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JP5299432B2 - 有機光電変換素子及び有機光電変換素子の製造方法 - Google Patents

有機光電変換素子及び有機光電変換素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機光電変換素子に関するものであり、更に詳しくは、高い導電性、透明性、および適度なヘイズ値を有す透明電極を用いることで優れた発電効率を有する有機光電変換素子に関するものであり、更に加えて透明電極と有機発電層部を塗布で製造することで製造コストを大幅に軽減することができる有機光電変換素子の製造方法に関するものである。
近年、有機光電変換素子からなる有機薄膜太陽電池は、塗布法で形成できることから大量生産に適した太陽電池として注目され、多くの研究機関で盛んに研究がなされている。有機薄膜太陽電池は、電子ドナー材料と電子アクセプタ材料を混合した、所謂、バルクヘテロジャンクション構造を採用することにより、課題であった電荷分離効率を向上させている(例えば、特許文献1参照。)。近年では、光電変換効率は5〜6%台まで向上してきており、実用化に向けた研究がより活発化してきた分野と言える。しかしながら、今後の実用化に向けた有機光電変換素子においては、より高い効率で発電する有機光電変換素子の開発が望まれている。
また、有機薄膜太陽電池を、フレキシブル基板を用いた塗布プロセスで製造する場合、所謂、ロール・ツー・ロールプロセスによって従来のシリコーン系太陽電池では実現し得ない製造コストで、安価な太陽電池を製造することが可能である。しかしながら、実用化に向けては、安価で高性能なフレキシブル透明電極基板の開発が大きな課題のひとつになっている。
従来、透明電極は、ガラスや透明なプラスチックフィルム等の透明基材上に、インジウム−スズの複合酸化物(ITO)膜を、真空蒸着法やスパッタリング法で製膜したITO透明電極が主に使用されてきた。しかし、真空蒸着法やスパッタリング法を用いて形成した透明電極は生産性が悪く、製造コストが高いことや可撓性に劣るため、フレキシブル性が求められるデバイス用途には適用できないことが問題であった。
それに対し、ITO等の金属酸化物微粒子を塗布することによって透明電極を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、電極として機能するための十分な導電性を得ることができないという課題を有していた。金属酸化物微粒子の塗膜を焼成処理することにより抵抗値を下げることは可能であるが、プラスチックフィルムのような樹脂基材上に透明電極を形成する場合には適用できない。
また、生産性に優れた透明電極の作製方法として、π共役系高分子に代表される導電性高分子材料を適当な溶媒に溶解または分散した塗工液を用いて、湿式塗布や印刷法によって透明電極を形成する方法も提案されている(例えば。特許文献3参照。)。しかし、特許文献3で提案されている方法で得られる透明電極は、真空成膜法によるITO等の金属酸化物透明電極に較べると、導電性が低くかつ透明性にも劣るという課題を有していた。
更に、カーボンナノチューブ(CNT)や金属ナノワイヤのような導電性繊維を用いる技術も開示されており、導電性繊維の一部を透明樹脂膜で基板に固定し、かつ導電性繊維の一部を透明樹脂膜表面に突起させて電極を形成することが提案されている(例えば、特許文献4、5参照。)。しかし、このような構成の電極は、表面に導電性繊維が突起した部分にしか導電性がないため、面電極としての機能を有しておらず、加えて、表面に導電性繊維が突起しているため、電極表面の平滑性が求められる有機光電変換素子の用途には適用できないという課題を有していた。
米国特許第5,331,183号明細書 特開平6−80422号公報 特開平6−273964号公報 特表2006−519712号公報 米国特許出願公報第2007/0074316A1明細書
本発明の目的は、高い光電変換効率を有する有機光電変換素子を提供すると共に、透明電極と有機発電層部を塗布で製造することで製造コストを大幅に軽減できる有機光電変換素子の製造方法を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
1.透明基板上に、該透明基板に近い順から透明導電層を有する第1電極部と、有機発電層部と、第2電極部とを有する有機光電変換素子において、該第1電極部を構成する透明導電層は、導電性繊維及び透明導電性材料を含有することを特徴とする有機光電変換素子。
2.前記導電性繊維が、金属ナノワイヤであることを特徴とする前記1に記載の有機光電変換素子。
3.前記第1電極部が、金属ナノワイヤを含有する2層以上の層から構成されていることを特徴とする前記1または2に記載の有機光電変換素子。
4.前記金属ナノワイヤを含有する2層以上の層から構成され、前記第1電極部の透明基板に近い側の層の平均ヘイズ値をEH1、前記有機発電層部に近い側に位置する層の平均ヘイズ値をEH2とした時に、各ヘイズ値がEH1<EH2であることを特徴とする前記3に記載の有機光電変換素子。
5.前記第1電極部が、導電性繊維として金属ナノワイヤと共に、第1の透明樹脂成分と、第1の透明樹脂成分よりも屈折率の高い第2の透明樹脂成分とを含有し、かつ該第1の透明樹脂成分が透明基板に近い領域に多く配向し、該第2の透明樹脂成分と金属ナノワイヤとが有機発電層部に近い領域に多く配向する構成であることを特徴とする前記1から4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
6.前記第2の透明樹脂成分が、透明導電性ポリマーであることを特徴とする前記5に記載の有機光電変換素子。
7.前記第1電極部が、導電性繊維として金属ナノワイヤと共に、第1の透明樹脂成分と、第1の透明樹脂成分よりも屈折率の高い透明無機成分とを含有し、かつ該第1の透明樹脂成分が透明基板に近い領域に多く配向し、該透明無機成分と金属ナノワイヤとが有機発電層部に近い領域に多く配向する構成であることを特徴とする前記1から4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
8.前記透明無機成分が、透明導電性金属酸化物であることを特徴とする前記7に記載の有機光電変換素子。
9.前記第1の透明樹脂成分の存在領域に、微粒子が共存することを特徴とする前記5から8のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
10.前記第2電極部の構成材料が、金属化合物であることを特徴とする前記1から9のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
11.前記1から10のいずれか1項に記載の有機光電変換素子を製造する有機光電変換素子の製造方法であって、導電性繊維及び透明導電性材料を含む透明導電層を離型性基板上に形成した後、透明基板上に該透明導電層を転写することにより第1電極部を形成することを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。
12.前記5から10のいずれか1項に記載の有機光電変換素子を製造する有機光電変換素子の製造方法であって、第1の透明樹脂成分を含む層Aを透明基板上に形成した後、該第1の透明樹脂成分を含む層A上に、離型性基板上に形成した導電性繊維及び第2の透明樹脂成分を含む層Bまたは導電性繊維及び透明無機成分を含有する層Cを転写することにより第1電極部を形成することを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。
本発明により、高い光電変換効率を有する有機光電変換素子を提供すると共に、透明電極と有機発電層部を塗布で製造することで製造コストを大幅に軽減できる有機光電変換素子の製造方法を提供することができた。
