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JP5391666B2 - 二軸延伸フィルム - Google Patents

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JP5391666B2 JP2008299085A JP2008299085A JP5391666B2 JP 5391666 B2 JP5391666 B2 JP 5391666B2 JP 2008299085 A JP2008299085 A JP 2008299085A JP 2008299085 A JP2008299085 A JP 2008299085A JP 5391666 B2 JP5391666 B2 JP 5391666B2
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Description

本発明は、包装用材料として有用な、各種加工適性に優れ、透明性などに優れたポリ乳酸系フィルムを高い生産性、操業性で生産するために好適な構成を有する二軸延伸フィルムを提供するものである。
従来のポリ乳酸は熱安定性が悪く、溶融成型の際に容易にラクチドを生成し、機台を汚すほか、フィルムの製膜の際にはキャストロールの汚れとそれに伴う冷却不足による生産性や延伸性の低下が観察される。ポリテトラメチレングリコール含有樹脂を添加すると、通常のポリ乳酸と同等の条件で製造した場合でも乳酸オリゴマーやラクチドの析出や揮発を抑制することができ、生産性の向上が可能となる。
バイオマス由来材料としてポリ乳酸が注目されており、繊維、フィルム、容器、成形材料用として使用され始めている。ポリ乳酸は溶融成型が一般的であるが、熱安定性が悪く、溶融中にラクチドや乳酸オリゴマーが生成し、例えばフィルムや繊維に加工する際に装置を汚すなどの問題がある。
特開2007−245710号公報
フィルムの力学特性を改善するために高分子量のポリ乳酸を使用しようとすると、溶融中の粘度が更に高粘度化し、溶融温度を高めて加工することになるが、その場合、更に熱分解が起こりやすくなり、キャスト時のチルロールには大量のラクチドが付着し、シートの表面グロスの低下、冷却不足による延伸性の低下、冷却不測によるチルロールからの剥離性低下と破断など、生産性の面で問題があった。この問題に対して、残留触媒の除去、触媒失活剤の添加などの方法が使用されるが、これらの方法においても不十分であった。
以上のように、従来の技術ではラクチド生成による生産性の低下を改善するための先行技術は存在しなかった。
本発明は高い生産性、操業性で生産しやすい成型工程でのオリゴマーなどの析出を抑制された包装用材料として好適なポリ乳酸系樹脂を主体とする二軸延伸フィルムを提供することを課題とする。
本発明者は、溶融成型中に生成するラクチドを抑制するのではなく、生成したラクチドを系外に析出しないようにするための添加剤について検討した結果、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)を添加することで系外への析出が抑制されることを見出した。ただ、PTMGを単に添加するだけでは経時で表面にブリードアウトしてしまい、実用に耐えないため、他の成分に共重合化することで、オリゴマー析出とPTMGのブリードアウトの抑制が可能となり、本発明に至った。
すなわち本発明は、以下の構成よりなる。
1. L体/D体比=100/0〜85/15の結晶性ポリ乳酸系樹脂組成物からなる二軸延伸フィルムであって、結晶性ポリ乳酸系樹脂組成物が、粒子径0.1〜10μmの滑剤を全重量に対して100〜10000ppmと、ポリテトラメチレングリコール成分を含有する熱可塑性樹脂を全重量に対して2〜30重量%含有することを特徴とする二軸延伸フィルム。
2. 表層にL体/D体比=100/0〜85/15の結晶性ポリ乳酸系樹脂組成物からなり、粒子径0.1〜10μmの滑剤を全重量に対して100〜10000ppmと、ポリテトラメチレングリコール成分を含有する熱可塑性樹脂を全重量に対して2〜30重量%含有する結晶性ポリ乳酸系樹脂組成物からなる樹脂層を有し、内部層に脂肪族、脂環族ジカルボン酸成分、又はヒドロキシカルボン酸を必須の成分とするポリエステル樹脂を50〜100重量%含有する樹脂組成物からなる層を有し、前記内部層の厚みが総厚みに対して10〜80%を占め、ヘイズが1〜10%であることを特徴とする二軸延伸フィルム。
