しかし、従来の電池容器90では、図14に示すように、電池ケース91と蓋部材92との溶接作業時に生じる溶接スパッタS、すなわち溶接時に飛散するスラグや金属粒の異物が、電池ケース91と蓋部材92との間に生じる微小な隙間から電池ケース91の内部に混入する場合がある。この場合、混入した溶接スパッタSが電解液に溶け込むことにより、或いは溶接スパッタSが有する熱により、電池の性能が悪影響を受けるという問題があった。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、容器内部を密封するための溶接作業時に生じる溶接スパッタが容器内部に混入しても、電池性能が低下しない電池を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係る電池は、正極板と負極板とセパレータを有する電極体と、該電極体を収納し上部が開口された内部ケースと、該内部ケースを下方から覆う外部ケースと、前記内部ケースを上方から覆い、前記内部ケースの開口位置より低い位置で、その下端部が前記外部ケースに対して溶接にて固着された外部蓋部材と、を備えることを特徴とする。
このような構成によれば、外部蓋部材と外部ケースとの溶接作業が、内部ケースの開口位置より低い位置にて行われる。従って、溶接作業時に生じる溶接スパッタ、すなわち溶接時に飛散するスラグや金属粒の異物は、外部蓋部材と外部ケースとの接合部から内部に混入しても、内部ケースに遮られて溶接作業時に電極体が存在する内部ケースの内部まで侵入することはない。
また、本発明に係る電池は、前記内部ケースの開口縁部の全体が前記外部蓋部材の内側面に密着していることを特徴とする。
このような構成によれば、内部ケースは、その開口が外部蓋部材によって塞がれ、その内部が密封される。従って、外部ケースと内部ケースとの間の隙間、及び外部ケースと内部ケースとの間の隙間に侵入した溶接スパッタは、溶接作業の終了後に電池がどのような姿勢にされても、内部ケースの内部には混入しない。これにより、溶接スパッタの影響によって電池性能が低下しない。また、内部ケースの開口縁部が外部蓋部材の内側面に密着しているので、上下方向への振動が作用しても、外部蓋部材及び外部ケースの内部での内部ケースの上下動が抑制され、電池性能を良好に維持することができる。
また、本発明に係る電池は、前記外部ケースと前記内部ケースとの間の隙間に、熱伝導性を有する液体が充填されていることを特徴とする。
このような構成によれば、電池使用時に電極体で発生する熱は、内部ケースからその外側に充填された液体を介して外部蓋部材や外部ケースに伝わり、この外部蓋部材や外部ケースから周囲に放熱される。このように、電池使用時に発生する熱が効率良く電池の外部に放熱されるので、電池性能を良好に維持することができる。
また、本発明に係る電池は、前記外部ケースと前記内部ケースとの間の隙間に、混入した異物を前記隙間の内部に封じ込める固化材が充填されていることを特徴とする。
このような構成によれば、外部ケースと内部ケースとの間の隙間に混入した溶接スパッタ(異物)は、固化材によって前記隙間の内部に封じ込められる。従って、電池がどのような姿勢にされても、溶接スパッタは固化材と一体となっており内部ケースの内部に混入することがない。これにより、溶接スパッタの影響によって電池性能が低下しない。
また、本発明に係る電池は、前記内部ケースの開口縁部に、上下方向への振動に対して弾性変形可能な振動吸収部が設けられていることを特徴とする。
このような構成によれば、上下方向への振動が作用しても、この振動は振動吸収部の弾性変形によって吸収される。これにより、内部ケースの上下動が一層抑制され、電池性能を良好に維持することができる。
また、本発明に係る電池は、前記内部ケースの底部に、前記外部ケースの底部に当接し、上下方向への振動に対して弾性変形可能な振動吸収部が設けられていることを特徴とする。
このような構成によれば、上下方向への振動が作用しても、この振動は内部ケースの開口縁部に設けられた振動吸収部によって吸収されるだけでなく、内部ケースの底部に設けられた振動吸収部によっても吸収される。これにより、内部ケースの上下動がより一層抑制され、電池性能を良好に維持することができる。
また、本発明に係る電池は、前記内部ケースの外側面に、側方へ突出して前記外部ケースまたは前記外部蓋部材の内側面に当接する水平方向位置決め片が設けられていることを特徴とする。