本発明に係る金属ナノワイヤが2層にまたがって存在している第1電極部の一例を示す構造模式図である。 本発明に係る金属ナノワイヤが単一層に存在している第1電極部の一例を示す構造模式図である。 バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池の構造の一例を示す断面図である。 タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池の構造の一例を示す断面図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明者等は、塗布プロセスで形成し得る透明導電膜、およびそれを用いた有機光電変換素子の効率向上の課題に関して鋭意検討を行った結果、透明基板上に、該透明基板に近い順から透明導電層を有する第1電極部と、有機発電層部と、第2電極部とを有する有機光電変換素子において、該第1電極部を構成する透明導電層は、導電性繊維及び透明導電性材料を含有することを特徴とする有機光電変換素子により、高い光電変換効率を有する有機光電変換素子を実現でき、さらには透明電極と有機発電層部を塗布で製造することで製造コストを大幅に軽減することができる有機光電変換素子の製造方法を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
本発明で規定する構成を採ることにより、本願発明の目的効果が得られる理由については、本発明者らは以下のように推測している。
有機光電変素子においては、透明電極としてITO(Indium Tin Oxide:スズ添加酸化インジウム)を用いることが多いが、ITO表面のテクスチャーを制御することにより透明電極のヘイズ値を変化させることができるが、ヘイズ値を高めるためにテクスチャー構造を粗くすると、ITO表面粗さが大きくなり、発電層などからなる有機発電層部の膜厚は数百nm厚程度と非常に薄いために、短絡しやすいのが実情である。
すなわち、本発明で規定するヘイズ値を有する表面がより平滑な透明導電層を適用することで、透明基板、電極、発電層などの有機発電層部、それぞれの膜界面での散乱が抑制でき、更には、第1電極部中の有機発電層部(発電層)に近い側に金属ナノワイヤを含有させ、ヘイズが高く、光散乱しやすい層を設けることで、入射光の光路長が長くなり、しいては発電層に到達する光散乱量が増えて、光電変換効率が向上するものと考えられる。
以下、これらについて詳細に説明する。
本発明の有機光電変換素子は、透明基材上に該透明基材から近い順から、透光性を有する第1電極部、有機発電層部、第2電極部を有することを特徴とする。
本発明における有機発電層部とは、有機発電層に加えて、ホール輸送性、電子輸送性、ホールブロック性及び電子ブロック性を有す各種機能層も、有機発電層と併用する場合には、有機発電層部とする。
本発明において、透明導電層を有する第1電極部とは、透明基板上に設けられた光透過性を備えた導電性繊維及び透明導電性材料を含有する透明導電層を有し、該導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂も含めて第1電極部を構成する。なお、透明基板上にあらかじめ設けられる易接着層や帯電防止層、バリア層などの機能層は透明基板の一部とし、本発明に係る第1電極部には包含されない。
本発明において、第2電極部とは、有機発電層部上に形成される導電材料を含有する層であり、導電材料のみから構成される層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用する場合には、その樹脂も含めて第2電極部とする。
本発明の有機光電変換素子においては、第1電極部が金属ナノワイヤを含有する2層以上の層から構成されている場合、第1電極部を構成する金属ナノワイヤを含有する2層以上の層のうち、透明基板に近い側の層の平均ヘイズ値をEH1、有機発電層部に近い側に位置する層の平均ヘイズ値をEH2とした時に、各ヘイズ値がEH1<EH2であることが好ましい。
具体的には、第1電極部を構成する金属ナノワイヤを含有する2層以上の層を1/2の膜厚位置で分割したとき、透明基材に近い側の1/2の膜厚領域における平均ヘイズ値をEH1、有機発電層部に近い側の1/2の膜厚領域における平均ヘイズ値をEH2とした時、EH1<EH2となっていることが好ましい。これらのヘイズ値は、例えば、斜め切削によって面を出し、それぞれの領域でランダムに50点のヘイズ値を測定し、その平均値を求めた。
EH1の平均ヘイズ値としては、1.0以上、15以下であることが好ましく、EH2の平均ヘイズ値としては、3.0以上、50以下であることが好ましい。また、EH2−EH1としては、4.0以上、40以下であることが好ましい。
これらのヘイズ値の測定は、例えば、ASTM−D1003−52や、スガ試験機(株)製のヘイズメーターHGM−2Bを用いて測定することができる。
〔透明基材〕
本発明に係る透明電極に用いられる透明基材としては、高い光透過性を有していれば特に制限はない。例えば、基材としての硬度に優れ、またその表面への導電層の形成のし易さ等の点で、ガラス基板、樹脂基板、樹脂フィルムなどが好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から、透明樹脂フィルムを用いることが好ましい。
本発明において、透明基材として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには、特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚み等については、公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも、透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
本発明に用いられる透明基材には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。また、透明基材にはバリアコート層が予め形成されていてもよいし、透光性の第1電極部を設けるのとは反対側にはハードコート層が予め形成されていてもよい。
〔第1電極部〕
本発明に係る透明導電層を有する第1電極部は、有機光電変換素子においては陽極となる。
図1は、本発明に係る金属ナノワイヤが2層にまたがって存在している第1電極部の一例を示す構造模式図である。
本発明に係る第1電極部4の一例としては、透明基材5上に導電性繊維として、例えば、金属ナノワイヤ1は、透明導電層A及び第1の透明樹脂3から構成される層にまたがって存在し、透明導電層Aは、少なくとも金属ナノワイヤ1と第2の透明樹脂成分あるいは透明無機成分である透明導電性材料2とから構成されている。
図1に示した一例では、透明導電層Aは、金属ナノワイヤ1によって形成された3次元的なメッシュ構造(導電ネットワーク構造)の電極表面側の隙間に透明導電性材料2が存在する。金属ナノワイヤ1は透明導電性材料2と共に電極の表面を構成すると同時に、透明導電性材料2の補助電極として機能することができる。また、金属ナノワイヤ1の3次元的なメッシュ構造の透明基材5側の隙間から透明基材5までの間には第1の透明樹脂3が存在し、一部の金属ナノワイヤ1を含有して透明基材5に固定化している。
図2は、本発明に係る金属ナノワイヤが単一層に存在している第1電極部の一例を示す構造模式図である。
図2に記載の構成においては、金属ナノワイヤ1は透明導電層Aにのみ存在し、金属ナノワイヤ1によって形成された3次元的なメッシュ構造を完全に包含するように、透明導電性材料2が存在する。金属ナノワイヤ1は、導電性材料2と共に電極の表面を構成すると同時に、導電性材料2の補助電極として機能することができる。また、透明導電層Aと透明基材5までの間には、第1の透明樹脂3が存在し、金属ナノワイヤ1を含有する透明導電層Aを透明基材5に固定化している。
本発明の有機光電変換素子においては、第1電極部4は、全光線透過率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。全光透過率は、分光光度計等を用いた公知の測定方法に従って測定することができる。また、本発明に係る第1電極部の電気抵抗値としては、表面抵抗率として50Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることがより好ましく、3Ω/□以下であることが特に好ましい。50Ω/□を越えると受光面積の広い有機光電変換素子では光電変換効率が劣る場合がある。上記表面抵抗率は、例えば、JIS K 7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)などに準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
