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JP5204937B2 - 光学部材用粘着剤組成物 - Google Patents

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JP5204937B2 JP2007159925A JP2007159925A JP5204937B2 JP 5204937 B2 JP5204937 B2 JP 5204937B2 JP 2007159925 A JP2007159925 A JP 2007159925A JP 2007159925 A JP2007159925 A JP 2007159925A JP 5204937 B2 JP5204937 B2 JP 5204937B2
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Description

本発明は、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、これらの積層体などの光学部材に用いる光学部材用粘着剤組成物、これを上記の光学部材上に設けてなる粘着型光学部材、さらにこの粘着型光学部材を用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDPなどの画像表示装置に関するのである。

近年、液晶表示装置は、携帯電話やパソコンのみならず、テレビジョン用途など幅広くかつ物量も時々刻々と増加している。液晶表示装置などに用いる光学部材、例えば偏光板や位相差板などは、液晶セルに粘着剤を用いて貼り付けられる。

このような光学部材に用いる材料は、加熱条件下や加湿条件下では伸縮が大きいため、貼り付け後にはそれに伴う浮きや剥がれを生じやすい。そのため、光学部材用粘着剤には加熱条件下や加湿条件下でも対応できる耐久性が要求される。

液晶表示装置に使用する光学部材は、片面に粘着剤が付いた粘着型光学部材として用いられる。粘着型光学部材は通常ロール状で作製され、所定のサイズに打ち抜き加工処理がなされるため、粘着型光学部材に用いる粘着剤は切断刃に付着して欠けたり、切断面からはみ出すおそれがないような加工性も要求される。

粘着型光学部材に用いる粘着剤には、耐久性や透明性などの利点のために、これまで、アクリル系粘着剤が一般的である(特許文献1,2)。

この種の粘着剤は、n−ブチルアクリレートや2−エチルヘキシルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルと水酸基含有モノマーなどの極性基含有モノマーとを共重合させたアクリル系ポリマーを主剤とし、これにイソシアネート系架橋剤や過酸化物などを適量加えて所定のゲル分率となるまで架橋処理することで、耐久性などに優れる光学部材用粘着剤としたものである。
特開2006−219526号公報 特開2007−31506号公報
本発明は、透明性の良好なアクリル系の光学部材用粘着剤において、上記公知の粘着剤組成とは異なる手段により、耐熱接着性や耐湿接着性などの接着耐久性の改善をはかり、特に、SP値が17.5(MPa)1/2 以下の難接着性の光学部材に対する接着耐久性の改善をはかり、もって使用中での発泡や剥がれを防止し、また経時による剥離力の変化を低減して再剥離性(リワーク性)の改善をはかることを課題とする。さらに粘着型光学部材としたときの加工性(打ち抜き加工性)の改善をはかることも課題とする。

本発明者らは、上記の課題に対し、鋭意検討した結果、n−ブチルアクリレートなどの主モノマーと共に、イソミリスチルアクリレートやイソステアリルアクリレートなどの長鎖アルキル基を有するモノマーを所定の比率で共重合させ、その重量平均分子量と分子量1,000以下の成分の含有量を特定範囲に設定したアクリル系ポリマーによると、これにシランカップリング剤を加えたり架橋処理して適正なゲル分率とすることにより、耐熱接着性や耐湿接着性を改善でき、難接着性の光学部材に対しても長期の過酷条件下や加熱保存時の接着耐久性を向上でき、また経時による剥離力の変化も少なく光学部材の貼り替えなどの再剥離性(リワーク性)も向上でき、さらに粘着型光学部材の打ち抜き加工性の改善もはかれることを知り、本発明を完成するに至った。

すなわち、本発明は光学部材の片面または両面に、イソミリスチルアクリレートとイソステアリルアクリレートの中から選ばれる少なくとも1種(A)と、n−ブチルアクリレートを50重量%以上含むビニル系モノマー(B)との重量比20/80〜50/50の共重合体からなる、重量平均分子量が100万以上、分子量1,000以下の成分が10重量%未満であるアクリル系ポリマーと、このアクリル系ポリマー100重量部あたり、0.01〜1重量部となる割合のシランカップリング剤と、架橋剤とを含有する光学部材用粘着剤組成物を架橋反応させた、ゲル分率が40〜90重量%である粘着剤層を有することを特徴とする粘着型光学部材光学部材のSP値が17.5(MPa)1/2 以下である上記構成の粘着型光学部材に係るものである。

さらに、本発明は、上記構成の粘着型光学部材を少なくとも1枚用いたことを特徴とする画像表示装置に係るものである。
このように、本発明は、耐熱接着性や耐湿接着性などの接着耐久性、特にSP値が17.5(MPa)1/2 以下の難接着性の光学部材に対する接着耐久性に優れた、使用中での発泡や剥がれのない、また経時による剥離力の変化が低く再剥離性(リワーク性)に優れ、しかもこの再剥離性と応力緩和性とのバランスのとれた、さらに打ち抜き加工時に粘着剤が切断刃に付着して欠けたり切断面からはみ出すことのない加工性に優れたアクリル系の光学部材用粘着剤組成物と、これを用いた偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルムなどの粘着型光学部材と、この粘着型光学部材を用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDPなどの画像表示装置とを提供することができる。

