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JP5280151B2 - 固体酸化物型燃料電池の薄板体、及び固体酸化物型燃料電池 - Google Patents

固体酸化物型燃料電池の薄板体、及び固体酸化物型燃料電池 Download PDF

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JP5280151B2 JP2008282234A JP2008282234A JP5280151B2 JP 5280151 B2 JP5280151 B2 JP 5280151B2 JP 2008282234 A JP2008282234 A JP 2008282234A JP 2008282234 A JP2008282234 A JP 2008282234A JP 5280151 B2 JP5280151 B2 JP 5280151B2
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Description

本発明は、固体酸化物型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)に係わり、特に、SOFCに使用される薄板体(「単セル」とも称呼される。)に関する。
従来から、固体電解質層と、固体電解質層の上面に形成されてその上面から燃料ガス(例えば、水素等)の供給を受ける燃料極層と、固体電解質層の下面に形成されてその下面から酸素を含むガス(例えば、空気等)の供給を受ける空気極層と、が積層・焼成されてなるSOFCの単セル用の薄板体が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
特開2006−139966号公報
係る薄板体において、空気極層として、酸素イオン及び電子を通す混合導電性を有する物質(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)等)の多数の粒子からなる多孔質焼成体が採用されることが好適である。これは、導電率が大きいことで電気抵抗が小さいこと、空気極層の比表面積が大きくなって高出力が得られること、並びに、低温(常温)にて空気極層に対応する膜(焼成により後に空気極層となる膜)の形成が可能であることに基づく。
空気極層として、係る微細粒子からなる比表面積の大きい多孔質焼成体が採用される場合、SOFCの作動時間の増大に伴って、空気極層の反応抵抗(反応ロス、詳細は後述する。)が大きく増大し易いこと、従って、SOFCの出力が大きく低下し易いこと、が実験等を通じて明らかになってきている。
この現象は、SOFCの作動温度が最低600℃以上と高温であることに起因して、SOFCの作動時間の増大に伴って、空気極層を構成する前記物質の粒子の成長(シンタリング、空気極層の緻密化)が顕著となって空気極層の比表面積が減少していくことに基づく、と考えられる。
本発明者は、空気極層として、係る混合導電性を有する物質粒子からなる多孔質焼成体が採用される場合において、SOFCの作動時間の増大に伴う空気極層の反応ロスの増大を抑制するために多孔質焼成体である空気極層に要求される条件を見出した。
本発明に係る固体酸化物型燃料電池の薄板体は、上述と同じ固体電解質層、燃料極層、及び空気極層が積層・焼成されてなる。本発明に係る体酸化物型燃料電池の薄板体の特徴は、前記空気極層が、酸素イオン及び電子を通す混合導電性を有する物質の多数の粒子からなる多孔質焼成体であり、前記空気極層の比表面積が1.5〜9.0m/gであり、且つ、前記空気極層が30〜100nmの細孔径を有することにある。
前記混合導電性を有する物質は、例えば、ランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)等である。また、前記混合導電性を有する物質の粒子の平均粒径は、0.1〜5μmであることが好ましい。
