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JP5391976B2 - 固体電解質型燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、固体電解質型燃料電池に係わり、特に、要求電力の負荷量に応じて燃料供給量を変更する負荷追従機能を備えた固体電解質型燃料電池に関する。
燃料電池を実用化するために、燃料電池セルの破損防止と省エネ(商用電源から得る系統電力を少なくし、燃料電池から得る発電電力を多くすること)を両立させることは最重要な課題である。
現在、燃料電池の一種である、固体電解質型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下「SOFC」とも言う)の実用化に向けた開発研究が行われている。このSOFCは、電解質として酸化物イオン導電性固体電解質を用い、その両側に電極を取り付け、一方の側に燃料ガスを供給し、他方の側に空気(酸化剤)を供給して、比較的高温で発電反応を生じさせて発電を行う燃料電池である。
このSOFCにおいては、燃料電池セルに供給する水素(燃料)及び空気が燃料電池セル全部(例えば直列に接続された160本の燃料電池セル)に安定して供給された状態にいたる前は、水素や空気の量が非常に微量であるため、時間的なバラツキが多く、また、全ての燃料電池セルが目標の発電反応を安定して行える状態にいたるまでに、燃料電池セルの個体差や温度差などの要因で、時間的なバラツキが大きく生じてしまうという問題があった。また、改質器の水素改質遅れや水素改質量のバラツキなども加わるため、SOFCでは、このような種々の管理しづらい不確定要素に基づいて、理想状態に到達するまでの過程で、時間的なバラツキが多く存在するという問題があった。
一方、SOFCでは、電力会社への売電ができないという理由から、時間帯などに応じて大きく変化する使用者(一般家庭等)の需要電力に追従させて燃料の供給量を変化させる負荷追従制御を行うことが省エネの観点から必要となる。しかしながら、この負荷追従制御を行うと、燃料、空気、水の量などが変化し、燃料電池セルへ供給される燃料流量や空気量のバラツキ、改質器へ供給される水流量のバラツキ等が大きくなり、さらに、燃料電池セルの温度変化も生じるため、発電量のバラツキも大きくなり、このバラツキに伴う不安定な状態が多く、また蓄積されると燃料電池セルが破損するという重要な事態に至ることがある。
このような課題を解決するために、特許文献1には、負荷の変化量から決定されるガス増減量の指示後に遅れ時間を持って燃料電池に指令電流値を指示して電力を出力するようにした燃料電池(りん酸型燃料電池)が開示されており、この特許文献1の方法によれば、負荷追従時に理想的な燃料量になるのを待ってから電力を取り出すため燃料枯れに伴う燃料電池セルの破損を抑制することができる。しかし、電力を取り出すときにこのような時間遅れが生じているため、負荷の追従性は低下するので、省エネ性能という観点からは、これだけの対応では不十分である。このように、特許文献1の燃料電池は、省エネ性能の向上と燃料電池セルの破損抑制の両立という課題を解決することができないものである。
特開平7−307163号公報
上述した通り、本来的には、省エネ性能を高めるためには、負荷に迅速に追従するように、燃料電池から電力を取り出し指示する指令電流値(指令電力値)を、負荷量に迅速に対応させて、増加速度及び減少速度を適正な値に変更すること望ましい。しかしながら、燃料電池においては、改質器への燃料と水の供給遅れ、改質反応の遅れ、さらに、上述したように、燃料電池セルも、種々な状態で不確定な時間的なバラツキが生じるため、指令電流値の増加速度及び減少速度を設計上の理想的な適正な値に変更したとしても、SOFCのさまざまな時間的なバラツキによって理想的な状態になっていないことがあるので、燃料電池セルを破損させてしまうという課題(問題)を生じていた。換言すれば、このような燃料電池の特性上、フィードバック制御は困難であり、フィードフォアード制御を行わざる得ない状況である。そのため、従来から、負荷追従を迅速にさせることは技術的に困難であると考えられていた。
さらに、SOFCには、重要な固有の問題がある。即ち、一般的な蓄電池においては、取り出し可能な電力量よりも大きな電力量を取り出そうとしても、蓄電池からはその限界値を超えた量は取り出すことが物理的にできず、また破損もしないので何等問題がなく制御も簡単に行うことができる。しかし、SOFCにおいては、限界値を超えた電力の取り出し指示を行っても燃料電池セルからはそのような電力が取り出せてしまい、この過剰な電力の取り出しが燃料電池セルを破損に導くという問題がある。このような固有の課題が存在するため、SOFCにおいては、不確定な要素がある中で負荷追従性能を向上させるために、非常に精度の高い制御を強いられることになるため、SOFCでの省エネ性能の向上は非常に難しいという認識がなされていた。
本発明者らは、このような状況下で、SOFC固有の問題を解決するために、鋭意研究を行い、一定の条件のもとでは、指令電力値(又は指令電流値)の増加速度及び減少速度(単位時間当たりの変化量)を変更しても、燃料電池セルの破損を防止することができると共に、省エネ性能も確保することができることを見い出した。
さらに、本発明者らは、個体酸化物型燃料電池においては、改質器の温度状態、燃料電池セルスタックの温度状態、外気温、燃料電池セルの異常(劣化)状態等のパラメータの状態が変化した場合にも、同様に、不確定なバラツキが発生し不安定な状態になるので、この問題点も同時に解決し、さらに信頼性を向上させる必要があることを見いだした。
そこで、本発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池セルの破損防止と負荷追従性能の向上に伴う省エネを両立させることができる固体電解質型燃料電池を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明は、需要電力から決定される要求電力である負荷に応じて燃料供給量を変更する負荷追従機能を備えた固体電解質型燃料電池において、複数の固体電解質型燃料電池セルからなる燃料電池セルスタック及び燃料を改質して燃料電池セルへ供給する改質器を有する燃料電池モジュールと、燃料電池モジュールによって発電された電力を受け入れ、交流に変換するインバータ手段と、負荷の量に基づいて、燃料電池モジュールが発電すべき指令電力値を設定する指令電力値設定手段と、指令電力値を生成できるように燃料電池セルに供給する燃料流量を決定して供給する燃料制御手段と、燃料制御手段により燃料電池セルに燃料流量を供給した後に、燃料電池モジュールからの電力の引き出し許可量となる上記指令電力値に対応したインバータ許可電力値をインバータ手段に指示するインバータ許可電力値指示手段と、燃料電池モジュール内の温度に基づいて、次のインバータ許可電力値の単位時間当たりの変化量を変更してインバータ許可電力値指示手段に出力するインバータ許可電力値変更手段と、を有し、インバータ許可電力値変更手段は、インバータ許可電力値の単位時間当たりの変化量を、第1の所定温度以下の温度領域では温度が高いほど大きくなるように変更し、第1の所定温度よりも高温である第2の所定温度以上の温度領域では温度が高いほど小さくなるように変更することを特徴としている
このように構成された本発明においては、負荷の量に基づいて、燃料供給量及び燃料電池モジュールが発電すべき電力電流値を設定し、次に、燃料電池モジュールからの電力の引き出し許可量となる指令電力値に対応したインバータ許可電力値をインバータ手段に指示し、このとき、固体電解質型燃料電池(SOFC)の改質反応の状態、空気や燃料がセル全体に行き渡る状況の変化等を加味して、このインバータ許可電力値の単位時間当たりの変化量を燃料電池モジュール内の温度に基づいて変更するようにしたので、燃料枯れや空気枯れに伴う燃料電池セルの破損を防止しつつ、負荷の追従性を高めることができ、燃料電池から得る発電電力を多くして商用電源から得る系統電力を少なくすることにより省エネを図ることができる。また、インバータ許可電力値変更手段が、インバータ許可電力値の単位時間当たりの変化量を、第1の所定温度以下の温度領域では温度が高いほど大きくなるように変更することにより負荷追従性を高めることができる。さらに、インバータ許可電力値変更手段が、インバータ許可電力値の単位時間当たりの変化量を、第1の所定温度よりも高温である第2の所定温度以上の温度領域では温度が高いほど小さくなるように変更することにより、燃料電池セルの信頼性を確保すると共に省エネ性能を向上することができる。