. ポリテトラメチレングリコール成分を含有する熱可塑性含有樹脂が、ポリアミド系樹脂であることを特徴とする上記第1に記載の二軸延伸フィルム
. ポリテトラメチレングリコール成分を含有する熱可塑性樹脂が、ポリエステル系樹脂であることを特徴とする上記第1に記載の二軸延伸フィルム。
本発明におけるPTMG成分を含有する熱可塑性樹脂について、結晶性ポリ乳酸樹脂に対して相溶性が高すぎる場合、結晶性ポリ乳酸樹脂のガラス転移点を低下せしめ、耐熱性を低下させる原因となる。このため、PTMGを共重合させる樹脂としてはポリ乳酸以外の樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂や他のポリエステル樹脂が好適である。
また、ポリ乳酸樹脂は生分解性樹脂であり、植物由来樹脂であり、また高ガラス転移点を有する樹脂であることから、他の樹脂の表層に積層して使用することが考えられる。例えば芳香族−脂肪族系ポリエステル樹脂の製膜の場合において、ポリ乳酸樹脂と同様に溶融中の熱安定性が悪く、オリゴマーが析出する場合があるが、ポリ乳酸樹脂と比較してそのオリゴマーのガラス転移点が低く、粘着性を有している場合があり、キャスティング時にチルロールから剥離できないトラブルが発生することがある。この場合、ポリ乳酸樹脂を表層に積層することで、芳香族−脂肪族系ポリエステル由来のオリゴマーのチルロールへの析出は抑制できるが、通常のポリ乳酸を積層しただけでは、ポリ乳酸由来のオリゴマーが析出する。このような場合に、表層のポリ乳酸樹脂層にPTMG成分を含有する熱可塑性樹脂を添加することで、各種の問題を解決できることになった。
本発明によると、高い生産性、操業性を維持できるラクチドの析出などの問題を抑制できるポリ乳酸系の二軸延伸フィルムの提供が可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明においては、結晶性のポリ乳酸樹脂に対して、滑り性を付与することを目的とした滑剤と、ポリ乳酸樹脂から析出するラクチドなどを溶解する機能を有するPTMGセグメントを共重合した樹脂を添加することが好ましい。ラクチドを溶解させるPTMG含有樹脂としては、PTMG分子量が500〜5000の範囲であり、共重合量が10〜60重量%であることが好ましい。共重合する樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂など、PTMGを共重合できる樹脂であれば限定されないが、好ましいのはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂である。
(結晶性ポリ乳酸樹脂(A))
本発明において好ましく使用される結晶性ポリ乳酸樹脂(A)は、適当な触媒の存在下、開始剤としてヒドロキシル基を有する化合物を用いてラクチドの開環重合により得られるものであり、L-乳酸(以下L体)/D-乳酸(以下D体)の比が100/0〜85/15であることが好ましい。L体比率が85未満では結晶性が不十分なほか、融点が下がり、耐熱性が劣ることから好ましくない。本発明における好ましいガラス転移点は30〜65℃であり、融点が120〜170℃であることが好ましく、また配向結晶化が可能であることが好ましい。ガラス転移点や融点は走査型熱量計(DSC)などにより得ることができる。また結晶性の有無については、DSCでの昇温過程または溶融後の冷却過程における結晶化ピークの有無により確認できる。本発明において好ましい分子量は重量平均分子量で30000〜200000、更に好ましくは40000〜150000が好ましい。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ法により得ることができる。分子量が30000未満では脆く、強度の低下が観察されるため好ましくない。分子量が200000を超えると溶融成型時の粘度が高くなり、生産性の低下などが観察さえるため好ましくない。樹脂中に含まれるものとして、重合触媒、オリゴマーなどがあるが、熱安定性の面から、これらのものを取り除く処理を行ったものが望ましい。方法としては重合後のペレットをアセトンや水などで洗浄するなどの方法がある。なお、本発明においてL体/D体比=100/0〜85/5の結晶性ポリ乳酸樹脂を満足する市販品としては、レイシア(登録商標)H400、H100、H100E(三井化学製)、レボダ101、201(海正生物材料製)などが挙げられる。
