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JP5293144B2 - 車両用操舵装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ステアリングホイールと舵取り機構との機械的な結合を無くしたステア・バイ・ワイヤシステムなどの車両用操舵装置に関する。
近年では、車両用操舵装置として、ステアリングホイールと舵取り機構との機械的な結合を無くし、ステアリングホイールの操作角をセンサによって検出するとともに、そのセンサの出力に応じて制御される操舵用アクチュエータの駆動力を舵取り機構に伝達するようにしたステア・バイ・ワイヤシステムが提案されている。このようなステア・バイ・ワイヤシステムでは、ステアリングホイールの操作角に対する舵取り車輪の転舵角の比(転舵角比)を自由に定めることができる。
このようなステア・バイ・ワイヤシステムでは、ステアリングホイールに操作反力を付与するための反力アクチュエータが備えられる。この反力アクチュエータは、ステアリングホイールの操作角および車速に応じて制御される。これにより、ステアリングホイールと舵取り機構とが機械的に結合された従来型の車両用操舵装置と同様な操作反力がステアリングホイールに付与されるようになっている。このようにして、舵取り機構側に加わる外力をステアリングホイールに帰還するバイラテラルサーボシステムが構成されている。
もっとも、ステアリングホイールの操作角に応じて発生するよう制御される反力アクチュエータによる反力は、車輪と路面との摩擦などにより生じる上記従来型の車両用操舵装置における操作反力と異なる場合が生じる。この場合には運転者に違和感を与えることになる。
そこで、従来より、実ヨーレートまたはその微分値などに基づき車両の横方向の挙動変化に応じて上記摩擦に対応する操作反力を求める車両用操舵装置がある(例えば特許文献1を参照)。また、タイヤグリップ状況が変化することによる上記摩擦の変化に対応して、規範ヨーレートと実ヨーレートとの偏差が大きいほど操作反力が大きくなるよう制御する車両用操舵装置がある(例えば特許文献2を参照)。
特開2003−11838号公報 特開2006−264392号公報
もっとも上記特許文献1および特許文献2に記載されているような構成、すなわちヨーレートなどの車両挙動に応じて操作反力の大きさを制御する構成では、路面から舵取り機構側に加わる力を正確にステアリングホイールに帰還する(再現する)ことができないという問題点がある。
この点、舵取り機構を駆動するモータに流される電流(以下「転舵電流」という)は、路面からの上記外力に対応するので、この転舵電流に応じて操作反力の大きさを制御すれば、路面状況に応じた反力を発生させることができるはずである。しかし、この転舵電流はノイズ成分や振動成分など路面からの外力以外の成分を多く含むので、常に転舵電流に応じて操作反力の大きさを制御すれば逆に操舵フィーリングが悪化してしまう。
そこで、本発明は、操舵フィーリングを良好に保ちつつ、路面から舵取り機構側に加わる外力を路面状況に応じて反映させた反力制御を行うことができる車両用操舵装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、運転者により操作される操作部材の操作に対する反力を発生させる車両用操舵装置であって、
車両のヨーレートを検出するヨーレート検出手段と、
車両のヨーレート目標値を算出する目標ヨーレート算出手段と、
車両の転舵角を変化させる操舵用アクチュエータと、
前記操作部材の操作量に基づいて前記操舵用アクチュエータを駆動するための電流目標値を算出し、算出された電流目標値に基づいて前記操舵用アクチュエータに電流を流す操舵駆動制御手段と、
前記反力を発生させる反力アクチュエータと、
前記操舵用アクチュエータに流される電流または前記電流目標値に基づいて、前記反力アクチュエータを駆動するためのトルク目標値を算出し、当該トルク目標値に基づいて前記反力アクチュエータを駆動する反力駆動制御手段と、
を備え、
