上記特許文献1に記載されたステアリングコラム装置に上記特許文献2に記載されたリンク部材と制限部材を適応させた場合には、車両衝突の二次衝突時において、操作レバーがロック操作された状態で支持ブラケットが車両前方に移動離脱するときに、コラムチューブの先端部が、アウタージャケットの開口から径外方向へ引き込まれた制限部材の制限部と当接しないため、必要十分な衝撃吸収ストロークを確保することが可能である。また、車両前方のテレスコ調整時には、テレスコ長孔の後端とボルトが当接する前に、コラムチューブの先端部をアウタージャケットの開口から径内方側へ突出した制限部材の制限部に当接させることが可能である。
しかし、この場合には、コラムチューブの先端部が制限部材の制限部に勢いよく当接すると、制限部材がリンク部材と連動して傾動し、制限部材の制限部がアウタージャケットの開口から径外方側へ引き込まれるように回動するおそれがある。この結果、コラム側ブラケットのコラム軸方向における前方への移動が、コラムチューブの先端部と制限部材の制限部との当接によって規制されず、テレスコ長孔の後端とボルトとの当接によって規制されるおそれがある。このため、上述した支持ブラケットへの衝撃力の伝達を抑制することができず、上述した課題が解消されないおそれがある。
本発明は、上記した課題に対処すべくなされたものであり、車体の一部に対してコラム軸方向に移動可能なコラムチューブと、前記車体の一部に組付けられ所定以上の荷重が作用すると車両前方に移動離脱可能な支持ブラケットと、車両衝突の二次衝突時において前記支持ブラケットの移動離脱に伴い衝撃エネルギーを吸収可能な衝撃吸収手段と、前記コラムチューブに固着されて一体的に移動可能なコラム側ブラケットと、このコラム側ブラケットを前記支持ブラケットに対して解除可能に固定するロック手段を備え、前記ロック手段が、前記コラム側ブラケットに設けたコラム軸方向に延びるテレスコ長孔に挿通されて車両の左右方向に延びるボルトと、前記ボルト上に回転操作可能に組付けられてロック・アンロック操作により前記コラム側ブラケットを前記支持ブラケットに対して固定・解除可能な操作レバーを備えていて、前記操作レバーのロック操作により、前記コラム側ブラケットが前記支持ブラケットに対して固定され、前記操作レバーのアンロック操作により、前記コラム側ブラケットが前記支持ブラケットに対してコラム軸方向に前後位置調整可能となるステアリングコラム装置において、前記コラム側ブラケットと一体的に移動可能で車両の左右方向に延びる延出部と、前記車体の一部に対して上下方向に傾動可能に組付けられて前記延出部を挿入し付勢手段により上方に付勢されている傾動部材と、この傾動部材の上端部分に係合し、前記操作レバーのアンロック操作に伴って前記傾動部材を下方に傾動させ、前記操作レバーのロック操作に伴って前記傾動部材の上方への傾動を許容する傾動カムが設けられていて、前記傾動部材には、コラム軸方向に延びていて前記操作レバーがアンロック操作されたときに前記延出部のコラム軸方向の移動を所定量許容する第1許容部と、コラム軸方向に延びていて前記第1許容部と重合する部分とこれより前方に延びる部分を有し、前記操作レバーがロック操作された状態で前記支持ブラケットが車両前方に移動離脱するときに前記延出部のコラム軸方向の移動を許容する第2許容部が形成されていて、前記コラム側ブラケットのコラム軸方向における前方位置調整時に、前記延出部と前記第1許容部の前端は、前記ボルトと前記テレスコ長孔の後端が当接する前に、当接可能に設定されていることに特徴がある。
本発明によるステアリングコラム装置においては、操作レバーのアンロック操作により、コラム側ブラケットの支持ブラケットに対する固定が解除されて、コラム側ブラケットが、支持ブラケットに対して前後位置調整(テレスコ調整)可能となる。また、このときには、傾動部材が、傾動カムにより、付勢手段の上方への付勢力に抗して下方に傾動され、コラム側ブラケットと一体的に移動可能な延出部が、傾動部材の第1許容部にてコラム軸方向の移動を所定量許容される。
これにより、コラム側ブラケットのコラム軸方向における前方位置調整時(車両前方のテレスコ調整時)に、延出部と第1許容部の前端は、ボルトとテレスコ長孔の後端が当接する前に、当接可能に設定されているため、テレスコストローク最前端では、延出部と第1許容部の前端が当接する。このとき、傾動部材は、付勢手段により上方に付勢されるとともに、傾動カムと上端部分にて係合しているため、上記当接によって傾動しようとしても傾動し難くなっている。
