JP5288427B2 - 固体電解コンデンサの製造方法及び固体電解コンデンサ - Google Patents
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すなわち、本出願人が別途特許出願したように、一定量の重合性モノマーと一定量の酸化剤を所定の溶媒と共に混合すると、この混合の過程で、モノマーと酸化剤が接触して重合も進行する、言い換えれば、モノマーと酸化剤の混合が進みながらも、2つのモノマーが重合して二量体を形成し、さらに三量体となり、さらなる重合が進行するという状況になる。そして、混合液中のモノマーの二量化が5%以上進行した時点で、この混合液をコンデンサ素子に含浸すると良好な特性が得られるとの知見に基づき、このような混合状態が得られる各種の条件、具体的には、酸化剤の溶媒に対する濃度、重合性モノマーと酸化剤の重量比、あるいは添加剤の効果について検討を行ったものである。以下、本発明について詳述する。
陽極箔を陰極箔及びセパレータと共に巻回してコンデンサ素子を形成する。一方、所定の容器に重合性モノマーと酸化剤と所定の溶媒とを入れて混合し、その直後に、コンデンサ素子をこの混合液に浸漬し、コンデンサ素子内で導電性ポリマーの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成する。そして、このコンデンサ素子を外装ケースに挿入し、固体電解コンデンサを完成する。
この場合、所定の溶媒に対する酸化剤の濃度を40〜55wt%とする、重合性モノマーと酸化剤の重量比を1:0.9〜1:2.2の範囲内とする、あるいは上記の混合液に所定の重合促進剤を添加するという処理の少なくともいずれかを行う。
酸化剤としては、ブタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸もしくはヨウ素酸の水溶液を用いることができる。
この場合、酸化剤の溶媒に対する濃度は40〜55wt%が好ましく、45〜53wt%がより好ましい。この範囲未満ではESRが上昇し、この範囲を超えると混合液の含浸性が低下して、静電容量等の初期特性が低下する。
本発明に用いられる重合性モノマーとしては、所定の酸化剤と混合することによって緩やかな重合反応を行って導電性ポリマーを形成するものが好ましく、以下に述べるEDTの他に、下記の構造式で表されるチオフェン誘導体を用いることができる。従って、急速に重合反応が進行するピロール等は好ましくない。
重合性モノマーとしてEDTを用いた場合、コンデンサ素子に含浸するEDTとしては、EDTモノマーを用いることができるが、EDTと揮発性溶媒とを1:0〜1:3の体積比で混合したモノマー溶液を用いることもできる。
前記揮発性溶媒としては、ペンタン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、アセトニトリル等の窒素化合物等を用いることができるが、なかでも、メタノール、エタノール、アセトン等が好ましい。
重合性モノマーと酸化剤(溶媒を含まず)の混合比は、重量比で1:0.9〜1:2.2の範囲が好適であり、1:1.3〜1:2.0の範囲がより好適である。この範囲外ではESRが上昇する。
その理由は、以下の通りであると考えられる。すなわち、モノマーに対する酸化剤の量が多過ぎると、相対的に含浸されるモノマーの量が低下するので、形成される導電性ポリマーの量が低下してESRが上昇する。一方、酸化剤の量が少なすぎると、モノマーを重合するのに必要な酸化剤が不足して、形成される導電性ポリマーの量が低下してESRが上昇する。
また、混合液に重合促進剤を添加すると、重合度が上がるためと考えられるが、コンデンサの特性が向上し、さらに、耐熱特性が向上する。なお、重合促進剤の添加量は、混合液中0.5〜3wt%であることが好ましい。
この重合促進剤としては、メチルアミン、エチルアミン等のモノアミン、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリアミン等のアミン類、硫酸第一鉄、ベンゾイル鉄等の鉄塩、N,N−ジメチルアニリン、テトラヒドロキノリン等を挙げることができるが、これらの中でもトリエチルアミン、メチルジエタノールアミンが好適である。
本発明に係る混合液をコンデンサ素子に含浸する方法としては、混合液にコンデンサ素子を浸漬する方法、混合液を吐出法等によってコンデンサ素子に注入する方法等を用いることができるが、工程的には浸漬法が簡便で好ましい。この場合、所定の容器に一定量のモノマーと一定量の酸化剤を所定の溶媒と共に注入し、その後に混合して、この容器にコンデンサ素子を浸漬して含浸する方法が、容器内では混合が良好に進行し、工程的に簡便であるためより好ましい。
浸漬法に用いる容器の形状は特に限定されないが、底面及び開口部の面積はコンデンサ素子の底面積の1.05〜1.35倍が望ましく、1.1〜1.25倍がより望ましい。この範囲未満ではコンデンサ素子を浸漬した際に、混合液の浸透状態が好ましくなく、この範囲を越えると混合液の振動、混合が良好に進行しないからである。
容器に注入する混合液の量は、モノマー、酸化剤の総量がコンデンサ素子の空隙容積(コンデンサ素子内の空間部の容積)の0.4倍以上であることが望ましく、0.6倍以上であることがより望ましい。この範囲未満では、混合液が不十分であり、十分な量のポリマーを形成することができないからである。
重合性モノマーと酸化剤を所定の溶媒と共に混合する方法としては、振動、撹拌、超音波等を用いることができるが、なかでも、工程的には振動を用いるのが簡便で好ましい。振動は横振動、縦振動、斜め振動、さらには円運動、楕円運動やこれらの混じった振動を用いることができ、これらの振動によって混合を促進させることができる。さらに、重合性モノマーと酸化剤を容器内に注入する工程においても振動を加えると、この工程でも混合が進行するので好適である。
また、振動する工程における温度は5〜35℃が好ましく、15〜30℃がより好ましい。5℃未満では混合液が良好に混合せず、35℃を越えると振動中に重合が進行して、良好な状態で混合液をコンデンサ素子に含浸することができないからである。
