以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態におけるダイナミックダンパ1の斜視図であり、対向面21a方向から視た状態を図示している。図2はダイナミックダンパ1の斜視図であり、底面21c方向から視た状態を図示している。
図1及び図2に示すように、ダイナミックダンパ1は、ステアリングホイール70(図8参照)の下部カバー71(図8参照)内に収容され、そのステアリングホイール70の振動を抑制するためのダイナミックダンパである。ダイナミックダンパ1は、ステアリングホイール70の下部カバー71に取着されるブラケット部材10と、質量体として機能するマス部材20と、ブラケット部材10及びマス部材20を連結すると共にゴム状弾性材から構成される防振基体30と、マス部材20に貼着される緩衝部材40とを備えて構成されている。
図1、図2及び図3を参照して、ブラケット部材10の構成について説明する。図3(a)はブラケット部材10の平面図であり、図3(b)は図3(a)の矢印IIIb方向視におけるブラケット部材10の正面図であり、図3(c)は図3(a)の矢印IIIc方向視におけるブラケット部材10の背面図であり、図3(d)は図3(b)の矢印IIId方向視におけるブラケット部材10の側面図である。
図1、図2及び図3に示すように、ブラケット部材10は、金属材料のプレス、打抜き等により板状部材を折曲して形成されており、ステアリングホイール70のボス部74(図8参照)に取着される取着板部11と、取着板部11から取着板部11と同一平面で延設される延設部12と、延設部12から折曲されつつ下側(図3(a)紙面奥側及び図3(b)下側)に延設される第1折曲部13と、第1折曲部13から折曲されつつ延設部12の延設方向(図3(a)下側及び図3(b)紙面手前側)に延設される第1連結部14と、延設部12の両縁部から折曲されつつ下側にそれぞれ延設される一対の第2折曲部15と、一対の第2折曲部15の両端縁から折曲されつつブラケット部材10の両端側(図3(a)及び図3(c)右側及び左側)にそれぞれ延設される一対の第2連結部16とを備えて構成されている。
取着板部11と延設部12と第1折曲部13と第1連結部14とには、ブラケット部材10の長手方向(図3(a)及び図3(b)左右方向)における中央に配置される矩形状の開口部10aが貫通形成されている。これにより、ブラケット部材10の軽量化を図れる。
取着板部11は、ステアリングシャフト72を収容する筒状ケースの外周と一致する円弧状の切欠き11cがステアリングホイール70のボス部74側(図3(a)上側)に凹設されている。これにより、取着板部11をボス部74に取着するときのステアリングシャフト72と取着板部11との干渉を防止できる。
取着板部11の切欠き11cの両側にはピン挿入孔11bが貫通形成され、ピン挿入孔11bに位置決めピン(図示せず)を挿入することにより、金型(図8参照)に対してブラケット部材10が位置決めされる。ピン挿入孔11bの両側にはピン挿入孔11bより一回り大きい内径を有する取着孔11aが貫通形成されている。取着孔11aに挿通されたボルト(図示せず)をボス部74に螺合することによりブラケット部材10がボス部74に取着される。
第1折曲部13は、ブラケット部材10の長手方向(図3(a)及び図3(b)左右方向)における中央に開口部10aが配置されるので、第1折曲部13は2枚の板状の部材により形成される。また、第1折曲部13を構成する2枚の板状部材は同一形状に形成され、長手方向における長さが開口部10aの長手方向における長さより短く形成される。
第1連結部14の中央には、第1貫通孔14bが貫通形成され、第1貫通孔14bの内径はピン挿入孔11bと略同一に形成される。第1貫通孔14bには、ゴム状弾性体が加硫接着され、加硫接着されたゴム状弾性体により後述する防振基体30の第1貫装部33(図6参照)が形成される。
第1連結部14は、その両端部から折曲されつつ下側に延出したのち第2連結部16側(図3(a)及び図3(b)左側および右側)に延設される一対の第1突起部14aを備えて構成されている。第1突起部14aは、後述するブラケット部材10の第2連結部16と同一面内に形成されている。
