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JP5259723B2 - 熱安定性が増大し、及び/又はカルシウム依存性が減少したバチルス・リケニフォルミスアルファ・アミラーゼの変異種 - Google Patents

熱安定性が増大し、及び/又はカルシウム依存性が減少したバチルス・リケニフォルミスアルファ・アミラーゼの変異種 Download PDF

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Description

核酸とそれによりコードされているポリペプチドが開示されている。前記ポリペプチドは、アルファ-アミラーゼ活性を有し、このポリペプチドはバチルスアルファアミラーゼの修飾された形態、特にバチルス・リケニフォルミスアルファ-アミラーゼであり、このポリペプチドは前記親アルファ-アミラーゼに関して以下の特性の少なくとも一つにおいて変化している。:基質特異性、基質結合、基質開裂パターン、熱安定性、pH活性プロファイル、pH安定性プロファイル、酸化安定性、Ca2+依存性、低下した及び増加したpIと改善された洗浄性能、特異的活性、安定性、例えば、高温及び/又は低pH条件下での安定性、特に低カルシウム濃度での安定性。
配列表
SEQ ID NOS:1-6を含む配列表も添付されている。これらは、引用により全てを明細書に組み入れられる。
本明細書に述べられたポリペプチドは、デンプン処理、エタノール製造、洗剤開発、皿洗い、堅い表面の洗浄、繊維の脱糊、及び/又は甘味料生産に適している。
デンプンは、アミロース(15-30 %w/w)とアミロペクチン(70-85%w/w)の混合物からなる。アミロースは、約60,000から約800,000までの分子量(MW)を有するα-1,4-結合グルコース単位の直鎖からなる。アミロペクチンは、24-30グルコース単位ごとのα-1,6分岐点のほか、同一の1,4-α-結合グルコース単位を含む分岐ポリマーである。その分子量は1億もの大きさがある。
デンプン由来の糖は、濃縮デキストロースシロップの形態で、現在、酵素触媒法により生産され、(1)アルファ-アミラーゼによる固体デンプンを液化(又は低粘度化)して約7-10の平均重合度をもつデキストリンに変えること、及び(2)得られた液化デンプンの糖化、つまり、アミログルコシダーゼ(または、グルコアミラーゼと呼ばれる)によるデンプン加水分解を含む。得られたシロップは高いグルコース含量を有する。産業上生産されているグルコースシロップの多くは、続いて酵素的に異性化されイソシロップとして知られているデキストロース/フルクトース混合物となる。
アルファ-アミラーゼ(EC3.2.1.1)は、デンプン、グリコーゲン、及び関連する多糖を、無作為に、内部α-1,4-グルコシド結合を開裂することにより加水分解する。これらの酵素は、デンプンの液化、繊維の脱糊、製紙、パルプ工業におけるデンプン修飾、穀物の処理、ベーキング、醸造等の多くの重要な産業的用途がある。アルファ-アミラーゼは、また、洗浄中にデンプン性の汚れを落とすため、漂白剤を含むものを含め、自動皿洗い洗剤と洗濯洗剤調合物でも使用できる。
アルファ-アミラーゼは多種類の細菌、菌類、植物及び動物から単離される。多くの産業的に重要なアルファ-アミラーゼがバチルス属の種、例えば、バチルス・リケニフォルミスから単離されている。これは一つには、培養培地中にアミラーゼを分泌するバチルスの高い性能のためである。B・リケニフォルミスアルファアミラーゼは、経済的に生産することができるが、ある用途では、B・リケニフォルミスアルファアミラーゼは、他のアルファ-アミラーゼと相当の構造上の相同性を有するにも係らず、この酵素は他のアルファ-アミラーゼほどに性能がない。近年、デンプン液化や繊維脱糊のような具体的用途に関し特性が改善されたアルファ-アミラーゼ変異種を構築することが試みられている。
工業的な液化法を含む種々の用途に有用なアミラーゼの特定と最適化について産業界で要望がある。これら第2世代の酸アミラーゼは、例えば、バチルス・リケニフォルミス由来の工業標準的酵素よりも改善された製造及び/又は性能特性を与えるであろう。従って、アルファ-アミラーゼの変異種について依然要望があり、即ち、対応する親アルファアミラーゼ(つまり、非変異のアルファ-アミラーゼ)と比較されるこの変異種は、アルファ-アミラーゼ活性を有するが、前記親アルファ-アミラーゼと比較して上記の性質の少なくとも1つが変化しているものである。
ある面では、親B・リケニフォルミスアルファ-アミラーゼの変異種であって、当該変異種がSEQIDNO:4と少なくとも約90%の配列同一性をもつアミノ酸配列をもち、SEQID NO:4に対応するS239置換を含み、前記変異種はアルファ-アミラーゼ活性を呈するものが考えられる。当該変異種はSEQID NO:2を含み得、又は、本質的にSEQIDNO:2から又は、SEQIDNO:2からなる。本変異種はS239Q又はS239AのいずれかのS239の置換体であり得る。別の面では、SEQID NO:4と少なくとも約95%同一性をもち、または少なくとも約98%配列同一性をもつ変異種が考えられる。
別の面では、SEQIDNO:4のアルファ-アミラーゼと比べ融点の変化した変異種が考えられる。または、考えられる変異種はカルシウムの添加を必要としない。
別の面では親B・リケニフォルミスアルファアミラーゼの変異種をコードする単離された核酸が考えられる。ここで、前記変異種はSEQID NO:4に対応するS239置換を有し、SEQIDNO:4と少なくとも約90%の配列同一性を有し、前記変異種はアルファ-アミラーゼ活性を呈するものである。この単離された核酸はSEQIDNO:2を含み得、又は上記又はここで述べられた変異種のいずれかをコードする核酸である。別の面では、機能的に連結されるようにこの核酸を含むベクターが考えられる。別の面では、この核酸は宿主細胞にあることが考えられ、おそらくその宿主細胞にある前記核酸を含むベクター内にあることが考えられる。この宿主細胞は細菌又は菌類であり得る。本細菌はバチルス・スブチリス、B・リケニフォルミス、B・レンツス、B・ブレビス、B・ステアロテルモフィルス、B・アルカロフィルス、B・アミロリケファシエンス、B・コアグランス、B・サーキュランス、B・ラウツス、B・スリンギエンシス、ストレプトマイセス・リビダンス、及びB・ムリヌスからなる群から選択されるグラム陽性細菌であり得、またはグラム陰性細菌(ここでグラム陰性細菌はエシェリキア・コリとシュードモナス属の種である)である。
別の面では、前記の、又はここで述べた変異種を含むデンプンを液化するための組成物が考えられ、ここで前記組成物は溶液である。別の実施態様では、擦りつぶしたトウモロコシまたはデンプンスラリーに、前記デンプンを液化するに十分な時間、本組成物を作用させることを含むデンプンの液化方法が考えられる。本組成物は約40-60μg/g乾燥固体で擦りつぶしたトウモロコシ又はデンプンスラリーへ加えることができる。このデンプン溶液はコーンスターチ溶液であり得る。別の面では、約85℃から約105℃でデンプンスラリーを液化することが考えられている。または、加えて、このデンプンスラリーは約pH4.5から約pH6.5で液化されうる。この液化物はさらに発酵されてエタノールを生産できる。さらにこの発酵工程は、野生型よりも少なくとも約2.5%v/v多くエタノールを生産することが考えられている。加えて、前記の液化と前記の発酵工程が同一の反応槽で同時に行えることは工業的に妥当である。これはカルシウムの存在下で行うことができ、しかし、また、この反応混合物にカルシウムを追加せずに行うことができる。
別の実施態様では上記又はここで述べられた変異種のいずれかを用いてデンプンを糖化する組成物が考えられている。当該デンプンを糖化する方法では前記デンプンを糖化するために十分な時間この変異種を含む組成物を作用させることが考えられる。カルシウムは追加する必要はない。
別の面では、洗剤添加物が考えられる。この洗剤添加物は上記又はここで述べられた変異種を含み得る。この洗剤添加物はさらに、セルラーゼ、プロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ハロパーオキシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、酸化酵素、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、パーオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、カラゲナーゼ、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される酵素を含み得る。
別の面では、洗剤組成物(表面、洗濯及び皿洗い用)が考えられる。洗剤組成物は上記又は本明細書で述べられる洗剤添加物を含み得ることが考えられる。これはさらに、セルラーゼ、プロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ハロパーオキシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、酸化酵素、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、パーオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、カラゲナーゼ、及びそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される一以上の酵素を含む。洗剤組成物はさらに上記界面活性剤のいずれかの組み合わせを含み得る。洗剤組成物は、界面活性剤、洗剤ビルダー、錯体形成剤、ポリマー、漂白系、安定化剤、発泡促進剤、泡抑制剤、腐食防止剤、汚れ懸濁剤、汚れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、ヒドロトロープ、光学的漂白剤、布地柔軟仕上げ剤、香料のうち1以上を含み得る。
