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JP5375446B2 - 活物質、これを含む電極、当該電極を備えるリチウム二次電池、及び活物質の製造方法 - Google Patents

活物質、これを含む電極、当該電極を備えるリチウム二次電池、及び活物質の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、活物質、これを含む電極、当該電極を備えるリチウム二次電池、及び活物質の製造方法に関する。
構造式LiVOPOで表される結晶においては、Liが可逆的に挿入脱離することが知られている。特許文献1には、固相法によりβ型結晶構造(斜方晶)のLiVOPO及びα型結晶構造(三斜晶)のLiVOPOを作製し、これらを非水電解質二次電池の電極活物質として用いることが開示されている。そして、非水電解質二次電池の放電容量は、α型結晶構造(三斜晶)のLiVOPOに比べ、β型結晶構造のLiVOPOの方が大きいことが記載されている。
非特許文献1には、VOPOとLiCOとを炭素の存在下で加熱し、炭素によりLiCOを還元して、β型結晶構造のLiVOPOを作製する方法(カーボサーマルリダクション法(CTR法))が開示されている。
特開2004−303527号公報
J.Baker et al.,J.Electrochem.Soc.,151,A796(2004)
しかしながら、特許文献1及び非特許文献1に記載された方法により得られたβ型結晶構造のLiVOPOを含む活物質は、高いレート特性で、かつ、大きな放電容量を得られるものではなかった。
そこで、本発明は、高いレート特性で、かつ、大きな放電容量を得られる活物質を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、リチウム源と、バナジウム源と、リン酸源と、水と、アスコルビン酸とを含み、バナジウム原子のモル数に対するリチウム原子のモル数の割合、及び、バナジウム原子のモル数に対するリン原子のモル数の割合が0.95〜1.2、バナジウム原子のモル数に対するアスコルビン酸のモル数の割合が0.05〜0.6である混合物を加圧下で加熱し、加圧下で加熱した材料を焼成することにより、平均一次粒子径が極めて小さくかつ二次粒子の形状が球に近似する凝集構造を有し、さらに、β型結晶構造の比率が高いLiVOPOを得られることを見出し、上記本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の活物質の製造方法は、リチウム源と、バナジウム源と、リン酸源と、水と、アスコルビン酸とを含み、バナジウム原子のモル数に対するリチウム原子のモル数の割合、及び、バナジウム原子のモル数に対するリン原子のモル数の割合が0.95〜1.2、バナジウム原子に対するアスコルビン酸のモル数の割合が0.05〜0.6である混合物を、加圧下で加熱する水熱合成工程と、水熱合成工程で得られた材料を加圧下で加熱し、β型結晶構造のLiVOPOを得る焼成工程と、を備える。
本発明に係る製造方法によって得られた活物質は、平均一次粒子径が小さくかつ二次粒子の形状が極めて球に近い凝集構造を備え、さらに、β型結晶構造のLiVOPOの比率が高い。このような活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、高いレート特性で、かつ、大きな放電容量を得ることができる。この理由は明らかではないが、本発明に係る製造方法よって得られた活物質は、放電容量の大きなβ型結晶構造のLiVOPOを主成分とすることにより放電容量が大きくなり、また、平均一次粒子径が非常に小さくかつ二次粒子の形状が極めて球に近い凝集構造を有することにより、Liイオンが等方的に拡散し易くなり、放電電流密度が高い場合であっても、大きな放電容量を得ることができるためと推測される。
本発明に係る活物質は、平均一次粒子径が100〜350nmであり、かつ、二次粒子の長軸の長さに対する短軸の長さの比が0.80〜1である凝集構造を備え、β型結晶構造のLiVOPOを主成分として含む。
β型結晶構造のLiVOPOを主成分として含み、かつ活物質の平均一次粒子径が上記範囲内の値であり、かつ、二次粒子の長軸の長さに対する短軸の長さの比が上記範囲内の値、すなわち、球に近似する形状であることにより、高いレート特性で、かつ、大きな放電容量を得ることができる。このような活物質は上述の方法により容易に製造される。
ここで、本発明に係る活物質は、平均二次粒子径が1500nm〜8000nmであることが好ましい。活物質の平均二次粒子径が上記範囲内の値であると、高いレート特性で、かつ、大きな放電容量を得やすい。
また、本発明に係る電極は、集電体と、上記活物質を含み集電体上に設けられた活物質層と、を備えることが好ましい。これにより、高いレート特性で、かつ、大きな放電容量の電極を得ることができる。