本発明に係る第1電極部4の厚みには特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一般的に10μm以下であることが好ましく、厚みが薄くなるほど透明性や柔軟性が向上するためより好ましい。また、金属ナノワイヤ1と透明導電性材料2とから構成されている透明導電層Aの厚みとしては、100nm以上、10μm以下であることが好ましく、1.0μm以上、5.0μm以下がより好ましい。第1の透明樹脂3の厚みとしては、30nm以上、1.0μm以下であることが好ましく、100nm以上、700nm以下であることがより好ましい。
〔金属ナノワイヤ〕
本発明の有機光電変換素子においては、第1電極部が導電性繊維を含有することを特徴とし、導電性繊維としては、金属でコーティングした有機繊維や無機繊維、導電性金属酸化物繊維、金属ナノワイヤ、炭素繊維、カーボンナノチューブ等を用いることができるが、金属ナノワイヤが特に好ましい。
一般に、金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする線状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとはnmサイズの直径を有する線状構造体を意味する。
本発明に係る金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、また、適度な光散乱性を発現するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤの平均直径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
本発明に係る金属ナノワイヤの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)及び鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。また、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むことも好ましい。本発明に係る金属ナノワイヤが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤの表面と内部で金属組成が異なっていてもよいし、金属ナノワイヤ全体が同一の金属組成を有していてもよい。
本発明において金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、Agナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、Auナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、Cuナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、Coナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した、Adv.Mater.及びChem.Mater.で報告されたAgナノワイヤの製造方法は、水系で簡便にAgナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤの製造方法として好ましく適用することができる。
本発明においては、金属ナノワイヤが互いに接触し合うことにより3次元的な導電ネットワークを形成し、高い導電性を発現するとともに、金属ナノワイヤが存在しない導電ネットワークの窓部を光が透過することが可能となり、さらに、金属ナノワイヤの散乱効果によって、有機発電層部からの発電を効率的に行うことが可能となる。第1電極部において金属ナノワイヤを有機発電層部に近い側に設置すれば、この散乱効果がより有効に利用できるのでより好ましい実施形態である。
(第1電極部における導電性繊維(金属ナノワイヤ)以外の構成因子について)
本発明においては、第1電極部に導電性繊維、特に、金属ナノワイヤを含有させることで、金属ナノワイヤの光を散乱させる効果に加えて、金属ナノワイヤが高い導電性を有しているので導電性を劣化させることなく他の比較的低屈折率の樹脂等を併用することが可能となり、これによって第1電極部の屈折率を発電層部よりも低く抑えることが可能となって、基材、第1電極部、発電層部の各界面の反射を抑制し、発電層部に有効に光を到達させることができる。この効果を有効に発現させるためには、第1電極部の平均の屈折率が有機発電層部の平均の屈折率よりも低いことが好ましい。
本発明に係る第1電極部では、導電性繊維、特に、金属ナノワイヤを含有するが、金属ナノワイヤを保持するために何らかの透明樹脂や透明無機材料などと併用することが好ましく、前述の屈折率の関係を満足するように材料を適宜選択すればよい。この様な構成材料としては、特に限定はないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ブチラール系樹脂等を単独あるいは複数併用して用いることができる。また、UV硬化樹脂であっても良い。
さらに、前述のように、好ましい実施形態としては、第1電極部を半分の膜厚で分割したとき、透明基材に近い側の1/2領域における平均ヘイズ値をEH1、有機発電層部に近い側の1/2領域における平均ヘイズ値をEH2とした時、EH1<EH2となっていることが好ましい。こうすることで、より効果的に入射光の散乱により光路長を伸ばすことでき、本発明の金属ナノワイヤの散乱効果が最大限に発揮できるようになる。
第1電極部のヘイズ値は、金属ナノワイヤの含有量や直径、後術の導電性金属酸化物の含有量や粒子径などによって変化させることができる。
本発明の有機光電変換素子において、好ましい第1の態様としては、第1電極部が、導電性繊維として金属ナノワイヤと共に、第1の透明樹脂成分と、第1の透明樹脂成分よりも屈折率の高い第2の透明樹脂成分とを含有し、かつ該第1の透明樹脂成分が透明基板に近い領域に多く配向し、該第2の透明樹脂成分と金属ナノワイヤとが有機発電層部に近い領域に多く配向する構成である。
この時、第2の透明樹脂成分が、透明導電性ポリマーであることが更に好ましい。
また、好ましい第2の態様としては、第1電極部が、導電性繊維として金属ナノワイヤと共に、第1の透明樹脂成分と、第1の透明樹脂成分よりも屈折率の高い透明無機成分とを含有し、かつ該第1の透明樹脂成分が透明基板に近い領域に多く配向し、該透明無機成分と金属ナノワイヤとが有機発電層部に近い領域に多く配向する構成である。この時、透明無機成分が、透明導電性金属酸化物であることが好ましい。
上記のように、本発明においては、第2の透明樹脂成分としては導電性ポリマー、また、透明無機成分として透明導電性金属酸化物であることが、本発明のより好ましい実施形態である。導電性ポリマーあるいは透明導電性金属酸化物を用いることにより、金属ナノワイヤの存在しない窓部の微小領域にも通電することが可能となり完全な面電極として機能させることが可能となる。このように完全な面電極として作用させるためには、導電材料単独での面抵抗が1010Ω/□よりも小さいことが必要で、10Ω/□以下であることがより好ましい。
こうした、導電性ポリマーとしては、例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる化合物等を挙ることができる。
また、透明導電性金属酸化物としては、ZrO、CeO、ZnO、TiO、SnO、Al、In、SiO、MgO、BaO、MoO、V等の金属酸化物微粒子やこれらの複合酸化物微粒子や異種原子をドーピングした複合金属酸化物微粒子、あるいはこれらの金属酸化物ゾルを挙げることができ、中でも、さらに、導電性や透明性の点から、錫や亜鉛をドープした酸化インジウム(ITO、IZO)、アルミニウムやガリウムをドープした酸化亜鉛(AZO、GZO)、フッ素やアンチモンをドープした酸化錫(FTO、ATO)等の微粒子やゾルを好ましく用いることができる。これらは単独で用いても良いが、他の樹脂成分と併用しても良い。
