JP5284627B2 - エレクトロクロミック表示デバイス - Google Patents
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Description
第1基板と、前記第1基板の上面に設けられた第1電極と、前記第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、前記第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備えるエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物層は、ロイコ染料と、支持電解質と、極性溶剤と、を含むエレクトロクロミック組成物を備え、
前記エレクトロクロミック組成物には、下記の一般式(1)で表される化合物及び/又は下記の一般式(2)で表される化合物、下記の一般式(3)で表される化合物及び/又は下記の一般式(4)で表される化合物、並びに、下記の一般式(5)で表される化合物が添加されていることを特徴とする。
請求項1に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記極性溶剤は、前記支持電解質を用い通電性を示す有機溶媒の少なくとも1種であることを特徴とする。
請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記支持電解質は、下記の一般式(6)で表される化合物及び/又は下記の一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする。
請求項1〜3の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物には、ポリマー化合物が添加されていることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
請求項1〜4の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の透明電極によりなる透明表示電極であり、
前記第1電極と前記第2電極とが立体交差する領域に画素が形成されることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
請求項1〜5の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物層は、前記第1基板及び前記第2基板に対して略垂直方向に貫通する細孔を有する多孔質体を備え、
前記エレクトロクロミック組成物は、前記多孔質体の細孔内に導入されていることを特徴とする。
すなわち、エレクトロクロミック組成物には、ハイドロキノン類の化合物(上記の一般式(1)で表される化合物や上記の一般式(2)で表される化合物)、コハク酸イミド類の化合物(上記の一般式(3)で表される化合物や上記の一般式(4)で表される化合物)、並びに、ピリジニウム塩類の化合物(上記の一般式(5)で表される化合物)添加されている。
したがって、ロイコ染料を用いたエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、ハイドロキノン類の化合物及びコハク酸イミド類を添加しているため、表示・消去を繰り返すことによる表示性能の劣化を解消することができ、コハク酸イミド類の化合物を添加しているため、経時保存による表示性能の劣化を解消することができる。さらに、ピリジニウム塩類の化合物を添加しているため、高速で駆動しても十分な表示濃度を得ることができる。
図1は、本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100を模式的に示す平面図(a)及び断面図(b)である。
本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100は、例えば、第1基板10と、第1基板10の上面に設けられた第1電極20…と、第1基板10の上方に第1基板10に対向して設けられた第2基板30と、第2基板30の下面に設けられた第2電極40…と、第1基板10と第2基板20との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層50と、を備えて構成される。
エレクトロクロミック表示デバイス100は、第1電極20…と第2電極40…との間の通電によって表示を実施するようになっている。また、当該表示のための通電とは逆方向の通電によって、或いは、当該表示のための通電を遮断することによって、当該表示の消去を実施するようになっている。
第1電極20…は、例えば、並行して延びる複数の電極である。第2電極40…は、例えば、第1電極20…と直交する方向に並行して延びる複数の透明電極によりなる透明表示電極である。そして、第1電極20…と第2電極40…とが立体交差する領域に画素60…が形成されている。