別の面では、水溶液に上記又はここで述べられた変異種を、任意に別の酵素を含む繊維脱糊組成物が考えられている。また、繊維を脱糊するに十分な時間この脱糊組成物を作用させることを含む繊維を脱糊する方法が考えられている。本法では、カルシウムの追加は必要ない。
別の面では、上記又はここで述べられた変異種を含むデンプン処理組成物が考えられている。このデンプン処理組成物は、さらにグルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、フィターゼ、又はそれらの組み合わせを含むことが出来る。このデンプン処理組成物は前記デンプンを処理するために十分な時間この組成物を作用させることによりデンプンを処理するために利用できる。カルシウムの追加は必要はない。
さらなる面では、上記又はここで述べられた変異種を含むベーキング組成物が考えられる。別の面では、このベーキング組成物を投与することを含む前記組成物を用いるベーキングの方法が考えられる。
添付した図面は本明細書に組み入れられ、本明細書の一部を構成し、実施態様を説明する。図面では、
図1は、LAT S239変異種を産生するために使用されるプラスミドpHPLT−LATを示す。 図2は、30分間95℃で加熱ストレスを与えた後、LAT S239変異種のパーセント残存活性を示す。縦軸は加熱ストレス後の残存活性の%を示す。点線は野生型LATの加熱残存活性の標準偏差の2Xと3Xを加えた水準を表す。S239QとS239A変異種の両者は野生型LATと比較して熱安定性が向上している。観察された熱安定性の向上は統計学的に有意である。 図3は、緩衝液中で親の野生型LATと比較したLAT S239Q 変異種の残存活性を示す。この図は反応時間と反応pHに対して%残存アミラーゼ活性をプロットすることにより作成される。実施例3を参照されたい。 図4は、基質中の親野生型LATと比較した LAT S239Q変異種の残存活性を示す。この図は反応時間と反応pHの両者に対して%残存アミラーゼ活性をプロットすることにより作成される。実施例3を参照されたい。 図5は、親の野生型LATと比較したLAT S239Q変異種のpHプロファイルを示す。この図は反応pHに対して%残存アミラーゼ活性をプロットすることにより作成された。実施例3を参照されたい。 図6は、野生型LATと比較したLAT S239Q変異種の温度プロファイルを示す。この図は反応温度に対して総還元糖量(アミラーゼ反応の生成物として)をプロットすることにより作成された。実施例3を参照されたい。 図7は108℃と115℃でのFredと比較したLAT S239Q変異種で処理された全粒を磨り潰したトウモロコシのDEの進行を示す。このグラフは第2の液化時間に対して観測されたDEをプロットすることにより作成された。実施例6を参照されたい。 図8は種々のpHでFredと比較したLAT S239Qで処理を受けた全粒を磨り潰したトウモロコシのDEの進行を示す。このグラフは2次の液化の時間に対して観察されたDEをプロットすることにより作成される。実施例6を参照されたい。 図9は、pH5.6及び低カルシウムでのFredと比較したLAT S239Qで処理を受けた全粒を磨り潰したトウモロコシのDEの進行を示す。このグラフは2次の液化時間に対して観察されたDEをプロットすることにより作成される。実施例6を参照されたい。
詳細な説明
1. 定義と略号
この詳細な説明に従い、以下の略号と定義が使用される。本明細書で使用される場合、単数表記は、文脈が明確に別の場合を示すのではない限り、複数をも指す。従って、例えば、「ポリペプチド」は複数のポリペプチドを含み、「調合物」は一以上の調合物と本技術分野の技術者に知られているその等価物等を含む。
別に定義されている場合を除き、本明細書で使用される全ての技術的、科学的用語は本技術分野の通常の技術者により普通に理解されているのと同一の意味をもつ。以下の用語は下記のとおり。
1.1定義
「デンプン」は植物の複合多糖炭水化物からなる物質のいずれかをいい、化学式(C6H10O5)Xを有するアミロースとアミロペクチンからなる。ここで「X」はいずれの数字でも良い。特に、この用語は穀粒、イネ科植物、塊茎及び根、より具体的には小麦、オオムギ、トウモロコシ、ライ麦、コメ、モロコシ、ヌカ、キャッサバ、キビ、馬鈴薯、甘藷及びタピオカを非限定的に含むいずれかの植物性原料をいう。
「アミラーゼ」は酵素をいい、なかでもデンプンの分解を触媒できる酵素をいう。「アミラーゼ」は、例えば、グルコアミラーゼ、アルファ-アミラーゼ、β-アミラーゼ及びバチルス属の種の野生型アルファ-アミラーゼ、特に、B・リケニフォルミスのようないずれのアミラーゼも含む。アミラーゼはデンプンのα-D-(1→4)O-グルコシド結合を開裂する加水分解酵素である。一般的に、アルファ-アミラーゼ(EC3.2.1.1;α-D-(1→4)O-グルカン グルカノヒドロラーゼ)は、無作為にデンプン分子内のα-D-(1→4)O-グルコシド結合を開裂するエン型-作用酵素として定義される。それに対し、β-アミラーゼ(EC. 3.2.1.2:α-D-(1→4)-グルカン マルトヒドロラーゼ)のような、エキソ型アミロース分解酵素とマルトース生成アルファ-アミラーゼ(EC 3.2.1.133)のようないくつかの生成物特異的なアミラーゼは、基質の非還元末端からデンプン分子を開裂する。β-アミラーゼ、α-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20;α-D-グルコシドグルコヒドロラーゼ)、グルコアミラーゼ(E.C3.2.1.3;α-D-(1→4)-グルカン グルコヒドロラーゼ)及び生成物特異的アミラーゼはデンプンから特異的な長さのマルトオリゴ糖を生成できる。
「変異種」は、ポリペプチドと核酸の両者をいう。用語”variant”(変異種)は用語”mutant”と相互に変えて使用できる。変異種は、親配列であるアミノ酸配列又はヌクレオチド配列のそれぞれに、1以上の位置に挿入、置換、転換(transversion)、切断(truncation)、及び/または逆位(inversion)を含む。変異核酸は本明細書に表されている核酸配列にハイブリッド形成できる配列に相補的である配列を含み得る。例えば、変異配列は本明細書にある核酸配列に厳格な条件で(例.50℃及び0.2XSSC{1XSSC=0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム,pH7.0})ハイブリッド形成できる配列と相補的である。特に、本用語は、本明細書に記載された核酸配列に高度に厳格な条件(例.65℃及び0.1XSSC)でハイブリッド形成できる配列に相補的な配列を含む。
「単離された」とは、その配列が天然に組み合わされており及び天然に見出される少なくとも1個の他の成分を少なくとも実質的に含まないことをいう。「精製された」とは、その物質が比較的純粋な状態、例えば、少なくとも純度約90%、少なくとも純度約95%、少なくとも純度約98%、または少なくとも純度約99%であることをいう。
「熱的に安定」とは、酵素が対照酵素よりも熱的に安定であることをいう。本出願では、アルファ-アミラーゼ変異種が特定の時間、同一の実験条件、例えば、同一の温度、基質濃度等、に置かれた後、比較的高い酵素活性を持つ場合、アルファ-アミラーゼ変異種は野生型B・リケニフォルミスアルファ-アミラーゼよりも熱的に安定である。または、比較的熱的に安定な酵素は、対照酵素と比較したとき、示差走査熱量測定計により決定される比較的高い熱容量を有する。
ポリペプチドの「融点」は50%のポリペプチドサンプルが完全に変性される温度である。
「カルシウム依存性」は、酵素が指定用途で機能するため、カルシウムが加えられることが必要なことをいう。
「pH範囲」は、それより上又はそれより下で酵素が活性を示すpHをいう。本明細書で使用する場合、「pHに安定」とは、酵素が特定のpHで対照酵素よりも安定であることをいう。本出願では、アルファ-アミラーゼ変異種は、同一の実験条件で、例えば、同一pH等に特定の時間置かれた後、比較的高い活性を有する場合、野生型B・リケニフォルミスアルファ-アミラーゼよりもpHに安定である。
細胞、核酸、タンパク質又はベクターに使用される場合、「組換え」は細胞、核酸、タンパク質又はベクターが異種の核酸またはタンパク質の導入又は天然の核酸又はタンパク質の変化により修飾されたこと、またはその細胞がそのように修飾された細胞から生じていることを指す。例えば、組換え細胞はその細胞の固有(非-組み換え体)の状態では見いだされない遺伝子を発現し、または組み換えがされない場合には、発現されることが異常であり、又は全く発現されない固有の遺伝子を発現する。
本明細書で使用する場合、「食品」は調製された食品と小麦粉のような食品の原料を含む。
本明細書で使用する場合、「食品成分」は機能性食品に加えられる又は加えることのできる調合物と、例えば、酸性化又はエマルジョン化に要する、広い範囲の製品に低い水準で使用される調合物を含む。この食品成分は用途、及び/又は使用法及び/又は摂取方法により溶液又は固体の形態であっても良い。