検討によれば、混合導電性を有する物質の多数の粒子からなる多孔質焼成体である空気極層において、比表面積及び細孔径分布が上記のような組み合わせの場合、SOFCの作動時間の増大に伴う空気極層の反応ロスの増大が抑制され得ることが判明した。このことは、比表面積及び細孔径分布が上記のような組み合わせの場合、空気極層を構成する前記物質の粒子の成長(シンタリング)が抑制されて空気極層の比表面積が減少し難いことを意味する。
なお、高温保持中の微構造変化を抑制する方策として、異種材料を添加して構造を安定化させる、所謂「ピン止め効果」が考えられる。SOFCの場合、ジルコニア粒子を添加することで微細な多孔を有する電極構造の安定化を達成できることが知られている。しかしながら、ジルコニア粒子を添加すると、電子導電性が低下する。従って、高出力が要求されるSOFCの薄板体においては、ジルコニア粒子の添加は、高出力確保の観点から好ましい方策とは言えない。
また、空気極層における比表面積及び細孔径分布が上記のような組み合わせとされる場合、固体電解質層の厚さが0.5〜10μmと極めて薄い場合であっても、上述した「空気極層の反応ロスの増大抑制効果」が確保されることが判明した。このことについて、以下、付言する。
固体電解質層の厚さが0.5〜10μmと極めて薄い場合、固体電解質層のIR抵抗(詳細は後述する。)が極めて小さくなり、固体電解質層内の酸素イオン伝導性が十分に大きくなる。これにより、空気極層における「酸素をイオン化する触媒反応」が促進されて空気極層の反応ロスも同時に小さくなることで、固体電解質層の厚さが大きい場合に比して、非常に大きい出力が得られる。このように非常に大きい出力が発生している状況下では、空気極層内において非常に大きい電流が流れることになる。この結果、この大電流に起因して、上述のように高温保持中において発生する「空気極層を構成する物質の粒子の成長(シンタリング)」がより顕著となると考えられる。即ち、この大電流に起因して、空気極層の比表面積がより減少して空気極層の反応ロスがより増大し易いと考えられる。このような状況下においても、空気極層における比表面積及び細孔径分布が上記のような組み合わせにある場合、上述した「空気極層の反応ロスの増大抑制効果」が十分に確保されることが判明した。
以上、説明した本発明に係る薄板体を使用した固体酸化物型燃料電池は、上記構成を有する1又は複数の薄板体と、前記1又は複数の薄板体を支持する複数の支持部材と、を備え、前記薄板体と前記支持部材とが1つずつ交互に積層されてなり、前記各薄板体について、前記薄板体と前記薄板体の上方に隣接する前記支持部材との間にて燃料ガスの流路である燃料流路が区画・形成され、前記薄板体と前記薄板体の下方に隣接する前記支持部材との間にて酸素を含むガスの流路である空気流路が区画・形成されて構成される。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態に係る固体酸化物型燃料電池について説明する。
(燃料電池の全体構造)
図1は、本発明の実施形態に係るデバイスである固体酸化物型燃料電池(以下、単に「燃料電池」と称呼する。)10の破断斜視図である。図2は、燃料電池10の部分分解斜視図である。燃料電池10は、薄板体11とセパレータ12(支持部材)とが交互に積層されることにより形成されている。即ち、燃料電池10は、平板スタック構造を備えている。
なお、係る平板スタック構造において、最も上方に位置する薄板体11の上側には上側蓋部材21が、最も下方に位置する薄板体11の下側には下側蓋部材22がそれぞれ配置・固定されている。薄板体11は、燃料電池10の「単セル」とも称呼される。
図2の円A内に拡大して示したように、薄板体11は、電解質層(固体電解質層)11aと、電解質層11aの上面に形成された燃料極層11bと、電解質層11aの下面に形成された空気極層11cと、を有する焼成体である。薄板体11の平面形状は、互いに直交するx軸及びy軸の方向に沿う辺を有する正方形(1辺の長さ=A’)であり、薄板体11は、x軸及びy軸に直交するz軸方向に厚み方向を有する板体(厚さ=t1)である。
