31の開閉動作に伴い、第1注入クランプ部11aおよび第2注入クランプ部11bが開閉すると共に、第1検出クランプ部21aおよび第2検出クランプ部21bが開閉する。
したがって、ハウジング31が不図示の開状態(第1ハウジング32の一端部と第2ハウジング33の一端部とが離間した状態)から、図10に示すように閉状態となったとき、つまり第1ハウジング32の一端部と第2ハウジング33の一端部とが突き合わされたときには、第1注入クランプ部11aおよび第2注入クランプ部11bも閉じた状態となる(注入クランプ部11が閉状態となる)。また、図示はしないが、第1検出クランプ部21aおよび第2検出クランプ部21bも、ハウジング31が閉じたときには、第1注入クランプ部11aおよび第2注入クランプ部11bと同時に閉じた状態となる(検出クランプ部21も閉状態となる)。
このようにして、注入コイルとしての第1巻線13を有する注入クランプ部11と、検出コイルとして構成された第2巻線23を有する検出クランプ部21とが1つのハウジング31に収容されているため、ハウジング31を開状態としてその内側に測定対象回路5の一部を構成する配線5aを導入することで、開状態となった第1環状コア12および第2環状コア22のそれぞれの内側にも配線5aが導入され、この状態においてハウジング31を閉状態とすることで、閉状態となった第1環状コア12および第2環状コア22によって配線5aが同時にクリップ(クランプ)された状態、すなわちクランプ部2によって配線5aがクリップされた状態となる。この場合、配線5aは、第1環状コア12および第2環状コア22において1ターンの巻線として機能する。
装置本体部4は、図1に示すように、電圧注入部41、電流測定部42、処理部43、出力部44および基準信号生成部45を備えている。電圧注入部41は、階段波生成部51、ローパスフィルタ(以下、「LPF」ともいう)52、電力増幅部53および注入クランプ部11を備えて構成されている。この場合、階段波生成部51は、所定周期T(周波数f)の三角波信号Vtを生成して出力する。この三角波信号Vtは、本発明における階段波の一例であって、同図に示すように、基準クロックCLKの周期Tcで段階的(ステップ的)に振幅が変化しつつ、全体として三角波の形状となる信号である。
この階段波生成部51は、一例として、図5に示すように、基準クロックCLKに同期して作動すると共に、アップカウント動作およびダウンカウント動作の一方を選択的に実行可能なカウンタ(アップダウンカウンタ。一例として4ビットバイナリアップダウンカウンタ)51aと、このカウンタ51aに対してアップカウント動作およびダウンカウント動作を繰り返し実行させるためのフリップフロップ(一例としてDフリップフロップ)51bと、カウンタ51aの各カウンタ出力端子D3〜D0から出力されるカウント値に基づいて(具体的にはカウンタ値をD/A変換して)階段波Vt0を生成するD/A変換回路51cと、階段波Vt0に含まれる直流成分をカットするコンデンサ51dとで構成されている。
この場合、カウンタ51aは、例えば74HCT191と、そのリップルクロックを反転して出力するインバータ(例えば74HCT04)とで構成されて(いずれも図示せず)、クロック入力端子CPに入力される基準クロックCLKに同期して、アップダウン制御端子UDに入力されている信号のレベルに応じたカウント動作(レベル「Low」のときにはダウンカウント動作、レベル「High」のときにはアップカウント動作)を実行する。また、カウンタ51aは、アップカウント動作時において各カウンタ出力端子D3〜D0から出力されているカウント値が「1111」(バイナリ)となったとき、およびダウンカウント動作時において各カウンタ出力端子D3〜D0から出力されているカウント値が「0000」(バイナリ)となったときに、リップルクロック端子RCから出力されるリップルクロックのレベルを「Low」から「High」に移行させる。フリップフロップ51bは、図5に示すように、反転出力端子Q2とデータ入力端子Dとが接続され、かつ非反転出力端子Q1がカウンタ51aのアップダウン制御端子UDに接続され、かつクロック入力端子CPがカウンタ51aのリップルクロック端子RCに接続されている。
