以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るプロジェクタ100の概略構成図である。光源部101は、赤色光(以下、「R光」という。)と、緑色光(以下、「G光」という。)と、青色光(以下、「B光」という。)とを含む光を供給する。光源部101としては超高圧水銀ランプを用いることができる。光源部101からの光は、焦点fに集光する。ロッドインテグレータ102は、焦点fとその入射側端面102aとが略一致する位置に設けられている。ロッドインテグレータ102内へ入射した光は、反射を繰り返しながら進行し、射出側端面102bから射出する。ロッドインテグレータ102は、複数の2次光源像を形成することで、後述する液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bを略均一に照明する。そして、ロッドインテグレータ102を射出した光は、調光部103に入射する。
調光部103は、ロッドインテグレータ102の射出側に設けられ、光源部101からの光を、後述する液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bに入射させる第1の状態である第1の方向D1と、液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bに入射させる方向とは異なる第2の状態である第2の方向D2とを択一的に選択して反射させる。調光部103の詳細については、後述する。まず、調光部103により、液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bに入射させる第1の方向に反射された光について説明する。
調光部103で第1の方向D1に反射された光は、R光透過ダイクロイックミラー104Rに入射する。以下、R光について説明する。R光透過ダイクロイックミラー104Rは、R光を透過し、G光、B光を反射する。R光透過ダイクロイックミラー104Rを透過したR光は、反射ミラーM1に入射する。反射ミラーM1は、R光の光路を90度折り曲げる。光路を折り曲げられたR光は、R光を画像信号に応じて変調するR光用の液晶型空間光変調装置110Rに入射する。R光用の液晶型空間光変調装置110Rは、R光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶表示装置である。R光用の液晶型空間光変調装置110Rで変調されたR光は、色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム120に入射する。
次に、G光について説明する。R光透過ダイクロイックミラー104Rで反射された、G光とB光とは光路を90度折り曲げられる。光路を折り曲げられたG光とB光とは、B光透過ダイクロイックミラー104Bに入射する。B光透過ダイクロイックミラー104Bは、G光を反射し、B光を透過する。B光透過ダイクロイックミラー104Bで反射されたG光は、G光を画像信号に応じて変調するG光用の液晶型空間光変調装置110Gに入射する。G光用の液晶型空間光変調装置110GはG光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶表示装置である。G光用の液晶型空間光変調装置110Gで変調されたG光は、色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム120に入射する。
次に、B光について説明する。B光透過ダイクロイックミラー104Bを透過したB光は、2枚のリレーレンズ105と、2枚の反射ミラーM2、M3とを経由して、B光を画像信号に応じて変調するB光用の液晶型空間光変調装置110Bに入射する。B光用の液晶型空間光変調装置110Bは、B光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶表示装置である。
なお、B光をリレーレンズ105を経由させるのは、B光の光路の長さがR光及びG光の光路の長さよりも長いためである。リレーレンズ105を用いることにより、B光透過ダイクロイックミラー104Bを透過したB光を、そのままB光用の液晶型空間光変調装置110Bに導くことができる。B光用の液晶型空間光変調装置110Bで変調されたB光は、色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム120に入射する。
色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム120は、2つのダイクロイック膜120a、120bをX字型に直交して配置して構成されている。ダイクロイック膜120aは、R光を反射し、G光を透過する。ダイクロイック膜120bは、B光を反射し、G光を透過する。このように、クロスダイクロイックプリズム120は、液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bでそれぞれ変調されたR光、G光及びB光を合成する。投写レンズ130は、クロスダイクロイックプリズム120で合成された光をスクリーン140に投写する。