また、本発明に係るリチウム二次電池は、上記電極を備えることが好ましい。これにより、高いレート特性で、かつ、大きな放電容量のリチウムイオン二次電池を得やすい。
本発明によれば、高いレート特性で、かつ、大きな放電容量を得られる活物質を提供することができる。
図1は、本実施形態に係る活物質の模式断面図である。 図2は、本実施形態に係る活物質を含む活物質層を備えるリチウムイオン二次電池の模式断面図である。 図3は、観察時の設定倍率を30000倍とした時の実施例1で得られた活物質の電子顕微鏡写真である。 図4は、観察時の設定倍率を5000倍とした時の実施例1で得られた活物質の電子顕微鏡写真である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。
<活物質の製造方法>
本発明に係る活物質の製造方法の好適な実施形態について説明する。
[水熱合成工程]
本実施形態に係る水熱合成工程は、リチウム源と、バナジウム源と、リン酸源と、水と、アスコルビン酸とを含み、バナジウム原子のモル数に対するリチウム原子のモル数の割合、及び、バナジウム原子のモル数に対するリン原子のモル数の割合が0.95〜1.2、バナジウム原子のモル数に対するアスコルビン酸のモル数の割合が0.05〜0.6である混合物を加圧下で加熱する工程である。
(混合物)
リチウム源としては、例えば、LiNO、LiCO、LiOH、LiCl、LiSO及びCHCOOLi等のリチウム化合物が挙げられる。これらの中でも、LiNO、LiCOが好ましい。
バナジウム源としては、V及びNHVO等のバナジウム化合物が挙げられる。
リン酸源としては、例えば、HPO、NHPO、(NHHPO及びLiPO等のPO含有化合物が挙げられる。これらの中でも、HPO、(NHHPOが好ましい。
リチウム源、リン酸源、及びバナジウム源は、バナジウム原子のモル数に対するリチウム原子のモル数の割合が0.95〜1.2、バナジウム原子のモル数に対するリン原子のモル数の割合が0.95〜1.2となるように配合する。リチウム原子及びリン原子の少なくとも一方の配合比率が0.95より少ないと、得られる活物質の放電容量は減少する傾向があり、レート特性は低下する傾向がある。リチウム原子及びリン原子の少なくとも一方の配合比率が1.2よりも多いと、得られる活物質の放電容量は減少する傾向がある。
アスコルビン酸は、バナジウム原子のモル数に対するアスコルビン酸のモル数の割合が0.05〜0.6となるように配合する。アスコルビン酸を配合させることにより、β型結晶構造を有するLiVOPOを主に含む活物質を得ることができ、かつ、平均一次粒子径及び平均二次粒子径を小さくできる傾向がある。アスコルビン酸をバナジウム原子のモル数に対して0.05〜0.6の割合で配合させると、活物質の形状は極めて球に近い形状となり、高いレート特性で、かつ、大きな放電容量を得ることができる。このような知見は従来得られておらず、このような効果は、従来技術と比較して顕著な効果である。
ところで、得られた活物質を用いて電極の活物質含有層を作製する場合、導電性を高めるべく、通常この活物質の表面に炭素材料等の導電材を接触させることが多い。この方法として、活物質の製造後に活物質と導電材とを混合して活物質含有層を形成してもよいが、例えば、水熱合成の原料となる混合物中に、炭素材料を導電材として添加して活物質に炭素を付着させることもできる。
混合物中に炭素材料である導電材を添加する場合の導電材としては、例えば、活性炭、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン等が挙げられる。これらの中でも水熱合成時に炭素粒子を混合物に容易に分散させることができる、活性炭を用いることが好ましい。ただし、導電材は必ずしも水熱合成時に混合物に全量混合されている必要はなく、少なくとも一部が水熱合成時に混合物に混合されることが好ましい。これにより、活物質含有層を形成する際のバインダーを低減して容量密度を増加させることができる場合がある。
水熱合成工程における混合物中の炭素粒子等の上記導電材の含有量は、炭素粒子を構成する炭素原子のモル数C2と、例えばバナジウム化合物に含まれるバナジウム原子のモル数Mとの比C2/Mが、0.04≦C2/M≦4を満たすように調製することが好ましい。導電材の含有量(モル数C2)が少な過ぎる場合、活物質と導電材により構成される電極活物質の電子伝導性及び容量密度が低下する傾向がある。導電材の含有量が多過ぎる場合、電極活物質に占める活物質の重量が相対的に減少し、電極活物質の容量密度が減少する傾向がある。導電材の含有量を上記の範囲内とすることにより、これらの傾向を抑制できる。
混合物中における水の量は水熱合成が可能であれば特に限定されないが、混合物中の水以外の物質の割合は35質量%以下となることが好ましい。
混合物を調整する際の、原料の投入順序は特に制限されない。例えば、上記混合物の原料をまとめて混合してもよく、また、最初に、水とPO含有化合物の混合物に対してバナジウム化合物を添加し、その後、アスコルビン酸を添加し、さらにその後、リチウム化合物を加えてもよい。混合物は十分に混合させ、添加成分を十分に分散させておくことが好ましい。