本発明において用いられる(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)は、炭素数が8〜30、好ましくは10〜22、さらに好ましくは14〜18のアルキル基を有するものであり、特に好ましくは分岐構造のアルキル基を有するものがよい。このような(A)モノマーは、その低SP値に基づく濡性により、被着体への初期接着性に優れており、取り分け非極性の被着体への接着性に優れている。

上記の(A)モノマーとしては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、(イソ)ミリスチル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。

これらのモノマーの中でも、炭素数が14〜18でかつ分岐構造のアルキル基を有するものとして、イソミリスチルアクリレートとイソステアリルアクリレートの中から選ばれる少なくとも1種を使用するのが望ましい。

本発明において用いられるビニル系モノマー(B)は、上記の(A)モノマーと共重合可能なモノマーとして、炭素数8未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分としたものである。ここで、主成分とは、ビニル系モノマー(B)中、50重量%以上を占めることを意味するが、ビニル系モノマー(B)と前記の(A)モノマーと合計量中でも、50重量%以上を占めるのが望ましい。

具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、n−ブチルアクリレートが最も好ましい。このようなモノマーを使用すると、被着体への接着性に好結果が得られる。

ビニル系モノマー(B)としては、上記の主成分となる(メタ)アクリル酸アルキルエステルのほかに、他の共重合可能なモノマーを使用することもできる。例えば、ペンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)リレートなどや、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどを使用できる。また、(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、酢酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー、(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー、スチレンなどの芳香族ビニルモノマーなども使用できる。これらのモノマーは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。

本発明において、上記の(A)モノマーと(B)モノマーとは、(A)/(B)の重量比が5/95〜65/35の割合で用いられる。好ましくは、(A)/(B)の重量比が10/90〜60/40の割合で用いるのがよく、特に好ましくは、(A)/(B)の重量比が15/85〜55/45の割合で用いるのがよい。

上記の(A)モノマーが5/95より少ないと、難接着性の光学部材に対する接着性の低下などが起こり、耐熱接着性や耐湿接着性などの接着耐久性に好結果が得られず、また65/35より多くなると、モノマーが高価であることに加え、ポリマーの物性に劣り、接着性を却って損ないやすく、いずれも好ましくない。

本発明においては、上記の(A)モノマーと(B)モノマーとのほかに、必要により、その他の共重合成分を併用することにより、接着性の調節や、架橋反応用として凝集力・耐熱性の向上をはかるようにしてもよい。ただし、これらの共重合成分は、上記の(A)モノマーと(B)モノマーとの合計量に対して、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、さら好ましくは15重量%以下とするのがよい。

このような共重合成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有モノマー、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などのアルキル基中に水酸基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマーが挙げられる。その他、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマー、シロキサン基含有(メタ)アクリル酸化合物、共重合性ビニル化合物などを適宜に用いることができる。

本発明においては、上記の(A)モノマーと(B)モノマーとを用いて、また必要によりその他の共重合成分を用いて、重量平均分子量が100万以上、分子量1,000以下の成分が10重量%未満であるアクリル系ポリマーを生成する。このポリマーは、ランダム、ブロック、グラフトなどいずれの共重合体であってもよい。

このようなアクリル系ポリマーを生成するには、溶液重合、乳化重合、塊状重合などの公知のラジカル重合法を用いればよい。ただし、上記の(A)モノマーは、その長鎖のアルキル基により重合性が低くなるため、この(A)モノマーの使用量に応じて、それに適したラジカル重合法を採用するのが望ましい。

まず、(A)モノマーが(B)モノマーとの重量比20/80より少ない場合、特に、好ましくは10/90より少ない場合、(A)モノマーに起因した重合性の低下はほとんどみられず、溶液重合、乳化重合、塊状重合などのいずれのラジカル重合法も採用でき、これらの重合により前記高分子量でかつ分子量1,000以下の成分が10重量%未満であるアクリル系ポリマーを生成することが可能である。

この方法として、以下に、溶液重合と乳化重合とについて、簡単に説明するが、塊状重合として、例えばモノマー混合物などを2層のフィルムで挟んだ薄層塊状状態としこれに紫外線などを照射して重合させるなどの方法も任意に採用できる。

溶液重合では、重合溶媒にモノマーと重合開始剤を加えて、一括仕込みやモノマー滴下法、溶剤滴下法などの適宜の方法により重合する。

重合溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、n−へキサン、シクロへキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどが用いられる。これらの溶媒は単独で使用しても2種以上を混合してもよい。

なお、重合により得られるアクリル系ポリマー溶液は、これをそのまま塗工し乾燥して粘着剤層を形成することができるが、粘着剤層を均一に塗布できるように、重合後に重合溶媒以外の1種以上の溶媒を新たに加えてもよい。

重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス〔N−(カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン〕ハイドレート(和光純薬社製,VA057)などのアゾ系開始剤や、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物系開始剤などが用いられるが、これらの開始剤にのみ限定されるものではない。

重合開始剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。全体としての使用量は、モノマー全量100重量部あたり、通常0.005〜1重量部とするのが好ましく、0.02〜0.6重量部とするがより好ましい。

乳化重合では、水に乳化剤を加え、これにモノマーと重合開始剤を加えて、一括仕込みやモノマー滴下法、開始剤滴下法などの方法により重合する。

乳化剤の使用量としては、モノマー全量100重量部あたり、通常0.1〜10重量部とするのが好ましく、重合安定性、機械的安定性、粘着特性などの面から、特に0.3〜3重量部とするのがより好ましい。