次に、調光部103について説明する。調光部103としては、例えばティルトミラーデバイスを用いることができる。従来のティルトミラーデバイスの例の一つは、テキサスインスツルメンツ社のDMDである。DMDはテキサスインスツルメンツ社の商標である。ティルトミラーデバイスは、第1の反射位置と第2の反射位置とを択一的に選択可能な複数の可動ミラー素子を有する。可動ミラー素子は、第1の反射位置のときに光源部101からの光を液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bに入射させる第1の方向D1へ反射し、第2の反射位置のときに光源部101からの光を液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bに入射させる方向とは異なる第2の方向D2へ反射する。そして、調光部103は、画像信号に応じて複数の可動ミラー素子が第1の反射位置の状態にある時間又は前記第2の反射位置の状態にある時間を制御することで、液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bへ入射する光の光量を制御する。この構成により、スクリーン140に黒表示や輝度の低い画像の投写を行う場合、液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bへ入射する光量を低減する。この結果、液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bの照明光量が減るので、表示の明るさを低減でき、黒信号や輝度の低い画像の場合でも絶対輝度値を低く抑えることができる為、高いコントラスト感のある画像を投射することができる。
調光部103であるDMDは、図2(a)に示すように複数の可動ミラー素子200を有する。本実施形態では、20個の可動ミラー素子200が4行×5列の行列状に配列されている。調光部103の反射領域の縦横比は3:4(例えば、縦=15mm、横=20mm)である。図2から明らかなように、画像表示用のDMDに比較して、各可動ミラー素子200のサイズは大きく、かつその数も少なくて良い。
また、可動ミラー素子200の位置状態を択一的に選択する場合は、すべての可動ミラー素子200を同一の状態にする。例えば、図2(a)は可動ミラー素子200が第1の反射位置の状態にある場合を示す。この場合、調光部103は、光源部101からの光を液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bへ入射する第1の方向D1へ反射する。また、可動ミラー素子200を第2の反射位置の状態にする場合は、図2(b)に斜線を付して示すように、全ての可動ミラー素子200を第2の反射位置の状態にする。この場合、調光部103は、光源部101からの光を液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bに入射させる方向とは異なる第2の方向D2へ反射させる。
このように、調光部103は、入射光を第1の方向D1と第2の方向D2とへ選択的に反射させる。また、可動ミラー素子の位置状態を部分的に変化させるのではなく、全体的な位置状態を変化させている。換言すると、調光部103は、光源部101からの光を調光して減光させる場合に、部分遮蔽ではなく面遮蔽を行う機能を有する。従って、ロッドインテグレータ102により形成される2次光源像の位置及びその大きさに関わり無く調光部103を設計することができる。このため、調光部103のティルトミラーデバイスの設計及び配置の自由度が大きくなる。
また、調光部103はティルトミラーデバイスに限られず、グレーティング・ライトバルブ、又はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)により構成することもできる。上述のように、可動ミラー素子を面順次駆動するために、調光部103の形状は2次光源像の形状に合わせて最適化する必要がない。また、調光部103の駆動される単位要素も特に限定されることはない。