前記反力駆動制御手段は、前記トルク目標値に相当する目標トルク値をTとし、前記操作量に比例する成分、前記ヨーレート検出値に比例する成分、および前記ヨーレート検出値の微分値に比例する成分のうちのいずれか1つ以上を含む車両の挙動を示す車両挙動成分に対応するトルク値をTaとし、前記操舵用アクチュエータに流される電流または前記電流目標値に対応するトルク値をTbとし、前記トルク目標値の算出に寄与する割合を定めるゲインをG(ただしGは−1以上1以下の実数)とし、当該ゲインGを、前記目標ヨーレート算出手段により算出された前記ヨーレート目標値から、前記ヨーレート検出手段により検出された前記ヨーレート検出値を差し引いた差がゼロより大きくなる時に正となりかつ前記差が大きくなるほど大きくなるように、また前記差がゼロより小さくなる時に負となりかつ前記差が小さくなるほど小さくなるように定めるとき、T=(1−G)・Ta+(1+G)・Tbとなる前記目標トルク値Tを求めることを特徴とする。
上記第1の発明によれば、目標ヨーレート算出手段により算出されたヨーレート目標値と、ヨーレートの検出値との差が大きくなるほど、トルク目標値の算出に寄与する操舵用アクチュエータに流される電流成分または電流目標値成分の割合が大きくなるように、上記差に関連付けてトルク目標値が算出されるので、上記差が大きくなるほど(ヨーレート目標値がヨーレート検出値より大きくなるほど)車両がアンダーステア状態となることから、この状態のときに上記電流に応じて操舵フィーリングを悪化させることなく運転者に対して低μ路であることを正確に認識させる反力トルクを与えることができる。
また上記第1の発明によれば、上記差が負であってかつ小さくなるほどトルク目標値の算出に寄与する車両挙動成分の割合が大きくなるようにトルク目標値が算出されるので、ヨーレート検出値がヨーレート目標値より大きくなるほど車両がオーバーステア状態となることから、この状態のときに運転者にカウンタ操作を促すガイダンストルクとしての反力トルクを与えることができる。
さらに上記第1の発明によれば、上記のような反力トルクを簡易な構成で運転者に与えることができるとともに、例えば乾燥路面上で各種パラメータの設定を行えば(チューニングすれば)、低μ路におけるチューニングを新たに最初から行う必要がなく、また低μ路用に新たな反力トルク成分を設定する必要もないので、低μ路におけるチューニング工数を大幅に削減することができる。
以下では、本発明の一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用操舵装置の構成を説明するための図である。この図1には、車両用操舵装置としてステア・バイ・ワイヤシステムの構成が示されている。この車両用操舵装置は、運転者が操向のために操作する操作部材としてのステアリングホイール1と、ステアリングホイール1の回転操作に応じて駆動される操舵用アクチュエータ2と、操舵用アクチュエータ2の駆動力を、舵取り車輪としての前方左右車輪4に伝達するステアリングギヤ3とを備えている。
ステアリングホイール1と、操舵用アクチュエータ2等を含む舵取り機構5との間には、ステアリングホイール1に加えられた操作トルクを舵取り機構5に伝達する機械的な結合はなく、ステアリングホイール1の操作量(操作角または操作トルク)に応じて操舵用アクチュエータ2が駆動制御されることによって、車輪4が転舵される。
操舵用アクチュエータ2は、例えばブラシレスモータ等の電動モータにより構成されている。ステアリングギヤ3は、操舵用アクチュエータ2の出力シャフトの回転運動をステアリングロッド7の直線運動(車両左右方向の直線運動)に変換する運動変換機構を有する。このステアリングロッド7の動きがタイロッド8およびナックルアーム9を介して車輪4に伝達され、車輪4の転舵角が変化する。なおステアリングギヤ3は、操舵用アクチュエータ2の動きを転舵角が変化するように車輪4に伝達することができるものであれば、その他の周知の構成であってもよい。また操舵用アクチュエータ2が駆動されていない状態では、車輪4がセルフアライニングトルクにより直進操舵位置に復帰するようにホイールアラインメントが設定されている。
