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JP5228224B2 - レーザ肉盛方法 - Google Patents

レーザ肉盛方法 Download PDF

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Description

本発明は、シリンダヘッドのバルブシートに金属粉末を供給しつつ、該金属粉末にレーザを照射することにより溶融させて肉盛り層を形成するレーザ肉盛り方法に関する。
内燃機関用シリンダヘッドのバルブシートは、バルブに対して繰り返し接触する箇所であることから当該バルブシートに対して耐摩耗性を向上させる加工が施されている。この種の加工には、レーザを照射して金属粉末を溶融させながら該レーザ照射位置を円環状に移動して肉盛りを行うレーザ肉盛加工(レーザクラッドとも呼ばれる)が知られている。
このレーザ肉盛加工では、肉盛りの始端部と終端部が重なり合ってできるオーバーラップ部分に、未溶着部や空孔(ブローホール等)の欠陥が生じ易いことが知られている。そこで、従来、肉盛りの開始時に、金属粉末の供給量を徐々に増加させるとともに該金属粉末の供給量に応じてレーザの出力を増加させることで、厚みを緩やかに増加させた始端部を形成する技術が知られている。この技術によれば、始端部の厚みが他の箇所に比べて薄くなるため、この始端部と終端部のオーバーラップ部分における上記欠陥の発生を抑制することができる(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−299598号公報
しかしながら、従来の技術においても、上記欠陥を依然としてなくすことができず、バルブシートの歩留まりを向上させるためには、更なる改良が求められている。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、シリンダヘッドのバルブシートに肉盛りするに当たり、肉盛り層に生じる欠陥を更に抑制可能なレーザ肉盛方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、シリンダヘッドのバルブシートに金属粉末を供給しながらレーザを照射することでレーザ照射位置に肉盛り層を形成しつつ、該レーザ照射位置を前記バルブシートに沿って円環状に移動させて肉盛りするレーザ肉盛方法において、前記肉盛りの開始時に、前記金属粉末の供給量を徐々に増加させながら該金属粉末の供給量に応じてレーザ出力を増加させて肉盛りの始端部を形成し、前記金属粉末の供給量及び前記レーザの出力を一定に維持して肉盛りの通常部を形成し、前記始端部の手前から前記レーザの出力を一定のままで前記金属粉末の供給量を所定量まで減少させて肉盛りの終端部を形成し前記始端部に重ねることを特徴とする。
円環状にレーザ照射位置を移動させて肉盛りを行う場合、レーザ照射位置が始端部の手前まで来ると、始端部及び通常部形成の間にレーザ照射位置の上流側に溜まった残留粉が始端部に押されてレーザ照射位置に入り込み、このレーザ照射位置での粉量が増加する。
本発明によれば、始端部の手前から金属粉末の供給量を減少させて終端部の形成を開始するため、レーザ照射位置での粉量の変動が抑えられ、終端部での欠陥の発生が抑えられる。
本発明において、前記終端部の形成時には、前記始端部に重なる前までに、前記始端部に形成された傾斜に応じて、前記金属粉末の供給量を前記所定量まで徐々に減少させても良い。
すなわち、始端部に押されてレーザ照射位置に入り込む残留粉の量は、始端部の傾斜に応じて徐々に増加するため、この増加に合せて金属粉末の供給量を減少させることで、欠陥の発生を更に抑制することができる。
また本発明において、前記バルブシートのシート面に沿って溝部を形成し、該溝部に前記肉盛り層を形成しても良い。
