JP5366432B2 - ガス検出システム - Google Patents
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Description
具体的には、例えば、ゼリー中のグルコース濃度を検出するバイオセンサや魚肉中の遊離アミノ酸や脂肪酸、糖などを検出するバイオセンサ(例えば、特許文献1参照)、排水中のアンモニア性窒素濃度を検出するバイオセンサ(例えば、特許文献2参照)、電解液中のアミノ酸濃度を検出するバイオセンサ(例えば、特許文献3参照)、トマトジュース中の乳酸含有量を検出するバイオセンサ(例えば、特許文献4参照)等が提案されている。
ガス検出システムにおいて、
検出対象物質を含有するガスが導入される気相室と、前記気相室と隣接するように配置され、所定の電解液が導入される液相室と、前記気相室と前記液相室とを隔てるように配置され、少なくとも前記検出対象物質が透過するガス透過膜と、前記液相室にガス透過膜と対向して配置された電極と、前記液相室に含有され、前記検出対象物質と選択的に反応するレセプタと、を備え、前記ガス透過膜を透過して前記気相室から前記液相室に移行してきた前記検出対象物質を検出するバイオセンサと、
前記電極の温度を調整する電極温度調整手段と、
前記バイオセンサによる前記検出対象物質の検出前に、当該バイオセンサの応答出力に関する応答データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された応答データに基づいて、前記バイオセンサによる前記検出対象物質の検出時における前記電極の温度を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された温度となるよう、前記電極温度調整手段に前記電極の温度を調整させる調整制御手段と、
を備え、
前記応答データは、検量線であり、
前記決定手段は、前記取得手段により取得された検量線の傾きに基づいて、前記電極の温度を決定することを特徴とする。
ガス検出システムにおいて、
検出対象物質を含有するガスが導入される気相室と、前記気相室と隣接するように配置され、所定の電解液が導入される液相室と、前記気相室と前記液相室とを隔てるように配置され、少なくとも前記検出対象物質が透過するガス透過膜と、前記液相室にガス透過膜と対向して配置された電極と、前記液相室に含有され、前記検出対象物質と選択的に反応するレセプタと、を備え、前記ガス透過膜を透過して前記気相室から前記液相室に移行してきた前記検出対象物質を検出するバイオセンサと、
前記液相室に導入される前記電解液の温度を調整する電解液温度調整手段と、
前記バイオセンサによる前記検出対象物質の検出前に、当該バイオセンサの応答出力に関する応答データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された応答データに基づいて、前記バイオセンサによる前記検出対象物質の検出時における前記電解液の温度を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された温度となるよう、前記電解液温度調整手段に前記電解液の温度を調整させる調整制御手段と、
を備え、
前記応答データは、検量線であり、
前記決定手段は、前記取得手段により取得された検量線の傾きに基づいて、前記電解液の温度を決定することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載のガス検出システムにおいて、
前記バイオセンサは、前記ガス透過膜と前記電極との間に配置されたスペーサを備えることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、
請求項1から3の何れか一項に記載のガス検出システムにおいて、
前記バイオセンサは、前記液相室の前記気相室と対向する側の面を構成して、前記電極を支持する支持体を備え、
前記支持体は、溝部を有し、
前記電極は、前記溝部内に形成され、
前記電極の厚みは、前記溝部の深さと略同一であることを特徴とする。
請求項1から4の何れか一項に記載のガス検出システムにおいて、
前記バイオセンサは、
前記電極を有する電極部と、
前記液相室に前記電極部を取り付けるための取付部と、を備え、
前記電極部は、前記取付部に着脱自在であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、
請求項1から5の何れか一項に記載のガス検出システムにおいて、
前記レセプタは、酵素であることを特徴とする。
請求項1から6の何れか一項に記載のガス検出システムにおいて、
前記液相室に導入された前記電解液を当該液相室から排出させて、再び当該液相室に導入させる循環手段を備えることを特徴とする。
すなわち、バイオセンサは、ガス透過膜を介して気相室と液相室とを配置しただけの簡易な構成となっている。また、バイオセンサを用いて気体試料中の検出対象物質を検出する際、その気体試料中の検出対象物質を水中に溶解させる等の処理を行う必要がなく、気体試料をそのまま気相室に導入すればよいため、簡便に気体試料中の検出対象物質を検出することができる。
本実施の形態では、バイオセンサとして酵素センサを例示して説明することとする。
まず、第1の実施の形態における酵素センサ100及び酵素センサ100を備えるガス検出システム1000について説明する。
図1は、ガス検出システム1000の構成を示す図であり、図2は、ガス検出システム1000の機能的構成を示す図である。
酵素センサ100において、酵素は、固定化酵素の状態で液相室R2に含有されても良いし、遊離酵素の状態で液相室R2に含有されても良い。以下、酵素が固定化酵素の状態で液相室R2に含有される酵素センサ100を「固定型酵素センサ」と呼ぶ場合があり、また、酵素が遊離酵素の状態で液相室R2に含有される酵素センサ100を「遊離型酵素センサ」と呼ぶ場合がある。
また、「遊離型酵素センサ」においては、例えば、液相室R2に導入される電解液として酵素が含有された電解液を使用することによって、酵素を液相室R2に含有させることとする。
ここで、数値データとは、例えば、応答電流や濃度(応答電流と予め作成された検量線とから求めた検出対象物質の濃度)などの数値に関するデータであれば任意であり、例えば、応答電流や濃度などの数値そのものに関するデータであっても良いし、数値の変化に関するデータであっても良い。
ここで、表示される数値情報は、例えば、応答電流や濃度などの数値そのものであっても良いし、数値の変化をグラフ化したもの(例えば、検量線を示すグラフや数値の経時変化を示すグラフなど)であっても良い。
具体的には、電解液タンク310中の電解液は、例えば、酵素センサ100が「固定型酵素センサ」である場合、酵素を含有しない電解液(緩衝液)であり、酵素センサ100が「遊離型酵素センサ」である場合、酵素を含有する電解液(緩衝液に酵素を溶解させたもの)である。
