以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の実施例である光学機器としての交換レンズと、該交換レンズが装着された一眼レフデジタルスチルカメラ(撮像装置)の概略構成を示している。1は一眼レフデジタルスチルカメラ(以下、カメラという)であり、2は交換レンズ200内に設けられたズーム光学系である。ズーム光学系2は、後述する複数のレンズユニットを有する。3はズーム光学系2に含まれる防振レンズユニット12を、ズーム光学系2の光軸4に直交する方向に駆動する防振駆動部である。5はズーム光学系2を収容するレンズ鏡筒である。レンズ鏡筒5とズーム光学系2によりズームレンズ装置としての交換レンズ200が構成される。交換レンズ200は、カメラ1に対して着脱が可能である。
カメラ1において、6はズーム光学系2により形成された被写体像を光電変換するCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子である。7は撮像素子6からの出力に基づいて生成された画像データ等を記憶するメモリである。8は手振れ等のカメラ振れを検出する振れセンサであり、9はズーム光学系2に含まれるフォーカスレンズユニットを駆動するフォーカス駆動部である。
10はカメラ1(及び交換レンズ200)の電源であり、11はレリーズボタンである。13はクイックリターンミラーであり、14はファインダ光学系である。
図2には、カメラ1及び交換レンズ200の電気的構成を示している。カメラ1は、撮像系、画像処理系、記録再生系及び制御系を有する。
撮像系は、撮像素子6により構成されている。画像処理系は、A/D変換器20と画像処理回路21とを含む。記録再生系は、記録処理回路23とメモリ24とを含む。制御系は、カメラシステム制御回路25、AFセンサ26、AEセンサ27、振れセンサ8及び操作検出回路29を含む。交換レンズは、レンズシステム制御回路30を含む。
画像処理回路21は、A/D変換器20を介して撮像素子6から受けた出力信号に対してホワイトバランス、ガンマ補正、補間演算等の各種処理を施して画像データを生成する。記録処理回路23は、メモリ24への画像データの記録処理を行うとともに、液晶モニタ等により構成される表示部22に出力する画像を生成する。
操作検出回路29は、レリーズボタン11等の操作部材の操作を検出し、操作検出信号をカメラシステム制御回路25に送る。カメラシステム制御回路25は、操作検出信号に応じてカメラ1及び交換レンズ内の各部を制御する。
AFセンサ26は、交換レンズのピント状態を検出する。また、AEセンサ27は、被写体の輝度を検出する。振れセンサ8は、カメラ振れを検出する。カメラシステム制御回路25は、AFセンサ26、AEセンサ27及び振れセンサ8からの信号に基づいて、フォーカシング、絞り及び防振動作を制御するための信号をレンズシステム制御回路30に出力する。レンズシステム制御回路30は、カメラシステム制御回路25からの信号に応じて、フォーカス駆動部9、絞り駆動部(図示せず)及び防振駆動部3を制御する。
次に、図3及び図4を用いて、交換レンズ200の構成について説明する。図3は、交換レンズ200を、光軸4を通る面で切断したときの断面構造を示している。図4は交換レンズ200の一部を分解して示している。
交換レンズ200は、カメラ1に着脱可能に装着するためのマウント201を有する。マウント201には、カメラ1と交換レンズ200間で通信のためのコネクタが設けられている。マウント201は、ベース筒203にねじによって取り付けられている。ベース筒203には、中間筒204がねじによって固定されている。
中間筒204には、案内筒205にねじによって取り付けられている。また、中間筒204には、外装環206がねじによって取り付けられている。案内筒205(及び中間筒204)は、変倍及び焦点調節に際して不動の固定筒に相当する。
案内筒205における最も物体側(図の左側)には、第1レンズユニット(固定レンズ)L1を保持した第1レンズ保持筒(レンズ保持部材)207が支持されている。
第1レンズ保持筒207により保持された第1レンズユニットL1は、後述する第2レンズユニット(フォーカスレンズユニット)L2よりも物体側(複数のレンズユニットのうち最も物体側)に配置されており、変倍及び焦点調節に際しては不動である。