溝部に前記肉盛り層を形成することで、バルブシートの更なる耐摩耗性の向上が図られる。また、肉盛り時に溝部に金属粉末が溜まり易くなるものの、上記のように、残留粉の量に合せて金属粉末の供給量が減少されることで欠陥の発生が抑制される。これにより、耐摩耗性の向上とともに欠陥の更なる抑制効果が得られる。
また本発明において、前記バルブシートの中央を中心に前記レーザ照射位置を円環状に移動させる場合、前記始端部から約270度〜約315度移動したタイミングで前記終端部の形成を開始しても良い。
バルブシートの肉盛り加工においては、始端部から約270〜315度移動したタイミングで、始端部に残留粉が押されてレーザ照射位置に入り込み始めるため、この時点から上記のように金属粉末の供給量を減少させて終端部の形成を開始することで、欠陥の発生を抑えた肉盛りを良好に行うことができる。
本発明によれば、始端部の手前から金属粉末の供給量を減少させて終端部の形成を開始するため、レーザ照射位置の上流側に溜まっていた残留粉がレーザ照射位置に入り込んだ場合でもレーザ照射位置での粉量の変動が抑えられ、終端部での欠陥の発生が抑えられる。
また、終端部の形成時には、始端部に重なる前までに、始端部に形成された傾斜に応じて、金属粉末の供給量を前記所定量まで徐々に減少させることで、始端部の傾斜に応じて徐々に増加する残留粉に合せて金属粉末の供給量を減少させることができ、欠陥の発生を更に抑制することができる。
また、バルブシートのシート面に沿って溝部を形成し、該溝部に前記肉盛り層を形成することで、バルブシートの更なる耐摩耗性の向上が図られる。さらに、レーザ照射位置での粉量の変動を抑制するように金属粉末が減少されるため欠陥の発生が抑制される。
また、バルブシートの中央を中心に前記レーザ照射位置を円環状に移動させる場合、始端部から約270度〜約315度移動したタイミングで終端部の形成を開始することで、欠陥の発生を良好に抑えたバルブシートの肉盛りを行うことができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るバルブシート16のレーザ肉盛方法で用いられるレーザクラッド装置10を示す図であり、図2は、シリンダヘッド12を示す図である。
レーザクラッド装置10は、ワークであるシリンダヘッド12における給排気用バルブ孔14(図2参照)の周囲のバルブシート16に対して、銅合金粉末(金属粉末)18を供給しながら半導体レーザのレーザ光20を照射して銅合金粉末18を溶融及び固化させてレーザ照射位置Pに肉盛り層を形成し、このレーザ照射位置P(図2参照)を環状に移動しながら肉盛りをする装置である。
シリンダヘッド12は4気筒型のエンジン用であり、図2に示すように、各気筒当たり4つのバルブシート16が設けられている。このバルブシート16のシート面16Aには、肉盛り用のU字溝部17が周囲に沿って設けられている。シリンダヘッド12はアルミ合金製であり軽量化が図られている。また、シリンダヘッド12のバルブシート16は、バルブに対して繰り返し接触し、シート面16Aのヘルツ面圧は高負荷で、なおかつ、この高負荷が連続的に付与されることから、上記のように該シート面16Aに肉盛りすることで耐摩耗性及び耐熱性の向上が図られている。銅合金粉末18は、銅及びニッケルをベースとする合金の粉末であり、アトマイズ粉末となっている。
レーザクラッド装置10は、シリンダヘッド12を水平二軸方向に移動して位置決めを行うとともに所定のバルブシート16を中心として回転させるテーブル22と、該テーブル22の制御を行うテーブルコントローラ24と、バルブシート16に対して銅合金粉末18を供給するフィード機構26と、このフィード機構26を制御するフィードコントローラ28とを有する。フィード機構26の収納部26aには銅合金粉末18が投入されており、フィードコントローラ28の作用下にノズル29を介して銅合金粉末18をバルブシート16の周囲の一部に供給可能である。この銅合金粉末18の供給量Sは、フィードコントローラ28により調整可能である。
