(第1の実施形態)
以下、本発明にかかるピエゾインジェクタの充電電圧検出装置を、コモンレール式の車載ディーゼル機関の備えるピエゾインジェクタの充電電圧検出装置に適用した第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態における燃料噴射制御システムの全体構成を示す。
図示されるように、燃料タンク10内の燃料は、燃料ポンプ12によって汲み上げられ、コモンレール14に加圧供給(圧送)される。コモンレール14は、燃料ポンプ12から圧送された燃料を高圧状態で蓄え、これを高圧燃料通路16を介して各気筒(ここでは、4気筒を例示)のピエゾインジェクタPIに供給する。
ピエゾインジェクタPIは、内部と外部とを連通させる噴射口を開閉するためのノズルニードル22と、高圧燃料通路16から供給される燃料が充填されるニードル収納部20とを備えている。そして、ノズルニードル22には、その開弁方向に、ニードル収納部20に充填された燃料の圧力が印加される。一方、ノズルニードル22の背面側は、高圧燃料通路16からの燃料が充填される背圧室24に対向している。これにより、ノズルニードル22は、その閉弁方向に、背圧室24内に充填された燃料の圧力が印加される。更に、背圧室24には、ノズルニードル22を閉弁側に押すニードルスプリング26が備えられている。
背圧室24は、三方弁28を介して低圧燃料通路18に連通可能とされている。三方弁28は、その背面側が、環状のバルブシート部30に着座することで、低圧燃料通路18と背圧室24とを遮断する一方、ボディの先端側へ変位することで、低圧燃料通路18と背圧室24とを連通させる。詳しくは、ボディの内部には、三方弁28が開弁した際にその開弁方向への変位を規制するバルブ支持面32が形成されている。このため、三方弁28の開弁時には、三方弁28はバルブ支持面32に接触した状態で固定されることとなる。
上記三方弁28には、変位拡大室34内の流体(燃料)を介してピエゾ素子PEによる動力が伝達される。更に、変位拡大室34には、ピエゾ素子PEを収縮方向に押すばね38が設けられている。ちなみに、ピエゾ素子PEは、三方弁28に対向する側の裏面側がボディに固定されている。ピエゾ素子PEは、複数の圧電素子が積層されてなる積層体(ピエゾスタック)を備え、これが逆圧電効果により伸縮することによりアクチュエータとして機能する。具体的には、ピエゾ素子PEは、容量性の負荷であり、充電されることで伸長し、放電されることで縮小する。ちなみに、本実施形態にかかるピエゾ素子PEは、PZT等の圧電材料の圧電素子を利用したものである。
こうした構成によれば、ピエゾ素子PEが収縮状態にあるときには、高圧燃料通路16の高圧燃料により印加される圧力によって、三方弁28は閉弁状態となる。このため、ノズルニードル22を閉弁させようとする力が開弁させようとする力に勝り、ピエゾインジェクタPIは閉弁状態となる。一方、ピエゾ素子PEが伸長状態となると、三方弁28が開弁される。このため、背圧室24内の燃圧が低下するため、ノズルニードル22を開弁させようとする力が閉弁させようとする力に勝り、ピエゾインジェクタPIは開弁状態となる。
上記燃料噴射制御システムは、コモンレール14内の燃圧を検出する燃圧センサ42等、ディーゼル機関の運転状態を検出する各種センサを備えている。これら各種センサの検出結果は、制御装置40に取り込まれる。そして、制御装置40では、こうした検出値に基づき、ピエゾインジェクタPI等、ディーゼル機関の各種アクチュエータを操作する。次に、制御装置40の行なう処理のうち、特にピエゾインジェクタPIに設けられるピエゾ素子PEの充電及び放電を行う処理について詳述する。
図2に、ピエゾインジェクタPIの備えるピエゾ素子PE及び制御装置40の構成を示す。
ここでは、まずピエゾ素子PEを駆動する駆動回路について説明する。
図示されるように、バッテリBaから供給される電力は、まず昇圧回路であるDC/DCコンバータ50に供給される。DC/DCコンバータ50は、バッテリBaの電圧(例えば「12V」)を、ピエゾ素子PEを充電するための高電圧(例えば「150〜300V」)に昇圧する。DC/DCコンバータ50の昇圧電圧は、コンデンサ52に印加される。これにより、コンデンサ52では、ピエゾ素子PEに供給するための電荷を蓄える。ちなみに、コンデンサ52は、ピエゾ素子PEへの一回の充電処理によってはその電圧がほとんど変化しない容量(例えば「数十〜数百μF」程度)を有するものであることが望ましい。コンデンサ52の電圧は、充電スイッチ54と充放電コイル56との直列接続体を介して、ピエゾ素子PE(各気筒に対応してピエゾ素子pa〜pdと表記)の高電位となる端子側に印加される。ちなみに、ピエゾ素子PEの低電位となる端子側は、接地されている。詳しくは、各ピエゾ素子pa〜pdと接地との間には、気筒選択スイッチ58が接続されており、これにより、ピエゾ素子pa〜pdのいずれに対して充電処理又は放電処理を行うかを選択するようになっている。