このような構成によれば、内部ケースは、その水平方向位置決め片が外部ケースまたは外部蓋部材の内側面に当接することによって、水平方向に位置決めされる。従って、水平方向への振動が作用しても、外部ケースと外部蓋部材の内部で内部ケースが横揺れしにくく、電池性能が振動の影響を受けにくい。
また、本発明に係る電池は、前記外部ケースまたは前記外部蓋部材の内側面に、側方へ突出して前記内部ケースの外側面に当接する水平方向位置決め片が設けられていることを特徴とする。
このような構成によれば、内部ケースは、その外側面に、外部ケースまたは外部蓋部材の内側面から突出する水平方向位置決め片が当接することによって、水平方向に位置決めされる。従って、水平方向への振動が作用しても、外部ケースと外部蓋部材の内部で内部ケースが横揺れしにくく、電池性能が振動の影響を受けにくい。
また、本発明に係る電池は、前記内部ケースの内側面に、前記電極体を移動不能に固定するための突起が設けられていることを特徴とする。
このような構成によれば、積層体と内部ケースとの相対変位が抑制されるので、電池性能が振動の影響を受けにくい。
また、本発明に係る電池は、前記外部ケース及び前記外部蓋部材の外側面に、樹脂がコーティングされていることを特徴とする。
このような構成によれば、樹脂コーティング層によって電池が電気的に絶縁される。
本発明に係る電池によれば、外部蓋部材と外部ケースとの溶接作業時に生じる溶接スパッタが、電極体が収納された内部ケースの内部に混入しないので、溶接スパッタの影響によって電池性能が低下することがない。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の第1実施形態に係る電池の構成について説明する。図1〜図3は、第1実施形態の二次電池1を示す図であり、図1は分解斜視図、図2は図1におけるA−A断面図、図3は図1におけるB−B断面図である。二次電池1は、図1及び図2に示すように、内部が密封された中空の電池容器10と、この電池容器10の内部に設けられた積層体11と、電池容器10の内部に充填された電解液12と、電池容器10の外側面を覆う樹脂コーティング層13と、を備えるものである。ここで、本実施例では二次電池1を積層型の電池として説明するが、円筒型等の電池であっても良い。
前記電池容器10は、図1及び図2に示すように、上部が開口された筐体である内部ケース101と、この内部ケース101を下方から覆う外部ケース102と、内部ケース101を上方から覆ってその下端部が外部ケース102に固着された外部蓋部材103と、を有している。
内部ケース101は、積層体11を構成する後述の電極体119を収納するためのものである。この内部ケース101は、図1に示すように、略直方体形状の外形を有し、その上端縁から側方へ突出するようにして、縦断面略コの字型の振動吸収部101aが設けられている。そして、この振動吸収部101aは、上下方向への振動の作用に対して、コの字型の開口部を狭めるように弾性変形可能となっている。また、図2に示すように、内部ケース101の内側面には、略水平方向に突出するようにして、突起101bが設けられている。尚、内部ケース101の形状や大きさは、積層体11を収納可能な範囲で適宜設計変更が可能である。また、突起101bの形状・個数・位置等も、本実施形態に限られず適宜設計変更が可能である。また、本実施形態のように内部ケース101の一部として振動吸収部101aを構成する以外に、内部ケース101の開口縁部と外部蓋部材103との間に、板バネ等の弾性部材を介在させてもよい。
外部ケース102は、内部ケース101の下部を収納するためのものである。この外部ケース102は、図1に示すように、略直方体形状の外形を有する中空の箱型部材であって、その上部が開口されている。そして、外部ケース102の内部空洞の横断面形状は、内部ケース101の横断面形状より大きく形成されている。また、外部ケース102の高さ寸法は、内部ケース101の高さ寸法の半分程度となっている。このように構成される外部ケース102は、図1に示すように、その内部に内部ケース101の下部が収納され、図2に示すように、その内側底面に内部ケース101の外側底面が当接した状態となっている。尚、外部ケース102の高さ寸法は、本実施形態に限定されず、内部ケース101の高さ寸法より小さい範囲内で任意の大きさとすることができ、外部ケース102を板状に形成してもよい。尚、外部ケース102の形状は、内部ケース101の形状に応じて適宜設計変更が可能である。