本発明において、好ましくは、燃料電池モジュール内の温度は、改質器の温度であり、更に、改質器の温度を検出する改質器温度検出手段を備えている
このように構成された本発明においては、改質反応の変化を示す改質器の温度状態に基づいて、インバータ許可電力値の単位時間当たりの変化量を変更するようにしているので、改質器の改質反応の変化を吸収することにより、インバータ許可電力値の単位時間当たりの変化量(変化率)を最適化することができ、それにより、燃料電池セルの信頼性と省エネ性能を高めることができる。
本発明において、好ましくは、燃料電池モジュール内の温度は、燃料電池セルスタックの温度であり、更に、燃料電池セルスタックの温度を検出するスタック温度検出手段を備えている
このように構成された本発明においては、発電反応の変化を示す燃料電池セルスタックの温度状態に基づいて、インバータ許可電力値の単位時間当たりの変化量を変更するようにしているので、燃料電池セルスタックの発電反応の温度状態により、インバータ許可電力値を最適化することができ、それにより、燃料電池セルの信頼性と省エネ性能を高めることができる。
本発明の固体電解質型燃料電池によれば、燃料電池セルの破損防止と負荷追従性能の向上に伴う省エネを両立させることができる。
本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池を示す全体構成図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池の燃料電池モジュールを示す正面断面図である。 図2のIII-III線に沿った断面図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池を示すブロック図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池の起動時の動作を示すタイムチャートである。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池の運転停止時の動作を示すタイムチャートである。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池の要求電力の負荷量に応じて燃料供給量を変更して負荷追従するときの運転状態を示すタイムチャートである。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量の制御内容の第1例を示す線図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量の制御内容の第2例を示す線図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量の制御内容の第3例を示す線図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量の制御内容の第3例を示す線図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量の制御内容の第4例を示す線図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量の制御内容の第5例を示す線図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量の制御内容の第6例を示す線図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量の制御内容の第8例を示す線図である。 本発明の第2実施形態による固体電解質型燃料電池のインバータ許可電流値の変化を示す線図である。 本発明の第2実施形態による固体電解質型燃料電池のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量の制御内容の第1例を示す線図である。 本発明の第2実施形態による固体電解質型燃料電池のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量の制御内容の第2例を示す線図である。 本発明の第2実施形態による固体電解質型燃料電池のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量の制御内容の第3例を示す線図である。 本発明の第2実施形態による固体電解質型燃料電池のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量の制御内容の第4例を示す線図である。
次に、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池を説明する。
図1は本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池を示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の第1実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材(図示せず但し断熱材は必須の構成ではなく、なくても良いものである。)を介して密封空間8が形成されている。なお、断熱材は設けないようにしても良い。この密閉空間8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
燃料電池モジュール2の密封空間8の上述した発電室10の上方には、燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。
また、この燃焼室18の上方には、燃料ガスを改質する改質器20が配置され、上述した残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、燃焼熱を受けて空気を加熱するための空気用熱交換器22が配置されている。
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料ガスを遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤である空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44(モータで駆動される「空気ブロア」等)及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力(直流出力)を交流電力に変換して外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールの内部構造を説明する。図2は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内の密閉空間8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
改質器20は、その上流端側に純水を導入するための純水導入管60と改質される燃料ガスと改質用空気を導入するための被改質ガス導入管62が取り付けられ、また、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20aと改質部20bを形成され、改質部20bには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
次に、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。この空気用熱交換器22は、上流側に空気集約室70、下流側に2つの空気分配室72を備え、これらの空気集約室70と空気分配室72は、6個の空気流路管74により接続されている。ここで、図3に示すように、3個の空気流路管74が一組(74a,74b,74c,74d,74e,74f)となっており、空気集約室70内の空気が各組の空気流路管74からそれぞれの空気分配室72へ流入する。