第1電極20…は、エレクトロクロミック組成物層50に接するように、且つ、第2電極40…に対向してエレクトロクロミック組成物層50を挟むように、第1基板10の上面に設けられている。
第1電極20…は、第2電極40…と対になり、エレクトロクロミック組成物層50に通電する機能を有する。
第1電極20…は、第2電極40…と立体交差、すなわち、間隔を有して交差し、その交点の領域に画素60を形成している。
金属電極を構成する材質としては、例えば、金、白金、銀、クロム、アルミニウム、コバルト、パラジウム、銅、ニッケル、それらの合金などが挙げられる。
透明電極を構成する材質としては、例えば、ITO膜やSnO2又はInO2をコーティングした薄膜などが挙げられる。また、ITO膜やSnO2又はInO2をコーティングした薄膜などにSnやSbなどをドーピングしたものであっても良く、MgO、ZnO、FTOなどであっても良い。さらに、第1電極20…は、例えば、その材質が金や白金などであっても薄膜であれば、その機能を果たすことができる。
金属電極部21A…の材質は、特に限定されるものではなく、金属電極を構成する材料を用いることができる。金属電極を構成する材質としては、例えば、金、白金、銀、クロム、アルミニウム、コバルト、パラジウム、銅、ニッケル、それらの合金などが挙げられる。
透明電極部22A…や第1電極20Bの材質は、特に限定されるものではなく、透明電極を構成する材料を用いることができる。透明電極を構成する材質としては、例えば、ITO膜やSnO2又はInO2をコーティングした薄膜などが挙げられる。また、ITO膜やSnO2又はInO2をコーティングした薄膜などにSnやSbなどをドーピングしたものであっても良く、MgO、ZnO、FTOなどであっても良い。さらに、透明電極22A…は、例えば、その材質が金や白金などであっても薄膜であれば、その機能を果たすことができる。
第2電極40…は、エレクトロクロミック組成物層50に接するように、且つ、第1電極20…に対向してエレクトロクロミック組成物層50を挟むように、第2基板30の下面に設けられている。
第2電極40…は、第1電極20…と対になり、エレクトロクロミック組成物層50に通電する機能を有する。
第2電極40…は、第1電極20…と立体交差、すなわち、間隔を有して交差し、その交点の領域に画素60を形成している。
無論、細孔51aの形状は、円形に限ることはなく、矩形などの多角形であっても良い。また、画素60の形状は正方形に限ることはなく、その他の多角形であっても良いし、円形であっても良い。
好ましい材質としては、例えば、電気的に絶縁性の無機材料としてアルミナ(特に陽極酸化アルミナ)、シリカ、酸化ジルコニウム、SiC、ガラス等、電気的に絶縁性の有機材料及び高分子物質としてテフロン(米国デュポン社の登録商標)、ナイロン、ポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート等、半導体を含む金属酸化物材料としてTiO2、SrTiO3、ZnO、SnO2、InSnOX、Nb2O3、WO3、CuO、CoO2、MnO2、V2O5等、化合物半導体を含む金属カルコゲナイド及び他元素複合化合物としてCdS、ZnS、GaP、GaAs、InP、FeS2、PbS、CuInS2、CuInSe等に代表される化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物や複合化合物等、金属及び半金属材料として金、白金、銀、銅、クロム、亜鉛、錫、チタン、タングステン、アルミニウム、ニッケル、鉄、シリコン、ゲルマニウム等、炭素材料としてグラファイト、グラシーカーボン、ダイヤモンド等、などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
多孔質体51の細孔51a…の内部の少なくとも一部(多孔質体51の細孔51a…の壁)を構成している材料は、絶縁体材料又は半導体材料が好ましい。具体的には、金属のカルコゲナイド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物など)、シリコンが好ましく、金属酸化物がより好ましく、アルミニウム、アルミナ、所定の繊維(例えば、テフロン、ナイロン(米国デュポン社の登録商標)、ポリエステルなど)が最も好ましい。
好ましい材料としては、エレクトロクロミック組成物52は極性溶剤を構成成分としていることから、その極性溶剤に対して耐性のあるものが良く、例えば、ガラスペーストや極性溶剤耐性のある熱硬化性樹脂などを用いることができる。ガラスペーストとしては、例えば、旭硝子株式会社製AP誘電体ペーストAP5346G,AP5695BD、日本電気硝子株式会社製ガラスペーストPLS−3124、日本電気硝子株式会社製粉末ガラスLS−0241などが挙げられるが、これに限定されるものではない。極性溶剤耐性のある熱硬化性樹脂としては、例えば、1液性のエポキシ樹脂(具体的には、例えば、株式会社スリーボンド製スリーボンド2200シリーズのうち、2217,2217B,2219Dなど)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