また、レーザクラッド装置10は、バルブシート16に対して半導体レーザのレーザ光20を照射するレーザ発振機構部30と、該レーザ発振機構部30を制御するレーザコントローラ32と、バルブシート16の拡大撮影を行うカメラ34と、該カメラ34により撮像された画像を表示するモニタ36とを有する。カメラ34は、例えば、CCD式又はMOS式の撮像部を有するカメラである。さらに、レーザクラッド装置10は、テーブルコントローラ24、フィードコントローラ28、レーザコントローラ32及びカメラ34を統合的に制御するメインコントローラ40を有する。
レーザ発振機構部30は、例えば、モジュール式でGaaAlbAs型(a,bは固相比)のレーザ発振部を有し、半導体のPN接合部からレーザ光20を発生する装置であり、このレーザ光20の波長は、半導体の成分により800〜950[nm]の範囲の所定値となるように設定されている。また、レーザ発振機構部30は、レーザコントローラ32の作用下にレーザ光20の出力Wを調整可能であって、具体的には、PN接合部に印加する制御電圧を変更することによりレーザ光20の出力Wを調整する。レーザ光20の出力Wは、印加電圧を変更することにより瞬時に変化し、応答遅れや出力Wの変化時のオーバシュート等がなく、印加電圧に対して極めて高い応答性を有する。従って、レーザ光20の出力Wは、徐々に変化させることが可能であるとともに、段階的に変化させることも可能である。
また、このレーザ光20の800〜950[nm]の波長範囲は、銅合金粉末18にエネルギーが吸収され易く、銅合金粉末18を効率良く溶融させるため、半導体レーザは、1.2〜2.0[kW]程度の低出力で足り、シリンダヘッド12に対する熱影響を低減できる。しかも銅合金粉末18による溶融池は大きくなり肉盛り層の厚肉化が可能であり、例えば、5[mm]の厚さを形成することができる。
レーザ発振機構部30は、バルブシート16に対してシールドガスとして不活性ガス(アルゴンガス等)を吹きつけることができる。レーザ発振機構部30はテーブル22に対する高さ調整が可能である。
次に、このように構成されるレーザクラッド装置10を用いてバルブシート16に肉盛りを行う方法について説明する。
先ず、所定の手順によりテーブル22上にシリンダヘッド12を取り付け、テーブルコントローラ24の作用下に所定のバルブシート16が回転中心位置に配置されるように水平位置決めを行う。
次いで、図2に示すように、バルブシート16の周囲の一部に対してフィード機構26のノズル29から銅合金粉末18を供給するとともにレーザ発振機構部30からレーザ光20を照射し、テーブル22を回転させる。テーブル22、フィード機構26及びレーザ発振機構部30は、テーブルコントローラ24、フィードコントローラ28及びレーザコントローラ32により制御され、それぞれメインコントローラ40の作用下に同期し、同時に動作を開始する。また、シールドガスの噴出も同時に開始する。
このとき、テーブル22の回転速度がバルブシート16の大きさに応じた一定の速度に維持されつつ、銅合金粉末18の供給量S及びレーザ光20の出力Wは、図3に示すように、テーブル22の回転に伴うバルブシート16の回転角度[deg]に基づいて可変制御される。
すなわち、肉盛り開始時には、銅合金粉末18の供給量Sを徐々に最適値Saまで増加させながら、この銅合金粉末18の供給量Sに応じてレーザ光20の出力Wを徐々に最適値Waまで増加させて肉盛りの始端部50の形成が行われる((I)始端部形成工程))。このように、銅合金粉末18の供給量Sを徐々に増加させながら肉盛りが行われることで、図4に示すように、肉盛り層の厚みが緩やかに増加した始端部50が形成されるため、後に説明する終端部52がオーバーラップした際に、このオーバーラップ部54での欠陥の発生が抑制される。
ところで、一般に、アルミニウムと銅との拡散層の厚みが50[μm]以下となると未溶着によるブローホールの発生が多くなり、400[μm]以上となると、アルミニウムと銅との合金化割れが発生しやすくなることが知られている。本レーザ肉盛方法では、供給量Sに合せて出力Wを調整することから、母材であるシリンダヘッド12の溶融量が適正量となって、拡散層の厚さを50〜400[μm]とされる。これにより、合金化割れ及び未溶着を防止し、結果として欠陥の発生を防止することができる。