取着板部11と延設部12との連結部分には、その連結部分からブラケット部材10の中央に向かって切り欠かれた位置決め凹部10cが貫通形成される。位置決め凹部10cには後述する金型60(図8参照)に形成される突起(図示せず)が嵌合される。これにより、防振基体30(図1及び図2参照)を加硫成形する際にブラケット部材10が金型60(図8参照)に対して位置ずれすることを防止できる。
第2連結部16は、第2折曲部15側(図3(d)紙面奥側)の部分に側面視L字状の第2突起部16aが形成される。第2突起部16aは、第2連結部16の第2折曲部15側に配置される部分から下方(図3(a)紙面奥側及び図3(d)下方)に折曲されつつ延設され、さらに延設部12の延設方向(図3(b)下方及び図3(d)左方)に折曲されつつ延設される。これにより、第2突起部16aの先端部は第2連結部16よりも低い位置に配置される。また、第2連結部16は、第2突起部16aを挟んで両端側の縦幅(ブラケット部材10の長手方向と直交する方向の幅、図3(a)上下方向の長さ)が、第2突起部16aを挟んで中央側の縦幅に比べて長く形成される。第2連結部16の縦幅が長く形成される部分には第2貫通孔16bが貫通形成され、第2貫通孔16bには、ゴム状弾性体が加硫接着され、加硫接着されたゴム状弾性体により後述する防振基体30の第2貫装部37(図6参照)が形成される。
ブラケット部材10には、開放部10bが貫通形成される。開放部10bは、延設部12と第1折曲部13と第1連結部14と第2折曲部15と第2連結部16とで囲まれる開口として構成される。この開放部10bが形成されることで、ブラケット部材10の軽量化を図ることができる。
延設部12から一対の第2折曲部15が折曲され、一対の第2折曲部15から一対の第2連結部16が折曲される。これによりブラケット部材10の機械的強度を確保できる。また、第1連結部14の両端部から一対の第1突起部14aが折曲され、一対の突起部14aの先端部が折曲されるので、一対の第1突起部14aによりブラケット部材10の機械的強度を確保できる。さらに、第2折曲部15と延設部12との稜線および第2折曲部15及び第2連結部16の稜線には潰しリブ15a,15bが形成され、ブラケット部材10の機械的強度をさらに向上できる。これにより、ブラケット部材10の板厚を薄肉化できるので、ブラケット部材10の軽量化を図ることができる。ステアリングホイール70の振動のピーク周波数に対応させてマス部材20の体積を増加した場合であっても、ブラケット部材10が軽量化された分だけダイナミックダンパ1の重量増加を抑制できるので、全体としてダイナミックダンパ1の重量化を招くことなくステアリングホイール70の振動のピーク周波数に対応させることができる。
図1、図2及び図4を参照して、マス部材20の構成について説明する。図4(a)はマス部材20の平面図であり、図4(b)はマス部材20のIVb方向視における背面図である。マス部材20は鋳鉄等の金属材料から構成され平面視して横方向に長円の塊状に形成されると共に対向面21aが下部カバー71(図8参照)の内側面と対向する本体部21と、本体部21の対向面21aと交差する底面21cにおける両端部分から突出する一対の第1突出部22と、一対の第1突起部より中央側に位置し本体部の対向面21aと反対側の背面21bから突出する一対の第2突出部23と、一対の第1突出部22が本体部の底面21cにおける両端部分に突出することにより本体部21の底面21cの中央に凹設される第1凹陥部24と、第1凹陥部24に連続し本体部21の底面21c及び背面21bに凹設される第2凹陥部25と、を備えて構成されている。本体部21は、複数の突出部(第1突出部22及び第2突出部23)を備えることによりその体積の増大を図っている。
図4に示すように、本体部21は平面視して横方向に長円状に形成されるので、互いに対向する対向面21a及び背面21bの離間距離がマス部材20の長手方向における中央で最も長くかつ両端部で最も短く設定されている。下部カバー71(図8参照)の内側面が上向き凸である湾曲形状に形成されるので、本体部21の対向面21aは下部カバー71の内側面の湾曲形状に対応した形状に形成される。よって、本体部は下部カバー71の内側面のスペースを最大限利用できるので、その体積を対向面21a側に最大限増加できる。
図4に示すように、第1凹陥部24は、本体部21の対向面21a側(図4(b)下側)に配置される下向きに開放された凹みであり、その中央には中央凹陥部24aが凹設される。これにより、本体部21の底面21cは、第1突出部22から中央凹陥部24aに向かって上昇する階段状に形成される。