好ましい材料としては、上述のとおり極性溶剤に対して耐性のあるものが良く、具体的には、例えば、アスペクト比の高い多孔質体51を1回露光で得ることができる、東京応化工業株式会社製MEMS用永久レジストTMMRS−2000などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
そして、エレクトロクロミック組成物52には、例えば、化合物53(一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物、上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物、並びに、一般式が上記の式(5)で表される化合物)が添加されている。
また、エレクトロクロミック組成物52には、例えば、エレクトロクロミック組成物52の物性(例えば、粘性など)を調整するためのポリマー化合物54なども添加されている。
具体的には、エレクトロクロミック組成物52は、第1電極20…と第2電極40…との間の通電によって発色し、発色のための通電とは逆方向の通電によって、又は、発色のための通電を遮断することによって消色する。
エレクトロクロミック組成物52は、流動性があれば良く、例えば、低粘度の液体状であっても良いし、高粘度のペースト状であっても良いし、流動性の小さいゲル状であっても良い。
ロイコ染料52aとしては、例えば、部分骨格にラクトン、ラクタム、スルトン、スピロピラン、エステル又はアミド構造を有する実用上無色となりうる化合物などが挙げられる。具体的には、例えば、トリアリルメタン化合物、ビスフェニルメタン化合物、キサンテン化合物、フルオラン化合物、チアジン化合物、スピロピラン化合物などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
例えば、ロイコ染料52aが下記の式(18)で表される化合物、下記の式(19)で表される化合物及び下記の式(21)で表される化合物であれば、配合量は、エレクトロクロミック組成物52全体に対して3〜40重量%とすることができる。
支持電解質は、エレクトロクロミック組成物52全体の重量に対して、0.01〜2重量%となるように添加することが好ましく、前記機能の十分な発現のためには、0.1〜2重量%となるように添加することがより好ましい。
一般式が上記の式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、NaClO4、LiClO4、KClO4、RbClO4、CsClO4、NH4ClO4、LiBF4、LiPF6などが挙げられる。
また、一般式が上記の式(7)で表される化合物の具体例としては、例えば、(CH3)4NClO4、(C2H5)4NClO4、(n−C4H9)4NClO4、(CH3)4NBF4、(C2H5)4NBF4、(n−C4H9)4NBF4、(CH3)4NCl、(C2H5)4NCl、(CH3)4NBr、(C2H5)4NBr、(n−C4H9)4NBr、(n−C4H9)4NI、C6H5(CH3)3NClO4、C6H5(C2H5)3NClO4、C8H17(CH3)3NClO4、(C2H5)4NPF6、(n−C4H9)4NPF6、(CH3)4NCF3SO3、(C2H5)4NCF3SO3などが挙げられる。
極性溶剤の具体例としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルフォキシド、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリルなどが挙げられる。例示した極性溶剤は、何れもエレクトロクロミック組成物52の構成成分として用いる極性溶剤として好ましいものであるが、特に好ましいものとしてはN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。
また、エレクトロクロミック組成物52に添加される化合物53のうち、上記の式(3)で表される化合物及び/又は一般式が上記の式(4)で表される化合物は、エレクトロクロミック表示デバイス100の経時保存安定性を向上させる機能を有する。
一般式が上記の式(1)〜(4)で表される化合物の添加量は、ロイコ染料52aの含有量に対して、1〜20重量%となるように添加することが好ましく、前記機能の十分な発現のためには、5〜20重量%となるように添加することが好ましい。
一般式が上記の式(5)で表される化合物の添加量は、ロイコ染料52aの含有量に対して、3〜50重量%となるように添加することが好ましく、前記機能の十分な発現のためには、20〜40重量%となるように添加することが好ましい。
ポリマー化合物54は、エレクトロクロミック組成物52の粘度を高めるために用いるが、この場合のエレクトロクロミック組成物52の性状は、低粘度の液体状、高粘度のペースト状、流動性の小さいゲル状、とすることができる。