本例において、電解質層11aはYSZ(イットリア安定化ジルコニア)の焼成体である。燃料極層11bは、NiO、及びYSZからなる焼成体であり、多孔質電極層である。この燃料極層11bは、還元処理後においてNi−YSZサーメットとなって燃料極電極として機能する。空気極層11cは、LSCF(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3:ランタンストロンチウムコバルトフェライト)からなる焼成体であり、多孔質電極層である。
薄板体11は、一対のセル貫通孔11d,11dを備えている。それぞれのセル貫通孔11dは、電解質層11a、燃料極層11b及び空気極層11cを貫通している。一対のセル貫通孔11d,11dは、薄板体11の一つの辺の近傍であってその辺の両端部近傍領域に形成されている。なお、薄板体11の形状等の詳細については後に詳述する。
図3は、図2においてx軸と平行な1−1線を含むとともにx−z平面と平行な平面に沿ってセパレータ12を切断したセパレータ12の断面図である。図2及び図3に示したように、セパレータ12は、平面部12aと、上方枠体部12bと、下方枠体部12cと、を備えている。ここで、上方、下方枠体部12b,12cは「セパレータの枠体部」を構成する。セパレータ12の平面形状は、互いに直交するx軸及びy軸の方向に沿う辺を有する正方形(1辺の長さ=A、AはA’より若干大きい)である。平面部12aの厚さはtzであり、「枠体部」の厚さはt2(>tz)である。
セパレータ12の1辺の長さAは、本例では、5mm以上且つ200mm以下である。セパレータ12の平面部12aの平面形状(=正方形)の1辺の長さLは、本例では、4mm以上且つ190mm以下である。セパレータ12の「枠体部」の厚さt2は、200μm以上且つ1000μm以下である。セパレータ12の平面部12aの厚さtzは50μm以上且つ100μm以下である。
セパレータ12は、Ni系耐熱合金(例えば、フェライト系SUS、インコネル600及びハステロイ等)から構成されている。セパレータ12の常温から1000℃での平均熱膨張率は、例えばフェライト系SUSであるSUS430の場合、およそ12.5ppm/Kである。従って、セパレータ12の熱膨張率は、薄板体11の平均熱膨張率よりも大きい。従って、燃料電池10の温度が変化したとき、薄板体11とセパレータ12との間にて伸縮量差が生じる。
平面部12aは、z軸方向に厚み方向を有する薄い平板体である。平面部12aの平面形状は、x軸及びy軸方向に沿う辺を有する正方形(1辺の長さ=L(<A))である。
上方枠体部12bは、平面部12aの周囲(4つの辺の近傍領域、即ち、外周近傍領域)において上方に向けて立設された枠体である。上方枠体部12bは、外周枠部12b1と段差形成部12b2とからなっている。
外周枠部12b1は、セパレータ12の最外周側に位置している。外周枠部12b1の縦断面(例えば、y軸方向に長手方向を有する外周枠部12b1をx−z平面に平行な平面に沿って切断した断面)の形状は長方形(又は正方形)である。
段差形成部12b2は、平面部12aの4つの角部のうちの一つの角部において、外周枠部12b1の内周面からセパレータ12の中央に向けて延設された部分である。段差形成部12b2の下面は平面部12aと連接している。段差形成部12b2の平面視(上面視)における形状は略正方形である。段差形成部12b2の上面(平面)は、外周枠部12b1の上面(平面)と連続している。段差形成部12b2には、貫通孔THが形成されている。貫通孔THは、段差形成部12b2の下方に位置する平面部12aにも貫通している。
下方枠体部12cは、平面部12aの周囲(4つの辺の近傍領域、即ち、外周近傍領域)において下方に向けて立設された枠体である。下方枠体部12cは、平面部12aの厚さ方向の中心線CLに対して上方枠体部12bと対称形状を有している。従って、下方枠体部12cは、外周枠部12b1、及び段差形成部12b2とそれぞれ同一形状の外周枠部12c1、及び段差形成部12c2を備えている。但し、段差形成部12c2は、平面部12aの四つの角部のうち段差形成部12b2が形成されている角部と隣り合う2つの角部のうちの一方の角部に配置・形成されている。
図4は、薄板体11及び薄板体11を支持(挟持)した状態における一対のセパレータ12を、図2においてy軸と平行な2−2線を含むとともにy−z平面と平行な平面に沿って切断した縦断面図である。上述したように、燃料電池10は、薄板体11とセパレータ12とが交互に積層されることにより形成されている。