空気用熱交換器22の6個の空気流路管74内を流れる空気は、燃焼室18で燃焼して上昇する排気ガスにより予熱される。
空気分配室72のそれぞれには、空気導入管76が接続され、この空気導入管76は、下方に延び、その下端側が、発電室10の下方空間に連通し、発電室10に余熱された空気を導入する。
次に、マニホールド66の下方には、排気ガス室78が形成されている。また、図3に示すように、ハウジング6の長手方向に沿った面である前面6aと後面6bの内側には、上下方向に延びる排気ガス通路80が形成され、この排気ガス通路80の上端側は、空気用熱交換器22が配置された空間と連通し、下端側は、排気ガス室78と連通している。
また、排気ガス室78の下面のほぼ中央には、排気ガス排出管82が接続され、この排気ガス排出管82の下流端は、図1に示す上述した温水製造装置50に接続されている。
図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
次に図4により燃料電池セルユニット16について説明する。図4は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図4に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
燃料電池セル16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
次に図5により燃料電池セルスタック14について説明する。図5は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の下支持板68及び上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴68a及び100aがそれぞれ形成されている。
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面全体と電気的に接続される空気極用接続部102bとにより一体的に形成されている。空気極用接続部102bは、外側電極層92の表面を上下方向に延びる鉛直部102cと、この鉛直部102cから外側電極層92の表面に沿って水平方向に延びる多数の水平部102dとから形成されている。また、燃料極用接続部102aは、空気極用接続部102bの鉛直部102cから燃料電池セルユニット16の上下方向に位置する内側電極端子86に向って斜め上方又は斜め下方に向って直線的に延びている。
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図5では左端の奥側及び手前側)に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104(図示せず)に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
次に図6により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)に取り付けられたセンサ類等について説明する。図6は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。
図6に示すように、固体電解質型燃料電池1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。
なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水(水蒸気)の流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
発電室温度センサ142は、図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体電解質型燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
また、制御部110は、インバータ54に、制御信号を送り、電力供給量を制御するようになっている。
つぎに、図7により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)による起動時の動作を説明する。図7は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の起動時の動作を示すタイムチャートである。
最初は、燃料電池モジュール2を温めるために、無負荷状態で、即ち、燃料電池モジュール2を含む回路を開いた状態で、運転を開始する。このとき、回路に電流が流れないので、燃料電池モジュール2は発電を行わない。
先ず、改質用空気流量調整ユニット44から改質用空気を第1ヒータ46を経由して燃料電池モジュール2の改質器20へ供給する。また、同時に、発電用空気流量調整ユニット45から発電用空気を第2ヒータ48を経由して燃料電池モジュール2の空気用熱交換器22へ供給し、この発電用空気が、発電室10及び燃焼室18に到達する。
この直ぐ後、燃料流量調整ユニット38からも燃料ガスが供給され、改質用空気が混合された燃料ガスが、改質器20及び燃料電池セルスタック14、燃料電池セルユニット16を通過して、燃焼室18に到達する。
次に、点火装置83により着火して、燃焼室18にある燃料ガスと空気(改質用空気及び発電用空気)とを燃焼させる。この燃料ガスと空気との燃焼により排気ガスが生じ、この排気ガスにより、発電室10が暖められ、また、排気ガスが燃料電池モジュール2の密封空間8内を上昇する際、改質器20内の改質用空気を含む燃料ガスを暖めると共に、空気熱交換器22内の発電用空気も暖める。
このとき、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、改質用空気が混合された燃料ガスが改質器20に供給されているので、改質器20において、式(1)に示す部分酸化改質反応POXが進行する。この部分酸化改質反応POXは、発熱反応であるので、起動性が良好となる。また、この昇温した燃料ガスが燃料ガス供給管64により燃料電池セルスタック14の下方に供給され、これにより、燃料電池セルスタック14が下方から加熱され、また、燃焼室18も燃料ガスと空気が燃焼して昇温されているので、燃料電池セルスタック14は、上方からも加熱され、この結果、燃料電池セルスタック14は、上下方向において、ほぼ均等に昇温可能となっている。この部分酸化改質反応POXが進行しても、燃焼室18では継続して燃料ガスと空気との燃焼反応が持続される。
mn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
部分酸化改質反応POXの開始後、改質器温度センサ148により改質器20が所定温度(例えば、600℃)になったことを検知したとき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、燃料ガスと改質用空気と水蒸気とを予め混合したガスを改質器20に供給する。このとき、改質器20においては、上述した部分酸化改質反応POXと後述する水蒸気改質反応SRとが併用されたオートサーマル改質反応ATRが進行する。このオートサーマル改質反応ATRは、熱的に内部バランスが取れるので、改質器20内では熱的に自立した状態で反応が進行する。即ち、酸素(空気)が多い場合には部分酸化改質反応POXによる発熱が支配的となり、水蒸気が多い場合には水蒸気改質反応SRによる吸熱反応が支配的となる。この段階では、既に起動の初期段階は過ぎており、発電室10内がある程度の温度まで昇温されているので、吸熱反応が支配的であっても大幅な温度低下を引き起こすことはない。また、オートサーマル改質反応ATRが進行中も、燃焼室18では燃焼反応が継続して行われている。
式(2)に示すオートサーマル改質反応ATRの開始後、改質器温度センサ146により改質器20が所定温度(例えば、700℃)になったことを検知したとき、改質用空気流量調整ユニット44による改質用空気の供給を停止すると共に、水流量調整ユニット28による水蒸気の供給を増加させる。これにより、改質器20には、空気を含まず燃料ガスと水蒸気のみを含むガスが供給され、改質器20において、式(3)の水蒸気改質反応SRが進行する。