ポリマー化合物54の好ましい配合量は、エレクトロクロミック組成物52全体の重量に対して、0.1〜80重量%とすることが好ましい。
ポリマー化合物54の具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド、又は、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンスルフィドの繰返し単位を有する高分子、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリビニルブチラールのごときポリビニルホルマールなどが挙げられる。特に好ましいものとしては、ポリビニルブチラール、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。
エレクトロクロミック表示デバイス100の製造方法は、以下の[1]〜[6]の工程を含む。
第1基板準備工程は、第1基板10を準備する工程である。
第1の蒸着工程は、第1基板10の片方の面に第1電極20…を設ける工程である。第1電極20…は、公知の蒸着法、メッキ法、スパッタ法などによって成膜され、次いで、フォトリソグラフィー法によってパターニングされ、次いで、エッチング法によって縞状等に形成される。
第2基板準備工程は、第2基板30を準備する工程である。
第2の蒸着工程は、第2基板30の片方の面に第2電極40…を設ける工程である。第2電極40…は、公知の蒸着法、メッキ法、スパッタ法などによって成膜され、次いで、フォトリソグラフィー法によってパターニングされ、次いで、エッチング法によって縞状等に形成される。
多孔質体設置工程は、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2電極40…が形成された第2基板30と、の間に多孔質体51を設置する工程である。
具体的には、例えば、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2基板40…が形成された第2基板20と、の間に、前述の材料(例えば、ミリポア社製ナイロンネットフィルタ(厚み:55μm、目開き:11μm))を挟みこむことによって、多孔質体51を形成する。
或いは、例えば、第1電極20…が形成された第1基板10及び/又は第2電極40…が形成された第2基板30における電極が形成された面に、ガラスペースト(例えば、日本電気硝子株式会社製ガラスペーストPLS−3124)などをスクリーン印刷することによって、多孔質体51を設置する。
或いは、例えば、第1電極20…が形成された第1基板10及び/又は第2電極40…が形成された第2基板30における電極が形成された面に、例えば、東京応化工業株式会社製MEMS用永久レジストTMMRS−2000をスピナーなどによって付与し、次いで、所定のマスクを用いて、ホトリソグラフィー法によりパターン状に立体成形することによって多孔質体51を形成して設置する。
貼りあわせ工程は、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2電極40…が形成された第2基板30とを、電極を内側にして貼りあわせ、所定の添加剤(化合物53、ポリマー化合物54など)が添加されたエレクトロクロミック組成物52を封入する工程である。
具体的には、例えば、所定の添加剤が添加されたエレクトロクロミック組成物52を多孔質体51に浸み込ませてエレクトロクロミック組成物層50を形成させ、このエレクトロクロミック組成物層50の両面に、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2電極40…が形成された第2基板30と、貼りあわせる。
或いは、例えば、一方の基板(例えば、第1電極20…が形成された第1基板10)に設置された多孔質体51に所定の添加剤が添加されたエレクトロクロミック組成物52を浸み込ませてエレクトロクロミック組成物層50を形成させ、このエレクトロクロミック組成物層50に他方の基板(例えば、第2電極40…が形成された第2基板30)を貼りあわせる。
或いは、例えば、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2電極40…が形成された第2基板30と、を多孔質体51が設置された状態で貼りあわせ、多孔質体51が設置された2枚の基板間の空隙に、所定の添加剤が添加されたエレクトロクロミック組成物52を、ピペット等を用いて注入する。
或いは、例えば、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2電極40…が形成された第2基板30と、を多孔質体51が設置された状態で貼りあわせ、多孔質体51が設置された2枚の基板間の間隙に、ガラスキャピラリなどを別途あらかじめ形成しておき、所定の添加剤が添加されたエレクトロクロミック組成物52を、そのガラスキャピラリなどを用いて多孔質体51内へと吸引することによって封入する。