水熱合成工程では、まず、内部を加熱、加圧する機能を有する反応容器(例えば、オートクレーブ等)内に、上述した混合物(リチウム化合物、バナジウム化合物、PO含有化合物、水、アスコルビン酸等)を投入する。なお、反応容器内で、混合物を調整してもよい。
次に、反応容器を密閉して、混合物を加圧しながら加熱することにより、混合物の水熱反応を進行させる。これにより、β型結晶構造のLiVOPOの前駆体を含む物質が水熱合成される。
水熱合成により得られたβ型結晶構造のLiVOPOの前駆体を含む物質は、通常、水熱合成後の液中に固体として沈殿する。この物質に含まれるβ型結晶構造のLiVOPOの前駆体は、水和物の状態であると考えられる。そして、水熱合成後の液を、例えば、ろ過して固体を捕集し、捕集された固体を水やアセトン等で洗浄し、その後乾燥させることによりこの前駆体を高純度に得ることができる。
水熱合成工程において、混合物に加える圧力は、0.1〜30MPaとすることが好ましい。混合物に加える圧力が低過ぎると、最終的に得られるβ型結晶構造のLiVOPOの結晶性が低下し、活物質の容量密度が減少する傾向がある。混合物に加える圧力が高過ぎると、反応容器に高い耐圧性が求められ、活物質製造コストが増大する傾向がある。混合物に加える圧力を上記の範囲内とすることによって、これらの傾向を抑制できる。
水熱合成工程における混合物の温度は、200〜300℃とすることが好ましく、得られた活物質の放電容量とレート特性を向上させる観点から、210〜250℃とすることがより好ましい。混合物の温度が低過ぎると、最終的に得られるβ型結晶構造のLiVOPOの結晶性が低下し、活物質の容量密度が減少する傾向がある。混合物の温度が高過ぎると、反応容器に高い耐熱性が求められ、活物質の製造コストが増大する傾向がある。混合物の温度を上記の範囲内とすることによって、これらの傾向も抑制できる。
[焼成工程]
本実施形態に係る焼成工程は、水熱合成により得られた材料、すなわち、β型結晶構造のLiVOPOの前駆体を加熱し、β型結晶構造のLiVOPOを得る工程である。この工程では、前駆体中に残留した不純物等が除去される現象が起こると共に、β型結晶構造のLiVOPOの前駆体が脱水されて結晶化が起こるものと考えられる。
ここで、焼成工程では、上述の前駆体を400℃〜600℃に加熱することが好ましい。加熱温度が低すぎると、最終的に得られるβ型結晶構造のLiVOPOの結晶性が低下し、活物質の容量密度が減少する傾向がある。一方、加熱温度が高すぎると、活物質の粒成長が進み粒径(一次粒子径及び/又は二次粒子径)が増大する結果、活物質におけるリチウムの拡散が遅くなり、活物質の容量密度が減少する傾向がある。加熱温度を上記の範囲内とすることによって、これらの傾向を抑制できる。加熱時間は特に限定されないが、3〜6時間とすることが好ましい。
焼成工程の雰囲気は特に限定されないが、アスコルビン酸の除去を行い易くするためには、大気雰囲気であることが好ましい。一方、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性雰囲気中で行うこともできる。
上述した水熱合成工程及び焼成工程を備える活物質の製造方法によれば、バナジウム原子のモル数に対するリチウム原子のモル数の割合、及び、バナジウム原子のモル数に対するリン原子のモル数の割合が0.95〜1.2であって、バナジウム原子に対するアスコルビン酸のモル数の割合が0.05〜0.6である混合物を加圧下で加熱し、これにより得られた前駆体を焼成することにより、平均一次粒子径が極めて小さくかつ二次粒子の形状が球に近似した凝集構造を有し、さらに、β型結晶構造の比率が高いLiVOPOを得ることができる。そして、このような活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、高いレート特性で、かつ、大きな放電容量を得ることができる。
<活物質>
次に、本実施形態に係る活物質について説明する。図1は、本実施形態に係る活物質2の模式断面図である。本実施形態の活物質2は、一次粒子1が凝集して二次粒子を形成したものである。
活物質2は、平均一次粒子径が100〜350nmである。ここで、本発明において規定される「活物質の平均一次粒子径」とは、活物質2の一次粒子1に対して測定した個数基準の粒度分布における、累積率が50%であるD50の値である。活物質2の一次粒子1の個数基準の粒度分布は、例えば、高分解能走査型電子顕微鏡で観察したイメージに基づいた活物質2の一次粒子1の投影面積から投影面積円相当径を測定し、その累積率から算出することができる。なお、投影面積円相当径とは、粒子(活物質2の一次粒子1)の投影面積と同じ投影面積を持つ球を想定し、その球の直径(円相当径)を粒子径(活物質2の一次粒子の粒子径)として表したものである。なお、後述する「活物質の平均二次粒子径」とは、上述の平均一次粒子径と同様に、凝集粒子である活物質2(本発明の活物質の二次粒子に相当)に対して測定した個数基準の粒度分布における、累積率が50%であるD50の値である。
