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JP5346867B2 - サーミスタ素子及び温度センサ - Google Patents

サーミスタ素子及び温度センサ Download PDF

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JP5346867B2 JP2010090144A JP2010090144A JP5346867B2 JP 5346867 B2 JP5346867 B2 JP 5346867B2 JP 2010090144 A JP2010090144 A JP 2010090144A JP 2010090144 A JP2010090144 A JP 2010090144A JP 5346867 B2 JP5346867 B2 JP 5346867B2
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Description

本発明は、排気ガス等の測定対象流体の温度を検出するために用いられるサーミスタ素子、及び、それを備える温度センサに関する。
従来、抵抗値が温度に応じて変化するサーミスタ焼結体を備えたサーミスタ素子、及びサーミスタ素子を備えた温度センサが知られている。温度センサは、例えば、自動車のエンジンの排気管に取り付けられ、排気管を流通する排気ガスの温度を測定する。サーミスタ素子としては、サーミスタ焼結体と、一対の電極と、一対の引出線とを備える構成のものが知られている。サーミスタ焼結体は、ペロブスカイト型酸化物又はスピネル型酸化物からなるセラミックを主成分とする材料によって形成され、抵抗値が温度に応じて変化する特性を有する。一対の電極は、サーミスタ焼結体を挟むように配置される。一対の引出線は、一対の電極のそれぞれに接続される。サーミスタ素子の引出線としては、例えば、コバール合金製の引出線と、Niメッキ処理されたジュメット線とが用いられていた。
サーミスタ素子の引出線の材料に関して、製造時の不具合を回避する観点から種々検討がされている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、サーミスタ焼結体と、一対の電極と、一対の引出線とをガラス封止部によって封止したガラス封止型サーミスタ素子において、ガラス封止時に引出線が酸化されることを回避するサーミスタ素子が提案されている。ガラス封止時に引出線が酸化されると、サーミスタ焼結体の抵抗不良と、断線不良といった問題が生じる可能性がある。特許文献1のサーミスタ素子は、引出線の材料として、Feを主成分とし、Niを含まない合金を用いることによって、ガラス封止時に引出線が酸化されることを回避している。
サーミスタ素子の引出線の材料に関して、引出線と、サーミスタ素子が備える他の部材との熱膨張率の違いの観点からも種々検討がされている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、ガラス封止型サーミスタ素子において、サーミスタと、引出線と、ガラス等の保護層との熱膨張係数の関係を規定している。特許文献2では、熱膨張係数の関係を満たす引出線の材料として、白金(Pt)及びPt系合金が示されている。
特開平8−167502号公報 特開2009−115789号公報
近年、サーミスタ素子を備える温度センサの測定可能範囲をより高温側まで広げることが要望されている。しかしながら、従来サーミスタ素子の引出線として用いられていた、コバール合金製の引出線及びジュメット線は、耐酸化性の観点から600℃程度の高温域での使用には適していなかった。また、特許文献1のサーミスタ素子は、400度から500度の温度領域で使用されることが想定されたものであった。温度センサの使用温度が600℃程度である場合、使用温度が400度から500度である場合に比べ、サーミスタ素子の引出線には、さらに優れた耐酸化性が要求される。特許文献1のサーミスタ素子の引出線も、耐酸化性の観点から600℃程度の高温域での使用には適していなかった。特許文献2のサーミスタ素子は、高価な白金(Pt)及びPt系合金を引出線の材料としている。このため、引出線の材料としてより安価な材料が要望されている。