この重合により得られるアクリル系ポリマーの水分散液(エマルジョン液)は、これをそのまま塗工し乾燥して粘着剤層を形成することができる。この場合、乳化剤はできるだけ粘着特性に害の少ないものを選択使用するのが望ましい。

乳化剤には、ノニオン系やアニオン系などがある。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンーポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。

また、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された反応性乳化剤を用いることができる。具体的には、アクアロンHS10、KH10、BC05、BC10、BC20(第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(旭電化工業社製)などが挙げられる。反応性乳化剤は、重合後にポリマー鎖中に取り込まれるため、耐水性が良くなり、好ましい。

つぎに、(A)モノマーが(B)モノマーとの重量比20/80を超える場合、(A)モノマーに起因した重合性の低下が顕著となり、前記の通常の溶液重合や塊状重合では、重合速度が遅く、かつ重合率が上がらず、多量の未反応モノマーが残存しやくなる。このため、これらの重合法では前記高分子量でかつ分子量1,000以下の成分が10重量%未満であるアクリル系ポリマーを生成することは一般に難しい。

しかし、例えば、特定の溶液重合として、酢酸エチルなどの限られた重合溶媒を用いて前記方法に準じて溶液重合を行ったのち、これにメタノールなどのポリマー不溶性の有機溶剤を加えて重合ポリマーを再沈析出させることにより、比較的高分子量で、かつ分子量1,000以下の成分が10重量%未満となるアクリル系ポリマーを生成することは可能である。この再沈析出ポリマーは、減圧乾燥などしたのち、酢酸エチルなどの有機溶剤に溶解したポリマー溶液として使用することができる。

また、重合速度と重合率の向上をはかり、上記特定の溶液重合よりもさらに高分子量化をはかれる乳化重合を採用するのがより望ましい。

乳化重合では、上記モノマー混合物であっても非常に高分子量のアクリル系ポリマーを生成することができる。しかし、乳化重合により高分子量化をはかれても、分子量1,000以下の成分が混入するおそれが多分にあり、これを乳化重合後に取り除く、つまり、低分子量成分を低減する精製処理を施して、重合度が高くかつ低分子量成分(乳化剤や未反応モノマーを含む)の少ない精製アクリル系ポリマーとする。

以下、この精製アクリル系ポリマーを得る方法について、さらに詳しく説明する。

最初に、前記のモノマーを、水系溶媒中で乳化剤と水溶性ラジカル重合開始剤を用いて乳化重合して、重合体エマルジョンを得る。水系溶媒には、保護コロイドとして、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)などを、モノマー100重量部あたり、10重量部以下で割合で用いてもよい。

乳化剤には、重合時にエマルジョン液の凝集などがなく安定に重合でき、重合後には塩析や凍結などの精製処理によりポリマー分を容易に分離できるものが好ましく、特に凝集ポリマーが粒子集合体状のフロック状に得られるものでは、後の工程でポリマー中に含まれる乳化剤や水分の除去操作が容易になり、好ましい。

このような乳化剤には、アルケニル琥珀酸塩、リン酸エステル塩、硫酸エステル塩などがあり、具体的には、アルケニル琥珀酸ジカリウム(花王ラテムルASK)などの塩析用界面活性剤が挙げられる。使用量は、モノマー100重量部あたり、通常0 .1〜10重量部とするのがよい。

また、必要により、他の乳化剤を併用することもできる。他の乳化剤には、非イオン性界面活性剤や陰イオン性界面活性剤が含まれる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンーポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤が挙げられる。これらの乳化剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。

水溶性ラジカル重合開始剤には、乳化重合用として知られているものをいずれも使用できる。具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性無機過酸化物、過酸化水素水やヒドロキシブチルパーオキサイドなどの水溶性の有機過酸化物、アゾビスアミジノプロパン塩酸塩、アゾビスシアノバレリン酸などの水溶性アゾ化合物などが挙げられる。

また、上記の水溶性無機過酸化物や水溶性有機過酸化物と還元性物質、例えば亜硫酸ナトリウム、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノ安息香酸、Lアスコルビン酸などを組み合わせたレドックス開始剤も使用できる。

このような水溶性ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマー100重量部あたり、通常0.01〜1.0重量部とするのがよい。

上記の乳化重合にあたり、重合体の分子量を調整するため、連鎖移動剤が適宜用いられる。重合後にポリマーを取り出して有機溶剤に再溶解するためには、ポリマーの3次元化を防ぐため、連鎖移動剤を使用するのが好ましい。

このような連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどが挙げられる。

これらの連鎖移動剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。全体としての使用量は、モノマーの全量100重量部あたり、通常0.1重量部以下、特に好ましくは0.001〜0.1重量部とするのがよい。

乳化重合は、モノマー、水、乳化剤、水溶性ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤などを一括に仕込んで重合する一括仕込み法、モノマーやモノマーの乳化液さらには水溶性ラジカル重合開始剤液を滴下しつつ重合する滴下法など、適宜な方法で行えばよい。

重合温度は、モノマーの重合性と水溶性ラジカル重合開始剤の分解温度および時間により適宜決められるが、通常の重合温度は30〜90℃、好ましくは40〜80℃である。また、重合時間は、通常3〜12時間である。

