JP5372092B2 - 時計の脱進機のトリップ防止機能付きひげゼンマイ - Google Patents
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Description
つめ付き脱進機は精度の高い時計に多用されている。その理由は、このつめ付き脱進機は、スイスレバー脱進機(Swiss lever escapement )よりも振動子の等時性を損なうことが少ないからである。この種の脱進機の詳細は、非特許文献1に開示されている。
ここでトリッピングの原理を簡単に説明する。
ガンギ車は、1回の振動につき1個のインパルスを起立振動と平衡位置(eqilibrium position)においてひげゼンマイ駆動テンプの振動子に与える。この平衡位置とは、高位置と低位置の間の中間位置を意味する。落下振動においては、ひげゼンマイは、衝撃を受けることはない。起立振動と落下振動のいずれかが、ひげゼンマイの収縮状態又は拡張状態のいずれかに関係するかということは、重要なことではない。
特許文献1に開示された機構は、ゼンマイ駆動テンプと一体に回転するピニオンを有する。このピニオンが回転可能に搭載された歯付きセクターと噛み合う。この歯付きセクターは、テンプが所定の回転角を超える場合には、固定した停止部材に当たるように2個のエンドスポーク(どてピン)を具備する。この装置は、振動子が両回転方向に空回りするのを防止するのには効率的である。しかし、ピニオンと歯付きセクターの間で、歯車の喪失が発生し、その結果、ゼンマイ駆動テンプの等時性が損なわれることになる。
別に機構が特許文献2に開示されている。この機構はアームを有する。このアームは、ひげゼンマイの最終のコイルに半径方向に搭載され、ゼンマイ駆動テンプがある角度とある半径方向の拡張量を超えた時に、テンプと一体のフィンガーとテンプのブリッジに搭載された2個のカラムの間に挿入される。この装置は実現するのが難しいが、その理由は組立に極度の精度が要求されるからである。
本発明の装置は、回転角が平衡点から両極端位置の一方に達した時に、複数の連続するコイルが、所定角Ψに達するのを阻止する手段を有する。
本発明は、更にこの種のトリップ防止機能付きひげゼンマイを具備した時計の脱進機に関する。
中央端11から周辺端12までのひげゼンマイ1のコイル13の番号は「n」で表す。その為、n番目のコイル13の半径は「Rn」であり、第1のコイル13と最後のコイル13のそれぞれの半径は、「R1」と「Rn」で表される。半径方向に整合した位置に対し平衡位置からの角度シフトは、n番目のコイル13と、(n+1)番目のコイル13に関連する横向き部分15の間の角度は「θn」であり、従ってn番目の螺旋部分14の角度は「Φn」である。
θn=(Ψ/n)×(Rn/(Rn−R1))
Φn=360−(Ψ/n)×(Rn/(Rn−R1))
2p>l≧p
Φn=360−(Ψ/n)×(Rn/(Rn−R1))
この3個の螺旋部分14は、所定角Ψに達した時に互いに当たる2個の横向き部分15により互いに連結される。この場合2個のコイルのみが互いに回転しないようロックされ、これにより、ひげゼンマイ1の回転運動をロックするのではなく、ブレーキをかけるだけである。
図3に、この第1実施例の変形例を示す。拡張時、ひげゼンマイ1は、2個、3個そして最大n’個の螺旋部分14と、それぞれ3個、4個、最大(n’+1)個の横向き部分15を有する。ここでn’は、コイル13の数nと角度Ψの関数である。ひげゼンマイ1のブレーキングは、螺旋部分14と横向き部分15の数と共に増加する。最終的に、螺旋部分14の数が最大値n’を採った時に、ひげゼンマイを完全にロックする。