ただし、第1レンズ保持筒207には、偏心カムフォロア210がねじにより取り付けられている。偏心カムフォロア210は、図3に示すように、第1レンズ保持筒207の外周面に形成された穴部に挿入される軸部210Aと、該軸部210Aに対して偏心した偏心フォロア部210Bとを有する。偏心フォロア部210Bは、案内筒(支持筒)205に形成された位置調整用カム溝部(調整用溝部)205Bに係合している。
交換レンズ200の組み立て時等において、第1レンズ保持筒207を光軸回りで回転させると、偏心カムフォロア210が位置調整用カム溝部205Bに沿って移動する。これにより、第1レンズ保持筒207の案内筒205に対する光軸方向位置を調整することができる。
偏心カムフォロア210をその軸部210Aの軸回りで回転させると、位置調整用カム溝部205B内での偏心フォロア部210Bの偏心回転によって、第1レンズ保持筒207の案内筒205(つまりは他のレンズユニットの光軸)に対する倒れ角度が変化する。これにより、第1レンズ保持筒207の案内筒205に対する倒れ角度を調整することができる。第1レンズ保持筒207の案内筒205への固定方法については後述する。
案内筒205の内側には、メインカム筒(回転筒)208が配置されている。メインカム筒208には、不図示のカムフォロアがねじにより取り付けられている。該カムフォロアは、案内筒205の内周に周方向に延びるように形成された溝部205Aに係合している。このため、メインカム筒208は、案内筒205に対して光軸方向には移動せず(すなわち光軸方向における定位置にて)、光軸回りで回転可能である。メインカム筒208には、第4カム溝部208Bが形成されている。
メインカム筒208の内側には、サブカム筒(カム筒)209が配置されている。サブカム筒209には、図4に示すカムフォロア(第2のカムフォロア)Cがねじにより取り付けられている。カムフォロアCは、図4に示すようにメインカム筒208に光軸方向に延びるように設けられた直進溝部(第2の直進ガイド部)208Aと案内筒205に設けられたサブカム溝部(第2のカム部)205Dとに係合している。このため、メインカム筒208が回転すると、サブカム筒209はメインカム筒208とともに光軸回りで回転し、かつメインカム筒208に対して光軸方向に移動する。サブカム筒209には、フォーカスカム溝部(第1のカム部)209Bが設けられている。
サブカム筒209の内側には、第3レンズ直進ガイド筒(第2の直進ガイド筒)214が配置されている。図4に示すように、第2レンズ直進ガイド筒211の凸部211Aとサブカム筒209の溝部209Aとがバヨネット結合している。このため、第2レンズ直進ガイド筒211は、サブカム筒209とともに光軸方向に移動可能であるとともに、サブカム筒209に対して光軸回りで回転可能である。
第2レンズ直進ガイド筒211には、図4に示すように、それぞれ光軸方向に延びる直進溝部(第1の直進ガイド部)211Bとフォーカスキー溝部211Cが設けられている。フォーカスキー溝部211Cには、後述するフォーカス駆動ユニット(フォーカス駆動機構)2Aのフォーカスキー2A2が光軸回り方向において係合する。
第2レンズ直進ガイド筒211の内側には、フォーカスレンズユニットである第2レンズユニットL2を保持した第2レンズ保持筒(フォーカスレンズ保持筒)212が配置されている。第2レンズ保持筒212の外周にはカムフォロア(第1のカムフォロア)213がねじにより取り付けられている。該カムフォロア213は、サブカム筒209に設けられたフォーカスカム溝部209Bと、第2レンズ直進ガイド筒211に設けられた直進溝部211Bとに係合している。
サブカム筒209の内側には、第3レンズ直進ガイド筒(第2の直進ガイド筒)214が配置されている。第3レンズ直進ガイド筒214の外周に周方向に延びるように形成された溝部214Aと、サブカム筒209の内周に形成された凸部209Bとがバヨネット結合している。これにより、第3レンズ直進ガイド筒214は、サブカム筒209とともに光軸方向に移動可能であるとともに、サブカム筒209に対して光軸回りで回転可能である。
第3レンズ直進ガイド筒214には、それぞれ光軸方向に延びる直進溝部(第3の直進ガイド部)214Bと直進ガイドキー溝部214Cとが形成されている。直進ガイドキー溝部214Cには、直進ガイドキー(回転阻止部材)216が光軸回り方向において係合する。
