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JP5207530B2 - プラスチック用塗料 - Google Patents

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JP5207530B2 JP2008180542A JP2008180542A JP5207530B2 JP 5207530 B2 JP5207530 B2 JP 5207530B2 JP 2008180542 A JP2008180542 A JP 2008180542A JP 2008180542 A JP2008180542 A JP 2008180542A JP 5207530 B2 JP5207530 B2 JP 5207530B2
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Description

本発明は、プラスチック用塗料(以下単に「塗料」という場合がある)に関し、さらに詳しくは電子線または紫外線硬化型(以下単に「光硬化型」という場合がある)シロキサン変性ウレタン系樹脂と、ポリウレタンゲル粒子と、水系架橋剤(特に光硬化型水系架橋剤および/または水分散性反応性希釈剤)とを含有してなる自動車用部材に用いる塗料に関する。特に前記樹脂が光照射により硬化反応することで、プラスチック基材との密着性、プラスチック成型品の耐熱性、耐光性、耐スクラッチ性、耐温水性、耐薬品性などが向上するのが特徴である。
一般的な自動車内装材としては、インストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックス、グローブボックスなどが挙げられ、従来、柔軟性、難燃性、意匠性、真空成型性およびコストバランスのよい材料である塩化ビニル樹脂が、上記内装材の素材として数多く使用されていた。
しかし、近年、環境保護の観点からダイオキシン対策(脱ハロゲン)やリサイクルを推進する目的として、塩化ビニル樹脂に代えてTPOと称される熱可塑性ポリオレフィンやスラッシュ成型用熱可塑性ポリウレタンが多く使用されている。
塩化ビニル樹脂系成型品は、焼却による有毒ガス発生、可塑剤のブリードアウトによる環境や人体への負荷や物性の変化による耐久性の低下などがあり、自動車素材市場は、脱塩化ビニル系樹脂に転換してきている。それに加え、環境規制の整備や国内設備投資を背景に、熱可塑性ポリオレフィンやスラッシュ成型用熱可塑性ポリウレタン市場の拡大が続くとともに、自動車用素材としての実績が信頼性に繋がり、さらなる塩化ビニル樹脂の代替需要獲得が旺盛となっている。
熱可塑性ポリオレフィン(TPO)は、自動車用素材に適合した諸物性(耐候性、耐薬品性など)を有し、柔軟性で密度が低いため軽量化が可能であり(低燃費化)、リサイクル性などに優れる素材のため、塩化ビニル樹脂の代替素材として有望とされている。しかしながら、熱可塑性ポリオレフィンからなる自動車用内装材は、運転者が安全に走行するために防眩性を必要とし、フルマット(艶消し)調を付与することを目的に、意匠性のある艶消し用表面塗料を塗工する必要性がある。さらに上記内装材は、耐摩耗性や耐油性(人間の皮脂や化粧品など)が劣り、その対策を施さなければならない。
そこで、前記二項目の対策と意匠性を高めるために、熱可塑性ポリオレフィン基材を溶剤型ウレタン系樹脂塗料で処理した後、該処理基材を真空成型によって自動車用内装材が作製されている。さらに詳しく述べると、熱可塑性ポリオレフィン基材表面に、塩素化ポリプロピレン層を形成した後、溶剤型艶消しタイプのウレタン系樹脂塗料で処理したものを成型基材とし、これを自動車用内装材に成型加工している。
一方、スラッシュ成型用熱可塑性ポリウレタンは、インストルメントパネルなどの表皮材料として設計されており、該ポリウレタンは、環境に優しく、意匠性、機械特性、耐摩耗性、熱安定性、寸法安定性、低温特性、屈曲性、耐薬品性などに優れるとともに、加工適性(流動性や熱溶融性)にも優れている。その成型シートは、自動車内装材としての意匠性や諸物性が良好なため、後工程とされる表面処理加工が不要であるが、加工の際に金型が必要であり、様々な意匠性への対応や低コスト化が困難である。
また、成型品に艶消し塗料を塗布したり、意匠性を施した金型に艶消し塗料をスプレー処理した後に、樹脂(ウレタン系樹脂、ポリプロピレンなど)をモールド成型する手法もある。しかしながら、ウレタン系樹脂をモールド成型用の素材として選定した場合には、艶消し塗料との密着性には問題はないが、コストメリットのあるポリプロピレンを選定した場合、ポリプロピレンとの密着性を高めるために特殊なプライマーを介したり、特殊な製造方法が必要とされる。また、前記の通り、金型を使用することで様々な意匠性への対応や低コスト化が問題となる。
表面処理を施していないTPOシートに対して、塩素化ポリオレフィンとアクリルエマルションを配合した自動車用の内装材用塗料を塗布するという提案がある。この提案は、前処理を施さない1コートシステムの考えであり、前処理工程の省略と工程の簡略化でCO2削減などの効果は認められるが、内装材用塗料は、塩素化ポリオレフィンを使用するため、焼却により有毒ガスを発生するため、環境保護の観点から好ましくない(特許文献1)。
また、耐熱性に優れた塩化ビニル系樹脂を表皮とする素材と発泡ポリウレタンとからなる自動車用内装材が提案されている。該内装材は、焼却により有毒ガスを発生するため、環境保護の観点から好ましくない(特許文献2)。
特開2001−2977公報 特開平6−297624号公報
したがって本発明の目的は、上記課題を解決し、プラスチック成型品にソフトタッチで耐摩耗性や真空成型性が非常に向上した塗膜を与え、さらに塗装の際に揮発性有機溶剤(VOC)の排出削減を考慮した環境対応型の自動車内装材の表面処理に適合したプラスチック用塗料を提供することである。
上記目的は下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、電子線または紫外線硬化型(光硬化型)シロキサン変性ウレタン系樹脂(1)と、ポリウレタンゲル粒子(2)と、水系架橋剤(3)とを水性媒体中に含有してなることを特徴とするプラスチック用塗料を提供する。
上記本発明の塗料においては、前記光硬化型シロキサン変性ウレタン系樹脂(1)が、分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と水酸基以外の親水性基とを有する化合物(a)0.01〜30質量%と、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の不飽和基を有する化合物(b)0.01〜30質量%と、ポリオールおよび/またはポリアミン(c)(a〜dの合計が100質量%になる量)と、少なくとも1個の活性水素含有基を有するポリシロキサン(d)0.01〜50質量%と、ポリイソシアネート(e)とを、化合物a〜dの合計の全活性水素含有基と化合物eのイソシアネート基とを当量比(OH/NCO)0.9〜1.1で反応させて得られ、シロキサンセグメントの含有量が0.01〜50質量%で、数平均分子量が2,000〜500,000の樹脂であることが好ましい。
また、上記本発明の塗料においては、前記ポリウレタンゲル粒子(2)が、少なくともいずれか一方が3官能以上である、ポリイソシアネートと、分子内に活性水素含有基を有する化合物とを共重合してなる三次元架橋したポリウレタンゲル粒子(粒子A)と、該粒子Aの表面を被覆している、ポリウレアコロイド非水溶媒溶液から析出したポリウレアコロイド粒子(粒子B)とからなるポリウレタンゲル粒子(粒子C)であることが好ましい。
また、上記本発明の塗料においては、前記粒子Bが、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が0.01μm〜1.0μmであり、油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとポリアミン化合物との反応で得られるポリウレアコロイド粒子であって、非溶媒和部分がウレア結合の水素結合からなっていること;前記粒子Cの粒子径が、0.5〜100μmの範囲であること;前記水系架橋剤(3)が、光硬化型水系架橋剤および/または光硬化型水分散性反応性希釈剤であることが好ましい。
また、上記本発明の塗料においては、さらにポリイソシアネート系架橋剤(ブロック型を含む)、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、シラノール系架橋剤、無機系架橋剤またはビニルエーテル系架橋剤を含むことができ;前記光硬化型シロキサン変性ウレタン系樹脂(1)と、ポリウレタンゲル粒子(2)と、水系架橋剤(3)との合計量を100質量%としたとき、上記樹脂(1)が10〜80質量%、上記ゲル粒子(2)が10〜80質量%および水系架橋剤(3)が0.1〜50質量%であることが好ましい。
上記本発明の塗料からなる塗膜は、意匠性、ソフトタッチおよび防眩性が高く、かつ機械的特性、耐屈曲性、滑り性、耐熱性、低温特性、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性、耐光性、耐加水分解性、耐スクラッチ性、撥水性、耐水性、防汚染性に優れており、特に上記塗膜を有するプラスチック基材は、ソフトタッチで耐摩耗性や真空成型性が非常に向上している。
また、本発明の塗料は、前記事項に加え、塗装の際に使用する有機溶剤などの揮発性有機溶剤(VOC)の排出削減を考慮した環境対応型の自動車内装材の塗装に適合した艶消し塗料であり、前記従来技術の課題が解決されている。