図4に示すように、第2凹陥部25は、上下方向に延設される内壁である一対の下壁25aと、一対の下壁25aの上辺からマス部材20の長手方向で中央に向かって延設される内壁である一対の内側壁25bと、一対の内側壁25bの中央側の側辺から本体部21の上面21dまで延設される一対の上壁25cと、一対の下壁25a、一対の内側壁25b及び一対の上壁25cの対向面21a側の側辺を含む内壁である側壁25dとにより形成されており、本体部21の背面21b側(図4(b)上側)に配置される。
第2凹陥部25は、背面21b側及び上面21d側(図4(a)紙面手前側)が開放されており、第2凹陥部25の凹設深さ(第1突出部22の底面21cから一対の内側壁25bまでの離間距離)は、第1凹陥部24の凹設深さに比べて深く形成される。これらの第1凹陥部24および第2凹陥部25には後述するブラケット部材10の一部が収容される。
図5から図8を参照してダイナミックダンパ1の構成について説明する。図5(a)はダイナミックダンパ1の平面図であり、図5(b)は図5(a)のVb方向視におけるダイナミックダンパ1の正面図であり、図5(c)は図5(a)のVc方向視におけるダイナミックダンパ1の背面図である。図6(a)は図5(a)のVIa−VIa線におけるダイナミックダンパ1の断面端面図であり、図6(b)は図5(a)のVIb−VIb線におけるダイナミックダンパ1の断面端面図である。図7は、ブラケット部材10及びマス部材20を組み付けた状態を示す金型60の断面図である。図8は、ステアリングホイール70の正面図であり、上部カバー(図示せず)が取り外された状態を示しており、ダイナミックダンパ1がステアリングホイール70の下部カバー71に収容された状態を図示されている。
図5及び図6に示すように、防振基体30は、ブラケット部材10及びマス部材20を連結するゴム状弾性体であって、防振基体30と緩衝部材40とは一体的に加硫成形される。防振基体30は、マス部材20の中央凹陥部24aを形成する底面21c及びブラケット部材10の第1連結部14を連結する第1基体31と、第1基体31に連設され第1連結部14の上面に加流接着される第1張出部32と、第1張出部32に連設され第1貫通孔14bの内周に加流接着される第1貫装部33と、第1貫装部33に連設され第1連結部14の下面に加流接着される第2張出部34と、マス部材20の第1突出部22の底面21c及びブラケット部材10の第2連結部16を連結する第2基体35と、第2基体35に連設され第2連結部16の上面に加流接着される第1張出部36と、第1張出部36に連設され第2貫通孔16bの内周に加流接着される第2貫装部37と、第2貫装部37に連設され第2連結部16の下面に加流接着される第2張出部38とを備えて構成される。
図6に示すように、第1基体31は、角柱状に形成されており、第1基体31の上端から連設され第1突出部22の底面21cに加硫接着される板状のゴム連結部31aを備えて構成されている。ゴム連結部31aにより第1基体31の上端が後述する第3緩衝部43に連結される。図5に示すように、第1基体31は、マス部材20の長手方向における長さが第2基体35より長く形成され、マス部材20の短手方向における長さが第2基体35と略同一に形成される。よって、第1基体31のばね定数は、第2基体35のばね定数より大きく設定できる。
第1張出部32及び第2張出部34は、長手方向(図5(b)左右方向)及び短手方向(図6(a)左右方向)の長さが第1基体31よりも長い矩形板状に形成されており、第1張出部32の板厚(図6(a)上下方向の長さ)は、ブラケット部材10(第1連結部14)の板厚より小さく設定される。第1基体31の下端が第1張出部32によりブラケット部材10の第1連結部14に連結される。
第1貫装部33は、外径が第1基体31の短手方向の長さより短い円柱状に形成されており、ゴム状弾性体が第1貫通孔14bに加硫接着されることにより形成される。第1貫装部33により第1張出部32及び第2張出部34が連結され、第1張出部32により第1基体31の下端がブラケット部材10の第1連結部14に連結されるので、第1基体31は第1突出部22の底面21cと第1連結部14の上下面とに連結される。また、第1張出部32及び第2張出部34の外形が第1貫装部33の外形より大きく形成されるので、第1張出部32及び第2張出部34が抜け止めとして機能する。よって、第1基体31がブラケット部材10から抜け落ちることを確実に抑制できる。これにより、第1連結部14及び第2連結部16とゴム状弾性体との接着剤を不要とすることも可能である。