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、600℃程度の高温域での使用に適したサーミスタ素子及び温度センサを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、第1態様のサーミスタ素子は、サーミスタ焼結体と、当該サーミスタ焼結体に設けた一対の電極と、前記一対の電極のそれぞれに接続された一対の引出線とを備えるサーミスタ素子であって、前記一対の引出線は、Coを主成分とし、質量比が最も多い第1元素としてCoを含み、質量比が2番目に多い第2元素としてNiを含むCo系合金によって形成され、前記一対の引出線の一部と、前記サーミスタ焼結体と、前記一対の電極とを被覆するガラス封止部をさらに備え、前記一対の引出線のビッカース硬度は300HV以下である。コバルト(Co)を主成分とし、質量比が最も多い第1元素としてCoを含み、質量比が2番目に多い第2元素としてNiを含むCo系合金は、後述する評価試験結果のように、600℃程度の耐酸化性が優れている。したがって、第1態様のサーミスタ素子は、600℃程度の高温域で使用された場合であっても、引出線の酸化に起因して測定対象流体の温度を測定できなくなることを回避することができる。また、第1態様のサーミスタ素子では、引出線として白金及びロジウム等の貴金属材料を主成分としていないため、安価なサーミスタ素子とすることができる。さらに、引出線をCo系合金から構成することで、引出線は磁性を有するため、磁力を利用してサーミスタ素子を搬送する等、サーミスタ素子は製造時の取扱が容易であるという副次的な効果が、第1態様のサーミスタ素子では得られる。
ーミスタ素子は、ビッカース硬度が300HV以下である引出線を備えることによって、ガラス封止時又はガラス封止後にガラス封止部にクラックが生じることを抑制することができる。ビッカース硬度が300HV以下である引出線は、例えば、Co系合金からなる引出線を還元雰囲気下で熱処理することによって得られる。なお、ガラス封止部は、ガラスからなる被膜であり、結晶化ガラス又は非晶質ガラスから構成されるものの他、被膜中に絶縁性セラミック成分などを極微量含有するものまでを含む。
第1態様のサーミスタ素子において、前記ガラス封止部の熱膨張係数と、前記一対の引出線の熱膨張係数との差の絶対値が2.0×10−6/K以下であり、前記ガラス封止部の熱膨張係数と、前記サーミスタ焼結体の熱膨張係数との差の絶対値が2.0×10−6/K以下であり、前記一対の引出線の熱膨張係数と、前記サーミスタ焼結体の熱膨張係数との差の絶対値が2.0×10−6/K以下であってもよい。この場合のサーミスタ素子は、各部材間の熱膨張率の差に起因して、ガラス封止部にクラックが生じたり、ガラス封止部と引出線との間に隙間が発生したりすることを回避することができる。
第2態様の温度センサは、第1態様のサーミスタ素子を備えている。第2態様の温度センサは、第1態様のサーミスタ素子と同様な効果を奏することができる。
温度センサ100の縦断面図である。 サーミスタ素子21の縦断面図である。 Co系合金を還元雰囲気で熱処理することによって、引出線23,24のビッカース硬度を調整することを確認するための評価試験1の結果を表すグラフである。 評価試験2における、引出線23,24の材料組成と、引出線23,24の熱膨張係数(室温から600℃)と、引出線23,24のビッカース硬度と、ガラス封止化試験結果と、耐酸化性試験結果との対応を表す表である。
以下、本発明を具体化したサーミスタ素子及び温度センサの実施形態について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いるものであり、記載している装置の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。以下の説明において、図1及び図2の上下方向を温度センサ100の上下方向とし、図1及び図2の左右方向を温度センサ100の左右方向として説明する。図1及び図2の紙面手前側及び紙面奥行き側をそれぞれ、温度センサ100の前側及び後ろ側として説明する。図1及び図2の上方を、温度センサ100の後端側とし、図1及び図2の下方を、温度センサ100の先端側として説明する。図1において、温度センサ100の軸線を軸線Lで図示する。
まず、図1を参照して、温度センサ100の概略的な構成について説明する。温度センサ100は、例えば、自動車(図示外)のエンジンから排出される排気ガスを車外に放出するための排気管に取り付けられる。図1のように、温度センサ100は、チューブ11と、サーミスタ素子21と、素子支持体31と、絶縁管41と、中継線35,36と、リード線51,52と、ねじ込み部材61と、シール材71とを備える。