本明細書で使用する場合「機能性食品」は栄養的効果及び/又は味覚の満足ばかりではなく、さらに消費者に有益な効果を与えることのできる食品をいう。
本明細書で使用する場合、「アミノ酸配列」は、用語「ポリペプチド」と同義語であり、用語「タンパク質」と交換して使用できる。いくつかの例では、用語「アミノ酸配列」「ペプチド」と「アミノ酸配列」と「酵素」。
本明細書で使用する場合、「ヌクレオチド配列」又は「核酸配列」はオリゴヌクレオチド配列又はポリヌクレオチド配列と変異種、相同体、断片とそれらの誘導体をいう。このヌクレオチド配列はゲノム由来、合成又は組み換え体であり、二重鎖又は一本鎖であり、センス鎖又はアンチ-センス鎖である。本明細書で使用する場合、用語「核酸配列」はゲノムDNA、cDNA、合成DNA、及びRNAを含む。
「ベクター」は一以上の細胞種に核酸を導入するために設計されたポリヌクレオチド配列をいう。ベクターはクローニングベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、ファージ粒子、カセット等を含む。
本明細書で使用する場合「発現ベクター」は適した宿主内でDNAの発現を行うことのできる、適した調節配列に機能的に連結されたDNA配列を含むDNA構造体をいう。そのような調節配列は転写を行うプロモーター、転写を調節する任意のオペレーター配列、mRNAに適したリボゾーム結合部位をコードする配列、エンハンサー及び転写と翻訳の終了を調節する配列を含んでも良い。
「シグナル配列」はタンパク質のN-末端に結合したアミノ酸の配列をいい、細胞の外にそのタンパク質の成熟形の分泌を促すものである。シグナル配列の定義は、機能的なものである。細胞外タンパク質の成熟形は、シグナル配列が分泌過程で切断されるので、シグナル配列を欠く。
「遺伝子」はポリペプチドの産生に関与するDNA配列をいい、各コード部分(エキソン)の間にある介在配列(イントロン)のようにコード領域の前と後の領域を含む。
「プロモーター」は、遺伝子の転写を開始するため、RNAポリメラーゼの結合に係る調節配列である。このプロモーターは、誘導的プロモーター又は構成的プロモーターでも良い。本明細書で使用されるプロモーターの例はトリコデルマ・レセイcbh1であり、これは誘導的プロモーターである。
「転写調節下」とはポリヌクレオチド配列、普通DNA配列、の転写が、転写の開始に寄与し又は転写を促す因子に機能的に連結していることに依存していることを指す、本技術分野で良く理解されている用語である。
「翻訳調節下」とは、mRNAが形成された後起こる調節過程を指す、本技術分野で良く理解されている用語である。
タンパク質とこれをコードする遺伝子を記述する際に、本明細書で使用されるとき、遺伝子を表す文字はイタリック体表示される。(例.amyL(B・リケニフォルミス AA)をコードする遺伝子はamyLと表記される)タンパク質を表す文字は一般的にはイタリック体ではなく、一般的に最初の文字が大文字となる(例.amyL遺伝子によりコードされるタンパク質はAmyL又はamyLと表記される)
用語「由来する」は用語「・・が起源の」、「得られる」又は「得ることが出来る」及び「・・から単離される」を含む。
「機能的に連結する」とは因子が機能的に関連しているように並置されている状態にあることをいう。例えば、プロモーターは、それがコード配列の転写を調節している場合、コード配列に機能的に連結している。
「選択マーカー」は、導入された核酸又はベクターを含む宿主の選択を容易にするために宿主で発現できる遺伝子をいう。選択マーカーの例は抗菌剤(例.ハイグロマイシン、ブレオマイシン又はクロラムフェニコール)及び/又は、宿主細胞に栄養上の優位性のような、代謝上の優位性を与える遺伝子を非限定的に含む。
細胞へ核酸配列を挿入する文脈において「導入された」とは、「トランスフェクション」、又は「形質転換」又は「形質導入」をいい、核酸配列が真核又は原核細胞への核酸配列の導入をいうばあいを含む。この場合、細胞のゲノム(例.染色体、プラスミド、プラスチド又はミトコンドリアDNA)に導入され、または自律的複製単位に転換され、又は一時的に発現される(例.トランスフェクションされたmRNA)。
本明細書で使用する場合、「形質転換された細胞」は組換えDNA技術を用いて形質転換された細胞を含む。形質転換は通常、一以上の核酸配列を細胞へ挿入することにより生じる。挿入された核酸配列は、異種の核酸配列、つまり、融合タンパク質のように形質転換される細胞に固有でない配列でも良い。
「宿主株」または「宿主細胞」は開示に従い変異アルファ-アミラーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター又はDNA構造体に適した宿主をいう。具体的には、宿主株は細菌細胞である。本開示の実施態様では、「宿主細胞」は細胞と、微生物株、特にバチルス属の種の細胞から作られたプロトプラストの両者をいう。
別の配列とあるパーセント(例.少なくとも約80%、約85%、90%、95%、又は99%)の配列同一性をもつポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、位置合わせされたときに、2配列を比較するとそのパーセントの塩基又はアミノ酸残基が同一であることをいう。この位置合わせとパーセント相同性と同一性は本技術分野で知られているいずれかの適したソフトウェアプログラム、例えば、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M. Ausubel ら(編)1987、補遺30、セクション7.7.18)で述べられているものを用いて決定できる。そのようなプログラムは、GCCパイルアッププログラム(Pileup program)、FASTA(Pearsonら(1988) Proc. Natl,Acad.Sci USA 85:2444-2448)、及びBLAST(BLAST Manual, Altschulら、Nat’l Cent. Biotechnol.Inf., Natl Lib.Med.(NCIB NLM NIH),Bethesda, Md.,and Altschulら(1997) NAR 25:3389-3402)を含んでも良い。別の位置合わせプログラムは、初期値のパラメーターを使用したALIGN Plus(Scientific and Educational Software, PA)である。使用される別の配列ソフトウェアプログラムは、Sequence Software Package Version 6.0(Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, WI)のなかで利用できるTFASTA Data Searching Programである。
本技術分野の技術者は、開示に含まれる配列が、例えばamyL配列(例.WO06/002643のSEQ ID NO:7)と厳格なハイブリッド形成条件下で、ハイブリッド形成する性能によっても定義されることを認識するだろう。核酸は、核酸の一本鎖が、温度と溶液のイオン強度の適当な条件下で他の核酸にアニールできるとき、その別の核酸配列とハイブリッド形成しうる。ハイブリッド形成と洗浄条件は本技術分野で良く知られている(例.Sambrook(1989)上記、特に9章と11章)。いくつかの実施態様では、厳格な条件は65℃のTm、及び0.1xSSC、0.1% SDSに対応する。
「培養」は液体又は固体培地で適当な条件下、微生物の細胞の数を増やすことをいう。一実施態様では、培養は顆粒デンプンを含むデンプン基質を発酵的に生物により転換し目的生成物とすることをいう(通常、反応槽又は反応器内)。
「発酵」は、より単純な有機化合物を生産するための微生物による有機基質の酵素的及び嫌気的な分解をいう。嫌気的条件で発酵は起こるが、この用語は厳格な嫌気的条件にのみ限定されることを意図していない。なぜなら、発酵は酸素存在下でも起こるからである。
「接触する」は酵素が基質を目的生成物に変換できるよう各酵素を各基質に十分に近く置くことを言う。本技術分野の技術者は、各基質と酵素の溶液を混合することが接触を達成できることを認識するであろう。
「酵素的転換」は一般に、酵素の作用により基質を修飾することをいう。本明細書で使用するときこの用語は酵素の作用によるデンプン基質の修飾もいう。
本明細書で使用するとき、「糖化」とはデンプンをグルコースへ酵素的に転換することをいう。「ゼラチン化」はクッキングによりデンプン分子を可溶化し粘性の懸濁物を形成することをいう。
「液化」はゼラチン化されたデンプンが加水分解され低分子量の可溶性デキストリンを与えるデンプン転換中の工程をいう。
「重合度(DP)」は、所与の糖類中の無水グルコピラノース単位の数(n)をいう。DP1の例は例えば、グルコースとフルクトースのような単糖である。DP2の例は例えばマルトースとスクロースのような二糖である。DP>3は3より大きい重合度をもつポリマーを表す。
「目的生成物」又は「所望の目的生成物」はデンプン基質から酵素的に転換されたいずれかの炭素源由来分子生成物をいう。本明細書で使用する場合、「乾燥固体含量(ds)」は乾燥重量ベース%で表したスラリー中の総固体量をいう。用語「スラリー」は不溶性固体を含む水性の混合物をいう。
用語「残留デンプン」はデンプンを含む基質の発酵の後、組成物の中に残された残存デンプン(可溶または不溶)をいう。
「リサイクル工程」はデンプンを含む基質を発酵するために残存デンプン、酵素及び/又は微生物を含みうる、マッシュの成分の再使用をいう。