外部蓋部材103は、内部ケース101の上部を収納するためのものである。この外部蓋部材103は、図1に示すように、略直方体形状の外形を有する中空の箱型部材であって、その下部が開口されている。そして、外部蓋部材103の内部の横断面形状は、内部ケース101の横断面形状より大きく形成されている。そして、外部蓋部材103は、その内部の横断面形状が内部ケース101の横断面形状より大きく形成されるとともに、その下端部103aが外部ケース102の上端部102aと略合致する形状に形成されている。ここで、本実施形態では、図1及び図2に示すように外部ケース102の上端部102aを平坦面として形成したため、外部蓋部材103の下端部103aもこれに合致するよう平坦面として形成した。しかし、これに代えて、例えば図4に示すように外部ケース102の上端部102aを一部切り欠いて階段状に形成する一方、外部蓋部材103の下端部103aもこれに嵌合するような階段状に形成してもよい。このような形状とすれば、外部ケース102と外部蓋部材103とを接合させた時に両者の間に生じる隙間も階段状になるので、溶接作業時に生じる溶接スパッタ(異物)が、この隙間を通って電池容器10の内部に混入しにくい。また、外部蓋部材103には、積層体11を構成する後述の電極端子114が取り付けられている。
このように構成される外部蓋部材103は、図1に示すように、その内部に内部ケース101の上部が収納され、図2に示すように、内部ケース101の振動吸収部101aが外部蓋部材103の上隅角部103bに密着している。これにより、内部ケース101の開口が外部蓋部材103によって塞がれ、内部ケース101の内部は密封された状態となっている。また、外部蓋部材103は、その下端部103aが外部ケース102の上端部102aに接合され、溶接にて両者が固着されている。尚、外部蓋部材103の形状や大きさは、内部ケース101や外部ケース102の形状や大きさに応じて適宜設計変更が可能である。尚、本実施形態では、外部ケース102の高さ寸法を内部ケース101の高さ寸法の略半分程度にしたので、外部蓋部材103の高さ寸法も内部ケース101の高さ寸法の半分程度としたが、外部蓋部材103の高さ寸法は、外部ケース102の高さ寸法に応じて適宜設計変更が可能である。
積層体11は、図3に示すように、複数枚の電極板111とセパレータ112が所定間隔で互いに平行して配置された電極体119を備える。積層体11は、電極リード113により電極端子114と接続されている。
電極体119を構成する電極板111は、導体箔や導体薄板等のシート状の集電体を母材とし、この母材の表面に電解液12の種類に応じた電極活物質をコーティングしたものである。この電極板111は、図1に示すように、略矩形の平板部材であって、その上端部から突出した電極タブ115が設けられている。ここで、複数の電極板111は、略同数の正極板111Aと負極板111Bとから構成され、各正極板111Aの上端部における一方の隅角からは電極タブ115としての正極タブ115Aが突出して設けられ、各負極板111Bの上端部における他方の隅角からは電極タブ115としての負極タブ115Bが突出して設けられている。
このように構成される複数枚の電極板111は、図1及び図3に示すように、内部ケース101の内部に正極板111Aと負極板111Bがセパレータ112を介して交互に積層され、各正極板111Aから突出する正極タブ115Aが適宜折り曲げられることによって束ねられ、各負極板111Bから突出する負極タブ115Bも適宜折り曲げられることによって束ねられている。そして、図2に示すように、各電極板111の上端縁には、内部ケース101の内側面に設けられた突起101bがそれぞれ当接している。
電極体119を構成するセパレータ112は、各電極板111が互いに接触して短絡するのを防止するためのものである。このセパレータ112は、ポリエチレンやポリプロピレン等の微多孔質の樹脂フィルムからなり、図1に示すように、各電極板111と同程度の大きさの略矩形に形成されている。このように構成される複数枚のセパレータ112は、図3に示すように、互いに隣接する正極板111Aと負極板111Bとの間にそれぞれ配置されている。そして、各セパレータ112の上端縁にも、内部ケース101の内側面に設けられた突起101bがそれぞれ当接している。