また、振動時間は1秒〜1分が好適であり、5〜15秒がより好適である。振動時間が短すぎると、混合が不十分なために良好な混合液が含浸されず、コンデンサの特性が低下し、振動時間が長すぎると、重合が進みすぎて混合液の粘度が上昇し、含浸性が低下するからである。
コンデンサ素子を混合液に浸漬する時間は、コンデンサ素子の大きさによって決まるが、φ5×2L程度のコンデンサ素子では5秒以上、φ8×4L程度のコンデンサ素子では10秒以上が望ましく、最低でも5秒間は浸漬することが必要である。なお、長時間浸漬しても特性上の弊害はない。
含浸する工程で減圧すると、含浸される混合液の量が増大し、コンデンサ素子内で形成される導電性ポリマーの量が増大することによるものと思われるが、ESR特性が向上するので好適である。
減圧する方法は、第一にコンデンサ素子を減圧下に保持した後に混合液に含浸する方法、第二にコンデンサ素子を混合液に含浸した状態で減圧する方法、第三にコンデンサ素子を混合液に含浸した後にコンデンサ素子を混合液から引き上げて減圧状態で保持する方法があるが、これらの中でも第三の方法が簡便で好ましい。
修復化成の化成液としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液を用いることができるが、なかでも、リン酸二水素アンモニウムを用いることが望ましい。また、浸漬時間は、5〜120分が望ましい。
上記のように、重合性モノマーと酸化剤の混合液をコンデンサ素子に含浸する場合に、酸化剤の溶媒に対する濃度を40〜55wt%とすることにより、重合性モノマーと酸化剤を所定の溶媒と混合した直後において、重合性モノマーと酸化剤の混合は進行しているが、重合はあまり進んでいないという状態が得られ、混合液をコンデンサ素子に含浸するのに最適な状態とすることができる。そのため、上記のような本発明の製造方法によれば、重合性モノマーと酸化剤と溶媒を混合した混合液を、含浸に最も適した状態でコンデンサ素子に含浸することができるので、良好な特性を有する固体電解コンデンサを得ることができる。
また、本発明の製造方法によれば、コンデンサ素子を混合液に浸漬するので、コンデンサ素子が大きくなっても、コンデンサ素子の外表面の全体から混合液を浸透させることができるので、均一な浸透が可能になる。
なお、本発明に係る実施例1〜実施例4は、重合性モノマーとしてEDT、酸化剤溶液としてパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を用い、実施例1及び実施例3は、所定の容器に、EDTと本発明の範囲内の濃度に調製したp−トルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を注入したものであり、実施例4は、さらに重合促進剤としてトリエチルアミンを添加したものである。また、実施例2は、所定の容器に、EDTと本発明の範囲外の濃度に調製したp−トルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、本発明の範囲内の重量比で注入したものである。また、実施例5〜実施例10は重合性モノマーとしてそれぞれ下記の構造式のものを用いてコンデンサ素子を形成したものである。
表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔に電極引き出し手段を接続し、両電極箔をセパレータを介して巻回して、素子形状が8φ×4Lのコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデンサ素子をリン酸二水素アンモニウム水溶液に40分間浸漬して、修復化成を行った。
一方、カップ状の容器に、EDTと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、その重量比が1:0.8となるように注入し、常温で横2mm、縦1.5mmの振動を10秒間与えた。その後、コンデンサ素子を上記混合液に10秒間浸漬し、100℃、1時間加熱して、コンデンサ素子内でPEDTの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成した。そして、このコンデンサ素子を有底筒状のアルミニウムケースに挿入し、開口部を絞り加工によってゴム封口してエージングを行い、固体電解コンデンサを形成した。なお、この固体電解コンデンサの定格電圧は4WV、定格容量は820μFである。
カップ状の容器に、EDTと35%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、その混合比が1:1.3となるように注入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
(実施例3)
カップ状の容器に、EDTと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、その混合比が1:1.3となるように注入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
(実施例4)
カップ状の容器に、EDTと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、その混合比が1:1.3となるように注入し、さらに重合促進剤としてトリエチルアミンを4.9g添加したものである。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
カップ状の容器に、EDTと35%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、その混合比が1:0.5となるように注入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔に電極引き出し手段を接続し、両電極箔をセパレータを介して巻回して、素子形状が8φ×4Lのコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデンサ素子をリン酸二水素アンモニウム水溶液に40分間浸漬して、修復化成を行った。