具体的には、標準液提供装置320は、例えば、制御装置700から入力される制御信号に従って、制御装置700から指定された基質濃度の標準液を、酵素センサ100に提供する。
具体的には、送液ポンプ340は、例えば、制御装置700から入力される制御信号に従って、電解液タンク310中の電解液や標準液提供装置320中の標準液を、酵素センサ100に送液する。
なお、送液ポンプ340は、チューブを用いて送液できるポンプであれば任意であり、具体的には、例えば、ダイヤフラムポンプ等であっても良いし、ペリスタポンプやリングポンプなどのチューブをしごくタイプのポンプ等であっても良い。
また、送液ポンプ340を酵素センサ100の前段(電解液導入側)に接続するよう構成したが、電解液タンク310中の電解液や標準液提供装置320中の標準液を酵素センサ100に送液できる構成であれば任意であり、具体的には、例えば、送液ポンプ340に代えて酵素センサ100の後段(電解液排出側)に排出ポンプを接続して作動させても良いし、酵素センサ100の後段(電解液排出側)に送液ポンプ340を接続して、送液ポンプ340を吸引ポンプとして作動させても良いし、酵素センサ100の前段(電解液導入側)と後段(電解液排出側)との両方にポンプを接続して作動させても良い。
具体的には、センサ温度調整装置410は、例えば、電極150の温度を調整する電極温度調整手段として、例えば、制御装置700から入力される制御信号に従って、酵素センサ100の温度が、制御装置700から指定された温度となるよう、酵素センサ100の温度を調整する。
具体的には、電解液温度調整装置420は、例えば、液相室R2に導入される電解液の温度を調整する電解液温度調整手段として、例えば、制御装置700から入力される制御信号に従って、電解液タンク310中の電解液の温度が、制御装置700から指定された温度となるよう、電解液タンク310中の電解液の温度を調整する。
具体的には、吸気ポンプ510は、例えば、制御装置700から入力される制御信号に従って、ダストフィルタ520を介して外部大気を吸気し、その吸気した外部大気を、酵素センサ100に導入する。
なお、酵素センサ100に導入された外部大気は、酵素センサ100(気相室R1のガス排出側)から外部に排出される。
標準ガス提供装置530は、例えば、制御装置700から入力される制御信号に従って、制御装置700から指定された基質濃度の標準ガスを、酵素センサ100に提供する。
なお、酵素センサ100に導入された標準ガスは、酵素センサ100(気相室R1のガス排出側)から外部に排出される。
具体的には、制御装置700は、例えば、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)710と、RAM(Random Access Memory)720と、記憶部730と、などを備えている。
また、酵素センサ100が「固定型酵素センサ」又は「遊離型酵素センサ」である場合、CPU710は、例えば、バルブ切替装置600に制御信号を入力して、標準ガス提供装置530中の標準ガスが酵素センサ100に導入されるよう第3バルブ630を切り替えさせ、標準ガス提供装置530に制御信号を入力して、基質濃度が異なる標準ガスを順次生成させて導入させ、データ処理装置220に制御信号を入力して、検量線(応答データ)を作成させる。
特に、温度に関しては、酵素等の生体物質は、低温では活性が低く、高温では熱によるダメージを受けるため、至適温度が存在する。
そこで、ガス検出システム1000では、測定前に、酵素センサ100の応答出力に関する応答データ(検量線)から、電極150に固定された酵素(酵素センサ100が「電極固定型酵素センサ」である場合)、液相室R2内に配置された所定の担体に固定された酵素(酵素センサ100が「担体固定型酵素センサ」である場合)、或いは、液相室R2に導入される電解液に含有された酵素(酵素センサ100が「遊離型酵素センサ」である場合)の劣化具合を判定し、その酵素の至適温度以下で温度を調整することによって、酵素センサ100の応答出力が略一定となるよう、酵素センサ100を校正することとする。
より具体的には、例えば、至適温度が40℃で、初期設定温度が25℃である場合、検量線の傾きが調整用閾値以下の場合には、25℃以上40℃以下の温度を設定温度として決定し、検量線の傾きが調整用閾値を上回る場合には、25℃未満の温度(例えば、10℃以上25℃未満の温度)を設定温度として決定する。さらに、例えば、調整用閾値を5とした際、「5<検量線の傾き≦6」である場合には20℃、「6<検量線の傾き」である場合には15℃を設定温度として決定するとともに、「4<検量線の傾き≦5」である場合には30℃、「検量線の傾き≦4」である場合には35℃を設定温度として決定する等、検量線の傾きが小さいほど、測定時における設定温度が大きくなるように、検量線の傾きに応じて段階的に設定温度を決定するのが好ましい。
また、CPU710は、校正プログラム732を実行することによって、取得手段により取得された応答データに基づいて、酵素センサ100による検出対象物質の検出時における電極150の温度を決定する決定手段、決定手段により決定された温度となるよう、センサ温度調整装置410に電極150の温度を調整させる調整制御手段、取得手段により取得された応答データに基づいて、酵素センサ100による検出対象物質の検出時における電解液の温度を決定する決定手段及び決定手段により決定された温度となるよう、電解液温度調整装置420に電解液の温度を調整させる調整制御手段として機能する。
ここで、液相室R2に導入された電解液を液相室R2から排出させて、再び液相室R2に導入させる循環手段は、電解液タンク310と、送液ポンプ340と、循環洗浄プログラム733を実行したCPU710と、などにより構成される。
また、酵素センサ100が「固定型酵素センサ」又は「遊離型酵素センサ」である場合、CPU710は、例えば、バルブ切替装置600に制御信号を入力して、標準ガス提供装置530中の標準ガスが酵素センサ100に導入されるよう第3バルブ630を切り替えさせ、標準ガス提供装置530に制御信号を入力して、基質濃度が異なる標準ガスを順次生成させて導入させ、データ処理装置220に制御信号を入力して、検量線を作成させる。
この作成された検量線は、例えば、RAM172や記憶部173などに記憶されるようになっており、例えば、酵素センサ100により検出された検出対象物質の濃度を求める際などに使用される。
なお、洗浄の後に循環洗浄を行う場合は、例えば、電解液の流路(チューブや酵素センサ100内)内の電解液が全て入れ替わるまで洗浄を行い、その後、循環洗浄を行うこととする。
図3は、酵素センサ100の平面斜視図であり、図4は、図3のIV−IV線における断面を模式的に示す図であり、図5は、図3のV−V線における断面を模式的に示す図である。図6(a)は、ガス透過膜130が取り付けられた状態の上側支持体110の底面図であり、図6(b)は、電極150が形成された状態の下側支持体120の平面図である。