次に、図1に戻って、調光部103の動作について説明する。映像信号入力回路150は、R光、G光、B光の画像信号を調光処理部160へ出力する。また、調光処理部160にはフレームメモリ151が接続されている。調光処理部160は、調光制御回路161と、ローパスフィルタ・ラベリング回路162と、シーン検出回路163と、画像平均輝度(Average Picture Level、以下「APL」という。)検出回路164と、ヒストグラム検出回路165とを有する。これら回路の信号処理手順は後述する。調光処理部160からの画像信号は、映像信号変調回路170へ送られる。映像信号変調回路170は、シャープネス処理、カラー処理、白黒伸張処理を行う。また、調光処理部160は、調光部103が調光するときに画像信号の所定レベルに対応して液晶型空間光変調装置110R、100G、110Bが射出する各色光の輝度と、調光部160が調光しないときに画像信号の所定レベルに対応して液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bが射出する各色光の輝度と、が略一致するように液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bへ画像信号を供給する画像信号調整部の機能を兼用する。
そして、映像信号変調回路170からの画像信号は、液晶型空間光変調装置駆動回路171へ送られる。液晶型空間光変調装置駆動回路171は、各色光用の液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bを画像信号に応じて駆動する。なお、図1では、簡略のために、液晶型空間光変調装置駆動回路171とR光用の液晶型空間光変調装置110Rとの接続を示し、G光用、B光用の液晶型空間光変調装置110G、110Bとの接続は省略する。
次に、図5に基づいて調光部103の基本的な動作について説明する。なお、調光部103により、液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bへ入射する光量を増減させることを以下、「調光」という。上述したように、調光部103は、可動ミラー素子が第1の反射位置の状態にある時間又は前記第2の反射位置の状態にある時間を制御する、いわゆる時分割駆動を行うことで、液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bへ入射する光の光量を制御する。調光処理部160は、可動ミラー素子制御回路181へ調光部103を駆動するための信号を送る。また、可動ミラー素子制御回路181は、可動ミラー素子駆動回路182へ調光部103の可動ミラー素子を駆動するための信号を送る。さらに、調光処理部160は、CPU180により制御されている。
映像の1フレーム内の光量を8階調(3ビット)で調光する場合を考える。3ビットで調光する場合、図5(f)で示すような3ビット階調表示のそれぞれのビットに対応した重み付けを有する3つのサブフレームパルスP0(=20)、P1(=21)、P2(=22)を用いる。図5(a)で示す1フレームの表示期間内で映像信号Aが表示される場合、調光部103は全てのサブフレームパルスの時に可動ミラー素子が第1の反射位置状態にある。この場合、光源部101からの光は、全て液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bに入射する。また、映像信号Bが表示される場合は、可動ミラー素子はサブフレームパルスP1の時に第1の反射位置状態にあり、その他のサブフレームパルスP0、P2の時に第2の反射位置状態にある。これにより、図5(c)に示すように、映像信号Bの液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bへ入射する光の光量は、映像信号Aに比較すると、約30パーセントにまで減光される。映像信号A、Bの輝度分布ヒストグラムをそれぞれ図5(d)、(e)に示す。輝度分布ヒストグラムは、入力階調レベル(横軸)と分布度数(縦軸)との関係を示すグラフである。
従来技術のような、例えばシャッタ羽根による部分的な遮光による調光では、光源部の2次光源像を部分的に遮光することになる。このため、従来技術による遮光では、インテグレータ上に形成された二次光源像のうち、シャッタ羽根で遮光された二次光源像からの光は遮光される。これにより、シャッタ羽根で遮光されなかった二次光源像の一部の光のみ液晶型空間光変調装置に照射される。この結果、液晶型空間光変調装置の上・下、又は左・右で入射される光の量が部分的に異なってしまう。液晶型空間光変調装置において入射光量が異なる領域の分布は、シャッタ羽根の構造、即ち遮光する領域の方向、大きさ等に依存する。この結果、輝度ムラが発生する。さらに、R光、B光の偏光方向と、G光の偏光方向とを異ならせる構成の場合は、輝度むらが生じている部分の光エネルギーが各色光間で1:1:1で無くなる。このため、同様に色むらが発生する。これに対して、本実施形態では、調光部103は上述のように可動ミラー素子をサブフレーム駆動することで調光している。このため、映像信号に急激な輝度変化が生じた場合でも、投写像がフリッカー的に変化することを防止できる。