一対の第2基体35は、同一の形状に形成されており、マス部材20の長手方向における長さが第1基体31より短く形成される点を除き、第1基体31と同様に構成されるので、説明を省略する。なお、第1張出部36が第1張出部32に、第2貫装部37が第1貫装部33に、第2張出部38が第2張出部34にそれぞれ対応する。
図5に示すように、緩衝部材40は、マス部材20(本体部21)の対向面21a(図5(a)下側の面)における両端部に第2基体35と一体に加硫接着される一対の第1緩衝部41と、マス部材20(本体部21)の背面21b(図5(a)上側の面)における両端部に第2基体35と一体に加硫接着される第2緩衝部42と、マス部材20の対向面21a(図5(a)下側の面)における中央に第1基体31と一体に加硫接着される第3緩衝部43とを備えて構成されている。
図6に示すように、第1緩衝部41、第2緩衝部42及び第3緩衝部43は、ゴム状弾性体で構成され、第1緩衝部41及び第2緩衝部42は第2基体35のゴム連結部35aを介して一体成形されている。第3緩衝部43は、第1緩衝部41及び第2緩衝部と別体で構成される。
第1緩衝部41、第2緩衝部42及び第3緩衝部43をフェルト等で構成した場合は、マス部材20にフェルト等を貼着する作業が必要となる。これに対して本発明では、第1緩衝部41及び第2緩衝部42は、ゴム状弾性体で構成され第2基体35と一体に加硫され、第3緩衝部43が第1基体31と一体に加硫される。よって、第1緩衝部41及び第3緩衝部43をマス部材20(本体部21)の対向面21aに、第2緩衝部42をマス部材20(本体部21)の背面21bに、それぞれ貼着する作業を省略できるので、ダイナミックダンパ1を製作する作業工程を削減でき、ダイナミックダンパ1の生産性を向上できる。
また、フェルトとゴム状弾性体とを同じ厚さに形成した場合、フェルト等に比べて、ゴム状弾性体の方がより大きい衝撃力を吸収できる。よって、第1緩衝部41、第2緩衝部42及び第3緩衝部をゴム弾性体で構成した場合は、フェルトで構成した場合に比べて、第1緩衝部41、第2緩衝部42及び第3緩衝部42の厚さを薄くできる。よって、第1緩衝部41、第2緩衝部42及び第3緩衝部の厚さを薄くした分だけ、本体部21の体積を対向面21a及び背面21b側により増大できる。よって、ステアリングホイール70の振動のピーク周波数に対応させてマス部材20の体積を容易に増加できるので設計の自由度を確保できる。また、第1緩衝部41、第2緩衝部42及び第3緩衝部により衝撃力が吸収されるので悪路走行時における異音の発生を防止できる。
第1緩衝部41及び第2緩衝部42はゴム連結部35aを介して一体成形されているので、本体部21の両端部全体をゴム状弾性体で敷設できる。よって、本体部21の中央部分に比べて本体部21の両端部が大きく振れて下部カバー71の内側面やボス部74に衝突した場合であっても、衝突の際の衝撃力が第1緩衝部41及び第2緩衝部42によって吸収されるので、異音の発生を防止できる。
また、図2及び図5(b)に示すように、ブラケット部材10の第1連結部14は、第2連結部16に対して、マス部材20の対向面21a側寄りに配設されるので、第1基体31は、第2基体35を通る直線からマス部材20の対向面21a側に外れて位置する。さらに、ブラケット部材10の第1連結部14はマス部材20の中央凹陥部24aに連結されるので、第1基体31は、第2基体35を通る直線からマス部材20の上面21d側に外れて位置する。これらの結果、マス部材20の長手方向や短手方向の振動および捩り方向の振動に対して有効な制振効果を得ることができると共に、ステアリングホイール70(図8参照)の振動を抑制するための共振作用を広い周波数帯域で得ることができる。