このため、テレスコストローク最前端では、上記した当接による衝撃力が、傾動部材を介して車体の一部に伝達され、車体の一部によって効果的に受承される。したがって、上記した当接による衝撃力の支持ブラケットへの伝達を抑制することができて、支持ブラケットの車体の一部に対する組付け状態の変化を抑制することが可能である。
一方、操作レバーのロック操作により、コラム側ブラケットが支持ブラケットに対して固定されて、コラム側ブラケットが支持ブラケットに対して前後位置調整不能になる。また、このときには、傾動部材は、偏心カムにより、上方への傾動が許容されて、付勢手段の上方への付勢力により上方に傾動される。このため、この状態(操作レバーがロック操作された状態)で支持ブラケットが車両前方に移動離脱するときには、延出部が第2許容部にてコラム軸方向の移動を許容される。
これにより、車両衝突の二次衝突時に、所定以上の荷重が支持ブラケットに作用して支持ブラケットが車両前方に移動離脱するときに、延出部は、第2許容部を通って第1許容部の前端より前方に移動することが可能である。したがって、車両衝突の二次衝突時には、第2許容部の軸方向長さに応じた衝撃吸収ストロークを確保することができ、必要十分な衝撃吸収ストロークを確保することが可能である。
また、本発明の実施に際して、前記延出部と前記第1許容部の前端の当接による衝撃力の作用線と、前記傾動部材の傾動中心点と前記延出部と前記第1許容部の前端との当接点を結ぶ作用線が略同一直線上となるように設定されていることも可能である。この場合には、延出部と第1許容部の前端が当接するとき、傾動部材には、傾動中心点に対する回転モーメントが生じなくて、傾動部材の傾動を的確に規制することが可能である。
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図9は、本発明におけるステアリングコラム装置を示していて、このステアリングコラム装置は、図1に示したように、乗員によって回動操舵される操舵ハンドル10と、この操舵ハンドル10を一体回転可能に支持するステアリングメインシャフト20と、このステアリングメインシャフト20を内部に収容しかつ回転可能に支持するコラムチューブ30と、操舵ハンドル10の回動操舵に対して所定の補助力を付与するEPS(電動パワーステアリング)アクチュエータ40と、コラムチューブ30のチルト動作(上下方向での傾動動作)およびテレスコ動作(コラム軸方向での伸長・収縮動作)を許容または規制するロック手段50と、このロック手段50における操作レバー53のロック・アンロック操作により上下方向に傾動可能な傾動部材60を備えている。
操舵ハンドル10は、図1〜図3の仮想線で示したように、ステアリングメインシャフト20におけるアッパーシャフト21の乗員側端部にトルク伝達可能に連結されている。ステアリングメインシャフト20は、アッパーシャフト21とロアシャフト22(図4参照)を備えるとともに、ロアシャフト22にトーションバー(図示省略)を介してトルク伝達可能に連結されているアウトプットシャフト23を備えている。アッパーシャフト21は、図4に示したように、中空状に形成されていて、下端部がロアシャフト22に対してコラム軸方向に摺動可能かつトルク伝達可能に挿通されている。
コラムチューブ30は、図1〜図3に示したように、ステアリングメインシャフト20を回転自在に支持するためのものであり、インストルメントパネルリインフォースメントIRに設けられるステアリングサポート部材SSに支持されていて、アッパーチューブ31と、このアッパーチューブ31より車両前方に配置されているロアチューブ32と、アッパーチューブ31の車両前方下部外周に一体的に固着されたコラム側ブラケット33を備えている。
なお、インストルメントパネルリインフォースメントIRおよびステアリングサポート部材SSは、図1〜図3に示したように、車体に組み付けられて固定される車体側部材(車体の一部)であり、ステアリングサポート部材SSの車両後方下部にはブレークアウエイブラケット34が組付けられていて、ステアリングサポート部材SSの車両前方下部にはサポートブラケット35が組付けられている。
