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JP5236145B2 - 帯電防止性ポリプロピレンフィルム - Google Patents

帯電防止性ポリプロピレンフィルム Download PDF

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Description

本発明は、安定した帯電防止性能を有する帯電防止性ポリプロピレンフィルムに関する。
ポリオレフィンフィルムは、その良好な加工適性や優れた機械強度、透明性、製袋性等の二次加工適性、防湿性等をはじめ安価なため、包装材料として広く使用されている。しかし、非常に静電気を帯びやすい特性も持ち合わせているため、埃等の付着、作業者への電撃、印刷時のインキの飛散等が問題となっている。
上記の問題を解決するための方法の一つとして、ポリオレフィンフィルムに適宜の低分子量界面活性剤を添加し、これらの界面活性剤をポリオレフィンフィルム表面にブリードさせることにより、当該フィルム表面に帯電防止性を付与する方法が用いられてきた。
しかしながら、このような移行型帯電防止剤は、主に(1)ないし(5)に示す問題点を有する。(1)フィルム表面へのブリード過多により外観不良(白化現象)が生じる。(2)低湿度下では帯電防止性不良となりやすい(湿度によって左右されやすい)。(3)製膜状態(条件)によってフィルム表面へのブリード量が変動しやすい(帯電防止性能が安定し難い)。(4)水・有機溶剤での払拭により帯電防止性の効果が減退する。(5)フィルム表面に存在する低分子量物により、インキ・コート等の転移性・接着性が阻害される。
上記の問題点を解決する手段として、前記低分子量界面活性剤に代えて高分子型帯電防止剤の検討が進められている。例えば、ポリプロピレン系樹脂と特定の芳香環含有ポリエーテルエステルアミドとポリアミド樹脂、さらに特定の変性低分子量ポリプロピレンの混合物からなる帯電防止性樹脂層をポリオレフィン系フィルムの表面に積層したポリオレフィンフィルムが提案されている(特許文献1参照)。
また、ポリオレフィン(a)のブロックと、体積固有抵抗率が1×105〜1×1011Ω・cmの親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー(A)およびポリオレフィン樹脂(B)を必須成分とする帯電防止性樹脂組成物からなる厚みが0.1〜50μmの層(X)と、熱可塑性樹脂からなる基層(Y)とからなることを特徴とする多層フィルムも提案されている(特許文献2参照)。
しかし、前記特許文献1の帯電防止性樹脂層を用いたポリオレフィンフィルムにあっては、ポリオレフィン樹脂と帯電防止剤樹脂組成物との相溶性が不十分である。この結果、ポリオレフィン樹脂と溶融混練した帯電防止剤樹脂組成物とを積層したフィルムは、その加工時にロールの汚れ、外観不良、また成形条件による帯電防止性能の不安定化という本来の目的に相反する欠陥を内包していた。
同様に、前記特許文献2の帯電防止性樹脂層を用いたポリオレフィンフィルムにあっても、帯電防止剤のポリオレフィンに対する相溶性や延転性の悪さに起因する外観不良、帯電防止性不良等が指摘される。とりわけ外観については、白濁した斑紋の現出(図1参照)、表面全体の白濁化(図2参照)等の不良がみられる。両図中、網掛け部分が白濁箇所に相当する。
特開平11−170456号公報 特開2002−321314公報
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、特に低湿度下においても安定した帯電防止性を発揮し、かつ、水、有機溶剤による払拭後も帯電防止性の劣化も見られず、また加工時の発煙やロール汚れ等の加工上の問題を解消すると共に、透明性に優れ、外観上の欠陥のない帯電防止性を有するポリオレフィンフィルムとして帯電防止性ポリプロピレンフィルムを提供するものである。