つぎに、乳化重合後の重合体エマルジョンに対して、これに含まれる低分子量成分を低減する精製処理を施して、重合度が高くてかつ低分子量成分(乳化剤や未反応モノマーを含む)の少ない精製アクリル系ポリマーを得る。

精製処理は、重合体エマルジョンから重合ポリマーを凝集させて取り出す方法により、実施できる。具体的には、塩析や、凍結/融解を含む処理などが用いられる。塩析には、塩析剤として硫酸アルミニウム、塩化カルシウム、硫酸、塩酸などが用いられる。また、凍結/融解には、例えば−5℃以下、好ましくは−20℃以下で凍結させたのちに融解し水分離する方法が用いられる。後者の方法は添加剤の必要がなく、より好ましい。

このように取り出した重合ポリマーを、水洗、脱水、乾燥することにより、精製アクリル系ポリマーが得られる。また必要により、メチルアルコール、エチルアルコール、酢酸メチルなどの吸水性の有機溶剤を使用して、精製や再沈操作を繰り返すことにより、残存モノマーや乳化剤(界面活性剤)さらには分子量が1,000以下の低分子量のポリマー成分をより一層除去することができる。

このようにして得られる精製アクリル系ポリマーは、これを光学部材用粘着剤組成物の主剤として使用するにあたり、加熱押し出機などで薄層に押し出し成形して使用したり、トルエンや酢酸エチルなどの有機溶剤に溶解したポリマー溶液として使用する。

本発明においては、上記のように(A)モノマーの使用量に応じた適宜の方法により、重量平均分子量が100万以上、好ましくは120万以上、より好ましくは150万以上(作業性の観点より通常は1,000万以下)で、分子量1,000以下の成分が10重量%未満、好ましくは7重量%以下であるアクリル系ポリマーを生成する。

ここで、重量平均分子量が100万より小さくなったり、分子量1,000以下の成分が10重量%を超えたりすると、粘着剤の耐久性に乏しくなり耐熱接着性や耐湿接着性に劣ったり、粘着剤の凝集力が小さくなり、再剥離時に糊残りを生じやすい。

本明細書において、アクリル系ポリマーの重量平均分子量および分子量1,000以下の成分の割合は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、下記の条件により測定される値を意味している。

分析装置:東ソー製、HLC−8120GPC
カラム:東ソー製、G7000HXL−H+GMHXL−H+GMHXL
カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
カラム温度:40℃
流速:0.8mL/min
溶離液:テトラヒドロフラン
溶液濃度:約0.1重量%
注入量:100μL
検出器:示差屈折計(RI)
標準試料:ポリスチレン
データ処理装置:東ソー製,GPC8020

本発明の光学部材用粘着剤組成物は、上記のアクリル系ポリマーを主剤としたもので、この主剤に対し、通常は、耐久性の向上の点より、シランカップリング剤が配合される。また、架橋処理して適度なゲル分率とするため、通常は、架橋剤が配合される。さらに、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などの公知の各種の添加剤を、粘着剤層の弾性率を著しく変化させない程度の量で配合することができる。

シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ構造を有するケイ素化合物、3 −アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノ基含有ケイ素化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、アセトアセチル基含有トリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。特に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランは取り扱い性、接着性などの点から、好ましく用いられる。

このようなシランカップリング剤は、単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。全体としてのシランカップリング剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部あたり、通常0.01〜1重量部、好ましくは0.02〜0.6重量部、より好ましくは0.05〜0.3重量部とするのがよい。

シランカップリング剤の使用量が0.01重量部より少ない場合は、耐久性のさらなる向上をはかることが難しく、また1重量部を超えて使用すると、液晶セルなどへの接着力が増大する傾向があり、再剥離性に劣るようになる。

架橋剤としては、有機溶剤溶液型の粘着剤では、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物、これらのジイソシアネート化合物と各種ポリオールとの付加物などのポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン化合物、金属塩、金属キレート化合物などが用いられる。これらの中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。

また、水媒体のエマルジョン型粘着剤では、架橋剤として、水溶性の多官能のメラミン化合物、エポキシ化合物、シラノール化合物などが用いられる。

架橋剤の使用量は、架橋処理により耐熱接着性や耐湿接着性などの耐久性や再剥離性などに好結果が得られる共に架橋過多となって応力緩和性に劣ったものとならないように、架橋剤の種類に応じて、適宜の量を選択するのが望ましい。

本発明の粘着型光学部材は、光学部材の片面または両面に上記の光学部材用粘着剤組成物を架橋反応させた粘着剤層を有する構成としたものである。

この粘着型光学部材は、剥離ライナ上に上記架橋反応させた粘着剤層を形成し、これを光学部材の片面または両面に貼り合わせるか、または光学部材の片面または両面に直接、上記架橋反応させた粘着剤層を形成することにより、作製できる。

これらの方法においては、剥離ライナ上や光学部材上に上記の光学部材用粘着剤組成物を塗布したのち、有機溶媒や水系分散媒を含むものではこれを除去するための乾燥工程を施し、この乾爆工程の温度で同時に架橋処理を施すか、および/または別に架橋処理工程(架橋反応またはその調整を目的とした処理工程)を設けることにより、剥離ライナ上や光学部材上に架橋反応させた粘着剤層を形成する。