(熱可塑性樹脂(B))
本発明で使用される熱可塑性樹脂(B)は、PTMG成分を含有する熱可塑性樹脂であり、PTMGは樹脂中に共重合されていることが好ましい。本発明のPTMG成分の分子量は500〜5000の範囲であることが好ましい。分子量が500未満ではポリ乳酸樹脂との相溶性がよく混和してしまい、工程中に新たに生成するラクチドを溶かし込んで系外に析出することを抑制する効果が薄くなるため好ましくない。分子量が5000を超えるとPTMG成分の相分離のサイズが大きくなり、ヘイズなどが低下するため好ましくない。PTMGの含有量および共重合量は10〜60重量%であることが好ましい。共重合量が10重量%未満ではラクチド析出のための添加量が大量に必要となり、透明性の低下などが起こるため好ましくない。また、60重量%を超えるとPTMGの相分離するサイズが大きくなり透明性が低下するため好ましくない。共重合する樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂など、PTMGを共重合できる樹脂であれば限定されないが、透明性、透明性、熱安定性の面で好ましいのはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂である。また、特許文献1記載のPTMG以外のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールの共重合品では、ポリエチレングリコール成分のポリ乳酸への相溶性が高いため、ラクチド析出効果が低く、また、親水性が高いため吸湿時のフィルムの白化が起こるため好ましくない。
本発明において用いられるポリエステル樹脂は、通常のジカルボン酸−ジオール型ポリエステルが好適であり、特に芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主体とするポリエステル樹脂が好ましく、更に好ましくは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族または脂環族ジカルボン酸の混合物と脂肪族ジオールを主体とするポリエステル樹脂である。この原料系にPTMGを添加して重合されることにより本発明のポリエステル樹脂が得られる。重合方法としては公知の方法が使用できる。本発明において好ましい分子量は重量平均分子量が5000〜200000の範囲であり、5000未満では末端のヒドロキシル基やカルボキシル基が多く、ポリ乳酸樹脂を分解させてしまうため好ましくない。末端の官能基を封鎖すれば、使用が可能である。分子量が200000を超えると、溶融粘度が高くなりすぎて、ポリ乳酸樹脂に対して均一に混合しづらくなり好ましくない。本発明において使用されるポリエステル樹脂のガラス転移点について制限はないが、ポリ乳酸樹脂の溶融温度において溶融される必要があり、その点で融点や軟化温度は170℃以下であることが好ましい。
本発明において用いられるポリアミド樹脂は、通常のラクタム系ポリアミド、ジカルボン酸−ジアミン型ポリアミドが好適であり、特にラクタム系ポリアミド樹脂が好ましく、更に好ましくは、炭素数10以上のラクタムを主体とするポリアミド樹脂である。この原料系にPTMGを添加して重合されることにより本発明のポリアミド樹脂が得られる。重合方法としては公知の方法が使用できる。本発明において好ましい分子量は重量平均分子量が5000〜200000の範囲であり、5000未満では末端のカルボキシル基、アミノ基が多く、ポリ乳酸樹脂を分解させてしまうため好ましくない。末端の官能基を封鎖すれば、使用が可能である。分子量が200000を超えると、溶融粘度が高くなりすぎて、ポリ乳酸樹脂に対して均一に混合しづらくなり好ましくない。本発明において使用されるポリアミド樹脂のガラス転移点について制限はないが、ポリ乳酸樹脂の溶融温度において溶融される必要があり、その点で融点や軟化温度は170℃以下であることが好ましい。