ここで、この一対のセパレータ12のうち、薄板体11に対してその下方・上方に隣接するものをそれぞれ、便宜上、下方セパレータ121及び上方セパレータ122と称呼する。図4に示したように、下方セパレータ121及び上方セパレータ122は、下方セパレータ121の上方枠体部12bの上に上方セパレータ122の下方枠体部12cが対向するように互いに同軸的に配置される。
薄板体11は、その周縁部全周が、下方セパレータ121の上方枠体部12b(周縁部)の上面と上方セパレータ122の下方枠体部12c(周縁部)の下面との間に挟持される。このとき、薄板体11は、下方セパレータ121の平面部12aの上面に空気極層11cが対向するように配置され、上方セパレータ122の平面部12aの下面に燃料極層11bが対向するように配置される。
薄板体11の周縁部全周と、下方セパレータ121の上方枠体部12bと、上方セパレータ122の下方枠体部12cとは、シール材13により互いに接合(シール)されている。
シール材13は、薄板体11の周縁部の上面と上方セパレータ122の下方枠体部12cの下面との間の空間(境界部分)、及び、薄板体11の周縁部の下面と下方セパレータ121の上方枠体部12bの上面との間の空間(境界部分、第1接合部)をそれぞれ接合(シール)する第1シール部13aを有する。また、シール材13は、上方セパレータ122の下方枠体部12cの下側端(側面の下端)と下方セパレータ121の上方枠体部12bの上側端(側面の上端)との間の空間(隙間、第2接合部)を接合(シール)する、第1シール部13aとは分離した第2シール部13bを有する。この第2シール部13bは、スタック構造を有する燃料電池10の側面全域に亘って連続している。
第1シール部13aは、その全体が燃料電池10の作動温度(例えば、600℃〜800℃)よりも低い第1軟化点を有する非晶質ガラスからなる。第1シール部13aは、上記第1接合部をシールする機能を発揮する。加えて、第1シール部13aは、燃料電池10の温度(具体的には、第1シール部13aの温度)が第1軟化点未満の場合、上記第1接合部の相対移動を不能とする。一方、第1シール部13aは、燃料電池10の温度(具体的には、第1シール部13aの温度)が第1軟化点以上の場合、第1シール部13aが軟化することに起因して、上記第1接合部の相対移動を可能とする。これにより、上述した薄板体11とセパレータ12との間での伸縮量差に起因する内部応力(熱応力)をキャンセルすることができる。
一方、第2シール部13bは、セラミックス(具体的には、結晶化ガラス、ガラスセラミックス等、結晶質を含む材料、非晶質と結晶質とが混在していてもよい)からなる。第2シール部13bは、上記第2接合部をシールする機能を発揮する。加えて、第2シール部13bは、上記第2接合部の相対移動を常時不能とする。これにより、燃料電池10全体の形状(スタック構造を有する形状)が維持され得る。
また、上述のように、熱応力の緩衝機能を有する第1シール部13aと、ガスシール機能を有する第2シール部13bとの材料選択に関し、同一組成の材料を使用することもできる。同一組成の材料を使用することで、組成の異なる材料を使用した場合においてSOFC作動時にて熱履歴に起因して発生し得る接合部の変質を抑制することができる。
具体的には、組成を同一とする一方でガラスの粒径に差を設けることで、結晶化の進行度を異ならせて両シール部13a,13bの機能を異ならせる。例えば、第1シール部13aの材料として粒径の大きいガラス材料(例えば1μm程度)を使用し、第2シール部13bの材料として粒径の小さいガラス材料(例えば0.3μm以下)を使用する。これにより、スタック組立時におけるガラス接合のための熱処理温度時(例えば850℃)における結晶化の進行度に差を持たせることができる。即ち、粒径の大きい第1シール部13aでは結晶化が完全に進行せずに一部非晶質層が残留した半結晶状態が保持され、粒径の小さい第2シール部13bでは結晶化を完了させることができる。これにより、半結晶状態にある第1シール部13aには熱応力の緩衝機能を持たせ、結晶化が完了した第2シール部13bにはガスシール機能を持たせることができる。