なお、光学部材上に光学部材用粘着剤組成物を直接塗布する場合、乾燥工程や架橋処理工程で光学部材に熱がかかり、光学部材の特性が変化するおそれがあり、注意が必要である。この点からすると、剥離ライナ上に塗布して架橋反応させた粘着剤層を形成しこれを光学部材に貼り合わせる方法がより好ましく用いられる。

剥離ライナ上や光学部材上に上記の光学部材用粘着剤組成物を塗布する際には、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ナイフコートなどの公知の任意の塗布手段を用いることができる。

乾燥工程は、有機溶媒や水系分散媒を揮散除去できる適宜の温度・時間が選択される。架橋処理に必要な時間は、生産性や作業性を考慮して、適宜設定できるが、通常は0.2〜20分間程度、好ましくは0.5〜10分間程度である。

剥離ライナには、セパレータや剥離シート、剥離フィルムなどとして公知のものを広く使用できる。表面の平滑性や乾爆時などの耐熱性の点より、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックフィルムが好ましい。

これらのプラスチックフィルムは、適宜、剥離処理剤により剥離処理して用いられる。剥離処理剤としては、処理後の表面平滑性の点より,シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系、脂肪酸アミド系などが好ましく用いられる。

剥離ライナの厚さは、特に限定されるものではないが、通常は5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度であるのがよい。

剥離ライナは、この上に形成された粘着剤層を光学部材に貼り合わせたのちは、これを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護する保護フィルムとして、機能させることができる。すなわち、剥離ライナは、粘着剤層形成のための支持フィルムとして機能し、同時に上記の保護フィルムとしても機能する。

光学部材上に直接粘着剤層を形成する場合は、形成された粘着剤層の表面に上記同様の目的で剥離性の保護フィルムを貼り合わせる。これに対し、上記の剥離ライナ上に粘着剤層を形成しこれを光学部材に貼り合わせる方法は、このような保護フィルムを別途貼り合わせる工程が不要であり、工程面での簡略化もはかれる。

なお、保護フィルムとして機能する剥離ライナや別途貼り合わせる保護フィルムには、必要により、帯電防止処理などの適宜の処理を施してもよい。

このように作製できる粘着型光学部材は、架橋反応させた粘着剤層の厚さが2〜500μm、好ましくは5〜100μmであり、またこの粘着剤層のゲル分率が40〜90重量%、好ましくは45〜85重量%、より好ましくは50〜80重量%である。

ゲル分率が上記の範囲となるように架橋剤の量や架橋処理条件が適宜選択される。ゲル分率が40重量%より小さくなると、耐久性に劣る傾向があり、90重量%を超えると、応力緩和性に劣る傾向があり、いずれも好ましくない。

本発明の粘着型光学部材において、上記の架橋反応させた粘着剤層を設ける光学部材としては、液晶表示装置などの画像表示装置の形成に用いられる公知の光学部材がいずれも使用可能であり、その種類は特に限定されない。

本発明では、前記特定の光学部材用粘着剤組成物の使用により、光学部材(の表面)のSP値が17.5(MPa)1/2 以下でも、耐熱接着性、耐湿接着性などの耐久性に優れたものが得られる。上記のSP値とは、表面特性をポリマーハンドブックのソルビリティパラメータ(SP値)で表したもので、接着性の指標となるものである。

光学部材の具体例としてには、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、これらの積層体などが挙げられる。これらの代表的なものとして、以下に、偏光板と位相差板とに関し、その構成について説明する。

偏光板は、偏光子の片面または両面に透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。偏光子の厚さは、特に制限されないが、通常は5〜80μmである。

透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、強度や取扱性などの作業性、薄膜性などの点より、一般に1〜500μm、好ましくは5〜200μmである。

透明保護フィルムは、偏光板の表面をなし、前記のSP値に関与して、このものの表面極性により被着体への接着性を左右するのである。

偏光子の材質は、特に限定されず、各種のものを使用できる。

具体的には、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などポリエン系配向フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる備光子が好適である。

透明保護フィルムを形成する材料には、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。

具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどが挙げられる。

また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしノルボルネン構造を有するポリオレフイン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロン、芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、これらポリマーのブレンド物なども、透明保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。

透明保護フィルムは、上記のポリマー材料のほかに、例えば、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系などの熱硬化型や紫外線硬化型の樹脂の硬化層として、形成することもできる。

また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が挙げられる。

具体的には、イソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル−スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムが挙げられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。

また、透明保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。したがって、Rth=(nx−nz)・d(ただし、nxはフィルム平面内の遅相軸方向の屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚みである)で表されるフィルム厚み方向の位相差が−90nm〜+75nmである透明保護フィルムが好ましく用いられる。

このような厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向の位相差(Rth)は、より好ましくは−80nm〜+60nm、さらに好ましくは−70nm〜+45nmである。

透明保護フィルムとしては、上記各種のポリマー材料の中でも、偏光特性や耐久性などの点より、トリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマーが好ましい。特にトリアセチルセルロースフィルムが最も好適である。

なお、偏光子の両面に透明保護フィルムを設ける場合、個々の用途目的に応じて、その表裏で同じポリマー材料などからなる透明保護フィルムを用いてもよいし、異なるポリマー材料などからなる透明保護フィルムを用いてもよい。