電極リード113は、各電極板111を各電極端子114に対して電気的に接続するためのものである。この電極リード113は、図1に示すように、導電性部材からなる帯状の部材であって、その幅寸法は各電極タブ115の幅寸法と略等しく形成されている。ここで、電極リード113は、正極リード113Aと負極リード113Bとから構成される。そして、正極リード113Aは、略S字状に折り曲げられた状態で内部ケース101の内部に収納され、その一端部が正極タブ115Aの束に接続されるとともに、他端部が後述の正極端子114Aに接続されている。一方、負極リード113Bも、略S字状に折り曲げられた状態で内部ケース101の内部に収納され、その一端部が負極タブ115Bの束に接続されるとともに、他端部が後述の負極端子114Bに接続されている。
電極端子114は、二次電池1を各種電気機器に対して電気的に接続するためのものである。この電極端子114は、導電性部材からなる略円柱形状の部材であって、正極端子114Aと負極端子114Bとから構成される。そして、正極端子114Aは、図2に示すように、外部蓋部材103に挿通し固定されて一端部が電池容器10の外部に突出し、他端部は正極リード113Aに接続されている。一方、負極端子114Bは、外部蓋部材103に挿通されて一端部が電池容器10の外部に突出し、他端部は負極リード113Bに接続されている。
電解液12は、例えばリチウムイオン二次電池の電解液12として、炭酸エチレンや炭酸ジエチル等の有機溶媒に、六フッ化リン酸リチウムや四フッ化ホウ酸リチウム等のリチウム塩を溶解した溶液等を用いることができる。この電解液12は、内部ケース101の内部に充填されている。また、図2及び図3に示すように、内部ケース101の外側の隙間、すなわち外部ケース102と内部ケース101との間の隙間116及び外部蓋部材103と内部ケース101との間の隙間117にも電解液12がそれぞれ充填されている。尚、本実施形態では、この隙間116や隙間117に対して内部ケース101の内部と同じ電解液12を充填したが、これに限られず、隙間116や隙間117には電解液12に代えて熱伝導性の良い任意の流体または固体を充填することができる。
前記樹脂コーティング層13は、外部に対して電池容器10を電気的に絶縁するためのものである。この樹脂コーティング層13は、図2及び図3に示すように、電池容器10を構成する外部ケース102の外側面と、外部蓋部材103の外側面とを覆ってそれぞれ設けられている。
次に、第1実施形態に係る電池容器10の作製手順及び作用効果について説明する。電池容器10の作製に際しては、まず、複数枚の電極板111及びセパレータ112を所定間隔で積層することで電極体119を作成し、図1及び図3に示すように、この電極体119を内部ケース101の内部に収納する。そして、図2に示すように、電池容器10の内側面に突起101bを形成することにより、内部ケース101の内部における電極体119の位置を固定する。ここで、突起101bを形成する方法としては、内部ケース101を外側からプレス加工してその一部を内側へ突出させる方法、或いは内部ケース101の内側面を部分的に切り出して内側へ折り曲げる方法等が挙げられる。このように、突起101bで電極体119の位置を固定することにより、上下方向の振動が作用しても、電極体119が上下動して内部ケース101と接触等しないので、電池性能が振動の影響を受けにくい。
次に、電極体119に対して電極リード113を接続する。具体的には、図1に示すように、内部ケース101の内部に収容した電極板111のうち、正極板111Aから突出した正極タブ115Aの束に、正極リード113Aの一端部を溶接にて固着させる。同様にして、負極板111Bから突出した負極タブ115Bの束に、負極リード113Bの一端部を溶接にて固着させる。尚、図1には示していないが、正極リード113A及び負極リード113Bは、この段階では曲折されておらず平坦な状態である。
次に、電極リード113に対して電極端子114を接続する。具体的には、電極体119を収納した内部ケース101の下部を外部ケース102の内部に収容するとともに、内部ケース101の上方に、電極端子114が固定された外部蓋部材103を配置する。そして、正極リード113Aの先端部に正極端子114Aの基端部を、負極リード113Bの先端部に負極端子114Bの基端部を、それぞれ溶接にて固着させる。尚、この段階でも正極リード113Aと負極リード113Bは曲折されておらず平坦な状態であって、外部ケース102と外部蓋部材103は離間している。