ここで、酵素センサ100における気相室R1側を上側、液相室R2側を下側とし、パッド160が配置された側を前側、それに対向する側を後側とし、上下方向と前後方向の双方に直交する方向を左右方向とする。
酵素センサ100において、検出対象物質と選択的に反応するレセプタとしての酵素は、液相室R2に含有され、酵素センサ100は、ガス透過膜130を透過して気相室R1から液相室R2に移行してきた検出対象物質を、電気化学的計測法によって検出するようになっている。
上側支持体110は、例えば、平面視略D字形状となるように、すなわち、側面の一部が上下方向に沿って切り欠かれた平面部111となるように形成されている。そのため、下側支持体120の上面の一部は、例えば、外部に露出した露出部121となっている。
上側支持体110及び下側支持体120を構成する材料としては、電解液や試料などに対する耐腐食性が高い材料(例えば、疎水性の絶縁性材料、表面を疎水処理した絶縁性材料など)が好ましく、具体的には、例えば、セラミックス、ガラス、プラスチック、テフロン(登録商標)、ピーク材などを用いることができる。
ここで、特に、上側支持体110の表面や、ガス導入口114、ガス導入路115、ガス排出口116、ガス排出路117、凹部112(気相室R1、液相室R2)などは、電解液や試料などに対する耐腐食性が高い材料(例えば、疎水性の絶縁性材料、表面を疎水処理した絶縁性材料など)で形成されるのが好ましい。
凹部112は、上側支持体110にガス透過膜130が取り付けられると、上下方向に分離されるようになっており、分離された状態における、凹部112の上側の領域が気相室R1となり、下側の領域が液相室R2となる。したがって、ガス透過膜130と電極150(作用電極151)との間の距離は、隔壁118の高さ(上下方向の長さ)によって規定される。
ここで、特に、下側支持体120の表面や、電解液導入口123、電解液導入路124、電解液排出口125、電解液排出路126、液相室R2(液相室R2の気相室R1と対向する側の面を構成する領域)などは、電解液や試料などに対する耐腐食性が高い材料(例えば、疎水性の絶縁性材料、表面を疎水処理した絶縁性材料など)で形成されるのが好ましい。
また、電解液排出路126は、例えば、作用電極151と対電極153との間の位置から下側支持体120の上下方向略中央の位置までの領域に上下方向に沿って形成された第1電解液排出路126aと、第1電解液排出路126aの右側に左右方向に沿って形成された第2電解液排出路126bと、から成る。
気相室R1に導入された検出対象物質(検出対象ガス)は、ガス透過膜130を透過して液相室R2に移行し、そして、液相室R2に含有された酵素と反応するようになっている。したがって、ガス透過膜130は、少なくとも検出対象物質が透過するガス透過膜であれば任意であり、検出対象物質の種類によって適宜変更可能である。
Oリング140を構成する材料としては、電解液や試料などに対する耐腐食性が高い材料が好ましい。
具体的には、電極150と、パッド160と、電極150とパッド160とを接続する配線161とは、例えば、下側支持体120が有する溝部122内に形成されており、電極150及び配線161は、電極150及び配線161の厚みが、溝部122の深さと略同一となるよう加工されている。これにより、面倒な制御をしなくても、電極150及び配線161の厚み(高さ)を均一で精密に規定できるため、ガス透過膜130と電極150との間の距離をムラなく一定に保つことができる。
スペーサ170の材質としては、スペーサ170によってガス透過膜130と電極150との間の距離を一定に保つことができ、かつ、基質(検出対象物質)透過性の良好なものであれば任意であり、具体的には、例えば、電極150に対して略垂直方向に貫通する貫通孔を複数有する陽極酸化膜等の多孔体、親水性テフロン膜等の親水性膜、ナイロンメッシュなどのメッシュ体などが挙げられる。また、スペーサ170は、例えば、酵素センサ100が「担体固定型酵素センサ」である場合、酵素が固定化された担体であっても良いし、酵素が固定化された担体と当該担体を間に挟んだ親水性膜となどから成るものであっても良い。
具体的には、酵素は、例えば、酸化還元酵素や、加水分解酵素、転移酵素、異性化酵素などの酵素(酵素タンパク質)である。
また、酵素は、例えば、生来の酵素分子であっても、活性部位を含む酵素の断片であっても良い。当該酵素分子又は当該活性部位を含む酵素の断片は、例えば、動植物や微生物から抽出したものであっても、所望によりそれを切断したものであっても、遺伝子工学的に又は化学的に合成したものであっても良い。
具体的には、液相室R2に含有される酵素は、例えば、1種類の酵素であっても、分子量及び/又はサイズ(径)が略同一の2種類以上の酵素であっても、分子量及び/又はサイズが異なる2種類以上の酵素であっても良い。また、液相室R2に含有される酵素が2種類以上である場合、酵素は、例えば、同種の検出対象物質(基質)に作用する2種類以上の酵素であっても、異種の検出対象物質に作用する2種類以上の酵素であっても、同種及び/又は異種の検出対象物質に作用する2種類以上の酵素であっても良い。
ここで、特に、液相室R2に含有された酵素が2種類以上であって、その2種類以上の酵素が異種の検出対象物質に作用する場合、酵素センサ100は、その異種の検出対象物質(2種類以上の検出対象物質)を同時に検出することができる。
例えば、補酵素及び電子伝達体が固定されていない「固定型酵素センサ」の場合は、酵素を含有しない電解液又は酵素と補酵素を含有しない電解液(電子伝達体が含有されていても良い。)を液相室R2に導入することとする。
また、例えば、補酵素が固定され、電子伝達体が固定されていない「固定型酵素センサ」の場合は、酵素を含有しない電解液又は酵素と補酵素を含有しない電解液(電子伝達体が含有されていても良い。)を液相室R2に導入することとする。
また、例えば、補酵素及び電子伝達体が固定されている、「固定型酵素センサ」の場合は、酵素を含有しない電解液又は酵素と補酵素を含有しない電解液を液相室R2に導入することとする。
すなわち、例えば、「遊離型酵素センサ」の場合は、酵素を含有する電解液(酵素とともに、補酵素や電子伝達体も含有されていても良い。)を液相室R2に導入することとする。
なお、「遊離型酵素センサ」の場合、例えば、補酵素や電子伝達体を電極150や液相室R2内に配置された所定の担体などに固定することによって、補酵素や電子伝達体を液相室R2に含有させていても良い。
また、電子伝達体としては、例えば、フェリシアン化カリウム、フェロセン、フェロセン誘導体、ベンゾキノン、キノン誘導体、オスミウム錯体等が用いられる。
ガス検出システム1000による、酵素センサ100を用いた測定(検出対象物質の検出)に関する処理の一例を、図7のフローチャートを参照して説明する。
具体的には、例えば、ユーザが、ガス検出システム1000が備える操作部(図示省略)を操作して、次の測定を行うと指示した場合に、或いは、予め設定した測定回数又は側手時間に従って、CPU710は、次の測定を行うと判断する。