液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bの入力階調nとコントラスト(実線)、輝度(一点鎖線)、目標色温度誤差率(点線)との関係を図6に示す。所望値の色再現がされている状態を目標色温度誤差率が0%とする。そして、色再現が所望値からシフトするに従って目標色温度誤差率が大きくなる。図6から明らかなように、液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bの入力階調が小さい領域、例えば32階調よりも小さい領域では、目標色温度誤差率が大きくなり、色再現を正確に行うことが困難である。本実施形態では、従来色再現を正確に行うことが困難な輝度の低い領域においても、調光部103で減光することで良好に色再現を行うことができる。減光することで良好に色再現できる理由を図7に基づいて説明する。
図7(a)は、液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bからの射出光の輝度(縦軸)と、液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bの入力階調n(横軸)との関係を示す。調光部103により光源部101からの光が全て空間光変調装置101R、110G、110Bへ入射する場合の輝度曲線Laと、調光部103により減光した場合の輝度曲線Lbとを並べて示す。輝度曲線Laの場合、図7(b)に示すように、例えば入力階調nが32階調以下の場合に色再現の制御が困難であるとする。また、減光なしの場合に所定の輝度I0を得るためには、入力階調nが32階調であるとする。次に、調光部103により減光すると輝度が低下し、輝度曲線Lbの状態となる。この場合、所定の輝度I0を得るためには、入力階調nが64階調へと大きくなる。このように、減光することにより、同一の輝度I0を得るための入力階調nが32階調から64階調へ変化する。図7(b)で述べたように、32階調よりも小さい領域では色再現を正確に行うことが困難である。これに対して、入力階調nが64階調程度の領域では、図7(b)において目標色温度誤差率が略ゼロであることから、色再現を正確に行うことができる。この結果、調光部103により減光することで、黒表示又は輝度の低い暗い画像の場合に、色再現を行うことができる。この結果、減光した場合は、図7(c)に示すように、目標色温度誤差率は略全ての階調にわたって略ゼロとなる。ただし、図7(a)に示すように、減光した場合の画像信号のダイナミックレンジDR3は、減光する前の色再現制御可能なダイナミックレンジDR2(ダイナミックレンジDR1は、調光前のフル・ダイナミックレンジ)に比較すると小さくなる。
次に、APLを用いて調光部103の調光量を決定する手順を図8に基づいて説明する。ステップS800において、ローパスフィルタ・ラベリング回路162は、ローパスフィルタリング(LPF)処理を行うことで映像信号から高周波ノイズを除去する。ステップS801において、APL検出回路164は、1フレームの映像信号のAPL値を算出する。APL値が大きい場合は、ステップS802において、調光処理部160は調光しないように制御する。この場合、調光部103で反射した光は全て液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bに導かれる。APL値が中間の場合は、ステップS803において、調光処理部160は調光される光量を少ない量から中間の量までの間に制御する。さらに、APL値が小さい場合、つまり黒信号や輝度の低い信号の場合、ステップS804において、調光処理部160は調光される光量が大きくなるように制御する。ステップS805において、映像信号に対して白黒伸張処理などが行われる。また、ステップS806において、可動ミラー素子制御回路181からの制御信号に応じて可動ミラー素子駆動回路182が調光部103の可動ミラー素子を駆動して調光量を制御する。なお、ステップS805、S806の詳細については後述する。ステップS807において、液晶型空間光変調装置(図中では「LCD」と略す)110R、110G、110Bが駆動される。また、ステップS808において、調光部103が上述のサブフレーム駆動される。サブフレーム駆動では、パルス幅変調(Pulse Width Modulation)しているので、ステップS808で、「PWM駆動」と略して示す。
図9は、図8内のステップS805の白黒伸張処理の手順をさらに詳しく説明するフローチャートである。ステップS900において、ヒストグラム検出回路165は、映像信号の輝度の最小値Min(J)、最大値Max(K)、コントラストCRを算出する。なお、輝度の最大値、最小値に限られず、例えば、最大値の0.9倍の値、最小値の0.9倍の値、又は輝度分布の度数が10000以上となるような領域としても良い。ステップS901において、コントラスト条件を一定にしつつダイナミックレンジDRを最大化する。ステップS902において、黒表示又は輝度の小さい暗い領域で色再現を正確に行うことが困難な領域(図では「黒色温度不制御領域」と略す。)のデータが存在するか否かを判定する。ステップS902の判定結果が真の場合、ステップS903において、輝度の最小値(Min値)を、黒表示又は輝度の小さい暗い領域で色再現を正確に行うことができる領域(図では、「黒制御領域」と略す。)の最下限値Nへ設定する。ステップS904において、ダイナミックレンジを再度、最大化する。また、ステップSS904の後、又はステップS902の判定結果が偽の場合、ステップS905へ進む。ステップS905において、液晶型空間光変調装置110R、110G、110B及び調光部103に対して、上記処理の結果を行うように制御する。