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明に使用する光硬化型シロキサン変性ウレタン系樹脂(以下単に「本発明の樹脂」という場合がある)は、分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と水酸基以外の親水性基とを有する化合物(以下単に「化合物a」という場合がある)(ここで水酸基以外の親水性基とは、例えば、完全にまたは部分的に中和されたカルボキシル基またはスルホン酸基、完全にまたは部分的に中和された第3級アミノ基である)と、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の不飽和基を有する化合物(b)(以下単に「化合物b」という場合がある)と、ポリオールおよび/またはポリアミン(以下単に「化合物c」という場合がある)と、少なくとも1個の活性水素含有基を有するポリシロキサン(以下単に「化合物d」という場合がある)と、ポリイソシアネート(以下単に「化合物e」という場合がある)とを反応させて得られる。
上記において化合物a〜eの使用量は、化合物aを0.01〜30質量%、好ましくは1〜15質量%、化合物bを0.01〜30質量%、好ましくは1〜15質量%、化合物cをa〜dの合計が100質量%になる量、例えば、10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%とし、化合物dを0.01〜50質量%、好ましくは1〜20質量%、かつ化合物eは、化合物a〜dの合計の全活性水素含有基と化合物eのイソシアネート基とを当量比(OH/NCO)が0.9〜1.1、好ましくは1.0となる使用量である。なお、上記化合物a〜dは、上記範囲内でかつ化合物a〜dの合計量が100質量%になる比率にして使用する。
本発明の樹脂においては、樹脂全体を100質量%としたときに上記化合物aからなるセグメントの含有量が0.01〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは1〜15質量%である。該含有量が0.01質量%未満では、樹脂の乳化安定性や基材との密着性などの点で不十分であり、一方、上記含有量が30質量%を超えると樹脂の耐水性の低下などを引き起こす。
また、樹脂全体を100質量%としたときに上記化合物bからなるセグメントの含有量が0.01〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは1〜15質量%である。該含有量が0.01質量%未満では、光照射して分子内・分子間架橋や、架橋剤と硬化反応した場合に目的とする塗膜性能にならず、一方、上記含有量が30質量%を超えると、塗膜の架橋密度が高まり、該塗膜を有するプラスチック基材を真空成型した場合において塗膜にクラックが発生する。
また、樹脂全体を100質量%としたときに上記化合物dからなるポリシロキサンセグメントの含有量が0.01〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは1〜20質量%である。該含有量が0.01質量%未満では、樹脂の滑性や耐ブロッキング性などの点で不十分であり、一方、上記含有量が50質量%を超えると樹脂の基材(TPOなど)に対する密着不良やシロキサン成分の移行による汚染性などの原因になる場合がある。
なお、上記a〜dのセグメントの含有量は、上記範囲内でかつ化合物a〜dの合計量が100質量%になる比率にして使用する。また、上記樹脂の数平均分子量(GPC測定、標準ポリスチレン換算)は、2,000〜500,000であることが好ましい。より好ましくは、10,000〜200,000である。該分子量が2,000未満では、樹脂の耐水性や耐候性に劣る点などが不十分であり、一方、上記分子量が500,000を越えると、本発明の樹脂を塗料化したときに塗料としての塗装適性などが劣るとともに硬化不良を引き起こす。
上記化合物aとしては、スルホン酸系、カルボン酸系、燐酸系、アミン系などの化合物を用いることができる。該化合物aは、本発明の樹脂のプラスチック基材への密着性付与効果を有するとともに、本発明の樹脂に水中への分散性および自己乳化性を与える。
スルホン酸系の化合物aとしては、下記化合物およびその誘導体などが挙げられる。
また、カルボン酸系の化合物aとしては、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸およびそれらのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)やこれらの化合物のγ−カプロラクトン低モル付加物(数平均分子量500未満)、酸無水物とグリセリンから誘導されるハーフエステル類、水酸基と不飽和基を含有するモノマーとカルボキシル基と不飽和基を含有するモノマーとをフリーラジカル反応により誘導される化合物などが挙げられる。特に好ましい化合物aは、ジメチロールプロパン酸やジメチロールブタン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(本発明の樹脂の酸価が5〜40mgKOH/gになる範囲で使用することが好ましい)である。
以上は本発明において使用される好ましい化合物aの例示であって、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。したがって、上述の例示化合物のみならず、その他現在市販されていて、市場から容易に入手できる化合物aは、いずれも本発明に使用することができる。
上記化合物aのセグメントを含む本発明の樹脂は、使用に際し当該樹脂の水中分散または乳化のために、化合物aのセグメントが、アニオン性(スルホン酸系、カルボン酸など)である場合には、例えば、有機アミン類(アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノールなど)、アルカリ金属(リチウム、カリウム、ナトリウムなど)、無機アルカリ類(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)などによって中和され、また、化合物aのセグメントがカチオン性(3級アミン系)である場合には、例えば、有機酸、例えば、蟻酸、乳酸、酢酸などによって中和される。
前記化合物bとしては、特に制限されず、公知のものから1種以上のものを使用することができる。化合物bの活性水素含有基が水酸基である場合は、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、グリセリンモノメタクリレートなどが挙げられる。特に好ましい化合物は、1個の不飽和基と2個の水酸基を有する化合物である。
また、化合物bの活性水素含有基がアミノ基である場合は、例えば、アリルアミン、ジアリルアミン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。
前記化合物cとしてのポリオールとしては、好ましくはポリウレタン製造に従来から使用されている短鎖ジオール、多価アルコールおよび高分子ポリオールなどの従来公知のものが、また、ポリアミンとしてはポリウレタン製造に従来から使用されている短鎖ジアミンなどが使用できる。これらは特に限定されない。以下にそれぞれの化合物について説明する。
前記短鎖ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコールおよびネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンおよび2−メチル−1,1−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式系グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、キシリレングリコールなどの芳香族グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、ビスフェノールA、チオビスフェノールおよびスルホンビスフェノールなどのビスフェノール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、およびC1〜C18のアルキルジエタノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミン類などの化合物が挙げられる。
また、多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,1,1−トリメチロールエタンおよび1,1,1−トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
前記高分子ポリオールとしては、例えば、以下のものが例示される。
(1)ポリエーテルポリオール、例えば、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)および/または複素環式エーテル(テトラヒドロフランなど)を重合または共重合して得られるものが例示され、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール(ブロックまたはランダム)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリヘキサメチレングリコールなど、
(2)ポリエステルポリオール、例えば、脂肪族系ジカルボン酸類(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸およびアゼライン酸など)および/または芳香族系ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸およびテレフタル酸など)と低分子量グリコール類(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)とを縮重合したものが例示され、具体的にはポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペートジオールおよびポリブチレンイソフタレートジオールなど、
(3)ポリラクトンポリオール、例えば、ポリカプロラクトンジオールおよびポリ−3−メチルバレロラクトンジオールなど、
(4)ポリカーボネートジオール、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオールなど、
(5)ポリオレフィンポリオール、例えば、ポリブタジエングリコールおよびポリイソプレングリコール、または、その水素化物など、