また、本発明においては、第1の透明樹脂成分の存在領域に、微粒子が共存することが好ましい。
本発明においては、第1の透明樹脂成分と共に微粒子を存在させることにより、第1電極部と透明基材の界面での光取り込みを向上させることが可能となり、本発明のより好ましい実施形態である。
本発明に適用可能な微粒子の平均粒子径は0.05から5μmであることが好ましく、0.05から2μmであることがより好ましい。0.05μm未満では光を散乱、屈折させる効果が小さく、5μmよりも大きいと平滑性が問題となる。本発明でいう微粒子の平均粒子径は、例えば、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。また、透過型電子顕微鏡による粒子像撮影を少なくとも100粒子以上に対して行い、この像をImage−Pro(メディアサイバネティックス社製)等の画像解析ソフトを用いて統計的処理を行うことによっても求めることが可能である。本発明でいう微粒子の平均粒子径は、上記透過型電子顕微鏡により測定した値を用いた。
粒子の屈折率は、1.1から2.0であることが好ましく、1.3から1.7であることがより好ましい。この範囲であれば光の後方散乱する成分が少なく、透過率の低下を押さえながら光取り込み効率を向上できる。こうした微粒子としては架橋アクリル系粒子、架橋スチレン系微粒子、シリカ系微粒子、メラミン/ホルムアルデヒド縮合物系微粒子、あるいは、こうした材料の複合微粒子などをあげることができる。こうした微粒子は単独で用いても良いし、複数併用しても良い。
(第1電極部の形成方法)
第1電極部の形成方法は、特に制限はないが、すべての添加剤を塗布液系で調製すれば、いわゆるロールtoロールプロセスが使用できるようになり、真空プロセスを用いる場合よりも簡単な設備で高速で連続的な生産が可能となりより好ましい。
本発明の有機光電変換素子の製造方法において、透明基板上に単一層からなる透明導電層を形成する場合には、導電性繊維及び透明導電性材料を含む透明導電層を離型性基板上に形成した後、透明基板上に該透明導電層を転写することにより第1電極部を形成することを特徴とする。
一方、本発明の有機光電変換素子の製造方法において、透明基板上に2層以上から構成される透明導電層を形成する場合には、第1の透明樹脂成分を含む層Aを透明基板上に形成した後、該第1の透明樹脂成分を含む層A上に、離型性基板上に形成した導電性繊維及び第2の透明樹脂成分を含む層Bまたは導電性繊維及び透明無機成分を含有する層Cを転写することにより第1電極部を形成することを特徴とする。
すなわち、平滑な離型性基材の離型面上に、導電性繊維、好ましくは金属ナノワイヤと第2の透明樹脂成分あるいは透明無機成分を含む層を形成した後、これらの層を透明基材上に転写することにより透明電極を形成する方法を用いる。
有機光電変換素子においては第1電極部の平坦性が求められるが、この方法を用いることにより、簡便にかつ安定に高平滑化することができる。さらに、この方法により金属ナノワイヤや比較的高屈折率な第2の透明樹脂成分あるいは透明無機成分を含む層を含む層を、有機発電層部に近い側に設置することが可能となる。
この転写プロセスを用いた透明電極の製造方法で用いられる離型性基板としては、樹脂基板や樹脂フィルムなどが好適に挙げられる。該樹脂には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの合成樹脂の単層あるいは複数層からなる基板やフィルムが好適に用いられる。更にガラス基板や金属基板を用いることもできる。また、離型性基板の表面(離型面)には、必要に応じてシリコーン樹脂やフッ素樹脂、ワックスなどの離型剤を塗布して表面処理を施してもよい。
離型性基板表面は、透明導電層を転写した後の表面の平滑性に影響を与えるため、高平滑であることが望ましく、具体的にはRy≦50nmであることが好ましく、Ry≦40nmであることがより好ましく、Ry≦30nmであることが更に好ましい。また、Ra≦5nmであることが好ましく、Ra≦3nmであることがより好ましく、Ra≦1nmであることが更に好ましい。
本発明において、透明導電層の表面の平滑性を表すRyとRaは、Ry=最大高さ(表面の山頂部と谷底部との高低差)とRa=算術平均粗さを意味し、JIS B601(1994)に規定される表面粗さに準ずる値である。
本発明に係る透明導電層を有する第1電極部は、透明導電層の表面の平滑性がRy≦50nmであることが好ましい。また、併せて透明導電層の表面の平滑性はRa≦5nmであることが好ましい。本発明において、RyやRaの測定には、市販の原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)を用いることができ、例えば、以下の方法で測定できる。
AFMとして、セイコーインスツルメンツ社製SPI3800Nプローブステーション及びSPA400多機能型ユニットを使用し、約1cm角の大きさに切り取った試料を、ピエゾスキャナー上の水平な試料台上にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際の試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位で捉える。ピエゾスキャナーは、XY150μm、Z5μmが走査可能なものを使用する。カンチレバーは、セイコーインスツルメンツ社製シリコンカンチレバーSI−DF20で、共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのものを用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。測定領域80×80μmを、走査周波数0.1Hzで測定する。
離型性基材の離型面上に、金属ナノワイヤと共に第2の透明樹脂成分あるいは透明無機成分を含む透明導電層を形成する方法に特に制限はないが、生産性の改善、平滑性や均一性などの電極品質の向上、環境負荷軽減の観点から、塗布法や印刷法などの液相成膜法を用いることが好ましい。塗布法としては、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法などを用いることができる。印刷法としては、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法などを用いることができる。なお、必要に応じて、密着性・塗工性を向上させるための予備処理として、離型性基材表面にコロナ放電処理、プラズマ放電処理などの物理的表面処理を施すことができる。
透明基材上に転写する際の接着剤としては、本発明に係る第1の透明樹脂成分がこの機能を発現すれば良く、例えば、前述の透明樹脂を利用すれば良く、接着剤は離型性基板側に設けても良いし、透明基材側に設けても良い。接着剤としては、可視領域で透明で転写能を有する材料であれば特に限定されない。透明であれば、硬化型樹脂でも良いし、熱可塑性樹脂でも良い。硬化型樹脂として、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などが挙げられるが、これらの硬化型樹脂のうちでは、樹脂硬化のための設備が簡易で作業性に優れることから、紫外線硬化型樹脂を用いることが好ましい。紫外線硬化型樹脂とは紫外線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂で、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられる。例えば、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂等が挙げられる。本発明では、バインダーとしてアクリル系、アクリルウレタン系の紫外線硬化型樹脂を主成分とすることが好ましい。
アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物にさらに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号に記載のものを用いることができる。例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
これらの中で、バインダーの主成分として、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレートから選択されるアクリル系の活性線硬化樹脂が好ましい。
これら紫外線硬化型樹脂の光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。上記光反応開始剤も光増感剤として使用できる。また、エポキシアクリレート系の光反応開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。紫外線硬化型樹脂組成物に用いられる光反応開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
透明導電層を形成した離型性基板と透明基材とを接着(貼合)し、紫外線等を照射して接着剤を硬化した後に離型性基板を剥離することにより、透明導電層を透明基材側に転写することができる。ここで、接着方法は特に限定されることなく、シートプレス、ロールプレス等により行うことができるが、ロールプレス機を用いて行うことが好ましい。ロールプレスは、ロールとロールの間に接着すべきフィルムを挟んで圧着し、ロールを回転させる方法である。ロールプレスは均一に圧力がかけられ、シートプレスよりも生産性が良く好適に用いることができる。
(パターニング)
本発明に係る第1電極部はパターニングされていても良い。パターニングの方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。例えば、離型面上にパターニングされた金属ナノワイヤや導電性ポリマーあるいは透明導電性金属酸化物を含む透明導電層を形成した後、透明基材上に転写することによってパターニングされた透明電極を形成することができ、具体的には、以下のような方法を好ましく用いることができる。
i)離型性基板上に印刷法を用いて金属ナノワイヤや第2の透明樹脂成分あるいは透明無機成分を含む透明導電層をパターン様に直接形成する方法
ii)離型性基板上に金属ナノワイヤや第2の透明樹脂成分あるいは透明無機成分を含む透明導電層を一様に形成した後、一般的なフォトリソプロセスを用いてパターニングする方法
iii)例えば紫外線硬化型樹脂を含む金属ナノワイヤや第2の透明樹脂成分あるいは透明無機成分を含む透明導電層を一様に形成した後、フォトリソプロセス様にパターニングする方法
iv)離型性基板上に予めフォトレジストで形成したネガパターン上に本発明に係る金属ナノワイヤや第2の透明樹脂成分あるいは透明無機成分を含む透明導電層を一様に形成し、リフトオフ法を用いてパターニングする方法。
上記のいずれの方法においても、離型性基板上でパターニングした金属ナノワイヤや第2の透明樹脂成分あるいは透明無機成分を含む透明導電層を透明基材上に転写することにより、パターニングされた透明電極を形成することができる。
(第2電極部)
本発明に係る第2電極部は、有機光電変換素子においては陰極となる。本発明に係る第2電極部は導電材料の単独層で合っても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用しても良い。第2電極部の導電材料としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
第2電極部の導電材として金属材料を用いれば、第2電極部側に到達した光は反射されて第1電極部側にもどる。第1電極部の金属ナノワイヤは光の一部を後方に散乱、あるいは反射するが、第2電極部の導電材料として金属材料を用いることで、この光が再利用可能となり、より光電変換効率が向上する。
(太陽電池)
図3は、本発明のバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子を適用した太陽電池の構造の一例を示す断面図である。
図3において、バルクヘテロ接合型の有機光電変換素子10は、透明基板11の一方面上に、透明電極12、バルクヘテロジャンクション層の光電変換部14及び対電極13が順次積層されている。
透明基板11は、順次積層された透明電極12、光電変換部14及び対電極13を保持する部材である。本実施形態では、透明基板11側から光電変換される光が入射するので、透明基板11は、この光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。透明基板11は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。
透明電極12は、本発明に係る第1電極部を用いる。
対電極13は、金属(例えば、金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素、あるいは透明電極12の材料等を用いることができるが、これに限らない。
なお、図3に示すバルクヘテロ接合型の有機光電変換素子10では、光電変換部14が透明電極12と対電極13とでサンドイッチされているが、一対の櫛歯状電極を光電変換部14の片面に配置するといった、バックコンタクト型の有機光電変換素子10が構成されてもよい。
光電変換部14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
本発明に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族化合物や共役系化合物が挙げられる。
縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
共役系化合物としては、例えば、ポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、テトラチアフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、フラーレン及びこれらの誘導体あるいは混合物を挙げることができる。
また、特にポリチオフェン及びそのオリゴマーのうち、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
さらに、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、等の有機分子錯体、C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン類、SWNT等のカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類等の色素等、さらにポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマーや特開2000−260999号に記載の有機・無機混成材料も用いることができる。
これらのπ共役系材料のうちでも、ペンタセン等の縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニン、金属ポルフィリンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
ペンタセン類の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986等に記載の置換アセン類及びその誘導体等が挙げられる。
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。そのような化合物としては、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物、及び米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、特開2007−224019号公報等に記載のポルフィリンプレカーサー等のような、プレカーサータイプの化合物(前駆体)が挙げられる。これらの中でも、後者のプリカーサータイプの方が好ましく用いることができる。これは、プリカーサータイプの方が、変換後に不溶化するため、バルクヘテロジャンクション層の上に正孔輸送層・電子輸送層・正孔ブロック層・電子ブロック層等を溶液プロセスで形成する際に、バルクヘテロジャンクション層が溶解してしまうことがなくなるため、前記の層を構成する材料とバルクヘテロジャンクション層を形成する材料とが混合することがなくなり、一層の効率向上・寿命向上を達成することができるためである。