アッパーチューブ31は、図1〜図4に示したように、中空上に形成されていて、ロアチューブ32にコラム軸方向に摺動可能に組付けられている。このアッパーチューブ31は、コラム側ブラケット33とロック手段50を介して、ブレークアウエイブラケット34に上下方向かつコラム軸方向に移動可能に組付けられている。また、アッパーチューブ31は、図3に示したように、上端部(車両後端部)の内周に一体的に設けられているベアリングBrを介してアッパーシャフト21を回転可能かつ一体的にコラム軸方向および上下方向へ移動可能に支持していて、車両前方側下部にロック手段50の偏心カム56を挿通するためのコラム軸方向に延びる挿通長孔31aを有している。
ロアチューブ32は、図1〜図4に示したように、EPSアクチュエータ40のハウジング41と支持ピンSPを介してサポートブラケット35に上下方向に傾動可能(支持ピンSPの軸心(チルト中心)を中心としてチルト可能)に組付けられている。このロアチューブ32は、中空状に形成されていて、下端部(車両前端部)の内周に一体的に設けられているベアリング(図示省略)を介してロアシャフト22を回転可能かつコラム軸方向に移動不能に支持している。
また、ロアチューブ32は、外周に樹脂製のブッシュ32aを装着していて、上端部(車両後方部)にてアッパーチューブ31の下端部(車両前方部)に挿通されており、アッパーチューブ31をコラム軸方向に摺動可能に支持している。ブッシュ32a(衝撃吸収手段)は、図3および図4に示したように、ロアチューブ32の外周とアッパーチューブ31の内周とのガタつきを低減するとともに、車両衝突の二次衝突時にアッパーチューブ31とロアチューブ32の摺動抵抗を利用して衝撃エネルギーを吸収するためのものであり、車両後方側下部にロック手段50の偏心カム56を挿通するためのコラム軸方向に長い挿通長孔32a1を有している。
コラム側ブラケット33は、図1〜図4に示したように、ブレークアウエイブラケット34に対して摩擦係合するためのものであり、ブレークアウエイブラケット34に対して上下方向およびコラム軸方向に移動可能である。また、コラム側ブラケット33は、アッパーチューブ31の外周下方部に固着された左右一対の側面部33a,33bと、これら側面部33a,33bにおける車両前方側の下端を連結して車両の左右方向に延びる延出部33cを有している。各側面部33a,33bには、テレスコ長孔33a1、33b1が設けられていて、各テレスコ長孔33a1,33b1は、図3に示したように、コラム軸方向に延びており、ロック手段50のボルト51を挿通可能に設けられている。
ブレークアウエイブラケット34(支持ブラケット)は、ステアリングサポート部材SSに組付けられていて、所定以上の荷重が作用するとステアリングサポート部材SSに対して車両前方に移動離脱可能である。また、ブレークアウエイブラケット34は、図4に示したように、左右一対の縦壁部34a,34bを有し、これら縦壁部34a,34bより上方に左右一対の上壁部34c,34dを有している。なお、このブレークアウエイブラケット34は、ステアリングサポート部材SSに対して車両後方に移動不能に組付けられている。
各縦壁部34a,34bは、図4に示したように、下方部にてコラム側ブラケット33の各側面部33a,33bと摩擦係合していて、上下方向に延びるチルト長孔34a1,34b1を有している。各チルト長孔34a1,34b1は、支持ピンSPを中心とする略円弧状に形成されていて、ロック手段50のボルト51を挿通可能に設けられている。各上壁部34c,34dは、スリット孔34c1,34d1を有していて、これらスリット孔34c1,34d1にて各樹脂カプセル36と各金属カラー37と各スタッドボルト38と各ナット39を用いてステアリングサポート部材SSに組付けられている。なお、各ナット39は、ステアリングサポート部材SSに予め溶接で固着されているスタッドボルト38に螺着固定されている。
スリット孔34c1,34d1は、図4に示したように、ブレークアウエイブラケット34の車両前方への移動離脱を可能とするためのものであり、各上壁部34c,34dの略中央から後方へ延びて後端にて開口している。各樹脂カプセル36は、各スリット孔34c1,34d1内に嵌合する筒部を有していて、各上壁部34c,34dの上面に固定されており、所定以上の荷重が作用すると破壊されるようになっている。各金属カラー37は、各樹脂カプセル36の筒部に圧入嵌合された状態で各スタッドボルト38に組付けられている。これにより、車両衝突における二次衝突時に所定以上の荷重が各上壁部34c,34dに作用すると、各樹脂カプセル36が破壊されて、ブレークアウエイブラケット34はステアリングサポート部材SSに対して車両前方へ移動離脱可能である。