(6)ポリメタクリレートジオール、例えば、α,ω−ポリメチルメタクリレートジオールおよびα,ω−ポリブチルメタクリレートジオールなどが挙げられる。
これらのポリオールの構造および分子量は特に限定されないが、通常数平均分子量は500〜4,000程度が好ましく、これらのポリオールは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
前記ポリアミンとして好ましいポリアミンは、例えば、短鎖ジアミン、脂肪族系、芳香族系ジアミン、長鎖ジアミン類およびヒドラジン類などが挙げられる。短鎖ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよびオクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン化合物、フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ジアミン化合物、シクロペンタンジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサンおよびイソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン化合物などが挙げられる。
長鎖ジアミンとしては、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)を重合または共重合して得られるものが例示され、具体的にはポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミンなどが挙げられる。また、ヒドラジン、カルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドおよびフタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジン類が挙げられる。これらは単独で或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。ポリオールおよびポリアミンとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドなどのポリエーテル系のジオール化合物およびジアミン化合物が好ましい。
前記化合物dは、本発明の樹脂中にポリシロキサンセグメントとして含有され、該ポリシロキサンセグメントは、樹脂の主鎖中に含有或いは分岐した状態で含有されている。すなわち、原料としての化合物dが両末端反応型であれば、化合物dのセグメントは、樹脂の主鎖である幹部分に、化合物dが、片末端或いは分岐反応型であれば樹脂の主鎖から分岐した状態で含有されることとなる。
本発明で使用する前記化合物dとしては、例えば、以下のような化合物が挙げられる。このなかには活性水素含有基を利用して変性されたエポキシ変性ポリシロキサンも含んでいるが、イソシアネート基と反応してポリウレタン系樹脂中に含有されることとなるので含めている。
(1)アミノ変性ポリシロキサン
(2)エポキシ変性ポリシロキサン
上記のエポキシ化合物はポリオール、ポリアミド、ポリカルボン酸などと反応させ末端活性水素含有基を有するようにして使用することができる。
(3)アルコール変性ポリシロキサン
(4)メルカプト変性ポリシロキサン
以上列記した活性水素含有基を有するポリシロキサンは本発明において使用する好ましい化合物であるが、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。列記したポリシロキサンはジメチルポリシロキサン化合物を挙げているが、その他のフェニル系ポリシロキサン化合物や電子線または紫外線(光)で硬化するビニルポリシロキサンも使用できる。したがって上述の例示の化合物のみならず、その他現在市販されており、市場から容易に入手し得る化合物はいずれも本発明において使用することができる。これらの他にも本発明において特に好ましい化合物は2個の水酸基またはアミノ基を有するポリシロキサンである。
これらの他にもポリシロキサンをラクトンで変性したポリラクトン(ポリエステル)−ポリシロキサンや、アルキレンオキサイドで変性したポリアルキレンオキサイド−ポリシロキサンなども好ましく使用される。ここで使用する好ましいラクトンは、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、7−ヘプタノリド、8−オクタノリド、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトンおよびδ−カプロラクトンなどである。また、上記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、α−ブチレンオキサイド、β−ブチレンオキサイド、ヘキセンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、α−メチルスチレンオキサイドなどが挙げられる。
前記化合物eとしては、従来公知のポリウレタンの製造に使用されているものがいずれも使用でき特に限定されない。化合物eとして好ましいものは、例えば、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネートおよび4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加MDIおよび水素添加XDIなどの脂環式ジイソシアネートなど、或いはこれらのジイソシアネート化合物と低分子量のポリオールやポリアミンを末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなども当然使用することができる。
前記化合物a〜eを用いる本発明の樹脂の製造方法については特に限定されず、従来公知のポリウレタンの製造方法を用いることができる。例えば、分子内に活性水素含有基を含まない有機溶剤の存在下、または不存在下に、前記化合物aと化合物bと化合物cと化合物dと化合物eとを、イソシアネート基と活性水素含有基との当量比(OH/NCO)が、通常、1.0またはその前後(0.9〜1.1)となる配合で、ワンショット法、または多段法により、通常、20〜150℃、好ましくは60〜110℃で、生成物が理論NCO%となるまで反応し、生成した樹脂を水と中和剤で乳化した後、低分子ジアミンで鎖伸長してイソシアネート基が殆どなくなるまで反応させ、必要に応じて脱溶剤工程を経て本発明の樹脂(またはその水中乳化体)を得ることができる。
本発明では、上記ウレタン合成において、必要に応じて触媒を使用できる。例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸鉛、テトラn−ブチルチタネートなどの金属と有機および無機酸の塩、および有機金属誘導体、トリエチルアミンなどの有機アミン、ジアザビシクロウンデセン系触媒などが挙げられる。
なお、本発明の樹脂は無溶剤で合成しても、必要であれば有機溶剤を用いて合成してもよい。有機溶剤として好ましい溶剤としては、イソシアネート基に不活性であるか、または反応成分よりも低活性なものが挙げられる。例えば、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、芳香族系炭化水素溶剤(トルエン、キシレン、スワゾール(コスモ石油株式会社製の芳香族系炭化水素溶剤)、ソルベッソ(エクソン化学株式会社製の芳香族系炭化水素溶剤)など)、脂肪族系炭化水素溶剤(n−ヘキサンなど)、アルコール系溶剤(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなど)、エーテル系溶剤(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなど)、グリコールエーテルエステル系溶剤(エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなど)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、ラクタム系溶剤(N−メチル−2−ピロリドンなど)が挙げられる。これらの内、好ましくは、溶媒回収、ウレタン合成時の溶解性、反応性、沸点、水への乳化分散性を考慮すれば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン、およびテトラヒドロフランなどがよい。
本発明では、樹脂合成工程においては、ポリマー末端に、イソシアネート基が残った場合、イソシアネート末端の停止反応を加えてもよい。例えば、モノアルコールやモノアミンのように単官能性の化合物ばかりでなく、イソシアネートに対して異なる反応性をもつ2種の官能基を有するような化合物であっても使用することができ、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのモノアルコール;モノエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミンなどのモノアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミンなどが挙げられ、このなかでもアルカノールアミン類が反応制御しやすいという点で好ましい。
本発明の樹脂の製造に当たり、必要に応じて添加剤を加えてもよい。例えば、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、光安定剤(ヒンダードアミン系など)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系など)、ガス変色安定剤(ヒドラジン系など)、金属不活性剤などやこれら2種類以上が挙げられる。
次に、本発明に使用するポリウレタンゲル粒子((2)、または粒子C)について説明する。該粒子Cおいては、粒子Aを被覆している前記粒子Bが、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が0.01μm〜1.0μmであること、前記粒子Bが、油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとポリアミンとの反応で得られる粒子であって、非溶媒和部分がウレア結合の水素結合からなっていることが好ましく、また、前記粒子Cは、その粒子径が0.5〜100μmの範囲であることが好ましい。