本発明に用いられるn型半導体材料の例としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物、またはこれらの構造を骨格として含む、高分子化合物が挙げられる。
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。この中で、特に塗布法が好ましい。
そして、光電変換部14のバルクヘテロジャンクション層は、光電変換率を向上すべく、製造工程中において所定の温度でアニール処理され、微視的に一部結晶化されている。
図3において、透明基板11を介して透明電極12から入射された光は、光電変換部14のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、透明電極12と対電極13の仕事関数が異なる場合では透明電極12と対電極13との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。例えば、透明電極12の仕事関数が対電極13の仕事関数よりも大きい場合では、電子は、透明電極12へ、正孔は、対電極13へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、透明電極12と対電極13との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
なお、光電変換部14は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び前述のような半導体材料の化学反応を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。
また、上述のバルクヘテロ接合型の有機光電変換素子10は、順次に透明基板11上に積層された透明電極12、バルクヘテロジャンクション層の光電変換部14及び対電極13で構成されたが、これに限られず、例えば、透明電極12や対電極13と光電変換部14との間に正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、あるいは平滑化層等の他の層を有してバルクヘテロ接合型の有機光電変換素子10が構成されてもよい。これらの中でも、バルクヘテロジャンクション層と陽極(通常、透明電極12側)との中間には正孔輸送層または電子ブロック層を、陰極(通常、対電極13側)との中間には電子輸送層または正孔ブロック層を形成することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層(電子ブロック層)としては、スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、WO2006/019270号パンフレット等に記載のシアン化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
また電子輸送層(正孔ブロック層)としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
さらに、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層した、タンデム型の構成としてもよい。図4は、タンデム型のバルクヘテロ層を備えるバルクヘテロ接合型の有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。タンデム型構成の場合、透明基板11上に、順次透明電極12、第1光電変換部14を積層した後、電荷再結合層15を積層した後、第2光電変換部16、次いで対電極13を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。第2光電変換部16は、第1光電変換部14の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。また、電荷再結合層15の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等が好ましい。
また、作製した有機光電変換素子10が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、アルミまたはガラスでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上10を接着剤で貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)を直接堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例1
《有機光電変換素子の作製》
〔有機光電変換素子STC−1の作製〕
(金属ナノワイヤの調製)
本実施例では、金属ナノワイヤとして銀ナノワイヤを用いた。銀ナノワイヤは、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、平均直径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別かつ水洗処理した後、エタノール中に再分散して銀ナノワイヤ(AgNW)分散液(銀ナノワイヤ含有量5質量%)を調製した。
(第1電極部TC−1の作製)
離型性基材として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記)フィルムを用いた。該PETフィルム表面にコロナ放電処理を施した後、銀ナノワイヤ分散液を銀ナノワイヤの目付け量が80mg/mとなるようにアプリケータを用いて塗布し乾燥して、銀ナノワイヤネットワーク構造の第1の透明樹脂成分を形成した。
さらに、第2の透明樹脂成分として、導電性ポリマーであるPEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)/PSS(ポリスチレンスルホン酸)(Baytron PH510、H.C.Starck社製)を、乾燥膜厚が100nmとなるよう上記銀ナノワイヤネットワーク構造にオーバーコートし乾燥した後、80℃で3時間熱処理した。これを転写用AgNW含有フィルムとする。
次いで、バリア層と易接着層を有する二軸延伸PETフィルム(全光透過率90%)上に第1の透明樹脂成分として、下記UV硬化透明樹脂液1UAを5μmとなるように塗布した後、上記の転写用AgNW含有フィルムと貼合した。続いて、紫外線を照射して第1の透明樹脂成分を十分に硬化させた後、離型性基板であるPETフィルムを剥離することによって転写用AgNW含有フィルム上に形成した層をPETフィルムに転写し、本発明の第1電極部TC−1を作製した。
〈UV硬化透明樹脂液1UA〉
SP−1(旭電化社製) 3質量部
EP−1 20質量部
OXT221(ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、東亞合成社製) 40.4質量部
OXT212(3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、東亞合成社製) 25質量部
OXT101(3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、東亞合成社製) 3質量部
プロピレンカーボネート 3質量部
トリイソプロパノールアミン 0.1質量部
X−22−4272(信越シリコーン社製) 0.5質量部
(有機光電変換素子の作製)
第1電極部TC−1上に、導電性高分子であるPEDOT/PSS(Baytron P4083、H.C.Starck社製)をTC−130nmの膜厚でスピンコートした後、120℃で大気中10分間加熱乾燥した。