図5に詳細を示すように、フィンガー16,17は、横向き部分15同士が当たった時に互いに填り合う。その結果、横向き部分15は半径方向に動かない。この構成は、角度的(円周方向)剛性に加えて、所定の振幅に達した時に、ひげゼンマイ1に半径方向の剛性を与える(半径方向に拡がらない)。ひげゼンマイ1のロックは大きな衝撃の場合でも確保される。その理由は、半径方向の弾性は、この場合円周方向の剛性を犠牲にするものではないからである。
(Ψ/n)×(Rn/(Rn−R1))
それらを分離する角度Φnは、次式で表される。
360−(Ψ/n)×(Rn/(Rn−R1))
本発明によるひげゼンマイ1の回転が、収縮時の振幅の間、限界値を超えた時には、横向き部分15’は半径方向に整合し互いに当たる。かくしてひげゼンマイ1は、回転がロックされる。
第1の横向き部分15”aはひげゼンマイ1の半径に沿って、半径方向に整合しており、第2の横向き部分15”bは、第1の横向き部分15”aに対し角度θnだけずれている。前と同様に、n番目のコイルコイル13の第1の横向き部分15”aと、(n+1)番目のコイル13の第2の横向き部分15”bの間の角度θnは、次の値を有する。
(Ψ/n)×(Rn/(Rn−R1))
それらを分離する角度Φnは、次式で表される。
360−(Ψ/n)×(Rn/(Rn−R1))
ひげゼンマイ1の回転振幅が収縮時の所定値を超えた時には、第1の横向き部分15”aは第2の横向き部分15”bに当たる。かくして、ひげゼンマイ1は、回転がロックされる。
(Ψ/n)×(Rn/(Rn−R1))
しかし、それらを分離する角度Φnは次式の値を採る。
360+(Ψ/n)×(Rn/(Rn−R1))
更に、ひげゼンマイ1のピッチpは、半径方向に拡張した時には、コイル13の数nと振動振幅に依存する値だけ、増加する。横向き部分15’の長さlは、それらが拡張時の振動の間互いに接触するよう選択される。一例として、その関係は次式である。
長さlは、ほぼ1.6pに等しい。
(Ψ/n)×(Rn/(Rn−R1))
それらを分離する角度Φnは、次式で表される。
360+(Ψ/n)×(Rn/(Rn−R1))
横向き部分15”aと15”cの長さはlは、0.8Pに等しい。
ひげゼンマイ1の回転振幅が拡張時の所定値Ψを超えた時には、横向き部分15”aは横向き部分15”cに当たる。かくして、ひげゼンマイ1は、回転がロックされる。
に
(Ψ/n)×(Rn/(Rn−R1))
かくして、ひげゼンマイ1の回転振幅が、所定角Ψに収縮時又は拡張時に達した時には、横向き部分15”aは、それぞれ横向き部分15”b又は15”cに当たる。
10 帯体
11 中央端
12 周辺端
13 コイル
14 螺旋部分
14a 最初の螺旋部分
14b 最終の螺旋部分
15 横向き部分
15”a 第1の横向き部分
15”b 第2の横向き部分
15”c 第3の横向き部分
16 フィンガー
17 フィンガー
20 コレット
21 軸真
Claims (13)
- 2つの終端位置の間で振動しその中間の平衡位置を通過する脱進機のトリップ防止機能付きひげゼンマイ(1)において、
(A)複数のコイル(13)と、
(B)前記複数のコイル(13)の内の2つのコイルをロックする手段(15,15’,15”a,15”b,15”c)と
を有し、
前記ロックする手段は、回転振幅が、前記平衡位置から前記終端位置の一方に達する回転振幅が所定角Ψを超えた時に、前記コイルをロックし、
前記ロックする手段は、前記コイル(13)と一体に形成された横向き部分(15,15’,15”a,15”b,15”c)を有し、
前記横向き部分は、前記平衡位置において、円周方向にシフトし、前記ひげゼンマイ(1)の前記平衡位置から前記終端位置の一方への回転振幅が所定角Ψに達した時に、互いに当たる
ことを特徴とする時計の脱進機のトリップ防止機能付きひげゼンマイ。 - 前記ロックする手段は、前記コイル(13)と一体に形成された横向き部分(15,15’,15”a,15”b,15”c)を有し、
前記横向き部分は、前記平衡位置において、円周方向にシフトし、前記ひげゼンマイ(1)の前記平衡位置から端部位置の一方への回転振幅が所定角Ψに達した時に、互いに当たる