用語「マッシュ」は発酵生産物、例えばアルコールを生産するために使用される水の中にある発酵可能な炭素源(炭水化物)の混合物をいう。いくつかの実施態様では、用語「ビール」と「マッシュ」は交換して使用される。
「スチレージ」は発酵を受けなかった固体と水の混合物をいい、発酵されたマッシュからアルコールを除いた後の残留物である。
用語「蒸留穀物残渣(DDG)」と「蒸留穀物粕(DDGS)」は、穀物の発酵の有用な副産物をいう。
本明細書で使用する場合、「エタノール産生微生物」は、糖又はオリゴ糖をエタノールに転換する能力をもつ微生物をいう。エタノール産生微生物は、それぞれ、又は一緒になって糖をエタノールに転換する一以上の酵素を発現する微生物の能力によりエタノールを産生する。
本明細書では、「エタノール産生体」または「エタノール産生微生物」は、ヘキソース又はペントースからエタノールを生産できるいずれかの生物又は細胞をいう。一般的に、エタノール生産細胞はアルコールデヒドロゲナーゼとピルベートデカルボキシラーゼを含む。エタノール産生微生物の例は酵母のような菌類の微生物を含む。
ポリヌクレオチド又はタンパク質に関して「異種」は、宿主細胞に天然に生じないポリヌクレオチド又はタンパク質をいう。いくつかの実施態様では、タンパク質は営業上重要な工業用タンパク質である。この用語は、天然に生じる遺伝子、変異遺伝子、及び/又は合成遺伝子によりコードされるタンパク質を含むことが意図されている。
ポリヌクレオチド又はタンパク質に関し「内因性」は、宿主細胞に天然に生じるポリヌクレオチドまたはタンパク質をいう。
本明細書で使用される場合、細胞に関して使用される「形質転換された」、「安定に形質転換された」、及び「遺伝子導入」は、細胞が、固有でない(例.異種の)核酸配列を、そのゲノムに組み入れて、又は幾世代を通じて維持されるエピソームプラスミドとして有することを意味する。
本明細書で使用される場合、「発現」はポリペプチドが遺伝子の核酸配列に基づき産生される過程をいう。この過程は転写と翻訳を含む。
本明細書で使用される場合、「特異的活性」は特異的な条件下で単位時間当たりに酵素調製物により産生物に転換される基質のモル数として定義される酵素単位をいう。特異的活性は、タンパク質の単位(U)/mgとして表わされる。
「収量」は、本開示の方法を使用して産生される目的産生物又は所望の目的産生物の量をいう。いくいつかの実施態様では、この収量は本技術分野で知られている方法を使用して産生されるよりも大きい。いくつかの実施態様では、この用語は目的産生物の容量をいい、他の実施態様では、この用語は目的産生物の濃度をいう。
本明細書で使用される場合、「生物学的に活性」は天然に生じる配列と類似する構造的、調節的又は生化学的機能を有する配列をいうが、必ずしも同程度ではないものをいう。
「ATCC」は、Manassas, Va. 20108にあるAmerican Type Culture Collection (ATCC)をいう。
「NRRL」は、Agricultural Research Service Culture Collection, National Center for Agricultural Utilization Research (及び従来、USDA Northern Regional Research Laboratoryとして知られていた)、Peoria、IIIをいう。
1.2 略号
別に記載がない場合、以下の略号が使用される。
AE アルコールエトキシレート
AEO アルコールエトキシレート
AEOS アルコールエトキシ硫酸塩
AES アルコールエトキシ硫酸塩
AFAU 酸菌類アルファ-アミラーゼ単位
AGU グルコアミラーゼ活性単位
AOS α-オレフィンスルホン酸塩
AS アルコール硫酸塩
BAA 細菌アルファ-アミラーゼ
cDNA 相補DNA
CMC カルボキシメチルセルロース
DE デキストロース当量
DNA デオキシリボ核酸
DNS 3,5-ジニトロサリチル酸
DP3 3個のサブユニットを有する重合度
DPn n個のサブユニットを有する重合度
DS 乾燥固体
DSC 示差走査熱量測定
DTMPA ジエチルトリアミン5酢酸
EC 酵素分類の酵素委員会
EDTA エチレンジアミン4酢酸
EDTMPA エチレンジアミン4メチレンホスホン酸
EO エチレンオキシド
F&HC 布地と家庭用品の手入れ
HFCS 高フルクトースコーンシロップ
HFSS 高フルクトースデンプンシロップ
HPAEC-PAD パルス電流滴定検出器を備えた高性能アニオン交換クロマトグラフィー
IPTG イソプロピルβ-チオガラクトシド
LAS 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩
LU リパーゼ単位
MES 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸
MW 分子量
nm ナノメーター
NOBS ノナノイロキシベンゼンスルホン酸塩
NTA ニトリロ3酢酸
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
PEG ポリエチレングリコール
pI 等電点
ppm百万分の一
PVA ポリ(ビニルアルコール)
PVP ポリ(ビニルピロリドン)
RAU 標準(reference)アミラーゼ単位
RMS 2乗平均平方根
RNA リボ核酸
rpm 毎分の回転数
SAS 2級アルカンスルホン酸塩
1XSSC 0.15M NaCl, 0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0
SSF 同時に行う糖化と発酵
TAED テトラアセチルエチレンジアミン
TNBS トリニトロベンゼンスルホン酸
w/v 重量/容量
w/w 重量/重量
wt 野生型
μl:マイクロリットル
1.3 用語法
本発明の説明と請求項では、アミノ酸残基の従来の1文字及び3文字コードが使用される。容易に理解できるよう、本出願のアルファ-アミラーゼ変異種は、以下の用語法を用いて記述される。
元のアミノ酸:位置:置換したアミノ酸
この用語法によれば、例えば、242におけるアラニンによるセリンの置換は、以下のように示される。
Ser242Ala またはS242A
30におけるアラニンの欠失は以下のように表される。
Ala30またはA30またはΔA30
追加のアミノ酸残基、例えばリシンの挿入は、以下のように表される
Ala30AlaLys または A30AK
アミノ酸残基の連続した欠失は、例えばアミノ酸残基30-33、は以下のように表される。
(30-33) またはΔ(A 30-N33) またはΔ30-33
2個の連続したアミノ酸、例えば、アミノ酸残基R180-S181、は以下のように表される。
ΔRS またはΔ180-181
特定のアルファ-アミラーゼが、他のアルファ-アミラーゼと比較して「欠失」を含み、その位置に挿入がされている場合、36の位置にアスパルギン酸の挿入について
36Asp または36D

のように表される。複数の変異は+表示で識別される。例えば、
Ala30Asp+Glu34Ser または A30N+E34S
は、30と34の位置でアラニンとグルタミン酸それぞれをアスパラギン酸とセリンで置換する変異を表す。一以上の別のアミノ酸残基が所定の1箇所に挿入されるときは、
A30N,E またはA30NまたはA30E
と表される。
さらに、修飾に適した位置が、具体的な修飾が示されることなく、本明細書で指定されているときは、いずれのアミノ酸残基もこの位置にあるアミノ酸残基と置換できると理解されるべきである。従って、例えば、30におけるアラニンの修飾が述べられているが、特定はされていない場合、アラニンが欠失され又はいずれか他のアミノ酸、つまり、R、N、D、A、C、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、Y、Vのいずれか1個で置換されても良いと理解されるべきである。
さらに、「A30X」は、以下の置換のいずれか一つをいう。
A30R、A30N、A30D、A30C、A30Q、A30E、A30G、A30H、A30I、A30L、A30K、A30M、A30F、A30P、A30S、A30T、A30W、A30Y、またはA30V、
または、簡単には、
A30R,N,D,C,Q,E,G,H,I,L,K,M, F, P, S,T,W,Y,Vである。
番号付けに使用された、親酵素が、その位置での置換が示唆される当のアミノ酸残基を有する場合、以下の表記が使用される。
X30NまたはX30N,V
この場合、例えば、NまたはVのいずれか一つが野生型に含まれている。つまり、これは他の対応する親酵素が30で”Asn”または”Val”に置換されていることをいう。
2. アルファ-アミラーゼ変異種
明細書のアルファ-アミラーゼ変異種は野生型B・リケニフォルミス アルファアミラーゼから作成される。本発明は、向上した特異的活性、pHプロファイル、熱安定性、温度範囲プロファイル、カルシウムイオン要求性、または他の向上した特性を持ち得る。変異種は一般的に野生型B・リケニフォルミスアルファアミラーゼのアミノ酸配列の一以上の修飾を含む。野生型B・リケニフォルミスアルファ-アミラーゼはB・リケニフォルミスのいずれか天然に生じる株から単離され得る。
本開示のため、アミノ酸置換は例えば、M15Tと表示されても良い。「M15T」は、15のメチオニン(M)残基は、スレオニン(T)残基で置換されていることをいう。ここで、アミノ酸は本技術分野で一般に知られている1文字の略号により表されている。