エレクトロクロミック表示デバイス100は、例えば、パッシブマトリックス駆動によって、以下のように駆動される。
エレクトロクロミック表示デバイス100の発色は、第1電極20…と第2電極40…との間に通電することによってエレクトロクロミック組成物52に通電すると、エレクトロクロミック組成物層50と第2電極40…との界面にてエレクトロクロミック組成物52が電気化学的な変化を起こすことによって行われる。また、エレクトロクロミック表示デバイス100の消色は、発色のための通電とは逆方向の通電によって、或いは、発色のための通電を遮断して放置することによって行われるが、発色のための通電とは逆方向の通電の方が、速やかに消去動作を実施することができる。
エレクトロクロミック表示デバイス100の発色濃度は、通電する電気量(通電量)によって任意に調節することができる。さらに、通電は、電流の連続的な供給によっても、電流の間歇的な供給によっても可能である。電流の間歇的な供給とは、例えば、パルスによる駆動を指す。一方、エレクトロクロミック表示デバイス100の発色は、通電の遮断によっても消色するが、電子ペーパーとして利用する場合には、発色を維持する必要がある。エレクトロクロミック表示デバイス100の発色の維持は、例えば、表示のために供給した電流よりも小さい電流の供給によって行うことができる。例えば、連続的な電流の供給であれば、発色の維持は、電圧又は電流を発色時の半分以下にして行うことができる。また、間歇的な電流の供給、すなわち、パルス駆動であれば、発色の維持は、例えば、通電期間を発色時よりも短くしたり、パルスの強度、幅、又は間隔を発色時よりも小さくしたりして行うことができる。
具体的には、エレクトロクロミック組成物52を多孔質体51に含浸して、多孔質体51の細孔51a…内にエレクトロクロミック組成物52を導入した場合、エレクトロクロミック組成物52中のロイコ染料52aは、例えば、図5に示すように、通電することによって、多孔質体51の細孔51a…内からエレクトロクロミック組成物層50と第2電極40との界面の表示領域へと移動して発色し、通電を遮断することによって又は発色のための通電とは逆方向に通電することによって、エレクトロクロミック組成物層50と第2電極40との界面から多孔質体51の細孔51a…内へと移動して消色する。したがって、本発明においては、ロイコ染料52aによる第2電極40の表面からの離脱は、ロイコ染料52aが多孔質体51の細孔51a…内へと移動しないと達成できないため、本発明におけるロイコ染料52aは、多孔質体51を利用しない表示デバイスのロイコ染料52aと比較して、第2電極40の表面からの離脱に時間がかかる。これにより、本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100においては、表示後、通電遮断後も、ロイコ染料52aは、一定期間、第2電極40の表面に留まることとなって、一定期間、表示された画像の表示が維持されることになる。
なお、メモリ性をさらに向上させるためには、多孔質体51の細孔51a…の孔径を小さくする手法が有効であるが、多孔質体51の仕様は、上述したように表示される画像のコントラストや解像力などの目的とする表示性能に応じて、また、表示維持のための通電の必要度に応じて決定するのが好ましい。
以下に、具体的な実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(エレクトロクロミック表示デバイスの作製)
まず、エレクトロクロミック表示デバイス100A(図2参照)を作成した。
形成された第1電極20A及び第2電極40のライン数はそれぞれ128本であった。
以下、エレクトロクロミック組成物[B]を備えるエレクトロクロミック表示デバイスを「表示デバイス[B]」と呼ぶ。
以下、エレクトロクロミック組成物[C]を備えるエレクトロクロミック表示デバイスを「表示デバイス[C]」と呼ぶ。
以下、エレクトロクロミック組成物[D]を備えるエレクトロクロミック表示デバイスを「表示デバイス[D]」と呼ぶ。
[1]ロイコ染料52a(上記の式(21)) 400mg、
[2]一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物(上記の式(22);2,5−ジターシャリーアミルハイドロキノン) 40mg、
[3]一般式が上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物(上記の式(53);コハク酸イミド) 40mg、
[4]一般式が上記の式(5)で表される化合物(上記の式(63);1−ブチルピリジニウムヘキサフロロホスフェイト) 110mg、
[5]支持電解質((n−C4H9)4NBF4;テトラnブチルアンモニウムテトラフルオロボレート) 40mg、
[6]極性溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド) 1.0g、
[7]ポリマー化合物54(ポリビニルブチラール;積水化学工業株式会社製エスレックBH3) 50mg、