以上により、図4に示したように、下方セパレータ121の平面部12aの上面と、下方セパレータ121の上方枠体部12b(外周枠部12b1及び段差形成部12b2)の内側壁面と、薄板体11の空気極層11cの下面と、により酸素を含む気体(空気)が供給される空気流路21が形成される。酸素を含む気体は、図4の破線の矢印により示したように、上方セパレータ122の貫通孔THと薄板体11のセル貫通孔11dとを通して空気流路21に流入する。
また、上方セパレータ122の平面部12aの下面と、上方セパレータ122の下方枠体部12c(外周枠部12c1及び段差形成部12c2)の内側壁面と、薄板体11の燃料極層11bの上面と、により水素を含む燃料が供給される燃料流路22が形成される。燃料は、図4の実線の矢印により示したように、下方セパレータ121の貫通孔THと薄板体11のセル貫通孔11dとを通して燃料流路22に流入する。
また、図4に示すように、空気流路21及び燃料流路22中において、集電用の金属メッシュ(例えば、エンボス構造の金属メッシュ)が内装されている。これにより、下方セパレータ121と薄板体11との電気的接続、及び上方セパレータ122と薄板体11との電気的接続が確保される。加えて、係る金属メッシュの内装により、ガスの流通経路が規制される。この結果、空気流路21及び燃料流路22中において、平面視にてガスの流通により発電反応が実質的に発生し得る領域の面積(流通面積)が拡大され得、薄板体11にて発電反応が効果的に発生し得る。
以上のように構成された燃料電池10は、例えば、図5に示したように、薄板体11の燃料極層11bとセパレータ12の平面部12aの下面との間に形成された燃料流路22に燃料が供給され、且つ、薄板体11の空気極層11cとセパレータ12の平面部12aの上面との間に形成された空気流路21に空気が供給されることにより、以下に示す化学反応式(1)及び(2)に基づく発電を行う。
(1/2)・O+2e−→O2− (於:空気極層11c) …(1)
+O2−→HO+2e− (於:燃料極層11b) …(2)
燃料電池(SOFC)10は、固体電解質層11aの酸素伝導度を利用して発電するので、燃料電池10としての作動温度は最低600℃以上であることが一般的である。このため、燃料電池10は、常温から作動温度(例えば800℃)まで外部の加熱機構(例えば、抵抗加熱ヒータ方式の加熱機構、或いは、燃料ガスを燃焼して得られる熱を利用する加熱機構等)により昇温された状態で使用される。
(薄板体の詳細)
以下、薄板体11の詳細について説明する。薄板体11の部分側面図である図6に示すように、電解質層11aは、YSZの微細な粒子からなる緻密質層である。電解質層11aに含まれるYSZの粒子の粒子径は、本例では、0.3〜3μmである。燃料極層11bは、Ni及びYSZの微細な粒子からなる多孔質層である。燃料極層11bに含まれるNi及びYSZの粒子の粒子径はそれぞれ、本例では、0.3〜1.5μm、及び、0.5〜2μmである。
空気極層11cは、酸素イオンO2−及び電子e-を通す混合導電性を有するLSCFの微細な粒子からなる多孔質層である。空気極層11cに含まれるLSCFの粒子の粒子径について、本例では、平均粒径が0.1〜5μmである。特に、多孔質である空気極層11cの比表面積は1.5〜9.0m/gであり、多孔質である空気極層11cの細孔径は30〜100nmである。
薄板体11の厚さt1は、全体に渡って均一であり、本例では、20μm以上且つ500μm以下である。また、電解質層11a、燃料極層11b、及び空気極層11cの厚さta,tb,tcはそれぞれ、例えば、0.5μm以上且つ10μm以下、5μm以上且つ500μm以下、及び、5μm以上且つ200μm以下である。
このように、本例では、薄板体11において燃料極層11bが最も厚く、従って、燃料極層11bが薄板体11全体を支持する構造となっている。燃料極層11bには金属(Ni)が含まれているから、(還元処理後の)燃料極層11bは、電解質層11a及び空気極層11cよりも柔軟性(靭性)に富む。従って、薄板体11において燃料極層11を最も厚くすることで、薄板体11を柔軟性に富む構造体とすることができる。