すなわち、請求項1の発明は、親水性ポリマー(a)と変性ポリオレフィン(b)との共重合体からなる体積固有抵抗率が1×105〜1×1011Ω・cmであり酸変性ポリオレフィンポリエーテルブロックポリマーである永久帯電防止剤(A)と、前記永久帯電防止剤(A)との融点差が±20℃以内であり、かつ、230℃・21.18NにおけるMFRが2〜20g/10分であるポリプロピレン樹脂(B)とからなる帯電防止剤樹脂組成物(X)を、ポリプロピレン樹脂(Y)からなる基層の最外層に積層して少なくとも一方向に延伸してなり、前記帯電防止剤樹脂組成物(X)における永久帯電防止剤(A)と、ポリプロピレン樹脂(B)との重量比が、A:B=5:95〜50:50を満たし、前記帯電防止剤樹脂組成物(X)の層厚が0.5μm以上であることを特徴とする帯電防止性ポリプロピレンフィルムに係る。
請求項の発明は、JIS−K−7105による測定において、ヘーズが5%以下である請求項に記載の帯電防止性ポリプロピレンフィルムに係る。
本発明の帯電防止性ポリプロピレンフィルムによると、低湿度下においても安定した帯電防止性を発揮し、かつ、水、有機溶剤による払拭後も帯電防止性の劣化も見られない。また、加工時の発煙やロール汚れ等の加工上の問題が解消される。さらに、透明性に優れ、従前のフィルムにみられる外観上の欠陥(白濁)が改善された。加えて、水性インキによる印刷に関しても好適な性状が示される。
本発明の帯電防止性ポリプロピレンフィルムは、請求項1に規定するように、帯電防止剤樹脂組成物(X)がポリプロピレン樹脂(Y)からなる基層の最外層に積層され、少なくとも一方向に延伸(一軸延伸)、あるいは二軸延伸されることにより得られたフィルムである。この帯電防止剤樹脂組成物(X)は、親水性ポリマー(a)と変性ポリオレフィン(b)との共重合体からなる永久帯電防止剤(A)と、ポリプロピレン樹脂(B)との溶融混練等によって得られる。
すなわち、{本発明の帯電防止性ポリプロピレンフィルム=帯電防止剤樹脂組成物(X)+ポリプロピレン樹脂(Y)}、{帯電防止剤樹脂組成物(X)=永久帯電防止剤(A)+ポリプロピレン樹脂(B)}、{永久帯電防止剤(A)=親水性ポリマー(a)+変性ポリオレフィン(b)}とする関係に基づく。
永久帯電防止剤(A)を組成する親水性ポリマー(a)は、一般にポリエーテルと称されるものが好ましく、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルウレタン、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド及びこれらの変性物などが挙げられる。
この永久帯電防止剤(A)を組成する変性ポリオレフィン(b)は、適宜のポリオレフィンにおいて、その変性基としてカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基等が導入され、これらを少なくとも片末端に含有したポリオレフィンである。好ましくは、カルボキシル基変性ポリオレフィンが挙げられる。
前出の親水性ポリマー(a)と変性ポリオレフィン(b)は、好適に共重合されることにより永久帯電防止剤(A)が組成される。この永久帯電防止剤(A)は、1×105〜1×1011Ω・cmの体積固有抵抗率とすることにより、好適な表面固有抵抗率を有する帯電防止剤樹脂組成物(X)が得られるため望ましい。
そこで永久帯電防止剤(A)においては相溶性、延転性、帯電防止性能等から酸変性ポリオレフィンポリエーテルブロックポリマーが用いられる
この酸変性ポリオレフィンポリエーテルブロックポリマーとしては、例えば、三洋化成工業株式会社製:ペレスタットOP300(体積固有抵抗率:2×107Ω・cm)、東邦化学工業株式会社製:アンステックスFT−P348(体積固有抵抗率:8×108Ω・cm)等の酸変性ポリプロピレンポリエーテルブロックポリマーが選択される。また、前記酸変性ポリオレフィンポリエーテルブロックポリマーにあっては、酸変性ポリエチレンポリエーテルブロックポリマーも挙げられる。
