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JP5288784B2 - ゴム組成物、加硫ゴム及びタイヤ - Google Patents

ゴム組成物、加硫ゴム及びタイヤ Download PDF

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JP5288784B2 JP2007322016A JP2007322016A JP5288784B2 JP 5288784 B2 JP5288784 B2 JP 5288784B2 JP 2007322016 A JP2007322016 A JP 2007322016A JP 2007322016 A JP2007322016 A JP 2007322016A JP 5288784 B2 JP5288784 B2 JP 5288784B2
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Description

本発明は、ゴム組成物、該ゴム組成物を加硫して得た加硫ゴム、及び該加硫ゴムを備えるタイヤに関し、特にタイヤの氷上性能を向上させることが可能なゴム組成物に関するものである。
スパイクタイヤが規制されて以来、氷雪路面上でのタイヤの制動性や駆動性(氷上性能)を向上させるため、特にタイヤのトレッド部について種々の検討がなされている。例えば、タイヤのトレッドゴム中に中空繊維を配合することにより、氷雪路面上の水を該中空繊維の中空部分で排除し、タイヤの氷上性能を向上させることが行われている。しかしながら、この場合、トレッドゴム成形時における圧力、ゴム流れ、温度等により、中空繊維は中空形状を保つことができず、タイヤの氷上性能が充分に得られない問題があった。
この問題に対して、特開平11−60770号公報(特許文献1)及び特開2001−2832号公報(特許文献2)では、発泡剤含有繊維を含むゴム組成物をトレッド部に用いたタイヤにおいて、トレッド部にミクロな排水溝を形成することで、タイヤの排水性を向上させ、氷上性能を向上させる技術が提案されている。
特開平11−60770号公報 特開2001−2832号公報
上記のように、従来の発泡剤含有繊維を含むゴム組成物をトレッド部に用いたタイヤは、タイヤの排水性を向上させて、氷上性能を向上させるものであり、精力的な研究開発により、一応の成果を上げている。しかしながら、スタッドレスタイヤの氷上性能を抜本的に向上させるには、従来知られている効果のレベルを上げるだけでは限界がある。
そこで、本発明の目的は、従来と全く異質な作用効果を有し、氷雪路面上の水を効率的に集め、タイヤの氷上性能を大幅に向上させることが可能なゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかるゴム組成物を加硫して得た加硫ゴム、及び該加硫ゴムをトレッド部に備えるタイヤを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、水との接触角が特定の範囲を有する樹脂からなる親水性繊維と、発泡剤とが配合されたゴム組成物をトレッド部に適用することで、該親水性繊維を構成していた樹脂により被覆された長尺状気泡がミクロな排水溝として形成されるため、製造されるタイヤが氷上性能に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明のゴム組成物は、水との接触角が90°以下の樹脂からなる親水性繊維と、発泡剤とを配合してなることを特徴とする。
本発明のゴム組成物において、前記親水性繊維は、融点又は軟化点が加硫最高温度未満である。れにより、ゴム組成物の加硫工程で、親水性繊維が確実に溶融又は軟化し、該親水性繊維を構成していた樹脂の内部に発泡剤からのガスが留まり易く、長尺状気泡を効率的に形成することができる。
本発明のゴム組成物においては、前記親水性繊維がアイオノマー、エチレン−ビニルアルコール共重合体及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種からなる。これにより、長尺状気泡の集水効果が高い。
本発明のゴム組成物は、前記親水性繊維の含有量が、ゴム成分100質量部に対し0.5〜50質量部であることが好ましい。この場合、長尺状気泡への集水を確実に向上させることができる。
本発明のゴム組成物において、前記親水性繊維は、平均径が1〜100μmであることが好ましく、平均長さが0.5〜20mmであることが好ましい。この場合、長尺状気泡がミクロな排水溝として確実に機能することができる。
また、本発明の加硫ゴムは、上記のゴム組成物を加硫して得られ、長尺状気泡を有することを特徴とする。ここで、本発明の加硫ゴムは、発泡率が3〜40%であることが好ましい。
更に、本発明のタイヤは、上記の加硫ゴムをトレッド部に用いたことを特徴とする。ここで、本発明のタイヤは、前記長尺状気泡をタイヤ周方向に配向することが好ましい。