第3レンズ直進ガイド筒214の内側には、第2レンズユニットL2に対して光軸方向(像側)にて隣り合う第3レンズユニットL3を保持した第3レンズ保持筒215が配置されている。
第3レンズ保持筒(変倍レンズ保持筒)215の外周には、カムフォロア(第3のカムフォロア)Eがねじによって取り付けられている。カムフォロアEは、サブカム筒209に設けられたズームカム溝部(第3のカム部)209Dと、第3レンズ直進ガイド筒214に設けられた直進溝部214Bとに係合している。
ここで、サブカム筒209は、物体側に第1の筒部209Eを有し、像側に第1の筒部209Eよりも内外径が小さい第2の筒部209Fを有する。第2レンズユニットL2及びこれを保持する第2レンズ保持筒212は、第1の筒部209Eの内側に配置されている。また、第3レンズユニットL3及びこれを保持する第3レンズ保持筒215は、第2の筒部209Fの内側に配置されている。
案内筒205には、直進ガイドキー216が固定されている。直進ガイドキー216は、前述したように、第3レンズ直進ガイド筒214の直進ガイドキー溝部214Cに係合している。
第4レンズユニットL4を保持した第4レンズ保持筒217の外周には、カムフォロア218がねじにより取り付けられている。カムフォロア218は、図4に示すようにメインカム筒208に設けられた第4カム溝部208Bと、案内筒205の内周に設けられた直進溝部205Eに係合している。
中間筒204の外側には、ズーム操作環(ズーム操作部材)219と、該ズーム操作環219にねじにより取り付けられたギアリング220と、後述するズームレバーが取り付けられ、中間筒204の外周で回転可能なギアリング221とが配置されている。ズーム操作環219、ギアリング220及びギアリング221は、中間筒204に対して光軸方向の定位置にて光軸回りで回転可能である。また、ギアリング220とギアリング221との間には、転動するギアユニット222が配置されており、該ギアユニット222は中間筒204にねじにより結合されている。
ギアリング221には、ズームレバー223の一端がねじにより取り付けられている。ズームレバー223の他端は、メインカム筒208に光軸回り方向において係合している。
案内筒205の外側には、フォーカス操作環(フォーカス操作部材)224が配置されている。フォーカス操作環224の内周に設けられた溝部224Aには、案内筒205の外周にねじにより取り付けられたカムフォロア205Gが係合している。このため、フォーカス操作環224は、案内筒205の外側で光軸方向の定位置にて光軸回りで回転可能である。
フォーカス操作環224は、フォーカス駆動ユニット2A内の定位置回転リング2A1と結合している。このため、フォーカス操作環224の回転力をフォーカス駆動ユニット2Aに伝達することができる。
フォーカス駆動ユニット2Aには、差分動作機構が内蔵されている。差分動作機構から出力される回転力は、第2レンズ直進ガイド筒211のフォーカスキー溝部211Cに係合するフォーカスキー2A2を介して第2レンズ直進ガイド筒211に伝達され、これを回転させる。
第4レンズ保持筒217の像側には、電動絞りユニット2Cが配置されている。電動絞りユニット2Cの像側には、第5レンズユニットL5を保持した第5レンズ保持筒225が配置されている。第5レンズ保持筒225は、中間筒204の内側に配置されている。第5レンズ保持筒225の外周にはフォロア(図示せず)が取り付けられており、該フォロアは中間筒204の内周に形成された穴部(図示せず)に係合している。このため、第5レンズ保持筒225は、中間筒204に対して光軸方向の定位置にて保持される。
第6レンズユニットL6は、図1及び図2に示した防振レンズユニット12に相当する。防振ユニット2Bは、第6レンズユニットL6を保持する第6レンズ保持筒226と、該第6レンズ保持筒226を光軸に直交し、かつ互いに直交する2方向に移動させるための2組の防振アクチュエータ(マグネット及びコイル)とを有する。また、防振ユニット2Bは、第6レンズ保持筒226の位置を検出する位置検出素子と、該位置検出素子からの信号を用いて防振アクチュエータを制御する駆動制御基板を含む。防振アクチュエータ、位置検出素子及び駆動制御基板により、図1及び図2中の防振駆動部3が構成される。