野生型B・リケニフォルミスアルファ-アミラーゼのタンパク質操作は、改良された性質を持ちうる変異アルファ-アミラーゼを生成する。一面では、この変異酵素の一以上のアミノ酸残基は、無作為に修飾され、この修飾の効果は、変異種の宿主細胞での発現後、この変異種の性能特性の分析により決定される。別の面では、修飾の効果が予測できるように、この変異種のアミノ酸配列の修飾は、ガイドとして野生型B・リケニフォルミスアルファ-アミラーゼに非常に類似した構造をもつ「モデル」アルファ-アミラーゼを使用して、系統的に行われる。別の実施態様では、このモデル-アルファアミラーゼは、野生型B・リケニフォルミスアルファ-アミラーゼに関し改善された1以上の特性をもつ。例えば、モデルアルファ-アミラーゼは、より高い特異的活性、pH依存性、安定性、半減期、又はカルシウム結合定数、を有し、または特に有用な基質特異性等をもち得る。
モデルアルファ-アミラーゼが、変異アルファ-アミラーゼのアミノ酸の変更のデザインを導くために使用される場合、どのモデルアルファ-アミラーゼの残基がこの酵素の性能に寄与しているか正確に知る必要はない。しかし、変異アルファ-アミラーゼ中の1以上のアミノ酸、さらにはアミノ酸全体が修飾され、モデルアルファ-アミラーゼの相当するアミノ酸に変えられる。この場合の「相当する」アミノ酸は、一次アミノ酸配列の従来の位置合わせによっては決められず、2個の酵素のポリペプチド骨格の3Dの構造的位置合わせにより決められる。この変異種中の修飾を受けるアミノ酸は、例えば、酵素表面の電荷を帯びた残基、活性部位残基又はこのモデル酵素に特有の特定の二次構造因子に寄与する残基、として選ぶことが出来る。修飾を受けるべき残基はまた、その修飾が2個の酵素の間で保存されている3D構造、特に保存された二次構造因子、例えば、α-ヘリックス、β-シート、ターンを混乱させないということを基本として選択することができる。
例えば、酵素表面の電荷を帯びたアミノ酸の分布を変えることは、一般的にその酵素的性質を変えることができると知られている。例えば、Russellら “Rational modification of enzyme catalysis by engineering surface charge” Nature 328:496-500(1987)参照。同様にB・リケニフォルミスアルファ-アミラーゼの表面の一以上の残基は、この変異アルファ-アミラーゼの酵素的性質を変えるために修飾でき、この場合、修飾の選択はモデルアルファ-アミラーゼ上の表面電荷の分布によって行うことができる。この場合、「表面電荷」は、少なくとも部分的に溶媒に露出しているアミノ酸の電荷を帯びた側鎖から寄与を受けている。
変異アルファ-アミラーゼの残基は3個の構造的ドメイン(ここでドメインA、B、及びCと呼ぶ)の1個に属するものとして分類できる。本開示の場合、ドメインAは残基2-105と残基208-396であり、ドメインBは、残基106-207に及び、ドメインCは、このタンパク質の397からC末端に及ぶ。アミノ酸は、また活性部位残基としても分類できる。活性部位残基は、少なくとも49、52、163、167、170、172、187、188、190、238、262、264、293、297及び332−334にある。残基の「位置」はB・リケニフォルミスアルファアミラーゼ配列(SEQ ID NO:4)で記載されているように番号が付けられる。
この変異種アルファ-アミラーゼにおいては、一以上のアミノ酸がモデルアルファ-アミラーゼ中の相当するアミノ酸に変更できる。この修飾はドメインに集中し、及び/又は酵素の表面で電荷を帯び、存在するアミノ酸に集中する。又は、加えて、修飾は一以上の活性残基に対して行われても良い。このようにして、多くのアミノ酸修飾をすることができ、ここでこの修飾は変異アルファアミラーゼの性能特性に予測可能な効果を及ぼす。例えば、この変異種は、一以上のドメインで、全ての酵素表面で電荷をもつ残基を、モデルアルファ-アミラーゼの相当する残基に変えても良い。別の実施態様では、この変異種は残基を挿入しまたは欠失され、例えば、ループが挿入又は欠失され、この変異種のポリペプチド骨格がモデルアルファ-アミラーゼの構造により類似するようにできる。従って、この変異種がアルファ-アミラーゼ活性を保持する限り、変異種は1,2,3,4,5,10,15,20,30,40,50,60又は70個のアミノ酸置換、欠失又は挿入、またはその間の数のそれらを含むことが出来る。この変異種の表面電荷はいくつにでも変えられても良い。例えば、この酵素表面の正電荷を帯びた残基の数は、1,2,3,4,5,6,7または8だけ減らしても良い。そのようなアミノ酸置換は、とりわけ、この変異種の等電点(pI)を変えると予測される。この変異種の他の特性は下記のように、野生型酵素と異なるかもしれない。
アルファ-アミラーゼ変異種は、融合タンパク質、または「ハイブリッド」又は「キメラタンパク質」でもあり得、B・リケニフォルミスに内因性でないポリペプチド配列を含み得る。一実施態様では、このポリペプチド配列は発現されたタンパク質の精製を容易にする。一実施態様では、この異種配列はB・リケニフォルミスと異なる遺伝子又は種から生じるアルファ-アミラーゼポリペプチドである。例えば、このアルファ-アミラーゼ変異種は別のバチルスアルファ-アミラーゼ(例えば、B・ステアロテルモフィルスを非限定的に含む)のシグナルペプチドに連結したB・リケニフォルミスアルファアミラーゼの変異種を含み得る。
2.1 アルファ-アミラーゼ変異種の特性
酵素変異種は、核酸とポリペプチド配列、先に述べたその3D構造、及び/又は、その特異的活性により特徴づけることができる。このアルファ-アミラーゼ変異種の他の特徴は半減期、低濃度のカルシウム(Ca2+)での安定性、pH範囲、酸化状態及び熱安定性を含む。一面では、洗浄調合剤中のアルファ-アミラーゼ変異種は、比較的高い特異的活性をもち、これはこの分野の技術者に知られている標準的定量法を用いて評価できる。別の面では、変異種は、高温(つまり、70-120℃)、及び/又はpH限度(つまり、約pH4.0から約pH8.0又は約pH8.0からpH11.0)での改善された安定性、及び/または約60ppm未満のカルシウム濃度のような他の改善された機能特性を示す。
変化したCa2+安定性はCa2+を除いた条件下での酵素の安定性は変わり、つまり、向上し又は低下する。重要な変異はCa2+安定性と要求性を変えるものを含み、特に、高いpH(つまりpH8.0からpH10.5まで)でCa2+の依存性の低下した変異を含む。
さらに異なる面では、洗浄剤組成物中で使用するため、特に約10℃から約60℃の温度、特に約20℃から約50℃、及びさらに約30℃から約40℃の温度で、重要な変異種は変化した特異的活性を示す。ベーキング製品用には、重要な変異は、より高い温度範囲で変化した特異的活性を示し得る。
アルファ-アミラーゼ変異種はまた、親アルファ-アミラーゼと比較して、酸化安定性が変化し得、特に安定性が上昇し得る。例えば、高くなった酸化安定性は洗剤組成物中で有利であり、低下した酸化安定性はデンプン液化用の組成物で有利である。
変異アルファ-アミラーゼは野生型アルファアミラーゼよりも熱的に安定であり得る。そのようなアルファ-アミラーゼ変異種は、高い温度を必要とするベーキング又は他の製法での使用において有利である。例えば、熱的に安定なアルファ-アミラーゼ変異種は、約55℃から約80℃又はそれ以上の温度でデンプンを分解できる。熱的に安定なアルファ-アミラーゼ変異種は約95℃までの温度に暴露した後その活性を保持している。
本明細書に記載されているアルファ-アミラーゼ変異種のポリペプチドは、親酵素と比較して、特に、少なくとも約55℃から約95℃又はそれ以上の高い温度で、特に約80℃で、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%
またはそれ以上、半減期を長くする変異も含むことができる。一実施態様では、このアルファ-アミラーゼ変異種は約80℃以上で約1-10分加熱できる。
このアルファ-アミラーゼ変異種は、エキソ特異性を有しても良く、これは、例えば本明細書に記載されるエキソ特異性指数により測定される。アルファ-アミラーゼ変異種は親酵素又はこの変異種が作られた元のポリペプチドと比較して、高い又は大きくなったエキソ-特異性をもつ変異種を含む。従って、例えば、このアルファ-アミラーゼ変異ポリペプチドは親ポリペプチドと比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、500%、1000%、5000%、10,000%、それ以上のエキソ-特異性指数を持っても良い。
一面では、この核酸によりコードされているこのアルファ-アミラーゼ変異種ポリペプチドは親配列と同一のpH安定性をもつ。別の面では、この変異種は酵素の商業的用途向けに、より広いpH安定性範囲またはpH範囲を所望の領域に移す変異を含む。例えば、一実施態様では、この変異種は、約pH5.0から約pH10.5でデンプンを分解できる。このアルファ-アミラーゼ変異ポリペプチドは同一条件で親ポリペプチドと比較してより長い半減期又は高い活性(定量法により変わる)をもち得、またはこのアルファ-アミラーゼ変異種は親ポリペプチドと同一の活性を持ち得る。このアルファ-アミラーゼ変異種ポリペプチドは、同一のpH条件で、親ポリペプチドと比べて、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、またはそれより長い半減期を有し得る。または、加えて、この酵素変異種は同一のpH条件で親ポリペプチドと比較してより高い特異的活性を有し得る。