また、混合液として、ピロールと過硫酸アンモニウムを用い、これらをカップ状の容器に注入した後、振動を加えずに混合し、この混合液中に上記のコンデンサ素子を浸漬し、常温放置して、ポリピロールからなる固体電解質層を形成した。その後、コンデンサ素子の表面を樹脂で被覆した後、有底筒状のアルミニウムケースに挿入し、開口部を絞り加工によってゴム封口して、エージングを行い、固体電解コンデンサを形成した。
重合性モノマーとして下記の構造式のものを用い、カップ状の容器に、この重合性モノマーと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、その混合比が1:0.8となるように注入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
カップ状の容器に、実施例5と同様の重合性モノマーと35%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、その混合比が1:1.3となるように注入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
(実施例7)
カップ状の容器に、実施例5と同様の重合性モノマーと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、その混合比が1:1.3となるように注入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
実施例5〜7と同様の重合性モノマーを用い、カップ状の容器に、この重合性モノマーと35%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、その混合比が1:0.5となるように注入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
重合性モノマーとして下記の構造式のものを用い、カップ状の容器に、この重合性モノマーと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、その混合比が1:0.8となるように注入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
カップ状の容器に、実施例8と同様の重合性モノマーと35%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、その混合比が1:1.3となるように注入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
(実施例10)
カップ状の容器に、実施例8と同様の重合性モノマーと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、その混合比が1:1.3となるように注入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
実施例8〜10と同様の重合性モノマーを用い、カップ状の容器に、この重合性モノマーと35%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を、その混合比が1:0.5となるように注入した。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
Claims (7)
- 陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、緩やかな
重合反応を示す重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固体電解質
層を形成してなる固体電解コンデンサの製造方法において、
重合性モノマーと酸化剤を所定の溶媒と共に混合する際に、前記酸化剤の溶媒に対する
濃度を40〜55wt%とし、これらを混合した直後、当該混合液中の前記重合性モノマ
ーの二量化が5%以上進行した後に、前記コンデンサ素子にこの混合液を10秒以上含浸
して固体電解質層を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記重合性モノマーと酸化剤を所定の溶媒と共に混合する際に、トリエチルアミン及び
/又はメチルジエタノールからなる重合促進剤を添加したことを特徴とする請求項1に記
載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記コンデンサ素子に前記混合液を含浸する方法が、前記混合液にコンデンサ素子を浸
漬する方法であることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサの製造方
法。
- 前記コンデンサ素子に前記混合液を含浸する工程において、減圧状態とすることを特徴
とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記重合性モノマーが、チオフェン又はその誘導体であることを特徴とする請求項1乃
至請求項4のいずれか一に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記チオフェン誘導体が、3,4−エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とす
る請求項5に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の固体電解コンデンサの製造方法によって形
成したことを特徴とする固体電解コンデンサ。
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