この構成により、フリップフロップ51bがクロック入力端子CPにリップルクロックが入力される都度、その立ち上がりに同期して、各出力端子Q1,Q2から出力されている出力信号のレベルをそれぞれ反転させるため、カウンタ51aは、アップカウント動作時において各カウンタ出力端子D3〜D0から出力されているカウント値が「1111」となったときに、そのアップダウン制御端子UDに入力される信号のレベルが「High」から「Low」に変化させられてダウンカウント動作に移行する。これにより、カウンタ51aは、カウント値を「1111」からデクリメントさせる。その後、カウンタ51aは、カウント値が「0000」となったときに、そのアップダウン制御端子UDに入力される信号のレベルが「Low」から「High」に変化させられて、再度、アップカウント動作に移行する。これにより、カウンタ51aは、カウント値を「0000」からインクリメントさせる。このようにして、カウンタ51aは、基準クロックCLKが入力されている間、基準クロックCLKに同期して、予め規定されたスタート値(本例では「0000」)とエンド値(本例では「1111」)との間でアップ・ダウンカウント動作を繰り返す。
D/A変換回路51cは、図5に示すように、一例としてラダー抵抗回路(図5において、「R」および「2R」はそれぞれ抵抗値を示すものであり、「2R」は「R」の二倍の抵抗値であることを示している)で構成されて、直流信号としての階段波Vt0を生成する。コンデンサ51dは、この階段波Vt0に含まれる直流成分をカットして、交流信号としての階段波Vtを出力する。LPF52は、三角波信号Vtを入力してその基本周波数成分(周波数f)を主として通過させ、それ以外の周波数成分を減衰させることにより(基本周波数成分を選択的に通過させることにより)、図3に示す交流電圧(擬似正弦波信号)Vaに変換して出力する。
電力増幅部53は、本例では一例としてD級アンプとして構成されて、この交流電圧Vaを所定の増幅率で増幅して予め規定された電圧値(本例では電圧実効値)の交流電圧V1を生成すると共に、生成した交流電圧V1を注入クランプ部11の第1巻線13に印加する。図示はしないが、電力増幅部53は、一例として、一定周波数の鋸歯状信号を生成する信号発生回路と、この鋸歯状信号と交流電圧Vaとを比較して、交流電圧Vaの振幅に比例してパルス幅(デューティ比)が変化する所定周期のパルス信号(PWM信号)を生成するPWM信号生成回路と、このPWM信号を電力増幅するD級電力増幅回路と、D級電力増幅回路からの出力信号に対してフィルタリング処理することで交流電圧V1を生成するローパスフィルタ回路とで構成されている。これにより、注入クランプ部11を介して測定対象回路5に所定の周波数fで、かつ所定の電圧実効値の検査用交流信号Vxが注入される。この場合、上記したように配線5aが第1環状コア12において1ターンの巻線として機能するため、測定対象回路5に注入される検査用交流信号Vxは、その電圧値が交流電圧V1をターン数N1で除算して得られる電圧値(Vx=V1/N1)となる。検出クランプ部21は、第2環状コア22において配線5aが1ターンの巻線として機能するため、測定対象回路5に流れる交流電流Ixを検出して、その第2巻線23に検出電流(本発明における検出コイルに流れる電流)I1(=Ix/N2)を出力する。
電流測定部42は、検出クランプ部21、第1増幅部61、第1バンドパスフィルタ(以下、「第1BPF」ともいう)62、第1切替部63、第2増幅部64、第2バンドパスフィルタ(以下、「第2BPF」ともいう)65、第2切替部66、第3増幅部67およびA/D変換部68を備えている。この場合、第1増幅部61は、第2巻線23の一端に接続されて、この一端に発生する検出電流I1を第1電圧信号Vb1に変換して出力する。また、第1増幅部61は、一例として、図2に示すように、第1演算増幅器61a、抵抗61b,61c,61dおよび第1コンデンサ61eを備えて構成されている。この場合、第1演算増幅器61aは、その反転入力端子が第2巻線23の一端に直接接続され、反転入力端子と出力端子との間に抵抗61bが帰還抵抗として接続され、非反転入力端子が抵抗61cを介して接地されて(基準電圧(グランド)が入力される一例)、入力した検出電流I1を電圧信号Vb(振幅が検出電流I1の電流値に比例して変化する信号)に変換して出力する。第1コンデンサ61eは、第1演算増幅器61aの後段に配設されて(本例では、その一端が第1演算増幅器61aの出力端子に直接接続されて)、電圧信号Vbに含まれる直流成分を除去する。また、第1コンデンサ61eは、その他端が抵抗61dを介して接地されている。これにより、第1コンデンサ61eにおいて直流成分が除去された電圧信号Vbは、その直流レベルが接地電位(ゼロボルト)に規定されて、ゼロボルトを中心として変化する交流信号である第1電圧信号Vb1として第1増幅部61から出力される。