チューブ11は、金属(例えば、ステンレス合金)によって形成された、有底の筒状部材である。チューブ11は、先端10側が閉じており、筒の径は先端側から後端側に向かって、小径部12,13と、中径部14,15と、大径部16との順に段状に大きくなっている。チューブ11の内部には、先端10側から順に、サーミスタ素子21と、素子支持体31と、絶縁管41とがそれぞれ配置されている。サーミスタ素子21は、ガラス封止型のサーミスタ素子である。サーミスタ素子21の詳細は図2を参照して後述する。素子支持体31は、絶縁体(例えば、フォルステライト2MgO・SiOの結晶を主成分とするセラミック)によって形成された2穴の筒状部材であり、サーミスタ素子21の2本の引出線23,24を各穴の内部に保持する。絶縁管41は、セラミック製の絶縁体によって形成された2穴の筒状部材であり、中継線35,36を各穴の内部に保持する。中継線35,36は、先端10側端部がサーミスタ素子21の引出線23,24と接続されている。中継線35,36はそれぞれ、後端側の端部に端子37,38を備え、端子37,38には、リード線51,52がカシメによって接続されている。リード線51,52は、電気信号取り出し用の電線である。リード線51,52はチューブ11の大径部16の後端において温度センサ100の外部に引き出されている。
ねじ込み部材61は、チューブ11の上下方向中央付近の外周に外嵌されて固定されている。ねじ込み部材61は、ねじ込み部材61の内周面と、チューブ11の上下方向中央付近の外周面との間を、例えばロウ付けすることによって、チューブ11に固定されている。ねじ込み部材61は、ねじ筒部63と、多角形部66とを備える。ねじ筒部63の外周面には、温度センサ100を排気管(図示略)のマニホールド部位の取り付け穴(ネジ穴)にねじ込み方式で固定するためのネジ60がある。多角形部66は、ねじ筒部63の後端側において軸線Lからねじ込み部材61の外周に向かう方向に突出した鍔状の形状を有する。多角形部66の後端面68は、チューブ11の大径部16の先端側段部18によって係止されている。多角形部66の先端面70には、環状ワッシャ69が配置されている。環状ワッシャ69は、温度センサ100を排気管(図示略)のマニホールド部位の取り付け穴(ネジ穴)にねじ込む時に、取り付け穴と、温度センサ100との間の隙間をシールする。ねじ筒部63の先端は、中径部15の先端寄り部位に配置されている。ねじ筒部63の外周面の先端寄り部位(ネジ60の先端部)は先細り状(テーパ)に形成されている。
チューブ11の後端に位置する大径部16には、2穴の筒状のシール材71が配置されている。リード線51,52は、弾性を有するシール材71の各穴に通されている。大径部16の後端側には、カシメによって、大径部16に比べ径が小さくなっているカシメ部17がある。カシメ部17は、大径部16の後端側のシール材71を保持すると共に、リード線51,52を固定している。
図2を参照して、サーミスタ素子21の詳細を説明する。図2のように、サーミスタ素子21は、サーミスタ焼結体22と、一対の電極25,26と、一対の引出線23,24と、一対の接合電極27,28と、ガラス封止部29とを備える。サーミスタ焼結体22は、ペロブスカイト構造又はスピネル構造を有する金属酸化物を主体とする材料によって板状に形成されている。サーミスタ焼結体22は、周囲の温度に応じて抵抗値が変化する特性を有する。電極25,26は、白金(Pt)系又は金(Au)系の貴金属によって形成された電極である。電極25,26は、サーミスタ焼結体22に電圧を印加するために、サーミスタ焼結体22を挟むように、サーミスタ焼結体22の左右の表面のそれぞれに積層されている。
引出線23,24は、サーミスタ焼結体22の抵抗値の変化を外部に取り出すための電線である。引出線23,24の材料は、コバルト(Co)を主成分とするCo系合金であり、引出線23,24の太さは0.2mmである。引出線23,24は、接合電極27,28によって一対の電極25,26のそれぞれに接合されている。引出線23,24のビッカース硬度は、還元雰囲気下で熱処理を行うことによって300HV以下に調整されている。接合電極27,28は、引出線23,24を電極25,26に接合させるための電極である。接合電極27,28は、電極25,26と同様の白金(Pt)系又は金(Au)系の貴金属によって形成される。ガラス封止部29は、一対の引出線23,24の先端側と、サーミスタ焼結体22と、一対の電極25,26とのそれぞれを被覆する。ガラス封止部29は、被覆する部材を内部に保持するとともに、被覆する部材を外部環境から保護する。