活物質2の長軸の長さに対する短軸の長さの比は、0.80〜1である。ここで、本発明において規定される二次粒子の「活物質の長軸の長さ」は、高分解能走査型電子顕微鏡で観察したイメージにおいて、最も長い長さを意味し、「活物質の短軸の長さ」は、長軸の垂直二等分線の線分の長さを意味する。長軸の長さに対する短軸の長さの比が1の時、活物質の形状は球になる。この比が0.80〜1であるということは、得られる活物質の二次粒子の形状は、球または極めて球に近い形状である。中でもこの比が、0.81〜0.93であるものを製造し易い。
活物質2は、β型結晶構造のLiVOPOを主成分として含む。ここで、「β型結晶構造のLiVOPOを主成分とする」とは、活物質2において、β型結晶構造のLiVOPOをβ型結晶構造のLiVOPOとα型結晶構造のLiVOPOとの総和に対して80質量%以上含むことを意味する。ここで、粒子中におけるβ型結晶構造のLiVOPOやα型結晶構造のLiVOPO等の量は、例えば、X線回折法により測定することができる。通常、β型結晶構造のLiVOPOは2θ=27.0度にピークが現れ、α型結晶構造のLiVOPOは2θ=27.2度にピークが現れる。なお、活物質は、β型結晶構造のLiVOPO及びα型結晶構造のLiVOPO以外にも、未反応の原料成分等を微量含んでもよい。
このような活物質は、上記製造方法よって容易に製造されるものである。そしてこの活物質は、高いレート特性で、かつ、大きな放電容量を得ることができる。この理由は明らかではないが、放電容量の大きなβ型結晶構造のLiVOPOを主成分とすることにより放電容量が大きくなり、また、平均一次粒子径が非常に小さく二次粒子の形状が極めて球に近い凝集構造を有することにより、Liイオンが等方的に拡散し易くなり、放電電流密度が高い場合であっても、大きな放電容量を得ることができるためと推測される。なお、上述のように、活物質2は、凝集構造、すなわち、多孔体構造であるため、電解液の含浸能が高い。
活物質2の平均粒子径(平均二次粒子径)は、1500nm〜8000nmであることが好ましい。このような活物質は、高いレート特性で、かつ、大きな放電容量を得やすい。
<リチウムイオン二次電池>
続いて、上述の活物質を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池について図2を参照して簡単に説明する。
リチウムイオン二次電池100は、主として、積層体30、積層体30を密閉した状態で収容するケース50、及び積層体30に接続された一対のリード60,62を備えている。
積層体30は、一対の正極10、負極20がセパレータ18を挟んで対向配置されたものである。正極10は、正極集電体12上に正極活物質層14が設けられた物である。負極20は、負極集電体22上に負極活物質層24が設けられた物である。正極活物質層14及び負極活物質層24がセパレータ18の両側にそれぞれ接触している。正極集電体12及び負極集電体22の端部には、それぞれリード60,62が接続されており、リード60,62の端部はケース50の外部にまで延びている。
(正極)
正極10は、図2に示すように、板状(膜状)の正極集電体12と、正極集電体12上に形成された正極活物質層14とを有している。
正極集電体12は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミ、銅、ニッケル箔の金属薄板を用いることができる。正極活物質層14は、主として、上述の活物質2、及び、結合剤を有している。なお、正極活物質層14は、導電助剤を含んでも良い。
結合剤は、活物質同士を結合すると共に、活物質と正極集電体12とを結合している。
結合剤の材質としては、上述の結合が可能であればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂が挙げられる。
また、上記の他に、結合剤として、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴムを用いてもよい。
更に、上記の他に、結合剤として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等を用いてもよい。また、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子を用いてもよい。更に、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体等を用いてもよい。
また、結合剤として電子伝導性の導電性高分子やイオン伝導性の導電性高分子を用いてもよい。電子伝導性の導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン等が挙げられる。この場合は、結合剤が導電助剤粒子の機能も発揮するので導電助剤を添加しなくてもよい。