充電スイッチ54及び充放電コイル56間は、放電スイッチ62を介して接地されている。放電スイッチ62には、接地側をアノード側としてダイオード64が並列接続されている。ダイオード64は、コンデンサ52、充電スイッチ54、充放電コイル56と共に、ピエゾ素子PEを充電する降圧チョッパ回路を構成するものであり、フリーホイールダイオードとして機能する。
一方、充電スイッチ54には、充放電コイル56側からコンデンサ52側へと進む方向を順方向とするダイオード66が並列接続されている。ダイオード66は、コンデンサ52、充放電コイル56、放電スイッチ62と共に、ピエゾ素子PEの電荷を放電する昇圧チョッパ回路を構成するものであり、フリーホイールダイオードとして機能する。
なお、充放電コイル56とピエゾ素子PEとの間には、ショートスイッチ68とダイオード70と抵抗72及び抵抗74の直列接続体とが、ピエゾ素子PEに並列に接続されている。ショートスイッチ68は、上記チョッパ制御によっては放電しきれなかったピエゾ素子PEの電荷を完全に放電するためのものである。また、ダイオード70は、ピエゾ素子PEの電圧がマイナスになることを防止している。また、上記コンデンサ52には、これと並列に、抵抗体76及び抵抗体78の直列接続体が接続されている。
先の図1に示した制御装置40は、上記駆動回路に加えて、マイクロコンピュータ(マイコン86)と制御IC84とを備えている。ここで、マイコン86は、ディーゼル機関の運転状態等を検出する各種センサの検出値に基づき、ピエゾ素子PEの変位量の制御条件を算出し、制御IC84に出力する。制御IC84は、マイコン86から出力された制御条件に基づき、駆動回路を駆動する。なお、制御IC84やマイコン86は、駆動回路の各ノードN1〜N7の電位に基づき、駆動回路やピエゾ素子PEの電流や電圧等の情報を取り込んでいる。また、マイコン86は、A/D変換器82を介して積分器80の出力を取り込んでいる。積分器80は、ノードN5,N6の電圧降下量に応じて検出されるピエゾ素子PEを介して流れる電流を時間積分することで、ピエゾ素子PEの充電電荷量を検出するためのものである。
ここで、本実施形態にかかるピエゾ素子PEの変位量の制御(充電処理及び放電処理)について詳述する。
図3に、充電処理及び放電処理の態様を示す。ここで、図3(a)は、マイコン86から制御IC84に出力される信号であって且つ、ピエゾインジェクタPIに対する噴射期間の指令値(指令噴射期間)を示す噴射信号の推移を示す。図3(b)は、充電スイッチ54の操作信号の推移を示す。図3(c)は、気筒選択スイッチ58の操作信号の推移を示す(ここではそのうちのピエゾ素子paに対応したものを例示)。図3(d)は、放電スイッチ62の操作信号の推移を示す。図3(e)は、ショートスイッチ68の操作態様の推移を示す。図3(f)は、コンデンサ52の電圧の推移を示す。図3(g)は、ピエゾ素子PEの電圧の推移を示す。図3(h)は、ピエゾ素子PEを介して流れる電流(ピエゾ素子PEに流入する電荷、ピエゾ素子PEから流出する電荷)の推移を示す。図3(i)は、上記積分器80によって検出される充電電荷量の推移を示す。
図示されるように、時刻taに、マイコン86から制御IC84に噴射信号が出力されることで、制御IC84は、充電スイッチ54のオン・オフ操作によるチョッパ制御を開始する。具体的には、充電スイッチ54がオン操作されることによって、コンデンサ52、充電スイッチ54、充放電コイル56、ピエゾ素子paからなる閉ループ回路が形成される。これにより、コンデンサ52の電荷がピエゾ素子paに充電される。このとき、ピエゾ素子paを介して流れる電流量が漸増する(電流量の漸増操作)。一方、充電スイッチ54のオン操作の後、充電スイッチ54がオフ操作されることで、充放電コイル56、ピエゾ素子pa、ダイオード64からなる閉ループ回路が形成される。これにより、充放電コイル56のエネルギが、ピエゾ素子paに充電される。このとき、ピエゾ素子paを介して流れる電流量が漸減する(電流量の漸減操作)。そして、本実施形態では、電流量がゼロとなることで、充電スイッチ54を再度オン操作する。
上記態様にて充電スイッチ54が操作される降圧チョッパ制御が時刻ta〜時刻tbにわたって行われることで、ピエゾ素子paが充電され、ピエゾ素子paの高電位となる端子側の電位が上昇する。
一方、時刻tcにおいて、噴射信号が反転すると、制御IC84では、放電スイッチ62のオン・オフ操作を開始する。具体的には、放電スイッチ62がオン操作されることで、ピエゾ素子pa、充放電コイル56、及び放電スイッチ62によって閉ループ回路が形成される。これにより、ピエゾ素子paが放電される。このとき、ピエゾ素子paを介して流れる電流量が漸増する(電流量の漸増操作)。更に、放電スイッチ62のオン操作の後、放電スイッチ62がオフ操作されることで、ピエゾ素子pa、充放電コイル56、ダイオード66、及びコンデンサ52によって閉ループ回路が形成される。これにより、充放電コイル56のエネルギがコンデンサ52に回収される。このとき、ピエゾ素子paを介して流れる電流量が漸減する(電流量の漸減操作)。そして、本実施形態では、電流量がゼロとなることで、放電スイッチ62を再度オン操作する。