酵素センサ100を作成して、酵素センサ100及びガス検出システム1000の評価を行った。
本実施例では、酵素センサ100として、「担体固定型酵素センサ」及び「遊離型酵素センサ」を作成した。
本実施例では、ホルムアルデヒドガスを検出するための酵素センサ100を作成した。酵素としては、補酵素(NAD+)依存型酵素であるホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ホルムアルデヒド脱水素酵素)を用いた。
まず、絶縁体であるピーク材を使用して、旋盤やフライス盤などを用いて、上側支持体110と下側支持体120とを作成した。
溝部122の深さを10μm、液相室R2の容積を10μLとした。また、ガス透過膜130と電極150との間の距離が30μmとなるよう隔壁118の高さを調整した。
具体的には、溝部122にスクリーン印刷によってカーボンを塗布し、ホットプレートを用いて120℃で2時間ポストベークした後、一晩、暗室にて乾燥させ、電極150の厚みが溝部122の深さと略同一となるよう、研磨機にて電極150の表面を研磨した。その後、参照電極152のパターン上に銀/塩化銀インクを塗布して120℃で焼結し、銀/塩化銀電極である参照電極152を作成した。
次いで、Oリング140を用いて上側支持体110にガス透過膜130を固定するとともに、作成したスペーサ170を電極150上に配置した。
次いで、下側支持体120の上に上側支持体110を配置して、ネジ180を用いて上側支持体110を下側支持体120に固定し、「担体固定型酵素センサ」を作成した。
具体的には、1mMのNAD+、1mMのキノンを含むリン酸緩衝液(pH7.41)を作成することにより、「担体固定型酵素センサ」用の電解液を作成した。そして、「担体固定型酵素センサ」を使用する際に、この電解液を電解液タンク310中に入れて、酵素センサ100及びガス検出システム1000の評価を行った。
「担体固定型酵素センサ」の場合と同様にして、上側支持体110と下側支持体120とを作成し、下側支持体120の上面に、作用電極151、参照電極152及び対電極153の三極構造のパターンを作成した。
次いで、下側支持体120の上に上側支持体110を配置して、ネジ180を用いて上側支持体110を下側支持体120に固定し、「遊離型酵素センサ」を作成した。
具体的には、1mMのNAD+、1mMのキノンを含むリン酸緩衝液(pH7.41)を作成し、これに、ホルムアルデヒド脱水素酵素20mgを溶解させることによって、「遊離型酵素センサ」用の電解液を作成した。そして、「遊離型酵素センサ」を使用する際に、この電解液を電解液タンク310中に入れて、酵素センサ100及びガス検出システム1000の評価を行った。
本実施例では、酵素センサ100の校正は行わず、酵素センサ100の温度と、電解液タンク310中の電解液の温度と、を30℃にして実験を行った。
また、ガスの導入速度を300mL/min、電解液の導入速度を0.1mL/minとした。
作成した「遊離型酵素センサ」を用いて、複数種類のガス透過膜130の中から好ましいガス透過膜130を選択するための実験を行った。
具体的には、まず、ガス透過膜130として、ネオフロン(ダイキン工業製フッ素樹脂膜)を採用した「遊離型酵素センサ」と、モノトラン(ナック製ナノ多孔質膜)を採用した「遊離型酵素センサ」と、ザイテックス膜(サンゴバン製多孔質PTFE膜)を採用した「遊離型酵素センサ」と、ゴアテックス膜(ゴアテック製多孔質テフロン膜)を採用した「遊離型酵素センサ」と、を用意した。
次いで、各「遊離型酵素センサ」のそれぞれについて、測定準備を行った後、基質濃度(ホルムアルデヒド濃度)が100ppbの標準ガスを生成して導入し、応答電流を測定した後、洗浄及び循環洗浄を行った。その結果を図8に示す。
図8の結果から、ガス透過膜130として、開孔率が高くガス透過性に優れた多孔質材料であるゴアテックス膜を採用した「遊離型酵素センサ」が最も感度が高いことが分かった。
作成した「遊離型酵素センサ」を用いて、検量線を作成するための実験を行った。
具体的には、ゴアテックス膜を採用した「遊離型酵素センサ」について、測定準備を行った後、ホルムアルデヒド濃度が異なる標準ガスを順次生成して導入し、応答電流を測定することにより検量線を作成した後、洗浄及び循環洗浄を行った。標準ガスのホルムアルデヒド濃度は、1bbp、10ppb、100ppb、400ppb、1200ppbとした。その測定結果を図9に示す。
また、図9(b)に、図9(a)の結果を用いて作成した検量線を示す。
図9(a)の結果から、作成した「遊離型酵素センサ」は、感度が高く、サブppbレベルまで十分に測定可能であることが分かった。
また、図9(b)の結果から、作成した「遊離型酵素センサ」は、1〜400ppbの濃度領域で良好な線形性を有することが分かった。
なお、5種類のホルムアルデヒド濃度で検量線を作成したが、実用上は、3種類のホルムアルデヒド濃度で検量線を作成すれば十分である。
作成した「遊離型酵素センサ」を用いて、外部大気中のホルムアルデヒドを検出するための実験を行った。
具体的には、ゴアテックス膜を採用した「遊離型酵素センサ」について、測定準備、検量線の作成、洗浄及び循環洗浄を行った後、外部大気を導入して応答電流を測定し、その後、洗浄及び循環洗浄を行った。その結果を図10に示す。
図10の結果から、作成した「遊離型酵素センサ」を用いて、外部大気中のホルムアルデヒドを検出できることが分かった。
また、図10の結果から、本実施例で使用した外部大気中のホルムアルデヒドの濃度は、70ppbであることが分かった。
作成した「遊離型酵素センサ」を用いて、送液ポンプ340で電解液を送液して酵素センサ100を洗浄(洗浄及び循環洗浄)することによる効果を実証するための実験を行った。
具体的には、ゴアテックス膜を採用した「遊離型酵素センサ」について、測定準備を行った後、ホルムアルデヒド濃度が160ppbの標準ガスを生成して導入し、その後、洗浄及び循環洗浄を行った。そして、このガス導入−洗浄(洗浄及び循環洗浄)の処理を繰り返し行い、その間の応答電流を測定した。その結果を図11に示す。
図11の結果から、ガス導入後(測定後)に洗浄を行った場合、洗浄を開始してから約600秒程度で酵素センサ100の応答出力が安定し、次の測定が可能となることが分かった。
また、酵素センサ100を洗浄すると、酵素センサ100を洗浄しない場合と比較して、酵素センサ100の応答電流が高速で平衡状態へと回復することが分かった。これにより、酵素センサ100を洗浄することで、高速な連続測定が可能となることが分かった。
作成した「遊離型酵素センサ」を用いて、繰り返し再現性を評価するための実験を行った。
具体的には、ゴアテックス膜を採用した「遊離型酵素センサ」について、測定準備を行った後、ホルムアルデヒド濃度が40ppbの標準ガスを生成して導入し、応答電流を測定した後、洗浄及び循環洗浄を行った。そして、この測定−洗浄(洗浄及び循環洗浄)の処理を繰り返し行った。その結果を図12に示す。