ステアリングホイール1は、車体側に回転可能に支持された回転シャフト10に連結されている。この回転シャフト10には、これと一体の出力シャフトを有するブラシレスモータ等の電動モータからなる反力アクチュエータ19が設けられている。この反力アクチュエータ19により回転シャフト10に反力トルクThが加えられる。なお、この反力アクチュエータ19は、ステアリングホイール1に作用する反力トルクを発生するものであれば、その他の周知の構成であってもよい。
この回転シャフト10には、ステアリングホイール1の操作角(回転角)δhを検出する角度センサ11が設けられている。また、本車両用操舵装置には車両の舵角(舵取り機構5の転舵角)δを検出する舵角センサ13が設けられている。この舵角センサ13は、当該舵角に対応するステアリングロッド7の作動量を検出するポテンショメータを含む。さらに本車両用操舵装置には、車速Vを検出する車速センサ14と、車両のヨーレートγを検出するヨーレートセンサ15とが設けられている。
これらの角度センサ11、舵角センサ13、車速センサ14、およびヨーレートセンサ15は、マイクロコンピュータにより構成される制御装置20にそれぞれ接続されている。制御装置20は、典型的には複数のMOSFETからなるブリッジ回路とPWM変調器とを含む駆動回路22,23を介して、操舵用アクチュエータ2および反力アクチュエータ19を制御する。
図2は、本車両用操舵装置に備えられる上記制御装置の機能的な構成を示すブロック図である。図2に示されるようにこの制御装置は、ソフトウェア処理によって実現される機能として、目標トルク設定部30と、反力制御部34と、目標ヨーレート設定部40と、目標転舵角設定部50と、転舵制御部54と、減算器42,52とを備える。
目標転舵角設定部50は、角度センサ11により検出されたステアリングホイール1の操作角δhに応じた目標転舵角δ* を設定する。なおこの目標転舵角δ* は、操作角δhおよび車速Vに応じて(例えば所定の伝達関数Kδ(V)を使用することにより)設定されてもよい。
減算器52は、目標転舵角設定部50により設定された目標転舵角δ* と、舵角センサ13により検出された舵角δとの偏差Δδを求め、当該偏差Δδを転舵制御部54に与える。
転舵制御部54は、上記偏差Δδ(=δ* −δ)がゼロになるような目標転舵電流Im* を算出し、操舵用アクチュエータ2にこの目標転舵電流Im* が流れるよう算出された転舵指令値Dsを駆動回路22に与える。すなわち、モータである操舵用アクチュエータ2に流れる電流は図示されない電流センサにより検出され、転舵制御部54は、この検出電流値と目標転舵電流Im* との偏差に基づく比例積分演算などの演算を行い上記転舵指令値Dsを算出し駆動回路22に与える。駆動回路22は、この転舵指令値Dsに応じて操舵用アクチュエータ2を駆動する。このことにより、舵取り機構5の転舵角δが目標転舵角δ* に近づけられる。
目標ヨーレート設定部40は、操作角δhおよび車速Vに基づき、車両挙動の目標値としての目標ヨーレートγ* を求める。具体的には目標ヨーレート設定部40は、操作角δhおよび車速Vと、当該車両に固有の定数であるホイールベース、ステアリングギヤ比、および車速の関数であるスタビリティファクタとに基づき、車両の走行安定性が高められるヨーレートである目標ヨーレートγ* を決定する。なお、この目標ヨーレート設定部42は、図示されない加速度センサから出力される車両の前後方向および左右方向の加速度の検出値を使用して目標ヨーレートγ* を決定してもよい。このような目標ヨーレートの算出方法(算出式)については多くの例が周知であるので、ここでは詳しい説明を省略する。
目標トルク設定部30は、角度センサ11により検出される操作角δhと、車速センサ14により検出される車速Vと、ヨーレートセンサ15により検出される車両のヨーレートγと、上記目標ヨーレート設定部40により求められる目標ヨーレートγ* と、転舵制御部54により算出される目標転舵電流Im* とに基づき、反力アクチュエータ19により発生させるべき目標トルクTh* を設定する。この目標トルクTh* は、従来の場合とは異なり、走行状況や路面状況に応じて運転者に対して車両挙動や路面状況などを適切に知らせることができるよう適宜な値が算出される。この算出方法については詳しく後述する。なお、車両のヨーレートγを検出できる構成であれば、例えばヨーレートセンサ15を省略して横Gセンサなどの検出値に基づき車両のヨーレートγを算出する構成であってもよい。