本発明によれば、水との接触角が特定の範囲を有する樹脂からなる親水性繊維と、発泡剤とが配合された、タイヤの氷上性能を大幅に向上させることが可能なゴム組成物を提供することができる。また、かかるゴム組成物を加硫して得た、長尺状気泡を有する加硫ゴムと、該加硫ゴムをトレッド部に備えた、氷上性能に優れるタイヤとを提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のゴム組成物は、水との接触角が90°以下の樹脂からなる親水性繊維と、発泡剤とを配合してなることを特徴とする。一般に、溶融発泡することにより加硫ゴム中に長尺状気泡を形成させることを目的とする場合、ゴム組成物に配合する繊維には、原料としてポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂が使用されており、形成される長尺状気泡を疎水性の樹脂で被覆することになる。しかしながら、本発明のゴム組成物に配合する繊維は、原料として上記オレフィン系樹脂に代えて、水との接触角が90°以下の樹脂を用いており、親水性の樹脂により被覆された長尺状気泡をミクロな排水溝として形成することができる。このようにして得た加硫ゴムは、一般に疎水性を示すゴム成分と、親水性の樹脂で被覆された長尺状気泡とから構成されるため、氷雪路面上の水を親水性の樹脂で覆われた長尺状気泡に効率的に集め、ミクロな排水溝により確実に排水することができる。従って、本発明のゴム組成物をトレッド部に適用することで、タイヤの氷上性能を大幅に向上させることができる。
本発明のゴム組成物に用いる繊維は、親水性繊維であることを要する。本発明のゴム組成物に親水性繊維を配合することにより、長尺状気泡を親水性の樹脂で被覆することができる。ここで、親水性とは、繊維を構成する樹脂の水との接触角が90°以下であることを示す。なお、ゴム組成物中に繊維を配合することにより、ミクロな排水溝として機能する長尺状気泡が形成されるのであり、樹脂を直接配合するだけでは、形成されない。
本発明のゴム組成物において、上記親水性繊維を構成する樹脂は、水との接触角が90°以下であることを要し、30〜80°であることが好ましい。ここで、水との接触角とは、樹脂の固体表面に水を滴下すると、水の液滴が形成されるが、この液滴の接線と樹脂の固体表面とのなす角度である。水との接触角が90°を超える樹脂では、得られる繊維が親水性とはいえず、本発明の目的を達成することができない。
本発明のゴム組成物に用いる親水性繊維は、融点又は軟化点が、ゴム組成物の加硫時における該ゴム組成物が達する最高温度、即ち加硫最高温度未満である。発泡剤を含有するゴム組成物中に親水性繊維が配合されている場合、該親水性繊維は加硫中に溶融又は軟化し、一方、ゴムマトリクス中で加硫中に発泡剤から発生したガスは、加硫反応が進行したゴムマトリクスに比べ、親水性繊維を構成していた溶融又は軟化した樹脂の内部に留まる傾向がある。ここで、上記親水性繊維の融点又は軟化点が加硫最高温度未満であれば、ゴム組成物の加硫時に該親水性繊維が速やかに溶融又は軟化し、長尺状気泡を効率的に形成することができる。一方、上記親水性繊維の融点又は軟化点が加硫最高温度に近くなり過ぎると、加硫初期に速やかに親水性繊維が溶融(軟化を含む)せず、加硫終期に親水性繊維が溶融する。加硫終期では、発泡剤から発生したガスが加硫したゴムマトリクス中に分散乃至取り込まれてしまっており、溶融した親水性繊維内には十分な量のガスが保持されない。
上記親水性繊維の融点又は軟化点の上限は、以上の点を考慮して選択するのが好ましく、一般的には、ゴム組成物の加硫最高温度よりも、10℃以上低いことが好ましく、20℃以上低いことが更に好ましい。ゴム組成物の工業的な加硫温度は、一般的には最高で約190℃程度であるが、例えば、加硫最高温度が190℃に設定されている場合には、親水性繊維の融点又は軟化点としては、通常190℃以下の範囲で選択され、180℃以下が好ましく、170℃以下が更に好ましい。
上記親水性繊維を構成する樹脂は、アイオノマー、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリル樹脂から選択される少なくとも一種である。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
また、上記アイオノマーは、イオン性官能基及び/又はイオン化可能な基を有する構成単位からなるポリマーであって、ナトリウムや亜鉛等の金属のイオンと結合した構造を有する。ここで、イオン性官能基及びイオン化可能な基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エステル基、エーテル基、カルボニル基等が挙げられる。