EPSアクチュエータ40は、アシストトルク(補助力)をステアリングメインシャフト20のアウトプットシャフト23に付与するためのものであり、図1〜図3に示したように、サポートブラケット35に組付けられていてロアチューブ32の下端部を支持しているハウジング41と、このハウジング41に組み付けられている電動モータ42と、この電動モータ42の出力を減速する減速機(図示省略)を備えている。ハウジング41の下方部には、傾動部材60を傾動可能に支持するための支持部材43が組付けられている。電動モータ42は、その出力軸が減速機を介してステアリングメインシャフト20のアウトプットシャフト23にトルク伝達可能に連結されていて、電子制御装置(図示省略)により回転駆動を制御されている。
ロック手段50は、コラム側ブラケット33をブレークアウエイブラケット34に対して解除可能に固定するためのものであり、図4に示したように、車両の左右方向に延びているボルト51と、このボルトに螺着されたナット52と、ボルト51の左端部位にてボルト51上に組付けた操作レバー53を備えている。また、ロック手段50は、ボルト51の左方部位にてボルト51上に組付けられているロックカムユニット54と、ボルト51の右方部位にてボルト51上に組付けられているスラストニードルベアリングユニット55と、ボルト51の中間部位にてボルト51上に一体回転可能に組付けられた偏心カム56を備えている。
ボルト51は、図4に示したように、左端部に頭部51aを有し、右端部にねじ部51bを有し、中間部に軸部51cを有している。また、ボルト51は、ブレークアウエイブラケット34に設けた各チルト長孔34a1,34b1とコラム側ブラケット33に設けた各テレスコ長孔33a1,33b1に回転可能に挿通されている。ナット52は、ボルト51のねじ部51bに螺着されていて、スラストニードルベアリングユニット55を介してブレークアウエイブラケット34における右方側の縦壁部34bを押圧可能である。操作レバー53は、ボルト51の頭部51aに一体回転可能に連結されていて、図1に示したロック位置から略90度時計方向に回転されると(ロック操作されると)、図2に示したロック位置となり、図2に示したロック位置から略90度反時計方向に回転されると(アンロック操作)されると、図1に示したロック位置となる。
ロックカムユニット54は、図4に示したように、ブレークアウエイブラケット34の左方側の縦壁部34aと操作レバー53間にてボルト51の軸部51c上に組付けられていて、左右一対のカムプレート54a,54bを備えている。左方のカムプレート54aは、操作レバー53に連結されていて、ボルト51と一体的に回転可能かつ右方のカムプレート54bに対して相対回転可能である。右方のカムプレート54bは、図4の右側に形成された筒状突起54b1の外周にてチルト長孔34a1に上下方向に移動可能かつ回転不能に挿通され、テレスコ長孔33a1にコラム軸方向に移動可能かつ回転不能に挿通されていて、ボルト51に対して相対回転可能である。
これら左右一対のカムプレート54a,54bは、図1に示した状態(操作レバー53のロック操作された状態)では、ボルト51とナット52を緊締状態(ボルト51の頭部51aとナット52間にてボルト51の軸部51cが引っ張られた状態)にしていて、ブレークアウエイブラケット34の各縦壁部34a,34bとコラム側ブラケット33の各側面部33a,33bとの摩擦係合力を増大させている。これにより、コラム側ブラケット33がブレークアウエイブラケット34に対して上下方向およびコラム軸方向に移動不能である。
一方、左右一対のカムプレート54a,54bは、図2および図4に示した状態(操作レバー53がアンロック操作された状態)では、ボルト51とナット52を弛緩状態(ボルト51の頭部51aとナット52間にてボルト51の軸部51cが緩められた状態)にしていて、ブレークアウエイブラケット34の各縦壁部34a,34bとコラム側ブラケット33の各側面部33a,33bとの摩擦係合力を減少させている。これにより、コラム側ブラケット33がブレークアウエイブラケット34に対して上下方向およびコラム軸方向に移動可能である。なお、左右一対のカムプレート54a,54bの詳細な構成は公知であるため、その説明は省略する。