以上の粒子Cは、その原材料であるポリイソシアネート(以下「化合物e’」という場合がある)と活性水素含有基を有する化合物(以下「化合物c’」という場合がある)とを、ポリウレアコロイド溶液(粒子Bの分散液)を分散剤として、不活性溶媒中に乳化分散させて重合することで得られる。この際、上記ポリウレアコロイド溶液が、原料である化合物e’と化合物c’とを不活性溶媒中に容易に粒子状に乳化することが重要である。
また、この状態で化合物e’と化合物c’とを重合反応して、粒子Aを生成し、生成した粒子Aの周囲には、上記ポリウレアコロイド溶液から析出した粒子Bが均一に付着しており、粒子Cを分散溶媒から分離した状態において、粒子Aが上記粒子Bによって均一に被覆されている。
さらに、従来の粒子AまたはCの合成過程においては、通常著しい粘度上昇が発生するが、ポリウレアコロイド溶液の存在下に上記粒子Aを合成すると、合成過程において重合液の著しい粘度上昇は発生せず、生成した粒子Cが凝集することなく、優れた分散安定性を維持するという特徴がある。この作用は従来公知の有機系乳化剤や分散安定剤とは根本的に異なる作用である。
本発明で使用する粒子Cは上記方法によって得られるが、好ましい方法は、ポリウレアコロイド溶液を、撹拌機や乳化機付きのジャケット式合成釜中の不活性溶媒中に仕込み、この中に少なくともいずれか一方が3官能以上である化合物e’と化合物c’とを、不活性溶媒溶液に添加および乳化し、これらの合成原料を反応させて粒子Cを合成する方法や、少なくとも一方が3官能以上である化合物e’と化合物c’とを夫々別個に、ポリウレアコロイド溶液の存在下に不活性溶媒中に乳化させ、これらを反応させる方法などが挙げられる。
上記合成方法における合成温度は特に限定されないが、好ましい温度は40℃〜140℃である。また、合成時に使用するポリウレアコロイド溶液は、その固形分としての使用量は、少なくともいずれか一方が3官能以上である化合物e’と化合物c’とを夫々100質量部当たり0.01質量部以上を使用することができ、好ましくは0.1〜20質量部である。使用量が0.01質量部未満では生成する粒子Cの安定性が不十分で、合成過程で粒子Aの大きい凝集塊が発生し、目的とする粒子Cの分散体が得難い。一方、使用量が20質量部を越えると、ポリウレタンの原料(化合物e’と化合物c’)の乳化性には問題はなく、粒子Cの分散体は製造することができるが、乳化剤としての作用として過剰な量であり特に利点はない。化合物e’と化合物c’の不活性溶媒中における濃度は、低い程小さい粒径の粒子Cが得られ易いが、生産性から好ましい濃度は20〜70質量部である。
粒子Aの合成に使用される化合物c’としてのポリオールとしては、前記化合物cと同様な短鎖ジオール、多価アルコールおよび高分子ポリオールなどの従来公知のものが挙げられる。これらのポリオールの分子量は特に限定されないが、化合物e’と反応するものは全て使用可能であり、通常数平均分子量は500〜3,000程度が好ましい。また、これらのポリオールは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。ポリオールしては、活性水素含有基が2個以上のポリオールが好ましく、特に好ましいのは3個以上の活性水素含有基を有するポリオールである。
また、化合物c’としてのポリアミンとしては前記化合物cと同様な短鎖ジアミン、高分子ポリアミンなどが使用できる。これらのポリアミンとしては、活性水素含有基が2個以上のポリアミンが好ましく、特に好ましいのは3個以上の活性水素含有基を有するポリアミンである。
前記粒子Aの合成に使用する化合物e’としては、前記化合物eと同様のものがいずれも使用でき特に限定されない。また、化合物e’をイソシアヌレート体、ビューレット体、アダクト体、ポリメリック体とした多官能のイソシアネート基を有するもので従来から使用されている公知のものが使用でき特に限定されない。例えば、2,4−トルイレンジイソシアネートの二量体、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス−(p−イソシアネートフェニル)チオフォスファイト、多官能芳香族イソシアネート、多官能芳香族脂肪族イソシアネート、多官能脂肪族イソシアネート、脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、ブロック化多官能脂肪族イソシアネートなどのブロック型ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。
これらのうち、芳香族系或いは脂肪族系のどちらでも使用可能であり、好ましくは芳香族系ではジフェニルメタンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネート、脂肪族系ではヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどの変性体であり、分子中にイソシアネート基を3個以上含むものが好ましく、前記ポリイソシアネートの多量体や他の化合物との付加体、さらには低分子量のポリオールやポリアミンとを末端イソシアネートになるように反応させたウレタンプレポリマーなども好ましく使用される。それらを下記に構造式を挙げて例示するが、これらに限定されるものではない。
上記の化合物e’と化合物c’の種類、使用量および使用比率は、得られる粒子Cの使用目的によって決定されるが、いずれか一方の成分が3官能以上であることが必要である。例えば、化合物e’が2官能である場合には、化合物c’が3官能以上であり、また、化合物c’が2官能である場合には、3官能以上の化合物e’が必要であり、使用目的に応じて使用する官能基数を使い分ける。勿論、全ての成分が3官能以上であってもよい。また、NCO/OH比は、使用する前記原料化合物と得られる粒子Cに要求される性能によって決定されるが、好ましくは0.5〜1.2の範囲である。
上記粒子Cの合成反応に使用し、生成する粒子Cの分散体の連続相を形成する不活性溶媒は、生成する粒子Aに対して実質的に非溶媒でありかつ活性水素含有基を有しないものである。その例として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、石油スピリット、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、脂環族炭化水素の構造を有するエチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンなどの炭化水素、ジメチルポリシロキサンなどの単独または混合物が挙げられ、これらの不活性溶媒は、該不活性溶媒と合成された粒子Cの分離工程の生産性の点からは150℃以下の沸点を有するものが好ましい。前記粒子Aの合成に際しては公知の触媒を使用すれば低温でもよいが、作業面から40℃以上の反応温度が好ましい。
上記粒子Aの合成時に乳化剤として使用するポリウレアコロイド溶液中の粒子Bは、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が好ましくは0.01μm〜1.0μmの粒子であり、かかるポリウレアコロイド溶液は、例えば、非水溶媒中で、油脂変性ポリオールと化合物e’(またはこれらの化合物からなる末端NCOプレポリマー)とポリアミンとの反応で得られる。
この反応では、反応が進むにつれて、ウレア結合同士の水素結合により、溶媒中に不溶解のウレアドメインが形成され、同時に油脂変性ポリオール鎖が溶媒中で溶媒和されることにより、非溶解性のウレアドメインの凝集などによる粒子Bの巨大化が防止され、安定なポリウレアコロイド溶液が容易に得られる。
さらに、使用する油脂変性ポリオールが、非水溶媒中での結晶性が少なく、反応が進むにつれて生じる高分子化の過程でも、溶媒中で油脂変性ポリオールを主体とするポリマー鎖がある程度自由に動き得るために、非溶解性結晶部分と溶解性非結晶部分の分離が容易に行われ、ウレア結合同士の水素結合による非溶解性結晶部分を粒子Bの中心とするウレアドメインを形成し、その周囲に溶媒和されたポリマー鎖が規則正しく外向きに配向される。これは従来のミセル下に重合することにより得られる公知のコロイド溶液の製造方法における界面活性剤とは根本的に異なる作用である。
上記ポリウレアコロイド溶液の製造方法をさらに具体的に説明する。先ず、最初に油脂変性ポリオールと化合物e’とを非水溶媒中または無溶媒で反応させ、NCO基を有するプレポリマーを合成する。次にこのプレポリマーを撹拌機付きのジャケット式合成釜に仕込み、濃度が5〜70質量%になるように非水系溶媒を添加して濃度を調整する。この溶液を撹拌しながら、予め1〜20質量%の濃度に調整したポリアミンの溶液を徐々に添加し反応を行い、ポリウレア化反応においてポリウレアコロイド溶液を製造する。
ポリアミンの添加方法は、上記の方法の他にポリアミン溶液に前記プレポリマーまたはその溶液を添加する方法でもよい。ポリマー合成のための温度は特に限定されないが、好ましい温度は20〜120℃である。ポリマー合成のための反応濃度、温度、撹拌機の形態、撹拌力、ポリアミン溶液およびプレポリマーまたはその溶液の添加速度などは特に限定されないが、ポリアミンとプレポリマーのイソシアネート基との反応は速いので、急激な反応が行われないように、反応を制御することが好ましい。
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用する油脂変性ポリオールは、官能基が2個以下のポリオールであって、好ましい分子量は700〜3,000であるが、これに限定されない。油脂変性ポリオールの具体例としては、例えば、各種の油脂を低級アルコールやグリコールを用いてアルコリシス化する方法、油脂を部分鹸化する方法、水酸基含有脂肪酸をグリコールによりエステル化する方法などによって、油脂に約2個以下の水酸基を含有させたものが好ましく、上記の水酸基含有脂肪酸としては、例えば、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ヒマシ油脂肪酸、水添ヒマシ油脂肪酸などが挙げられる。