また、防振ユニット2Bの外周には、中間筒204の内周に形成された穴部(図示せず)に係合するカムフォロア(図示せず)が取り付けられている。これにより、防振ユニット2Bは、中間筒204に対して光軸方向の定位置にて保持される。
中間筒204の像側の端部には、最も像側のレンズユニットである第7レンズユニットL7を保持した第7レンズ保持筒227がねじによって固定されている。第7レンズ保持筒227には、図1及び図2に示した振れセンサ8に相当する角速度センサ(ジャイロセンサ)が取り付けられている。また、第7レンズ保持筒227には、図2に示したレンズシステム制御回路30が構成されている2枚の制御基板が取り付けられている。
次に、上記のように構成された交換レンズ200における変倍に際してズーム操作環219が操作されたときの動作について説明する。以下の説明において、光軸回りで回転することを単に「回転する」といい、光軸方向に移動することを「直進する」という。
ズーム操作環219が回転操作されると、ギアリング220が回転し、ギアユニット222を介してギアリング221が回転される。ギアリング221の回転力は、ズームレバー223を介してメインカム筒208に伝達され、これを回転させる。メインカム筒208の回転方向は、ズーム操作環219の回転方向とは逆方向である。メインカム筒208は、前述したように、案内筒205に対して光軸方向における定位置にて回転する。
メインカム筒208が回転すると、該メインカム筒208の直進溝部208Aに係合するカムフォロアCを有するサブカム筒209が、メインカム筒208と同量回転する。カムフォロアCは案内筒205のサブカム溝部205Dにも係合しているため、サブカム筒209はメインカム筒208に対して直進する。すなわち、サブカム筒209は、回転しながらメインカム筒208に対して直進する。
サブカム筒209にバヨネット結合した第2レンズ直進ガイド筒211には、該バヨネット結合部分の摩擦によって回転力が作用する。しかし、第2レンズ直進ガイド筒211のフォーカスキー溝部211Cに、フォーカス駆動ユニット2Aのフォーカスキー2A2が係合している。フォーカスキー2A2は、フォーカス駆動ユニット2Aの差分動作機構内の摩擦保持力(バヨネット結合部分の摩擦よりも大きな摩擦保持力)によって回転しないように保持されている。このため、第2レンズ直進ガイド筒211の回転は阻止される。
前述したように、第2レンズ保持筒212は、サブカム筒209のフォーカスカム溝部209Bと第2レンズ直進ガイド筒211の直進溝部211Bに係合したカムフォロア213を有する。このため、サブカム筒209が直進しながら回転すると、第2レンズ保持筒212は、回転せずにサブカム筒209及び第2レンズ直進ガイド筒211に対して直進する。
また、サブカム筒209にバヨネット結合した第3レンズ直進ガイド筒214には、該バヨネット結合部分の摩擦によって回転力が作用する。さらに、サブカム筒209がメインカム筒208に対して回転しながら直進する間、第3レンズ直進ガイド筒214には、メインカム筒208との嵌まり合い部分での摩擦によってサブカム筒209から回転力が作用する。しかし、第3レンズ直進ガイド筒214の直進ガイドキー溝部214Cには、案内筒205に固定された直進ガイドキー216が係合している。このため、第3レンズ直進ガイド筒214は、回転が阻止された状態でサブカム筒209とともに直進する。
また、前述したように、第3レンズ保持筒215は、サブカム筒209のズームカム溝部209Dと第3レンズ直進ガイド筒214の直進溝部214Bに係合したカムフォロアEを有する。このため、サブカム筒209が直進しながら回転すると、第3レンズ保持筒215が、回転せずにサブカム筒209及び第3レンズ直進ガイド筒214に対して直進する。このため、第3レンズ保持筒215の光軸方向での移動量は、サブカム筒209の光軸方向での移動量よりも大きい。
一方、メインカム筒208が回転すると、メインカム筒208の第4カム溝部208Bと案内筒205の内周の直進溝部(図示せず)に係合したカムフォロア218を有する第4レンズ保持筒217は、回転せずにメインカム筒208に対して直進する。
このように、ズーム操作環219が回転操作されることで第2、第3及び第4レンズ保持筒212,215,217が直進し、交換レンズ200(ズーム光学系2)の変倍(焦点距離の変更)が可能となる。
次に、焦点調節に際してフォーカス操作環224が操作されたときの動作について説明する。