電解質層11a、燃料極層11b、及び空気極層11cの常温から1000℃での平均熱膨張率はそれぞれ、本例では、10〜11.5ppm/K、11.5〜13.0ppm/K、10〜14ppm/Kである。
(製造方法の一例)
以下、燃料電池10の製造方法の一例について簡単に説明する。先ず、薄板体11の製造方法について説明する。先ず、シート(YSZ+NiOのテープ、燃料極層11bとなる層)の下面に、グリーンシート法により作製されたセラミックスシート(YSZのテープ、電解質層11aとなる層)が積層される。なお、前記シート(燃料極層11bとなる層)の下面に、上記セラミックスシートが印刷法により形成されてもよい。
次いで、この積層体(電解質層11aとなる層と燃料極層11bとなる層の積層体)が1400℃・1時間にて焼成される。そして、その焼成体の下面に、予め所定の仮焼処理が施された材料(空気極層11cとなる層)が印刷法により形成され、その材料が850℃・1時間にて焼成される。ここで、仮焼処理とは、セラミックス粉末(原料粉末)の予備的な熱処理を指し、本例では、後述するように、空気極層11cの材料の比表面積及び細孔状態を調整するための熱処理を指す。以上により、電解質層11a、燃料極層11b、及び空気極層11cからなる薄板体11が作製される。
セパレータ12は、エッチング、切削等により形成され得る。
次に、各セパレータ12の外周部において薄板体11を挟持する部分(即ち、下方枠体部12cの下面、及び上方枠体部12bの上面)に第1シール部13aを構成するガラス材料(ホウ酸珪ガラス)が印刷法によりそれぞれ塗布される。次いで、セパレータ12と薄板体11とが交互に積層され、熱処理(830℃/1hr)を施してスタック構造が一体化される。その後、スタックの外周部に対し、第2シール部13bを構成する材料(ホウ酸珪系結晶化ガラス等)が塗布され、熱処理(例えば850℃/1hr)を施してスタック構造が補強される。これにより、燃料電池10が完成する。
(作用・効果)
以下、上述のように、多孔質である空気極層11cにおいて、「比表面積を1.5〜9.0m/g」とし、「細孔径を30〜100nm」としたことによる、空気極層11cの反応ロス(後述)の増大抑制効果について述べる。
先ず、この準備として、薄板体の厚さ方向の電気抵抗について説明する。上述した薄板体の内部では、厚さ方向に電流(具体的には、電子e−、酸素イオンO2−)を通す際の電気抵抗、並びに、上記発電反応に起因する燃料極層及び空気極層でのそれぞれの反応抵抗が不可避的に存在する。このことに起因して、図7に示すように、薄板体を流れる電流Iの増加に応じて薄板体の出力電圧Vが理論起電力V0から低下する。ここで、薄板体の上記電気抵抗に起因する電圧低下分を「IRロス」と称呼し、薄板体の上記反応抵抗に起因する電圧低下分を「反応ロス」と称呼する。
薄板体の出力は、図7に斜線で示す領域の面積で表すことができ、例えば、電流I=I1の場合、薄板体の出力は「I1・V1」となる。従って、IRロス、及び反応ロスを低減することで、薄板体の出力(従って、SOFCの出力)を増大することができる。本発明は、この反応ロスのうちでも、特に、空気極層の反応ロスに着目し、SOFCの作動時間の増大に伴う空気極層の反応ロスの増大を抑制して、薄板体の出力(従って、燃料電池の出力)の減少を抑制するものである。
本実施形態のように、空気極層11cとして、混合導電性を有する物質の粒子からなる多孔質焼成体が採用される場合、一般に、SOFCの作動時間の増大に伴って、空気極層11cの反応ロスが大きく増大し易い傾向がある。この傾向は、SOFCの作動温度が最低600℃以上と高温であることに起因して、SOFCの作動時間の増大に伴って、空気極層11cを構成する物質の粒子の成長(シンタリング)が顕著となって空気極層11cの比表面積が減少していくことに基づく、と考えられる。
これに対し、本発明者は、上述のように、空気極層11cにおいて、「比表面積を1.5〜9.0m/g」とし、「細孔径を30〜100nm」とすることで、SOFCの作動時間の増大に伴う「空気極層11cの反応ロスの増大」が抑制され得ることを見出した。