次に図7を参照して、以上のように構成されるダイナミックダンパ1の製造方法について説明する。図7では、第2基体35で連結される第2連結部16及びマス部材20(本体部21)を図示して説明する。防振基体30を成形するには、図7に示すように、マス部材20を第1金型に固定すると共に、マス部材20の底面21cと第1連結部16の一面側とが所定間隔をあけて対向するように、ブラケット部材10の第1突起部14a、第2突起部16a及びピン挿入孔11b(図3(a)参照)を利用して、ブラケット部材10を第1金型61に固定する。
次いで、第2金型62及び第3金型63により図7左右方向(図5(a)矢印Vb方向または矢印Vc方向)に型閉めし、キャビティ66を形成する。次に、金型60の供給路64からゲート65を通して第2貫通孔16b及びキャビティ66にゴム状弾性体を注入する。これにより、第1緩衝部41、第2緩衝部42、第2ゴム連結部35a、第2基体35、第1張出部36、第2貫装部37及び第2張出部38(図6(b)参照)が成形される。第1緩衝部41及び第2緩衝部42とマス部材20とは加硫接着される。ゴム状弾性体の硬化後に離型させ、ブラケット部材10の他面側に位置するゲート65の近傍でゴム状弾性体を切断することで、ブラケット部材10とマス部材20とが防振基体30で連結されたダイナミックダンパ1が得られる。
以上説明したように、硬化したゴム状弾性体を切断する切断跡は、ブラケット部材10の他面側に形成される。マス部材20の荷重は、マス部材20とブラケット部材10の一面側(マス部材20との対向面側)とを連結する防振基体30の負荷となるが、ブラケット部材10の他面側に形成された切断跡の負荷にはならないので、切断跡が防振基体30のクラックの起点となり難く、仮に切断跡を起点として防振基体30にクラックが生じたとしても、クラックを成長し難くできる。よって、ダイナミックダンパ1の耐久性を向上できる。また、切断跡が防振基体30のクラックの起点となり難いので、切断跡が残らないようにする仕上げ加工を不要にでき、生産性を向上できる。
また、第1緩衝部41及び第2緩衝部42とマス部材20とを接着する接着剤は必要であるが、第2連結部16を挟んで第1張出部36及び第2張出部38(図6(b)参照)を備えているので、第2連結部16とゴム状弾性体とを加硫接着することなく、或いは第2連結部16とゴム状弾性体とを加硫接着する接着剤の塗布量が少なくても、第2連結部16と防振基体30とを連結することが可能となる。これにより、接着剤の塗布量を削減できる。
また、第2金型62及び第3金型63により図7左右方向(図5(a)矢印Vb方向または矢印Vc方向)に型閉めすることで、防振基体30にパーティングラインを設定して成形することができ、金型構造を簡略化できる。
図8に示すように、マス部材20の本体部21は、下部カバー71の内側面に対向配置される対向面21aが下部カバー71の内側面側に凸の湾曲形状に形成されるので、対向面を平坦状に形成した場合に比べて、マス部材20の体積を下部カバー71の内側面側に増加できる。従って、ステアリングホイール70の振動のピーク周波数に対応してマス部材20の体積を増加でき設計の自由度を確保できる。
ここで、図5(c)に示すように、第2凹陥部25の一対の内側壁25bと延設部12とが上下方向(図5(c)上下方向)で対向配置され、第2凹陥部25の側壁25dと第1折曲部13とがマス部材20の長手方向と直交する短手方向(図5(c)紙面垂直方向)で対向配置され、一対の第2折曲部15が第2凹陥部の一対の下壁25aとマス部材の長手方向(図5(c)左右方向)で対向配置される。よって、第2凹陥部25にはブラケット部材10の延設部12と第1折曲部13と一対の第2折曲部15とが収容される。
図5に示すように、第1凹陥部24と第1連結部14とがマス部材20の(図5(b)上下方向)上下方向で対向配置され、第1凹陥部24と一対の第1突起部14aとがマス部材20の長手方向で対向配置される。よって、第1凹陥部24には、ブラケット部材10の第1連結部14と一対の第1突起部14aとが収容される。従って、ブラケット部材10の機械的強度を確保する複数の折曲部(延設部12、一対の第2折曲部15及び一対の第1突起部14a)がマス部材20に凹設された第1凹陥部24及び第2凹陥部25に収容されている。よって、複数の折曲部が障害となることなく、マス部材20の質量(体積)を増加させることができる。