上記放電スイッチ62をオフ操作するタイミングは、ピエゾ素子paを介して流れる電流量が規定値となるタイミングとする。上記態様にて放電スイッチ62が操作される昇圧チョッパ制御が行われることで、ピエゾ素子paが放電され、ピエゾ素子paの高電位となる端子側の電位が低下する。
なお、昇圧チョッパ制御によるピエゾ素子paの放電が完了した後の時刻td〜時刻teの期間、ショートスイッチ68がオン操作されることで、ピエゾ素子paの電荷を完全に放電させるようにする。
本実施形態では、ピエゾ素子PEの充電処理を、充電スイッチ54のオン・オフ操作をすることによって行っている。そして、ピエゾ素子PEの変位量を所望に制御するに際し、本実施形態では、ピエゾ素子PEの変位量と相関を有するピエゾ素子PEの電気的な状態量を制御量とする。特に、本実施形態では、ピエゾ素子PEへの投入エネルギ量を制御量とする。この制御は、オープンループ制御を基本とし、これを学習補正する態様にて行う。ここでは、オープンループ制御は、充電処理時の降圧チョッパ制御を図4に示す態様にて行なうことで実現することができる。すなわち、充電スイッチ54をオン状態とする時間を充電処理の間中一定とし、且つオフ状態とする時間をピエゾ素子PEを介して流れる電流がゼロとなるまでの時間とする。換言すれば、電流の漸増操作から漸減操作へと切り替えるタイミングを漸増操作から予め定められた時間が経過するときとして且つ、電流の漸減操作から漸増操作へと切り替えるタイミングを電流がゼロとなるときとする。これにより、単位時間当たりにピエゾ素子PEに投入されるエネルギ量を、ピエゾ素子PEの温度にかかわらず略一定とすることができ、単位時間当たりのエネルギ投入量は、充電スイッチ54をオン状態とする時間によって調節することができる。なお、上記態様の降圧チョッパ制御により単位時間当たりにピエゾ素子PEに投入されるエネルギ量を一定とすることができることについては、例えば特開2002−13156号公報に記載されている。
図5に、本実施形態にかかるピエゾ素子PEの充電処理に関するブロック図を示す。
目標ベース値設定部B2は、ピエゾ素子PEに投入するエネルギの目標ベース値ETBSを設定する。本実施形態では、上記燃圧センサ42によって検出されるコモンレール14内の燃圧と、ピエゾインジェクタPIの個体差情報とに基づき、目標ベース値ETBSを設定する。燃圧に応じて目標ベース値ETBSを可変とするのは、ピエゾ素子PEの変位量が、ピエゾ素子PEの変位方向と逆方向に外部から加わる力に応じて変化するためである。一方、ピエゾインジェクタPIを開弁させるためには、高圧燃料通路16を介して供給される燃料が三方弁28をバルブシート部30側へ押す力に打ち勝つ力をピエゾ素子PEによって発生させなければならない。このため、ピエゾ素子PEの変位方向と逆方向に加わる力は、燃料の圧力に応じて変化する。
上記個体差情報は、例えば、先の図1に示した燃料噴射制御システムにピエゾインジェクタPIを装着するに先立ち、燃料噴射特性を計測するなどにより予め計測されるものである。なお、計測された個体差情報は、これを記憶した2次元コード等を各ピエゾインジェクタPIに付与し、上記燃料噴射制御システムにピエゾインジェクタPIを装着する際に2次元コード内のデータを制御装置40に記憶させるようにすることが望ましい。
容量算出部B4では、先の図2に示した積分器80によって検出された充電電荷量Qと、後述する処理によって検出される充電電圧とに基づき、ピエゾ素子PEの容量Cを算出する。温度変換部B6では、容量算出部B4によって算出された容量Cに基づき、ピエゾ素子PEの温度THFをマップ演算する。ここでは、容量Cが大きいほど温度THFが大きい値とされる。
温度補正部B8は、高温状態において、目標ベース値ETBSを補正する補正量を算出するものである。詳しくは、高温であるほど、目標ベース値ETBSを増量補正する。これは、ピエゾインジェクタPIに供給される燃料が高温となるほど、燃料の粘性が低下するために、ピエゾ素子PEの伸長量の割にノズルニードル22のリフト量の変位が鈍る傾向にあることに鑑みてなされるものである。具体的には温度THFが高いほど、目標ベース値ETBSの増量補正量を増大させる。
目標値算出部B10は、目標ベース値ETBSを上記温度補正部B8の出力によって補正することで、目標値ETRGを算出する。
オン時間設定部B12は、目標値ETRGに応じて、充電スイッチ54をオン状態とする時間であるオン時間Tonを設定する。ここでは、目標値ETRGが大きいほどオン時間Tonを長い値とする。これは、同一の充電処理時間にて投入エネルギ量を目標値ETRGとするための設定である。
実エネルギ算出部B14では、上記充電電圧Vpzt及び充電電荷量Qの積として実エネルギ量EACTを算出する。