偏光板において、上記した偏光子と透明保護フィルムとは、通常、水系接着剤などを介して貼り合わされ、密着している。

ここで用いる水系接着剤としては、例えば、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステルなどが挙げられる。

また、偏光板において、透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、必要によりハードコート処理や反射防止処理、ステイツキング防止や拡散ないしアンチグレアを目的とした処理が施されていてもよい。

ハードコート処理は、偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるもので、例えば、アクリル系、シリコーン系などの適宜の紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性などに優れる硬化皮膜を保護フィルム表面に付加する方式などにより行われる。

また、反射防止処理は、偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、公知の反射防止膜などの形成により行われる。さらに、ステイツキング防止処理は、他の部材の隣接層との密着防止を目的に施される。

つぎに、位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどが用いられる。このような位相差板の厚さは、特に制限されないが、通常は20〜150μmであるのがよい。

高分子素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフアイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフイン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、ノルボルネン系樹脂、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などが挙げられる。これらの高分子素材は、延伸などにより配向物(延伸フィルム)となる。

本発明の画像表示装置は、上記のように作製される粘着型光学部材を少なくとも1枚用いたことを特徴としている。すなわち、表示装置に対して、上記の粘着型光学部材をその粘着剤層を介して少なくとも1枚貼り合わせた構成としたものである。

ここで、表示装置としては、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDPなど公知の各種の画像表示装置をいずれも使用できるものである。

つぎに、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお,以下において、部とあるのは重量部を意味する。

また、以下の実施例および比較例で用いたアクリル系ポリマー(1)〜(9)溶液は、下記の参考例1〜9により、調製したものである。

参考例1〔アクリル系ポリマー(1)溶液の調製〕
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、イソステアリルアクリレート30部、n−ブチルアクリレート64部、メチルメタクリレート5部、アクリル酸1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部からなるモノマー液と、重合開始剤として2,2−アゾビスイソプチロニトリル0.1部と、重合溶媒として酢酸エチル100部を仕込み、十分に窒素置換したのち、窒素気流下で撹拌しながら、粘度増加に応じて酢酸エチル200部を添加しつつ約55℃で10時間重合反応を行った。

その後、メタノールを加えて重合ポリマーを再沈析出し、減圧乾燥後、酢酸エチルに溶解して、固形分濃度(ポリマー濃度)が10重量%のアクリル系ポリマー(1)溶液を調製した。アクリル系ポリマー(1)の重量平均分子量は145万であった。

参考例2〔アクリル系ポリマー(2)溶液の調製〕
イソステアリルアクリレート20部、n−ブチルアクリレート75部、アクリロニトリル5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部からなるモノマー液に変更した以外は、参考例1と同様にして、固形分濃度が10重量%のアクリル系ポリマー(2)溶液を調製した。アクリル系ポリマー(2)の重量平均分子量は123万であった。

参考例3〔アクリル系ポリマー(3)溶液の調製〕
イソミリスチルアクリレート30部、n−ブチルアクリレート64部、メチルメタクリレート5部、アクリル酸1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部からなるモノマー液に変更した以外は、参考例1と同様にして、固形分濃度が10重量%のアクリル系ポリマー(3)溶液を調製した。アクリル系ポリマー(3)の重量平均分子量は138万であった。

参考例4〔アクリル系ポリマー(4)溶液の調製〕
撹拌装置付きの300mlのフラスコに、水50部にアルケニル琥珀酸ジカリウム1.2部を溶解し、ついでイソステアリルアクリレート15部、n−ブチルアクリレート35部、メタクリル酸0.3部、ラウリルメルカプタン0.008部のモノマー液を分散した乳化モノマー液を仕込み、窒素置換しつつ十分に撹拌した。その後 2,2′−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕0.05部にメタノール0.5部、水0.5部を加えて溶解した開始剤液を添加した。これを50〜65℃で8時間、さらに60〜70℃で2時間保つことにより、重合体エマルジョンを得た。

つぎに、ステンレス製バットに、上記の重合体エマルジョンを深さ3mmとして入れ、−30℃の冷凍庫に1昼夜おいたのちに取り出し、室温に戻すことにより、多孔質状のポリマーを得た。これを流水中に3日間浸漬しつつ揉み洗いした。その後、凍結乾燥機にて減圧乾爆して、精製アクリル系ポリマー(4)を得た。精製アクリル系ポリマー(4)の重量平均分子量は195万であった。

この精製アクリル系ポリマー(4)をトルエンと酢酸エチルの等重量溶液に溶解して、固形分濃度が10重量%のアクリル系ポリマー(4)溶液を調製した。

参考例5〔アクリル系ポリマー(5)溶液の調製〕
イソステアリルアクリレート20部、n−ブチルアクリレート30部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.05部、アクリル酸0.1部、ラウリルメルカプタン0.005部のモノマー液に変更した以外は、参考例4と同様にして、精製アクリル系ポリマー(5)を得た。精製アクリル系ポリマー(5)の重量平均分子量は185万であった。