なお、レーザ光20の出力Wの制御方法は、例えば、所定時間毎の供給量Sをタイマを用いて測定し、該供給量Sに合せて出力Wを制御するとよい。
次いで、銅合金粉末18の供給量S及びレーザ光20の出力Wを、それぞれ最適値Sa、Waに維持して肉盛りの通常部51の形成が行われる((II)通常部形成工程)。これにより、図4に示すように、略一定の厚みの肉盛り層を有する通常部51が形成される。上記最適値Sa、Waには、通常の厚みの肉盛り層を形成するときにシリンダヘッド12の溶融量を適正量とする値が設定されており、これにより、当該通常部51での欠陥の発生も抑制される。
その後、始端部50に合流し重なり合う終端部52の形成が行われる((III)終端部形成工程)。この終端部形成工程は、環状に移動したレーザ照射位置Pが始端部50に至る前(回転角度360[deg]より前)のタイミングで開始される。また、終端部形成工程では、通常部形成工程と異なり、レーザ光20の出力Wを最適値Waに一定にしたままで銅合金粉末18の供給量Sを所定量Sb(<Sa)まで減少させて終端部42の形成が行われる。
さらに詳述すると、発明者らは、レーザ照射位置Pを高速度カメラで撮影し観察した結果、レーザクラッドにおいては、図5に示すように、ノズル29から噴射された銅合金粉末18が、レーザ照射位置P(溶融池60)に対してワーク回転方向上流側のゾーンK1に残留し、また、始端部50の面上のゾーンK2には赤熱した銅合金粉末18が飛散するとの知見を得た。
すなわち、始端部50及び通常部51の形成の間、ゾーンK1に残留粉が溜まり込むこととなるが、レーザ照射位置Pが環状に移動し、当初の始端部50の手前まで来ると、図4の(III)終端部形成工程に示すように、ゾーンK1の残留粉が始端部50に押されてレーザ照射位置Pに入り込む。
これにより、レーザ照射位置Pでは、銅合金粉末18の供給量Saに加えて残留粉の分だけ増加するため、銅合金粉末18の粉量とレーザ光20の出力Wのバランスが崩れる。このため、何ら対策を施さなければ、図6に示すように、レーザ照射位置Pが始端部50に至る手前(回転角度が約−90[deg])の位置から始端部50にかけた肉盛り層で欠陥が集中的に発生する。
特に、本レーザ肉盛り方法では、バルブシート16の肉盛り用のU字溝部17に沿ってレーザ肉盛りを行っているため、該U字溝部17に残留粉が溜まり易くなる。
そこで、本レーザ肉盛り方法では、ゾーンK1の残留粉が始端部50に押されてレーザ照射位置Pに入り込み始めるタイミングから終端部形成工程を開始し、この終端部形成工程において、銅合金粉末18の供給量Sを所定量Sbまで次第に減少させる。この結果、レーザ照射位置Pでの銅合金粉末18の粉量の変動が抑制されるため、銅合金粉末18の粉量とレーザ光20の出力Wのバランスが維持され肉盛り層の欠陥の発生が抑制されることとなる。
この終端部形成工程においては、その開始時から銅合金粉末18の供給量Sを、始端部50に形成した傾斜に応じた減少率αで所定量Sbまで減少させている。
詳述すると、始端部50の傾斜面がゾーンK1の残留粉をレーザ照射位置Pに押し込むことから、押し込みの量の時間的変化は傾斜面の緩急に応じて変化する。すなわち、始端部50の傾斜面が緩やかなほど、レーザ照射位置PへのゾーンK1の残留粉の押し込み量も緩やかに増加する。このように、押し込みの量の時間的変化に合せて銅合金粉末18の供給量Sを徐々に減少させることで、レーザ照射位置Pでの銅合金粉末18の粉量の変動が抑制され、欠陥の発生が更に抑制される。