即ち、図8に示すように、ダイナミックダンパ1は、マス部材20の本体部21の対向面21aがステアリングホイール70の下部カバー71の内側面と対向配置された状態で下部カバー71に収容される。ステアリングホイール70のボス部74にブラケット部材10が連結され、かかるブラケット部材10と、質量体として機能するマス部材20とが、ゴム状弾性材から構成される防振基体30で連結されることにより、アイドリングや走行時の振動が減衰される。
ステアリングホイール70の内部において、ボス部74の周囲には、エアバッグ及びホーンスイッチ(図示せず)等の部品(スポーク73等)が多数配置されるので、マス部材20の質量(体積)を増加させるのに十分なスペースがほとんどない。これに対し、ボス部74の周囲に比べて下部カバー71の内側面側(図8上側)はスペースを確保しやすいが、従来のマス部材の両側面にはブラケット部材の機械的強度を確保する部分である一対の第2ストッパ壁が対向配置されているので、第2ストッパ壁が障害となってマス部材の質量(体積)を下部カバーの内側面に沿って増加できない。
これに対し、本発明のダイナミックダンパ1では、ブラケット部材10の機械的強度を確保する部分(延設部12、一対の第2折曲部15及び一対の第1突起部14a)がマス部材20の第1凹陥部24及び第2凹陥部25に収容されているので、ブラケット部材10の機械的強度を確保する部分が障害となることなく、ブラケット部材10の体積を拡大できる。ステアリングホイール70の振動のピーク周波数に対応させてマス部材20の体積を増加でき設計の自由度を確保できる。
図5及び図8に示すように、マス部材20の本体部21の中央および両端が、防振基体30の第1基体31および一対の第2基体35により、ブラケット部材10の第1連結部14および一対の第2連結部16に連結されるので、ステアリングシャフト72に大振動が入力されブラケット部材10のボス部74に取着される取着板部11からマス部材20の本体部21に大振動が伝播されると、マス部材20の本体部21は第1基体31および一対の第2基体35を基点として振動する。
よって、本体部21の両端部分は、本体部21の中央部分に比べてステアリングシャフト72から離間するので大きく振れる。従って、本体部21の対向面21aの両端部分がその他の部分と比べて、下部カバー71の内側面と衝突しやすいが、マス部材20の本体部21は、下部カバー71の内側面に対向配置される対向面21aが下部カバー71の内側面側(図8上側)に凸の湾曲形状に形成されるので、本体部21の対向面21aの両端部分は下部カバー71の内側面と面で衝突する。
本体部21の対向面21aの両端部分は下部カバー71の内側面と面で衝突するので、本体部21の対向面21aの両端と下部カバー71の内側面とが点で衝突する場合よりも衝突の際の衝撃力を小さくできる。さらに、本体部21の対向面21aの両端部分には緩衝部材40の第1緩衝部41が加硫接着されるので、第1緩衝部41を介して、本体部21の対向面21aの両端部分と下部カバー71の内側面とが衝突する。よって、本体部21の対向面21aの両端部分と下部カバー71の内側面とが衝突する際の衝撃力が第1緩衝部41により吸収される。従って、悪路走行時に大振動がステアリングシャフト72に入力され、本体部21の対向面21aと下部カバー71の内側面とが衝突した場合であっても、衝突音(異音)の発生を防止できる。
本体部21の背面21bにおける両端部分には第2緩衝部42が加硫接着される。これにより、悪路走行時に大振動がステアリングシャフト72に入力され、本体部21の背面21bにおける両端部分とボス部74の周囲に配置されるエアバッグ及びホーンスイッチ等の部品とが衝突した場合であっても、衝突の際の衝撃力が第2緩衝部42により吸収される。その結果、悪路走行時における衝突音(異音)の発生を防止できる。
マス部材20の本体部21は、下部カバー71の内側面に対向配置される対向面21aが下部カバー71の内側面側(図8上側)に凸の湾曲形状に形成されるので、本体部21の対向面21aにおける中央部分は両端部分と比べてマス部材の最も外側(下部カバー側)に突出した部分となる。よって、ステアリングホイール70が旋回された状態で大振動がステアリングシャフト72に入力されると、本体部21の対向面21aにおける両端部分に比べて中央部分が下部カバー71の内側面と衝突し易くなる場合がある。この場合であっても、第3緩衝部43が本体部21の対向面21aにおける中央部分に貼着されるので、悪路走行時に大振動がステアリングシャフト72に入力され、下部カバー71の内側面と本体部21の対向面21aにおける中央部分とが衝突した場合であっても、衝突の際の衝撃力が第3緩衝部43によって吸収される。