ポリプロピレン樹脂(B)としては、ポリプロピレンの単独重合体、ポリプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとの共重合体、及びこれらの混合物等が挙げられる。上記α−オレフィンと共重合可能なα−オレフィン以外の単量体としては、酢酸ビニル、マレイン酸、ビニルアルコール、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
本発明の帯電防止性ポリプロピレンフィルムの基層となるポリプロピレン樹脂(Y)は、前記ポリプロピレン樹脂(B)と同様の樹脂組成物から選択される。このポリプロピレン樹脂(Y)は、単層のフィルムとしても、同一もしくは異なる樹脂同士を組み合わせて積層した樹脂膜とすることもできる。
前記の樹脂において、本発明に供するポリプロピレン樹脂(B)には、永久帯電防止剤(A)との融点差が±20℃以内であり、かつ、230℃・21.18N(230℃・2.16kgf)(JIS−K−7210,ASTM−D−1238に準拠)におけるMRF(メルトフローレート)が2〜20g/10分、より好ましくは、230℃・21.18NにおけるMRFが5〜10g/10分である樹脂が選択される。
すなわち、ポリプロピレン樹脂(B)は、前記の融点差、MFRの範囲内に規制されることにより、永久帯電防止剤(A)との相溶性が好転する。このため、良好な延転性が確保され、外観に欠陥のない良好な帯電防止性能を有する帯電防止性ポリプロピレンフィルムが得られる。ここでポリプロピレン樹脂(B)を例示すると、住友化学株式会社製エクセレン SP89E3、日本ポリプロ株式会社製ノバテックPP FX4E、同社製ノバテックPP FG3DE、同社製ノバテックPP CF1199等である。
前記帯電防止剤樹脂組成物(X)を組成する永久帯電防止剤(A)と、ポリプロピレン樹脂(B)との組成上の重量比は、後述する実施例から明らかなように、A:B=5:95〜50:50の重量比、より好ましくは10:90〜30:70の重量比とされる。永久帯電防止剤(A)の重量比が帯電防止剤樹脂組成物(X)において5重量部以下となると帯電防止性能は発揮されない。また、永久帯電防止剤(A)の重量比が帯電防止剤樹脂組成物(X)において50重量部以上となるとポリプロピレン樹脂(B)との相溶性の低下により、外観不良が発生する。したがって、上記の重量比とすることが望ましい。
ここで、前記永久帯電防止剤(A)とポリプロピレン樹脂(B)との混練について説明する。永久帯電防止剤(A)とポリプロピレン樹脂(B)は、上記所定の配合比率の重量部ずつ、公知の混合機(タンブラー,ヘンシェルミキサー等)にてドライブレンドされ、一軸押出機、二軸押出機、加圧ニーダー等の混練機により溶融混練される。この混練機において、永久帯電防止剤(A)をより微分散可能とするため、二軸押出機が好ましく利用される。
さらに、本発明の帯電防止性ポリプロピレンフィルムの製造について説明する。フィルムの延伸に際してはテンター法、チューブラー法、ロール延伸法等が用いられる。二軸延伸方法として、例えば、Tダイより帯電防止樹脂組成物(X)からなる層と、ポリプロピレン樹脂(Y)からなる基層とを共押出ししてシート状物に作製する。このシート状物をロールの周速差により縦方向に延伸し、続いてテンターにより横方向に延伸(逐時延伸)する方法である。またはテンターにより縦横を同時に延伸(同時延伸)する方法である。むろん、これらの延伸方法に限られるものではなく、作業性、樹脂特性に応じて好適に延伸方法、延伸装置は選択される。
すでに述べたとおり本発明の帯電防止性ポリプロピレンフィルムにあっては、基層となるポリプロピレン樹脂(Y)の最外層に帯電防止剤樹脂組成物(X)が積層されてなるフィルムである。前記帯電防止剤樹脂組成物(X)の層厚は0.5μm以上、特には1μm以上とすることが望ましい。後述する実施例からも明らかなように、十分な帯電防止性能の発現を勘案すると、前記の層厚が好適である。