また、上記親水性繊維を構成する樹脂は、デュロメータ硬さが50度以上であれば、該樹脂で覆われた長尺状気泡の引掻き効果が向上し、タイヤの氷上性能を更に向上させることができる。一方、デュロメータ硬さが50度未満では、親水性繊維を構成していた樹脂のゴムマトリクスに対する追従性が高いため、該樹脂のゴムマトリクスからの脱落を抑制し、タイヤの氷上性能を維持することができる。なお、デュロメータ硬さは、JIS K 7215「プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法」に準拠し、デュロメータD硬さを測定した値である。
本発明のゴム組成物において、上記親水性繊維の含有量は、ゴム成分100質量部に対し0.5〜50質量部であることが好ましく、0.5〜30質量部であることが更に好ましい。該親水性繊維の含有量が0.5質量部未満では、加硫ゴムに占める長尺状の空隙の体積比率が小さいため、氷上性能を十分に得られないおそれがあり、一方、50質量部を超えると、ゴム組成物中での親水性繊維の分散性が低下し、ゴム組成物の加工性が低下するおそれがある。
本発明のゴム組成物に用いる親水性繊維は、平均径が1〜100μmであることが好ましく、10〜100μmであることが更に好ましい。この場合、親水性繊維を構成していた樹脂で覆われる長尺状気泡がミクロな排水溝として効率的に機能することができる。また、親水性繊維の平均径が1μm未満では、樹脂を紡糸することができず、一方、100μmを超えると、親水性繊維の重量が増加し、ゴム組成物中の配合部数が高くなり過ぎるおそれがある。
本発明のゴム組成物に用いる親水性繊維は、平均長さが0.5〜20mmであることが好ましく、1〜10mmであることが更に好ましい。この場合、親水性繊維を構成していた樹脂で覆われる長尺状気泡がミクロな排水溝として効率的に機能することができる。また、親水性繊維の平均長さが0.5mm未満では、長尺状気泡が形成され難い。一方、親水性繊維の平均長さが20mmを超えると、親水性繊維の硬度が高くなり過ぎ、十分に混練りすることができず、また、トレッドのサイプが通常20mm程度であり、親水性繊維の平均長さが20mmを超えても、氷上性能の効果が得難い。
上記親水性繊維は、常法により製造することができ、該親水性繊維の製造方法としては、溶融紡糸法、ゲル紡糸法、溶液紡糸法等が挙げられる。例えば、溶融紡糸法では、押出機中で原料樹脂を加熱・溶融させ、次いで紡糸ノズルより押し出された繊維の束を紡糸筒内で引き伸ばしつつ空気流により冷却して固化させ、その後、油剤を付与して1本にまとめ、巻き取ることにより、親水性繊維を製造することができる。一方、溶液紡糸法では、原料樹脂を溶解したポリマー溶液を紡糸ノズルより押し出し、脱溶媒等を行うことにより繊維化し、親水性繊維を製造することができる。
本発明のゴム組成物に用いる発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、p,p'-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、p,p'-オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。これら発泡剤の中でも、製造加工性の観点から、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)が好ましく、特にアゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましい。これら発泡剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。また、該発泡剤の配合量は、特に限定されるものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲が好ましい。
また、上記発泡剤には、発泡助剤として尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛や亜鉛華等を併用することが好ましい。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。発泡助剤を併用することにより、発泡反応を促進して反応の完結度を高め、経時的に不要な劣化を抑制することができる。
なお、上記ゴム成分としては、特に制限はなく、天然ゴム(NR)の他、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル−ブタジエンゴム(NBR)等の合成ゴムを使用することができ、これらゴム成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
本発明のゴム組成物は、上記ゴム成分に、親水性繊維、発泡剤、発泡助剤と共に、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、カーボンブラック等の充填剤、軟化剤、ステアリン酸、老化防止剤、亜鉛華、加硫促進剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