反力制御部34は、目標トルク設定部30により設定された目標トルクTh* に対応する目標となるモータ電流を算出し、反力アクチュエータ19にこの目標モータ電流が流れるよう算出された反力指令値Drを駆動回路22に与える。すなわち、モータである反力アクチュエータ19に流れる電流は図示されない電流センサにより検出され、反力制御部34は、この検出電流値と目標モータ電流との偏差に基づく比例積分演算などの演算を行い上記反力指令値Drを算出し駆動回路23に与える。駆動回路23は、この反力指令値Drに応じて反力アクチュエータ19を駆動する。このことにより、反力アクチュエータ19により回転シャフト10に与えられる反力トルクThが目標トルクTh* に近づけられる。
こうして反力アクチュエータ19は、操作角δhおよび車速Vに応じた反力トルクThをステアリングホイール1に付与するように動作する。これにより、舵取り機構5側に加わる外力をステアリングホイール1に帰還するバイラテラルサーボシステムが構成される。次に、図3を参照して、目標トルク設定部30の構成を詳しく説明する。
図3は、目標トルク設定部の詳細な構成を示すブロック図である。図3に示されるように、目標トルク設定部30は、操作角比例成分算出部61と、ヨーレート比例成分算出部62と、ヨーレート微分成分算出部63と、転舵電流比例成分算出部64と、微分器65と、加算器66,67と、車両挙動ゲイン設定部68と、転舵電流ゲイン設定部69と、ゲイン設定部70とを備える。
操作角比例成分算出部61は、角度センサ11により検出される操作角δhと、車速センサ14により検出される車速Vとに基づき、目標トルクTh* において操作角に比例するトルク成分である操作角比例成分Tθを算出する。具体的には、車速の関数として予め定められる比例係数K1(V)を操作角δhに乗算することにより、操作角比例成分Tθを算出する。なお、この比例係数K1(V)は、典型的には車速が大きくなるほど大きくなるように定められる。
ヨーレート比例成分算出部62は、ヨーレートセンサ15により検出される車両のヨーレートγに対して予め定められる比例係数K2を乗算することにより、目標トルクTh* においてヨーレートに比例するトルク成分であるヨーレート比例成分Tγを算出する。
微分器65は、ヨーレートセンサ15により検出されるヨーレートγを微分することによりヨーレート微分値γ’を算出する。ヨーレート微分成分算出部63は、微分器65により算出されたヨーレート微分値γ’に対して予め定められる比例係数K3を乗算することにより、目標トルクTh* においてヨーレートの微分値に比例するトルク成分であるヨーレート微分成分Tγ’を算出する。
転舵電流比例成分算出部64は、転舵制御部54により算出される目標転舵電流Im* に対して予め定められる比例係数K4を乗算することにより、目標トルクTh* において転舵電流に比例するトルク成分である転舵電流成分Tbを算出する。なお、転舵電流比例成分算出部64は、上記目標転舵電流Im* に代えて、操舵用アクチュエータ2に設けられる図示されない電流センサにより検出される(実際にモータに流される)転舵電流を使用してもよい。
加算器66は、操作角比例成分算出部61により算出された操作角比例成分Tθと、ヨーレート比例成分算出部62により算出されたヨーレート比例成分Tγと、ヨーレート微分成分算出部63により算出されたヨーレート微分成分Tγ’とを加算し、目標トルクTh* において車両の挙動に対応するトルク成分である車両挙動成分Taとして、車両挙動ゲイン設定部68に与える。