フォーカス操作環224が回転操作されると、その回転力はフォーカス駆動ユニット2Aの差分動作機構及びフォーカスキー2A2を介して第2レンズ直進ガイド筒211を回転させる。このとき、メインカム筒208及びサブカム筒209は回転しない。
第2レンズ直進ガイド筒211が回転すると、サブカム筒209のフォーカスカム溝部209Bと第2レンズ直進ガイド筒211の直進溝部211Bに係合したカムフォロア213を有する第2レンズ保持筒212が回転しながら直進する。
このように、フォーカス操作環224が回転操作されることで第2レンズ保持筒212が直進し、交換レンズ200(ズーム光学系2)の焦点調節が可能となる。
次に、カメラ1からのオートフォーカス信号に応じてフォーカス駆動ユニット2Aが動作するときのオートフォーカス動作について説明する。
フォーカス駆動ユニット2Aは、圧電素子によって振動が励起される振動体と、該振動体に圧接する回転体とにより構成される振動型モータを備えている。制御基板230は、カメラ1からのオートフォーカス信号を受けると、振動型モータを駆動する。
振動型モータの回転力は、差分動作機構を介してフォーカスキー2A2を回転させ、フォーカスキー2A2を介して第2レンズ直進ガイド筒211を回転させる。このとき、メインカム筒208及びサブカム筒209は回転しない。
第2レンズ直進ガイド筒211が回転すると、サブカム筒209のフォーカスカム溝部209Bと第2レンズ直進ガイド筒211の直進溝部211Bに係合したカムフォロア213を有する第2レンズ保持筒212が回転しながら直進する。
このように、フォーカス駆動ユニット2Aが動作することで、第2レンズ保持筒212が直進し、交換レンズ200(ズーム光学系2)のオートフォーカスが可能となる。
次に、図5、図6及び図7を用いて、第1レンズ保持筒207の案内筒205への固定方法について説明する。図5は図4に示した分解図における物体側の一部(第1レンズ保持筒207及び案内筒205)を拡大して示している。また、図6は図3に示した断面構造のうち物体側の一部を拡大して示している。さらに、図7には、案内筒205の周壁に形成された固定用溝部を案内筒205の外周側から見た様子を示している。
第1レンズ保持筒207の案内筒205への固定には、3つの固定ねじ229と、3つのねじベース部材228とが用いられる。
ねじベース部材228は、軸部228Aと、該軸部228Aよりも外径が大きなベース部228Cとを有する。ベース部228Cの表面(図6中の上面)は、球面形状に形成されている。
ベース部228Cの中心には、該ベース部228Cの表面にて開口し、軸部228A内まで延びるねじ穴228Bが形成されている。軸部228Aは、第1レンズ保持筒207の外周面に形成された溝部(凹部)207Aに挿入される。これにより、ねじベース部材228は、軸部228A及びねじ穴228Bの軸回りで回転可能に第1レンズ保持筒207に取り付けられる。また、図5及び図7に示すように、ベース部228Cにおけるねじ穴228Bの両側には、2つの突起部228Dが形成されている。
案内筒205の周壁における周方向3箇所には、固定用溝部205Fが形成されている。該3つの固定用溝部205Fは、同様に案内筒205の周壁における周方向3箇所に形成された位置調整用カム溝部205Bの間の位相領域に形成されている。つまり、案内筒205の周壁には、3つの位置調整用カム溝部205Bと、3つの固定用溝部205Fとが周方向に交互に形成されている。
第1レンズ保持筒207は、図7に示すように、ねじベース部材228のねじ穴228Bが案内筒205の固定用溝部205Fの内側にて開口し、突起部228Dが固定用溝部205Fの内部に突出するように案内筒205に対して配置される。
ここで、各突起部228Cの幅は固定用溝部205Fの幅よりも小さい。このため、ねじベース部材228は、各突起部228Cが案内筒205の固定用溝部205Fの幅方向での内面に当接する状態となるまで第1レンズ保持筒207に対して回転することができる。言い換えれば、ねじベース部材228は、各突起部228Cが固定用溝部205Fの幅方向の内面に当接することで、それ以上の回転が阻止される。
レンズ鏡筒の組み立て時においては、まず固定ねじ229のねじ軸部229Aをねじベース部材228のねじ穴228Bに挿入して、固定ねじ229を所定量だけ締め込み方向に回転させる。この状態では、第1レンズ保持筒207は案内筒205に対して光軸回りで回転が可能であり、前述したように、第1レンズ保持筒207の案内筒205に対する光軸方向位置と倒れ角度の調整(以下、これらをまとめて光学調整という)を行うことができる。