油脂変性ポリオールと化合物e’との反応は、1<NCO/OH≦2の条件で行い、溶媒和されるプレポリマー鎖の分子量をコントロールする。このように合成されるプレポリマーの分子量は、特に限定されないが、好ましい範囲は約500〜15,000である。上記で使用される化合物e’としては、公知のポリイソシアネートの全てが挙げられる。特に好ましいものはヘキサメチレンジイソシアネート、水添加TDI、水添加MDI、イソホロンジイソシアネート、水添XDIなどの脂肪族または脂環族系ジイソシアネートである。
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用する非水系溶媒としては、使用原料である油脂変性ポリオール、ジイソシアネートおよびポリアミンを溶解するもので、活性水素含有基を有さない全ての非水系溶媒を使用することができる。特に好ましいものはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、石油スピリット、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、脂環族炭化水素の構造を有するエチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンなどの炭化水素、ジメチルポリシロキサンなどの単独または混合物が挙げられる。なお、本発明において「溶解」とは常温および高温下での溶解の両方を包含する。
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用するポリアミンとして、前記本発明の樹脂または粒子Aの製造に使用するポリアミンが挙げられ、これらは単独で或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用する油脂変性ポリオール、ポリイソシアネート、ポリアミン、得られるプレポリマーの種類、使用量および使用比率は、使用する溶媒中での粒子Bの大きさおよび安定性などを制御する目的で決定される。すなわち、前記のポリウレアコロイド溶液中の粒子Bは、溶媒中で溶媒和されない結晶部分のウレアドメインと、そのウレアドメインから伸びて溶媒中で溶媒和されたポリマー鎖により形成されている。
ポリウレアコロイド溶液中の粒子Bのウレアドメインの大きさおよび溶媒和されたポリマー鎖の大きさと形態がポリウレアコロイド溶液の性質を左右する。このように、ウレアドメインと溶媒和されたポリマー鎖とで形成された粒子Bは、溶媒中で安定なポリウレアコロイド溶液であり、その溶液中の粒子Bのウレアドメインの粒径は、通常0.01〜1.0μmであり、溶媒和されているポリマー鎖の1個の分子量は約500〜15,000であり、両者の質量比はウレアドメイン(ウレア結合またはポリアミン)/ポリマー鎖が0.5〜30の範囲が好ましい。ウレア結合の割合が上記範囲未満であると、得られる粒子B中の非溶媒和性ウレアドメインが形成されにくく、粒子Bが非水溶媒に溶解し易くなり、良好なポリウレアコロイド溶液が生成されない。一方、ウレア結合の割合が上記範囲を越えると、非溶媒和性ウレアドメインが大きくなり、得られるポリウレアコロイド溶液の安定性が低下し、粒子Bの凝集が生じ易くなる。
本発明で使用する粒子Bの溶媒中における形態は、図1に示すようなものと想像される。この粒子Bの粒径の制御については、溶媒和したポリマー部分とウレアドメインを含んだ粒子B全体の大きさと、溶媒和したポリマー部分とウレアドメインのそれぞれの大きさについて、両者ともに制御が可能である。なお、先に記載の粒子Bの粒径は、ウレアドメイン部分を表現している。
安定に制御されたポリウレアコロイド溶液を製造するためには、図1のように、溶媒和したポリマー部分とウレアドメイン部分が明瞭に相分離しているのが望ましく、そのためには溶媒和されるポリマー鎖と結晶部分のウレアドメインとが混在しないように製造することが必要である。このためには、合成過程で溶媒和したポリマー部分とウレアドメイン部分が分離しやすい合成条件が要求される。
ポリウレアコロイド溶液の合成は、NCO基を有するプレポリマーの溶液およびポリアミンの溶液の両方の濃度が低く、一方の溶液に他方の溶液を添加する添加速度が遅いほど良好な結果が得られ、撹拌はプロペラミキサー撹拌で充分である。また、原料溶液の濃度が高い場合や溶液の添加速度が速い場合には、ホモジナイザーなどの使用による高剪断力の混合を行いながら合成することが好ましい。反応温度は使用する溶媒の種類と、その溶媒に対するウレアドメインの溶解度により決まるが、好ましい温度は合成を制御し易い20〜120℃であるが、この温度範囲に特に限定されない。ウレアドメインの形成は合成過程で形成する方法、或いは高温で合成したものを冷却過程で形成する方法でもよい。
ポリウレアコロイド溶液中の粒子Bの重要な因子は、その表面基の種類および濃度であり、さらには不活性溶媒中における分散性と分散粒径である。すなわち、ポリウレアコロイド溶液の乳化剤としての作用は、W/O、O/O型の乳化剤であり、ポリイソシアネート、活性水素含有基を有する化合物の親水性、疎水性の強さと不活性溶媒との相関性で作用する。これらの条件を加味して検討を加えた結果として、ポリイソシアネート、活性水素含有基を有する化合物に対するポリウレアコロイド溶液の添加量の調整で、粒子Cの粒径をコントロールすることが可能であり、前記の範囲で添加量が多い程粒径は小さくなり、少ない程粒径が大きくなる。
以上の如き原材料から得られた粒子Cの分散溶液から、常圧または減圧下で不活性溶媒を分離することによって、前記の粒子Cが得られる。粒子化に用いる装置としてスプレイドライヤー、濾過装置付き真空乾燥機、撹拌装置付真空乾燥機、棚式乾燥機など公知のものがいずれも使用でき、好ましい乾燥温度は不活性溶媒の蒸気圧、ゲル粒子の軟化温度、粒径などに影響されるが、好ましくは減圧下40〜130℃である。
このようにして製造された粒子Cの粒径は、0.5μm〜100μmで円形度が0.9〜1.0の真球状である。粒径のコントロールは、ポリウレタンの組成が同一の場合、合成釜の乳化型式(プロペラ式、錨型式、ホモジナイザー、螺旋帯式など)および撹拌力の大小に左右されるが、特に不活性溶媒中のポリイソシアネートと活性水素含有基を有する化合物の濃度、ポリウレアコロイド溶液の種類および添加量に影響される。ポリイソシアネートと活性水素含有基を有する化合物を乳化するための機械的撹拌や剪断力は乳化の初期段階で決定され、これが強力な程分散体の粒径が小さくなる。その後の撹拌および剪断力は大きくは影響しない。かえってその力が強すぎると分散体同士の凝集を促進することになり好ましくない。
これらの粒子Cは、図2の電子顕微鏡写真(倍率500倍)に示すように、ほぼ完全に真球状の粒子であり、図3の想像図に示す如く個々の粒子Aの表面にはポリウレアコロイド溶液から析出した粒子Bが付着或は被覆されており、かつ粒子Bが非粘着性と耐熱性に優れているため、該粒子Cを分散溶媒から単に除去するのみで極めて流動性に富んだ粒子Cとなり、粒子化に当たっては従来技術における如き煩雑かつコスト高な粉砕工程や分級操作を何ら要しないなどの種々の利点を有している。
さらに、粒子Cは、[円形度=円相当径から求めた円の周囲長/粒子投影の周囲長]で示される円形度が0.9〜1.0であることが好ましい。ここで円形度は、株式会社セイシン企業の粒子形状画像解析装置PITA−1により上記式で算出されるものであり、円形度を円相当径(実際に撮像された周囲長と同じ投影面積をもつ真円の直径)から算出された周囲長を実際に撮像された粒子の周囲長で割った値として定義し、真円で1になり、形状が複雑になるほど小さい値となる。このため、円形度は0.9以上の極めて球状性が高い粒子が好ましく、粒子を水などに分散した分散体は、電荷的反発により、極めて安定的に分散しており、製品に使用した際には分散安定性、増粘効果を有する。なお、円形度が0.9より小さい粒子Cの場合には球形でなくなり、安定的な分散性を喪失するとともに、該粒子Cを含む塗料組成はざらつき感が生じる。
さらに、粒子Cの圧縮強度は0.01から1.0MPaであり、回復率が60から100%の範囲であることが好ましい。圧縮強度は、粒子Cは、粒子Aが粒子Bによって被覆されたポリウンタンゲル粒子であることから、0.01MPa以上で十分なさらさら感を得ることができ、ソフトタッチ感、滑り性、ヌメリ感を得る観点から粒子Cの圧縮強度は1MPa以下が好ましい。
さらに、粒子Cの回復率は、圧力により変形した場合、力が解放されると同時に、元の形状に復元することが求められ、60から100%の範囲であることが好ましい。ここで圧縮強度および回復率とは、樹脂粒子を株式会社島津製作所の微小圧縮試験機MCT−W500にて圧縮試験を行った場合に、粒子径に対して10%変形したときの荷重と粒子径から式[圧縮強度(MPa)=2.8×荷重(N)/{π×粒子径(mm)×粒子径(mm)}]によって算出される値である。
さらに、粒子Cの回復率は、粒子に50mNの圧力をかけ、変位した距離(L1)と圧力を解放したときに変位した距離(L2)から式[回復率(%)=L2/L1×100]によって計算される値である。なお、樹脂粒子の圧縮強度および回復率は、粒子Aの構成成分である化合物e’および化合物c’の種類と配合量を制御することにより調節できる。
次に、本発明で使用する水系架橋剤(3)について説明する。該水系架橋剤(3)は、本発明の樹脂からなる塗膜を架橋させるものである。該架橋は、以上の本発明の樹脂に、さらに反応性希釈剤および/または光硬化型架橋剤と、光重合開始剤(紫外線硬化システムの場合のみ)とを配合し塗布した後、光を照射して塗膜を硬化させて行うことができる。