第1BPF62は、入力した第1電圧信号Vb1に含まれている交流電圧Vaの高調波成分を除去して(フィルタリング処理して)、第1電圧信号Vb2として出力する。具体的には、第1BPF62は、第1電圧信号Vb1に含まれている交流電圧Vaの基本周波数成分(周波数fの成分。検査用交流信号Vxの基本周波数成分でもある)を選択的に(主として)通過させることで、第1電圧信号Vb2を出力する。第1切替部63は、例えばアナログスイッチで構成されて、基準信号生成部45から出力される基準信号Sr(交流電圧Vaに同期し(同位相で)、かつデューティ比が0.5のパルス信号)に同期して、図3に示すように、第1電圧信号Vb2と第2BPF65から出力される後述の第2電圧信号Vc2とを半周期ずつ切り替えて出力する(同期検波動作する)。これにより、第1切替部63は、第1電圧信号Vb2の正側波形および第2電圧信号Vc2の正側波形で構成される脈流信号である正極性信号Vdを生成して出力する。
第2増幅部64は、第2巻線23の他端に接続されて、この他端に発生する検出電流I1を第2電圧信号Vc1に変換して出力する。また、第2増幅部64は、一例として、図2に示すように、第2演算増幅器64a、抵抗64b,64c,64dおよび第2コンデンサ64eを備えて、第1増幅部61と同一に構成されている。この場合、第2演算増幅器64aは、その反転入力端子が第2巻線23の他端に直接接続され、反転入力端子と出力端子との間に抵抗64bが帰還抵抗として接続され、非反転入力端子が抵抗64cを介して接地されて(基準電圧(グランド)が入力される一例)、入力した検出電流I1を電圧信号Vc(振幅が検出電流I1の電流値に比例して変化し、かつ電圧信号Vbと逆極性の信号)に変換して出力する。第2コンデンサ64eは、第2演算増幅器64aの後段に配設されて(本例では、その一端が第2演算増幅器64aの出力端子に直接接続されて)、電圧信号Vcに含まれる直流成分を除去する。また、第2コンデンサ64eは、その他端が抵抗64dを介して接地されている。これにより、第2コンデンサ64eにおいて直流成分が除去された電圧信号Vcは、その直流レベルが接地電位(ゼロボルト)に規定されて、ゼロボルトを中心として変化する交流信号である第2電圧信号Vc1として第2増幅部64から出力される。ここで、第2巻線23の他端に発生する検出電流I1は、一端に発生する検出電流I1と位相が反転したものとなる。このため、第2演算増幅器64aは、入力した検出電流I1を電圧信号Vbと位相が反転した電圧信号Vcに変換して出力する。これにより、第2増幅部64は、ゼロボルトを中心として変化し、かつ第1電圧信号Vb1と位相が反転した交流信号である第2電圧信号Vc1を生成して出力する。
第2BPF65は、第1BPF62と同様のバンドパスフィルタに構成されて、入力した第2電圧信号Vc1に含まれている交流電圧Vaの高調波成分を除去して(フィルタリング処理して)、第2電圧信号Vc2として出力する。第2切替部66は、第1切替部63と同一の構成を備えて、基準信号Srに同期して、図3に示すように、第1電圧信号Vb2と第2電圧信号Vc2とを半周期ずつ切り替えて出力することにより、第1電圧信号Vb2の負側波形および第2電圧信号Vc2の負側波形で構成される脈流信号である負極性信号Veを生成して出力する。
第3増幅部67は、正極性信号Vdおよび負極性信号Veを入力して、これらの極性信号Vd,Veの差分を出力する。本例では、第3増幅部67は、一例として、図2に示すように、演算増幅器67a、第1切替部63と演算増幅器67aの非反転入力端子との間に接続された抵抗67b、第2切替部66と演算増幅器67aの反転入力端子との間に接続された抵抗67c、演算増幅器67aの反転入力端子と出力端子との間に接続された抵抗67d、および演算増幅器67aの非反転入力端子と基準電圧(この例ではグランド)との間に接続された抵抗67eとを備えて、差動増幅部として構成されている。この構成により、第3増幅部67は、図3に示すように、正極性信号Vdおよび負極性信号Veに同期し、かつ正側波形で構成される脈流信号である差分信号Vfを、各極性信号Vd,Veの上記差分として演算して出力する。この差分信号Vfは、振幅が検出電流I1の電流値にそれぞれ比例する電圧信号Vb,Vcに基づいて上記のように生成されるため、差分信号Vfの振幅も検出電流I1の電流値に比例したものとなっている。A/D変換部68は、この差分信号Vfをデジタルデータに変換して電流データDiとして出力する。したがって、A/D変換部68から出力される電流データDiは、検出電流I1を表すデータとなる。