次に、図10に基づいて、調光量を決定する処理手順を説明する。ステップS1000において、上述の白黒伸張処理の輝度の最小値Min値を算出する。ステップS1001において、元の画像(輝度を低下させる前の画像)の階調表現値の最小値Min(J)での輝度値Pをルックアップテーブル(LUT)から算出する。このLUTには、階調表現値と輝度との関係がテーブル形式で記録されている。ステップS1002において、伸縮処理した画像の階調表元値の最小値Min(N)での輝度値QをLUTから算出する。ステップS1003において、輝度値Q=Pとなる調光量をLUTから算出する。ステップS1004において、調光処理部160は調光量を決定する。ステップS1005において、調光制御条件を算出する。ステップS1006において、決定された調光量となるように調光部103を駆動する。
次に、図11に基づいて、調光する光量と輝度分布ヒストグラムとの関係について説明する。図11(a)は、黒表示又は輝度が低い暗い領域において色再現が困難な領域(黒色不制御領域)が存在し、中間の輝度領域が無い場合である。この場合、図11(e)に示すように、調光部103により、例えば97%減光する。そして、輝度の明るい領域側の白伸張を行う。これにより、黒色不制御領域を避けて、目標色温度達成率Tを100%に、見かけのコントラストCRの変化率を134%にできる。
図11(b)は、黒表示又は輝度が低い暗い領域において色再現が困難な領域(黒色不制御領域)が存在し、中間の輝度領域が有る場合である。この場合、図11(f)に示すように、調光部103により、例えば30%減光する。そして、輝度の明るい領域側の白伸張を行う。これにより、黒色不制御領域を半分程度避けて、目標色温度達成率Tを134%に、見かけのコントラストCRの変化率を100%にできる。
図11(c)は、黒表示又は輝度が低い暗い領域において色再現が困難な領域(黒色不制御領域)が存在しない場合である。この場合、図11(g)に示すように、調光部103により調光を行わない(調光量=0%)。そして、輝度の暗い領域側の黒伸張を行う。これにより、目標色温度達成率Tを100%に、見かけのコントラストCRの変化率を200%にできる。
図11(d)は、黒表示又は輝度が低い暗い領域において色再現が困難な領域(黒色不制御領域)が存在しない場合である。この場合、図11(h)に示すように、調光部103により33%減光する。そして、輝度の暗い領域側の黒伸張と、輝度の明るい領域側の白伸張との両者を行う。これにより、目標色温度達成率Tを100%に、見かけのコントラストCRの変化率を250%にできる。
次に、図10で説明した調光手順に加えてシーン検出やダイナミックレンジ検出を加えた調光量決定手順について図12に基づいて説明する。ステップS1200において、ローパスフィルタ・ラベリング回路162は、ローパスフィルタリング(LPF)処理を行うことで映像信号から高周波ノイズを除去する。ステップS1201において、APL検出回路164は、1フレームの映像信号のAPL値を算出する。APL値が大きい場合は、ステップS1202において、調光処理部160は調光しないように制御する。この場合、調光部103で反射した光は全て液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bに導かれる。ステップS1202の後、ステップS1207において、図9で説明した白黒伸張処理が行われる。そして、ステップS1208において、図10で説明した調光量決定処理が行われる。また、APL値が中間の場合は、ステップS1203において、ヒストグラム検出回路165は輝度分布ヒストグラムに基づいて映像信号のダイナミックレンジを算出する。ダイナミックレンジが広い場合は上述のステップS1207へ進む。
ステップS1203において、ダイナミックレンジが中間の値である場合は、ステップS1205へ進む。ステップS1205において、調光処理部160は調光される光量を少ない量から中間の量までの間に制御する。ステップS1205は、コントラストを重視する処理である。特に、輝度の高い明るい映像信号を圧縮するようにすることが好ましい。そして、ステップS1207の白黒伸張処理が行われる。さらに、ステップS1203でダイナミックレンジが狭い場合は、ステップS1206に進む。ステップS1206において、調光部103は調光による減光量を中間量から大きい量までにする。ステップS1206は、黒色温度の再現を重視する処理である。そして、ステップS1207、S1208の処理が行われる。