次に、外部蓋部材103と外部ケース102とを接合させる。すなわち、平坦な状態の正極リード113Aと負極リード113Bを図1に示すように略S字状に折り曲げながら、内部ケース101の上方に配置した外部蓋部材103を下方に降ろしていく。そして、図5(a)に示すように、外部ケース102の上端部102aに対し、これに略合致する形状に形成された外部蓋部材103の下端部103aを接合させる。この時、内部ケース101の上端部に設けられた振動吸収部101aが、外部蓋部材103の上隅角部103bに密着する。これにより、内部ケース101の開口が外部蓋部材103によって塞がれ、内部ケース101の内部が密封される。更に、弾性変形可能な振動吸収部101aが外部蓋部材103に密着しているので、上下方向への振動が作用しても、この振動は振動吸収部101aの弾性変形によって吸収される。これにより、内部ケース101の上下動が抑制され、電池性能を良好に維持することができる。加えて、振動吸収部101aが外部蓋部材103に密着することにより、外部蓋部材103の内部で内部ケース101が水平方向にある程度位置決めされる。これにより、水平方向への振動が作用しても、内部ケース101が横揺れしにくく、電池性能が振動の影響を受けにくいという利点もある。
次に、外部蓋部材103と外部ケース102とを溶接にて固着する。すなわち、図5(b)に示すように、電池容器10の側方から溶接棒Yを近付け、外部蓋部材103と外部ケース102との接合部118を溶接する。この時、溶接作業に伴って生じた溶接スパッタSが、外部蓋部材103と外部ケース102との間に生じた微小な隙間116(不図示)を通って、外部蓋部材103と内部ケース101との間の隙間116、及び外部ケース102と内部ケース101との間の隙間116に侵入する場合がある。そして、侵入した場合、溶接スパッタSは、図6(a)に示すように、外部ケース102の底部に集積する。ここで、この溶接作業時には、外部蓋部材103と外部ケース102との接合部118が非常に高温になる。しかし、外部蓋部材103と内部ケース101との間の隙間117、及び外部ケース102と内部ケース101との間の隙間116は、高い断熱効果を有する空気で満たされている。従って、外部蓋部材103や外部ケース102が高温になっても、その熱は内部ケース101には伝わりにくいため、熱の影響で電池性能が低下することを防止することができる。
次に、電池容器10の外側に樹脂をコーティングする。すなわち、図6(a)に示すように、外部蓋部材103及び外部ケース102の外側面を覆って、樹脂コーティング層13を形成する。これにより、電池容器10が外部と電気的に絶縁される。また、この樹脂コーティング作業時にも、外部蓋部材103や外部ケース102にある程度の熱が加わることになる。しかし、前記溶接作業時と同様に、断熱効果の高い空気層の存在によって外部ケース102や外部蓋部材103の熱が内部ケース101には伝わりにくいため、熱の影響による電池性能の低下を防止することができる。
尚、本実施形態では、樹脂コーティング作業を溶接作業の後に行ったが、溶接作業を行う前に、予め電池容器10の外側に樹脂をコーティングしてもよい。この場合、溶接作業時に高温になる外部蓋部材103と外部ケース102の接合部118周辺は、樹脂をコーティングすることなく、外部蓋部材103や外部ケース102の表面が剥き出しになった状態にしておく。そして、溶接作業を行った後、前記接合部118周辺に絶縁テープを貼着する。これにより、樹脂コーティング層13と絶縁テープの双方によって、電池容器10の全体を絶縁することができる。
最後に、電池容器10の内部に電解液12を注入する。すなわち、外部蓋部材103に設けられた液注入孔(不図示)から、内部ケース101の内部に電解液12を注入する。また、外部蓋部材103の或いは外部ケース102に設けられた液注入孔(不図示)から、外部蓋部材103と内部ケース101との間の隙間117、及び外部ケース102と内部ケース101との間の隙間116にも、電解液12を充填する。これにより、外部ケース102の底部に集積した溶接スパッタSが隙間116,117の全体に拡散する。しかし、前述のように、内部ケース101の振動吸収部101aが外部蓋部材103の上隅角部103bに密着することにより、内部ケース101の内部は密封されている。従って、内部ケース101の内部に注入された電解液12と、内部ケース101の外側の隙間116,117に充填された電解液12とが混ざり合うことはない。これにより、溶接スパッタSは内部ケース101の内部には侵入しないので、溶接スパッタSの影響で電池性能が低下することがない。更に、熱伝導性の良い電解液12が、内部ケース101の外側の隙間116,117に充填されているので、電池使用時に積層体11で発生する熱が、内部ケース101からその外側の電解液12を介して外部蓋部材103や外部ケース102に伝わる。そして、この熱は外部蓋部材103や外部ケース102から周囲に放熱される。このように、電池使用時に発生する熱が効率良く電池容器10の外部に放熱されるので、電池性能を良好に維持することができる。