基準信号生成部45は、コンパレータ71およびD型フリップフロップ(本発明における同期回路部の一例であって、以下、「DFF」ともいう)72を備え、交流電圧V1に基づいて基準信号Srを生成して出力する。具体的には、コンパレータ71は、比較用電圧値Vrefがゼロボルトに規定されると共に、本例では、一例としてヒステリシス型に構成されている。この構成により、コンパレータ71は、擬似正弦波信号である交流電圧V1と、比較用電圧値Vrefとを比較することにより、交流電圧V1のゼロクロスで極性が反転し、かつデューティ比が0.5のパルス信号を二値化信号Sr0として生成して出力する。また、コンパレータ71がヒステリシス型のため、交流電圧V1の電圧値が比較用電圧値Vrefを超えたときには、比較用電圧値Vrefがゼロボルトよりも低下することで、交流電圧V1に重畳しているノイズによって二値化信号Sr0の極性の不要な反転を回避することができる結果、ノイズの影響を低減して抵抗値Rxの測定精度がより向上されている。DFF72は、D入力端子に入力される二値化信号Sr0をクロック端子CKに入力される基準クロックCLKに同期させて(二値化信号Sr0の立ち上がりおよび立ち下がりを基準クロックCLKの立ち上がり(または立ち下がり)に一致させて)基準信号Srとして出力する。この場合、DFF72で同期回路部を構成したことにより、二値化信号Sr0を基準クロックCLKに確実に同期させて生成された基準信号Srが出力される。
処理部43は、CPUおよびメモリ(いずれも図示せず)を備えて構成されて、抵抗測定処理を実行する。出力部44は、一例として、モニタ装置などで構成されて、抵抗測定処理の結果を表示する。
次に、抵抗測定装置1による抵抗測定処理100について、図4を参照して説明する。
この抵抗測定処理100では、処理部43は、まず、所定の周波数fの検査用交流信号Vxを測定対象回路5に注入する注入処理を実行する(ステップ101)。具体的には、この注入処理において、処理部43は、電圧注入部41に対して交流電圧Vaの生成を開始させるため、基準クロックCLKの出力を開始する。この基準クロックCLKは、階段波生成部51およびDFF72に出力される。これにより、電圧注入部41では、階段波生成部51が、基準クロックCLKに同期した三角波信号Vtの生成、および生成した三角波信号Vtの出力を開始し、LPF52が三角波信号Vtを交流電圧Vaに変換する。電力増幅部53は、D級増幅動作を行って、入力した交流電圧Vaを所定の増幅率で増幅して予め規定された電圧実効値の交流電圧V1を生成すると共に、生成した交流電圧V1を注入クランプ部11の第1巻線13に印加する。これにより、注入クランプ部11から測定対象回路5に検査用交流信号Vx(周波数f)が注入される。このため、測定対象回路5には、検査用交流信号Vxの注入に起因して、周波数fの交流電流Ixが流れる。一方、基準信号生成部45では、コンパレータ71が、交流電圧V1と比較用電圧値Vrefとを比較することにより、交流電圧V1のゼロクロスで極性が反転し、かつデューティ比が0.5の二値化信号Sr0の生成を開始する。また、DFF72が、この二値化信号Sr0を基準クロックCLKに同期させて基準信号Srとして出力する処理を開始する。これにより、基準信号生成部45から電流測定部42の各切替部63,66に対して基準信号Srの供給が開始される。
この周波数fの検査用交流信号Vxが測定対象回路5へ注入されている状態において、電流測定部42は、交流電流Ixを検出して電流データDiを生成する処理を実行する。具体的には、電流測定部42では、検出クランプ部21が、測定対象回路5に流れる交流電流Ixを検出して、その第2巻線23から検出電流I1を出力し、第1および第2増幅部61,64が、この検出電流I1を第1および第2電圧信号Vb1,Vc1に変換して出力する。この場合、この電流測定部42では、従来の構成(検出コイルとしての第2巻線23をシングルエンドで使用し、電流検出のための抵抗を直列に接続する構成)とは異なり、第2巻線23の各端部を演算増幅器61a,64aの反転入力端子に接続する構成としたことにより、ゲインの低下や周波数特性の劣化を招くおそれのある電流検出用の抵抗(シャント抵抗)を不要とすることができ、十分な検出ゲインを維持しつつ良好な周波数特性が確保されている。なお、抵抗測定装置1では、注入クランプ部11および検出クランプ部21が1つのハウジング31に、近接した状態で収容されているため、検出クランプ部21の第2巻線23には、注入クランプ部11の第1巻線13で発生する磁束が直接入力される。このため、第2巻線23から出力される検出電流I1には、測定対象回路5に流れる交流電流Ixに起因して発生する電流成分(第1電流成分)と、第1巻線13からの磁束に起因して発生し、第1電流成分に対して位相が90°ずれた電流成分(第2電流成分)とが含まれている。