素子支持体31に支持されたサーミスタ素子21について、以下の評価試験1及び評価試験2を行った。以下の説明においてCo系合金等の合金に含まれる金属元素と、金属元素の含有量(質量%)とを、(質量%で表される含有量)(金属元素の元素記号)のように表記する。例えば、70Co−25Ni−4Feで表されるCo系合金は、コバルト(Co)を70質量%含み、ニッケル(Ni)を25質量%含み、鉄(Fe)を4質量%含むCo系合金を表す。
[評価試験1]
評価試験1として、還元雰囲気下で熱処理を行うことによって、引出線23,24のビッカース硬度を低下させる確認試験を行った。具体的には、70Co−25Ni−4Feで表されるCo系合金によって形成された引出線について、水素雰囲気下で850℃、1時間加熱した場合と、未処理の場合とで、ビッカース硬度を比較した。各条件のサンプル数は、5とした。ビッカース硬度は、JIS B 7725に従って測定した。評価試験1の結果を図3に示す。図3のように、未処理の引出線のビッカース硬度は約450HVであるのに対し、熱処理後の引出線のビッカース硬度は約150HVであった。図示しないが、熱処理の温度を変えることによって、熱処理後の引出線のビッカース硬度の低下量を調整することが可能であることが確認された。
[評価試験2]
評価試験2として、引出線23,24の材料及びビッカース硬度が異なる条件で、封止化試験と、耐酸化性試験とを行った。封止化試験では、サンプル素子にガラス封止部29を形成させた後に、ガラス封止部29にクラックが発生したか否かを目視で確認し、ガラス封止部29にクラックが発生していなかった場合を合格(図4中「OK」と表記)とした。サンプル素子は、ガラス封止部29を形成する前の素子(図2においてガラス封止部29を備えない素子)であって、引出線23,24が素子支持体31に保持されている素子である。以下の手順で、サンプル素子にガラス封止部29を形成させた。サンプル素子の先端側(封止される部分)を後述する材料によって形成された筒状のガラス管の内部に挿入した。サンプル素子が挿入されたガラス管を、サンプル素子及びガラス管が水平に保持された状態で加熱してガラス管を溶融させた。サンプル素子及び加熱により十分に溶融されたガラス管を冷却して、サンプル素子の先端側の部分にガラス封止部29を形成させた。
耐酸化性試験では、サンプルを600℃の炉内の雰囲気に100時間晒す温度試験を行い、温度試験を行う前後でサーミスタ素子21の抵抗値を比較した。耐酸化性試験に供したサンプルは、素子支持体31に支持されたサーミスタ素子21であって、ガラス封止部29にクラックが発生していないサーミスタ素子21である。耐酸化性試験では、温度試験を行う前後のサーミスタ素子21の抵抗値の変化率が3%以下である場合に、耐酸化性あり(図4中「OK」と表記)とした。各条件のサンプル数は10とした。
評価試験2に用いたサンプルの各部材の材料及び熱膨張係数は以下の通りである。サーミスタ焼結体22は、((Y,Yb)1−aSr)(Al,Mn,Cr)Oと表記されるペロブスカイト型酸化物結晶相(係数aは、0.18<a<0.50の範囲)と、(Y,Yb)Alと表記される結晶相とを含む導電性酸化物焼結体である。このサーミスタ焼結体22は、原料仕込み組成が、Yが27.20mol%,Ybが6.28mol%,SrOが16.74mol%,Alが33.47mol%,MnOが15.90%,Crが0.42mol%となるように、各種粉末を調製した材料を用いて湿式混合、仮焼、湿式粉砕、造粒、成形、及び焼成といった公知の工程を経て製造した。サーミスタ焼結体22の前後方向及び上下方向(軸線L方向)の長さは0.6mmであり、左右方向の長さは0.35mmである。サーミスタ焼結体22の熱膨張係数は、9.4×10−6/K(室温から800℃)である。
また、ガラス封止部29は、旭硝子株式会社製のガラスR273(旭硝子株式会社の商品番号)を材料とするガラス管を用いて形成した。このガラスR273は、SiO,CaO,SrO,BaO,Al,及びSnOを原料とするガラスである。ガラス封止部29の熱膨張係数は、8.5×10−6/K(室温から800℃)である。電極25,26と、接合電極27,28とのそれぞれは、白金によって形成した。電極25,26と、接合電極27,28とのそれぞれの熱膨張係数は、10.0×10−6/K(室温から1000℃)である。さらに、引出線23,24の材料として、図4のNo.1から8に示す52Ni−48Feと、47Ni−53Feと、70Co−25Ni−4Feと、75Co−20Ni−4Feと、75Co−25Niと、55Co−40Ni−4Feとのそれぞれを用いた。引出線23,24の熱膨張係数は、図4のNo.1から8に示すように、8.5から10.1×10−6/K(室温から600℃)の範囲の値である。引出線23,24の太さは、0.2mmである。素子支持体31は、フォルステライト2MgO・SiOの結晶を主成分とするセラミックによって形成した。