また、帯電防止剤樹脂組成物(X)は、基層となるポリプロピレン樹脂(Y)の最外層の両面に積層されていても良く、前記ポリプロピレン樹脂(Y)の最外層の一面側のみへの積層としても良い。このように、帯電防止剤樹脂組成物(X)の積層面を制御することにより、製造上の効率、使用目的に応じた帯電防止性能を具備する帯電防止性ポリプロピレンフィルムの提供が可能となる。ポリプロピレン樹脂(Y)の基層の両面に帯電防止剤樹脂組成物(X)を積層させる場合、それぞれの面の帯電防止剤樹脂組成物(X)を同一とすることも、互いに異ならせることも可能である。
上記の各組成、配合比率に基づき得られた帯電防止性ポリプロピレンフィルムは、請求項に規定するように、JIS−K−7105による測定において、ヘーズは、5%以下、好ましくは3%以下であることが望ましい。ヘーズは5%以上となるとフィルムの透明性が劣り、商品価値を低下させることとなるためである。
なお、本発明の帯電防止性ポリプロピレンフィルムには、発明の目的を損なわない範囲において、酸化防止剤、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤をはじめ、通常のポリオレフィンフィルムに用いられる各種添加剤、充填剤を付加成分として適宜添加することができる。また、さらなる帯電防止性能の向上を目的として、アルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物からなる金属塩が添加されることもある。
さらに、本発明の帯電防止性ポリプロピレンフィルムによると、特に表面処理の有無による帯電防止性能の変動は見られない。したがって、当該帯電防止性ポリプロピレンフィルムに印刷を行う場合、印刷に先立ち、フィルム表面をコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理等によりフィルム表面の活性化処理を行うことにより、インキのなじみや接着性を向上させることができる。このため、上記のいずれかの方法で表面の活性化処理を行うことが望ましい。
帯電防止剤樹脂組成物(X)を積層した表面に対し活性化処理が行われた本発明の帯電防止性ポリプロピレンフィルムは、当該帯電防止剤樹脂組成物の積層面に水性インキ印刷される。水性インキ印刷であればインキの種類や印刷方法は特に限定されない。水性インキの溶剤として水が用いられる他、アルコール類、好ましくはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等の低級アルコールを併用しても良く、これらに特に制限はない。
また着色剤として一般的な無機及び有機顔料が使用でき、例えば溶解性及び不溶解性アゾ系、フタロシアニン系、ナフトール系等の有機顔料や酸化チタン、炭酸カルシウム、弁柄、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。また水性インキの樹脂バインダーとしては、水溶性又は水分散性の樹脂であるスチレン−アクリル酸系、スチレン−マレイン酸系などのアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジン変性樹脂などで安定な水性インキを製造できるものであれば良く、単独又は併用して用いることができる。その他の添加剤としてワックス類、消泡剤、分散剤等を使用しても良い。また印刷時のインキの粘度調整として水/アルコール類を併用した希釈剤を使用しても良い。印刷方法としては主に、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。
このようにして得られた本発明の帯電防止性ポリプロピレンフィルムは、単独では包装用資材、電子部品用の包装材料、テープ用材料、さらに、紙、不織布、セロハン等と張り合わせて使用することも可能である。加えて、他の可塑性樹脂成形品にラベルとして張り合わせて用いることもできる。
[帯電防止剤樹脂組成物の調製]
帯電防止剤樹脂組成物の調製にあたり、以下の表に示す永久帯電防止剤及びポリオレフィン樹脂を用いた。表中、A−1,A−2は酸変性ポリプロピレンポリエーテル共重合体系永久帯電防止剤、A−3はポリエーテルエステルアミド系永久帯電防止剤、A−4は低分子量型帯電防止剤、B−1〜B−5、B−7、B−8はポリプロピレン樹脂であり、B−6はポリエチレン樹脂である。表中の特注品とは、委託製造品である。