尚、内部ケース101の外側の隙間116,117に電解液12を充填することは本発明に必須の構成ではなく、この隙間116,117が空気で満たされた状態でもよい。しかし、本実施形態のように隙間116,117に電解液12を充填した方が、前述のように電池使用時に発生した熱が効率良く電池容器10の外部に放熱されるという利点がある。
次に、本発明の第2実施形態に係る電池の構成について説明する。図7は、第2実施形態の二次電池2を示す概略縦断面図である。本実施形態の二次電池2は、図2に示す第1実施形態の二次電池1と同様に、電池容器20が内部ケース201と外部ケース202と外部蓋部材203とから構成されるが、内部ケース201の構成が第1実施形態とは異なっている。尚、それ以外の構成及びその作用効果は第1実施形態と同じであるため、図2と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
本実施形態の内部ケース201は、図7に示すように、第1実施形態のようにその開口縁部に振動吸収部101aが設けられておらず、高さ方向に沿って一様な横断面形状を有している。このような構成によれば、内部ケース201の形状が単純であるため、その作製工程を簡略化できるという利点がある。尚、このような構成では、上下方向への振動の影響を受けやすいので、内部ケース201の設計に際しては、外部蓋部材203との接触によって座屈や曲折が生じない程度の材質や厚みを選定することが好適である。
次に、本発明の第3実施形態に係る電池の構成について説明する。図8は、第3実施形態の二次電池3を示す概略縦断面図である。本実施形態の二次電池3は、図2に示す第1実施形態の二次電池1と同様に、電池容器30が内部ケース301と外部ケース302と外部蓋部材303とから構成されるが、内部ケース301の構成が第1実施形態とは異なっている。尚、それ以外の構成及びその作用効果は第1実施形態と同じであるため、図2と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
本実施形態の内部ケース301は、図8に示すように、その底部から側方へ突出するようにして、水平方向位置決め片301cが溶接等により固着されている。このような構成によれば、内部ケース301は、第1実施形態と同様に、その振動吸収部301aが外部蓋部材303の上隅角部303bに当接することで水平方向に位置決めされるが、これに加えて水平方向位置決め片301cが外部ケース302の内側面に当接することによって、より確実に水平方向に位置決めされる。従って、水平方向への振動が作用しても、外部ケース302と外部蓋部材303の内部で内部ケース301が横揺れしにくく、電池性能が振動の影響を受けにくいという利点がある。尚、水平方向位置決め片301cの形状、個数、及び形成位置等は、本実施形態に限定されず適宜設計変更が可能である。
次に、本発明の第4実施形態に係る電池の構成について説明する。図9は、第4実施形態の二次電池4を示す概略縦断面図である。本実施形態の二次電池4は、図2に示す第1実施形態の二次電池1と同様に、電池容器40が内部ケース401と外部ケース402と外部蓋部材403とから構成されるが、外部ケース402の構成が第1実施形態とは異なっている。尚、それ以外の構成及びその作用効果は第1実施形態と同じであるため、図2と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
本実施形態の外部ケース402は、図9に示すように、その底部付近の内側面から側方へ突出するようにして、水平方向位置決め片402cが溶接等により固着されている。このような構成によれば、内部ケース401は、第3実施形態と同様に、その振動吸収部401aによる水平方向への位置決め効果に加えて、その外側面に対して外部ケース402から延びる水平方向位置決め片402cが当接することによって、より確実に水平方向に位置決めされる。従って、水平方向への振動が作用しても、外部ケース402と外部蓋部材403の内部で内部ケース401が横揺れしにくく、電池性能が振動の影響を受けにくいという利点がある。尚、水平方向位置決め片402cの形状、個数、及び形成位置等は、本実施形態に限定されず適宜設計変更が可能である。また、図に詳細は示さないが、水平方向位置決め片402cを外部蓋部材403の内側面から突出して設けてもよい。しかし、本実施形態のように外部ケース402に設けて内部ケース401の下側よりを支持した方が、内部ケース401のより安定した位置決めが可能となる。尚、本実施形態を第3実施形態と組み合わせることも可能である。