右方のカムプレート54bにおける筒状突起54b1は、図5に示したように、コラム側ブラケット33のコラム軸方向における前後位置調整時(テレスコ調整時)に、テレスコ長孔33a1にてボルト51とともにコラム軸方向に移動可能である。この筒状突起54b1とテレスコ長孔33a1の後端との間のコラム軸方向における隙間はX1となっていて、筒状突起54b1とテレスコ長孔33a1の前端との間のコラム軸方向における隙間はX2となっている。
スラストニードルベアリングユニット55は、図4に示したように、ブレークアウエイブラケット34における右方側の縦壁部34bとナット52間にてボルト51の軸部51c上に組付けられている。また、スラストニードルベアリングユニット55は、ブレークアウエイブラケット34における右方側の縦壁部34bに当接している左方プレート55aと、ナット52に当接している右方プレート55bと、これら左方プレート55aおよび右方プレート55b間に介装されているニードル55cと、このニードル55cを保持するケージ55dを備えている。左方プレート55aは、図4の左側に形成された筒状突起55a1の外周にてチルト長孔34b1に上下方向に移動可能かつ回転不能に挿通され、テレスコ長孔33b1にコラム軸方向に移動可能かつ回転不能に挿通されていて、ボルト51に対して相対回転可能である。
左方プレート55aにおける筒状突起55a1は、図5に示したように、テレスコ調整時に、テレスコ長孔33b1にてボルト51とともにコラム軸方向に移動可能である。この筒状突起54a1とテレスコ長孔33b1の後端との間のコラム軸方向における隙間はX1となっていて、筒状突起55a1とテレスコ長孔33b1の前端との間のコラム軸方向における隙間はX2となっている。
偏心カム56は、図3および図4に示したように、ボルト51の軸部51cにセレーション嵌合している筒部56aと、この筒部56aの軸方向中央に一体的に形成された係合カム部56bおよび傾動カム部56c(傾動手段)を有している。係合カム部56bは、アッパーチューブ31の挿通長孔31aとブッシュ32aの挿通長孔32a1を通してボルト51の回転に伴ってロアチューブ32の下部に係合離脱可能であり、操作レバー53がロック操作された状態ではロアチューブ32の下部に係合し、操作レバー53がアンロック操作された状態では、ロアチューブ32の下部から係合離脱するようになっている(図3参照)。傾動カム部56cは、傾動部材60の上面60a(上端部分)と係合していて、操作レバー53がロック操作された状態(図7に示した状態)では、車両後方に突出し、操作レバー53がアンロック操作された状態(図8に示した状態)では、下方に突出するようになっている。
傾動部材60は、図6に示したように、コラム軸方向に延びていて、車両前方端部にて支持部材43の左右一対のアーム部43a,43bに傾動ピン61を介して上下方向に傾動可能に組付けられている。この傾動部材60は、支持部材43に組付けられているトーションスプリング62(付勢手段)によって上方に付勢されている。なお、トーションスプリング62は、両端部にて支持部材43のアーム部43a,43bの下面に係合していて、中央部にて傾動部材60の下面60bに係合しおり、両端部と中央部の間の中間部にて、傾動ピン61に巻回されている。
また、傾動部材60は、操作レバー53がロック操作された状態(図7に示した状態)では、上面60aと車両後方に突出する傾動カム部56cの係合により上方への傾動が許容されて、トーションスプリング62の上方への付勢力により上方に傾動されている。一方、傾動部材60は、操作レバー53がアンロック操作された状態(図8に示した状態)では、上面60aと下方に突出する傾動カム部56cの係合により、トーションスプリング62の上方への付勢力に抗して、下方に傾動されている。この傾動部材60は、コラム軸方向に延びていてコラム側ブラケット33の延出部33cを挿入可能な第1許容部60cおよび第2許容部60dを有している。