この精製アクリル系ポリマー(5)をトルエンと酢酸エチルの等重量溶液に溶解して、固形分濃度が10重量%のアクリル系ポリマー(5)溶液を調製した。

参考例6〔アクリル系ポリマー(6)溶液の調製〕
イソステアリルアクリレート25部、n−ブチルアクリレート22.5部、メチルメタクリレート2.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.05部、ラウリルメルカプタン0.003部のモノマー液に変更した以外は、参考例4と同様にして、精製アクリル系ポリマー(6)を得た。精製アクリル系ポリマー(6)の重量平均分子量は160万であった。

この精製アクリル系ポリマー(6)をトルエンと酢酸エチルの等重量溶液に溶解して、固形分濃度が10重量%のアクリル系ポリマー(6)溶液を調製した。

参考例7〔アクリル系ポリマー(7)溶液〕
重合溶媒として酢酸エチルに代えてトルエンを用いた以外は、参考例1と同様にして、固形分濃度が10重量%のアクリル系ポリマー(7)溶液を調製した。アクリル系ポリマー(7)の重量平均分子量は65万であった。

参考例8〔アクリル系ポリマー(8)溶液の調製〕
イソステアリルアクリレート35部、n−ブチルアクリレート12.5部、メチルメタクリレート2.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.05部、ラウリルメルカプタン0.001部のモノマー液に変更した以外は、参考例4と同様にして、精製アクリル系ポリマー(8)を得た。精製アクリル系ポリマー(8)の重量平均分子量は152万であった。

この精製アクリル系ポリマー(8)をトルエンと酢酸エチルの等重量溶液に溶解して、固形分濃度が10重量%のアクリル系ポリマー(8)溶液を調製した。

参考例9〔アクリル系ポリマー(9)溶液〕
n−ブチルアクリレート100部、アクリル酸1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部のモノマー液に変更した以外は、参考例1と同様にして、アクリル系ポリマー(9)溶液を調製した。得られたアクリル系ポリマー(9)の重量平均分子量は145万であった。

上記の参考例1〜9において、アクリル系ポリマー(1)〜(9)溶液の調製に用いた(A)モノマー〔イソステアリルアクリレート、イソミリスチルアクリレート〕/(B)モノマー〔n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリロニトリル〕の重量比率を、表1に示した。また、再沈析出(および減圧乾燥)後のアクリル系ポリマーまたは精製アクリル系ポリマーに関して、重量平均分子量のほかに、分子量1,000以下の成分の割合を測定して、表1に併記した。これらの分子量の測定は、下記の方法により、行ったものである。

<分子量の測定>
各ポリマーをテトラヒドロフラン(THF)溶液とし、GPCにより、重量平均分子量(Mw)を測定した。また、このGPCにおいて、分子量1,000以下の面積から、分子量1,000以下の成分の割合(重量%)を測定した。GPCの測定方法については、本文(段落「0030」)に記載したとおりである。

Figure 0005204937
実施例1
<光学部材用粘着剤組成物の溶液の調製>
アクリル系ポリマー(1)溶液に対し、その固形分100部あたり、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1部、トリメチロールプロパン1モルにへキサメチレンジイソシアネート3モル付加物の3官能イソシアネート化合物0.5部、およびトルエンを均一に混合撹拌して、固形分濃度10重量%のアクリル系粘着剤組成物の溶液(1)を調製した。

<粘着型光学部材1の作製>
上記のアクリル系粘着剤組成物の溶液(1)を、シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製,厚さ38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間加熱して、乾爆後の厚さが25μmである架橋反応させた粘着剤層を形成した。

ついで、この粘着剤層を偏光板の表面に転写して、粘着型光学部材を作製した。なお、偏光板には、トリアセチルセルロースを保護フィルムとする偏光板A〔SP値が約19.0(MPa)1/2 〕と、オレフイン系フィルムを保護フィルムとする備光板B(SP値が約17.0(MPa)1/2 〕を使用し、2種の粘着型光学部材1を作製した。

実施例2
<光学部材用粘着剤組成物の溶液の調製>
アクリル系ポリマー(1)溶液を、アクリル系ポリマー(2)溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が10重量%のアクリル系粘着剤組成物の溶液(2)を調製した。

<粘着型光学部材2の作製>
アクリル系粘着剤組成物の溶液(1)を、アクリル系粘着剤組成物の溶液(2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着型光学部材2を作製した。

実施例3
<光学部材用粘着剤組成物の溶液の調製>
アクリル系ポリマー(1)溶液を、アクリル系ポリマー(3)溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が10重量%のアクリル系粘着剤組成物の溶液(3)を調製した。

<粘着型光学部材3の作製>
アクリル系粘着剤組成物の溶液(1)を、アクリル系粘着剤組成物の溶液(3)に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着型光学部材3を作製した。

実施例4
<光学部材用粘着剤組成物の溶液の調製>
アクリル系ポリマー(1)溶液を、アクリル系ポリマー(4)溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が10重量%のアクリル系粘着剤組成物の溶液(4)を調製した。

<粘着型光学部材4の作製>
アクリル系粘着剤組成物の溶液(1)を、アクリル系粘着剤組成物の溶液(4)に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着型光学部材4を作製した。

実施例5
<光学部材用粘着剤組成物の溶液の調製>
アクリル系ポリマー(1)溶液を、アクリル系ポリマー(5)溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が10重量%のアクリル系粘着剤組成物の溶液(5)を調製した。