また、本レーザ肉盛り方法では、始端部50の傾斜面の角度θ(図5参照)が約30〜40度となるように、始端部形成工程での銅合金粉末18の供給量S等が設定されている。この角度の傾斜面が始端部50に形成されることで、始端部50が残留粉をレーザ照射位置Pに押し込む際に、当該始端部50の傾斜面上に回り込む残留粉も増える。これにより、レーザ照射位置Pに押し込まれる残留粉の時間的変化を、傾斜面の角度に対してより緩やかにすることができ、一層良好に終端部52での欠陥の発生を抑制できる。また、傾斜面の角度をある程度大きくできるため、始端部形成工程において、銅合金粉末18の供給量Sを微小変化させる必要がなく、始端部50の形成が容易となる。
ここで、始端部50の傾斜面上のゾーンK2(図5参照)には、上記の残留粉の回り込みに加え、レーザ照射位置Pの観察の結果、赤熱した粉末が飛散するとの知見が得られている。終端部形成工程では、レーザ照射位置Pが始端部50に到達した後も、ノズル29から銅合金粉末18の供給を継続して、この始端部50の上にオーバーラップ部54を形成しており、始端部50の傾斜面上のゾーンK2では粉量が増加した状態となる。このため、何ら対策を施さなければ、図6に示すように、オーバーラップ部54においても比較的多くの欠陥が発生する。
そこで本レーザ肉盛り方法では、レーザ照射位置Pが始端部50に重なった後も、銅合金粉末18の供給量Sを所定量Sbまで減少させた状態で、オーバーラップ部54の形成を行う((III−A)オーバーラップ部形成工程)。この結果、上記ゾーンK2での銅合金粉末18の粉量の変動が抑えられるため、欠陥の発生が良好に抑制される。
なお、銅合金粉末18の供給量Sの所定値Sbは、ゾーンK1の残留粉の堆積量、より詳細には、レーザ照射位置Pに押し込まれる残留粉の最大値に応じて決定される。詳細には、この最大値は、バルブシート16のレーザ肉盛りにおいては略一定であるとの知見が得られており、所定値Sbを、供給量Sの最適値Saに対して約20〜30%の範囲で減少させることで欠陥を良好に抑制することができる。すなわち、所定値Sbを最適値Saよりも約30%を超えて減少させるとレーザ光20の出力が相対的に高くなり過ぎて肉盛り層にクラックが発生し、また、最適値Saよりも約20%を下回る程度に減少させるとレーザ照射位置Pでの粉末量が相対的に多くなり肉盛り層に欠陥が発生することとなる。
さらに、バルブシート16のレーザ肉盛りにおいては、バルブシート16の回転に伴い始端部50の形成開始からレーザ照射位置Pが約270〜315度移動したタイミングでゾーンK1の残留粉が始端部50に押され始めるとの知見が得られている。したがって、かかるタイミングで終端部形成工程を開始することで、レーザ照射位置Pで残留粉が押し込まれ始める適正なタイミングで銅合金粉末18の供給量Sを減少させることができ、これにより欠陥を抑えた終端部52を形成することができる。
このようなオーバーラップ部形成工程での肉盛りは、図3に示すように、始端部50における肉盛り層が所定の一定厚さとなる位置まで続けられる。そして、その後に銅合金粉末18の供給とレーザ光20とを停止させ、バルブシート16に対する肉盛りを終了する。なお、終了時には、供給量Sと出力Wとを徐々に減少させ、終端部52のオーバーラップ部54における肉盛り層が徐々に薄くなるようにして肉盛りを終了させてもよい。
さらにこの後、肉盛りの処理が行われていない他のバルブシート16に対しても同様の肉盛り処理を順次行う。
以上説明したように、本実施形態に係るバルブシート16のレーザ肉盛方法によれば、始端部50の手前から終端部形成工程を開始し、この終端部形成工程においては、銅合金粉末18の供給量Sを減少させて終端部52を形成することとした。これにより、レーザ照射位置Pの上流側のゾーンK1に溜まっていた残留粉が始端部50に押されてレーザ照射位置Pに入り込んだ場合でも、このレーザ照射位置Pでの粉量の変動が抑えられるから、終端部52での欠陥の発生が抑えられる。また、始端部50が残留粉を押し込んだ際に、残留粉が始端部50の面上に回り込むことで、始端部50の傾斜面上での粉量が増加するものの、銅合金粉末18の供給量Sを減少させたまま始端部50とのオーバーラップ部54を形成するため、オーバーラップ部54での欠陥の発生も良好に抑制できる。