mn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
mn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
この水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるので、燃焼室18からの燃焼熱と熱バランスをとりながら反応が進行する。この段階では、燃料電池モジュール2の起動の最終段階であるため、発電室10内が十分高温に昇温されているので、吸熱反応が進行しても、発電室10が大幅な温度低下を招くこともない。また、水蒸気改質反応SRが進行しても、燃焼室18では継続して燃焼反応が進行する。
このようにして、燃料電池モジュール2は、点火装置83により点火した後、部分酸化改質反応POX、オートサーマル改質反応ATR、水蒸気改質反応SRが、順次進行することにより、発電室10内の温度が徐々に上昇する。次に、発電室10内及び燃料電池セル84の温度が燃料電池モジュール2を安定的に作動させる定格温度よりも低い所定の発電温度に達したら、燃料電池モジュール2を含む回路を閉じ、燃料電池モジュール2による発電を開始し、それにより、回路に電流が流れる。燃料電池モジュール2の発電により、燃料電池セル84自体も発熱し、燃料電池セル84の温度も上昇する。この結果、燃料電池モジュール2を作動させる定格定格温度、例えば、600℃〜800℃になる。
この後、定格温度を維持するために、燃料電池セル84で消費される燃料ガス及び空気の量よりも多い燃料ガス及び空気を供給し、燃焼室18での燃焼を継続させる。なお、発電中は、改質効率の高い水蒸気改質反応SRで発電が進行する。
次に、図8により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を説明する。図8は、本実施形態により固体電解質型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を示すタイムチャートである。
図8に示すように、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、先ず、燃料流量調整ユニット38及び水流量調整ユニット28を操作して、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させる。
また、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させると同時に、改質用空気流量調整ユニット44による発電用空気の燃料電池モジュール2内への供給量を増大させて、燃料電池セル集合体12及び改質器20を空気により冷却し、これらの温度を低下させる。その後、発電室温度が所定温度、例えば、400℃まで低下したとき、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給を停止し、改質器20の水蒸気改質反応SRを終了する。この発電用空気の供給は、改質器20の温度が所定温度、例えば、200℃まで低下するまで、継続し、この所定温度となったとき、発電用空気流量調整ユニット45からの発電用空気の供給を停止する。
このように、本実施形態においては、燃料電池モジュール2の運転停止を行うとき、改質器20による水蒸気改質反応SRと発電用空気による冷却とを併用しているので、比較的短時間に、燃料電池モジュールの運転を停止させることができる。
次に、図1及び図6に示すように、本実施形態の固体電解質型燃料電池1は、家庭や店舗等の施設56に配置され、インバータ54から発電電力が施設56に供給されるようになっている。また、この施設56には、商用電源58も接続されており、この商用電源58から系統電力が供給されるようになっている。
さらに、本実施形態の固体電解質型燃料電池1では、施設56が必要とする需要電力量の全部又は一部の電力量が、固体電解質型燃料電池1の要求電力Pとして設定され、この要求電力Pに対応して発電出力値を変更する負荷追従による運転が行われるようになっている。
また、図6に示すように、固体電解質型燃料電池1は、施設56が必要とする需要電力から決定された固体電解質型燃料電池1の要求電力Pに基づいて、固体電解質型燃料電池1が発電すべき電力の電流量である指令電流値ISを設定する指令電流値設定部111を備えている。
次に、図9により、本実施形態による固体電解質型燃料電池における負荷追従時の運転状態を説明する。
ここで、本実施形態による固体電解質型燃料電池1が発生する電力(実発電電力)は、住宅等の施設56が必要とする需要電力(総需要電力)に基づいて制御されるが、需要電力が固体電解質型燃料電池1により発生させることができる最大定格電力を超えている場合には、不足分は系統電力から供給される(ここで、需要電力のうち固体電解質型燃料電池1に求められる分担量を要求電力(負荷量)Pと言う)。また、要求電力は時間的な変動が激しいため、固体電解質型燃料電池1が発生する電力がこれに完全に追従することは困難である。このため、固体電解質型燃料電池1(燃料電池モジュール2)が生成する電力は、要求電力Pの変動を追従可能な程度に抑制した指令電力を目標値として制御される。さらに、燃料供給量等を指令電力に基づいて制御した場合においても、燃料電池モジュール2内で実際に電力を生成するには時間を要するので、燃料電池モジュール2から実際に取り出される実発電電力は、燃料供給から時間遅れがあるのでインバータに出力して実際に電力を取り出すための許容値となる許可信号であるインター許可電力は燃料供給から時間遅れを見越して出力される。
なお、本実施形態においては、固体電解質型燃料電池1は、インバータ54の出力電圧が100V一定になるように作動するので、上述した要求電力、最大定格電力、インバータ許可電力、実発電電力は、夫々、要求電流、最大定格電流、インバータ許可電流、実発電電流に比例する。また、本実施形態の固体電解質型燃料電池1は、これらの電流値に基づいて制御が行われているが、固体電解質型燃料電池1は、これらの「電流」を「電力」と置き換えても同様の制御を実施することができる。なお、本発明の特許請求の範囲では、電流の制御を含む記載として広義の電力(指令電力、インバータ許可電力など)を用いており、電流に限定解釈される記載ではない。
つぎに、図9は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池の需要電力に対応して発電出力値を変更する負荷追従時の運転状態を示すタイムチャートである。ここで、図9の横軸は時間を示し、指令電流値Isが変化する代表的な時刻をt1〜t5で示している。一方、図9の縦軸は要求電力Pが設定されてからインバータ54において実発電電力Prの取り出しを許可するインバータ許可電流Isinvが出力されるまでの工程(i)〜(iv)を上方から下方に向かって時系列順に示している。
まず、図9に示すように、固体電解質型燃料電池1は、施設56が必要とする需要電力から固体電解質型燃料電池1の要求電力P(負荷量)が決定されると(図9の「(i)要求電力P」参照)、この要求電力Pに基づいて、固体電解質型燃料電池1が発電すべき電流量である指令電流Isが指令電流設定部111によって設定される(図9の「(ii)指令電流Is」参照)。
ここで、本実施形態にいては、指令電流Isは、要求電力Pである負荷の量に基づいて、単位時間当たりの変化量が変化するように設定される。なお、従来の固体電解質型燃料電池においては、指令電流の単位時間当たりの変化量は、セルの破損を防止するため、例えば、0.5A/minに設定され、相当遅い速度で増大するようになっていた。
つぎに、制御部110は、指令電流設定部111で設定した指令電流Isに基づいて、燃料流量調整ユニット38から燃料電池モジュール2内の改質器20に供給する燃料供給量Fを設定する。そして、この燃料供給量Fを指令電流Isの変化に応じて増大又は減少させて、少なくとも指令電流Isを出力できるように燃料流量調整ユニット38を制御し、要求された負荷に追従させた燃料の供給を行う。
同時に、燃料流量センサ132によって燃料流量調整ユニット38から改質器20に実際に供給される燃料供給量の実測値である実燃料供給量Frが検出される(図9の「(iii)実燃料供給量Fr」参照)。