別の面では、本明細書に表されたアルファ-アミラーゼ変異種のいずれかをコードする核酸に相補的な核酸が提供される。さらに、この相補体とハイブリッド形成できる核酸が提供される。別の実施態様では、ここで述べられる本法と組成物で使用のための配列は合成的配列である。これは、例えば、メチロトローフな酵母、ピキアとハンセヌラのような宿主で発現するため最適化されたコドンにより作られた配列を、非限定的に含む。
3. アルファ-アミラーゼ変異種の産生
本明細書に記載された方法、又は本技術分野で知られているいずれか他の方法により産生された酵素変異種をコードするDNA配列は、通常、適したプロモーター、オペレーター、リボソーム結合部位、翻訳開始シグナル、抑制遺伝子又は種々の活性化遺伝子をコードする調節配列を含む発現ベクターを使用して、酵素の形で発現され得る。
3.1 ベクター
アルファ-アミラーゼ変異種をコードしているDNA配列を有する組換え発現ベクターは組換えDNA操作法を受けるに都合の良いいずれのベクターでも良く、ベクターの選択はベクターが導入される宿主細胞により変わることが多い。従って、ベクターは、自律的複製をするベクター、つまり、染色体外にあるベクターで、その複製は染色体の複製と独立しているものでも良く、例えば、プラスミド、バクテリオファージまたは染色体外因子、ミニ染色体または人工染色体がある。また、ベクターは宿主細胞に導入されたとき、宿主細胞の遺伝子に組み入れられ、組み入れた染色体とともに複製されるものでも良い。この組み入れられた遺伝子は、抗生物質による選択、または例えば、必須の調節遺伝子又は必須の代謝経路の遺伝子を補うことのような他の選択圧、により選択的な増幅を行う遺伝子構造体を用いることにより染色体内のこの遺伝子のコピーを多量に作成するため、複製される。
発現ベクターは通常、クローニングベクターの構成因子、例えば、選択された宿主細胞中でこのベクターを自律的に複製させる因子と選択のための一以上の検出可能な表現型マーカーを含む。発現ベクターは普通、プロモーター、オペレーター、リボソーム結合部位、翻訳開始シグナル、及び通常、抑制遺伝子又は一以上の活性化遺伝子をコードする調節核酸配列を含む。一面では、使用される全てのシグナル配列は、細胞培地へその物質を向かわせ酵素の収集と精製を容易にする。アルファアミラーゼ変異種をコードするDNA構造体、プロモーター、ターミネーターと他の因子、それぞれを連結し、それらの複製に必要な情報を含む、適したベクターに挿入するために使用される手順は、本技術分野の技術者に良く知られている(例.Sambrookら、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 第2版.,Cold Spring Harbor,1989及び第3版,2001参照)
ベクターでは、DNA配列は適したプロモーター配列に機能的に連結すべきである。このプロモーターは、選択した宿主細胞中で転写活性を示すいずれのDNA配列でも良く、宿主細胞と同種又は異種のタンパク質をコードする遺伝子由来でも良い。特に細菌宿主において
アルファ-アミラーゼ変異種をコードするDNA配列の転写を指令する、適したプロモーターの例は、E.コリのlac オペロンのプロモーター、ストレプトミセス・セリカラーアガラーゼ遺伝子dagAまたはcelAプロモーター、バチルス・リケニフォルミス アルファ-アミラーゼ遺伝子(amyL)のプロモーター、バチルス・ステアロテルモフィルス マルトース産生アミラーゼ遺伝子(amyM)のプロモーター、バチルス・アミロリケファシエンスアルファ-アミラーゼのプロモーター(amy-Q)のプロモーター、バチルス・スブチリスxylAとxylB遺伝子のプロモータ等である。菌類の宿主の転写では、有用なプロモーターの例は、アスペルギルス・オリゼTAKAアミラーゼ、リゾムコール・ミヘイアスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニゲル中性アルファ-アミラーゼ、A・ニゲル酸安定アルファ-アミラーゼ、A・ニゲルグルコアミラーゼ、リゾムコル・ミヘイリパーゼ、A.オリゼアルカリプロテアーゼ、A・オリゼトリオースホスフェートイソメラーゼ、またはA・ニジュランスアセトアミダーゼをコードする遺伝子に由来するものである。アルファアミラーゼ変異種ポリペプチドをコードする遺伝子がE.コリのような細菌種で発現されるとき、適したプロモーターは、例えば、T7プロモーターとファージラムダプロモーター等のバクテリオファージプロモーターから選ぶことが出来る。酵母種での発現のための適したプロモーターの例は、サッカロミセス・セレビシエのGal 1とGal 10プロモーターとピキア・パストリスAOX1またはAOX2プロモーターを非限定的に含む。例えば、トリコデルマ・レセイにおける発現のために、CBHIIプロモーターもまた使用されても良い。
発現ベクターは、適した転写ターミネーター及び、真核生物では、アルファ-アミラーゼ変異種をコードするDNA配列に機能的に連結しているポリアデニル酸配列、も含む。終結配列及びポリアデニル酸配列はこのプロモーターと同一の起源に由来することが適当である。ベクターはさらに、その宿主細胞でベクターを複製させるDNA配列を含んでも良い。そのような配列の例はプラスミドpUC19、pACYC177、pUB110、pE194、pAMB1、pICatH、及びpIJ702の複製の起点である。
ベクターは、選択マーカーも含み、例えば、その遺伝子産生物が宿主細胞での欠損を補う遺伝子(例えば、B・スブチリス又はB・リケニフォルミス由来のdal遺伝子)又は、抗生物質耐性、例えばアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール又はテトラサイクリン耐性を与える遺伝子を含んでも良い。さらに、ベクターは、amdS、argB、niaD及びxxsC、ハイグロマイシン耐性を与えるマーカーのようなアスペルギルス選択マーカーを含んでも良く、または、この選択は本技術分野で知られている同時形質転換により達成され得る。WO91/17243参照。
3.2 変異発現と宿主
ある場合は、細胞内発現又は固体培養が有利である。しかし、例えば、ある細菌又は菌類を宿主細胞として使用するとき、この変異種を発現物が菌体外、培地中に出される場合が一般的に有利である。一般的に、本明細書で述べられたバチルスアルファ-アミラーゼは、発現されたプロテアーゼを培地へ分泌させるシグナル配列を含む。好ましい場合、このシグナル配列は異なるシグナル配列により置き換えられても良く、それぞれのシクナル配列をコードするDNA配列の置換により都合よく達成される。このシグナル配列は通常、3個のドメイン、N-末端ドメイン、H-ドメイン、及びC-末端ドメイン、をもつとして特徴づけられ、長さは18個から35個の残基である。
成熟タンパク質は、はじめは、別のバチルス属の種または親配列と同一の種に由来する前置タンパク質に結合した融合タンパク質の形態であり得る。B・リケニフォルミスでタンパク質を分泌するために、B・リケニフォルミスアルファアミラーゼのシグナルペプチドが使用されることが多い。しかし、他のバチルス属の種のアルファアミラーゼのシグナルタンパク質もまた置換し得る。
DNA構造体または発現ベクターを含む、単離された細胞は、アルファ-アミラーゼ変異種である組換え体の産生において宿主細胞として有利に使用できる。この細胞は、変異種をコードするDNA構造体により、宿主染色体に(一以上のコピーで)DNA構造体を組み入れることにより都合よく形質転換される。この組み入れは一般的に有利であると考えられている。なぜなら、DNA配列は細胞により安定に維持されやすいからである。DNA構造体の宿主染色体への組み入れは、従来の方法、例えば相同的組み換え又は異種組換えにより行っても良い。または、細胞は異なる種類の宿主細胞に関しては先に述べた発現ベクターにより形質転換されても良い。
適した細菌宿主生物の例は、B・スブチリス、B・リケニフォルミス、B・レンツス、B・ブレビス、B・ステアロテルモフィルス、B・アルカロフィルス、B・アミロリケファシエンス、B・コアグランス、B・ラウツス、B・メガテリウム及びB・スリンギエンシス等のバチルス属のようなグラム陽性細菌種、L.ラクチスのようなラクトコッカス属等の乳酸菌の種;L・ロイテリ(L.reuteri)等のラクトバチルス属の種;ロイコノストック(Leuconostoc)属の種;ペディオコッカス(Pediococcus)属の種;及びストレプトコッカス属の種である。または、E・コリ等のエンテロバクター科またはシュードモナス科に属するグラム陰性菌種の株が宿主生物として選択できる。
適した酵母宿主は、ピキア属の種、ハンセヌラ属の種、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属の種、ヤロウィニア(Yarrowinia)属の種、S・セレビシエ等のサッカロマイセス属の種、または、S・ポンベのようなシゾサッカロマイセス属に属する種を非限定的に含む生物工学的に適切な酵母の種から選択され得る。メチロトローフな酵母の種、ピキア・パストリスの株は宿主生物として使用できる。また、宿主生物はハンセヌラ属の種でありえる。糸状菌の中で適した宿主生物は、アスペルギルス属の種、例えば、A・ニゲル、A・オリゼ、A・ツビゲンシス、A・アワモリ、またはA・ニジュランス、を含む。また、フサリウム属の種の株、例えば、フサリウム・オキシスポラムまたはリゾムコル属の種、例えば、R・ミヘイが宿主生物として使用できる。他の適した酵母はテルモマイセス属の種とムコル属の種を含む。菌類の細胞は、本技術分野で知られている方法によるプロトプラスト形成とプロトプラストの形質転換、その後の細胞壁の再生を含む処理により形質転換されても良い。アスペルギルス宿主細胞の形質転換に適した方法は、例えば、ヨーロッパ特許第238023号で述べられている。