車両挙動ゲイン設定部68は、加算器66から与えられる車両挙動成分Taに対して(1−G)を乗算した値を算出し、加算器67に与える。このGは、後述するゲイン設定部70により設定されるゲインである。また、転舵電流ゲイン設定部69は、このゲインGを使用し、転舵電流比例成分算出部64により算出される転舵電流成分Tbに対して(1+G)を乗算した値を算出し、加算器67に与える。加算器67は、車両挙動ゲイン設定部68から与えられた値と、転舵電流ゲイン設定部69から与えられた値とを加算し、目標トルクTh* として出力する。すなわち、これらにより、目標トルクTh* は次式(1)のように算出される。ただしGは−1≦G≦1を満たす実数である。
Th* =(1−G)・Ta+(1+G)・Tb …(1)
ゲイン設定部70は、減算器42により算出される偏差Δγ(=γ* −γ)に基づき、上式(1)に使用されるゲインGを算出する。このGは、図4に示されるように、−1≦G≦1の範囲内にあって、Δγがゼロより大きくなるほどGが正の値であってかつ大きくなるように、またΔγがゼロより小さくなるほどGが負の値であってかつ小さくなるように定められる。すなわち、ΔγがゼロであるときにはGがゼロとなって、目標トルクTh* を算出する式(1)における車両挙動成分Taと転舵電流成分Tbとのそれぞれの寄与割合が等しくなり、Δγがゼロより大きくなるほど転舵電流成分Tbの寄与割合が大きくなり(同時に車両挙動成分Taの寄与割合が小さくなり)、またΔγがゼロより小さくなるほど車両挙動成分Taの寄与割合が大きくなる。
このようにゲインGを設定することにより、走行状況や路面状況に応じて運転者に対して車両挙動や路面状況などを適切に知らせることができる目標トルクTh* を算出することができる。以下、詳しく説明する。一般的にヨーレート偏差Δγが大きい時には車両挙動が目標とする安定した車両挙動から大きくずれている。具体的には、Δγ(=γ* −γ)が正である場合には車両がアンダーステア状態であり、Δγが負である場合にはオーバーステア状態である。
まず、車両がアンダーステア状態である場合、上記のようにΔγが大きくなるほどゲインGが大きくなるよう設定されるので、路面状況を運転者に正確に認識させることができる転舵電流成分Tbの割合が大きくなり、車両挙動成分Taの割合が小さくなる。その結果、目標トルクTh* は、運転者に路面状況を正確に認識させることができるものになるが、その反面で前述したように転舵電流に多く含まれるノイズ成分や振動成分などが運転者にトルクとして与えられることになる。しかし、車両がアンダーステア状態であるということは路面の摩擦μが小さい場合であり、そのことから転舵電流値も小さくなっており、かつ上式(1)より目標トルクTh* も全体として小さくなっている。このことから、上記ノイズ成分や振動成分などの影響が小さく抑えられることにより操舵フィーリングが悪化することがなく、かつ運転者は反力が小さいことから路面摩擦μが小さくなっていることを実感することができる。
また、車両がオーバーステア状態である場合、上記のようにゲインGが小さくなるよう設定されるので、転舵電流成分Tbの割合が小さくなる。その結果、目標トルクTh* は運転者に路面状況を正確に認識させるものとはならないが、車両挙動成分Taの割合が大きくなるため、上式(1)より目標トルクTh* は全体として大きくなる。そのため、反力が大きくなって運転者はステアリングホイール1に対するカウンタ操作を促される。すなわち、目標トルクTh* は、運転者にカウンタ操作を促すガイダンストルクとして与えられることになる。したがって車両のスピンが防止され、車両の安定化が図られることになる。
以上のように、本実施形態の車両用操舵装置によれば、目標ヨーレート算出手段として機能する目標ヨーレート設定部40により算出されたヨーレート目標値γ* と、ヨーレート検出値γとの偏差Δγが大きくなるほど、目標トルクTh* の算出に寄与する操舵用アクチュエータ2に流される電流成分またはその目標値Im* 成分の割合が大きくなるように、偏差Δγに関連付けて設定されたゲインGに基づき、上式(1)によって目標トルクTh* が算出される。このことにより、車両がアンダーステア状態である場合には、操舵フィーリングを悪化させることなく運転者に対して低μ路であることを正確に認識させる反力トルクを与えることができる。