偏差算出部B16は、実エネルギ量EACTと目標値ETRGとの差ΔEを算出する。平均化処理部B18では、充電処理がなされる際の燃圧NPCが同一レベルであるものについての上記差ΔEの複数のサンプリング値を平均化する処理を行う。学習値算出部B20は、平均化処理部B18の出力に基づき、実エネルギ量EACTと目標値ETRGとの乖離度合いを定量化した値である学習値ΔTを算出する。本実施形態では、学習値ΔTを、乖離度合いを補償するためのオン時間Tonの補正量として定量化している。そして、実エネルギ量EACTの方が目標値ETRGよりも小さければ小さいほど、学習値ΔTを大きい値とする。
学習値記憶部B22は、学習値算出部B20によって算出される学習値ΔTを記憶する。ここでは、燃圧NPCによって複数に分割された各領域毎に、学習値ΔTが記憶される。これは、燃圧に応じて目標値ETRGが設定されることから、実エネルギ量EACTと目標値ETRGとの乖離度合いも燃圧に依存する可能性があると考えられることに鑑みてなされる設定である。なお、学習値記憶部B22は、常時記憶保持装置を備えて構成されており、上記学習値ΔTを、常時記憶保持装置に記憶保持する。ここで、常時記憶保持装置とは、駆動装置(制御IC84やマイコン86)の給電手段としてのバッテリとの主接続の状態(電源スイッチの状態)にかかわらず、データを常時保持する記憶装置である。この常時記憶保持装置としては、例えば制御装置40とバッテリとの主接続の状態にかかわらず常時給電状態とされるバックアップメモリや、給電の有無にかかわらずデータを保持する不揮発性メモリ(EEPROM等)などがある。これにより、駆動装置の主電源がオンされてからオフされるまでの間の期間(又はディーゼル機関が起動されてから停止されるまでの期間)をトリップとする場合、複数回のトリップにわたって同一の学習値を用いることが可能となる。なお、上記学習値ΔTの学習処理は、1トリップに一回程度、又は所定走行距離に1回程度行うことが望ましい。
オン時間補正部B24では、オン時間設定部B12の出力を学習値ΔTで補正することで、充電スイッチ54の最終的なオン時間Tonを設定する。
こうした処理によれば、燃圧NPCや個体差、温度変化にかかわらず、ピエゾ素子PEへのエネルギ投入量を高精度に制御することができる。特に上記オン時間Tonの設定に基づくオープンループ制御の制御誤差が、学習値ΔTにて補償されるために、ピエゾ素子PEへの投入エネルギ量を高精度に制御することができる。次に、本実施形態にかかるピエゾ素子PEの充電電圧の検出方法について詳述する。
<充電電圧検出方法>
先の図3(g)に示されるように、ピエゾ素子PEの充電処理の完了後であっても、ピエゾ素子PEの電圧は振動する。次に、図6に基づき、この現象について説明する。
図6(a)は、三方弁28の閉弁時についてのピエゾインジェクタPIの一部断面図であり、図6(b)は、三方弁28の開弁時についてのピエゾインジェクタPIの一部断面図である。ここで、ピエゾ素子PEが伸長することで三方弁28が開弁すると、三方弁28は、バルブ支持面32に接触するため、それ以上の開弁側への変位が規制される。この状態において、変位拡大室34内の燃料や弾性体38と、三方弁28と、ピエゾ素子PEとが振動系(バネマス振動系)を構成する。このため、三方弁28がバルブ支持面32に接触して固定された状態であっても、ピエゾ素子PEに加わる荷重は変動する。このため、ピエゾ素子PEの圧電効果によって、ピエゾ素子PEの電圧は、変動することとなる。このため、ピエゾ素子PEの充電処理の完了後であっても、ピエゾ素子PEに投入した電気エネルギに起因したピエゾ素子PEの電圧(ピエゾ素子PEの充電電圧)を高精度に検出することは困難である。
ここで発明者らは、ピエゾ素子PEの電圧の変動は、ピエゾインジェクタPIの構造等に起因した固有振動数を有して振動するものであることを見出した。図7に、ピエゾ素子PEへの充電処理を変更した場合のピエゾ素子PEに加わる荷重(スタック荷重)、及びピエゾ素子PEの電圧の推移を示す。図示されるように、充電処理の開始タイミングを基準としたピエゾ素子PEに加わる荷重や電圧の振動の位相は様々に変化しえるとはいえ、その周期は同一となる傾向にある。このため、ピエゾインジェクタPIの構造等、予め振動に関する情報を取得しておくことで、ピエゾ素子PEの振動の半周期を特定することができる。そして、これにより、図8に示すように、振動の半周期だけ離間した一対のタイミングにおけるピエゾ素子PEの電圧の検出値V1,V2の平均値として、充電電圧Vpztを算出することができる。この平均値は、圧電効果による電圧の変動の除去された値、すなわちピエゾ素子PEへの電気エネルギ投入に起因した電圧とみなすことができる。ちなみに、図8(a)は、ピエゾ素子PEを介して流れる電流の推移を示し、図8(b)は、噴射信号の推移を示し、図8(c)は、ピエゾ素子PEの電圧の推移を示す。