つぎに、制御部110は、発電用空気流量調整ユニット45から燃料電池モジュール2内の燃料電池セル集合体12に供給する発電用空気供給量Aを、指令電流設定部111で設定した指令電流Is及び先に検出された実燃料供給量Frに基づいて設定する。
同様に、制御部110は、水流量調整ユニット28から燃料電池モジュール2内の改質器20に供給する水供給量Wも、指令電流設定部111で設定した指令電流Is及び先に検出された実燃料供給量Frに基づいて設定する。
つぎに、制御部110は、実発電電力Prの取り出しを許可し上記指令電流Isに対応したインバータ許可電流Isinvの制御信号を、インバータ54に送り、施設56に供給する電力供給量を制御する。ここで、本実施形態による固体電解質型燃料電池1では、インバータ許可電流Isinvは、通常、燃料電池モジュール2からインバータ54へ実際に出力される電流(実発電電流Ir)に相当する値となる(図9の「(iv)インバータ許可電流Isinv」参照)。
図9に示すように、本実施形態による固体電解質型燃料電池1においては、詳細は後述する負荷の状態に基づいて、インバータ54に指示されるインバータ許可電流値Isinvの単位時間当たりの変化量を変更する、即ち、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量が異なる複数の値を取り得るような特性を有するようにしたので、燃料枯れや空気枯れに伴う燃料電池セルの破損を防止しつつ、負荷の追従性を高めることによって、燃料電池から得る発電電力を多くして商用電源から得る系統電力を少なくすることにより省エネを図ることができる。制御部110は、このようにしてインバータ許可電流値Isinvの単位時間当たりの変化量を変更し、この変更されたインバータ許可電流値Isinvの単位時間当たりの変化量をインバータ54に出力するようになっている。
次に、図10乃至図17により、制御部110で実行される、本実施形態の固体電解質型燃料電池による負荷追従のための負荷量に対するインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変化させる制御内容を説明する。以下、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を、種々の負荷の状態で変更して、負荷追従性を高め、それにより、省エネ性能を向上させた例を説明するが、これらの例は、必要に応じて、任意に組み合わせて実施される。
先ず、図10により、本実施形態による、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更する制御内容の第1例を説明する。
図10に示すように、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量(インバータ許可電流値変化量)は、負荷の変化量(負荷変化量)及び負荷変化量の正と負により決定されるようになっている。
先ず、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量(指令電流値変化量)は、負荷の変化量が小の場合に大の場合よりも小さく設定されている。具体的には、負荷変化量が小さい場合には、例えば、1A/min(負荷変化量が正)、1A/min及び1A/min(負荷変化量が負)と設定され、負荷変化量が大きい場合には、2A/min(負荷変化量が正)、5A/min(負荷変化量が負)と設定されている。
ここで、負荷変化量が小さいときは燃料及び空気の変化量も小さいため燃料電池セル全体に対する燃料の回りや安定性が悪いので、燃料電池による発電電力量を大きくすると燃料電池セルに影響を与えるが、本実施形態の第1例による固体電解質型燃料電池によれば、このような場合に、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を小さくしたので、これを確実に防止できる。
次に、図10に示すように、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量(インバータ許可電流値変化量)を、負荷変化量が正の場合(負荷量が増大しているとき)及び負の場合(負荷量が減少しているとき)の両方において、変更するようにしているが、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量(インバータ許可電流値変化量)を負荷変化量が負の場合に正の場合よりも大きな値に変更するようにしている。
このように、本実施形態の第1例においては、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量(インバータ許可電流値変化量)を負荷変化量が負の場合に正の場合よりも大きな値に変更するので、負方向への負荷量の変化に対する燃料電池の追従性を高めることにより無駄な燃料消費を抑えることができると共に、負荷量が急増した場合にはインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を小さくしているので、インバータ許可電流値の追従遅れが発生し、これにより、インバータによる過剰電力供給が行われることを確実に防止することができる。
次に、図11により、本実施形態による、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更する制御内容の第2例を説明する。
図11に示すように、時刻t6〜t7の間は、目標となるインバータ許可電流値に対する現在のインバータ許可電流値の偏差(=目標となるインバータ許可電流値−現在のインバータ許可電流値)が正(目標となるインバータ許可電流値>現在のインバータ許可電流値)で且つ負荷量が減少している状態である。本実施形態の第2例においては、このような状態のときは、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量の減少を抑制するようにしている。具体的には、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を破線Aから実線Bに変更している。
この本実施形態の第2例によれば、目標となるインバータ許可電流値に対する現在のインバータ許可電流値の偏差が正で且つ負荷量が減少している状態では、インバータ許可電流値の変化量の減少を抑制するようにインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更するようにしているので、燃料電池から得る発電電力量を多くして商用電源から得る系統電力を少なくすることにより省エネを図ることができる。また、インバータ許可電流値の偏差の量に応じて負荷量が減少しているときのインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を減少を抑制するように変更しているので、追従性も高めることができる。
次に、図12及び図13により、本実施形態による、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更する制御内容の第3例を説明する。
この第3例においては、次のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を、現在のインバータ許可電流値が大きい場合は小さい場合より大きな値に変更(補正)するようにしている。具体的には、図12に示すように、現在のインバータ許可電流値が0A〜3Aの間の領域では、インバータ許可電流値の値が大きいほど、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量の補正量は大きな値となっており、現在のインバータ許可電流値が3A以上の領域では、補正量は一定値となっている。また、現在のインバータ許可電流値が2Aのとき、補正量は「1」となっている。
図13には、このように現在のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更して算出された次のインバータ許可電流値を示している。図13には、現在のインバータ許可電流値により変更された次のインバータ許可電流値の単位当たりの変化量が2A/minの例を示しており、この変化量を破線Aで示し、実際は、実線Bで示すような応答となる。