ことを特徴とする請求項1記載のトリップ防止機能付きひげゼンマイ。 - 前記横向き部分(15,15’,15”a,15”b,15”c)は、半径方向を向いている
ことを特徴とする請求項1又は2記載のトリップ防止機能付きひげゼンマイ。 - 前記ひげゼンマイ(1)は、ピッチpを有し、
前記横向き部分の長さlは、1pと2pとの間にある
ことを特徴とする請求項1記載のトリップ防止機能付きひげゼンマイ。 - (C)接続螺旋部分(14a,14b)を更に有する
ことを特徴とする請求項4記載のトリップ防止機能付きひげゼンマイ。 - 前記ひげゼンマイ(1)は、前記横向き部分(15’,15”a,15”b,15”c)と一体に形成される1個の螺旋部分(14)から形成される
ことを特徴とする請求項1記載のトリップ防止機能付きひげゼンマイ。 - 前記ひげゼンマイ(1)は、ピッチpを有し、
前記横向き部分の長さlは、1pと2pとの間にあり、
前記横向き部分は、その中間部分で、前記コイル(13)に取り付けられる
ことを特徴とする請求項6記載のトリップ防止機能付きひげゼンマイ。 - 前記ひげゼンマイ(1)は、ピッチpを有し、
前記横向き部分の長さlは、p/2と1pとの間にあり、
前記横向き部分は、その端部で、前記コイル(13)に取り付けられる
ことを特徴とする請求項6記載のトリップ防止機能付きひげゼンマイ。 - 前記横向き部分(15,15’,15”a,15”b,15”c)は、
前記ひげゼンマイ(1)の外側を向いた第1横向き部分(15”a)と、
前記ひげゼンマイ(1)の内側を向いた第2横向き部分(15”b,15”c)とを有する
ことを特徴とする請求項8記載のトリップ防止機能付きひげゼンマイ。 - 前記ひげゼンマイ(1)は、シリコン製である
ことを特徴とする請求項1記載のトリップ防止機能付きひげゼンマイ。 - 2つの終端位置の間で振動しその中間の平衡位置を通過する脱進機のトリップ防止機能付きひげゼンマイ(1)の製造方法において、
前記ひげゼンマイ(1)は、
(A)複数のコイル(13)と、
(B)前記複数のコイル(13)の内の2つのコイルをロックする手段(15,15’,15”a,15”b,15”c)と
を有し、
前記ロックする手段は、回転振幅が、前記平衡位置から前記終端位置の一方に達する回転振幅が所定角Ψを超えた時に、前記コイルをロックし、
前記ロックする手段は、前記コイル(13)と一体に形成された横向き部分(15,15’,15”a,15”b,15”c)を有し、
前記横向き部分は、前記平衡位置において、円周方向にシフトし、前記ひげゼンマイ(1)の前記平衡位置から前記終端位置の一方への回転振幅が所定角Ψに達した時に、互いに当たり、
前記ひげゼンマイ(1)は、LIGA法により、金属から形成される
ことを特徴とするトリップ防止機能付きひげゼンマイの製造法。 - ひげゼンマイ(1)を有する振動部材を有する時計の脱進機において、
前記ひげゼンマイ(1)は、
(A)複数のコイル(13)と、
(B)前記複数のコイル(13)の内の2つのコイルをロックする手段(15,15’,15”a,15”b,15”c)と
を有し、
前記ロックする手段は、回転振幅が、前記平衡位置から前記終端位置の一方に達する回転振幅が所定角Ψを超えた時に、前記コイルをロックし、
前記ロックする手段は、前記コイル(13)と一体に形成された横向き部分(15,15’,15”a,15”b,15”c)を有し、
前記横向き部分は、前記平衡位置において、円周方向にシフトし、前記ひげゼンマイ(1)の前記平衡位置から前記終端位置の一方への回転振幅が所定角Ψに達した時に、互いに当たる
ことを特徴とする時計の脱進機。 - 前記時計の脱進機はツメ付き脱進機である
ことを特徴とする請求項12記載の時計の脱進機。
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