第1許容部60cは、図6〜図8に示したように、傾動部材60と同軸的にコラム軸方向に延びていて、第2許容部60dより上方に設けられている。第2許容部60dは、傾動部材60の車両後方端下方から車両前方かつ上方に向けて延びていて、第1許容部60cと重合する重合部分60d1と、この重合部分60d1より前方に延びる前方延出部分60d2を有している。なお、第2許容部60dの車両後方端下方には、傾動部材60の強度(剛性)を大きくするために、強度部材60eが組み込まれている。
図7に示したように、操作レバー53がロック操作された状態でブレークアウエイブラケット34が車両前方に移動離脱するときには、第2許容部60dにて、延出部33cがコラム軸方向の移動を許容されている。また、図8に示したように、操作レバー53がアンロック操作された状態では、第1許容部60cにて、延出部33cがコラム軸方向の移動を所定量許容されていて、この状態では、図5に示したように、延出部33cと第1許容部60cの前端60c1とのコラム軸方向の隙間が、上記した隙間X1より小さいY1となっていて、延出部33cと第1許容部60cの後端60c2とのコラム軸方向の隙間が、上記した隙間X2より小さいY2となっている。
このため、車両前方のテレスコ調整時に、延出部33cと第1許容部60cの前端60c1は、ボルト51に組付けられた筒状突起54b1,55a1とテレスコ長孔33a1,33b1の後端が当接する前に、当接するようになっている。また、車両後方のテレスコ調整時に、延出部33cと第1許容部60cの後端60c2は、ボルト51に組付けられた筒状突起54b1,55a1とテレスコ長孔33a1,33b1の前端が当接する前に、当接するようになっている。
また、図9の実線で示したように、延出部33cと第1許容部60cの前端60c1が当接するとき、延出部33cと第1許容部60cの前端60c1の当接による衝撃力の作用線F1と、傾動部材60の傾動中心点O1と、延出部33cと第1許容部60cの前端60c1との当接点P1を結ぶ作用線S1が、略同一直線上となるように設定されている。また、図9の仮想線で示したように、延出部33cと第1許容部60cの後端60c2が当接するとき、延出部33cと第1許容部60cの後端60c2の当接による衝撃力の作用線F2と、傾動部材60の傾動中心点O1と、延出部33cと第1許容部60cの後端60c2との当接点P2を結ぶ作用線S1が、略同一直線上となるように設定されている。
上記のように構成した実施形態においては、操作レバー53のアンロック操作により、ブレークアウエイブラケット34の各縦壁部34a,34bとコラム側ブラケット33の各側面部33a,33bとの摩擦係合力が減少する。これにより、コラム側ブラケット33が、ブレークアウエイブラケット34に対して上下位置調整(チルト調整)および前後位置調整(テレスコ調整)可能となる。また、このときには、図8に示したように、傾動部材60は、上面60aと下方に突出する傾動カム部56cの係合により、トーションスプリング62の上方への付勢力に抗して、下方に傾動され、延出部33cが、傾動部材60の第1許容部60cにてコラム軸方向の移動を所定量許容される。
これにより、車両前方のテレスコ調整時に、延出部33cと第1許容部60cの前端60c1は、ボルト51に組付けられた筒状突起54b1,55a1とテレスコ長孔33a1,33b1の後端が当接する前に、当接可能に設定されているため(図5参照)、図9に示したように、テレスコストローク最前端にて、延出部33cと第1許容部60cの前端60c1が当接する。このとき、傾動部材60は、トーションスプリング62により上方に付勢されるとともに、偏心カム56の傾動カム部56cと上面60aにて係合しているため、上記当接によって傾動しようとしても傾動し難くなっている。
このため、テレスコストローク最前端では、上記した当接による衝撃力が、傾動部材60、支持部材43、ハウジング41およびサポートブラケット35を介して、ステアリングサポート部材SSに伝達され、ステアリングサポート部材SSによって効果的に受承される。したがって、上記した当接による衝撃力のブレークアウエイブラケット34への伝達を抑制することができて、ブレークアウエイブラケット34のステアリングサポート部材SSに対する組付け状態の変化を抑制することが可能である。