次いで、第1および第2BPF62,65が、対応する電圧信号Vb1,Vc1に含まれている高調波成分を除去して、第1および第2電圧信号Vb2,Vc2として出力し、各切替部63,66が、この第1および第2電圧信号Vb2,Vc2を基準信号Srに同期して切り替えることにより(基準信号Srで同期検波することにより)、検出電流I1に含まれている第1電流成分のみに基づいて正極性信号Vdおよび負極性信号Veを生成して出力する。なお、検出電流I1に含まれている第2電流成分については、第1電流成分と位相が90°ずれているため、基準信号Srに基づく同期検波によって完全に除去される。この場合、基準信号Srは、基準信号生成部45のDFF72を介して出力される。このため、交流電圧V1の基準クロックCLKに対する位相が温度や湿度の変化に起因して変化した場合であっても、その変化量が基準クロックCLKの1周期以内であれば、基準信号Srは、その立ち上がりおよび立ち下がりが基準クロックCLKの立ち上がり(または立ち下がり)にDFF72によって強制的に同期させられる。したがって、温度や湿度の変化に起因した基準信号Srの基準クロックCLKに対する位相のずれが大幅に低減される、つまり基準信号Srのデューティ比のゆらぎが大幅に低減される。このため、各切替部63,66がこの基準信号Srに基づいて第1および第2電圧信号Vb2,Vc2を安定して切り替えることができる結果、各切替部63,66による正極性信号Vdおよび負極性信号Veの生成の精度が高められている。また、ノーマルモードノイズが検出電流I1に含まれていたとしても、各切替部63,66による基準信号Srに同期した各電圧信号Vb2,Vc2に対する上記の切替動作により、このノーマルモードノイズが除去される。
続いて、第3増幅部67が、この正極性信号Vdおよび負極性信号Veの差分を演算して差分信号Vfを生成し、A/D変換部68が、この差分信号Vfをデジタルデータに変換して電流データDiとして処理部43に出力する。この場合、電流測定部42では、第2巻線23の各端部に接続された第1増幅部61と第2増幅部64とが、それぞれが接続された第2巻線23の端部に発生する検出電流I1に基づいて、互いの位相が反転する第1電圧信号Vb1と第2電圧信号Vc1とを出力し、第3増幅部67が、これらの電圧信号Vb1,Vc1に基づいて各切替部63,66で生成される正極性信号Vdおよび負極性信号Veの差分を演算して差分信号Vfを生成する。このため、検出電流I1にコモンモードノイズが重畳していたとしても、第3増幅部67が差分演算を行うことにより、このノイズがキャンセルされる。
次いで、処理部43は、周波数がfのときの測定対象回路5の抵抗値Rxを算出する算出処理を実行する(ステップ102)。具体的には、この算出処理において、処理部43は、まず、電流データDiに基づいて検出電流I1の電流値(本例では電流実効値)を算出し、次いで、交流電圧V1の電圧実効値および第1巻線13のターン数(N1)に基づいて検査用交流信号Vxの電圧実効値を算出すると共に、算出した検出電流I1の電流実効値および第2巻線23のターン数(N2)に基づいて交流電流Ixの電流値(本例では電流実効値)を算出する。続いて、処理部43は、算出した検査用交流信号Vxおよび交流電流Ixの各実効値に基づいて、検査用交流信号Vxの周波数がfのときの測定対象回路5の抵抗値Rxを算出すると共に、算出した抵抗値Rxを周波数fに対応させてメモリに記憶する。本例では一例として、処理部43は、この抵抗値Rxの算出に際して、抵抗値Rxを複数回算出すると共に、これらの平均(一例として移動平均)を算出して、最終的な抵抗値Rxとする。これにより、抵抗値Rxの算出処理が完了する。最後に、処理部43は、算出した抵抗値Rxを出力部44に出力させる(ステップ103)。これにより、抵抗測定処理が完了する。
このように、この抵抗測定装置1によれば、注入コイルとしての第1巻線13を有する注入クランプ部11と、検出コイルとして構成された第2巻線23を有する検出クランプ部21とが1つのクランプ型のハウジング31に収容されているため、注入コイルとしての第1巻線13を有する注入クランプ部11と、検出コイルとして構成された第2巻線23を有する検出クランプ部21とを1回のクリップ操作(クランプ操作)で測定対象回路5の一部を構成する配線5aにクリップさせることができ、作業性を向上させることができる。また、注入クランプ部11と検出クランプ部21との相対位置を安定させること(一定にすること)ができるため、1つの測定対象回路5に対して繰り返し抵抗値Rxを測定した場合であっても、測定結果を安定させる(測定される抵抗値Rxのばらつきを少なくする)ことができる結果、繰り返し測定精度を向上させることができる。