また、本車両用操舵装置は、車両がオーバーステア状態である場合には、上式(1)より車両挙動成分Taの割合が大きくなることから、運転者にカウンタ操作を促すガイダンストルクとしての反力トルクを与えることができる。
さらに、本車両用操舵装置は、乾燥路面上で各種パラメータ(例えば上記比例係数K1〜K4など)の設定を適宜に行えば(チューニングすれば)、低μ路におけるチューニングを新たに最初から行う必要がなく、また低μ路用に新たな反力トルク成分を設定する必要もないので、低μ路におけるチューニング工数を大幅に削減することができる。
なお、本発明は、上記一実施形態の場合以外の各種形態で実施することが可能である。たとえば、上記実施形態では操作角δhを用いているが、これに代えて操舵状態を表す変数、例えば図示されないトルクセンサにより検出される操作者による操作トルクを用い、この操作トルクに基づいて目標転舵角δ* や目標ヨーレートγ* を求める構成であってもよい。
また、上記実施形態では、ステア・バイ・ワイヤシステムを例に説明したが、本発明における同様な制御は、ステアリングホイールと舵取り車輪との間にギヤ装置を介挿し、操作角と転舵角との関係を可変とした可変ギヤ比型操舵装置に対しても適用することができる。なお、この構成ではステアリングホイールと舵取り車輪とが可変伝達比ユニットを介して両者間が機械的に結合されている。その他、本発明は種々の設計変更を施すことにより実施可能である。
本発明の一実施形態に係る車両用操舵装置の構成を、それに関連する車両構成と共に示す概略図である。 上記実施形態に係る車両用操舵装置に備えられる制御装置の機能的構成を示すブロック図である。 上記実施形態における目標トルク設定部の詳細な構成を示すブロック図である。 上記実施形態におけるヨーレート偏差ΔγとゲインGとの関係を示す図である。
符号の説明
1…ステアリングホイール、5…舵取り機構、10…回転シャフト、Th* …目標トルク、Im* …目標転舵電流、γ…実ヨーレート、γ* …目標ヨーレート、Δγ…ヨーレート偏差、δ…舵角、δh…操作角、V…車速、G…ゲイン

Claims (1)

  1. 運転者により操作される操作部材の操作に対する反力を発生させる車両用操舵装置であって、
    車両のヨーレートを検出するヨーレート検出手段と、
    車両のヨーレート目標値を算出する目標ヨーレート算出手段と、
    車両の転舵角を変化させる操舵用アクチュエータと、
    前記操作部材の操作量に基づいて前記操舵用アクチュエータを駆動するための電流目標値を算出し、算出された電流目標値に基づいて前記操舵用アクチュエータに電流を流す操舵駆動制御手段と、
    前記反力を発生させる反力アクチュエータと、
    前記操舵用アクチュエータに流される電流または前記電流目標値に基づいて、前記反力アクチュエータを駆動するためのトルク目標値を算出し、当該トルク目標値に基づいて前記反力アクチュエータを駆動する反力駆動制御手段と、
    を備え、
    前記反力駆動制御手段は、前記トルク目標値に相当する目標トルク値をTとし、前記操作量に比例する成分、前記ヨーレート検出値に比例する成分、および前記ヨーレート検出値の微分値に比例する成分のうちのいずれか1つ以上を含む車両の挙動を示す車両挙動成分に対応するトルク値をTaとし、前記操舵用アクチュエータに流される電流または前記電流目標値に対応するトルク値をTbとし、前記トルク目標値の算出に寄与する割合を定めるゲインをG(ただしGは−1以上1以下の実数)とし、当該ゲインGを、前記目標ヨーレート算出手段により算出された前記ヨーレート目標値から、前記ヨーレート検出手段により検出された前記ヨーレート検出値を差し引いた差がゼロより大きくなる時に正となりかつ前記差が大きくなるほど大きくなるように、また前記差がゼロより小さくなる時に負となりかつ前記差が小さくなるほど小さくなるように定めるとき、T=(1−G)・Ta+(1+G)・Tbとなる前記目標トルク値Tを求めることを特徴とする、車両用操舵装置。
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