ステップS1201において、APL値が低い場合はステップS1204へ進む。ステップS1204において、ヒストグラム検出回路165は輝度分布ヒストグラムに基づいて映像信号のダイナミックレンジを算出する。ダイナミックレンジが広い場合は、ステップS1205に進む。ダイナミックレンジが中間又は狭い場合は、ステップS1206に進む。そして、ステップS1207、S1208の処理が行われる。最後に、ステップS1209及びS1210の処理が行われるが、これらの処理内容は、上述のステップS807及びS808と同一なので重複する説明は省略する。
さらに、シーン検出を考慮した調光手順について説明する。ステップS1220において、APL値が一定値以上に変化したかについて判定する。判定結果が真の場合、ステップS1221においてシーンの変化が有ると判断される。また、判定結果が偽の場合、ステップS1222においてシーンの変化が無いと判断される。ステップS1221において、シーン変化があるとした場合は、ステップS1223に進む。ステップS1223において、調光して減光する量又は時差量を決定する。そして、ステップS1223の後、又はステップS1222でシーン変化無しとした後に、そして、上述のステップS1209、S1210の処理が行われる。ここで、画像信号に基づいてシーンの変化が検出されたときに、調光部103は、検出されたシーンの期間とは異なる期間、例えば少なくとも数フレームの期間において、空間光変調装置110R、110G,100Bに入射される光の光量が所定値となるように調光することが望ましい。これにより、急激な画像変化が生じても、フリッカーとして認識することを防止できる。
また、調光部103は、光源部101の点灯時間又は光源部101に固有の発光特性に応じて調光制御を行うことが望ましい。これにより、光源部101として例えば超高圧水銀ランプを使用する場合、超高圧水銀ランプの点灯時間(寿命)による発光特性の経時変化、又は超高圧水銀ランプを交換した時に超高圧水銀ランプ固有の発光特性の相違、に対応して調光条件を制御できる。発光特性とは、例えば、発光光量がある。この結果、さらに正確に光源部に応じた調光を行うことができる。
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係るプロジェクタ300の概略構成を示す。本実施形態は、光源部101からの光のうち調光部103により第2の方向D2へ反射された光を再利用して投写レンズ130へ入射させる点が上記第1実施形態と異なる。上記第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
ロッドインテグレータ102を射出した光は、偏光変換部301に入射する。偏光変換部301は、光源部101からの光を特定の振動方向を有する偏光光、例えばs偏光光に変換して射出する。s偏光光に変換された光は、調光部103に入射する。調光部103は、入射光を第1の方向D1又は第2の方向D2へ反射する。
第1の方向D1へ反射された光は、上記第1実施形態で説明したものと同様の光路を進行し、各色用の液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bに入射する。各色用の液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bは、入射光を画像信号に応じてp偏光光に変調して射出する。変調された光は、クロスダイクロイックプリズム120で合成して射出される。クロスダイクロイックプリズム120で合成された変調光は、偏光ビームスプリッタ304に入射する。偏光ビームスプリッタ304の偏光膜は、p偏光光を透過し、s偏光光を反射する。このため、変調光は、偏光ビームスプリッタ304を透過して、投写レンズ130側に射出される。投写レンズ130は、変調光をスクリーン140に投写する。
次に、調光部103で第2の方向D2へ反射された光について説明する。上記第1実施形態においては、調光部103で第2の方向D2へ反射された光は、スクリーン140に投写されることなく、廃棄される。これに対して、本実施形態では、調光部103により第2の方向D2に反射された光を、スクリーン140に投写される画像の輝度を増加させるための光(以下、「補助光」という。)として再利用する点が上記第1実施形態と異なる。
調光部103により第2の方向D2へ反射された光は、反射ミラーM4、M5で反射され光路を折り曲げられる。光路を折り曲げられた光は、1/2波長位相差板302に入射する。s偏光光は、1/2波長位相差板302を透過することによりp偏光光に変換される。p偏光光は、補助光用素子である輝度用液晶パネル303に入射する。輝度用液晶パネル303は、後述する手順で透過率を制御することで、入射したp偏光光をs偏光光として射出する。輝度用液晶パネル303で光強度を制御された補助光は、合成部である偏光ビームスプリッタ304へ入射する。偏光ビームスプリッタ304の偏光膜は、s偏光光である補助光を反射して、投写レンズ130側へ射出する。これにより、偏光ビームスプリッタ304は、補助光用素子である輝度用液晶パネル303からの補助光と、液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bからの変調された光とを合成する。投写レンズ130は、補助光をスクリーン140に投写する。この結果、調光部103により減光され、全体的に輝度レベルが低下した画像において、低階調側は暗くても高コントラスで、かつ高階調側は明るい投写像を得ることができる。