<粘着型光学部材5の作製>
アクリル系粘着剤組成物の溶液(1)を、アクリル系粘着剤組成物の溶液(5)に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着型光学部材5を作製した。

実施例6
<光学部材用粘着剤組成物の溶液の調製>
アクリル系ポリマー(1)溶液を、アクリル系ポリマー(6)溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が10重量%のアクリル系粘着剤組成物の溶液(6)を調製した。

<粘着型光学部材6の作製>
アクリル系粘着剤組成物の溶液(1)を、アクリル系粘着剤組成物の溶液(6)に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着型光学部材6を作製した。

比較例1
<光学部材用粘着剤組成物の溶液の調製>
アクリル系ポリマー(1)溶液を、アクリル系ポリマー(7)溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が10重量%のアクリル系粘着剤組成物の溶液(7)を調製した。

<粘着型光学部材7の作製>
アクリル系粘着剤組成物の溶液(1)を、アクリル系粘着剤組成物の溶液(7)に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着型光学部材7を作製した。

比較例2
<光学部材用粘着剤組成物の溶液の調製>
アクリル系ポリマー(1)溶液を、アクリル系ポリマー(8)溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が10重量%のアクリル系粘着剤組成物の溶液(8)を調製した。

<粘着型光学部材8の作製>
アクリル系粘着剤組成物の溶液(1)を、アクリル系粘着剤組成物の溶液(8)に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着型光学部材8を作製した。

比較例3
<光学部材用粘着剤組成物の溶液の調製>
アクリル系ポリマー(1)溶液を、アクリル系ポリマー(9)溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が10重量%のアクリル系粘着剤組成物の溶液(9)を調製した。

<粘着型光学部材9の作製>
アクリル系粘着剤組成物の溶液(1)を、アクリル系粘着剤組成物の溶液(9)に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着型光学部材9を作製した。

上記の実施例1〜6および比較例1〜3で得られた粘着型光学部材1〜9について、下記の方法により、接着耐久性(耐熱接着性)および再剥離性(接着上昇性)を調べた。また、架橋反応させた粘着剤層について、下記の方法により、ゲル分率を測定した。これらの結果は、表2に示されるとおりであった。

<ゲル分率>
架橋反応させた直後の粘着剤層を約0.1とり、これを秤量して重量(W1)を求め、これを微孔性テトラフルオロエチレン膜に包んで(膜重量W2)、約50mlのトルエン中に23℃下で2日間浸漬したのち、可溶分を抽出した。

その後、上記の粘着剤層を膜と一緒に取り出し、これを120℃で2時間乾燥し、全体の重量(W3)を測定した。これらの測定値から、下記の式にしたがい、粘着剤層のゲル分率(重量%)を求めた。

ゲル分率(重量%)=〔(W3 −W2 )/W1 〕×100

<接着耐久性(耐熱接着性)>
縦24cm、横32cmに裁断した粘着型光学部材を、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製#1737)に貼り付け、50℃、0.5MPaのオートクレーブにて15分間処理したのち、90℃の雰囲気に500時間投入した。

その後、粘着型光学部材の状態を目視観察して、光学部材の剥がれや浮きがないものを○、光学部材の剥がれや浮きがあるものを×、と評価した。

<再剥離性(接着上昇性)>
ガラスに貼り付けたのちの再剥離性として、40℃,7日後の剥離力/初期の剥離力の値が2以下であるものを○、2を超えるものをを×、と評価した。

Figure 0005204937
上記の表2の結果から明らかなように、実施例1〜6の光学部材用粘着剤組成物を使用した粘着型光学部材は、いずれも、SP値が17.5(MPa)1/2 以下の難接着性の光学部材に対してもその接着耐久性に優れており、使用中での発泡や剥がれを防止でき、しかも経時による剥離力の変化が小さく、再剥離性(リワーク性)にも優れていることがわかった。また、別の観察から、これらの粘着型光学部材は、所定サイズへの裁断時に切断刃に粘着剤が付着して欠けたり、切断面から粘着剤がはみ出すなどの問題を生じず、良好な加工性(打ち抜き加工性)を備えていることもわかった。

これに対し、比較例1〜3の光学部材用粘着剤組成物を用いた粘着型光学部材は、どの光学部材に対しても(またはSP値の高い光学部材に対し)その接着性に劣っているか、あるいはSP値が17.5(MPa)1/2 以下の難接着性の光学部材に対する接着耐久性や再剥離性(リワーク性)に劣っていた。



Claims (3)

  1. 光学部材の片面または両面に、イソミリスチルアクリレートとイソステアリルアクリレートの中から選ばれる少なくとも1種(A)と、n−ブチルアクリレートを50重量%以上含むビニル系モノマー(B)との重量比20/80〜50/50の共重合体からなる、重量平均分子量が100万以上、分子量1,000以下の成分が10重量%未満であるアクリル系ポリマーと、このアクリル系ポリマー100重量部あたり、0.01〜1重量部となる割合のシランカップリング剤と、架橋剤とを含有する光学部材用粘着剤組成物を架橋反応させた、ゲル分率が40〜90重量%である粘着剤層を有することを特徴とする粘着型光学部材。
  2. 光学部材のSP値が17.5(MPa)1/2 以下である請求項1に記載の粘着型光学部材。
  3. 請求項1または2に記載の粘着型光学部材を少なくとも1枚用いたことを特徴とする画像表示装置。

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