さらに別の面では、アルファアミラーゼ変異種の産生方法が与えられ、この方法は、この変異種を産生させる条件下で先に述べたように宿主細胞を培養し、この細胞及び/または培地から変異種を回収することを含む。この細胞を培養するために使用される培地は、その宿主を培養し、アルファ-アミラーゼ変異種を発現させるに適したいずれの従来の培地でも良い。適した培地と培地成分は、市販業者から入手でき、または公表された方法、例えばAmerican Type Culture Collection (ATCC)のカタログに述べられたものに従い調製され得る。培地の例は3,000Lの撹拌発酵タンク(これは後の実施例で使用された)で行われるフェドバッチ(fed-batch)発酵用の培地を非限定的に含む。使用された培地は、培養を受けている宿主細胞に最も適しているものであり、例えば、バチルス・リケニフォルミスの培養のための後に述べられる培地である。この場合の培地は、有機化合物源としてコーンスティープソリッドと大豆粉末、及びナトリウム、カリウム、リン酸塩、マグネシウム、硫酸イオン及び微量元素の源としての無機塩から成り得る。通常、グルコースのような炭水化物源も初期培地の成分である。培地が調製され、培養が始まった後、本技術分野で知られているように培養を維持するために炭水化物が培養タンクに秤取される。サンプルが、例えば、熱量測定法を用いて酵素力価を測定するために一定間隔で発酵槽から取り出される。発酵は、測定により酵素産生速度が上昇をやめたとき、止められる。
宿主細胞から分泌されるアルファ-アミラーゼ変異種は、遠心分離またはろ過による培地からの細胞の分離、硫酸アンモニウムのような塩による培地のタンパク質性の成分の沈殿、続いてイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等のようなクロマトグラフィーを用いた方法を使用する等の、既知の方法により培地から便利な方法で回収され得る。
宿主細胞はアルファ-アミラーゼ変異種タンパク質を発現させる、適した条件下で培養され得る。タンパク質の発現は恒常的で、継続的に産生されても良く、または発現を始めるために刺激を必要とする誘導的発現であっても良い。誘導的発現の場合、タンパク質の産生は、誘導基質、例えば、デキサメタゾン、IPTG、またはセファロースを培地へ加えることにより必要になったとき開始され得る。ポリペプチドは、またTnT(商標)(Promega)ウサギ網状赤血球系のような、生体外非細胞系で組換えにより産生できる。
宿主を発現するアルファ-アミラーゼ変異種も宿主に適当な培地で好気的条件で培養できる。振とうまたは撹拌とエアレーションの組み合わせにより、その宿主に適した温度、例えば約30℃から約75℃(宿主と所期のアルファアミラーゼ変異種の要請により変わる)で産生される。培養は約12時間から約100時間またはそれ以上(その間にあるいずれかの時間)または、より特定すれば約24時間から約72時間、続けることができる。通常、液体培地は約5.5から約8.0のpHであるが、アルファ-アミラーゼ変異種の産生に係る宿主細胞に必要な培養条件により、また変わる。
4. アルファ-アミラーゼ変異種の精製
発酵、分離及び濃縮技術は本技術分野で知られており、従来の方法が濃縮アルファ-アミラーゼ変異種含有液を調製するために使用できる。発酵の後、発酵液体培地が得られ、微生物細胞と残存発酵原料を含む種々の懸濁固体が従来の分離技術により取り除かれアミラーゼ溶液を得る。ろ過、遠心分離、マイクロフィルトレーション、ロータリーバキュームドラムろ過、続いて限外ろ過、抽出またはクロマトグラフィー等が一般的に使用される。
回収を最適化するためにアルファ-アミラーゼ変異種を含む溶液を濃縮することが望ましい。なぜなら、濃縮されていない溶液の使用は精製されたアルファ-アミラーゼ変異種を含む沈殿物を収集するため、定温放置時間を長くする必要があるからである。この溶液は好ましい酵素濃度水準が得られるまで、従来の技術を用いて濃縮される。酵素変異種含有溶液の濃縮は先に述べた技術のいずれを用いても行っても良い。一実施態様では、ロータリーバキューム蒸発及び/または限外ろ過が使用される。または、限外ろ過が使用できる。
精製のための「沈降剤」は、濃縮酵素変異種溶液からアルファ-アミラーゼ変異種を、(固体の性質がどのようなものであっても、つまり、結晶性、無晶性またはそれの混合物であっても良い)で沈殿させるために有効な化合物をいう。沈殿は、例えば、ハロゲン化金属の沈殿剤を用いて行うことができる。ハロゲン化金属沈殿剤は:アルカリ金属塩化物、アルカリ金属臭化物、これらの金属ハロゲン化物の2以上の混合物を含む。ハロゲン化金属は塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、これらのハロゲン化金属の2以上の混合物からなる群から選択され得る。適した金属ハロゲン化物は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、特に塩化ナトリウムであり、これらは、保存剤としても使用できる。
ハロゲン化金属沈殿剤はアルファ-アミラーゼ変異種を沈殿させるための有効量で使用される。酵素変異種を沈殿させるため有効なハロゲン化金属の、少なくとも有効量と最適量の選択は、定温放置時間、pH、温度及びアルファ-アミラーゼ変異種の濃度を含む最大の回収のための沈殿条件とともに、日常的な試験の後、本技術分野の普通の技術者には容易に分かるであろう。
一般的に、少なくとも約5% w/v(重量/容量)から約25% w/vのハロゲン化金属が濃縮酵素変異種溶液に加えられるが、普通、少なくとも約8% w/vである。一般的に、約25%w/v以下のハロゲン化金属が濃縮酵素変異種溶液に加えられ、普通には、約20%w/v以下である。ハロゲン化金属沈殿剤の最適濃度は、とりわけ、特定のアルファ-アミラーゼ変異種の性質と濃縮アルファ-アミラーゼ変異種溶液での濃度に依存するであろう。
酵素の沈殿を行うための別法は、有機化合物の使用であり、これは濃縮酵素変異溶液に加えることができる。有機化合物の沈殿剤は、4-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩、4-ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、これらの有機化合物の2以上の混合物を含み得る。有機化合物沈殿剤の添加はハロゲン化金属沈殿剤の添加の前、同時に又はその後に行われ得、有機化合物またはハロゲン化金属の両沈殿剤の添加が連続的に、または同時に行われても良い。さらに詳しい説明については、例えばGenencorの米国特許第5,281,526号を参照されたい。
一般的に、有機化合物沈殿剤は4-ヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩、例えば、ナトリウムまたはカリウム塩と、4-ヒドロキシ安息香酸の直鎖又は分岐アルキルエステルからなる群から選択される。ここで、このアルキル基は1から12個の炭素原子と、2以上のこれらの化合物の混合物を含む。有機化合物沈殿剤は、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸の直鎖または分岐アルキルエステル(アルキル基は1から6個の炭素原子を含む)及び、2以上のこれらの化合物の混合物であり得る。適した有機化合物は、4-ヒドロキシ安息香酸の直鎖アルキルエステルであり、このアルキル基は1から6個の炭素原子と、2以上のこれらの有機化合物の混合物を含む。4-ヒドロキシ安息香酸のメチルエステル、4-ヒドロキシ安息香酸のプロピルエステル、4-ヒドロキシ安息香酸のブチルエステル、4-ヒドロキシ安息香酸のエチルエステル、及びこれらの有機化合物2以上の混合物も使用できる。追加の有機化合物は、4-ヒドロキシ安息香酸のメチルエステル(メチルパラベン)と4-ヒドロキシ安息香酸のプロピルエステル(プロピルパラベン)も非限定的に含み、これらは、アミラーゼの保存剤でもある。
有機化合物沈殿剤の添加はpH、温度、アルファ-アミラーゼ変異種濃度、沈殿剤濃度、定温放置時間に関する沈殿条件について高い柔軟性という利点を与える。
有機化合物沈殿剤は、ハロゲン化金属沈殿剤による酵素変異種の沈殿を改善するため、有効量で使用される。有機化合物沈殿剤の少なくとも有効量と最適量の選択は、定温放置時間、pH、温度、酵素変異種の濃度等の最大の回収を行うための沈殿条件を選択することと同様に、通常の試験後に、この開示を考慮して、本技術分野の普通の技術者に容易にできる。
一般的に、少なくとも約0.01%w/vの有機化合物沈殿剤が濃縮酵素変異種溶液に加えられるが、普通少なくとも、約0.02% w/vである。一般的に、約0.3%w/v以下の有機化合物沈殿剤が濃縮酵素変異種溶液に加えられるが、普通は約0.2%w/v以下である。
ハロゲン化金属沈殿剤、一面では、有機化合物沈殿剤を含む、濃縮酵素変異種溶液は、精製される酵素変異種により必然的に変わるpHに調整される。一般的にはpHはアミラーゼの等電点(pI)付近の水準に調整される。例えば、pHはpIの下、約2.5pH単位から、pIの上約2.5pH単位の範囲内に調整できる。説明のため、アルファ-アミラーゼ変異種がB・リケニフォルミスから生じるときは、濃縮された酵素変異種溶液は、普通約5.5と9.7の間のpH、特に約6.5と9.0の間のpHに調整される。変異種のpIが野生型のpIと異なるときは、それに従い調整され得る。