この本実施形態の第3例によれば、インバータ許可電流値が大きな値のとき、即ち、発電電力量が高い状態では、発電反応が生じており燃料電池セルも高温で安定しているので、次のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を、現在のインバータ許可電流値が大きい場合には小さい場合より大きな値に変更して追従感度を高めても、燃料電池セルに悪影響を与えることを抑制できる。
次に、図14により、本実施形態による、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更する制御内容の第4例を説明する。
この第4例においては、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を過去のインバータ許可電流値の状態に応じて変更している。即ち、過去のインバータ許可電流値の変化率が大きいほどインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量が大きくなるように次にインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更している。
過去のインバータ許可電流値の状態として、例えば、過去5回分のインバータ許可電流値の差分の平均値を用いるのが好ましい。また、過去5回分のインバータ許可電流値自体の平均値を用いるようにしても良い。
この本実施形態の第4例によれば、指令電流値の変化率が小さい発電初期は、改質遅れ、燃料や空気の分散性が低く安定もしていないので、指令電流値の単位時間当たりの変化量を小さくして抑えることにより、燃料枯れを確実に防止でき、一方、指令電流値の変化率が大きな発電への移行過程では、空気の分散性や改質の安定性も図れるため、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を大きくすることで追従性が上がり省エネ性能の向上が図れる。
次に、図15により、本実施形態による、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更する制御内容の第5例を説明する。
この第5例においては、現在のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を、目標となるインバータ許可電流値に対する偏差が小さくなるほど小さくなるように変更(補正)している。具体的には、図15に示すように、インバータ許可電流値の偏差が0A〜2Aの間の領域では、インバータ許可電流値の偏差が大きいほど、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量の補正量は大きな値となっており、インバータ許可電流値の偏差2A以上の領域では、補正量は一定値となっている。また、インバータ許可電流値の偏差が1.5Aのとき、補正量は「1」となっている。
この本実施形態の第5例によれば、現在のインバータ許可電流値の目標となるインバータ許可電流値に対する偏差が小さくなるほど現在のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を小さくなるように変更(補正)したので、追従性を高めることができる。さらに、偏差が小さくなる収束過程では、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量も低下してインバータ許可電流値がゆっくりと目標となるインバータ許可電流値に到達するため、燃料枯れを確実に防止できる。
次に、図16により、本実施形態による、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更する制御内容の第6例を説明する。
この第6例においては、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量について予め異なる3個の比例特性を準備しておき、負荷の変化量(負荷変化量)に応じて、これらの比例特性の1つを選択し、この選択された比例特性により、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更するようにしている。
具体的には、図16に示すように、負荷変化量が大の場合に選択するインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量が3A/minの比例特性B1、負荷変化量が中の場合に選択するインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量が2A/minの比例特性B2、負荷変化量が小の場合に選択するインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量が1A/minの比例特性B3を準備し、負荷変化量の大きさに応じて、これらの比例特性のうちの一つが選択されるようになっている。
この第6例においては、燃料電池の制御の簡便性を図ることができると共に、変化する負荷量に対してインバータ許可電流値の変化を安定させることができ、その結果、燃料、空気、改質反応を安定化させることができる。
次に、本実施形態による、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更する制御内容の第7例を説明する。
この第7例においては、図16に示す、複数の比例特性に対応する負荷量の変化量(大、中、小)を、負荷量に応じて決定される指令電流値の上下範囲内となるように設定し、さらに、負荷の変化量が比例特性B1で定めた最大負荷変化量(負荷変化量大)を越える場合であっても、最大の負荷量の変化量を定めた比例特性B1を選択するように規制している。
この第7例によれば、負荷量が大きく変化しても、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を抑えるようにしたので、燃料、空気、改質反応の安定化が図れる。
次に、図17により、本実施形態による、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更する制御内容の第8例を説明する。
この第8例においては、現在のインバータ許可電流値の目標となるインバータ許可電流値に対する偏差について予め異なる3個の比例特性を準備しておき、偏差の大きさに応じて、これらの比例特性の1つを選択し、この選択された比例特性により、現在のインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更するようにしている。
具体的には、図17に示すように、現在のインバータ許可電流値の目標となるインバータ許可電流値に対する偏差が3A以上の比例特性C1、偏差が1A〜3Aの比例特性C2、偏差が1A未満の比例特性C3を準備し、偏差の大きさに応じて、これらの比例特性のうちの一つが選択されるようになっている。
この第8例によれば、現在のインバータ許可電流値の目標となるインバータ許可電流値に対する偏差に対応させて複数の比例特性を準備しているので、制御の簡素化を図り、偏差に対する最適な特性とすることにより安定性と安定化が図れ、省エネ性能と燃料枯れを両立させることができる。
さらに、本実施形態においては、上述した第1例から第8例と同時に、以下の制御を実行してもよい。即ち、現在のインバータ許可電流値の目標となるインバータ許可電流値に対する偏差の単位時間当たりの変化量を変更すると同時に、この現在のインバータ許可電流値の目標となるインバータ許可電流値に対する偏差の単位時間当たりの変化量に対応させて燃料供給量を変化させるようにしても良い。
これにより、本実施形態によれば、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更すると同時に、このインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量に対応させて燃料供給量を合せて変化させるので、燃料電池セルに対する信頼性を一層高めた状態で負荷追従性を高めることが可能となる。