なお、本発明において好適に使用できるPTMG共重合樹脂の市販品としては、ポリエステル系樹脂であれば、ペルプレン(登録商標)GP301など(東洋紡績製)、ハイトレル(登録商標)(東レ・デュボン製)、アーニテル(商品名、DSM製)、バイロン(登録商標)GM915、GM920、GM980、GM990など(東洋紡績製)、プリマロイ(登録商標)(三菱化学製)が挙げられ、ポリアミド系樹脂であれば、 PEBAX(登録商標)4033など(アルケマ製)、などを挙げることができる。
(滑剤)
本発明において使用される活剤粒子は、粒子径0.1〜10μmであることが好ましい。粒子径が0.1μm未満では滑り性の付与としては粒子径が小さすぎて粗さの付与としての効果が小さくなり好ましくない。10μmを超える場合、透明性の低下が観察され、好ましくない。添加量については、全重量に対して100〜10000ppmであることが好ましい。添加量が100ppmでは滑り性への効果が小さく、10000ppmを超えると透明性の低下が観察され、好ましくない。滑剤としては、無機系、有機系のいずれもが利用可能であり、たとえば無機系粒子として、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等を挙げることができる。また、有機系粒子として、たとえばアクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子などを挙げることができる。好ましくは、経済性や熱安定性の面で、シリカの使用が好ましい。例示すると、シリカ粒子(富士シリシア化学製、サイリシア 310)などが挙げられる。
(樹脂組成物)
本発明においてポリ乳酸樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の比率は98/2〜70/30(重量比)が好ましい。(A)の比率が98%よりも多い場合には、(B)の添加の効果が小さく好ましくない。(B)の比率が30%を超える場合には、(B)を添加する効果が飽和するため経済的でない。
また、上記の樹脂組成物に対して、その他の樹脂や添加剤を添加して使用しても差し支えない。特に熱安定性の面で、触媒失活を目的としたリン系化合物の添加が好ましい。また、経済性の面から、本特許で製造される回収フィルムをポリ乳酸フィルムの一部または全部として使用することが好ましい実施形態のひとつである。その他の樹脂としては、その他のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステルエラストマー樹脂、ポリアミドエラストマー樹脂など公知の樹脂が使用可能であり、これらに限定されるものではない。
(フィルムの構成)
本発明の二軸延伸フィルムは、単層構成のものでも多層化されたものでも特に限定されない。二軸延伸後のフィルムの厚みは5〜40μmが好ましい。5μmよりも薄い場合、また40μmよりも厚い場合には、通常の包装材料としては取り扱いが困難になり好ましくない。多層構造とする場合には、本発明におけるPTMGを含むポリ乳酸系樹脂組成物を表層として使用することも内層として使用することもいずれでも可能であるが、後述するように表層として使用することで、熱安定性の低さから各種の熱劣化物が析出するような樹脂の表層として使用することで、チルロールへの汚れなどを解決でき、本発明における好ましい様態のひとつである。
本発明の樹脂組成物は各種方法により未延伸シートに加工され、その後二軸延伸を施して得られる。未延伸シートの製造法としては、溶液キャストのほか、溶融押出による方法が利用可能であり、溶融押出法が本発明においては好適である。
本発明における樹脂組成物の溶融については150〜250℃、更に好ましくは180〜240℃の範囲であることが好ましい。150℃では溶融粘度が高く生産性が低下するため好ましくない。250℃を超えるとポリ乳酸樹脂が熱劣化を起こしやすくなるため好ましくない。