次に、輝度用液晶パネル303による補助光の供給手順について図13に基づいて説明する。ステップS1300において、ローパスフィルタ・ラベリング回路162は、ローパスフィルタリング(LPF)処理を行うことで映像信号から高周波ノイズを除去する。ステップS1301において、APL検出回路164は、1フレームの映像信号のAPL値を算出する。APL値が大きい場合は、ステップS1302において、調光処理部160は調光しないように制御する。この場合、調光部103で反射した光は全て空間光変調装置110R、110G、110Bに導かれる。APL値が中間又は低い場合は、ステップS1303において、ヒストグラム検出回路165は輝度分布ヒストグラムに基づいて高階調の映像信号データが存在するかを判定する。判定結果が真の場合、ステップS1305において、調光部103は調光により減光量を少ない量から中間程度にし、かつ補助光による輝度(Y)の増加が行われる。補助光による輝度の増加についてはさらに後述する。調光部103により第2の方向D2へ反射された光は、輝度用液晶パネル303へ導かれる。そして、ステップS1306において、輝度用液晶パネル303の透過領域及び透過光量が決定される。ステップS1307において、輝度用液晶パネル303の駆動が行われる。
ステップS1303の判定結果が偽の場合は、ステップS1304において、調光部103は調光による減光量を多くする。また、ステップS1308において、液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bの映像信号に対して伸張処理などを行う。さらに、ステップS1309において、調光部103の制御処理が行われる。
図14(a)は、投写像を模式的に示す図である。投写像は、例えば輝度の高い明るい領域BRと、輝度が中間程度の領域MDと、輝度の低い領域BKとを有している。図14(a)に示す投写像の輝度分布ヒストグラムを図14(b)に示す。輝度の高い領域BRに輝度分布Yhが対応する。
輝度用液晶パネル303は、高輝度な領域BRのみ補助光を透過させる。このとき、略領域BRを照明できればよいため、輝度用液晶パネル303は低解像度のパネルで良い。また、輝度用液晶パネル303の表示階調数は映像表示する時に比較して少ない階調数で良い。このため、輝度用液晶パネル303は低コストで製造することができる。また、輝度用液晶パネル303の駆動回路の規模も小さくできる。
さらに、スクリーン140上の投写像の観察者は、投写像の中心近傍を注視する傾向がある。このため、投写像の中心近傍に輝度の高い映像が分布している場合に上述の輝度の増加を行うとさらに効果的である。また、高輝度な領域への補助光による輝度増加に限られず、無彩色や淡有彩色の領域へ補助光を照射しても良い。この場合、投写像の色褪せを低減できるという効果を奏する。また、調光量を制御する場合は、図14(c)に示すように、目標とする調光量を一度に達成するのではなく、調光量をa%、b%と段階的に増加させて目標調光量に達することが望ましい。これにより、急激な光量変化を低減することができる。
次に、図15を用いて、輝度を増加させる場合に高階調領域及び色の彩度を検出して加味する手順を説明する。図15において、ステップS1100、S1102〜S1108までの手順は、図13におけるステップS1300〜S1309と同一であるため重複する説明は省略する。まず、ステップS1101において、MEPG4規格におけるデータの1つのかたまり、いわゆるオブジェクトを算出して、ラベリングを行う。ステップS1110において、ラベリング毎にヒストグラムを算出する。ステップS1111において、輝度の最大値maxが所定値Qよりも大きいか否かを判定する。ステップS1111の判定結果が真の場合、ステップS1113において輝度(Y)の加算を行うと決定する。ステップS1111の判定結果が偽の場合、ステップS1112に進む。ステップS1112において、輝度が最大値maxのR%(Rは100以下)〜maxまでの範囲にある画素の総数(画素の固まり)が所定画素数Sよりも大きいか否かを判定する。本ステップ以降の処理は、一定階調以上の輝度領域が存在する場合には、調光による減光で元(画像処理前)の映像信号の輝度の高い明るい領域の階調が減少しないようにするためのものである。ステップS1112の判定結果が真の場合は、ステップS1113に進む。ステップS1112の判定結果が偽の場合は、ステップS1114において、輝度(Y)の加算を行わないと決定する。