図12の結果から、20回の測定でばらつきが5%以内に収まり、作成した「遊離型酵素センサ」を用いると、再現性の良い測定が可能となることが分かった。
作成した「遊離型酵素センサ」を用いて、送液ポンプ340で電解液を循環させて酵素センサ100を洗浄(洗浄及び循環洗浄)することによる効果を実証するための実験を行った。
具体的には、ゴアテックス膜を採用した「遊離型酵素センサ」について、測定準備を行い、洗浄及び循環洗浄を行った後、ホルムアルデヒド濃度が100ppbの標準ガスを生成して導入し、応答電流を測定した。そして、この洗浄(洗浄及び循環洗浄)−測定の処理を繰り返し行った。なお、洗浄(洗浄及び循環洗浄)−測定の処理を繰り返し行っている間、電解液タンク310中の電解液は交換しないこととした。また、電解液保存タンク中の電解液の温度を30℃となるよう保持した。その結果を図13に示す。
図13の結果から、酵素センサ100を洗浄しない場合は、約60時間で相対応答が10%となるのに対し、酵素センサ100を洗浄した場合は、300時間以上経っても相対応答は50%程度であることが分かった。これにより、酵素センサ100を洗浄することで、酵素センサ100の寿命が延びることが分かった。
なお、本実験では、電解液保存タンク中の電解液の温度を30℃となるよう保持したが、電解液保存タンク中の電解液の温度を、例えば、電解液に含有される酵素の失活を防ぐことができる温度(例えば、4℃)に保持すると、さらに、酵素センサ100の寿命が延びると考えられる。
作成した「遊離型酵素センサ」を用いて、酵素センサ100の選択性を実証するための実験を行った。
具体的には、まず、比較用ガスとして、アセトアルデヒドガス、エタノールガス、メタノールガス、ベンゼンガス、アセトンガスを用意した。
次いで、ゴアテックス膜を採用した「遊離型酵素センサ」について、測定準備を行った後、ホルムアルデヒド濃度が100ppbの標準ガスを生成して導入し、応答電流を測定した後、洗浄及び循環洗浄を行った。そして、この測定準備−測定−洗浄(洗浄及び循環洗浄)の処理を、標準ガスに代えて各比較用ガスそれぞれを用いることにより行った。なお、比較用ガスの濃度は、標準ガスの濃度(100ppb)と同一にした。その結果を図14に示す。
図14の結果から、ホルムアルデヒドガス以外のガスを導入しても、ほとんど応答が見られず、作成した「遊離型酵素センサ」は高い選択性を有することが分かった。これは、作成した「遊離型酵素センサ」の液相室R2に含有される酵素の基質特異性によるものである。
酵素センサ100を作成して、酵素センサ100及びガス検出システム1000の評価を行った。
本実施例では、酵素センサ100として、「電極固定型酵素センサ」を作成した。
本実施例では、ホルムアルデヒドガスを検出するための酵素センサ100を作成した。酵素としては、補酵素(NAD+)依存型酵素であるホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ホルムアルデヒド脱水素酵素)を用いた。
次いで、Oリング140を用いて上側支持体110にガス透過膜130(ゴアテック製多孔質テフロン膜)を固定するとともに、ガス透過膜130と電極150との間の距離(30μm)と略同一の厚みを有するスペーサ170(厚み:30μm、孔径0.1μm、ミリポア製親水性テフロン膜)を電極150上に配置した。
次いで、下側支持体120の上に上側支持体110を配置して、ネジ180を用いて上側支持体110を下側支持体120に固定し、「電極固定型酵素センサ」を作成した。
具体的には、1mMのNAD+、1mMのキノンを含むリン酸緩衝液(pH7.41)を作成することにより、「電極固定型酵素センサ」用の電解液を作成した。そして、この電解液を電解液タンク310中に入れて、酵素センサ100及びガス検出システム1000の評価を行った。
本実施例では、酵素センサ100の校正に関する実験を行った。
作成した「電極固定型酵素センサ」を用いて、電極150に固定したホルムアルデヒド脱水素酵素の活性の温度依存性を観測するための実験を行った。
具体的には、「電極固定型酵素センサ」について、酵素センサ100の温度と、電解液タンク310中の電解液の温度と、を一定温度に調整して測定準備を行った後、基質濃度(ホルムアルデヒド濃度)が6840μMの標準液を生成して導入し、応答電流を測定した後、洗浄及び循環洗浄を行った。そして、この測定準備−測定−洗浄(洗浄及び循環洗浄)の処理を、各一定温度(23℃、30℃、37℃、40℃、44℃、52℃)それぞれに対して行った。標準液として、1mMのNAD+、1mMのキノンを含むリン酸緩衝液(pH7.41)にホルムアルデヒドが希釈されている溶液を使用した。気液平衡を仮定すると、標準液のホルムアルデヒド濃度6840μMは、標準ガスのホルムアルデヒド濃度100ppbに相当する。標準液の導入速度は0.1mL/minとした。その結果を図15に示す。
図15の結果から、作成した「電極固定型酵素センサ」の電極150に固定したホルムアルデヒド脱水素酵素の至適温度は40℃付近であることが分かった。
なお、至適温度よりも高温側では酵素活性が急激に低下するため、初期設定温度や測定時における設定温度としては、至適温度よりも低温側の温度を採用することとする。
作成した「電極固定型酵素センサ」を用いて、検量線を作成するための実験を行った。
具体的には、「電極固定型酵素センサ」について、酵素センサ100の温度と、電解液タンク310中の電解液の温度と、を初期設定温度(30℃)に調整して測定準備を行った後、ホルムアルデヒド濃度が異なる標準液を順次生成して導入し、応答電流を測定することによって検量線を作成した後、洗浄及び循環洗浄を行った。標準液として、1mMのNAD+、1mMのキノンを含むリン酸緩衝液(pH7.41)にホルムアルデヒドが希釈されている溶液を使用した。標準液のホルムアルデヒド濃度は、68.4μM、684μM、6840μMとし、標準液の導入速度は0.1mL/minとした。気液平衡を仮定すると、標準液のホルムアルデヒド濃度68.4μMは、標準ガスのホルムアルデヒド濃度1ppbに相当し、標準液のホルムアルデヒド濃度684μMは、標準ガスのホルムアルデヒド濃度10ppbに相当し、標準液のホルムアルデヒド濃度6840μMは、標準ガスのホルムアルデヒド濃度100ppbに相当する。その結果を図16に示す。
また、図16(b)に、図16(a)の結果を用いて作成した検量線を示す。
図16(a)の結果から、標準ガスを用いる場合と比較して、標準液を用いると、ガスの電解液への溶解時間や拡散時間を省略できるため、酵素センサ100の応答電流が高速で平衡状態に達することが分かった。これにより、標準ガスを用いて検量線を作成することで、より高速な酵素センサ100の校正が可能となることが分かった。
また、図16(b)の結果から、作成した「電極固定型酵素センサ」は、1〜100ppbの濃度領域で良好な線形性を有することが分かった。
作成した「電極固定型酵素センサ」を用いて、酵素センサ100を温度校正することによる効果を実証するための実験を行った。