また、この抵抗測定装置1では、電圧注入部41が、基準信号Srに同期した交流電圧V1を第1巻線13に印加することにより、測定対象回路5に検査用交流信号Vxを注入し、電流測定部42が、検査用交流信号Vxの注入に起因して第2巻線23に流れる検出電流I1を各電圧信号Vb2,Vc2に変換すると共に各電圧信号Vb2,Vc2を基準信号Srを用いて同期検波し、この同期検波によって得られた差分信号Vfに基づいて検出電流I1の電流値(すなわち、検出電流I1の電流値に比例する交流電流Ixの電流値)を測定する。したがって、この抵抗測定装置1によれば、注入クランプ部11と検出クランプ部21とを1つのハウジング31に収容したことによって注入クランプ部11からの磁束が検出クランプ部21に直接漏れ込むが、この磁束の漏れ込みに起因して交流電流Ixに発生する第2電流成分を基準信号Srを用いた同期検波によって完全に除去することができ、測定対象回路5に流れる交流電流Ixに起因して発生する第1電流成分のみに基づいて差分信号Vfを生成することができる結果、検出電流I1の電流値(すなわち、検出電流I1の電流値に比例する交流電流Ixの電流値)を十分な精度で測定することができると共に、注入クランプ部11と検出クランプ部21との間へのシールド材の配置を不要にできるため、注入クランプ部11および検出クランプ部21全体の厚みを低減することができる結果、クランプ部2を十分に小型化することができる。
また、この抵抗測定装置1によれば、電圧注入部41の電力増幅部53をD級アンプで構成したことにより、低損失で交流電圧Vaを交流電圧V1に増幅することができる結果、装置の効率についても十分に向上させることができる。したがって、同じ消費電力であっても、交流電圧V1を効率よく増幅できることから、注入コイルとしての第1巻線13のインダクタンスを小さくすることができる。このため、注入クランプ部11を構成する第1環状コア12の厚み、つまり注入クランプ部11の厚みを薄くできる結果、クランプ部2を薄くすることができる。また、D級アンプで電力増幅部53を構成した場合には、高周波ノイズが交流電圧V1内に多く含まれることになる。しかしながら、電力増幅部53で増幅される交流電圧V1および同期検波用の基準信号Srが共に基準クロックCLKに同期して生成されるため、検査用交流信号Vxの注入に起因して検出コイルとしての第2巻線23に流れる検出電流I1が電圧に変換されてなる各電圧信号Vb2,Vc2を基準信号Srを用いて正確に同期検波できる結果、抵抗測定装置1のノイズに対する耐性を高めることができる。
また、この抵抗測定装置1によれば、注入コイルとしての第1巻線13を有する注入クランプ部11と、検出コイルとして構成された第2巻線23を有する検出クランプ部21とが各々の厚み方向で積層された状態で1つのハウジング31に収容されているため、クランプ部2の内径と外径との差L1(図10参照)を小さくすることができ、同じ外径であっても、より太い測定対象回路5の配線5aをクリップすることができるため、より多くの種類の測定対象回路5の抵抗を測定することができる。
なお、上記の例では、注入コイルとしての第1巻線13を有する注入クランプ部11と、検出コイルとして構成された第2巻線23を有する検出クランプ部21とを各々の厚み方向で積層した状態で1つのハウジング31に収容する構成を採用しているが、図13に示す構成のクランプセンサCS2を採用することもできる。具体的には、注入コイルとしての第1巻線13を有する注入クランプ部11と、検出コイルとして構成された第2巻線23を有する検出クランプ部21とを互いに異なる径に形成して、大径に形成された一方のクランプ部(同図では一例として注入クランプ部11。つまり、注入コイルとしての第1巻線13)の内周側に他方のクランプ部(同図では一例として検出クランプ部21。つまり、検出コイルとしての第2巻線23)が位置し、かつこの2つのクランプ部(つまり2つのコイル)が同一平面上に位置する状態で1つのハウジング31A(絶縁性を有する樹脂材料製のハウジング)に収容される構成を採用することもできる。この構成によれば、注入クランプ部11と検出クランプ部21とを厚み方向で積層する構成と比較して、クランプ部2Aの厚みをより薄くすることができる。この場合、ハウジング31Aは、一例として、図13に示すように、ハウジング31における第1ハウジング32および第2ハウジング33にそれぞれ対応する第1ハウジング32Aおよび第2ハウジング33Aを備えている。また、第1ハウジング32Aおよび第2ハウジング33Aは、一例として、図14に示すように(両ハウジング32A,33Aはほぼ同じ構造であるため、同図では第1ハウジング32Aのみを示している)、厚み方向に沿って2つに分割される2ピース構造に構成されて、それぞれの一端部側の内部に注入クランプ部11と検出クランプ部21とが収容されている。なお、クランプセンサCS1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略している。