これ以降は、上記導電性高分子層を有する第1電極部TC−1をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。
まず、窒素雰囲気下で上記第1電極部TC−1を120℃で3分間加熱処理した。次に、クロロベンゼンにP3HT(リーケメタル社製;Mn=45000、レジオレギュラータイプ、高分子p型半導体材料)1.0質量%、下記PCBM(Mw=911、低分子n型半導体材料)を1.0質量%溶解した液を調製し、0.45μmのフィルターでろ過しながら500rpmで60秒、ついで2200rpmで1秒間のスピンコートを行い、室温で30分放置後、120℃で30分加熱した。
次に、上記一連の有機発電層部を成膜した第1電極部TC−1を真空蒸着装置内に設置した。2mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下にまでに真空蒸着機内を減圧した後、蒸着速度2nm/秒で、フッ化リチウムを5nm、Alを80nm蒸着し、2mm角のサイズの有機光電変換素子STC−1を得た。得られた有機光電変換素子STC−1は、アノード電極及びカソード電極の外部取り出し端子が形成できるように端部を除きカソード電極の周囲に接着剤を塗り、ポリエチレンテレフタレートを基材とした可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させた。
〔有機光電変換素子STC−2の作製〕
(第1電極部TC−2の作製)
上記第1電極部TC−1の作製において、PEDOT/PSSに代えてスルホン酸系ドーパントを含有する導電性ポリアニリンの分散液ORMECON D1033(ドイツ オルメコン社製)を用いた以外は同様にして、透過性の第1電極部TC−2を作製した。
〔有機光電変換素子の作製〕
上記有機光電変換素子STC−1の作製において、第1電極部である第1電極部TC−1を第1電極部TC−2に変更した以外は同様にして、有機光電変換素子STC−2を作製した。
〔有機光電変換素子STC−3の作製〕
(第1電極部TC−3の作製)
上記第1電極部TC−1の作製において、PEDOT/PSSに代えて下記透明性無機成分含有液B−1を用いて、その乾燥膜厚を200nmとした以外は同様にして、透光性の第1電極部TC−3を作製した。
〈透明性無機成分含有液B−1〉
SbドープSnO微粒子((株)石原産業製SN100D、固形分30%) 160g
化合物(UL−1) 0.2g
変性水性ポリエステルA(固形分18%、下記参照) 30g
水で1000mlに仕上げる。
〈変性水性ポリエステルAの合成〉
重縮合用反応容器に、テレフタル酸ジメチル35.4質量部、イソフタル酸ジメチル33.63質量部、5−スルホ−イソフタル酸ジメチルナトリウム塩17.92質量部、エチレングリコール62質量部、酢酸カルシウム一水塩0.065質量部、酢酸マンガン四水塩0.022質量部を投入し、窒素気流下において、170〜220℃でメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った後、リン酸トリメチル0.04質量部、重縮合触媒とし三酸化アンチモン0.04質量部及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸6.8質量部を加え、220〜235℃の反応温度で、ほぼ理論量の水を留去しエステル化を行った。その後、さらに反応系内を約1時間かけて減圧、昇温し、最終的に280℃、133Pa以下で約1時間重縮合を行い、変性水性ポリエステルAの前駆体を得た。前駆体の固有粘度は0.33であった。
攪拌翼、環流冷却管、温度計を付した2Lの三つ口フラスコに、純水850mlを入れ、攪拌翼を回転させながら、150gの上記前駆体を徐々に添加した。室温でこのまま30分間攪拌した後、1.5時間かけて内温が98℃になるように加熱し、この温度で3時間加熱溶解した。加熱終了後、1時間かけて室温まで冷却し、一夜放置して、固形分濃度が15質量%の溶液を調製した。
攪拌翼、環流冷却管、温度計、滴下ロートを付した3Lの四つ口フラスコに、上記前駆体溶液1900mlを入れ、攪拌翼を回転させながら、内温度を80℃まで加熱した。この中に、過硫酸アンモニウムの24%水溶液を6.52ml加え、単量体混合液(メタクリル酸グリシジル28.5g、アクリル酸エチル21.4g、メタクリル酸メチル21.4g)を30分間かけて滴下し、さらに3時間反応を続けた。その後、30℃以下まで冷却し、濾過して、固形分濃度が18質量%の変性水性ポリエステルAの溶液を調製した(ポリエステル成分/アクリル成分=80/20)。
(有機光電変換素子STC−3の作製)
上記有機光電変換素子STC−1の作製において、第1電極部である第1電極部TC−1を第1電極部TC−3に変更した以外は同様にして、有機光電変換素子STC−3を作製した。
〔有機光電変換素子STC−4の作製〕
(第1電極部TC−4の作製)
上記第1電極部TC−1の作製において、PEDOT/PSSに代えて下記透明性無機成分含有液B−2を用いて、その乾燥膜厚を200nmとした以外は同様にして、透光性の第1電極部TC−4を作製した。
〈透明性無機成分含有液B−2の調製〉
SnOゾル((株)多木化学社製セラメースS−8、固形分8%)
160g
化合物(UL−1) 0.2g
変性ポリエステルA(固形分18%) 30g
水で1000mlに仕上げる。
(有機光電変換素子の作製)
上記有機光電変換素子STC−1の作製において、第1電極部である第1電極部TC−1を第1電極部TC−4に変更した以外は同様にして、有機光電変換素子STC−4を作製した。
〔有機光電変換素子STC−5の作製〕
(第1電極部TC−5の作製)
上記第1電極部TC−1の作製において、PEDOT/PSSに代えて、純水にMX150(綜研化学社製架橋PMMA)を3.0質量%、PEDOT/PSSを固形分として1.2質量%となるように調液して、その乾燥膜厚を175nmとした以外は同様にして透光性の第1電極部TC−5を作製した。
(有機光電変換素子の作製)
上記有機光電変換素子STC−1の作製において、第1電極部である第1電極部TC−1を第1電極部TC−5に変更した以外は同様にして、有機光電変換素子STC−5を作製した。
〔有機光電変換素子STC−6の作製〕
(第1電極部TC−6の作製)
上記第1電極部TC−1の作製において、PEDOT/PSSに代えて、純水にMX150(綜研化学社製架橋PMMA)を3.0質量%、PEDOT/PSSを固形分として1.2質量%となるように調液して、その乾燥膜厚を450nmとした以外は同様にして、透光性の第1電極部TC−6を作製した。
(有機光電変換素子の作製)
上記有機光電変換素子STC−1の作製において、第1電極部である第1電極部TC−1を第1電極部TC−6に変更した以外は同様にして、有機光電変換素子STC−6を作製した。
〔有機光電変換素子STC−7の作製〕
(第1電極部TC−7の作製)
前記電極TC−1の作製と同様にして、転写用AgNW含有フィルムを作製した。
次いで、バリア層と易接着層を有する二軸延伸PETフィルム(全光透過率90%)上に第1の透明樹脂成分1UBとして、下記UV硬化透明樹脂液1UBを5μmとなるように塗布した後、上記の転写用AgNW含有フィルムと貼合した。続いて、紫外線を照射して第1の透明樹脂成分を十分に硬化させた後、離型性基板であるPETフィルムを剥離することによって転写用AgNW含有フィルム上に形成した層をPETフィルムに転写し、本発明の第1電極部TC−7を作製した。
〈UV硬化透明樹脂液1UB〉
SP−1 3質量部
EP−1 20質量部
MX150(架橋PMMA) 5質量部
OXT221(ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、東亞合成社製) 40.4質量部
OXT212(3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、東亞合成社製) 25質量部
OXT101(3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、東亞合成社製) 3質量部