図9に、本実施形態にかかる充電電圧Vpztの算出処理の手順を示す。この処理は、制御装置40によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS10において、制御装置40の搭載される制御システム内のピエゾインジェクタPIの固有振動数を決定するためのパラメータ(振動決定パラメータ)を読み込む。振動決定パラメータとしては、例えば、三方弁28の質量やばね係数等がある。ここで、ばね係数は、変位拡大室34内の燃料の体積弾性係数と弾性体38のばね係数とに基づき、これら双方が単一のばねを形成するとみなしたときの見掛けのばね係数とすればよい。なお、振動決定パラメータは、製品出荷時等に、制御装置40に予め記憶させるようにすればよい。これは、振動決定パラメータを記憶した2次元コード等を各ピエゾインジェクタPIに付与し、上記燃料噴射制御システムにピエゾインジェクタPIを装着する際に2次元コード内のデータを制御装置40に記憶させるようにすることで行うことができる。
続くステップS12においては、燃料噴射開始時期であるか否かを判断する。そして、燃料噴射開始時期であると判断される場合、ステップS14において、1度目の電圧検出タイミングt1と、2度目の電圧検出タイミングt2とを設定する。ここで、1度目の電圧検出タイミングt1は、燃料噴射開始時期から所定時間Tstart(例えば「200μs」)だけ経過したタイミングとする。このタイミングは、充電処理が確実に完了していると想定されるタイミングであって且つ放電処理が開始されるよりも十分に前のタイミングとなるように設定されている。また、2度目の電圧検出タイミングt2は、1度目の電圧検出タイミングt1に対して、振動の周期Tの「1/2」だけ後のタイミングに設定される。ここで、周期Tは、振動決定パラメータに基づき設定されるものである。
そして、第1の電圧検出タイミングにおいて(ステップS16:YES)、電圧を検出し (ステップS18)、第2の電圧検出タイミングにおいて(ステップS20:YES)、再度電圧を検出する (ステップS22)。ちなみに、これらタイミングでの検出値V1、V2は、上記各タイミングにおいて、先の図2に示した抵抗体72,74によるピエゾ素子PEの電圧の分圧値として検出されるものである。
続くステップS24においては、充電電圧Vpztを、検出値V1,V2の平均値(中央値)として算出する。なお、ステップS24の処理が完了する場合や、ステップS12において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
上記処理によれば、振動決定パラメータを予め設定しておくことで、振動の半周期の間隔だけ離間した一対のタイミングにおいて電圧を検出することができ、ひいては充電電圧を高精度に検出することができる。ここで、振動決定パラメータは、上述したように変位拡大室34内の燃料の体積弾性係数に依存する。そして体積弾性係数は、圧力や温度に依存して変化しえるものである。しかし、先の図1に示したピエゾインジェクタPIにおいては、変位拡大室34内の燃料は、変位拡大室34を区画する部材間のクリアランスを介してピエゾ素子PEの収容される室に連通し、ひいては低圧燃料通路18に連通している。このため、変位拡大室34内の燃料の圧力は、コモンレール14内の燃料の圧力が大きく変動しても、その影響を受けにくいものとなっている。このため、コモンレール14から供給される燃料の圧力の変動にかかわらず、変位拡大室34内の燃料の圧力は、体積弾性係数を変化させるうえでは大きな影響を及ぼさない。また、燃料の温度についても、ディーゼル機関の通常の運転範囲内での温度変化による体積弾性係数の変化はさほど大きくない。このため、予め振動決定パラメータを定めることで、振動の半周期を高精度に設定することができる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)ピエゾ素子PEの振動の周期Tの「1/2」の間隔だけ離間した一対のタイミングt1、t2でピエゾ素子PEの電圧を検出し、この際の検出値V1,V2に基づき充電電圧Vpztを算出した。これにより、充電電圧Vpztを高精度に検出することができる。特に予め一対のタイミングを定めてピエゾ素子PEの電圧を検出するために、電圧検出周期の短縮化を抑制することができる。このため、例えば「70〜80μs」の周期で電圧を検出することで充電電圧Vpztを検出することができる。この間隔は、ピエゾ素子PEの電圧を逐次検出することでその振動の周期を検出するために要求される電圧検出周期(例えば「10μs」)よりも長い周期である。
(2)ピエゾインジェクタPI内に、三方弁28の開弁時において、三方弁28と接触する被接触部材(バルブ支持面32)を形成した。これにより、ピエゾ素子PEの充電処理の完了後においても、ピエゾ素子及び三方弁28を備えて構成される系が顕著に振動する系となる。このため、本実施形態にかかる充電電圧の検出手法の利用価値が特に高いものとなっている。
(3)充電電圧Vpztを、ピエゾ素子PEに実際に投入されたエネルギ量(実エネルギ量EACT)の算出に利用した。これにより、ピエゾ素子PEの投入エネルギ量の学習補正を高精度に行うことができ、ひいてはピエゾ素子PEの電気的な状態量の制御をより高精度に実行することができる。
(4)充電電圧Vpztを、ピエゾ素子PEの容量Cの算出に用いた。これにより、ピエゾ素子PEの容量Cを高精度に算出することができ、ひいてはピエゾ素子PEの電気的な状態量の制御をより高精度に実行することができる。
(5)充電電圧Vpztを、ピエゾ素子PEの温度THFを算出するために用いた。これにより、ピエゾ素子PEの電気的な状態量をより高精度に制御することができる。また、ピエゾ素子PEの温度THFは、ピエゾインジェクタPI内の燃料の温度と強い正の相関を有するパラメータとなるため、これによりピエゾインジェクタPIに対する指令噴射量を可変設定するなら、燃料噴射制御を都度の温度に応じた最適なものとすることも可能となる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図10に、本実施形態にかかる充電電圧Vpztの算出処理の手順を示す。この処理は、制御装置40によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図10において、先の図9に示した処理に対応する処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。
図示されるように、本実施形態では、ステップS12において肯定判断されると、ステップS26において、ピエゾインジェクタPIに供給される燃料の圧力(コモンレール14内の燃圧NPC)と、ピエゾ素子PEの温度THFとを取得する。続くステップS14aでは、ピエゾ素子PEの電圧を検出する一対のタイミングt1、t2を算出する。この際、ピエゾ素子PEの充電完了後の電圧の振動の周期Tを、上記振動決定パラメータのみならず、コモンレール14内の燃圧NPC及びピエゾ素子PEの温度THFに基づき設定する。
ここで、コモンレール14内の燃圧NPCは、変位拡大室34内の燃圧と正の相関を有し得るパラメータである。すなわち、変位拡大室34は、低圧燃料通路18に連通しているとはいえ、高圧燃料通路16側からの燃料が流入するため、コモンレール14内の燃圧に応じて変動しえる。また、ピエゾ素子PEの温度は、ピエゾインジェクタPI内の燃料の温度と強い正の相関を有するパラメータとして用いられるものである。すなわち、ピエゾ素子PEの温度THFは、ピエゾインジェクタPI内の燃料の温度を定量化したパラメータである。
これら2つのパラメータは、いずれも変位拡大室34内の燃料の体積弾性係数を変化させ得るパラメータである。このため、本実施形態では、これらに基づき周期Tを設定する。ここでは、燃圧NPCが高いほど周期Tを短くする。これは、変位拡大室34内の燃圧が高いほど見かけのばね係数Kが増大し、固有振動数が増大すると考えられるためである。また、温度THFが高いほど周期Tを長くする。これは、燃料が高温であるほど粘性が低下するために、見かけのばね係数Kが低下し、固有振動数が減少すると考えられるためである。なお、図10では、燃圧NPCと周期Tとの関係を示す1次元マップと、温度THFと周期Tとの関係を示す1次元マップとを模式的に示しているが、実際には、燃圧NPCや温度THFと補正係数との関係を定めた1次元マップを備え、振動決定パラメータから設定される周期Tをこれら補正係数に応じて補正することで最終的な周期Tを算出するようにすることが望ましい。
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(5)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
(6)ピエゾ素子の温度THFに基づき、周期Tを可変設定した。これにより、周期Tをより高精度に設定することができる。
(7)ピエゾインジェクタPIに供給される燃料の圧力に基づき、周期Tを可変設定した。これにより、周期Tをより高精度に設定することができる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、ピエゾインジェクタPIに対する指令噴射期間が十分に長い場合、上記第1の実施形態の要領で充電電圧を検出する処理を行うとともに、ピエゾ素子PEの電圧の振動が十分に減衰したと想定されるタイミングでピエゾ素子PEの電圧を検出することで、上記第1の実施形態の要領で検出される充電電圧の検出誤差を学習する。
図11に、振動の周期Tの「1/2」の間隔だけ離間した一対のタイミングでの電圧検出に基づく充電電圧Vpztの検出誤差の学習処理の手順を示す。この処理は、制御装置40によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS30において、指令噴射期間TFINを取得する。続くステップS32においては、指令噴射期間TFINが規定期間α以上であるか否かを判断する。ここで、規定期間αは、ピエゾ素子PEの充電処理の完了後、ピエゾ素子PEの圧電現象に起因した電圧の変動が十分に減衰すると想定される期間に設定されている。そして、規定期間α以上であると判断される場合、ステップS34において、規定期間αの経過時にピエゾ素子PEの電圧を検出する。続く、ステップS36においては、上記ステップS34において取得された検出値Vαに対する半周期だけ離間した一対のタイミングでの電圧検出に基づき算出される充電電圧Vpztの差を、学習値ΔVとして算出する。ここで、検出値αと、充電電圧Vpztとは、同一の充電処理についての充電電圧を示すパラメータである。換言すれば、ピエゾ素子PEの1回の伸縮動作の間の期間(ノズルニードル22の1回の開閉動作の間の期間)における値である。
なお、ステップS36の処理が完了する場合や、上記ステップS32において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
図12に、本実施形態にかかる充電電圧Vpztの算出処理の手順を示す。この処理は、制御装置40によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図12において、先の図9に示した処理に対応する処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。
この一連の処理では、ステップS24bにおいて、一対の検出値V1,V2の平均値から学習値ΔVを減算することで、充電電圧Vpztを算出する。
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(5)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
(8)ピエゾインジェクタPIの開弁時間が所定以上である場合、ピエゾ素子PEの電圧の振動成分が十分に減衰した後のピエゾ素子PEの電圧の検出値Vαを取得し、これと充電電圧Vpztとの差に基づき、充電電圧Vpztの算出誤差を学習した。これにより、充電電圧Vpztをより高精度に算出することが可能となる。これにより、周期Tの設定において前提としたピエゾインジェクタPIと実際のピエゾインジェクタとの間に個体差や経年変化に起因したずれが生じたり、ピエゾインジェクタPIに供給される燃料の性状が周期Tの設定において前提としたものからずれたりした場合であっても、充電電圧Vpztを高精度に算出することができる。ここで、ピエゾインジェクタPIの個体差や経年変化によって周期Tが変化する主な要因としては、ピエゾ素子PEの収納される空間を経由して変位拡大室34を低圧燃料通路18に連通させるクリアランスのばらつきがある。また、燃料性状の相違による周期Tの変化としては、例えば、燃料タンク10に軽油が給油されるのか、バイオ燃料が給油されるのかに応じた変位拡大室34内の流体の体積弾性係数の変動によるものが考えられる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記各実施形態では、ピエゾ素子PEの充電処理として、複数回のオン・オフ操作のうちのオン時間を同一とする処理を採用したがこれに限らない。別の充電処理を行う場合であっても、充電処理の完了後に充電電圧を高精度に検出できるなら、これに基づき充電電圧を高精度に補正することなどができる。
・上記第3の実施形態による上記第1の実施形態の変更点によって、上記第2の実施形態を変更してもよい。
・上記第2の実施形態では、電圧の振動の周期Tを、温度THF及び燃圧NPCに基づき設定したがこれに限らず、これら2つのパラメータのいずれか一方のみに基づき設定してもよい。
・上記第2の実施形態では、温度THFを用いたが、これに限らず、例えば燃料ポンプ12に燃料温度を検出する検出手段が内蔵されている場合には、その検出値を用いてもよい。
・上記第1、第3の実施形態では、振動決定パラメータを制御装置40に記憶し、これに基づき振動の周期Tを設定したがこれに限らず、予め振動の周期Tを制御装置40に記憶するようにしてもよい。また、第2の実施形態においても、振動決定パラメータを制御装置40に記憶する代わりに、温度THFや燃圧NPC毎に振動の周期Tを設定するマップを制御装置40に記憶しておいてもよい。
・上記各実施形態では、振動の半周期だけ離間した一対のタイミングにおいてピエゾ素子PEの電圧を検出し、これに基づき充電電圧Vpztを算出したがこれに限らず、例えば振動の半周期の奇数倍(≧3)だけ離間した一対のタイミングにおいてピエゾ素子PEの電圧を検出し、これに基づき充電電圧Vpztを算出してもよい。