また、上記の構成では、各演算増幅器61a,64aの後段にコンデンサ61e,64eをそれぞれ配設しているが、各演算増幅器61a,64aのオフセット電圧が極めて少ないときには、コンデンサ61e,64eを配設しない構成とすることもできる。この構成では、各抵抗61d,64dについても不要とすることができる。また、抵抗値Rxの測定精度の向上のために第1および第2BPF62,65を使用する構成について上記したが、必要とされる測定精度が確保できるときには、第1および第2BPF62,65を配設しない構成を採用することもできる。また、電力増幅部53をD級アンプに代えて、A級やAB級のアンプで構成することもできる。また、基準信号生成部45をヒステリシス型のコンパレータ71を用いて構成したが、ヒステリシスを有しないコンパレータを用いて構成することもできる。
また、第1電圧信号Vb2および第2電圧信号Vc2を基準信号Srでそれぞれ同期検波する構成の一例として、各切替部63,66を使用した構成について上記したが、乗算器を使用して同期検波する構成を採用することもできる。また、検査用交流信号Vxの電圧値としての電圧実効値と交流電流Ixの電流値としての電流実効値とに基づいて抵抗値Rxを算出する例について上記したが、電圧値は電圧実効値に限定されるものではなく、また電流値も電流実効値に限定されるものではない。具体的には、検査用交流信号Vxの電圧値としての電圧平均値と交流電流Ixの電流値としての電流平均値とに基づいて抵抗値Rxを算出する構成や、検査用交流信号Vxの電圧値としてのピークtoピーク値(電圧振幅)と交流電流Ixの電流値としてのピークtoピーク値(電流振幅)とに基づいて抵抗値Rxを算出する構成や、検査用交流信号Vxの電圧値としての電圧ピーク値と交流電流Ixの電流値としての電流ピーク値とに基づいて抵抗値Rxを算出する構成を採用することもできる。
また、電力増幅部53から出力される交流電圧V1に基づき、コンパレータ71とDFF72とを有する基準信号生成部45で基準信号Srを生成する構成について上記したが、階段波生成部51から出力される三角波信号VtおよびLPF52から出力される交流電圧(擬似正弦波信号)Vaのうちのいずれかに基づき、基準信号生成部45が基準信号Srを生成する構成を採用することもできる。また、基準信号Srを生成する基準信号生成部45をコンパレータ71を用いて構成することにより、簡易な構成で交流電圧V1から二値化信号Sr0を確実に生成し得るようにした例について上記したが、入力値(交流電圧V1の電圧値)をしきい値(比較用電圧値Vref)と比較して、その比較結果(二値化信号Sr0)を出力するものであれば、コンパレータ71に限定されず、種々の回路を採用することができる。また、DFF72に代えて、JKフリップフロップや、RSフリップフロップなどを使用する構成を採用することもできる。
また、上記の例では、アップダウン制御端子UDに入力される信号のレベルを「High」から「Low」へ、次いで「Low」から「High」へというように周期的(T/2の周期毎に)に変化させて、階段波生成部51を構成するカウンタ51aに対してアップカウント動作およびダウンカウント動作を繰り返させ、これにより、階段波生成部51から三角波状(振幅がスタート値からエンド値まで階段状に増加する波形とエンド値からスタート値まで階段状に減少する波形とで構成される三角波状)に変化する階段波である三角波信号Vt(周期T)を出力させて、電力増幅部53から高調波成分のより少ない交流電圧V1を出力させる構成を採用しているが、これに限らない。例えば、図5において、アップダウン制御端子UDに入力されている信号のレベルを「High」に固定してカウンタ51aに対してアップカウント動作(スタート値からエンド値までカウント値をインクリメントすると共に、エンド値に達したときにカウント値をスタート値にリセットするカウント動作)を周期Tで繰り返させることにより、階段波生成部51から図6に示す鋸歯状に変化する階段波である三角波信号Vtを出力させる構成や、図5において、アップダウン制御端子UDに入力されている信号のレベルを「Low」に固定してカウンタ51aに対してダウンカウント動作(スタート値からエンド値までカウント値をデクリメントすると共に、エンド値に達したときにカウント値をスタート値にリセットするカウント動作)を周期Tで繰り返させることにより、階段波生成部51から図7に示す鋸歯状に変化する階段波である三角波信号Vtを出力させる構成を採用することもできる。これらの構成によれば、図5に示す三角波信号Vtを階段波生成部51から出力させる構成と比較して、電力増幅部53から出力される交流電圧V1に含まれる高調波成分が若干増加するものの、フリップフロップ51bを省くことができるため、部品点数を低減することができ、ひいては製品コストを低下させることができる。また、上記した各例のように、カウンタ51aとD/A変換回路51cとを用いて階段波生成部51を構成することにより、簡単な回路構成で所望の階段波を確実に生成させることができる。