である。
[1]ロイコ染料52a(上記の式(21)) 400mg、
[2]一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物(上記の式(22);2,5−ジターシャリーアミルハイドロキノン) 40mg、
[3]一般式が上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物(上記の式(53);コハク酸イミド) 40mg、
[4]支持電解質((n−C4H9)4NBF4;テトラnブチルアンモニウムテトラフルオロボレート) 40mg、
[5]極性溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド) 1.0g、
[6]ポリマー化合物54(ポリビニルブチラール;積水化学工業株式会社製エスレックBH3) 50mg、
である。
[1]ロイコ染料52a(上記の式(21)) 400mg、
[2]ベンゾキノン誘導体(2,5−ジターシャリーアミルキノン) 40mg
[3]トリフェニルアンチモン 70mg
[4]支持電解質((n−C4H9)4NBF4;テトラnブチルアンモニウムテトラフルオロボレート) 40mg、
[5]極性溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド) 1.0g、
[6]ポリマー化合物54(ポリビニルブチラール;積水化学工業株式会社製エスレックBH3) 50mg、
である。
[1]ロイコ染料52a(上記の式(21)) 400mg、
[2]一般式が上記の式(6)で表される化合物及び/又は上記の式(7)で表される化合物((n−C4H9)4NBF4;テトラnブチルアンモニウムテトラフルオロボレート) 40mg、
[3]極性溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド) 1.0g、
[4]ポリマー化合物54(ポリビニルブチラール;積水化学工業株式会社製エスレックBH3) 50mg、
である。
まず、表示動作を行った。具体的には、表示デバイス[A−1]、表示デバイス[B]、表示デバイス[C]、表示デバイス[D]のそれぞれにパターン作製回路を接続した。次いで、作動電圧2.0V、作動スピード100ms/ラインで電圧印加(通電)を行い、パッシブマトリックス駆動表示によって、2値の表示パターンを形成した。
この表示動作によって、第1電極20Aと第2電極40の交差する部分(画素60)の第2電極40の表面部分を中心として、ブラック色素が生成され、ブラックのパターンが得られた。
この消去動作によって、表示デバイス[A−1]、表示デバイス[B]、表示デバイス[C]、表示デバイス[D]に表示されたブラックのパターンを消去することができた。
そして、引き続き前記表示動作及び前記消去動作を繰り返し行った。
一方、表示デバイス[D]は、50回以上の前記表示動作及び前記消去動作の繰り返しによって、次第に地色の黄色変色が進行し、さらに表示濃度が次第に劣化し、結果として100回以上の繰り返しで、著しいコントラストレシオの劣化を生じることが分かった。
以上の結果から、ハイドロキノン類の化合物(一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物)及びコハク酸イミド類の化合物(一般式が上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物)を添加することにより、表示・消去を繰り返すことによる表示性能の劣化を解消できることが分かった。
しかしながら、表示デバイス[C]はエレクトロクロミック組成物層50が黄色に着色しているため、地色(非表示部)は淡黄色であり、結果として、表示デバイス[A−1]や表示デバイス[B]ほどの高いコントラスト比を得られなかった。
以上の結果から、ベンゾキノン誘導体に代えて、ハイドロキノン類の化合物(一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物)を添加することにより、地色がほとんど無色透明の表示デバイスを得ることができることが分かった。
まず、表示動作を行った。具体的には、表示デバイス[A−1]、表示デバイス[B]のそれぞれにパターン作製回路を接続した。次いで、作動電圧2.0V、作動スピード100ms/ライン、及び、作動電圧3.5V、作動スピード10ms/ラインで、電圧を印加し、パッシブマトリックス駆動表示によって、2値の表示パターンを形成した。
この表示動作によって、第1電極20Aと第2電極40の交差する部分(画素60)の第2電極40の表面部分を中心として、ブラック色素が生成され、ブラックのパターンが得られた。
一方、表示デバイス[B]は、100ms/ラインで最大表示濃度が1.20、10ms/ラインで最大表示濃度が0.37であり、10ms/ラインのような高速表示においては最大表示濃度が100ms/ラインでの最大表示濃度の約30%であった。