以下、このことを確認した実験について説明する。この実験では、図6に示した上記実施形態に対応する、空気極層の比表面積及び細孔径分布の組み合わせが異なる複数種類の薄板体(各層の厚さは同じ)が、上述した製造方法を利用してそれぞれ作製・準備された。具体的には、作成された各薄板体では、燃料極層(Ni−8YSZ)の厚さが120μm、電解質層(8YSZ)の厚さが3μm、空気極層(LSCF)の厚さが20μmであり、平面形状が1辺30mmの正方形である。空気極層の比表面積及び細孔径分布の組み合わせの調整は、空気極層を構成する材質(LSCF)そのものの、上述した仮焼処理の条件、上述の焼成温度等を調整することで行われた。
作成された1枚の薄板体を含む1段のスタックを用いて、700℃の高温雰囲気下、電流を一定に維持した状態で、スタックの出力電圧の安定性に関する耐久試験が実施された。1000hrが経過した時点での出力電圧の低下率(劣化率)が算出され、評価結果として、劣化率が「−1%以内」が「合格(○)」とされた。この評価結果を表1に示す。
Figure 0005280151
表1から明らかなように、空気極層11cにおいて、「比表面積が1.5〜9.0m/g」であり、「細孔径が30〜100nm」である場合、SOFCの作動時間の増大に伴う空気極層11cの反応ロスの増大が抑制される。このことは、比表面積及び細孔径分布が上記のような組み合わせの場合、空気極層1s1cを構成する物質の粒子の成長(シンタリング)が抑制されて空気極層11cの比表面積が減少し難いことを意味する。
なお、上述のように、薄板体の製造過程において、空気極層11cに対応する前記材料(後に空気極層11cとなる層)が印刷される前に、その材料に予め上述の仮焼処理を施すことで、焼成後の空気極層11cの比表面積及び細孔径分布の組み合わせを、上記の組み合わせになるように容易に調整できることが判明している。
上述の表1では、電解質層(8YSZ)の厚さが3μmである場合のみの評価結果が示されているが、電解質層(8YSZ)の厚さが0.5〜10μmの範囲内に亘って、同様の実験が行われた。この結果、電解質層(8YSZ)の厚さが0.5〜10μmの範囲内に亘って、空気極層11cにおいて「比表面積を1.5〜9.0m/g」とし「細孔径を30〜100nm」とすることで「空気極層11cの反応ロスの増大」が抑制され得ることが確認されている。以下、このことについて付言する。
固体電解質層の厚さが0.5〜10μmと極めて薄い場合、固体電解質層のIR抵抗が極めて小さくなる。従って、固体電解質層内の酸素イオン伝導性が十分に大きくなる。これにより、空気極層における「酸素をイオン化する触媒反応」が促進され、且つ、空気極層の反応ロスも同時に小さくなる。即ち、固体電解質層の厚さが大きい場合に比して、非常に大きい出力が得られる。
ここで、非常に大きい出力が発生していることは、空気極層内において非常に大きい電流が流れていることを意味する。この結果、この大電流に起因して、「空気極層を構成する物質の粒子の成長(シンタリング)」がより顕著となるであろう、即ち、空気極層の比表面積がより減少して空気極層の反応ロスがより増大し易いであろう、と考えられる。このような状況下においても、空気極層11cにおいて「比表面積を1.5〜9.0m/g」とし「細孔径を30〜100nm」とすることで、上述した「空気極層の反応ロスの増大抑制効果」が十分に確保される。
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る平板スタック構造を有する固体酸化物型燃料電池(SOFC)10の薄板体11では、空気極層11cが、酸素イオン及び電子を通す混合導電性を有する物質(LSCF)の多数の粒子からなる多孔質焼成体であり、空気極層11cの比表面積が1.5〜9.0m/gであり、且つ空気極層11cの細孔径が30〜100nmである。また、薄板体11を構成する電解質層11a、燃料極層11b、及び空気極層11cの厚さがそれぞれ、0.5μm以上且つ10μm以下、5μm以上且つ500μm以下、及び、5μm以上且つ200μm以下である。これにより、SOFCの作動時間の増大に伴う「空気極層11cの反応ロスの増大」が抑制された極めて薄いSOFCの単セル用の薄板体が提供され得る。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、燃料極層11bは、白金、白金−ジルコニアサーメット、白金−酸化セリウムサーメット、ルテニウム、ルテニウム−ジルコニアサーメット等から構成することができる。