溶融押出時のダイ温度については、上述と同様であるが、150〜300℃、好ましくは170〜290℃、より好ましくは180〜240℃の範囲が好ましい。温度が低くなりすぎると溶融粘度が高くなりすぎて表面の荒れなどが発生し外観が低下する。温度が高くなりすぎると、樹脂の熱分解が起こるため好ましくない。
(延伸方法)
本発明の二軸延伸フィルムはTダイより溶融押出しした未延伸のシートを逐次二軸延伸、同時二軸延伸により延伸できるほか、チューブラー方式など方法が使用可能であるが、十分な配向を行わせるためには、二軸延伸機による方法が好ましい。特性と経済性などの面からみて好ましい方法は、ロール式延伸機で縦方法に延伸した後、テンター式延伸機で横方向に延伸する方法(逐次二軸延伸法)が挙げられる。また、MD(縦)延伸については、TD(横)延伸後のボーイングを改善するためにMD多段階延伸を使用することが好ましい。
Tダイより溶融押出されて得られる実質的に未配向のポリ乳酸樹脂シートをポリ乳酸樹脂(A)のガラス転移温度Tg℃以上、ポリ乳酸樹脂(A)の昇温結晶化温度(Tc)+20℃以下の温度で縦方向に2.5〜10倍に延伸した後、更に得られた縦延伸フィルムを50℃以上、ポリ乳酸樹脂(A)の融点(Tm)−20℃以下の温度で3.0〜10倍横延伸し、次いで前記二軸延伸ポリ乳酸系樹脂フィルムを90〜180℃の温度範囲で熱固定して得ることが好適である。
MD延伸において、フィルムの温度がポリ乳酸樹脂(A)のガラス転移点温度Tg℃未満の場合は、延伸による配向結晶化による破断や厚み斑の問題が発生するため好ましくない。一方、フィルムの温度が、ポリ乳酸樹脂(A)の昇温結晶化温度(Tc)+20℃を超える場合は、熱による結晶化により破断が発生し易く好ましくない。また、MD延伸における延伸倍率は、1.1倍未満では厚み斑などの品質不良および縦方向の強度不足になり易く、10倍を超えると後続のTD延伸が難しくなるなどの問題がある。好ましい延伸倍率は2.0〜6.0倍である。
更に、TD延伸におけるフィルムの温度が50℃未満の低温の場合では、TD延伸性が悪く破断が発生し、かつ、ネック延伸に起因するTD方向の厚み斑が増大して好ましくなく、また、フィルムの温度が(Tm)−20℃を超える高温では、厚み斑が増加し好ましくない。また、TD延伸倍率が1.1倍未満では、TD方向の厚み斑が増大し好ましくない点や、TD方向の強度が低くなる点以外に、面配向が低くなり耐ピンホール性や突き刺し強度が低下するため好ましくない。また、TD延伸倍率が10倍を超える高倍率では、実質上延伸が困難である。
(熱固定)
本発明においては90〜180℃の温度範囲で熱固定を行うことが好ましい。熱固定温度が90℃未満の低温の場合は、フィルムの熱による寸法安定性が悪く不適切である。一方、180℃を越える高温では、フィルムに穴が生じたりするなど不適切である。なお、 TD延伸後の熱固定において結晶化による密度の増加とそれに伴う体積収縮が起こり、急激な加熱ではMD方向に応力がかかり破断してしまう。このため、熱固定時の加熱方法としては段階的に加熱の熱量を増やして急激な収縮応力の発生を抑制することが好ましい。具体的な方法としては、熱固定ゾーンの入り口付近から出口付近に向けて徐々に温度を上げるまたは風量を上げるなどの方法があり、延伸・熱固定後の熱収縮率の面では風量を徐々に上げるような熱固定方法が好ましい。
また弛緩処理については、縦方向の熱収縮率とのバランスなどを考慮し、その弛緩率を決定することが好ましい。本発明においては、縦方向の吸湿寸法変化が小さいため、弛緩率は0〜5%の範囲が好ましい。5%を超えると幅方向の熱収縮率の低減に対して効果が小さいため好ましくない。
(多層構造フィルムの内部層に好ましく用いられる樹脂)
本発明においては、生産性の向上を目的とした、PTMGを含有するポリ乳酸系樹脂組成物を表層に配した積層構造のフィルムも提供する。内部層に使用される樹脂として好ましいものは、ガラス転移点が低く通常の溶融キャスト法ではチルロールから剥離しないような樹脂以外にも、溶融成型中に熱安定性の悪さから各種の熱劣化物を生成しやすい原料を使用できる。前者の具体的な例としてはポリカプロラクトンやポリヒドロキシブチラートなどが挙げられ、後者の例としては、Apexa(登録商標)4024 (DuPont製)などが挙げられる。本発明における上記のポリエステル樹脂は、内部層において50〜100重量%含有する樹脂組成物であることを特徴とずる。上記のポリエステル樹脂が50%未満では表層を設ける必要性が低く経済的でない。また、本発明においては、内部層が総厚みに対して10〜80%を占めることを特徴とする。内部層が10%未満では内部層由来の特性の寄与が小さく好ましくない。内部層が80%を超えると表層の析出抑制効果が小さく好ましくない。