また、図5に示すように三角波状に変化する階段波である三角波信号Vtや、図6,7に示すように鋸歯状に変化する階段波である三角波信号Vtに代えて、図8に示すように、基準クロックCLKに同期して振幅が変化する1段の階段波である矩形波(周期Tでデューティ比0.5の矩形波)Vtを階段波生成部51で生成させて、LPF52に出力する構成を採用することもできる。この構成の階段波生成部51は、図示はしないが、基準クロックCLKに同期して基準クロックCLKを分周する分周回路と、矩形波の直流成分をカットするコンデンサとで実現することができる。この構成によれば、階段波生成部51から鋸歯状に変化する階段波である三角波信号を出力させる構成と比較して、電力増幅部53から出力される交流電圧V1に含まれる高調波成分がさらに増加するものの、D/A変換回路51cを省くことができるため、部品点数を一層低減することができ、製品コストを一層低下させることができる。
また、回路構成は逆に複雑化するものの、階段波生成部51にDDS(Direct Digital Synthesizer。図示せず)を使用する構成を採用することもできる。この構成よれば、三角波信号Vtよりもさらに正弦波に近い図9に示すような階段波を擬似正弦波Vtとして階段波生成部51から出力させることができるため、電力増幅部53から一層高調波成分の少ない交流電圧V1を出力させることができる。
また、処理部43とは別個に、階段波生成部51および基準信号生成部45を設ける構成について上記したが、CPU、A/DコンバータおよびD/Aコンバータを少なくとも含むDSP(Digital Signal Processor)で処理部43を構成することにより、階段波生成部51および基準信号生成部45の少なくとも1つの生成部を処理部43に含める構成を採用することもできる。この構成において、CPUに対して、基準クロックCLKに同期したアップカウント動作、ダウンカウント動作、およびアップダウンカウント動作のいずれかのカウント動作を繰り返させ、そのカウント値をD/Aコンバータに出力させることにより、階段波生成部51を構成することができる。また、DSP内または外部に設けたメモリに波形用データを記憶させて、この波形用データをCPUが読み出してD/Aコンバータに出力することによっても構成することができる。また、基準信号生成部45については、CPUが、上記のカウント動作におけるスタート値とエンド値との中間値を基準として、この中間値をカウント値が横切るタイミングを検出し、検出されたタイミングに同期して立ち上がりと立ち下がりとが交互に繰り返す信号を、基準信号Srとして生成することにより構成することができる。
また、図1の構成において、各切替部63,66を省いて、第1および第2BPF62,65から出力される第1および第2電圧信号Vb2,Vc2を第3増幅部67に直接入力する構成を採用することもできる。この構成では、図2に示すように差動増幅器として構成された第3増幅部67が、第1および第2電圧信号Vb2,Vc2の差分を増幅することにより、例えば利得が1倍のときには第1および第2電圧信号Vb2,Vc2の2倍の振幅の交流信号を差分信号Vfとして出力する。この差分信号Vfは、A/D変換部68によってデジタルデータに変換されて電流データDiとして処理部43に入力される。このため、少なくとも基準信号生成部45をDSP内に設けておくことにより、各切替部63,66が実行していた同期検波については、CPUが、上記のようにして生成している基準信号Srの半周期における電流データDiに基づいて、検出電流I1の電流値(本例では電流実効値)を算出することで実現される。以上のようにして、処理部43をDSPで構成して、階段波生成部51および基準信号生成部45の少なくとも1つを処理部43に含めたり、さらには同期検波回路の機能を処理部43に持たせたりすることにより、部品点数をさらに削減できるため、製品コストのさらなる低減を図ることができる。
また、上記の例では、階段波生成部51から出力される三角波信号Vtなどの階段波をLPF52に入力して、その基本周波数成分(周波数f)以外の周波数成分を減衰させる好ましい構成を採用したが、基本周波数成分(周波数f)以外の周波数成分が多く含まれていても問題のない場合には、LPF52を省略する構成、つまり階段波に対するフィルタリング処理を実行しない構成を採用することもできる。また、階段波生成部51に含めるD/A変換回路51cを安価なラダー抵抗回路で構成して、製品コストを低減し得る例について上記したが、抵抗ストリング形、電流出力形またはデルタシグマ形の変換回路で構成することもできる。