また、終端部形成工程では、レーザ照射位置Pが始端部50に重なる前までに、始端部50に形成された傾斜に応じた減少率αで銅合金粉末18の供給量Sを所定量Sbまで徐々に減少させている。
これにより、始端部50の傾斜に応じてレーザ照射位置Pで徐々に増加する残留粉の押し込み量に合せて、銅合金粉末18の供給量Sが減少することとなり、欠陥の発生を更に抑制して終端部52を形成することができる。
また、バルブシート16のシート面16Aに沿ってU字溝部17を形成し、U字溝部17に肉盛り層を形成している。このようにU字溝部17に肉盛り層を形成することで、バルブシート16の更なる耐摩耗性の向上が図られる。また、肉盛り時にU字溝部17に銅合金粉末18が溜まり易くなるものの、上記のように、終端部形成工程では、残留粉の粉量に合せて銅合金粉末18の供給量Sが減少されるため、欠陥の発生を良好に抑制することができる。これにより、耐摩耗性の向上とともに欠陥の良好な抑制効果が得られる。
また、レーザ照射位置Pが始端部50から円環状に約270度〜約315度移動したタイミングで終端部形成工程を開始している。これによれば、バルブシート16のレーザ肉盛りにおいて、レーザ照射位置Pでの残留粉の押し込みが生じ始める適正なタイミングで銅合金粉末18の供給量Sを減少させることができ、欠陥を抑えた終端部52を形成することができる。
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形および応用が可能であることは勿論である。
本発明の実施形態に係るレーザクラッド装置の機能ブロック図である。 バルブシートに半導体レーザを照射しながら肉盛りを行う工程を示す模式図である。 半導体レーザの出力及び銅合金粉末の供給量のチャートである。 始端部形成工程、通常部形成工程及び終端部形成工程の各工程を示す模式図である。 レーザ照射位置を拡大して示す模式図である。 肉盛り層に発生する欠陥分布の傾向を示す図である。
10 レーザクラッド装置
12 シリンダヘッド
14 給排気用バルブ孔
16 バルブシート
16A シート面
17 U字溝部
18 銅合金粉末(金属粉末)
20 レーザ光
29 ノズル
50 始端部
51 通常部
52 終端部
54 オーバーラップ部
60 溶融池
P レーザ照射位置
Sb 所定値
K1、K2 ゾーン

Claims (4)

  1. シリンダヘッドのバルブシートに金属粉末を供給しながらレーザを照射することでレーザ照射位置に肉盛り層を形成しつつ、該レーザ照射位置を前記バルブシートに沿って円環状に移動させて肉盛りするレーザ肉盛方法において、
    前記肉盛りの開始時に、前記金属粉末の供給量を徐々に増加させながら該金属粉末の供給量に応じてレーザ出力を増加させて肉盛りの始端部を形成し、
    前記金属粉末の供給量及び前記レーザの出力を一定に維持して肉盛りの通常部を形成し、
    前記始端部の手前から前記レーザの出力を一定のままで前記金属粉末の供給量を所定量まで減少させて肉盛りの終端部を形成し前記始端部に重ねる
    ことを特徴とするレーザ肉盛方法。
  2. 前記終端部の形成時には、前記始端部に重なる前までに、前記始端部に形成された傾斜に応じて、前記金属粉末の供給量を前記所定量まで徐々に減少させることを特徴とする請求項1に記載のレーザ肉盛方法。
  3. 前記バルブシートのシート面に沿って溝部を形成し、該溝部に前記肉盛り層を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ肉盛方法。
  4. 前記バルブシートの中央を中心に前記レーザ照射位置を円環状に移動させる場合、前記始端部から約270〜315度移動したタイミングで前記終端部の形成を開始することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のレーザ肉盛方法。
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