イオン伝導性の導電性高分子としては、例えば、リチウムイオン等のイオンの伝導性を有するものを使用することができ、例えば、高分子化合物(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリエーテル化合物の架橋体高分子、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリル等)のモノマーと、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiCl、LiBr、Li(CF3SO22N、LiN(C25SO2)2リチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩と、を複合化させたもの等が挙げられる。複合化に使用する重合開始剤としては、例えば、上記のモノマーに適合する光重合開始剤または熱重合開始剤が挙げられる。
正極活物質層14に含まれる結合剤の含有率は、活物質層の質量を基準として0.5〜6質量%であることが好ましい。結合剤の含有率が0.5質量%未満となると、結合剤の量が少なすぎて強固な活物質層を形成できなくなる傾向が大きくなる。また、結合剤の含有率が6質量%を超えると、電気容量に寄与しない結合剤の量が多くなり、十分な体積エネルギー密度を得ることが困難となる傾向が大きくなる。また、この場合、特に結合剤の電子伝導性が低いと活物質層の電気抵抗が上昇し、十分な電気容量が得られなくなる傾向が大きくなる。
導電助剤としては、例えば、カーボンブラック類、炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。
(正極の製造方法)
上述の活物質及び結合材と、必要に応じた量の導電助剤とを、溶媒に添加してスラリーを調整する。溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。そして、活物質、結合材等を含むスラリーを、正極集電体12の表面に塗布し、乾燥させればよい。
(負極)
負極20は、板状の負極集電体22と、負極集電体22上に形成された負極活物質層2
4を備える。負極集電体22、結合材、導電助剤は、それぞれ、正極と同様のものを試用できる。また、負極活物質は特に限定されず、公知の電池用の負極活物質を使用できる。負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出(インターカレート・デインターカレート、或いはドーピング・脱ドーピング)可能な黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、Al、Si、Sn等のリチウムと化合することのできる金属、SiO2、SnO2等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(LiTi512)等を含む粒子が挙げられる。
(電解液)
電解質溶液は、正極活物質層14、負極活物質層24、及び、セパレータ18の内部に含有させるものである。電解質溶液としては、特に限定されず、例えば、本実施形態では、リチウム塩を含む電解質溶液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いことにより、充電時の耐用電圧が低く制限されるので、有機溶媒を使用する電解質溶液(非水電解質溶液)であることが好ましい。電解質溶液としては、リチウム塩を非水溶媒(有機溶媒)に溶解したものが好適に使用される。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiCF3、LiCF2SO3、LiC(CF3SO23、LiN(CF3SO22、LiN(CF3CF2SO22、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiN(CF3CF2CO)2、LiBOB等の塩が使用できる。なお、これらの塩は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、及び、ジエチルカーボネート等が好ましく挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。
なお、本実施形態において、電解質溶液は液状以外にゲル化剤を添加することにより得られるゲル状電解質であってもよい。また、電解質溶液に代えて、固体電解質(固体高分子電解質又はイオン伝導性無機材料からなる電解質)が含有されていてもよい。
セパレータ18は、電気絶縁性の多孔体であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリオレフィンからなるフィルムの単層体、積層体や上記樹脂の混合物の延伸膜、或いは、セルロース、ポリエステル及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布が挙げられる。