以上の結果から、ピリジニウム塩類の化合物(一般式が上記の式(5)で表される化合物)を添加することにより、高速で駆動しても十分な表示濃度を得ることができることが分かった。
(エレクトロクロミック表示デバイスの作製)
まず、エレクトロクロミック表示デバイス100B(図3参照)を作成した。
さらに、エレクトロクロミック組成物[A]をガラス管に封入して、熱封止し、60℃のオーブン内で10日間放置したものを用意し、表示デバイス[A−2]と同様にして、エレクトロクロミック表示デバイス(以下、表示デバイス[A−2−10]と呼ぶ。)を作成するとともに、エレクトロクロミック組成物[E]をガラス管に封入して、熱封止し、60℃のオーブン内で10日間放置したものを用意し、表示デバイス[A−2]と同様にして、エレクトロクロミック表示デバイス(以下、表示デバイス[E−10]と呼ぶ。)を作成した。
[1]ロイコ染料52a(上記の式(21)) 400mg、
[2]一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物(上記の式(22);2,5−ジターシャリーアミルハイドロキノン) 40mg、
[3]一般式が上記の式(5)で表される化合物(上記の式(63);1−ブチルピリジニウムヘキサフロロホスフェイト) 110mg、
[4]支持電解質((n−C4H9)4NBF4;テトラnブチルアンモニウムテトラフルオロボレート) 40mg、
[5]極性溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド) 1.0g、
[6]ポリマー化合物54(ポリビニルブチラール;積水化学工業株式会社製エスレックBH3) 50mg、
である。
表示デバイス[A−2]、表示デバイス[A−2−10]、表示デバイス[E]、表示デバイス[E−10]のそれぞれに直流電源を接続した。次いで、電極(第1電極20B、第2電極40B)を通して、電流量を3mAで、通電時間を10秒、15秒、20秒の順で変化させて通電し、第2電極40B上に発色表示させ、その間の発色状態(吸光度)を、分光光度計(株式会社日立製作所製U−3310)を用いて測定した。その結果を図7及び図8に示す。
図7に示すように、表示デバイス[A−2−10]は、吸光度の値が、通電時間が増加しても表示デバイス[A−2]と略同一であった。これにより、表示デバイス[A−2]及び[A−2−10](本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100B)は、60℃で10日間保存した後であっても、発色特性は変化しないことが分かった。
一方、表示デバイス[E−10]は、吸光度の値が、通電時間が増加するにつれて、表示デバイス[E]よりも小さくなっていった。さらに、表示デバイス[E]が通電を遮断した後に発色前の状態の無色の状態に戻ったのに対し、表示デバイス[E−10]は、通電を遮断しても、発色前の状態の無色の状態に戻らず、その結果、地色が着色し、コントラストレシオが低下することが分かった。これにより、表示デバイス[E]及び[E−10]は、60℃で10日間保存すると、発色特性が変化し、保存前の表示性能を維持できないことが分かった。
以上の結果から、コハク酸イミド類の化合物(一般式が上記の式(3)で表される化合物及び上記の式(4)で表される化合物)を添加することにより、経時保存による表示性能の劣化を解消できることが分かった。
すなわち、エレクトロクロミック組成物には、上記の一般式(1)で表される化合物や上記の一般式(2)で表される化合物といったハイドロキノン類の化合物、上記の一般式(3)で表される化合物や上記の一般式(4)で表される化合物といったコハク酸イミド類の化合物、並びに、上記の一般式(5)で表される化合物といったピリジニウム塩類の化合物が添加されている。
したがって、ロイコ染料52aを用いたエレクトロクロミック表示デバイス100,100A,100Bにおいて、ハイドロキノン類の化合物及びコハク酸イミド類を添加しているため、表示・消去を繰り返すことによる表示性能の劣化を解消することができ、コハク酸イミド類の化合物を添加しているため、経時保存による表示性能の劣化を解消することができる。さらに、ピリジニウム塩類の化合物を添加しているため、高速で駆動しても十分な表示濃度を得ることができる。
すなわち、エレクトロクロミック組成物52を多孔質体51の細孔51a…内に導入するだけで、緻密で煩雑な工程を経て形成される隔壁を備えなくても、画素60,60間のクロストークを抑えることができる。さらに、多孔質体51に形成された細孔51a…は、第1基板10及び第2基板30に対して略垂直方向に貫通しているため、細孔がランダムに形成された多孔質体を使用する場合と比較して、解像力やコントラストが高くなり、簡易な構成で、高い表示性能を有することができる。
本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100,100A,100Bは、第1電極20…,20A…,20Bと第2電極40…,40Bとの間に通電することによって、所定の添加物が添加されたエレクトロクロミック組成物52に通電することができれば良く、例えば、図9に示す、エレクトロクロミック表示デバイス100Cのように、多孔質体51の細孔51a…の底部を閉じる導電性部材55Cを備えていても良い。