ここで使用する反応性希釈剤および/または光硬化型架橋剤としては、ラジカル重合系の単官能アクリレート化合物類、多官能アクリレート化合物類またはカチオン重合系化合物類などがあるが、水溶性のラジカル重合系の単官能アクリレート化合物類が好ましく、例えば、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ビニルカプロラクタム、エチルカルビトールアクリレート、N−ビニルホルムアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)クリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)クリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、フェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、グリセリンモノアリルエーテルなどが挙げられる。また、市販されている疎水性のラジカル重合系の単官能アクリレート化合物類の使用もできる。
また、水溶性の多官能アクリレート化合物類としては、例えば、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)クリレートなどが挙げられる。また、疎水性の多官能アクリレート化合物類としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタトリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、カチオン重合系希釈剤としては、例えば、エポキシ化合物、オキタセン化合物、ビニルエーテル化合物などが挙げられる。
また、多官能ポリイソシアネートと活性水素基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応させた光硬化型架橋剤や、一分子鎖中に親水基と1個以上の不飽和基を含有する光硬化型ウレタン系架橋剤も使用できる。これらの架橋剤は本発明の樹脂100質量部に対して120質量部以下、好ましくは1〜50質量部の範囲内で使用する。
さらに、上記光硬化型架橋剤とともに熱硬化型の架橋剤も併用できる。これらの架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート系架橋剤(ブロック型を含む)、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、無機系架橋剤、カチオン重合系架橋剤(エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル系架橋剤)などが挙げられる。特に本発明では、ウレタン基および/またはカルボキシル基などの親水性基の反応性を利用した架橋方法が好ましいが、特に限定されない。
ウレタン基を利用する架橋方法としては、例えば、ポリイソシアネート架橋剤による架橋が挙げられるが、ポリイソシアネート架橋剤としては、従来から使用されている公知のものが使用でき特に限定されない。例えば、水分散型多官能芳香族イソシアネート、水分散型多官能脂肪族イソシアネート、水分散型脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、水分散型ブロック化多官能脂肪族イソシアネートなどのブロック型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。これらのポリイソシアネート架橋剤は、適量であれば塗膜とプラッスチック基材との密着性が向上し有効であるが、使用量が多すぎると未反応イソシアネートが残留して問題となるため、これらの架橋剤を併用する場合は、前記水系架橋剤(3)の100質量部に対して0.5〜50質量部の範囲内であることが好ましい。
親水性基、例えば、カルボキシル基を利用する架橋方法としては、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキセタン系架橋剤、ビニルエーテル系架橋剤または金属錯体系架橋剤などの従来から使用されている公知のものが使用でき、特に限定されない。例えば、エポキシ系架橋剤としては、「エピコート」(油化シェルエポキシ社製)などの従来公知の市販されているエポキシ樹脂が挙げられる。
カルボジイミド系架橋剤としては、「カルボジライト」の商品名(日清紡社製)の市販品を入手して使用することができる。前記架橋剤は、カルボジイミド基とカルボキシル基が反応してN−アシルウレアを形成し塗膜性能が向上する。オキサゾリン系架橋剤としては、「エポクロス」の商品名(日本触媒社製)、WS−300、WS−500、W−700、WS−R10などの市販品を入手して使用することができる。これらの架橋剤は、架橋剤のオキサゾリン基と樹脂のカルボキシル基が反応してアミドエステルを形成し架橋構造をとる。
また、オキセタン系架橋剤としては、「エタナコール」の商品名(宇部興産社製)の市販品を入手して使用することができる。ビニルエーテル系架橋剤としては、BASF社、アイエスピー・ジャパン社、丸善石油化学社、日本触媒社などの市販品を入手して使用することができる。前記架橋剤は、カチオン重合で反応したり、マイケル付加反応にてアルコキシエステル体を形成する。
以上の架橋剤を併用する場合は、前記水系架橋剤(3)の100質量部に対して0.5〜50質量部の範囲内であることが好ましい。
金属錯体系架橋剤としては、チタン有機化合物系、「オルガチックス」の商品名(松本製薬工業社製)で市販されているジルコニウム有機化合物系が入手可能であり、アルミニウム、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、バナジウム、亜鉛、インジウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、イットリウム、セリウム、ストロンチウム、パラジウム、バリウム、モリブデニウム、ランタン、「ナーセム」の商品名(日本化学産業社製)で市販されているスズのアセチルアセトン錯体が入手して使用できる。
また、シラノール系架橋剤(シリル型架橋剤)においては自己縮合により塗膜性能が向上する。該シランカップリング架橋剤としては、「KBM−、KBE−シリーズ」の商品名(信越化学社製)で市販されている。
以上の架橋剤を併用する場合は、前記水系架橋剤(3)の100質量部に対して0.5〜50質量部の範囲内であることが好ましい。
また、本発明において紫外線硬化システムの場合のみ光重合開始剤を使用する。該光重合開始剤としては、光によりラジカルを発生しラジカルが重合性不飽和化合物と反応するものが望ましい。特に限定するものではないが、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、2,4−ジメチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、エチルアントラキノン、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタノールなどが挙げられる。また、カチオン系重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩型化合物、スルホニウム塩型化合物、ヨードニウム塩型化合物などが挙げられる。これら化合物の配合は併用してもかまわない。ただし、水系にも使用できる構造のものや液状のものが使用し易い。
本発明の塗料は、好ましくは水系媒体中、より好ましくは、イオン交換水中に前記本発明の樹脂、前記ポリウレタンゲル粒子および前記水系架橋剤を添加して溶解または分散することで得られる。該塗料固形分中における前記成分の含有量は、本発明の樹脂が10〜80質量%、より好ましくは20〜70質量%、前記ポリウレタンゲル粒子Cが10〜80質量%、好ましくは15〜75質量%、および水系架橋剤が0.1〜50質量%、好ましくは1〜40質量%である。また、本発明の樹脂基準では、本発明の樹脂100質量部当たり、ポリウレタンゲル粒子10〜60質量部、水系架橋剤0.5〜20質量部である。なお、調製した塗料の固形分は、特に限定されないが、通常、1〜95質量%程度である。
本発明の塗料の必須成分は上記の通りであるが、本発明の目的達成を妨げない範囲で、従来公知の樹脂や各種の添加剤、例えば、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、光安定剤(ヒンダードアミン系など)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系など)、ガス変色安定剤(ヒドラジン系など)、金属不活性剤などやこれら2種類以上の併用が挙げられる。さらに意匠性付与剤(有機微粒子、無機微粒子)、防黴剤、難燃剤やその他の添加剤を適宜使用することができる。有機微粒子、無機微粒子としては、例えば、シリカ、シリコーン樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、ウレタン系樹脂微粒子、シリコーン変性ウレタン系樹脂微粒子、ポリエチレン微粒子、反応性シロキサンなどを含み得る。
本発明の塗料が塗布されるプラスチックとしては、例えば、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン系など)、エチレンプロピレンジエン系樹脂、スチレンアクリロニトリル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルホルマール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル、エンジニアプラスチック、生分解性プラスチックなどの従来公知の各種のプラスチック成型品が挙げられ、特に自動車用の内装材として使用される熱可塑性ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリプロピレンなどのプラスチック成型品が挙げられる。例えば、TPO基材シートの場合、コロナ放電処理されたTPO基材シート上に2液型水系ウレタン系樹脂を塗工し、さらにその上に本発明の塗料をスプレー塗装やグラビア塗装により塗工した後に、真空成型して自動車用のインストルメントパネルを製造することができる。
また、プラスチック成型品に本発明の塗料を直接塗工する方法や、金型上に本発明の塗料をスプレー塗装後に、ポリプロピレンやウレタン系樹脂などを金型に入れるモールド成型法なども有用である。ただし、接着性の劣るポリプロピレン成型品に本発明の塗料を塗布する場合には、予めプラスチック成型品の表面をプライマー処理することが好ましい。