プロピレンカーボネート 3質量部
トリイソプロパノールアミン 0.1質量部
X−22−4272(信越シリコーン社製) 0.5質量部
(有機光電変換素子の作製)
上記有機光電変換素子STC−1の作製において、第1電極部である第1電極部TC−1を第1電極部TC−7に変更した以外は同様にして、有機光電変換素子STC−7を作製した。
〔有機光電変換素子STC−8の作製〕
(第1電極部TC−8の作製)
バリア層を有するPETフィルム(全光透過率90%)上に、ITOを平均膜厚が150nmとなる条件で蒸着し、第1電極部TC−8を作製した。ヘイズ値を測定したところ12%であった。
(有機光電変換素子の作製)
上記有機光電変換素子STC−1の作製において、第1電極部である第1電極部TC−1を第1電極部TC−8に変更した以外は同様にして、有機光電変換素子STC−8を作製した。
〔有機光電変換素子STC−9の作製〕
(第1電極部TC−9の作製)
バリア層を有するPETフィルム(全光透過率90%)上に、ITOを平均膜厚が200nmとなる条件で蒸着し、表面を研磨してヘイズ値が6%になるようにして第1電極部TC−9を作製した。
(有機光電変換素子の作製)
上記有機光電変換素子STC−1の作製において、第1電極部である第1電極部TC−1を第1電極部TC−9に変更した以外は同様にして、有機光電変換素子STC−9を作製した。
《第1電極部及び有機光電変換素子の評価》
上記作製した各第1電極部及び有機光電変換素子について、下記の各評価及び測定を行った。
〔屈折率の測定〕
各第1電極部の作製に用いた第1の透明樹脂成分、第2の透明樹脂成分、透明無機成分の屈折率を、下記の方法に従って測定した。
PETフィルム上に各成分の単独膜を形成して、J.A.ウーラム社製分光エリプソメータVASEを用いて入射角45〜75°を5°おきに、波長245〜1000nmを1.6nmおきにエリプソメトリパラメータψ(プサイ)、Δ(デルタ)を計測した。得られたデータをJ.Aウーラム社製の解析ソフトウエアを用いて解析し、屈折率を求めた。なお、屈折率は550nmでの値を用いた。
〔ヘイズ値の測定〕
上記作製した第1電極部TC−1〜9について、スガ試験機(株)製のヘイズメーターHGM−2Bを用いて第1電極部の平均ヘイズ値EH1、EH2を求めた。なお、平均ヘイズ値EH1、EH2は、透明導電層を斜め切削によって面出しを行って、膜厚の中心となる部分で深さ方向に平均ヘイズ値EH1、EH2を求めた。
〔全線透過率の測定〕
作製した各有機光電変換素子の全線透過率を、JIS K 7361−1:1997に準拠して、スガ試験機(株)製のヘイズメーターHGM−2Bを用いて測定した。
〔有機光電変換素子の光電変換効率の測定〕
ガラス製の封止キャップとUV硬化樹脂を用いて封止を行った各有機光電変換素子に、ソーラシミュレーター(AM1.5G)の光を100mW/cmの強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、光電変換効率を求めた。
以上により得られた各結果を、表1に示す。
表1に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなる第1電極部を用いた有機光電変換素子は、比較例に対し、高い光電変換効率を有していることが分かる。また、第1の透明樹脂成分と、それよりも屈折率の高い第2の透明樹脂成分とを含有し、かつ、第1の透明樹脂成分が透明基材に近い側に、該第2の透明樹脂成分と金属ナノワイヤとが有機発電層部に近い側にそれぞれ多く含まれるように構成されている有機光電変換素子が、更に好ましく本発明の効果を発現していることが分かる。
実施例2
《p型半導体材料》
p型半導体材料として、下記テトラベンゾポルフィリン誘導体を用いた。
《有機光電変換素子STC−21〜29の作製及び評価》
実施例1に記載の有機光電変換素子STC−1〜9の作製において、P3HT(リーケメタル社製;Mn=45000、レジオレギュラータイプ、高分子p型半導体材料)の1.0質量%に代えて、上記BP−1の1.2質量%を用いた以外は同様にして、有機光電変換素子STC−21〜29を作製した。
次いで、上記作製した有機光電変換素子STC−21〜29について、実施例1に記載の方法と同様の評価を行った結果、本発明の有機光電変換素子においては、表1に記載したのと同様の効果が得られることを確認した。
1 金属ナノワイヤ
2 透明導電材料(第2の透明樹脂成分あるいは透明無機成分)
3 第1の透明樹脂成分
4 第1電極部
A 透明導電層
10 バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子
11 透明基板
12 透明電極
13 対電極(第2電極部)
14、16 光電変換部
15 電荷再結合層

Claims (10)

  1. 透明基板上に、該透明基板に近い順から透明導電層を有する第1電極部と、有機発電層部と、第2電極部とを有する有機光電変換素子において、該第1電極部を構成する透明導電層は、導電性繊維及び透明導電性材料を含有し、
    前記導電性繊維が、金属ナノワイヤであり、
    前記第1電極部が、金属ナノワイヤを含有する2層以上の層から構成されていることを特徴とする有機光電変換素子。
  2. 前記金属ナノワイヤを含有する2層以上の層から構成され、前記第1電極部の透明基板に近い側の層の平均ヘイズ値をEH1、前記有機発電層部に近い側に位置する層の平均ヘイズ値をEH2とした時に、各ヘイズ値がEH1<EH2であることを特徴とする請求項に記載の有機光電変換素子。
  3. 前記第1電極部が、導電性繊維として金属ナノワイヤと共に、第1の透明樹脂成分と、第1の透明樹脂成分よりも屈折率の高い第2の透明樹脂成分とを含有し、かつ該第1の透明樹脂成分が透明基板に近い領域に多く配向し、該第2の透明樹脂成分と金属ナノワイヤとが有機発電層部に近い領域に多く配向する構成であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機光電変換素子。
  4. 前記第2の透明樹脂成分が、透明導電性ポリマーであることを特徴とする請求項に記載の有機光電変換素子。
  5. 前記第1電極部が、導電性繊維として金属ナノワイヤと共に、第1の透明樹脂成分と、第1の透明樹脂成分よりも屈折率の高い透明無機成分とを含有し、かつ該第1の透明樹脂成分が透明基板に近い領域に多く配向し、該透明無機成分と金属ナノワイヤとが有機発電層部に近い領域に多く配向する構成であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機光電変換素子。
  6. 前記透明無機成分が、透明導電性金属酸化物であることを特徴とする請求項に記載の有機光電変換素子。
  7. 前記第1の透明樹脂成分の存在領域に、微粒子が共存することを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
  8. 前記第2電極部の構成材料が、金属化合物であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
  9. 請求項1からのいずれか1項に記載の有機光電変換素子を製造する有機光電変換素子の製造方法であって、導電性繊維及び透明導電性材料を含む透明導電層を離型性基板上に形成した後、透明基板上に該透明導電層を転写することにより第1電極部を形成することを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。
  10. 請求項からのいずれか1項に記載の有機光電変換素子を製造する有機光電変換素子の製造方法であって、第1の透明樹脂成分を含む層Aを透明基板上に形成した後、該第1の透明樹脂成分を含む層A上に、離型性基板上に形成した導電性繊維及び第2の透明樹脂成分を含む層Bまたは導電性繊維及び透明無機成分を含有する層Cを転写することにより第1電極部を形成することを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。
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