Figure 0005236145
Figure 0005236145
実施例1では、永久帯電防止剤(A−1)とポリプロピレン樹脂(B−1)とを重量比で(A−1):(B−1)=10:90の配合比率を満たすようにタンブラー(タンブルミキサー)によりドライブレンドした。続いて、二軸押出機で溶融混練後、ストランド状に押し出し、冷却後、任意の大きさにカットしてペレタイズ化し、実施例1の帯電防止剤樹脂組成物(X−1)とした。
[ポリオレフィンフィルムの試作]
上記帯電防止剤樹脂組成物(X−1)と、基層(Y)としてMFR3.0g/10分・結晶化度97%のホモポリプロピレン(表2中(B−7))をTダイより共押出し、テンター法二軸延伸機(三菱重工株式会社製)により、基層(Y)の厚さを20μmとし、その一面側に厚さ1μmの帯電防止剤樹脂組成物層(X−1)を形成する帯電防止性ポリプロピレンフィルム(実施例1)を得た。さらに、当該帯電防止性ポリプロピレンフィルムの帯電防止剤樹脂組成物(X−1)面には、ぬれ試験(JIS−K−6768)の指数が40mN/mとなるようにコロナ放電処理(8.0W・min/m2)を行った。
引き続いて、実施例2ないし8、併せて比較例1ないし8も実施例1と同様の手法により、以下の表3(実施例)及び表4(比較例)の配合比率に基づき調製・試作した。比較例7は帯電防止剤樹脂組成物層の層厚を0.2μmとした以外は他の実施例と同様に試作した。比較例9はポリプロピレン樹脂(B−3)に低分子量型帯電防止剤(A−4)を1.0重量%ドライブレンドして実施例1と同様にペレタイズ化し、帯電防止剤樹脂組成物を得た。次いでこの帯電防止剤樹脂組成物をTダイにより押し出し、厚さ20μmの帯電防止性ポリプロピレンフィルムとした。なお、比較例2はB−6のポリエチレン樹脂を基層に用いたため帯電防止性ポリエチレンフィルムとなる。いずれの実施例、比較例とも前出の実施例1と同様にコロナ放電処理を行った。
Figure 0005236145
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得られたそれぞれの試料(実施例1ないし8及び比較例1ないし9)について、製膜状況、フィルムの外観、表面固有抵抗率、水性インキ印刷特性を評価・測定し、それぞれの試料について、全体的な総合評価を行った。以下に評価、測定方法の詳細を示す。
[製膜状況]
発煙については、製膜機の押出機部分、テンター出口部分、排気口からの発煙状態を目視により観察した。評価にあたり、発煙無しを“○”、多少発煙ありを“△”、製膜機周辺まで煙で白く曇るものを“×”とした。
ロール汚れについては、帯電防止剤樹脂組成物が接するロール(特に延伸ロール)を目視により確認し、ロールへの付着物の有無を評価した。評価にあたり、汚れ無しを“○”、製膜し始めて12時間で付着物が生じたものを“△”、製膜し始めて10分で付着物が生じたものを“×”とした。
[フィルムの外観]
ヘーズの測定は、JIS−K−7105に準拠し、デジタル濁度計(日本電色工業株式会社製:NDH−20D)を使用してフィルム1枚当たりのヘーズを測定した。単位は(%)である。
LSIの測定は、視覚透明度試験機(株式会社東洋精機製作所製)を使用してフィルム1枚当たりの透明度を測定した。単位は(%)である。ちなみに、LSIは視感とヘーズとの不一致について改善した指標である。LS値とは、狭い角度の拡散透過光を示し、ヘーズに比べ、より人間の目で感じる曇り度合いに近い値を示す。
外観不良は、フィルムにおいて帯電防止剤樹脂組成物が積層された面を目視にて観察した。表面全体にわたり透明な試料は“○”とした。背景技術にて述べた図1のように白い斑紋が散在する試料は“△”とした。さらに図2のように表面全体にわたり白濁した試料は“×”とした。
[表面固有抵抗率]
表面固有抵抗率は、JIS−K−6911に準拠し、高抵抗−抵抗率計(三菱油化株式会社製、MCP−HT260)を用い、次に示す条件下において表面固有抵抗率(Ω)を測定した。