本発明の塗料をTPOシート上に塗布(固形分厚み3〜25μm)した後に、90〜120℃で1〜3分間乾燥した後、160〜220℃下で真空成型することで、本発明の塗料からなる塗膜形成した自動車用のインストルメントパネルが得られる。
以上の本発明の塗料は、塗装の際に使用する有機溶剤などの揮発性有機溶剤(VOC)を含んでおらず、環境対応型の自動車内装材に適合した塗料である。しかしながら、公知の如き、塗装性や乾燥性を向上させる目的として有機溶剤を併用することも可能である。また、以上の如くして得られたプラスチック成型品は、本発明の塗料からなる塗膜によって低摩擦性、ブロッキング防止性、摺動性、弾性、耐摩耗性、低温特性、耐候性が良好であり、かつ機械的特性、伸縮性、回復性、基材との密着性、耐屈曲性、滑り性、耐熱性、低温特性、耐溶剤性、耐薬品性、耐加水分解性、耐スクラッチ性、撥水性、耐水性、防汚染性、断熱性に優れており、特に光硬化型シロキサン変性ウレタン系樹脂とポリウレタンゲル粒子との組み合わせによりソフトタッチで、ブロッキング防止性、耐摩耗性や摺動性、耐水性、耐薬品性、耐スクラッチ性、低温特性、弾性、変形回復が非常に向上しているプラスチック塗装品が提供される。
以下に合成例、実施例、比較例および使用例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、以下の文中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
[合成例1〜5]
本発明に使用するウレタン系樹脂および光硬化型シロキサン変性ウレタン系樹脂の合成例1〜5を示す。
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、親水基含有化合物(化合物a)、不飽和基含有化合物(化合物b)、高分子ジオール(化合物c)、および両末端または片末端に水酸基を有するポリシロキサン(化合物d)、およびアセトンを所定量加え、均一に溶解させ、溶液濃度を調節した。続いてヘキサメチレンジイソシアネート(化合物e)を所定量(NCO/OH=2.0)の当量比加えて80℃で反応を行い、所定のNCO%となるまで反応を行い、50℃に冷却し、固形分に対し20%となるイオン交換水と、中和剤を所定量(親水基−COOHと当量となる量)加え、系内を均一に乳化させ、エチレンジアミン成分(残存NCO%と当量となる量)を投入して鎖伸長した。最後に、系内のアセトンを真空脱気して回収した。上記ポリウレタン系樹脂の原料組成配合を表1に示す。
注)
化合物a
・a−1:ジメチロールブタン酸
・a−2:ジメチロールプロパン酸
化合物b
・GMAE:グリセリンモノアリルエーテル(ダイソー社製)
・GMA:グリセリンモノメタクリレート(日本油脂社製)
化合物c
・PCD:プラクセルCD220、ポリカーボネートジオール(ダイセル化学工業社製、平均分子量2,000)
・PBD:NISSO PB GI1000、水添加型ポリブタジエンジオール(日本曹達製、平均分子量1,500)
化合物d
・d−1:(両末端ポリシロキサンジオール、nは整数、平均分子量1,900)
・d−2:(片末端ポリシロキサンジオール、nは整数、平均分子量3,000)
TEA:トリエチルアミン
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
EDA:エチレンジアミン
本発明に使用するウレタンゲル粒子の合成例6〜9を示す。
(ポリウレアコロイド溶液の作成)
[合成例6]
水酸基価119.5の2官能の油脂変性ポリオール(伊藤製油(株)製 URIC Y−202)100部とn−オクタン100部とを撹拌機付き合成釜に仕込み上記ポリオールを溶解した。撹拌しながら温度を50℃に制御し、NCO/OH=2になるように予め用意したイソホロンジイソシアネート47.3部を1時間かけて徐々に添加し、この条件で3時間反応を続け、さらに80℃、3時間の反応を行い合成した。次にn−オクタンで濃度50%に調整し、NCO基を3.0%含有するプレポリマー溶液(PP−1)を得た。このものの分子量は1,383である。
上記のPP−1の40部と、n−オクタン60部を撹拌機付き合成釜に仕込み溶解した、撹拌しながら温度を70℃に制御しながら、予め用意したイソホロンジアミンのn−オクタンの10%溶液24.3部を5時間かけて徐々に添加し反応を完結して、(ポリアミン(ウレア結合部)/プレポリマー鎖)×100=12.15%のポリウレアコロイド溶液(固形分18.0%)(C−1)を得た。この溶液は青い乳光色の安定な溶液であった。
[合成例7]
水酸基価119.5の2官能の油脂変性ポリオール(伊藤製油(株)製 URIC Y−202)100部とn−オクタン100部とを撹拌機付き合成釜に仕込み上記ポリオールを溶解した。撹拌しながら温度を50℃に制御し、NCO/OH=1.1になるように予め用意したイソホロンジイソシアネート26.0部を1時間かけて徐々に添加し、この条件で3時間反応を続け、さらに80℃、4時間の反応を行い合成した。次にn−オクタンで濃度50%に調整し、NCO基を0.36%含有するプレポリマー溶液(PP−2)を得た。このものの分子量は11,834である。
上記のPP−2の20部とn−オクタン80部とを撹拌機付き合成釜に仕込み上記プレポリマーを溶解した。撹拌しながら温度を70℃に制御しながら、予め用意したイソホロンジアミンのn−オクタンの1%溶液14.4部を8時間かけて徐々に添加し反応を完結して、(ポリアミン/プレポリマー鎖)×100=1.44%のポリウレアコロイド溶液(固形分8.9%)(C−2)を得た。この溶液は青い乳光色の安定な溶液であった。
(ポリウレタンゲル粒子Cの製造)
[合成例8]
平均分子量1,000のポリブチレンアジペート20部を60℃で溶解し、さらに下記の構造式で示されるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートポリイソシアネート(旭化成工業(株)製 デュラネートTPA−100、NCO%=23.1)7.3部を添加し均一に混合した。このものを予め1リットルのステンレス容器に準備した合成例6のポリウレアコロイド溶液(C−1)5.0部とn−オクタン25部の混合液のなかに徐々に加え、ホモジナイザーで15分間乳化した。この乳化液は分散質の平均分散粒子径が5μmで分離もなく安定な乳化液であった。
次にこれを錨型撹拌機付き反応釜に仕込み、400rpmの回転をさせながら温度を80℃まで上げ、6時間の反応を終了しポリウレタンゲル粒子(粒子C)の溶液を得た。この溶液を100Torrで真空乾燥を行ってn−オクタンを分離し粒子C(1)を得た。このものは平均粒子径が5μmで円形度が0.92の真球状の白色粉末状であった。圧縮強度は、0.35MPaで回復率は89%であった。
[合成例9]
500ミリリットルのセパラブルフラスコに、ポリウレアコロイド溶液(C−2)4部とイソオクタン150部とを仕込み混合した。次にこの液をホモミキサーで混合しながら予め50℃に加温した平均分子量785の3官能のポリラクトンポリオール100部を徐々に添加して乳化させた。さらに下記の構造式で示されるヘキサメチレンジイソシアネートアダクトポリイソシアネート(旭化成工業(株)製 デュラネート24A−100、NC0%=23.5)68.3部を徐々に添加した。
次にホモミキサーを回転しながら、温度を80℃に上げ、3時間の反応後に反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.005部を加え、さらに4時間の反応を行い、粒子Cの分散液を得た。この分散液から前記例と同様にして粒子C(2)を得た。このものは平均粒子径が15μmで円形度が0.94の真球状の白色粉末状であった。圧縮強度は、0.60MPaで回復率は92%であった。
[実施例1〜3、比較例1〜2]
前記合成例で得たポリウレタン系樹脂と粒子Cと架橋剤とを下記の割合でイオン交換水中にて配合し、それぞれ固形分20%の実施例1〜3および比較例1〜2の塗料1〜5を得た。塗料4は非電子線または非紫外線硬化型の水系塗料を使用し、他は光硬化型の水系塗料を用いた。
開始剤;ベンゾフェノン
水系架橋剤;
・S−1;水分散型イソシアネートWB40−100(旭化成ケミカルズ社製、NCO%=16.5、不揮発分=100%)に、全NCO%に対し40%当量比を2−ヒドロキシブチルアクリレートと反応させ、残りのNCOをエタノールと反応させた後、不揮発分が30%となる水媒体中に分散した架橋剤。
・S−2;TEGDBE;トリエチレングリコールジビニルエーテル
・S−3;PTMGDA;ポリテトラメチレングリコールジアクリレート
(使用例1)
コロナ放電処理にて表面改質(50mN/m)をした硬度(JIS−A)75のオレフィン系熱可塑性(TPO)シート上に、前記塗料1(TPO用表面処理層形成用塗料)をスプレー塗装(塗布量;10μm・dry)し、90℃で90秒間乾燥した。次に、塗布面上からメタルハライドランプを、ピーク照度380mW/cm2(照射強度=425mj/cm2)条件下で紫外線を照射して積層シートを形成させたシートを230℃に加温したロールで(表面側;塗装済み原反/未処理原反;裏側)シートをラミネートして積層シートを作製する。さらに、シボ(模様)の入った金型を220℃で10秒間の条件下で雌引き成型して得られた成型物について各種評価試験を行った。
(使用例2)
コロナ放電処理にて表面改質(50mN/m)をした硬度(JIS−A)75のオレフィン系熱可塑性(TPO)シート上に、前記塗料2をグラビアコーティング(塗布量;10μm・dry)で塗工した後に、90℃で90秒間乾燥した。次に、塗布面上からEB設備にて加速電圧100KVの条件下で電子線を照射して積層シートを形成させた。さらに、230℃に加温したロールで(表面側;塗装済み原反/未処理原反;裏側)のシートをラミネートして積層シートを作製する。さらに、シボ(模様)の入った金型を220℃で10秒間の条件下で雌引き成型して得られた成型物について各種評価試験を行った。
(使用例3)