一方、操作レバー53のロック操作により、ブレークアウエイブラケット34の各縦壁部34a,34bとコラム側ブラケット33の各側面部33a,33bとの摩擦係合力が増大する。これにより、上述したチルト調整およびテレスコ調整が不能となる。また、このときには、図7に示したように、傾動部材60は、上面60aと車両後方に突出する第2カム部56cの係合により上方への傾動が許容されて、トーションスプリング62の上方への付勢力により上方に傾動される。このため、この状態(操作レバー53がロック操作された状態)で、ブレークアウエイブラケット34が車両前方に移動離脱するときに、延出部33cは第2許容部60dにてコラム軸方向の移動を許容される。
これにより、車両衝突の二次衝突時に、所定以上の荷重がブレークアウエイブラケット34に作用してブレークアウエイブラケット34が車両前方に移動離脱するときに、延出部33cは、第2許容部60dの重合部分60d1および前方延出部分60d2を通って、第1許容部60cの前端60c1より前方に移動することが可能である。したがって、車両衝突の二次衝突時には、第2許容部60dの前方延出部分60d2の軸方向長さに応じた衝撃吸収ストロークを確保することができ、必要十分な衝撃吸収ストロークを確保することが可能である。
また、この実施形態においては、図9の実線で示したように、延出部33cと第1許容部60の前端60c1が当接するとき、延出部33cと第1許容部60の前端60c1の当接による衝撃力の作用線F1と、傾動部材60の傾動中心点O1と延出部33cと第1許容部60の前端60c1との当接点P1を結ぶ作用線S1が、略同一直線上となる。このため、このときには、傾動部材60に傾動中心点O1に対する回転モーメントが生じなくて、傾動部材60の傾動を的確に規制することが可能である。
また、この実施形態においては、支持部材43に組付けられているトーションスプリング62が、傾動部材60および偏心カム56を介してボルト51を弾撥的に支持しており、ボルト51を上方へ付勢している。このため、操作レバー53のアンロック操作により、チルト調整およびテレスコ調整が可能になるとき、アッパーチューブ31およびロアチューブ32の下方への移動を弾撥的に規制することができ、従来のステアリングコラム装置に用いられているバランサー(ブレークアウエイブラケットに組付けられていて偏心カムを介してボルトを弾撥的に支持するバネ部材)を設ける必要がない。
また、この実施形態においては、車両後方のテレスコ調整時に、延出部33cと第1許容部60cの後端60c2は、ボルト51に組付けられた筒状突起54b1,55a1とテレスコ長孔33a1,33b1の前端が当接する前に、当接可能に設定されているため(図5参照)、図9の仮想線で示したように、テレスコストローク最後端にて、延出部33cと第1許容部60cの後端60c2が当接する。このため、テレスコストローク最後端にて、上述したテレスコストローク最前端における作用効果と実質的に同一の作用効果を得ることが可能である。
上記した実施形態において、第1許容部60cおよび第2許容部60dの形状は、適宜変更可能であり、例えば、第1許容部60cは、上方部分が開口しているように構成して実施することも可能であり、第2許容部60dは、下方部分が開口しているように構成して実施することも可能である。
上記した実施形態において、テレスコストローク最後端にて、延出部33cと第1許容部60cの後端60c2が当接するように構成して実施したが、テレスコストローク最後端にて、ボルト51に組付けられた筒状突起54b1,55a1とテレスコ長孔33a1,33b1の前端が当接するように構成して実施することも可能である。この場合には、テレスコストローク最後端にて、ボルト51に組付けられた筒状突起54b1,55a1とテレスコ長孔33a1,33b1の前端が当接して、この当接による後方への衝撃力がボルト51からチルト長孔34a1,34b1の前端部に作用してブレークアウエイブラケット34に伝達される。
しかし、ブレークアウエイブラケット34に伝達される後方への衝撃力は、アッパーチューブ31、アッパーシャフト21、操舵ハンドル10等からなる移動体の自重による慣性力が加わらないものであって、テレスコストローク最前端にて筒状突起54b1,55a1とテレスコ長孔33a1,33b1の後端が当接する際にブレークアウエイブラケット34に伝達される前方への衝撃力に比して、小さいものである。このため、ブレークアウエイブラケット34に後方への衝撃力が伝達されても、ブレークアウエイブラケット34のステアリングサポート部材SSに対する組付け状態の変化は小さくて殆ど問題とならない。