また、本発明における、表層にPTMG成分を含有する樹脂を添加され、内部層に上記の樹脂が添加された二軸延伸積層フィルムは、ヘイズが1〜10%であることが好ましい。ヘイズが1%未満では滑り性との両立が困難であり、また安定な生産性を考慮するとため好ましくない。また、10%を超えると、美観が悪かったり、内容物が見えにくいなどの問題があり、好ましくない。
(フィルム特性―ヘイズ)
本発明における二軸延伸フィルムのヘイズは単層のものも含めて0.1〜10.0%の範囲にあることが好ましい。ヘイズが0.1%未満では、安定して製造することが困難であり好ましくない。ヘイズが10%を超えると、使用時の内容物などが見えにくくなる以外に、意匠性が低下するため好ましくない。
本発明の二軸延伸フィルムは、用途によっては接着性や濡れ性を良くするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理が行われても良い。コーティング処理においては、フィルム製膜中にコーティングしたものを延伸するインラインコート法が好ましい実施形態のひとつである。本発明のフィルムは、更に用途に応じて、印刷、蒸着、ラミネートなどの加工が行われるのが一般的である。
本発明の二軸延伸フィルムには耐加水分解改良剤、酸化防止剤、着色剤(顔料、染料)、帯電防止剤、導電剤、難燃剤、補強剤、充填剤、無機滑剤、有機滑剤、核剤、離型剤、可塑剤、接着助剤、粘着剤などを任意に含有せしめることができる。
本発明の二軸延伸フィルムは袋状に好適に加工されて使用できる。溶断法以外にも各種の方法が利用可能である。また、本発明の二軸延伸フィルムは表層にポリエチレンなどのシーラント層を積層した複合フィルムとして好適に使用される。シーラント層の積層については、ドライラミ方式のほか、溶融押出ラミ法も使用可能である。押出ラミ適性の面より、本発明の二軸延伸フィルムは120℃における熱収縮率がMD、TDともに5%以下であることが好ましい。
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの例に何ら制約されない。本発明で用いた測定法を以下に示す。
(1)ヘイズ
JISK7105に準ずる方法で、試料を、ヘイズメーター(日本電色製、NDH2000)を用いて異なる箇所3ヶ所について測定し、その平均値をヘイズとした。
(2)ガラス転移温度(Tg)測定および低温結晶化温度(Tc)測定
未配向ポリアミド樹脂シートを液体窒素中で凍結し、減圧解凍後にセイコー電子社製DSCを用い、昇温速度20℃/分で測定した。
(3)分子量測定
PLAの平均分子量試料のPLAをクロロホルムに溶解して濃度が約0.2重量%の溶液を調製し、ゲルパーミエーション クロマトグラフィー(昭和電工(株)製、形式:GPC−SYSTEM21、以下GPCという)を用いて測定した。ポリスチレンを標準物質として重量平均分子量(Mw)を算出した。
(4)力学特性(弾性率、破断強度)
JIS K 7113に準ずる。フィルムの長手方向および幅方向に幅10mm、長さ100mmの試料を、剃刀を用いて切り出して試料とした。測定はチャック間距離40mm、引っ張り速度200mm/分の条件で行い、5回の測定結果の平均値を用いた。測定装置としては島津製作所社製オートグラフAG5000Aを用いた。
(5)耐ピンホール性(耐屈曲疲労性試験)