精製された酵素変異種沈殿物を得るために必要な定温放置時間は特定の酵素変異種の性質、酵素の濃度と具体的沈殿剤とその濃度により変わる。一般的に、酵素変異種を沈殿させるための有効な時間は約1時間と約30時間の間である。普通、約25時間を越えない。有機化合物沈殿剤の存在下では、定温放置時間は、さらに約10時間未満まで、大抵の場合、約6時間まで短縮できる。
一般的に、定温放置の温度は約4℃と約50℃の間である。普通、本法は約10℃と約45℃の間の温度で行われ、特に約20℃と約40℃の温度で行われる。沈殿を起こさせる最適温度は溶液状態、酵素変異種、使用される沈殿剤により変わる。
精製酵素変異種の沈殿物の全ての回収とその工程が行われる効率は、酵素変異種を含む溶液の撹拌、添加するハロゲン化金属、添加する有機化合物により改善される。撹拌工程はハロゲン化金属と有機化合物の添加の間とその後の定温放置の間の両者で行われる。適した撹拌方法は、機械的撹拌、振とう、激しいエアレーションまたはいずれかの似た技術を含む。
定温放置時間が経過後、精製された酵素変異種は、従来の分離技術、例えば、ろ過、遠心分離、精密ろ過、ロータリーバキュームろ過、限外ろ過、加圧ろ過、クロスメンブレン精密濾過、クロスフローメンブレン精密濾過等により、分離した色素や他の不純物から分離され収集される。クロスメンブレン精密ろ過が使用される一方法である。精製された酵素変異種沈殿物は、水で沈殿物を洗浄することによりさらに精製される。例えば、精製された酵素変異種沈殿物はハロゲン化金属沈殿剤を含む水、例えば、ハロゲン化金属と有機化合物沈殿剤を含む水により洗浄される。
培養中、熱的に安定なアミラーゼは、液体培地中、菌体外に蓄積する。所期のアルファ-アミラーゼ変異種の単離と精製のため、この液体培地は、細胞を除くために遠心分離又はろ過され、その結果得られた細胞を含まない液が酵素の精製のために使用される。一実施態様では、この細胞を含まない液体培地は、飽和の約70%で硫酸アンモニウムを使用して塩析を受ける。この70%飽和-沈殿部分は、次に緩衝液に溶解され、Sephadex G-100カラムのようなカラムに加えられ、酵素変異種活性部分を回収するために溶出される。さらに精精製するため、イオン交換クロマトグラフィーのような従来の方法も使用できる。
精製された酵素は、この酵素が一般的に使用される全ての用途に有用である。例えば、洗濯用洗剤やシミ抜き剤で、食品産業、デンプン加工及びベーキング、消化剤としての医薬品組成物で使用できる。これらは、液体(溶液、スラリー)または固体(顆粒、粉末)である最終製品に含めることができる。
別の方法により、酵素製品を回収することができ、凝集剤が培地に加えられて細胞と細胞の破片がろ過や遠心分離により除かれ、更に酵素を精製する必要はない。
先に述べられた方法により産生、精製されたアルファ-アミラーゼ変異種は、種々の有用な産業的用途で使用できる。これらの変異種は、布地や家庭用品の手入れ(F&HC)に関する使用を容易にする貴重な性質を有する。これらの変異種は、デンプンからの甘味料とエタノールの生産、及び/または繊維の脱糊で有用である。変異アルファ-アミラーゼは、例えば、WO2005/111203と米国の公開された出願第2006/0014265(Genencor Internatiuonal, Inc.)で述べられたようにデンプンの液化、及び/又は糖化工程等のデンプン転換工程で、特に有用である。この変異種は洗浄、皿洗い及び堅い表面洗浄洗剤組成物の成分としても、使用できる。アルファ-アミラーゼ変異種のこれらの用途は、下記に更に詳しく述べられている。
5. デンプン加工組成物と使用
別の面では、開示されたアルファ-アミラーゼ変異種を含む組成物はデンプンの液化及び/又は糖化用に利用できる。デンプン加工は甘味料の生産、燃料又は飲料用のアルコール(つまり、飲用アルコール)の生産、飲料水の生産、ショ糖の加工、又は所望の有機化合物、例えば、クエン酸、イタコン酸、乳酸、グルコン酸、ケトン、アミノ酸、抗生物質、酵素、ビタミン及びホルモンの生産に有用である。デンプンのフルクトースシロップへの転換は普通、3つの連続した酵素的工程からなる。即ち、液化工程、糖化工程及び異性化工程である。液化工程において、変異B・リケニフォルミスアルファ・アミラーゼは、約pH5.5と約pH6.2の間のpH、約95℃から約160℃の温度で約2時間、デンプンをデキストリンへ分解する。これらの条件において酵素の安定性を最適化するために約1mMのカルシウム(約40ppmの遊離カルシウムイオン)が、通常加えられる。他のアルファ-アミラーゼ変異種は異なる条件を必要とするかもしれない。
液化工程の後、このデキストリンはグルコアミラーゼ(例.AGM(商標))と通常、分岐切断酵素、例えばイソアミラーゼまたはプルラナーゼ(例.Promozyme(登録商標))の添加によりデキストロースに転換できる。この工程の前に、pHが約4.5未満の値へ下げられ、高温(95℃以上)は維持され、液化アルファーアミラーゼ変異種の活性は変性される。温度は、約60℃まで低くされ、グルコアミラーゼと分岐切断酵素を加えることができる。この糖化工程は普通、約24から約72時間続く。
糖化工程の後、このpHは約6.0から約8.0、例えばpH7.5の範囲に上昇され、カルシウムがイオン交換によって除かれる。例えば、デキストロースシロップは、次に固定化されたグルコース異性化酵素(例えば、Sweetzyme(登録商標))を用いて高フルクトース含有シロップに変換される。
5.1 液化組成物と用途
従来のデンプン-転換工程、例えば、液化と糖化工程、が例えば米国特許第3,912,590号と欧州特許公開第252,730号と63,909号(引用により本明細書に組み入れられる)に述べられている。ある実施態様では、糖又は脂質の置換体のような低分子量の炭水化物成分へデンプンを分解する変換工程は、分岐切断工程を含む。デンプンを糖へ変換する場合、デンプンは解重合される。このような解重合工程は前処理工程と2又は3の連続する処理工程からなり、例えば、液化工程、糖化工程及び、所望の最終製品により異なるが、普通、異性化工程からなる。自然のデンプンは顕微鏡的な顆粒からなり、室温では水に不溶である。水性のデンプンスラリーが加熱されるとき、この顆粒は膨らみ、最後に破裂し、溶液にデンプン分子を分散させる。この「ゼラチン化」工程では、粘度に劇的な上昇がある。典型的な工業的方法では、固体の水準は30-40%であるから、このデンプンを取り扱えるように、デンプンは、稀釈され、または「液化」される。この粘度の低下は、今日では殆ど酵素的分解により得られる。
液化工程において、長鎖のデンプンは、アルファ-アミラーゼにより分岐及び直鎖の短い単位(マルトデキストリン)へ分解される。この液化工程は、約105-110℃で、5から10分間、次いで約95℃で1-2時間で行われる。pHは約5.5と約6.2の間である。これらの条件下、最適の酵素の安定性を得るため、1mMのカルシウムが加えられる(40ppm遊離カルシウムイオン)。この処理の後、液化されたデンプンは約10-15の「デキストロース当量」(DE)をもつ。
このアルファ-アミラーゼ変異種は、液化工程を行うために少なくとも1つの改善された酵素特性を与え得る。例えば、この変異アルファ-アミラーゼは、比較的高い活性を有しても良く、及び/又は、カルシウムの要求が低くなっている。遊離カルシウムの添加は、通常アルファ-アミラーゼの適切に高い安定性を確保するために、必要とされる。しかし、遊離カルシウムはグルコース異性化酵素の活性を強く阻害する。従って、カルシウムは、高い費用のかかる単位操作により、3-5ppm未満まで遊離カルシウム濃度を低下させる程度に、異性化工程の前に除かれなければならない。従って、カルシウムイオンを要しないまたはカルシウムの要求が低下したアルファ-アミラーゼ変異種が特に有利である。例えば、カルシウムイオン依存性の低いアルファ-アミラーゼ変異種は、低濃度の遊離カルシウム(<40ppm)で安定かつ高い活性があり、この組成物と方法に利用できる。そのようなアルファ-アミラーゼ変異種は約4.5から約6.5の範囲、例えば、約pH4.5から約pH5.5に最適pHを持つべきである。このアルファ-アミラーゼ変異種は特異的加水分解をするためそれのみで使用でき、または他のアミラーゼと組み合わされて広い活性領域をもつ「カクテル」を与える。
加工を受けるデンプンは高度に精製されたデンプン品質をもち、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99.5%の純度である。または、デンプンは胚芽部分と繊維のような非デンプン性部分を含む製粉された穀粒全体を含むもっと粗製のデンプンであり得る。この原料、例えば穀粒全体は、製粉されて中身が開き、さらに加工され得るようになる。2つの製粉工程が適している。:湿式製粉と乾式製粉である。また、トウモロコシの粒と製粉された粒も使用できる。乾式に製粉された穀粒は、デンプンに加え相当量の非デンプンの炭水化物成分を含んでいる。そのような不均一な原料がジェットクッキングにより加工されるとき、しばしばデンプンの部分的ゼラチン化のみが起こる。従って、ゼラチン化されていないデンプンに対する高い活性を有するアルファ-アミラーゼ変異種は、乾式製粉デンプンの液化及び/又は糖化ジェットクックを含む工程に用いることが有利である。
5.2 糖化組成物と用途
液化工程の後、マルトデキストリンはグルコアミラーゼ(例.OPTIDEX(登録商標)L-400)と分岐切断酵素、例えばイソアミラーゼ(米国特許第4,335,208号)またはプルラナーゼを加えることによりデキストロースへ転換される。この工程の前に、pHは4.5未満の値に下げられ、高温(95℃より高温)を維持し液化アルファ-アミラーