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JP5212298B2 - パワーモジュール用基板、冷却器付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びパワーモジュール用基板の製造方法 - Google Patents

パワーモジュール用基板、冷却器付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びパワーモジュール用基板の製造方法 Download PDF

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JP5212298B2 JP2009172165A JP2009172165A JP5212298B2 JP 5212298 B2 JP5212298 B2 JP 5212298B2 JP 2009172165 A JP2009172165 A JP 2009172165A JP 2009172165 A JP2009172165 A JP 2009172165A JP 5212298 B2 JP5212298 B2 JP 5212298B2
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Description

この発明は、半導体素子が搭載される回路層を備えたパワーモジュール用基板、このパワーモジュール基板を備えた冷却器付パワーモジュール用基板、このパワーモジュール、及び、このパワーモジュール用基板の製造方法に関するものである。
半導体素子の中でも電力供給のためのパワー素子は発熱量が比較的高いため、これを搭載する基板としては、例えば、AlN(窒化アルミ)からなるセラミックス基板上にAl(アルミニウム)の金属板がAl−Si系のろう材を介して接合されたパワーモジュール用基板が広く用いられている。
この金属板は回路層とされ、回路層の上には、はんだ材を介してパワー素子としての半導体素子が搭載される。なお、セラミックス基板の下面にも放熱のためにAl等の金属板が接合されて金属層とされ、この金属層を介して冷却器が接合されたものが提案されている。
ここで、アルミニウムからなる回路層においては、表面にアルミニウムの酸化皮膜が形成されるため、はんだ材との接合を良好に行うことができない。
そこで、従来は、例えば特許文献1に開示されているように、回路層の表面に無電解めっき等によってNiめっき膜を形成し、このNiめっき膜上にはんだ材を配設して半導体素子を接合していた。
また、特許文献2には、はんだ材を用いずにAgナノペーストを用いて半導体素子を接合する技術が提案されている。
特開2004−172378号公報 特開2006−202938号公報
ところで、特許文献1に記載されたように、回路層表面にNiめっき膜を形成したパワーモジュール用基板においては、半導体素子を接合するまでの過程においてNiめっき膜の表面が酸化等によって劣化し、はんだ材を介して接合した半導体素子との接合信頼性が低下するおそれがあった。
また、パワーモジュール用基板に冷却器をろう付けで接合する場合には、回路層表面にNiめっき膜を形成した後にろう付け等を行うとNiめっき膜が劣化してしまうため、パワーモジュール用基板と冷却器とをろう付けして冷却器付パワーモジュール用基板を形成した後に、めっき浴内にこの冷却器付パワーモジュール用基板全体を浸漬させていた。このため、回路層以外の部分にもNiめっき膜が形成されることになる。ここで、冷却器がアルミニウム及びアルミニウム合金で構成されていた場合には、アルミニウムからなる冷却器とNiめっき膜との間で電食が進行するおそれがある。このため、Niめっき工程においては、冷却器部分にNiめっき膜が形成されないようにマスキング処理を行う必要があった。このように、マスキング処理をした上でめっき処理をすることになるため、回路層部分にNiめっき膜を形成するのには多大な労力が必要であり、パワーモジュールの製造コストが大幅に増加するといった問題があった。
一方、特許文献2に開示されたように、はんだ材を使用せずにAgナノペーストを用いて半導体素子を接合する場合には、Agナノペーストからなる層がはんだ材に比べて厚みが薄く形成されるため、熱サイクル負荷時の応力が半導体素子に作用しやすくなり、半導体素子自体が破損してしまうおそれがあった。
また、前述のように、アルミニウムからなる回路層においては、表面にアルミニウムの酸化皮膜が形成されており、特許文献2に記載されたAgナノペーストのみを用いて半導体素子を接合することはできず、やはり、アルミニウム表面にAgやNiからなる介在層を形成する必要があった(特許文献2段落番号0014参照)。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、回路層上に半導体素子をはんだ材を介して、容易に、かつ、確実に接合することが可能なパワーモジュール用基板、冷却器付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びこのパワーモジュール用基板の製造方法を提供することを目的とする。
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明のパワーモジュール用基板は、絶縁層の一方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層が配設され、この回路層上にはんだ層を介して半導体素子が配設されるパワーモジュール用基板であって、前記回路層の前記はんだ層側の面には、ガラスを含有するAgペーストの焼成体からなるAg焼成層が形成されていることを特徴としている。
この構成のパワーモジュール用基板によれば、回路層の前記はんだ層側の面に、ガラスを含有するAgペーストの焼成体からなるAg焼成層が形成されているので、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層の表面に形成されている酸化皮膜を除去することができ、Ag焼成層を介してアルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層上にはんだ材を介して半導体素子を接合することが可能となる。つまり、Niめっき膜の代替としてAg焼成層を形成しているのである。よって、パワーモジュール用基板をめっき液等に浸漬する必要がなく、マスキング処理等の面倒な作業を削減することができる。
また、半導体素子の接合にはんだ材を用いていることから、はんだ材の厚みを厚く形成することが可能となり、熱サイクル負荷時の応力が半導体素子に作用することを抑制でき、半導体素子自体の破損を防止することができる。
ここで、前記Ag焼成層は、前記回路層上に形成されたガラス層と、このガラス層の上に形成されたAg層と、を備えていることが好ましい。
この場合、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層の表面に形成されているアルミニウムの酸化皮膜をガラス層に反応させて除去することができ、回路層と半導体素子とをはんだ材を介して確実に接合することができる。
また、前記Ag焼成層は、その厚さ方向における電気抵抗値Pが0.5Ω以下に設定されていることが好ましい。
前記Ag焼成層の厚さ方向における電気抵抗値Pが0.5Ω以下とされているので、Ag焼成層及びはんだ材を介して半導体素子と回路層との間で電気を確実に導通することが可能となり、信頼性の高いパワーモジュールを構成することができる。さらに、半導体素子と回路層との間の電気の導通を確保するためには、前記Ag焼成層の厚さ方向における電気抵抗値Pを0.2Ω以下とすることが好ましい。
なお、本発明においては、Ag焼成層の厚さ方向における電気抵抗値Pは、Ag焼成層の上面と回路層の上面との間の電気抵抗としている。これは、回路層を構成するアルミニウムの電気抵抗がAg焼成層の厚さ方向の電気抵抗に比べて非常に小さいためである。なお、この電気抵抗値Pの測定は、Ag焼成層の上面中央点と、Ag焼成層の上面中央点からAg焼成層端部までの距離Hとした場合にAg焼成層端部からHだけ離れた回路層上の点と、の間ので行うこととした。
また、前記ガラスが、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン及び酸化ビスマスのいずれか1種又は2種以上を含有していることが好ましい。
この場合、ガラスの軟化点が比較的低くなり、低温でAgペーストを焼成することが可能となり、Agペーストの焼成時の熱によってアルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層が劣化することを防止できる。
さらに、前記絶縁層が、AlN、Si又はAlから選択されるセラミックス基板であることが好ましい。
AlN、Si又はAlから選択されるセラミックス基板は、絶縁性及び強度に優れており、パワーモジュール用基板の信頼性の向上を図ることができる。また、このセラミックス基板上にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属板をろう付けすることによって、容易に回路層を形成することが可能となる。
本発明に係る冷却器付パワーモジュール用基板は、前述のパワーモジュール用基板と、このパワーモジュール用基板の前記絶縁層の他方の面側に配設された冷却器と、を備えていることを特徴としている。
この構成の冷却器付パワーモジュール用基板によれば、回路層上に前述のAg焼成層が形成されているので、はんだ材を介して半導体素子を接合することができる。
なお、冷却器は、絶縁層の他方の面に直接接合する必要はなく、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層やアルミニウム又はアルミニウム合金若しくはアルミニウムを含む複合材(例えばAlSiC等)からなる緩衝層を介して、絶縁層の他方の面側に接合されていればよい。
本発明に係るパワーモジュールは、前述のパワーモジュール用基板と、このパワーモジュール用基板の前記回路層上にはんだ層を介して接合された半導体素子と、を備えていることを特徴としている。
この構成のパワーモジュールにおいては、はんだ材を介して半導体素子が接合されていることから、熱サイクル負荷時の応力がはんだ材によって緩和され、半導体素子の破損を抑制することができる。よって、熱サイクル信頼性を大幅に向上させることができる。また、Niめっき膜を形成する必要がないため、生産コストの大幅な削減を図ることができる。
本発明に係るパワーモジュール用基板の製造方法は、絶縁層の一方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層が配設され、この回路層上にはんだ層を介して半導体素子が配設されるパワーモジュール用基板の製造方法であって、前記回路層の前記はんだ層側の面にガラスを含有するAgペーストを塗布する塗布工程と、Agペーストを塗布した状態で加熱処理して前記Agペーストを焼成する焼成工程と、を備え、前記回路層の前記はんだ層側の面に、ガラスを含有するAgペーストの焼成体からなるAg焼成層を形成することを特徴としている。
この構成のパワーモジュール用基板の製造方法によれば、ガラス粉末を含有するAgペーストを塗布する塗布工程と、Agペーストを塗布した状態で加熱処理して前記Agペーストを焼成する焼成工程と、を備えているので、回路層の前記はんだ層側の面にAg焼成層を形成することができる。また、ガラス粉末を含有するAgペーストを使用しているので、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層の表面に形成されている酸化皮膜を除去することが可能となり、回路層上にAg焼成層を確実に形成することができる。
ここで、前記焼成工程における焼成温度が、350℃以上645℃以下であることが好ましい。
焼成工程における焼成温度が350℃以上とされているので、Agペーストを焼成してAg焼成層を確実に形成することができる。また、焼成温度が645℃以下とされているので、焼成工程におけるアルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層の劣化を防止することができる。
本発明によれば、回路層上に半導体素子を、容易に、かつ、確実に接合することが可能なパワーモジュール用基板、冷却器付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びこのパワーモジュール用基板の製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態であるパワーモジュール用基板を用いたパワーモジュールの概略説明図である。 本発明の実施形態であるパワーモジュール用基板を示す説明図である。 図2のパワーモジュール用基板における回路層表面の拡大説明図である。 本発明の実施形態において、Ag焼成層の厚さ方向の電気抵抗値Pの測定方法を示す上面説明図である。 本発明の実施形態において、Ag焼成層の厚さ方向の電気抵抗値Pの測定方法を示す側面説明図である。 Agペーストの製造方法を示すフロー図である。 図1のパワーモジュールの製造方法を示すフロー図である。
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。図1に本発明の実施形態であるパワーモジュールを示す。
このパワーモジュール1は、回路層12が配設されたパワーモジュール用基板10と、回路層12の表面にはんだ層2を介して接合された半導体チップ3と、冷却器40とを備えている。
パワーモジュール用基板10は、絶縁層を構成するセラミックス基板11と、このセラミックス基板11の一方の面(図1において上面)に配設された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面(図1において下面)に配設された金属層13とを備えている。
セラミックス基板11は、回路層12と金属層13との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いAlN(窒化アルミ)で構成されている。また、セラミックス基板11の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
回路層12は、セラミックス基板11の一方の面に、導電性を有する金属板が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、回路層12は、純度が99.99%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなるアルミニウム板がセラミックス基板11に接合されることにより形成されている。
金属層13は、セラミックス基板11の他方の面に、金属板が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、金属層13は、回路層12と同様に、純度が99.99%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなるアルミニウム板がセラミックス基板11に接合されることで形成されている。
冷却器40は、前述のパワーモジュール用基板10を冷却するためのものであり、パワーモジュール用基板10と接合される天板部41と、この天板部41から下方に向けて垂設された放熱フィン42と、冷却媒体(例えば冷却水)を流通するための流路43とを備えている。冷却器40(天板部41)は、熱伝導性が良好な材質で構成されることが望ましく、本実施形態においては、A6063(アルミニウム合金)で構成されている。
また、本実施形態においては、冷却器40の天板部41と金属層13との間には、アルミニウム又はアルミニウム合金若しくはアルミニウムを含む複合材(例えばAlSiC等)からなる緩衝層15が設けられている。
そして、図1に示すパワーモジュール1においては、回路層12の表面(図1において上面)に、後述するAgペーストを焼成して形成されたAg焼成層30が形成されており、このAg焼成層30の表面に、はんだ層2を介して半導体チップ3が接合されている。ここで、はんだ層2を形成するはんだ材としては、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系が挙げられる。
なお、Ag焼成層30は、図1に示すように、回路層12の表面全体には形成されておらず、半導体チップ3が配設される部分にのみ選択的に形成されている。
図2及び図3に、はんだ層2を介して半導体チップ3を接合する前のパワーモジュール用基板10を示す。
このパワーモジュール用基板10においては、回路層12の表面(図2及び図3において上面)に、前述のAg焼成層30が形成されている。このAg焼成層30は、はんだ層2を介して半導体チップ3を接合する前の状態では、図3に示すように、回路層12側に形成されたガラス層31と、このガラス層31上に形成されたAg層32と、を備えている。そして、このガラス層31内部には、粒径が数ナノメートル程度の微細な導電性粒子33が分散されている。この導電性粒子33は、Ag又はAlの少なくとも一方を含有する結晶性粒子とされている。
さらに、このAg焼成層30の厚さ方向の電気抵抗値Pが0.5Ω以下に設定されている。ここで、本実施形態においては、Ag焼成層30の厚さ方向における電気抵抗値Pは、Ag焼成層30の上面と回路層12の上面との間の電気抵抗値としている。これは、回路層12を構成する4Nアルミニウムの電気抵抗がAg焼成層30の厚さ方向の電気抵抗に比べて非常に小さいためである。なお、この電気抵抗の測定の際には、図4及び図5に示すように、Ag焼成層30の上面中央点と、Ag焼成層30の上面中央点からAg焼成層30端部までの距離Hに対してAg焼成層30端部からHだけ離れた回路層12上の点と、の間の電気抵抗を測定することとしている。
また、本実施形態では、回路層12が純度99.99%のアルミニウムで構成されていることから、回路層12の表面(図3において上面)には、大気中で自然発生したアルミニウム酸化皮膜12Aが形成されているが、前述のAg焼成層30が形成された部分においては、このアルミニウム酸化皮膜12Aが除去されており、回路層12上に直接、Ag焼成層30が形成されている。つまり、回路層12を構成するアルミニウムとガラス層31とが直接接合されているのである。
ここで、回路層12上に自然発生するアルミニウム酸化皮膜12Aの厚さtoが、4nm≦to≦6nmとされている。また、本実施形態においては、ガラス層31の厚さtgが0.01μm≦tg≦5μm、Ag層32の厚さtaが1μm≦ta≦100μm、Ag焼成層30全体の厚さtg+taが1.01μm≦tg+ta≦105μmとなるように構成されている。
次に、Ag焼成層30を構成するAgペーストについて説明する。
このAgペーストは、Ag粉末と、ガラス粉末と、樹脂と、溶剤と、分散剤と、を含有しており、Ag粉末とガラス粉末とからなる粉末成分の含有量が、Agペースト全体の60質量%以上90質量%以下とされており、残部が樹脂、溶剤、分散剤とされている。なお、本実施形態では、Ag粉末とガラス粉末とからなる粉末成分の含有量は、Agペースト全体の85質量%とされている。
また、このAgペーストは、その粘度が10Pa・s以上500Pa・s以下、より好ましくは50Pa・s以上300Pa・s以下に調整されている。
Ag粉末は、その粒径が0.05μm以上1.0μm以下とされており、本実施形態では、平均粒径0.8μmのものを使用した。
ガラス粉末は、例えば、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン及び酸化ビスマスのいずれか1種又は2種以上を含有しており、その軟化温度が600℃以下とされている。本実施形態では、酸化鉛と酸化亜鉛と酸化ホウ素とからなり、平均粒径が0.5μmのガラス粉末を使用した。
また、Ag粉末の重量Aとガラス粉末の重量Gとの重量比A/Gは、80/20から99/1の範囲内に調整されており、本実施形態では、A/G=80/5とした。
溶剤は、沸点が200℃以上のものが適しており、本実施形態では、ジエチレンクリコールジブチルエーテルを用いている。
樹脂は、Agペーストの粘度を調整するものであり、500℃以上で分解されるものが適している。本実施形態では、エチルセルロースを用いている。
また、本実施形態では、ジカルボン酸系の分散剤を添加している。なお、分散剤を添加することなくAgペーストを構成してもよい。
次に、Agペーストの製造方法について、図6に示すフロー図を参照して説明する。まず、前述したAg粉末とガラス粉末とを混合して混合粉末を生成する(混合粉末形成工程S1)。また、溶剤と樹脂とを混合して有機混合物を生成する(有機物混合工程S2)。
そして、混合粉末と有機混合物と分散剤とをミキサーによって予備混合する(予備混合工程S3)。次に、予備混合物をロールミル機を用いて練り込みながら混合する(混錬工程S4)。得られた混錬をペーストろ過機によってろ過する(ろ過工程S5)。このようにして、前述のAgペーストが製出されることになる。
次に、本実施形態であるパワーモジュール1の製造方法について、図7に示すフロー図を参照して説明する。
まず、回路層12となるアルミニウム板及び金属層13となるアルミニウム板を準備し、これらのアルミニウム板を、セラミックス基板11の一方の面及び他方の面にそれぞれろう材を介して積層し、加圧・加熱後冷却することによって、前記アルミニウム板とセラミックス基板11とを接合する(回路層接合工程S11)。なお、このろう付けの温度は、640℃〜650℃に設定されている。
次に、金属層13の他方の面側に、緩衝層15を介して冷却器40(天板部41)をろう材を介して接合する(冷却器接合工程S12)。なお、冷却器40のろう付けの温度は、590℃〜610℃に設定されている。
そして、回路層12の表面に、前述のAgペーストを塗布する(Agペースト塗布工程S13)。なお、Agペーストを塗布する際には、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、感光性プロセス等の種々の手段を採用することができる。本実施形態では、スクリーン印刷法によってAgペーストをパターン状に形成した。
回路層12表面にAgペーストを塗布した状態で、加熱炉内に装入してAgペーストの焼成を行う(焼成工程S14)。なお、このときの焼成温度は、350℃〜645℃に設定されている。
この焼成工程S14により、ガラス層31とAg層32とを備えたAg焼成層30が形成される。このとき、ガラス層31によって、回路層12の表面に自然発生していたアルミニウム酸化皮膜12Aが溶融除去されることになり、回路層12に直接ガラス層31が形成される。また、ガラス層31の内部に、粒径が数ナノメートル程度の微細な導電性粒子33が分散されることになる。この導電性粒子33は、Ag又はAlの少なくとも一方を含有する結晶性粒子とされており、焼成の際にガラス層31内部に析出したものと推測される。
こうして、回路層12の表面にAg焼成層30が形成されたパワーモジュール用基板10及び冷却器付パワーモジュール用基板が製出される。
そして、Ag焼成層30の表面に、はんだ材を介して半導体チップ3を載置し、還元炉内においてはんだ接合する(はんだ接合工程S15)。このとき、はんだ材によって形成されるはんだ層2には、Ag焼成層30のAg層32の一部又は全部が溶融することになる。
これにより、はんだ層2を介して半導体チップ3が回路層12上に接合されたパワーモジュール1が製出される。
以上のような構成とされた本実施形態であるパワーモジュール用基板10及びパワーモジュール1においては、純度99.99%以上のアルミニウム板をセラミックス基板11にろう付けして構成された回路層12の表面に、ガラスを含有するAgペーストの焼成体からなるAg焼成層30が形成されているので、このAg焼成層30上にはんだ層2を形成して半導体チップ3を接合することができる。つまり、従来のようにNiめっき膜を形成する必要がなく、比較的簡単に、かつ、確実に回路層12上に半導体チップ3を接合することが可能となるのである。よって、Niめっき膜を形成した場合に生じる不具合が無くなり、パワーモジュール1を良好に製出することができる。
ここで、Ag焼成層30が、図3に示すように、ガラス層31と、このガラス層31の上に形成されたAg層32と、を備えているので、回路層12の表面に自然発生したアルミニウム酸化皮膜12Aをガラス層31中に溶融させて除去することができ、回路層12表面に直接ガラス層31(Ag焼成層30)を形成することができる。
そして、このガラス層31内部には、粒径が数ナノメートル程度とされた微細な導電性粒子33が分散されているので、ガラス層31においても導電性を確保することができる。具体的には、本実施形態では、ガラス層31を含めたAg焼成層30の厚さ方向の電気抵抗値Pが0.5Ω以下に設定されているのである。
したがって、Ag焼成層30及びはんだ層2を介して半導体チップ3と回路層12との間で電気を確実に導通することが可能となり、信頼性の高いパワーモジュール1を構成することができる。
また、Ag焼成層30を構成するAgペーストが、Ag粉末と、酸化鉛と酸化亜鉛と酸化ホウ素とからなるガラス粉末と、を含有しており、ガラス粉末の軟化温度が600℃以下に設定されているので、比較的低温でAgペーストを焼成することが可能となる。具体的には、焼成温度を350℃以上645℃以下に設定することができる。よって、Agペーストの焼成に伴う回路層12の劣化や回路層12とセラミックス基板11との接合強度の低下等のトラブルを未然に防止することができ、高品質のパワーモジュール用基板10及びパワーモジュール1を製出することが可能となる。
さらに、Agペーストの粘度が10Pa・s以上500Pa・s以下、より好ましくは50Pa・s以上300Pa・s以下に調整されているので、回路層12表面にAgペーストを塗布するAgペースト塗布工程S13において、スクリーン印刷法等を適用することが可能なり、Ag焼成層30を半導体チップ3が配設される部分のみに選択的に形成することができる。よって、Agペーストの使用量を削減することが可能となり、このパワーモジュール用基板10及びパワーモジュール1の製造コストを大幅に削減することができる。
また、本実施形態においては、絶縁層として絶縁性及び強度に優れたAlN(窒化アルミ)からなるセラミックス基板11を用いているので、パワーモジュール用基板10の信頼性の向上を図ることができる。また、このセラミックス基板11上にアルミニウム板をろう付けすることによって、容易に回路層12を形成することができる。
さらに、本実施形態では、セラミックス基板11の他方側(図1において下側)に、金属層13および緩衝層15を介して冷却器40が配設されているので、半導体チップ3からの発熱によってパワーモジュール1が高温となることを防止することができる。
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
本発明例1として、前述の実施形態に記載されたパワーモジュール用基板を準備した。すなわち、純度99.99%以上のアルミニウム板からなる回路層上にAg焼成層を形成したものを本発明例1とした。
従来例として、前述の実施形態に記載されたパワーモジュール用基板において、Ag焼成層の代わりに、回路層表面に厚さ5μmのNiめっき膜を形成したものを準備した。
これら本発明例1と従来例について、はんだ濡れ性を評価した。はんだ濡れ性の評価は、JIS Z 3197に規定された広がり試験によって評価した。広がり率Sは、試料(Ag焼成層又はNiめっき膜)上に直径dのボール状のはんだ材を載置し、これを所定温度に加熱して形成されたはんだ層の高さhを測定し、(d−h)/d×100で算出される指標である。この広がり率Sが大きいほど、はんだ材との濡れ性が良く、はんだ層を介して半導体チップを強固に接合できることになる。
ここで、本実施例では、はんだ材としてPb−10wt%Sn材を用いて、350℃で0.1時間保持後のはんだ層の高さを測定した。結果を表1に示す。
Figure 0005212298
Niめっき膜を形成した従来例においては、広がり率Sが67〜70%とされている。これに対して、Ag焼結層を形成した本発明例1においては、広がり率Sが70〜72%とされており、従来例と同等以上のはんだ濡れ性を有していることが確認される。
したがって、回路層上にAg焼成層を設けた本発明例1においても、Niめっき膜を形成した従来例と同様に、はんだ層を介して半導体チップを接合してパワーモジュールを構成することが可能であることが確認された。
次に、前述の実施形態に記載されたパワーモジュール用基板において、Ag焼成層の厚さ方向の電気抵抗値Pを測定した結果を説明する。
Ag焼成層のAg層厚さta、ガラス層厚さtgを変更するとともに、Ag粉末の重量Aとガラス粉末の重量Gとの重量比A/Gを変更し、本発明例2−6を製出した。なお、このときのガラス粉末としては、PbO−ZnO−SiO系ガラスを用いた。また、Ag焼成層を上面視して一辺の長さが15mmの正方形状に成形した。
このようにして得られた本発明例2−6の試料について、図4及び図5に記載された方法により、テスタ(KEITHLEY社製:2010MULTIMETER)を用いて、Ag焼成層の厚さ方向の電気抵抗値Pを測定した。測定結果を表2に示す。
Figure 0005212298
本発明例2−6のいずれにおいても、Ag焼成層の厚さ方向の電気抵抗値Pが0.5Ω以下とされていることが確認された。また、ガラス粉末の比率を小さく、かつ、ガラス層の厚さtgを薄く形成することにより、Ag焼成層の厚さ方向の電気抵抗値Pが小さくなることが確認された。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、回路層及び金属層を構成する金属板を純度99.99%の純アルミニウムの圧延板としたものとして説明したが、これに限定されることはなく、純度99%のアルミニウム(2Nアルミニウム)であってもよく、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていればよい。
また、Agペーストの原料、配合量については、実施形態に記載されたものに限定されることはなく、他のガラス粉末、樹脂、溶剤、分散剤を用いてもよい。
例えば、ガラス粉末は、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン及び酸化ビスマスのいずれか1種又は2種以上を主成分として含有していれば、その他にアルカリ金属や遷移金属等を有していてもよく、軟化温度がアルミ二ウムの融点以下、より好ましくは600℃以下とされていればよい。
また、樹脂としては、アクリル樹脂、アルキッド樹脂等を用いてもよい。さらに、溶剤としては、α―テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート等を用いても良い。
また、形成されるAg焼成層におけるガラス層とAg層の厚さ比は、図3に例示したものに限定されることはない。
さらに、絶縁層としてAlNからなるセラミックス基板を用いたものとして説明したが、これに限定されることはなく、SiやAl等からなるセラミックス基板を用いても良いし、絶縁樹脂によって絶縁層を構成してもよい。
また、回路層となるアルミニウム板をセラミックス基板にろう付けするとともに、冷却器をろう付けした後に、回路層上にAg焼成層を形成するものとして説明したが、これに限定されることはなく、アルミニウム板をセラミックス基板にろう付けする前や、冷却器をろう付けする前に、Ag焼成層を形成してもよい。
また、冷却器の天板部と金属層との間に、アルミニウム又はアルミニウム合金若しくはアルミニウムを含む複合材(例えばAlSiC等)からなる緩衝層を設けたものとして説明したが、この緩衝層がなくてもよい。
さらに、冷却器の天板部をアルミニウムで構成したものとして説明したが、アルミニウム合金、又はアルミニウムを含む複合材等で構成されていてもよい。さらに、冷却器として、放熱フィン及び冷却媒体の流路を有するもので説明したが、冷却器の構造に特に限定はない。
1 パワーモジュール
2 はんだ層
3 半導体チップ(半導体素子)
10 パワーモジュール用基板
11 セラミックス基板
12 回路層
12A アルミニウム酸化皮膜
30 Ag焼成層
31 ガラス層
32 Ag層
33 導電性粒子
40 冷却器

Claims (9)

  1. 絶縁層の一方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層が配設され、この回路層上にはんだ層を介して半導体素子が配設されるパワーモジュール用基板であって、
    前記回路層の前記はんだ層側の面には、ガラスを含有するAgペーストの焼成体からなるAg焼成層が形成されていることを特徴とするパワーモジュール用基板。
  2. 前記Ag焼成層は、前記回路層上に形成されたガラス層と、このガラス層の上に形成されたAg層と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール用基板。
  3. 前記Ag焼成層は、その厚さ方向における電気抵抗値Pが0.5Ω以下に設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパワーモジュール用基板。
  4. 前記ガラスが、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン及び酸化ビスマスのいずれか1種又は2種以上を含有していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板。
  5. 前記絶縁層が、AlN、Si又はAlから選択される絶縁基板であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板と、このパワーモジュール用基板の前記絶縁層の他方の面側に配設された冷却器と、を備えていることを特徴とする冷却器付パワーモジュール用基板。
  7. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板と、このパワーモジュール用基板の前記回路層上にはんだ層を介して接合された半導体素子と、を備えていることを特徴とするパワーモジュール。
  8. 絶縁層の一方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層が配設され、この回路層上にはんだ層を介して半導体素子が配設されるパワーモジュール用基板の製造方法であって、
    前記回路層の前記はんだ層側の面にガラスを含有するAgペーストを塗布する塗布工程と、Agペーストを塗布した状態で加熱処理して前記Agペーストを焼成する焼成工程と、を備え、
    前記回路層の前記はんだ層側の面に、ガラスを含有するAgペーストの焼成体からなるAg焼成層を形成することを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
  9. 前記焼成工程における焼成温度が、350℃以上645℃以下であることを特徴とする請求項8に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
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