理学工業(株)社製のゲルボフレックステスターを使用し、下記の方法により耐屈曲疲労性を測定した。ゲルボフレックステスター(理化学工業(株)製)を使用して、試験を行った。まず、得られたフィルムサンプルを直径8.89cm(3.5インチ)の固定ヘッドと、固定ヘッドから17.78cm(7インチ)離れて平行に配置されている同径の可動ヘッドに円筒状に取り付けた。可動ヘッドの真ん中に取り付けたシャフトで、可動ヘッドの動きをコントロールする。最初、可動ヘッドを440度ひねりながら固定ヘッドに8.89cm(3.5インチ)近づけ、次に水平運動で固定ヘッドに更に6.35cm(2.5インチ)近づけた後、正反対の動きで元の状態に戻した。このサイクルを1回として、23℃、60%RHで40回/分の速さで1000回行った。1000回繰り返し実施後のピンホール個数を測定した。
(6)グロス
光沢度(グロス )はJIS K8741に準じて、100×100mmの大きさの試験片をとり、光沢計(グロス メーターモデル1001DP(日本電色工業(株)製))を用いて20度鏡面光沢度を測定した。
(7)オリゴマー析出性評価(キャストシートのグロス)
ポリ乳酸樹脂(三井化学製レイシア(登録商標)H-400)のペレットと樹脂を混合して押出機に投入し、220℃で溶融して、20℃に調整した冷却ロールにシート状にTダイから押出し、冷却固化させることで未延伸シートを作製した。キャスト速度は4m/minで行い、30分キャスト後の冷却ロール表面の汚れを確認し、また、得られたシートの幅方向中央部からサンプルを5点採取し、グロスを評価してオリゴマー析出の状況を評価した。
(8)MD熱収縮率
フィルムの長手方向及び幅方向に対し、それぞれ長さ150mm及び幅20mmの
短冊状試料を切り出し,各試料の長さ方向に100mm間隔で2つの印を付け、
無荷重下で2つの印の間隔Aを測定した。続いて、短冊状の各試料の片側を
把持してオーブン中で無荷重下で120℃,30分間放置した後、試料を取り出し、
30分間室温で放置後,各試料の間隔Bを読み取った。読み取った間隔A及びBより、
各試料の120℃での熱収縮率 を下記式により算出した。
MD熱収縮率 (%)=((A−B)/A)×100
(9)TD熱収縮率
フィルムの長手方向及び幅方向に対し、それぞれ長さ20mm及び幅150mmの
短冊状試料を切り出した以外はMD収縮率と同様の方法で評価した。計算式は(MD熱収縮率同様に)以下のとおりである。
TD熱収縮率 (%)=((A−B)/A)×100
(製造例1)
L-ラクチド900部、分子量1000のポリテトラメチレングリコール(保土谷化学製PTG1000SN)100部、開環重合触媒としてオクチル酸錫1質量部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱溶融させることにより開環重合させ、残留ラクチドを減圧下留去させることにより、樹脂(樹脂1)を得た。GPCによる重量平均分子量は12000であった。
(製造例2)
分子量2000のポリエステルポリオール(DIC製、OD-X-2044)80部、分子量1000のポリテトラメチレングリコール(保土谷化学製PTG1000SN)10部を4つ口フラスコに仕込みメチルエチルケトン300部に還流下で溶解させた。ここにジフェニルメタンジイソシアネート(住化バイエルウレタン製、デスモジュール44)10部、重合触媒としてラウリン酸ジブチル錫1質量部を窒素雰囲気下、還流下で3時間加熱溶融させることにより重合させた。途中で溶液粘度の上昇を確認し、適宜MDIを添加して分子量を調整した。重合終了後、エタノールで再沈し、減圧下で乾燥させることにより、樹脂(樹脂2)を得た。GPCによる重量平均分子量は約8000であった。
(製造例3)
L-ラクチド900部、分子量1000のポリエチレングリコール(日油製PEG-20)100部、開環重合触媒としてオクチル酸錫1質量部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱溶融させることにより開環重合させ、残留ラクチドを減圧下留去させることにより、樹脂(樹脂3)を得た。GPCによる重量平均分子量は15000であった。
参考例1