よって、悪路走行時における衝突音(異音)の発生を防止できる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記実施の形態では、第3緩衝部43は、第1緩衝部41及び第2緩衝部42と別体で構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、第3緩衝部43を第1緩衝部41及び第2緩衝部42と一体形成するように構成しても良い。この場合は、本体部21の対向面21a全体がゴム状弾性体により敷設されれば、本体部21の対向面21aと下部カバー71の内側面とはゴム状弾性体を介して衝突するので、衝突の際に異音が発生することを確実に抑制できる。
上記実施の形態では、マス部材20が、第1突出部22及び第2突出部23を有する場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、第2突出部23がなくてもよい。この場合は、マス部材20の本体部21の両端部分をさらに下部カバー71の内側面に沿って延設させることにより、下部カバー71の内側面側のスペースを有効活用して第2突出部23相当の体積を確保できる一方、マス部材20とボス部74側にスペースを確保できるので、ダイナミックダンパ1を下部カバー71に取着する際にマス部材20とボス部74の周囲の部品との干渉を抑制できる。よって、ダイナミックダンパ1の取着作業を効率よく行うことができる。
上記実施の形態では、取着板部11から取着板部11と同一平面で延設部12が延設される場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、延設部12を側面視L字状に形成してもよい。この場合はブラケット部材10の機械的強度をさらに向上できる。
上記実施の形態では、延設部12から折曲されつつ第1折曲部13及び第2折曲部15が延設される場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、取着板部11から折曲されつつ第1折曲部13及び第2折曲部15が延設されもよい。この場合は、延設部12から第1折曲部13及び第2折曲部15が延設される場合と比べて、マス部材20をステアリングシャフト52により近づけて配置できる。
上記実施の形態では、ブラケット部材10の第1折曲部13の長さに比べて第2折曲部15の長さを短く設定する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ステアリングホイール70の振動のピーク周波数等に応じて、第1折曲部13の長さを第2折曲部15の長さに比べて長く設定することも可能である。この場合は、マス部材20の形状をブラケット部材10の形状に応じて適宜設定する。
上記実施の形態では、マス部材20の対向面21aが凸に湾出する形状に構成された場合について説明したが、この形状に限られるものではなく、略直方体形状などとすることも可能である。
上記実施の形態では、マス部材20が第1突出部22及び第2突出部23を備える場合について説明したが、ステアリングホイール70の振動のピーク周波数との関係で、マス部材20の質量を小さくする必要がある場合には、第1突出部22や第2突出部23は設けなくても良い。
上記実施の形態では、ダイナミックダンパ1が下部カバー71内のボス部74に取着される場合について説明したが、スポーク73に取着されるものとすることも可能である。
また、ブラケット部材10の第2折曲部15がマス部材20の下壁23aと対向する対向面に緩衝部材40を貼着してもよい。第2折曲部15と下壁51aとの離間距離は、本体部21の対向面21aと下部カバー71の内側面との離間距離より長く設定されるので、本体部21の対向面21aと下部カバー71の内側面とが衝突すれば、ブラケット部材10の第2折曲部15とマス部材20の下壁23aとが衝突することはあまりないが、ステアリングホイール70の位置によっては、ブラケット部材10の第2折曲部15とマス部材20の下壁23aとが衝突する場合もあり得る。この場合であっても、第2折曲部15の対向面に緩衝部材40を貼着しておけば、衝突の際の衝撃力を吸収でき、異音の発生を抑制できる。