本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100は、第1電極20…と第2電極40…との間に通電することによって、所定の添加物が添加されたエレクトロクロミック組成物52に通電することができれば良く、第1電極20…と第2電極40…は、例えば、図10に示す、エレクトロクロミック表示デバイス100Dの第1電極20D…と第2電極40D…であっても良い。
第1電極20D…は、エレクトロクロミック組成物層50に接するように、且つ、第2電極40D…に対向してエレクトロクロミック組成物層50を挟むように、第1基板10の上面に設けられている。
第1電極20D…は、第2電極40D…と対になり、エレクトロクロミック組成物層50に通電する機能を有する。
第1電極20D…は、第2電極40D…の透明表示電極部41Bと立体交差、すなわち、間隔を有して交差し、その交点の領域に画素60を形成している。
第2電極40D…は、エレクトロクロミック組成物層50に接するように、且つ、第1電極20D…に対向してエレクトロクロミック組成物層50を挟むように、第2基板30の下面に設けられている。
第2電極40D…は、第1電極20D…と対になり、エレクトロクロミック組成物層50に通電する機能を有する。
第2電極40D…の透明表示電極41D…は、第1電極20D…と立体交差、すなわち、間隔を有して交差し、その交点の領域に画素60を形成している。
20,20A,20B,20D 第1電極
30 第2基板
40,40B,40D 第2電極
50,50B,50C エレクトロクロミック組成物層
51 多孔質体
51a 細孔
52 エレクトロクロミック組成物
52a ロイコ染料(染料)
53 化合物(一般式(1)で表される化合物及び/又は一般式(2)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物及び/又は一般式(4)で表される化合物、並びに、一般式(5)で表される化合物)
54 ポリマー化合物
60 画素
100,100A,100B,100C,100D エレクトロクロミック表示デバイス
Claims (6)
- 第1基板と、前記第1基板の上面に設けられた第1電極と、前記第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、前記第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備えるエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物層は、ロイコ染料と、支持電解質と、極性溶剤と、を含むエレクトロクロミック組成物を備え、
前記エレクトロクロミック組成物には、下記の一般式(1)で表される化合物及び/又は下記の一般式(2)で表される化合物、下記の一般式(3)で表される化合物及び/又は下記の一般式(4)で表される化合物、並びに、下記の一般式(5)で表される化合物が添加されていることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
- 請求項1に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記極性溶剤は、前記支持電解質を用い通電性を示す有機溶媒の少なくとも1種であることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。 - 請求項1〜3の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物には、ポリマー化合物が添加されていることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。 - 請求項1〜4の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の透明電極によりなる透明表示電極であり、
前記第1電極と前記第2電極とが立体交差する領域に画素が形成されることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。 - 請求項1〜5の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物層は、前記第1基板及び前記第2基板に対して略垂直方向に貫通する細孔を有する多孔質体を備え、
前記エレクトロクロミック組成物は、前記多孔質体の細孔内に導入されていることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
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