滑剤(富士シリシア化学製、サイリシア310)とポリ乳酸樹脂(三井化学製レイシア(登録商標)H400)を220℃の押出機で混合し、滑剤濃度200ppmとなるように調整後、乾燥・結晶化させたポリ乳酸樹脂のペレットとポリエーテルアミド樹脂(アルケマ製、PEBAX4033)を重量比95/5で混合して押出機に投入し、220℃で溶融して、20℃に調整した冷却ロールにシート状にTダイから押出し、冷却固化させることで未延伸シートを作製した。キャスト速度は4m/minで行い、30分キャスト後の冷却ロール表面の汚れを確認し、また、得られたシートのグロスを評価してオリゴマー析出の状況を評価した。未延伸シートの厚みは200μmであった。このシートを60℃の温度で予熱処理を行い、ついで、延伸温度80℃で変形速度5000%/分で4倍にMD延伸を行い、引続きこのシートを連続的にテンターに導き、余熱ゾーン70℃、延伸ゾーン85℃で5倍にTD延伸し、150℃で熱固定および5%の横弛緩処理を施した後に冷却し、両縁部を裁断除去して、厚さ15μmの二軸延伸ポリ乳酸系フィルムを得た。このときのフィルム物性を表1に示す。
参考例2〜6、比較例1〜3)
参考例1と同様の方法で表1に示す処方で二軸延伸ポリ乳酸系フィルムを得た。
(実施例
滑剤(富士シリシア化学製、サイリシア310)とポリ乳酸樹脂(三井化学製レイシア(登録商標)H400)を220℃の押出機で混合し、滑剤濃度200ppmとなるように調整後、乾燥・結晶化させたポリ乳酸樹脂のペレットとポリエーテルアミド樹脂(アルケマ製、PEBAX(登録商標)4033)のペレットを重量比95/5で混合したポリ乳酸系樹脂組成物と、生分解性ポリエステル樹脂(DuPont製、APEXA(登録商標)4024)を二台の押出機に投入し、それぞれ220℃、240℃で溶融して、ポリ乳酸樹脂系組成物を表層、生分解性ポリエステル樹脂を内部層に2種3層構造のシートとして、20℃に調整した冷却ロールにシート状にTダイから押出し、冷却固化させることで未延伸シートを作製した。多層シートの厚み構成は吐出量より、表層/内部層/表層=10/80/10であった。キャスト速度は4m/minで行い、30分キャスト後の冷却ロール表面の汚れを確認し、また、得られたシートのグロスを評価してオリゴマー析出の状況を評価した。未延伸シートの厚みは200μmであった。このシートを60℃の温度で予熱処理を行い、ついで、延伸温度80℃で変形速度5000%/分で4倍にMD延伸を行い、引続きこのシートを連続的にテンターに導き、余熱ゾーン70℃、延伸ゾーン85℃で5倍にTD延伸し、210℃で熱固定および5%の横弛緩処理を施した後に冷却し、両縁部を裁断除去して、厚さ15μmの二軸延伸積層フィルムを得た。このときのフィルム物性を表2に示す。
(実施例、比較例4〜5)
実施例と同様の方法で表2に示す処方で二軸延伸積層フィルムを得た。
H400:三井化学製 ポリ乳酸樹脂 レイシア(登録商標)H400
H100:三井化学製 ポリ乳酸樹脂 レイシア(登録商標)H100
ECOFLEX(登録商標): BASF製生分解性ポリエステル
RV630: 東洋紡製 バイロン(登録商標)
PCL: ダイセル化学製 プラクセル(登録商標)H1P
本発明によれば、高い生産性、操業性で生産することができる、包装用材料として有用な、各種加工適性に優れ、透明性などに優れたポリ乳酸系樹脂を用いた二軸延伸フィルムの提供を可能とした。

Claims (3)

  1. 表層にL体/D体比=100/0〜85/15の結晶性ポリ乳酸系樹脂組成物であり、粒子径0.1〜10μmの滑剤を全重量に対して100〜10000ppmと、ポリテトラメチレングリコール成分を含有する熱可塑性樹脂を全重量に対して2〜30重量%含有する結晶性ポリ乳酸系樹脂組成物からなる樹脂層を有し、内部層に脂肪族、脂環族ジカルボン酸成分、又はヒドロキシカルボン酸を必須の成分とするポリエステル樹脂を50〜100重量%含有する樹脂組成物からなる層を有し、前記内部層の厚みが総厚みに対して10〜80%を占め、ヘイズが1〜10%であることを特徴とする二軸延伸フィルム。
  2. ポリテトラメチレングリコール成分を含有する熱可塑性含有樹脂が、ポリアミド系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の二軸延伸フィルム
  3. ポリテトラメチレングリコール成分を含有する熱可塑性樹脂が、ポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の二軸延伸フィルム。
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