次に、図を参照しながら本発明の加硫ゴムを詳細に説明する。図1は、本発明の加硫ゴムの一例の断面図である。本発明の加硫ゴムは、上記のゴム組成物を加硫することにより得られるが、図1に示す通り、本発明の加硫ゴム1は、長尺状気泡2を有し、該長尺状気泡2が被膜3で囲まれており、該長尺状気泡2を囲む被膜3が上記親水性繊維を構成していた樹脂からなることを特徴とする。ここで、親水性繊維を構成していた樹脂からなる被膜3により氷雪路面上の水を効率的に集め、ミクロな排水溝として作用する長尺状気泡2により排水することになる。
図1に示す長尺状気泡2は、一定方向に配向しているが、この長尺状気泡の配向を揃える手法としては、未加硫ゴム組成物中に分散している親水性繊維を一定方向に配列させればよく、例えば、流路断面積が出口に向かって低減する押出機を用いて、親水性繊維を含むゴム組成物を押し出す方法が挙げられる。
本発明の加硫ゴムの発泡率(Vs)は、3〜40%が好ましく、5〜35%が更に好ましい。発泡率が3%未満では、氷雪路面上の水を除去することができる長尺状気泡の体積が小さ過ぎ、排水性能が低下するおそれがあり、一方、40%を超えると、長尺状気泡の数が多過ぎ、タイヤの耐久性が低下する。なお、上記発泡率(Vs)は、長尺状気泡と、親水性繊維を構成していた樹脂の内部に留まらずに形成された気泡との合計の発泡率である。
上記発泡率(Vs)(%)は、下記式(I):
Vs = (ρ0/ρ1−1) × 100 ・・・(I)
[式中、ρ1は加硫ゴムの密度(g/cm3)、ρ0は加硫ゴムにおける固相部の密度(g/cm3)である]により算出できる。
次に、図を参照しながら本発明のタイヤを詳細に説明する。図2は、本発明のタイヤの一例の断面図である。図2に示すタイヤは、左右一対のビード部4及び一対のサイドウォール部5と、両サイドウォール部5に連なるトレッド部6とを有し、前記一対のビード部4間にトロイド状に延在して、これら各部4,5,6を補強するカーカス7と、該カーカス7のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置されたベルト8とを備える。ここで、本発明のタイヤは、トレッド部6に上述した加硫ゴムを適用することを特徴とする。本発明のタイヤは、上記加硫ゴムをトレッド部に備えることで、少なくとも接地部分に長尺状気泡が形成されており、優れた氷上性能を発揮することができる。
図2に示すタイヤのカーカス7は、一枚のカーカスプライから構成されており、また、上記ビード部4内に夫々埋設した一対のビードコア9間にトロイド状に延在する本体部と、各ビードコア9の周りでタイヤ幅方向の内側から外側に向けて半径方向外方に巻上げた折り返し部とからなるが、本発明のタイヤにおいて、カーカス7のプライ数及び構造は、これに限られるものではない。
また、図2に示すタイヤのベルト8は、二枚のベルト層から構成されており、各ベルト層は、通常、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びるコードのゴム引き層、好ましくは、スチールコードのゴム引き層からなり、更に、二枚のベルト層が、該ベルト層を構成するコードが互いにタイヤ赤道面を挟んで交差するように積層されてベルト8を構成している。なお、図中のベルト8は、二枚のベルト層からなるが、本発明のタイヤにおいて、ベルト8を構成するベルト層の枚数は、これに限られるものではない。
また、本発明のタイヤにおいては、上記ゴム組成物を用いて未加硫トレッドゴムを形成し、常法に従って、該未加硫トレッドゴムをトレッド部に備える生タイヤを形成し、該生タイヤを加硫することで、親水性繊維を構成していた樹脂で覆われた長尺状気泡をトレッド部に形成させることができる。
更に、本発明のタイヤは、排水性を向上させる観点から、上記長尺状気泡がタイヤ周方向に配向されていることが好ましい。この場合、上述の方法により得た、親水性繊維が一定方向に配列しているゴム組成物を用いて未加硫トレッドゴムを形成し、ゴム組成物中の親水性繊維の配向方向がタイヤ周方向と一致するように該未加硫トレッドゴムを配設すればよい。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(繊維の製造例)
表1に示す樹脂を用い、通常の溶融紡糸法に従って繊維を製造した。なお、該繊維の平均径、平均長さ及び接触角を下記の方法で測定した。結果を表1に示す。
(1)平均径及び平均長さ
得られた繊維を無作為に20箇所選択し、光学顕微鏡を用いて直径(μm)及び長さ(mm)を測定し、その平均値を求めた。
(2)接触角
24℃、55%RHの雰囲気下、平板の樹脂に約0.2μLの水滴を一滴滴下し、1分間放置した後、接触角計[協和界面科学(株)製、CA−X150]を用いて接触角の測定を行った。
Figure 0005288784
*1 ポリエチレン,日本ポリエチレン社製,「HY 442」.