ケース50は、その内部に積層体30及び電解液を密封するものである。ケース50は、電解液の外部への漏出や、外部からの電気化学デバイス100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。例えば、ケース50として、図1に示すように、金属箔52を高分子膜54で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。金属箔52としては例えばアルミ箔を、高分子膜54としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜54の材料としては融点の高い高分子例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜54の材料としてはポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましい。
リード60,62は、アルミ等の導電材料から形成されている。
そして、公知の方法により、リード60、62を正極集電体12、負極集電体22にそれぞれ溶接し、正極10の正極活物質層14と負極20の負極活物質層24との間にセパレータ18を挟んだ状態で、電解液と共にケース50内に挿入し、ケース50の入り口をシールすればよい。
以上、活物質粒子の製造方法、それにより得られた活物質、当該活物質を含む電極、及び当該電極を備えるリチウムイオン二次電池の好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、活物質は、リチウムイオン二次電池以外の電気化学素子の電極材料としても用いることができる。このような、電気化学素子としては、金属リチウム二次電池(カソードに本発明の複合粒子を含む電極を用い、アノードに金属リチウムを用いたもの)等のリチウムイオン二次電池以外の二次電池や、リチウムキャパシタ等の電気化学キャパシタ等が挙げられる。これらの電気化学素子は、自走式のマイクロマシン、ICカードなどの電源や、プリント基板上又はプリント基板内に配置される分散電源の用途に使用することが可能である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<水熱合成工程>
500mlのマイヤーフラスコに、4.63g(0.04mol)のHPO(ナカライテスク社製、純度85%)、及び、180gの蒸留水(ナカライテスク社製、HPLC用)を入れ、マグネチックスターラーで攪拌した。続いて、3.67g(0.02mol)のV(ナカライテスク社製、純度99%)を加え、約2.5時間攪拌を続けた。
次に、1.77g(0.01mol)のアスコルビン酸を、上記混合物中に加えた。アスコルビン酸を加えた後、約60分間攪拌を継続した。
続いて、1.70g(0.04mol)のLiOH・HO(ナカライテスク社製、純度99%)を約10分かけて加えた。得られたペースト状の物質に、20gの蒸留水を追加した後、フラスコ内の物質210.91gを、0.5Lオートクレーブのガラス製の円筒容器内に移した。容器内の物質のpHを測定したところ、pHは5であった。容器を密閉し、12時間、250℃で保持し、水熱合成を行った。
ヒータのスイッチをオフにした後、約7時間かけて放冷を行い、茶褐色沈殿を含む懸濁液を得た。この物質のpHを測定したところ、pHは6であった。上澄みを除去した後、約200mlの蒸留水を加え、攪拌しながら容器内の沈殿物を洗浄した。その後、吸引濾過を行った。水洗を行った後、約200mlのアセトンを加え、水洗と同様にして沈殿物の洗浄を行った。濾過後の物質をシャーレに移し、大気中で乾燥させて、6.51gの褐色固体を得た。収率は、LiVOPO換算で96.7%であった。
<焼成工程>
水熱合成工程で得られた褐色個体1.00gをアルミナ坩堝に入れ、大気雰囲気中、室温から450℃まで60分かけて昇温し、450℃で4時間熱処理することにより、粉体を得た。
<β比の測定>
実施例1の活物質におけるβ型結晶構造のLiVOPOとα型結晶構造のLiVOPOとの総和に対するβ型結晶構造の割合(β比)を、粉末X線回折(XRD)の結果より求めた。実施例1の活物質におけるβ比は、97%であった。
<平均一次粒子径及び平均二次粒子径の測定>
実施例1の活物質の一次粒子及び二次粒子の粒度分布を、高分解能走査型電子顕微鏡で観察したイメージに基づいた活物質の投影面積(それぞれ、100個)から求められる投影面積円相当径の累積率によりそれぞれ算出した。求めた活物質の個数基準の粒度分布に基づき、活物質の平均一次粒子径(D50)及び平均二次粒子径(D50)を算出した。活物質の平均一次粒子径(D50)は160nmであり、平均二次粒子径(D50)は2200nmであった。なお、実施例1で得られた活物質の二次粒子に対して測定した個数基準の粒度分布における累積率が10%であるD10の値は1150nmであり、累積率が90%であるD90の値は、2730nmであった。