また、空気極層11cは、例えば、ランタンを含有するペロブスカイト型複合酸化物(例えば、上述のランタンストロンチウムコバルトフェライトのほか、ランタンコバルタイト、ランタンフェライト)から構成することができる。これらは、ストロンチウム、カルシウム、クロム、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム等をドープしたものであってよい。
加えて、上記実施形態においては、薄板体11及びセパレータ12の平面形状は正方形であるが、長方形、円形、楕円形等であってもよい。
本発明の実施形態に係る固体酸化物型燃料電池の破断斜視図である。 図1に示した燃料電池の部分分解斜視図である。 図2に示した1−1線を含むとともにx−z平面と平行な平面に沿ってセパレータを切断したセパレータの断面図である。 図1に示した薄板体及び薄板体を支持した状態におけるセパレータを、図2に示した2−2線を含むとともにy−z平面と平行な平面に沿って切断した縦断面図である。 図1に示した燃料電池における燃料と空気の流通を説明する図である。 図2に示した薄板体の部分側面図である。 IRロス、及び反応ロスを説明するための図である。
符号の説明
10…燃料電池、11…薄板体、11a…ジルコニア固体電解質層、11b…燃料極層、11c…空気極層、12…セパレータ、12a…平面部、12b…上方枠体部、12c…下方枠体部、21…空気流路、22…燃料流路

Claims (5)

  1. 固体電解質層と、前記固体電解質層の上面に形成されその上面から燃料ガスの供給を受ける燃料極層と、前記固体電解質層の下面に形成されその下面から酸素を含むガスの供給を受ける空気極層と、が積層・焼成されてなる固体酸化物型燃料電池の薄板体であって、
    前記空気極層は、ランタンを含有するペロブスカイト型複合酸化物であり、且つ、酸素イオン及び電子を通す混合導電性を有する物質の多数の粒子からなる多孔質焼成体であり、前記空気極層の比表面積が1.5〜9.0m/gであり、且つ、前記空気極層が30〜100nmの細孔径を有する固体酸化物型燃料電池の薄板体。
  2. 請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池の薄板体において、
    前記混合導電性を有する物質は、ランタンストロンチウムコバルトフェライトである固体酸化物型燃料電池の薄板体。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の固体酸化物型燃料電池の薄板体において、
    前記固体電解質層の厚さは、0.5〜10μmである固体酸化物型燃料電池の薄板体。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の固体酸化物型燃料電池の薄板体において、
    前記混合導電性を有する物質の粒子の平均粒径は、0.1〜5μmである固体酸化物型燃料電池の薄板体。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の1又は複数の薄板体と、
    前記1又は複数の薄板体を支持する複数の支持部材と、
    を備え、前記薄板体と前記支持部材とが1つずつ交互に積層されてなり、
    前記各薄板体について、前記薄板体と前記薄板体の上方に隣接する前記支持部材との間にて燃料ガスの流路である燃料流路が区画・形成され、前記薄板体と前記薄板体の下方に隣接する前記支持部材との間にて酸素を含むガスの流路である空気流路が区画・形成された固体酸化物型燃料電池。
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