封止化試験について、図4では、封止化試験の結果を、サンプル数(試料数)に対する合格と判断されたサンプル数の割合で表している。図4のように、ビッカース硬度が300HV以下である、No.1,2,4,6,7及び8の引出線23,24を備えるサンプルでは、試験に供したサンプル全てが合格と判断された。これに対し、ビッカース硬度が450HVであるNo.3の引出線23,24を備えるサンプルでは、合格と判断されたサンプルの割合は4/10であった。ビッカース硬度が500HVであるNo.5の引出線23,24を備えるサンプルでは、合格と判断されたサンプルの割合は3/10であった。
ガラス封止後にガラス封止部29にクラックが発生するのは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、ビッカース硬度が大きい引出線23,24は、ビッカース硬度が小さい引出線23,24に比べ、バネ性が強い。引出線23,24のバネ性が一定以上大きい場合には、ガラス封止時及びガラス封止後に引出線23,24がガラス封止部29に接触したり、引出線23,24に振動が及んで引出線23,24が揺動したりすることによって、ガラス封止部29と、引出線23,24との境界に過剰な負荷がかかり、ガラス封止部29にクラックが発生すると考えられる。封止化試験の結果から、ガラス封止型のサーミスタ素子21では、引出線23,24のビッカース硬度を300HV以下とすることで、ガラス封止後にガラス封止部29にクラックが発生することが回避されることが確認された。
耐酸化性試験について、図4では、耐酸化性試験の結果を、サンプル数(試料数)に対する耐酸化性ありと判断されたサンプル数の割合で表している。耐酸化性について、ニッケル(Ni)を主成分とするNi系合金を材料とするNo.1及びNo.2の引出線では、試験に供したサンプル全てが耐酸化性なしと判断された。これに対し、コバルト(Co)を主成分とするCo系合金を材料とするNo.3から8の引出線では、試験に供したサンプル全てが耐酸化性ありと判断された。
図4に基づき、サーミスタ素子21は、600℃程度の高温域で使用される場合を考慮して、以下の材料によって形成されることが好ましいといえる。Co系合金に含まれるコバルト(Co)以外の金属元素について、耐酸化性の観点から、引出線23,24の材料は、質量比が最も多い第1元素としてコバルト(Co)を含み、質量比が2番目に多い第2元素としてニッケル(Ni)を含むCo系合金が好ましい。同様に、耐酸化性の観点から、引出線23,24の材料は、質量比が最も多い第1元素としてコバルト(Co)を含み、質量比が2番目に多い第2元素としてニッケル(Ni)を含み、質量比が3番目に多い第3元素として鉄(Fe)を含むCo系合金であることが好ましい。Co系合金に含まれるコバルト(Co)の質量比について、引出線23,24の材料は、耐酸化性及び成形の容易さの観点から、(Co)を50から80質量%含むCo系合金であることが好ましい。耐酸化性を向上させる観点から、引出線23,24はニッケル(Ni)メッキ等の酸化防止処理されたものであることがさらに好ましい。また、コストの観点から、引出線23,24には、貴金属成分が非含有となっている。
図示しないが、コバール合金(54Fe−29Ni−17Co)によって形成された引出線23,24を備えるサーミスタ素子21を用いて、封止化試験を行った。コバール合金の熱膨張係数は、5.0×10−6/K(室温から600℃)であり、コバール合金のビッカース硬度は250HVである。コバール合金によって形成された引出線23,24は、ビッカース硬度は250HVであるが、封止化試験において合格と判断されるサンプルの割合が少なかった。これは、引出線23,24と、ガラス封止部29との熱膨張率の差に起因して、ガラス封止部29と引出線23,24との間に熱応力が発生するためと考えられる。
これに対し、図4に示す評価試験2のサンプルのNo.3〜7は、室温から600℃の温度範囲において以下の関係を満たす。ガラス封止部29の熱膨張係数Q1と引出線23,24の熱膨張係数Q2との差の絶対値P1は、0.5×10−6/Kから1.5×10−6/Kの範囲の値である。ガラス封止部29の熱膨張係数Q1とサーミスタ焼結体22の熱膨張係数Q3との差の絶対値P2は、0.9×10−6/Kである。サーミスタ焼結体22の熱膨張係数Q3と引出線23,24の熱膨張係数Q2との差の絶対値P3は、0.1×10−6/Kから0.6×10−6/Kの範囲の値である。すなわち、評価試験2のサンプルのそれぞれにおいて、絶対値P1からP3はいずれも、2.0×10−6/K以下である。上記関係満たした場合、サーミスタ焼結体22及び引出線23,24と、ガラス封止部29との間に発生する熱応力が抑制される。したがって、ガラス封止部29と、引出線23,24との間に隙間が発生することを抑制することができる。ガラス封止部29と引出線23,24との間における隙間の発生が抑制されることにより、隙間から還元ガスがサーミスタ焼結体22に侵入してくることによってサーミスタ焼結体22の電気的特性が変化することを防ぐことができる。