<二次粒子の短軸長/長軸長の測定>
高分解能走査型電子顕微鏡で観察したイメージから、100個の活物質の二次粒子の短軸長及び長軸長を測定し、長軸長に対する短軸長の比の平均値を算出した。実施例1の活物質の短軸長/長軸長の値は、0.93であった。
<放電容量の測定>
実施例1の活物質と、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)とアセチレンブラックを混合したものを、溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。なお、スラリーにおいて活物質とアセチレンブラックとPVDFとの重量比が84:8:8となるように、スラリーを調製した。このスラリーを集電体であるアルミニウム箔上に塗布し、乾燥させた後、圧延を行い、実施例1の活物質を含む活物質層が形成された電極(正極)を得た。
次に、得られた電極と、その対極であるLi箔とを、それらの間にポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを挟んで積層し、積層体(素体)を得た。この積層体を、アルミラミネートパックに入れ、このアルミラミネートパックに、電解液として1MのLiPF溶液を注入した後、真空シールし、実施例1の評価用セルを作製した。
実施例1の評価用セルを用いて、放電レートを0.01C(25℃で定電流放電を行ったときに100時間で放電終了となる電流値)とした場合の放電容量(単位:mAh/g)を測定した。0.01Cでの放電容量は、153mAh/gであった。また、放電レートを0.1C(25℃で定電流放電を行ったときに10時間で放電終了となる電流値)とした場合の放電容量(単位:mAh/g)を測定した。0.1Cでの放電容量は、148mAh/gであった。
<レート特性の評価>
0.01Cでの放電容量に対する、0.1Cでの放電容量の百分率を算出し、レート特性として評価した。実施例1の評価用セルのレート特性は、96.7%であった。
(実施例2〜15、比較例1〜11)
水熱合成工程において、混合物中のバナジウム原子のモル数に対するリチウム原子のモル数の割合、バナジウム原子のモル数に対するリン原子のモル数の割合、混合物中に添加するアスコルビン酸の量、還元剤の種類、水熱合成温度、並びに、焼成工程における焼成温度を下記表1、2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2〜15、比較例1〜11の活物質を得た。得られた活物質におけるβ型結晶構造のLiVOPOとα型結晶構造のLiVOPOとの総和に対するβ型結晶構造の割合(β比)、活物質の平均一次粒子径(D50)、平均二次粒子径(D50)、二次粒子の長軸長に対する短軸長の比、並びに、これらの活物質を用いた評価用セルの放電容量及びレート特性を表3、4に示す。なお、実施例2〜15の二次粒子のD10及びD90のD50に対する比率は、それぞれ実施例1とほぼ同じ程度の値であった。
表3に示すように実施例1〜15の条件において得られた活物質は、平均一次粒子径が120nm〜340nmであった。また、二次粒子の長軸長に対する短軸長の比が0.81〜0.99であり、二次粒子は極めて球に近い凝集構造であった。さらに、この活物質は、β型結晶構造のLiVOPOを主成分として含んでいた。実施例1〜15の活物質を用いたセルは、高いレート特性で、かつ、大きな放電容量であった。
1…一次粒子、2…活物質(二次粒子)、10,20…電極、12…正極集電体、14…正極活物質層、18…セパレータ、22…負極集電体、24…負極活物質層、30…積層体、50…ケース、52…金属箔、54…高分子膜、60,62…リード、100…リチウムイオン二次電池。

Claims (5)

  1. リチウム源と、バナジウム源と、リン酸源と、水と、アスコルビン酸とを含み、バナジウム原子のモル数に対するリチウム原子のモル数の割合、及び、バナジウム原子のモル数に対するリン原子のモル数の割合が0.95〜1.2、バナジウム原子のモル数に対するアスコルビン酸のモル数の割合が0.05〜0.6である混合物を加圧下で加熱する水熱合成工程と、
    前記水熱合成工程で得られた材料を加熱し、β型結晶構造のLiVOPOを得る焼成工程と、
    を備える活物質の製造方法。
  2. 平均一次粒子径が100〜350nmであり、かつ、二次粒子の長軸の長さに対する短軸の長さの比が0.80〜1である凝集構造を備え、β型結晶構造のLiVOPOを主成分として含む活物質。
  3. 平均二次粒子径が1500nm〜8000nmである、請求項2記載の活物質。
  4. 集電体と、請求項3の活物質を含み前記集電体上に設けられた活物質層と、を備える電極。
  5. 請求項4の電極を備えるリチウム二次電池。
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