製膜直後の測定とは、前出のテンター法二軸延伸機から製膜された各試料のフィルムについて、23℃,50%RH(以下、表記の湿度は相対湿度である。)の雰囲気下で帯電防止剤樹脂組成物が積層された面の表面固有抵抗率を測定したものである。
1日放置後の測定とは、製膜された各試料のフィルムを35℃,60%RHの雰囲気下で24時間エージングした後、23℃,50%RH雰囲気下にて測定したものである。
水洗後の測定においては、各試料の製膜されたフィルムの帯電防止剤樹脂組成物が積層された面に対し、食器用中性洗剤(ライオン株式会社製:ママレモン)を染み込ませた市販のナイロンスポンジを用いて20回こするように洗い、蒸留水で十分にすすいだ。その後80℃、3時間乾燥した後、23℃,50%RH雰囲気下にて24時間静置後、23℃,50%RH雰囲気下にて測定した。
溶剤拭後の測定においては、各試料の製膜されたフィルムの帯電防止剤樹脂組成物が積層された面に対し、トルエンを染み込ませた不織布を用いて20回こするように拭き取り、23℃,50%RH雰囲気下にて自然乾燥後、同雰囲気下にて測定した。
加えて、製膜された各試料のフィルムを35℃,60%RHの雰囲気下で24時間エージングした後、23℃,15%RH雰囲気下における測定も行った。
[水性インキ印刷適性]
水性インキに東洋インキ製造株式会社製「JW224アクワエコール墨」を用い、これを専用の希釈溶剤により希釈し、固形分濃度30重量%、アルコール分濃度10%に調製した。得られた水性インキを各試料(実施例1ないし8、比較例1ないし9)の帯電防止剤樹脂組成物が積層された面にグラビア印刷機により印刷した。
このようにして水性インキ印刷が行われた試料の表面を光学顕微鏡により観察(倍率75倍)し、各試料のインキ転移状態及びインキのはじき具合を評価した。評価に当たり、インクのはじきが全く見られず、網点の再現性が良好であるものを“○”とした。細かいはじきが多数見られ、網点の抜けが見られるものを“△”とした。大きなはじきが全体に見られ、網点自体がほとんど存在しないものを“×”とした。
Figure 0005236145
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実施例1ないし8及び比較例1ないし9の各試料に関する評価・測定の結果から、永久帯電防止剤(A)とポリプロピレン樹脂(B)との融点差を±20℃、かつ、ポリプロピレン樹脂(B)のMRF2〜20g/10分、より好ましくは、5〜10g/10分を満たすこと、さらに、永久帯電防止剤(A)と、ポリプロピレン樹脂(B)との組成上の重量比、A:B=5:95〜50:50の重量比、より好ましくは10:90〜30:70の重量比を満たした実施例の帯電防止性ポリプロピレンフィルムは、いずれも指標においても比較例と比して良好な結果を得た。また、低湿度下(20℃,15%RH)においても良好な帯電防止性能が確認された。
従来の帯電防止性フィルム表面の欠陥を表す模式図である。 従来の帯電防止性フィルム表面の欠陥を表す他の模式図である。

Claims (2)

  1. 親水性ポリマー(a)と変性ポリオレフィン(b)との共重合体からなる体積固有抵抗率が1×105〜1×1011Ω・cmであり酸変性ポリオレフィンポリエーテルブロックポリマーである永久帯電防止剤(A)と、前記永久帯電防止剤(A)との融点差が±20℃以内であり、かつ、230℃・21.18NにおけるMFRが2〜20g/10分であるポリプロピレン樹脂(B)とからなる帯電防止剤樹脂組成物(X)を、ポリプロピレン樹脂(Y)からなる基層の最外層に積層して少なくとも一方向に延伸してなり、
    前記帯電防止剤樹脂組成物(X)における永久帯電防止剤(A)と、ポリプロピレン樹脂(B)との重量比が、A:B=5:95〜50:50を満たし、前記帯電防止剤樹脂組成物(X)の層厚が0.5μm以上であることを特徴とする帯電防止性ポリプロピレンフィルム。
  2. JIS−K−7105による測定において、ヘーズが5%以下である請求項に記載の帯電防止性ポリプロピレンフィルム。
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