固定用溝部205Fは、位置調整用カム溝部205Bと同じリード量(リード角)を持つように形成されている。このため、光学調整のために第1レンズ保持筒207が案内筒205に対して光軸回りで回転されると、固定ねじ229も固定用溝部205F内を移動する。
光学調整が終了した後、固定ねじ229をさらに締め込み方向に回転させてねじベース部材228に対して締め込む。
上述した所定量の締め込み及び光学調整後の締め込みに際して、前述したように、ねじベース部材228に設けられた突起部228Dが固定用溝部205Fの内面に当接するまではねじベース部材228も固定ねじ229から受ける回転力によって回転可能である。しかし、突起部228Dが固定用溝部205Fの内面に当接することで、それ以上のねじベース部材228の回転が阻止されるため、固定ねじ229のねじベース部材228に対する締め込みが可能となる。
こうして光学調整後の固定ねじ229の締め込みが進むと、案内筒205の周壁は固定ねじ229の頭部229Bとねじベース部材228のベース部228Cとの間に挟み込まれる。3つの固定ねじ229と3つのねじベース部材228との間で案内筒205の周壁の3箇所を挟み込むことで、第1レンズ保持筒207が案内筒205に対して固定される。
前述したように、ねじベース部材228は、第1レンズ保持筒207に対して軸部228A及びねじ穴228Bの軸回りで回転可能に取り付けられている。このため、固定ねじ229の締め込みによってねじベース部材228に回転力が作用しても、その回転力は第1レンズ保持筒207には伝わらない。したがって、固定ねじ229の締め込みによって、第1レンズ保持筒207及び案内筒205が変形したり、第1レンズ保持筒207の案内筒205に対する光軸方向位置及び倒れ角度が変化したりすることを回避できる。
なお、案内筒205の周壁の外周面における固定用溝部205Fの周囲には、該外周面における他の部分よりも外径が小さい座面205FAが形成されている。ねじベース部材228との間で案内筒205の周壁を挟み込む固定ねじ229の頭部229Bの底面がこの座面205FAに当接することで、固定ねじ229の頭部229Bが案内筒205の周壁の外周面から大きく突出することが回避される。
案内筒205の周壁が固定ねじ229の頭部229Bとねじベース部材228のベース部228Cとの間に挟み込まれた状態において、案内筒205の周壁の内面には、ベース部228Cの球面が当接する。
図9及び図10に示すように、案内筒205の周壁の周方向に沿ったA−A断面では、該球面の曲率半径は、案内筒205の周壁の内面の曲率半径よりも大きい。しかし、固定用溝部205Fが延びる方向に沿ったB−B断面においては、該球面の曲率半径は、案内筒205の周壁の内面の曲率半径よりも小さい。これにより、ねじベース部材228は、固定ねじ229の頭部229Bとの間で案内筒205の周壁を安定的に挟み込むことができる。
ベース部228Cの球面の曲率半径の設定方法について説明する。球面の曲率半径は、案内筒205の周壁の内面の径と固定用溝部205Fのリード量(リード角)とに基づいて、以下の計算式により算出するとよい。
案内筒205の周壁の内面の半径R1とし、固定用溝部205Fのリード角をθ1とする。このとき、球面の曲率半径をSR1は、
SR1=R1×(1/cosθ1)
(ただし、θ1は90°より小さい)
なる式により計算できる。
なお、図7には、ねじベース部材228に、ねじ穴228Bを挟んだ両側に2つの突起部228Dを設けた場合を示したが、図8に示すように、ねじ穴228Bを中央に有する1つの突起部228D′を設けてもよい。この場合、該1つの突起部228D′の2箇所が固定用溝部205Fの内面に当接することで、ねじベース部材228の回転が阻止される。
以上説明した実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、上記実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記実施例では、交換レンズについて説明したが、本発明は、ズーム光学系を一体に有するデジタルスチルカメラやビデオカメラ等の光学機器にも適用することができる。