具体的には、「電極固定型酵素センサ」について、酵素センサ100の温度と、電解液タンク310中の電解液の温度と、を初期設定温度(30℃)に調整して測定準備を行った後、ホルムアルデヒド濃度が異なる標準ガスを順次生成して導入し、応答電流を測定することによって検量線を作成した後、洗浄及び循環洗浄を行った。そして、作成した検量線の傾きを求め、これを調整用閾値とした。
次いで、2日目以降、検量線の作成に使用した「電極固定型酵素センサ」と同一の「電極固定型酵素センサ」について、酵素センサ100の温度と、電解液タンク310中の電解液の温度と、を初期設定温度(30℃)に調整して測定準備を行った後、酵素センサ100の校正、洗浄及び循環洗浄を行い、ホルムアルデヒド濃度が100ppbの標準ガスを導入して応答電流を測定し、その後、洗浄及び循環洗浄を行った。標準ガスの導入速度は300mL/minとした。
図17の結果から、酵素センサ100を校正しない場合は、10日目で相対応答が60%未満となるのに対し、酵素センサ100を校正した場合は、10日以上経っても相対応答はほぼ100%であることが分かった。これにより、酵素センサ100を校正することで、酵素センサ100の応答出力の安定化を実現できることが分かった。
なお、本実験では、電解液保存タンク中の電解液の温度を30℃となるよう保持したが、電解液保存タンク中の電解液の温度を、例えば、電解液に含有される酵素の失活を防ぐことができる温度(例えば、4℃)に保持すると、さらに、酵素センサ100の寿命が延び、校正の頻度を抑えることができるものと考えられる。
すなわち、酵素センサ100は、ガス透過膜130を介して気相室R1と液相室R2とを配置しただけの簡易な構成となっている。また、酵素センサ100を用いて気体試料中の検出対象物質を検出する際、その気体試料中の検出対象物質を水中に溶解させる等の処理を行う必要がなく、気体試料をそのまま気相室R1に導入すればよいため、簡便に気体試料中の検出対象物質を検出することができる。
したがって、スペーサ170によって、電極150と透過膜130との間の距離を一定に保つことができるため、検出対象物質の検出を安定して行うことができる。
したがって、電極材料を微細調整せずに容易に電極厚みを規定することができるため、より確実に、電極150と透過膜130との間の距離を一定に保つことができることとなって、検出対象物質の検出を安定して行うことができる。
したがって、液相室R2内の電解液の蒸発を防ぐことができるため、酵素センサ100の寿命を延ばすことができる。また、酵素センサ100の応答電流が高速で平衡状態へと回復するため、高速な測定(連続測定)が可能となる。
すなわち、安定したセンサ出力を得ることができるよう、電極150(酵素センサ100)の温度を調整して、酵素センサ100を校正することができる。
すなわち、安定したセンサ出力を得ることができるよう、電解液の温度を調整して、酵素センサ100を校正することができる。
次に、第2の実施の形態における酵素センサ100A及び酵素センサ100Aを備えるガス検出システム1000Aについて説明する。
なお、第2の実施の形態における酵素センサ100Aは、電極150が着脱自在である点が第1の実施の形態の酵素センサ100と異なる。また、第2の実施の形態におけるガス検出システム1000Aは、酵素センサ100Aの校正の仕方が第1の実施の形態のガス検出システム1000Aと異なる。したがって、異なる箇所のみについて説明し、その他の共通する部分は同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図18は、ガス検出システム1000Aの構成を示す図であり、図19は、ガス検出システム1000Aの機能的構成を示す図である。
酵素センサ100Aは、酵素が電極150に固定された固定化酵素の状態で液相室R2に含有される「電極固定型酵素センサ」であっても良いし、酵素が遊離酵素の状態で液相室R2に含有される「遊離型酵素センサ」であっても良い。
具体的には、制御装置700Aは、例えば、図19に示すように、CPU710と、RAM720と、記憶部730Aと、などを備えている。
また、酵素センサ100Aが「電極固定型酵素センサ」又は「遊離型酵素センサ」である場合、CPU710は、例えば、バルブ切替装置600に制御信号を入力して、標準ガス提供装置530中の標準ガスが酵素センサ100Aに導入されるよう第3バルブ630を切り替えさせ、標準ガス提供装置530に制御信号を入力して、基質濃度が予め設定された濃度の標準ガスを生成させて導入させ、データ処理装置220に制御信号を入力して、酵素センサ100Aの応答電流の時間変化に関するデータ(応答データ)を作成させる。
一方、酵素センサ100Aが「遊離型酵素センサ」である場合、CPU710は、例えば、作成されたデータから応答電流が予め定めた値を上回るまでに要する所要時間を求め、当該所要時間に基づいて、電解液タンク310中の電解液を交換すべきか否かを判断する。より具体的には、当該所要時間が所定の交換用閾値以上である場合、電解液タンク310中の電解液に含有される酵素が劣化したと判断し、電解液を交換すべきと判断する。
また、CPU710は、校正プログラム732Aを実行することによって、取得手段により取得された応答データに基づいて、電極基板部190を交換すべきか否かを判断する判断手段及び取得手段により取得された応答データに基づいて、電解液を交換すべきか否かを判断する判断手段として機能する。
図20は、酵素センサ100Aの平面斜視図であり、図21は、図20のXXI−XXI線における断面を模式的に示す図であり、図22は、図20のXXII−XXII線における断面を模式的に示す図である。図23(a)は、ガス透過膜130が取り付けられた状態の上側支持体110Aの底面図であり、図23(b)は、電極基板部190が取り付けられた状態の下側支持体120Aの平面図である。
酵素センサ100Aにおいて、検出対象物質と選択的に反応するレセプタとしての酵素は、液相室R2に含有され、酵素センサ100Aは、ガス透過膜130を透過して気相室R1から液相室R2に移行してきた検出対象物質を、電気化学的計測法によって検出するようになっている。
上側支持体110Aは、例えば、上方向に膨出したドーム型となるように形成されている。
ここで、特に、上側支持体110Aの表面や、ガス導入口114、ガス導入路115、ガス排出口116、ガス排出路117、電解液導入口123、電解液導入路124、電解液排出口125、電解液排出路126、凹部112(気相室R1、液相室R2)などは、電解液や試料などに対する耐腐食性が高い材料(例えば、疎水性の絶縁性材料、表面を疎水処理した絶縁性材料など)で形成されるのが好ましい。
第1凹部112aは、上側支持体110Aにガス透過膜130が取り付けられると、上下方向に分離されるようになっており、分離された状態における、第1凹部112aの上側の領域が気相室R1となり、第1凹部112aの下側の領域及び第2凹部112bが液相室R2となる。したがって、ガス透過膜130と電極150(作用電極151)との間の距離は、隔壁118の高さ(上下方向の長さ)によって規定される。