次に、本発明の第5実施形態に係る電池の構成について説明する。図10は、第5実施形態の二次電池5を示す概略縦断面図である。本実施形態の二次電池5は、図2に示す第1実施形態の二次電池1と同様に、電池容器50が内部ケース501と外部ケース502と外部蓋部材503とから構成されるが、電池容器50の構成が第1実施形態とは異なっている。尚、それ以外の構成及びその作用効果は第1実施形態と同じであるため、図2と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
本実施形態の内部ケース501は、図10に示すように、その底部から下方へ突出するようにして、クリアランス確保用突片501dが溶接等により固着されている。このような構成によれば、内部ケース501は、そのクリアランス確保用突片501dが外部ケース502の底面に当接することによって、その底部が外部ケース502の底部から所定距離だけ離間した状態で保持される。そして、外部ケース502と外部蓋部材503とを溶接し、それらの外側面に樹脂をコーティングした後に、内部ケース501の底部と外部ケース502の底部との間の隙間504にも電解液12が充填される。これにより、第1実施形態のように内部ケース501の底部全体が外部ケース502の底部に接触している場合と比較すると、樹脂コーティング作業や溶接作業の際に、外部ケース502の熱が内部ケース501に伝わりにくく、電池性能が熱の影響を受けにくいという利点がある。尚、クリアランス確保用突片501dの形状、個数、及び形成位置等は、本実施形態に限定されず適宜設計変更が可能である。また、本実施形態を第3実施形態または第4実施形態と組み合わせることも可能である。
次に、本発明の第6実施形態に係る電池の構成について説明する。図11は、第6実施形態の二次電池6を示す概略縦断面図である。本実施形態の二次電池6は、図2に示す第1実施形態の二次電池1と同様に、電池容器60が内部ケース601と外部ケース602と外部蓋部材603とから構成されるが、外部ケース602の構成が第1実施形態とは異なっている。尚、それ以外の構成及びその作用効果は第1実施形態と同じであるため、図2と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
本実施形態の外部ケース602は、図11に示すように、その底部から上方へ突出するようにして、クリアランス確保用突片602dが溶接等により固着されている。このような構成によれば、内部ケース601は、その底面に対して外部ケース602から延びるクリアランス確保用突片602dが当接することによって、その底部が外部ケース602の底部から所定距離だけ離間した状態で保持される。そして、外部ケース602と外部蓋部材603とを溶接し、それらの外側面に樹脂をコーティングした後に、内部ケース601の底部と外部ケース602の底部との間の隙間604にも、電解液12が充填される。これにより、第5実施形態と同じ作用効果が得られる。尚、クリアランス確保用突片602dが適宜設計変更可能である点、第3実施形態または第4実施形態と組み合わせ可能である点も第5実施形態と同様である。
次に、本発明の第7実施形態に係る電池の構成について説明する。図12は、第7実施形態の二次電池7を示す概略縦断面図である。本実施形態の二次電池7は、図2に示す第1実施形態の二次電池1と同様に、電池容器70が内部ケース701と外部ケース702と外部蓋部材703とから構成されるが、内部ケース701の構成が第1実施形態とは異なっている。尚、それ以外の構成及びその作用効果は第1実施形態と同じであるため、図2と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