・上記各実施形態では、振動の半周期だけ離間した一対のタイミングにおいてピエゾ素子PEの電圧を検出し、これに基づき充電電圧Vpztを算出したがこれに限らず、例えば互いに半周期だけ離間した3つ以上のタイミングにおいてピエゾ素子PEの電圧を検出し、これに基づき充電電圧Vpztを算出してもよい。すなわち、例えば4つのタイミングにおいてピエゾ素子PEの電圧を検出し、これらの平均値として充電電圧Vpztを算出してもよい。このように、振動の半周期(又はその奇数倍)だけ離間したタイミングの電圧値の平均値に基づき充電電圧Vpztを算出する場合には、上記タイミングの数が偶数であることが便宜である。ただし、このことは、奇数個のタイミングにおける電圧から充電電圧Vpztを算出する可能性を排除するものではない。すなわち、例えば3つのタイミングの先頭のタイミング及び最後のタイミングのそれぞれにおいて検出された電圧の平均値と、中間のタイミングにおいて検出された電圧との平均値として充電電圧Vpztを算出するなどすることも可能である。これによれば、ピエゾ素子PEの充電処理完了後において、ピエゾ素子PEからの電荷のリークに起因してピエゾ素子PEの電圧が緩やかに減衰する場合であっても、電圧の減衰を考慮して上記中間のタイミングにおける充電電圧を算出することができる。
更に、互いに振動の半周期の奇数倍だけ離間したタイミングにおいて検出される電圧の平均値(中央値)を用いるものに限らない。上述したように、ピエゾ素子PEの充電電圧が緩やかに減衰するものであることに鑑みれば、時系列的に後のタイミングにおける検出値に先のタイミングにおける検出値よりも大きい重み係数を乗算した加重平均処理によって充電電圧を算出してもよい。
・充電処理の完了後におけるピエゾ素子PEの電圧の複数個の検出値を入力とし、ピエゾ素子PEの圧電効果に起因して上記入力される複数個の検出値に含まれる振動成分を除去しつつ、ピエゾ素子PEの充電電圧を算出する算出手段としては、上記各実施形態及びその変形例にて例示したものに限らない。例えば、上記実施形態で想定したものよりも高速(例えば「10μs」周期)にてピエゾ素子PEの電圧をサンプリングする機能を備える場合、複数個の検出値のうちの極大値及び極小値を特定することが可能となると考えられる。このため、これら極大値及び極小値の平均値を充電電圧Vpztとすることもできる。
・上記実施形態では、ピエゾ素子PEに投入されたエネルギ量やピエゾ素子PEの見かけの容量を算出するために、ピエゾ素子PEの充電電圧Vpztを利用したがこれに限らない。例えば、ピエゾ素子PEの温度を直接算出するためにピエゾ素子PEの充電電圧Vpztを利用してもよい。すなわち、先の図5に示した処理によれば、ピエゾ素子PEの充電電圧Vpztとピエゾ素子PEの充電電荷量Qとに基づきピエゾ素子PEの静電容量を算出し、これに基づきピエゾ素子PEの温度THFをマップ演算した。このことは、充電電圧Vpzt及び充電電荷量Qを入力として、ピエゾ素子PEの温度を算出可能であることを意味する。
・ピエゾ素子PEの静電容量の利用手法としては、上記各実施形態で例示したものに限らない。例えばピエゾ素子PEの個体差を定量化するパラメータとして、静電容量を利用してもよい。
・ピエゾインジェクタPIの構造としては、先の図1に例示したものに限らない。例えば、ピエゾ素子PEの変位を三方弁28に伝達させるための流体が充填される室としては、ピエゾ素子PEの変位を増幅する変位拡大室34に限らず、ピエゾ素子PEの変位量と略等しい量だけ三方弁28を変位させるものであってもよい。また、流体(燃料)を介さずに、ピエゾ素子PEの伸縮動作を弾性体38によって三方弁28に伝達するようにしてもよい。更に、流体(燃料)の充填された変位拡大室34内に弾性体38を備えない構成であってもよい。なお、変位拡大室34内に充填される流体としては燃料に限らず、適宜の非圧縮性流体であればよい。
・ピエゾインジェクタPIとしては、先の図1に例示したように、開弁方向及び閉弁方向のそれぞれに燃料の圧力が印加されるノズルニードル22と、ノズルニードル22の閉弁方向に圧力を印加する燃料を低圧系に流出させる弁体(三方弁28)と、弁体の開弁時に弁体と接触する被接触部材(バルブ支持面32)とを備えるものに限らない。例えば、米国特許第6520423号明細書や、特開2007−231770号公報に記載されているように、ピエゾ素子の伸長に伴って押しのけた流体(燃料)に応じてノズルニードルのリフト量が調節されるものであってもよい。この場合、ピエゾ素子が伸長した際に、ピエゾ素子やこれに連結される部材の伸長方向の変位を規制する被接触部材が存在しない。しかし、この場合であっても、ピエゾ素子の充電処理完了直後にピエゾ素子に印加される荷重が変動する場合、より迅速且つ高精度に充電電圧を検出するためには、本発明の適用が有効と考えられる。
・内燃機関としては、ディーゼル機関に限らない。ただし、筒内噴射式内燃機関や圧縮着火式内燃機関であるなら、ピエゾインジェクタに高圧燃料が供給されるため、本実施形態と同様の課題を生じやすいと考えられ、本発明の適用が特に有効と考えられる。
20…ニードル収納部、22…ノズルニードル、24…背圧室、28…三方弁、30…バルブシート部、32…バルブ支持面(被接触部材の一実施形態)、34…変位拡大室、84…制御IC(ピエゾインジェクタの充電電圧検出装置の一実施形態)、86…マイコン(ピエゾインジェクタの充電電圧検出装置の一実施形態)、PI…ピエゾインジェクタ、PE…ピエゾ素子。