なお、ガス透過膜130に対するガス導入路115の角度は、0度以上90度以下であれば任意であるが、ガス透過膜130にかかる圧力を高くして、検出対象物質を透過しやすくするという観点から、45度以上が好ましい。
また、電解液排出路126は、例えば、第1凹部112aの前方における第2凹部112bの上面から上側支持体110Aの上下方向略中央の位置までの領域に、上下方向に沿って形成された第1電解液排出路126aと、第1電解液排出路126aの前側の位置に、前方向に上側に向かって形成された第2電解液導入路124bと、から成る。
ここで、特に、下側支持体120Aの表面や取付部127などは、電解液や試料などに対する耐腐食性が高い材料(例えば、疎水性の絶縁性材料、表面を疎水処理した絶縁性材料など)で形成されるのが好ましい。
また、第2Oリング142は、例えば、液相室R1の水平方向の大きさ(径)を規定するためのものであるとともに、液相室R2を密閉して液相室R2に導入された電解液が漏れるのを防ぐためのものであり、Oリング収容部113に収容されるようになっている。したがって、第2Oリング142としては、例えば、Oリング収容部113の高さ(上下方向の長さ)と同等又はそれ以上の厚みを有するものが好ましい。
第1Oリング141及び第2Oリング142を構成する材料としては、電解液や試料などに対する耐腐食性が高い材料が好ましい。
電極基板部190は、例えば、酵素センサ100Aの前方から取付部127に挿入することによって、取付部127に取り付けられるようになっている。
ガス検出システム1000Aによる、酵素センサ100Aを用いた測定(検出対象物質の検出)に関する処理の一例を説明する。
第2の実施の形態のガス検出システム1000Aによる測定処理は、第1の実施の形態のガス検出システム1000による測定処理(図7)の流れと略同一であるため、異なる箇所のみについて説明し、その他の共通する部分の詳細な説明は省略する。
ステップS2では、電極基板部190又は電解液を交換すべきと判断した場合、報知ランプ240を点滅させて、ユーザに電極基板部190又は電解液を交換させる。
本実施例では、酵素センサ100Aとして、「電極固定型酵素センサ」を作成した。
本実施例では、ホルムアルデヒドガスを検出するための酵素センサ100Aを作成した。酵素としては、補酵素(NAD+)依存型酵素であるホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ホルムアルデヒド脱水素酵素)を用いた。
具体的には、基板191にスクリーン印刷によってカーボンを塗布し、ホットプレートを用いて120℃で15分間ポストベークした。さらに、スクリーン印刷により、分析窓(作用電極151、参照電極152及び対電極153が配置された平面視略円形状の領域)及びパッド160以外の部分に紫外線硬化型絶縁皮膜を塗布し、紫外線露光装置を用いて、紫外線硬化型絶縁皮膜を硬化した。ここで、分析窓は、電極基板部190を取付部127に取り付けた際に、液相室R2に対応する領域に形成される。
その後、一晩、暗室にて乾燥させ、参照電極152のパターン上に銀/塩化銀インクを塗布して120℃で焼結し、銀/塩化銀電極である参照電極152を作成した。
取付部127の深さを電極基板部190の厚み(0.5mm)と略同一となるようにした。また、ガス透過膜130と電極150との間の距離が30μmとなるよう隔壁118の高さを調整した。
次いで、下側支持体120Aの上に上側支持体110Aを配置して、ネジ180を用いて上側支持体110Aを下側支持体120Aに固定し、上記作成された電極基板部190を取付部127に取り付けて、「電極固定型酵素センサ」を作成した。
具体的には、1mMのNAD+、1mMのキノンを含むリン酸緩衝液(pH7.41)を作成することにより、「電極固定型酵素センサ」用の電解液を作成した。そして、この電解液を電解液タンク310中に入れて、酵素センサ100A及びガス検出システム1000Aの評価を行った。
本実施例では、電極基板部190の取り外しに関する実験を、酵素センサ100Aの温度と、電解液タンク310中の電解液の温度と、を30℃にして行った。
作成した「電極固定型酵素センサ」を用いて、検量線を作成するための実験を行った。
具体的には、「電極固定型酵素センサ」について、測定準備を行った後、ホルムアルデヒド濃度が異なる標準液を順次生成して導入し、応答電流を測定することによって検量線を作成した後、洗浄及び循環洗浄を行った。標準液として、1mMのNAD+、1mMのキノンを含むリン酸緩衝液(pH7.41)にホルムアルデヒドが希釈されている溶液を使用した。標準液のホルムアルデヒド濃度は、68.4μM、684μM、6840μMとし、標準液の導入速度は0.1mL/minとした。気液平衡を仮定すると、標準液のホルムアルデヒド濃度68.4μMは、標準ガスのホルムアルデヒド濃度1ppbに相当し、標準液のホルムアルデヒド濃度684μMは、標準ガスのホルムアルデヒド濃度10ppbに相当し、標準液のホルムアルデヒド濃度6840μMは、標準ガスのホルムアルデヒド濃度100ppbに相当する。その結果を図24に示す。
また、図24(b)に、図24(a)の結果を用いて作成した検量線を示す。
図24(a)の結果から、本実施例で作成した「電極固定型酵素センサ」は、電極150が取り外し可能であるが、第1の実施の形態の実施例2で作成した「電極固定型酵素センサ」(電極150が取り外し可能でない「電極固定型酵素センサ」)とガス透過膜130と電極150との間の距離が同一(30μm)であるため、感度に大きな違いはなかった。
また、図24(b)の結果から、本実施例で作成した「電極固定型酵素センサ」は、1〜100ppbの濃度領域で良好な線形性を有することが分かった。
作成した「電極固定型酵素センサ」を用いて、電極150に固定した酵素の劣化を観測するための実験を行った。
具体的には、「電極固定型酵素センサ」について、測定準備を行った後、ホルムアルデヒド濃度が6840μMの標準液を生成して導入し、応答電流を測定した後、洗浄及び循環洗浄を行った。そして、電極基板部190を交換せずに室温で保存し、10日後に再度この測定準備−測定−洗浄(洗浄及び循環洗浄)の処理を行った。標準液の導入速度は0.1mL/minとした。その結果を図25に示す。
図25の結果から、10日間、室温で保存すると、電極150に固定した酵素が劣化して、酵素センサ100Aの応答出力が低下することが分かった。
作成した「電極固定型酵素センサ」を用いて、酵素センサ100Aを校正することによる効果、すなわち、電極150に固定された酵素が劣化していると判断した場合に、電極基板部190を交換することによる効果を実証するための実験を行った。