次に、図18乃至図22により、本発明の第2実施形態の固体電解質型燃料電池による負荷追従のための所定のパラメータによりインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変化させる制御内容(即ち、第2インバータ許可電流値変更手段による制御内容)を説明する。以下、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を、改質器の温度、燃料電池セルスタックの温度、外気温度等のパラメータにより、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更して、燃料電池セルの信頼性を向上させ、省エネ性能を高めた例を説明するが、これらの例は、必要に応じて、任意に組み合わせて実施される。
先ず、図18により、第2実施形態の第2インバータ許可電流値変更手段による、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更する前提となるインバータ許可電流値の変化を説明する。
図18に示すように、インバータ許可電流値が目標となるインバータ許可電流値に到達するために、インバータ許可電流値は、例えば、単位時間当たりの変化量2A/minで変化する。
次に、図19により、第2実施形態による第2指令電流値変更手段により、所定のパラメータである「改質器温度」によるインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変化させる制御内容(第1例)を説明する。
図9に示すように、改質器温度は、改質反応が開始された低温領域から、改質反応が安定して行われる安定高温領域に移行する。さらに、改質器が異常状態となったり、燃料電池セルが劣化したような場合には、改質器温度は、安定高温領域よりさらに高温である異常高温領域となる。
本実施形態においては、先ず、このような改質器温度の状態に基づいて、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更(補正)している。
この本発明の第2実施形態の第1例によれば、改質反応の変化を示す改質器の温度状態に基づいて、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更(補正)するようにしているので、改質器の改質反応の変化を吸収することにより、インバータ許可電流値の単位当たりの変化量(変化率)を最適化することができ、それにより、燃料電池セルの信頼性と省エネ性能を高めることができる。
次に、図19に示すように、第2実施形態の第1例においては、図19の補正量が「1」(改質器温度はA℃)より小さい場合には、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量は小さくなるように変更(補正)され、補正量が「1」より大きな場合には、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量は大きくなるように変更(補正)される。さらに、安定高温領域(B℃〜C℃)では、指令電流値の単位時間当たりの変化量の補正量は一定となっている。
このように、第1例では、改質器の温度が所定温度(改質器温度がC℃)以下の温度領域では、改質器の温度が高いほどインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量が大きくなるように変更(補正)している。
この第2実施形態の第2例によれば、改質器が所定温度(改質器温度がC℃)以下の温度領域において、改質器温度がA℃〜C℃の高温状態では、改質器における改質反応が安定状態となっているためインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量が大きくなるように補正して、負荷追従性を高めることができる。また、改質器温度がA℃以下の改質器温度が低い改質反応が十分でない低温状態では、インバータ許可電流値の単位時間単位の変化量が小さくなるように変更(補正)しているため、燃料電池セルの信頼性を確保すると共に省エネ性能を向上することができる。
さらに、図19に示すように、第2実施形態の第1例においては、改質器温度が所定温度(改質器の温度がC℃)以上の異常高温領域であると判定された場合には、指令電流値の単位時間当たりの変化量が小さくなるように補正している。
この第2実施形態の第1例によれば、改質器の温度が高温領域の場合には、改質器の異常や燃料電池セルの異常(劣化)の可能性があるため、このような場合には、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量が小さくなるように変更(補正)したので、省エネ性能を確保した上で燃料電池セルの更なる劣化を抑制して信頼性を高めることができる。
次に、図20により、第2実施形態の第2指令電流値変更手段による、所定のパラメータである「燃料電池セルスタック温度」によるインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変化させる制御内容(第2例)を説明する。
図20に示すように、燃料電池セルスタック温度は、発電反応が開始された低温領域から、発電反応が安定して行われる安定高温領域に移行する。さらに、燃料電池セルが劣化したような場合には、燃料電池セルスタック温度は、安定高温領域よりさらに高温である異常高温領域となる。
本実施形態においては、先ず、燃料電池セルスタック温度の状態に基づいて、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を補正してインバータ許可電流値を変更(補正)するようにしている。
この本発明の第2実施形態の第2例によれば、発電反応の変化を示す燃料電池セルスタックの温度状態に基づいて、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更(補正)するようにしているので、燃料電池セルスタックの発電反応の温度状態により、インバータ許可電流値を最適化することができ、それにより、燃料電池セルの信頼性と省エネ性能を高めることができる。
次に、図20に示すように、第2実施形態の第2例においては、図20の補正量が「1」(燃料電池セルスタック温度はD℃)より小さい場合には、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量は小さくなるように変更(補正)され、補正量が「1」より大きな場合には、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量は大きくなるように変更(補正)される。さらに、安定高温領域(E℃〜F℃)では、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量の補正量は一定となっている。
このように、第2例では、燃料電池セルスタック温度が所定温度(燃料電池セルスタック温度がF℃)以下の温度領域で、燃料電池セルスタック温度が高いほどインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量が大きくなるように変更(補正)して、指令電流値を変更するようにしている。
この第2実施形態の第2例によれば、燃料電池セルスタックが所定温度(燃料電池セルスタック温度がF℃)以下の温度領域で高温状態の場合には燃料電池セルスタックにおける発電反応が安定状態となっているため、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量が大きくなるように変更(補正)して、負荷追従性を高めることができ、その結果、燃料電池セルの信頼性を確保すると共に省エネ性能を向上することができる。
さらに、図20に示すように、第2実施形態の第2例においては、燃料電池セルスタック温度が所定温度(燃料電池セルスタック温度がF℃)以上の異常高温領域であると判定された場合には、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量が小さくなるように変更(補正)している。
この第2実施形態の第2例によれば、燃料電池セルスタックの温度が異常高温領域の場合には燃料電池セルが異常(劣化)の可能性があり、また、燃料電池セルスタックへ供給される発電用空気が膨張して酸素濃度が低下して必要な酸素量が不足していると考えられるため、このような場合には、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を小さくなるように変更(補正)したので、省エネ性能を確保した上で燃料電池セルの信頼性を高めることができる。