コロナ放電処理にて表面改質(50mN/m)をした硬度(JIS−A)75のオレフィン系熱可塑性(TPO)シート上に、前記塗料3をスプレー塗装(塗布量;10μm・dry)した後に、90℃で90秒間乾燥して得たシートを、次に、塗布面上からEB設備にて加速電圧100KVの条件下で電子線を照射して積層シートを形成させた。さらに、220℃に加温したシボ(模様)の入ったエンボスロールで皮革調の模様を付けた後に、金型を160℃で10秒間の条件下で雄引き成型して得られた成型物について各種評価試験を行った。
(使用例4)
コロナ放電処理していない硬度(JIS−A)75のオレフィン系熱可塑性(TPO)シート上に、前記塗料2をグラビアコーティング(塗布量;10μm・dry)で塗工した後に、90℃で90秒間乾燥した。次に、塗布面上からEB設備にて加速電圧100KVの条件下で電子線を照射して積層シートを形成させた。さらに、230℃に加温したロールで(表面側;塗装済み原反/未処理原反;裏側)のシートをラミネートして積層シートを作製する。さらに、シボ(模様)の入った金型を220℃で10秒間の条件下で雌引き成型して得られた成型物について各種評価試験を行った。
(使用例5)
コロナ放電処理していない硬度(JIS−A)75のオレフィン系熱可塑性(TPO)シート上に、前記塗料3をスプレー塗装(塗布量;10μm・dry)した後に、90℃で90秒間乾燥して得たシートを、次に、塗布面上からEB設備にて加速電圧100KVの条件下で電子線を照射して積層シートを形成させた。さらに、220℃に加温したシボ(模様)の入ったエンボスロールで皮革調の模様を付けた後に、金型を160℃で10秒間の条件下で雄引き成型して得られた成型物について各種評価試験を行った。
(比較使用例1)
コロナ放電処理にて表面改質(50mN/m)をした硬度(JIS−A)75のオレフィン系熱可塑性(TPO)シート上に、下記プライマー1(塩素系TPO用プライマー)をスプレー塗装(塗布量;3μm・dry)した後に、90℃で90秒間乾燥して得たシート上に、さらに本発明の前記塗料4に記載の水系塗料をスプレー塗装(塗布量;10μm・dry)し、90℃で90秒間乾燥したシートを40℃で1日熟成させた。次に、230℃に加温したロールで(表面側;塗装済み原反/未処理原反/未処理原反;裏側)のシートをラミネートして積層シートを作製する。さらに、シボ(模様)の入った金型を220℃で10秒間の条件下で雌引き成型して得られた成型物について各種評価試験を行った。
(プライマー1)
・塩素化PP 100部
・イオン交換水 200部
合計 300部
塩素化PP;ハードレンEZ−2000(東洋化成工業製、NV=30%)
(比較使用例2)
コロナ放電処理にて表面改質(50mN/m)をした硬度(JIS−A)75のオレフィン系熱可塑性(TPO)シート上に、前記塗料5をグラビアコーティング(塗布量;10μm・dry)で塗工した後に、90℃で90秒間乾燥した。次に、塗布面上からEB設備にて加速電圧100KVの条件下で電子線を照射して積層シートを形成させた。さらに、220℃に加温したシボ(模様)の入ったエンボスロールで皮革調の模様を付けた後に、金型を160℃で10秒間の条件下で雄引き成型して得られた成型物について各種評価試験を行った。
使用例1〜3および比較使用例1、2で作製した成型品に関して以下の項目で評価した。
<接着性試験>
塗布した面々を接着剤にて貼り合せた試験片を、新東科学(株)製のHEIDON−14DRを使用して180度剥離力を測定した。
評価基準;
×;1kg/cm未満
○;1kg/cm以上
<磨耗性試験>
塗布した面を、平面摩耗試験機を使用して、6号帆布、荷重500gにて外観変化するまでの摩耗回数を測定した。
評価基準;
×;1000回未満
△;1000〜2000回未満
○;2000回以上
<真空成型性試験>
展開率200%での真空成型前後における試料片の表面を、目視およびデジタルスコープ(100倍)にて観察し、外観不良(絞の変化、白化、クラックなど)の有無を確認した。
評価基準;
×;外観不良が発生している
○;外観不良はない
<光沢度>
スガ試験機社製 直読ヘーズコンピューターHGM−2DPを使用し、各シートの光沢度(60°入射光/60°反射光)を測定した。自動車用内装材としては、光沢度は1.2以下が好ましい。
<耐スクラッチ性試験>
各種シートの艶消し層の塗膜を約1kg/cm2の荷重にてスコッチブライト(住友スリーエム(株)製)で100回擦り、表面の傷付きを目視にて確認した。
○;確認できる傷が0本以上5本未満
△;確認できる傷が5本以上10本未満
×;確認できる傷が10本以上
<耐候性試験>
前記条件にて積層塗料塗膜形成後、耐候性試験を行い、キセノンウェザオメーターにて耐候促進試験を行い、塗膜の外観変化を確認した。
耐候性試験条件;キセノンウェザオメーターの照射条件は、照度(50〜150w/m2、300〜400nm)、ブラックパネル温度90℃で照射時間8週間(2000kj)。
耐光性試験(外観)評価基準;
○;変色、チョーキング、ワレ・ヒビなどがない。
×;変色、チョーキング、ワレ・ヒビなどがある。
<耐熱性試験>
前記条件にて自動車用内装材形成後、オーブンにて試験条件を120℃で400時間とし耐熱性試験を行い、塗膜の外観変化を確認した。
耐熱性試験(外観)評価基準;
○;黄色変色、チョーキング、ワレ・ヒビなどがない
×;黄色変色、チョーキング、ワレ・ヒビなどがある
<耐加水分解性試験>
前記条件にて自動車用内装材形成後、ジャングル試験(温度:70℃で相対湿度95%、8週間)後の基材との接着強度を測定し、初期強度と比較した。
○;保持率が70%以上
△;70%未満〜40%
×;40%未満
本発明によれば、リサイクルを考慮した環境対策品であるオレフィン系熱可塑性シートなどに使用できるVOC対応型の自動車内装に好適な水系艶消し塗料が提供される。該塗料からなる塗膜は、基材との密着性に優れ、該塗膜を有するプラスチック成型品は、耐摩耗性、耐薬品性、真空成型性、光沢度および耐スクラッチ性などが良好である。
本発明で使用するポリウレアコロイド溶液中のポリウレアコロイド粒子Bの断面の想像図。 本発明で使用するポリウレタンゲル粒子Cの写真。 本発明で使用するポリウレタンゲル粒子Cの断面の想像図。
符号の説明
1:溶媒和されているポリマー鎖(油脂セグメント)
2:非溶媒和部分のウレアドメイン
3:ポリウレタンゲル粒子A
4:ポリウレアコロイド粒子B

Claims (8)

  1. 電子線または紫外線硬化型のポリシロキサン変性ウレタン系樹脂(1)と、ポリウレタンゲル粒子(2)と、水系架橋剤(3)とを水性媒体中に含有してなるプラスチック用塗料であって、
    上記電子線または紫外線硬化型のポリシロキサン変性ウレタン系樹脂(1)が、
    下記化合物(a)〜(d)の合計量が100質量%になる比率で、
    分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と水酸基以外の親水性基とを有する化合物(a)0.01〜30質量%と、
    少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の不飽和基を有する化合物(b)0.01〜30質量%と、
    ポリオールおよび/またはポリアミン(c)(a〜dの合計が100質量%になる量)と、
    少なくとも1個の活性水素含有基を有するポリシロキサン(d)0.01〜50質量%と、
    ポリイソシアネート(e)とを、
    化合物a〜dの合計の全活性水素含有基と化合物eのイソシアネート基とを当量比(OH/NCO)0.9〜1.1で反応させて得られ、シロキサンセグメントの含有量が0.01〜50質量%で、数平均分子量が2,000〜500,000の樹脂であることを特徴とするプラスチック用塗料。
  2. 前記少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の不飽和基を有する化合物(b)の比率が1〜15質量%であり、前記少なくとも1個の活性水素含有基を有するポリシロキサン(d)の比率が1〜20質量%である請求項1に記載の塗料。
  3. 前記ポリウレタンゲル粒子(2)が、少なくともいずれか一方が3官能以上である、ポリイソシアネートと、分子内に活性水素含有基を有する化合物とを共重合してなる三次元架橋したポリウレタンゲル粒子(粒子A)と、該粒子Aの表面を被覆している、ポリウレアコロイド非水溶媒溶液から析出したポリウレアコロイド粒子(粒子B)とからなるポリウレタンゲル粒子(粒子C)である請求項1又は2に記載の塗料。
  4. 前記粒子Bが、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が0.01μm〜1.0μmであり、油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとポリアミン化合物との反応で得られるポリウレアコロイド粒子であって、非溶媒和部分がウレア結合の水素結合からなっている請求項3に記載の塗料。
  5. 前記粒子Cの粒子径が、0.5〜100μmの範囲である請求項3又は4に記載の塗料。
  6. 前記水系架橋剤(3)が、電子線または紫外線硬化型水系架橋剤および/または水分散性反応性希釈剤である請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗料。
  7. さらに、ポリイソシアネート系架橋剤(ブロック型を含む)、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、シラノール系架橋剤、無機系架橋剤またはビニルエーテル系架橋剤を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗料。
  8. 前記電子線または紫外線硬化型のポリシロキサン変性ウレタン系樹脂(1)と、ポリウレタンゲル粒子(2)と、水系架橋剤(3)との合計量を100質量%としたとき、上記樹脂(1)が10〜80質量%、上記ゲル粒子(2)が10〜80質量%および水系架橋剤(3)が0.1〜50質量%である請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗料。
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