*2 三井・デュポン ポリケミカル社製,「1557」.
*3 ポリビニルアルコール,(株)クラレ製,「クラロン K-II」.
*4 東洋紡(株)製,「ランシールF」.
*5 JIS K 7215に準拠し、デュロメータD硬さを測定した値である.
(実施例1、2、5及び、参考例3及び4、並びに比較例1〜2)
表2に示す配合処方に従い、配合した繊維が一定方向に配列したゴム組成物を調製した。該ゴム組成物を用いてトレッドゴムを作製し、ゴム組成物中の繊維がタイヤ周方向に配向するように、該トレッドゴムを配設して生タイヤを作製した。次に、得られた生タイヤを165℃で10分間の条件で加硫し、サイズ185/70R13の乗用車用ラジアルタイヤを作製した。なお、各ゴム組成物の加硫時における加硫最高温度は、いずれも165℃であった。
Figure 0005288784
*6 JSR(株)製,「BR01」,シス-1,4-ポリブタジエン.
*7 上記の方法で製造した繊維A〜D,使用した繊維の種類を表3に示す.
*8 旭カーボン(株)製,「カーボン N220」.
*9 日本シリカ工業(株)製,「ニプシル−VN3」.
*10 大内新興化学工業(株)製,「ノクラック6C」.
*11 ジベンゾチアジルジスルフィド.
*12 N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリル-スルフェンアミド.
*13 アゾジカルボンアミド.
*14 大塚化学(株)製,ベンゼンスルフィン酸亜鉛.
*15 尿素:ステアリン酸=85:15(質量比)の混合物.
得られたタイヤについて、トレッド部を形成する加硫ゴムの発泡率を上記式(I)により算出し、氷上性能を下記の方法で評価し、発泡形態を下記の方法で確認した。結果を表3に示す。
(3)氷上性能
得られたタイヤを装着した乗用車を、一般のアスファルト路上において200km走行させた後、氷上平坦路を走行させ、時速20km/hの時点でブレーキをかけてタイヤをロックさせ、停止状態になるまでの制動距離を測定した。比較例1のタイヤの制動距離の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、氷上での制動性に優れることを示す。
(4)発泡形態
得られたタイヤのトレッドセンター部から加硫ゴム片を切り取り、このサンプルを走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。いずれのタイヤについても、繊維を構成していた樹脂で覆われた長尺状気泡を確認できた。
Figure 0005288784
表3から明らかなように、本発明に従う親水性繊維を配合してなるゴム組成物をトレッド部に用いることで、タイヤの氷上性能を大幅に向上させることができる。
本発明の加硫ゴムの一例の断面図である。 本発明のタイヤの一例の断面図である。
符号の説明
1 加硫ゴム
2 長尺状気泡
3 被膜
4 ビード部
5 サイドウォール部
6 トレッド部
7 カーカス
8 ベルト
9 ビードコア

Claims (7)

  1. アイオノマー、エチレン−ビニルアルコール共重合体及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であって水との接触角が90°以下の樹脂からなる融点又は軟化点が加硫最高温度未満の親水性繊維と、発泡剤とを配合してなることを特徴とするゴム組成物。
  2. 前記親水性繊維の含有量が、ゴム成分100質量部に対し0.5〜50質量部であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記親水性繊維は、平均径が1〜100μmであり、平均長さが0.5〜20mmであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載のゴム組成物を加硫して得た、長尺状気泡を有することを特徴とする加硫ゴム。
  5. 発泡率が3〜40%であることを特徴とする請求項に記載の加硫ゴム。
  6. 請求項又はに記載の加硫ゴムをトレッド部に用いたタイヤ。
  7. 前記長尺状気泡をタイヤ周方向に配向したことを特徴とする請求項に記載のタイヤ。
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