次に、図21により、第2実施形態による第2指令電流値変更手段により、所定のパラメータである「外気温度」によるインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変化させる制御内容(第3例)を説明する。
図21に示すように、第2実施形態の第3例では、外気温度が低いほど、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量が小さくなるように変更(補正)している。
具体的には、図21に示すように、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量は、補正量が「1」より大きい外気温度がH℃より高温領域では大きくなるように変更(補正)され、補正量が「1」である0℃の温度のときは補正されず、補正量が「1」より小さい外気温度がG℃の低温領域では小さくなるように変更(補正)される。
この第2実施形態の第3例によれば、外気温度が低い低温下では、燃料電池セルスタック周辺空間の温度変化が小さくなり、さらに、改質器における水蒸気発生の低下が考えられるため、このような状態に追従して、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量が小さくなるように補正したので、省エネ性能を高めながら燃料電池セルの信頼性を高めることができる。
次に、図22により、第2実施形態による第2指令電流値変更手段により、所定のパラメータである「燃料電池セルの異常状態」によるインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変化させる制御内容(第4例)を説明する。
先ず、燃料電池セルは長年の使用により劣化していくので、この燃料電池セルが劣化状態となった場合には、異常状態と判定される。例えば、燃料電池セルは、燃料ガス供給量、発電用空気供給量、水供給量を上限定格発電出力(例えば700W)に対応する供給量に所定時間維持することにより、燃料電池セルの運転状態を安定させ、この安定後に、発電室温度が所定温度よりも高い場合には、劣化と判定される。また、フィルター詰まり等でも燃料電池セルが異常状態であると判定される。
この第2実施形態の第4例においては、燃料電池セルが異常であると判定した場合には、図21に示すように、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量が小さくなるように、具体的には、2A/minを0.5A/minに変更(補正)している。
この第2実施形態の第4例によれば、燃料電池セルの劣化やフィルター詰まりなどの燃料電池セルが異常状態と判定された場合には、インバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量が小さくなるように変更(補正)して、インバータ許可電流値を下げるようにしたので、省エネ性能を高めながら燃料電池セルの信頼性を高めることができる。
次に、本発明の第3実施形態による固体電解質型燃料電池を説明する。この第3実施形態は、上述した第1実施形態における第1インバータ許可電流値変更手段と第2実施形態における第2インバータ許可電流値変更手段を組合わせたものである。
具体的には、先ず、第1インバータ許可電流値変更手段により、負荷量によりインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更し、次に、この第1インバータ許可電流値変更手段により変更されたインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を、第2インバータ許可電流値変更手段により、所定のパラメータにより更に変更するようにしている。
この第3実施形態においても、上述した第1実施形態における第1例乃至第8例を必要に応じて適宜組合わせるようにしても良く、さらに、上述した第2実施形態における第1例乃至第4例を必要に応じて適宜組み合わせるようにしても良い。
この第3実施形態によれば、先ず、第1インバータ許可電流値変更手段により、負荷量によりインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を変更し、次に、第2インバータ許可電流値変更手段により、発電反応や改質反応の変化が生じる状況を判断してインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を更に変更するようにしているので、負荷量によりインバータ許可電流値の単位時間当たりの変化量を最適に変更する第1インバータ許可電流値変更手段を設けたことにより負荷に対する制御感度を高めることができ、さらに、負荷以外のパラメータによってもインバータ許可電流値を変更するようにしたので、燃料電池セルの信頼性を担保することが可能となって負荷追従性能を大きく且つ安全に高めることができる。
1 固体電解質型燃料電池
2 燃料電池モジュール
4 補機ユニット
8 密封空間
10 発電室
12 燃料電池セル集合体
14 燃料電池セルスタック
16 燃料電池セルユニット
18 燃焼室
20 改質器
22 空気用熱交換器
24 水供給源
26 純水タンク
28 水流量調整ユニット
30 燃料供給源
38 燃料流量調整ユニット
40 空気供給源
44 改質用空気流量調整ユニット
45 発電用空気流量調整ユニット
46 第1ヒータ
48 第2ヒータ
50 温水製造装置
52 制御ボックス
54 インバータ
56 施設
58 商用電源
83 点火装置
84 燃料電池セル
110 制御部
111 指令電流値設定部
112 操作装置
114 表示装置
116 報知装置
126 電力状態検出センサ
142 発電室温度センサ
150 外気温度センサ

Claims (4)

  1. 需要電力から決定される要求電力である負荷に応じて燃料供給量を変更する負荷追従機能を備えた固体電解質型燃料電池において、
    複数の固体電解質型燃料電池セルからなる燃料電池セルスタック及び燃料を改質して燃料電池セルへ供給する改質器を有する燃料電池モジュールと、
    上記燃料電池モジュールによって発電された電力を受け入れ、交流に変換するインバータ手段と、
    上記負荷の量に基づいて、上記燃料電池モジュールが発電すべき指令電力値を設定する指令電力値設定手段と、
    上記指令電力値を生成できるように燃料電池セルに供給する燃料流量を決定して供給する燃料制御手段と、
    上記燃料制御手段により燃料電池セルに燃料流量を供給した後に、上記燃料電池モジュールからの電力の引き出し許可量となる上記指令電力値に対応したインバータ許可電力値を上記インバータ手段に指示するインバータ許可電力値指示手段と、
    上記燃料電池モジュール内の温度に基づいて、次のインバータ許可電力値の単位時間当たりの変化量を変更して上記インバータ許可電力値指示手段に出力するインバータ許可電力値変更手段と、を有し、
    上記インバータ許可電力値変更手段は、インバータ許可電力値の単位時間当たりの変化量を、第1の所定温度以下の温度領域では温度が高いほど大きくなるように変更し、第1の所定温度よりも高温である第2の所定温度以上の温度領域では温度が高いほど小さくなるように変更することを特徴とする固体電解質型燃料電池。
  2. 上記燃料電池モジュール内の温度は、上記改質器の温度であり、更に、上記改質器の温度を検出する改質器温度検出手段を備えている請求項1に記載の固体電解質型燃料電池。
  3. 上記燃料電池モジュール内の温度は、上記燃料電池セルスタックの温度であり、更に、上記燃料電池セルスタックの温度を検出するスタック温度検出手段を備えている請求項1に記載の固体電解質型燃料電池。
  4. 上記インバータ許可電力値変更手段は、インバータ許可電力値の単位時間当たりの変化量を、上記第1の所定温度と第2の所定温度の間の温度領域において、一定になるように制御する請求項1に記載の固体電解質型燃料電池。
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