具体的には、「電極固定型酵素センサ」について、測定準備を行った後、酵素センサ100Aの校正、洗浄及び循環洗浄を行い、ホルムアルデヒド濃度が6840μMの標準液を生成して導入し、応答電流を測定した後、洗浄及び循環洗浄を行った。そして、この測定準備−校正−洗浄(洗浄及び循環洗浄)−測定−洗浄(洗浄及び循環洗浄)の処理を毎日行った。標準液の導入速度は0.1mL/minとした。
図26の結果から、20回の測定でばらつきが5%以内に収まり、電極基板部190の交換を行うと、再現性の良い測定が可能となることが分かった。
したがって、電極基板部190を交換することができるため、酵素センサ100Aが「電極固定型酵素センサ」である場合に特に有効であり、安価な酵素センサ100Aを提供することができる。
すなわち、酵素センサ100Aが「電極固定型酵素センサ」である場合に、安定したセンサ出力を得ることができるよう、電極基板部190を交換させて、酵素センサ100Aを校正することができる。
すなわち、酵素センサ100Aが「遊離型酵素センサ」である場合に、安定したセンサ出力を得ることができるよう、電解液を交換させて、酵素センサ100Aを校正することができる。
また、銀/塩化銀電極である参照電極152は、スクリーン印刷法、蒸着法、スパッタリング法等によって一旦銀電極を形成させた後、一定電流を電解する方法、塩化第2銀水溶液中に浸漬する方法、スクリーン印刷法によって塩化銀を塗布・積層させる方法等によって形成されたものなどであれば任意である。
また、電極150として、作用電極151、参照電極152及び対電極153の三極構造としたが、電極150は、参照電極152を設けない二極構造(作用電極151及び対電極153の二極構造)であっても良い。
また、第2の実施の形態において、応答データとして酵素センサ100Aからの応答電流の時間変化に関するデータを用い、酵素センサ100Aの校正に用いたが、応答データは、検量線であっても良い。この場合、検量線の傾きに基づいて、交換すべきか否かを判断することになる。
第2の実施の形態において、ガスの流路(ガス導入路115及びガス排出路116)に略直交するように、電解液の流路(電解液導入路124及び電解液排出路126)を形成したが、これに限ることはなく、例えば、第1の実施の形態のように、ガスの流路に略平行するように、電解液の流路を形成しても良い。
120 下側支持体(支持体)
122 溝部
127 取付部
130 ガス透過膜
150 電極
170 スペーサ
190 電極部
210 計測回路(取得手段)
220 データ処理装置(取得手段)
310 電解液タンク(循環手段)
340 送液ポンプ(循環手段)
410 センサ温度調整装置(電極温度調整手段)
420 電解液温度調整装置(電解液温度調整手段)
710 CPU(取得手段、決定手段、調整制御手段、循環手段、判断手段)
732 校正プログラム(取得手段、決定手段、調整制御手段)
732A 校正プログラム(取得手段、判断手段)
733 循環洗浄プログラム(循環手段)
1000,1000A ガス検出システム
R1 気相室
R2 液相室
Claims (7)
- 検出対象物質を含有するガスが導入される気相室と、前記気相室と隣接するように配置され、所定の電解液が導入される液相室と、前記気相室と前記液相室とを隔てるように配置され、少なくとも前記検出対象物質が透過するガス透過膜と、前記液相室にガス透過膜と対向して配置された電極と、前記液相室に含有され、前記検出対象物質と選択的に反応するレセプタと、を備え、前記ガス透過膜を透過して前記気相室から前記液相室に移行してきた前記検出対象物質を検出するバイオセンサと、
前記電極の温度を調整する電極温度調整手段と、
前記バイオセンサによる前記検出対象物質の検出前に、当該バイオセンサの応答出力に関する応答データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された応答データに基づいて、前記バイオセンサによる前記検出対象物質の検出時における前記電極の温度を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された温度となるよう、前記電極温度調整手段に前記電極の温度を調整させる調整制御手段と、
を備え、
前記応答データは、検量線であり、
前記決定手段は、前記取得手段により取得された検量線の傾きに基づいて、前記電極の温度を決定することを特徴とするガス検出システム。 - 検出対象物質を含有するガスが導入される気相室と、前記気相室と隣接するように配置され、所定の電解液が導入される液相室と、前記気相室と前記液相室とを隔てるように配置され、少なくとも前記検出対象物質が透過するガス透過膜と、前記液相室にガス透過膜と対向して配置された電極と、前記液相室に含有され、前記検出対象物質と選択的に反応するレセプタと、を備え、前記ガス透過膜を透過して前記気相室から前記液相室に移行してきた前記検出対象物質を検出するバイオセンサと、
前記液相室に導入される前記電解液の温度を調整する電解液温度調整手段と、
前記バイオセンサによる前記検出対象物質の検出前に、当該バイオセンサの応答出力に関する応答データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された応答データに基づいて、前記バイオセンサによる前記検出対象物質の検出時における前記電解液の温度を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された温度となるよう、前記電解液温度調整手段に前記電解液の温度を調整させる調整制御手段と、
を備え、
前記応答データは、検量線であり、
前記決定手段は、前記取得手段により取得された検量線の傾きに基づいて、前記電解液の温度を決定することを特徴とするガス検出システム。 - 請求項1又は2に記載のガス検出システムにおいて、
前記バイオセンサは、前記ガス透過膜と前記電極との間に配置されたスペーサを備えることを特徴とするガス検出システム。 - 請求項1から3の何れか一項に記載のガス検出システムにおいて、
前記バイオセンサは、前記液相室の前記気相室と対向する側の面を構成して、前記電極を支持する支持体を備え、
前記支持体は、溝部を有し、
前記電極は、前記溝部内に形成され、
前記電極の厚みは、前記溝部の深さと略同一であることを特徴とするガス検出システム。 - 請求項1から4の何れか一項に記載のガス検出システムにおいて、
前記バイオセンサは、
前記電極を有する電極部と、
前記液相室に前記電極部を取り付けるための取付部と、を備え、
前記電極部は、前記取付部に着脱自在であることを特徴とするガス検出システム。 - 請求項1から5の何れか一項に記載のガス検出システムにおいて、
前記レセプタは、酵素であることを特徴とするガス検出システム。 - 請求項1から6の何れか一項に記載のガス検出システムにおいて、
前記液相室に導入された前記電解液を当該液相室から排出させて、再び当該液相室に導入させる循環手段を備えることを特徴とするガス検出システム。
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