次に、ステップS1101においてオブジェクトのラベリングをした後に、ステップS1120へ進む手順について説明する。ステップS1120において、ラベリング毎の有彩色、無彩色を判別する。ステップS1121において、無彩色か否かを判定する。ステップS1121の判定結果が真の場合は、ステップS1123において、輝度(Y)の加算を行うと決定する。ステップS1121の判定結果が偽の場合、ステップS1122において淡い有彩色か否かを判定する。ステップS1122の判定結果が真の場合、ステップS1123へ進む。ステップS1122の判定結果が偽の場合、ステップS1124において、輝度(Y)の加算を行わないと決定する。
ステップS1125において、ステップS1113、1114、1123、1124でそれぞれ輝度(Y)の加算の有無が決定された内容に基づいて、輝度の加算を行う場合はステップS1126において、輝度用液晶パネル303の透過領域及び透過光量を決定する。そして、ステップS1127において輝度用液晶パネル303が駆動される。また、ステップS1125で輝度の加算を行わない場合は、通常の調光処理であるステップS1106などへ進む。これにより、無彩色又は淡い有彩色の領域も、輝度の暗い領域のコントラストを高く維持しつつ、輝度を増加させることができる。また、有彩色データの固まり(オブジェクト)が所定値以下の画素の集合体の領域も輝度を増加させることができる。さらに、液晶型空間光変調装置110R、110G、110Bにより変調された光に、単に後から輝度(Y)成分を加算して合成すると、投写像が色あせる場合がある。このため、補助光により輝度(Y)を加算する場合は、色あせが顕著にならないような画像データに対してのみ加算することが望ましい。
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態に係るプロジェクタ400の概略構成を示す。本実施形態は、光源部101からの光のうち調光部103により第2の方向D2へ反射された光を再利用して光蓄電池401へ導く点が上記第1実施形態と異なる。上記第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
ロッドインテグレータ102を射出した光は、調光部103に入射する。調光部103は、入射光を第1の方向D1又は第2の方向D2へ反射する。第1の方向D1へ反射された光は、上記第1実施形態で説明したものと同様の光路を進行してスクリーン140に投写される。
次に、調光部103で第2の方向D2へ反射された光について説明する。上記第1実施形態においては調光部103で第2の方向D2へ反射された光は、スクリーン140に投写されることなく廃棄されている。これに対して、本実施形態では、調光部103により第2の方向D2に反射された光を利用して光蓄電池401に電気エネルギーを蓄える点が上記第1実施形態と異なる。
調光部103により第2の方向D2へ反射された光は、光蓄電池401へ入射する。光蓄電池401は、第2の方向D2へ反射された光を電気エネルギーに変換して蓄える。光蓄電池401は、光電効果を利用して光のエネルギーを電気のエネルギーに変換する部分と、電気エネルギーを蓄える部分とから構成される。光エネルギーを電気エネルギーに変換する部分は、例えば、セレン光電池、亜酸化銅光電池、ゲルマニウム、ケイ素等の単結晶を用いたpn接合型光電池である。電源回路402は、光蓄電池401による電気エネルギーをプロジェクタ400の電源として使用する。例えば、プロジェクタ400がスタンバイ状態の時は、リモコンを受信できる程度に機能しているにすぎない。このため、プロジェクタ400がスタンバイ状態にあるときの消費電力は投写状態の消費電力に比較して小さい。このため、光蓄電池401に蓄えられた電気エネルギーをプロジェクタ400のスタンバイ状態の時に使用することで、プロジェクタ400をパワーオフしているのと同等の低消費電力化が可能である。
以上説明したように、上記各実施形態においては、ロッドインテグレータ102の射出側に調光部103を設けているので、調光部103の小型化、低コスト化を図ることができる。また、調光部103としてティルトミラーデバイスを用いて調光しているため、光利用効率は略100%で損失が少ない。さらに、調光部103の応答速度も速く、寿命が長く、信頼性(色むらや耐光性に対する劣化)も高い。加えて、映像信号の高画質処理にも容易に対応できる。また、調光部103を半導体プロセスにより容易に製造することができる。さらに、偏光板や位相差板などの有機系素材を全く使用していない点でも耐久性、寿命の観点から有利である。さらに、調光に際して、光源部101自体の制御を行わないため、光源部101であるランプに負荷がかからず、光源部101の長寿命化を図ることができる。また、上述したように、調光部103はティルトミラーデバイスに限られず、GLV、MEMS、シャッタ機構を用いても良い。