本実施形態の内部ケース701は、図12に示すように、その開口縁部に設けられた振動吸収部701aとは別に、その底部にも側方へ突出するようにして、振動吸収部701dが設けられている。この振動吸収部701dは、断面略コの字型の形状を有し、上下方向への振動の作用に対して、コの字型の開口部を狭めるように弾性変形可能となっている。そして、この振動吸収部701dは、内部ケース701を外部ケース702に収納した時に、外部ケース702の下隅角部702eに密着する。このような構成によれば、上下方向への振動が作用しても、この振動は振動吸収部701aのみならず振動吸収部701dによっても吸収される。これにより、内部ケース701の上下動がより確実に抑制され、電池性能を良好に維持することができる。また、前述のように振動吸収部701aによる水平方向への位置決め効果に加えて、振動吸収部701dが外部ケース702の下隅角部702eに密着することによって、内部ケース701がより確実に水平方向に位置決めされる。従って、水平方向への振動が作用しても、外部ケース702と外部蓋部材703の内部で内部ケース701が横揺れしにくく、電池性能が振動の影響を受けにくいという利点もある。更に、内部ケース701は、その振動吸収部701dが外部ケース702の下隅角部702eに密着することによって、その底部が外部ケース702の底部から所定距離だけ離間した状態で保持される。これにより、第5実施形態と同様に、樹脂コーティング作業や溶接作業の際に、外部ケース702の熱が内部ケース701に伝わりにくいという利点もある。尚、本実施形態のように内部ケース701の一部として振動吸収部701dを構成する以外に、内部ケース701の底部と外部蓋部材703の底部との間に、板バネ等の弾性部材を介在させてもよい。
次に、本発明の第8実施形態に係る電池の構成について説明する。図13は、第8実施形態の二次電池8を示す概略縦断面図である。本実施形態の二次電池8は、電池容器80が内部ケース801と外部ケース802と外部蓋部材803と固化材804とから構成される点で、図2に示す第1実施形態の二次電池1とは異なっている。尚、それ以外の構成及びその作用効果は第1実施形態と同じであるため、図2と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
本実施形態の固化材804は、外部ケース802と内部ケース801との間の隙間116に溶接スパッタSを封じ込めるためのものである。本実施形態では、セメントと水とを混合してなるセメントミルクを固化材804として用い、図13に示すように、内部ケース801と外部ケース802との間の隙間116、及び内部ケース801と外部蓋部材803との間の隙間117に固化材804をそれぞれ充填している。より詳細に説明すると、前述のように外部ケース802と外部蓋部材803との溶接作業時には、両者の接合部805に生じた微小な隙間(不図示)から溶接スパッタSが電池容器80の内部に侵入する。そして、この溶接スパッタSが内部ケース801の内部まで侵入すると、電池性能が低下する場合がある。そこで、第1〜第7実施形態では、内部ケースの開口縁部の全体を外部蓋部材の内側面に密着させて内部ケースの内部を密封することにより、溶接スパッタが内部ケースの内部に侵入するのを防止している。これに対し、本実施形態では、外部ケース802の底部に集積した溶接スパッタSの上からセメントミルクを注入し、所定時間養生して固化させることにより、固化したセメントで溶接スパッタSを内部ケース801の外側の隙間116に封じ込めている。これにより、内部ケース801の内部への溶接スパッタSの侵入が防止されるとともに、内部ケース801が、固化したセメントによって外部ケース802や外部蓋部材803に固着されるので、内部ケース801の上下動や横揺れが防止される。そして、このようにセメントによって溶接スパッタSを封じ込めるので、内部ケース801の開口縁部を外部蓋部材803の内側面には密着させず、内部ケース801の内部を密封していない。もちろん、第1〜第7実施形態と同様に内部ケース801の内部を密封してもよい。
尚、固化材804としては、本実施形態のセメントミルクに限られず、液体状から時間の経過とともに固体状またはゲル状に変化する性質を有する任意の物質を用いることができる。但し、内部ケース801の内部を密封しない場合、内部ケース801の内部から流出した電解液12と接触する可能性があるため、固化材804としては電解液12と化学的に反応しない特性を持つものが好適である。また、本実施形態では、外部蓋部材803と内部ケース801との間の隙間117にも固化材804を充填したが、内部ケース801の内部に溶接スパッタSが侵入するのを防止可能であれば、外部ケース802と内部ケース801との間の隙間116にのみ固化材804を充填してもよい。
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは作業手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。