引出線23,24の材料は、サーミスタ素子21の使用温度範囲内に、相変態が生じる温度が含まれない材料であることが好ましい。サーミスタ素子21の使用温度範囲内に、相変態が生じる温度が含まれる材料である場合、相変態温度前後で熱膨張率が急激に変化するためである。例えば、70Co−25Ni−4Feで表されるCo系合金は、相変態が1000度程度である点で、使用温度範囲が室温から600℃程度であるサーミスタ素子21の引出線23,24の材料として好ましい。
以上のように、温度センサ100及びサーミスタ素子21において、一対の引出線23,24は、コバルト(Co)を主成分としたCo系合金によって形成される。コバルト(Co)を主成分としたCo系合金は、評価試験2の結果のように、600℃程度の高温域での耐酸化性が優れている。したがって、サーミスタ素子が600℃程度の高温域で使用された場合であっても、引出線の酸化に起因して測定対象流体の温度を測定できなくなることを回避することができる。本実施形態のサーミスタ素子21を備える温度センサ100は、室温から600℃までの範囲の温度を好適に測定することができ、サーミスタ素子21が備える部材の耐熱性及び耐酸化性を考慮すると、750℃のまでの範囲の温度を測定することが可能である。Co系合金は、引出線の材料として従来使用されていた白金(Pt)及びPt系合金に比べ安価であるため、経済的な観点からも、引出線23,24の材料として適している。
本発明は、以上詳述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の(1)から(4)の変形が加えられてもよい。
(1)上記実施形態のサーミスタ素子21は、ガラス封止型のサーミスタ素子であったが、本発明はガラス封止型サーミスタ素子以外のサーミスタ素子に適用されてもよい。
(2)ガラス封止型素子に本発明が適用される場合、引出線23,24のビッカース硬度の条件は、適宜変更されてよい。ビッカース硬度を調整するための条件(例えば、熱処理の温度、時間及び雰囲気の組成)は適宜変更されてよい。サーミスタ焼結体22と、引出線23,24と、ガラス封止部29との各部材間の熱膨張率の差の絶対値は、適宜変更されてよい。
(3)引出線23,24の材料は、コバルト(Co)を主成分とするCo系合金であればよく、Co系合金に含まれるコバルト(Co)以外の金属の種類及び各金属の含有量は適宜変更されてよい。
(4)温度センサ100のサーミスタ素子21以外の構成は適宜変更されてもよい。例えば、温度センサ100が備えるサーミスタ素子21以外の部材の形状、材料及び配置は、必要に応じて変更されてもよい。
21 サーミスタ素子
22 サーミスタ焼結体
23,24 引出線
25,26 電極
29 ガラス封止部
100 温度センサ

Claims (3)

  1. サーミスタ焼結体と、当該サーミスタ焼結体に設けた一対の電極と、前記一対の電極のそれぞれに接続された一対の引出線とを備えるサーミスタ素子であって、
    前記一対の引出線は、Coを主成分とし、質量比が最も多い第1元素としてCoを含み、質量比が2番目に多い第2元素としてNiを含むCo系合金によって形成され
    前記一対の引出線の一部と、前記サーミスタ焼結体と、前記一対の電極とを被覆するガラス封止部をさらに備え、
    前記一対の引出線のビッカース硬度は300HV以下であることを特徴とするサーミスタ素子。
  2. 前記ガラス封止部の熱膨張係数と、前記一対の引出線の熱膨張係数との差の絶対値が2.0×10−6/K以下であり、前記ガラス封止部の熱膨張係数と、前記サーミスタ焼結体の熱膨張係数との差の絶対値が2.0×10−6/K以下であり、前記一対の引出線の熱膨張係数と、前記サーミスタ焼結体の熱膨張係数との差の絶対値が2.0×10−6/K以下であることを特徴とする請求項に記載のサーミスタ素子。
  3. 請求項1又は請求項に記載のサーミスタ素子を備えたことを特徴とする温度センサ。
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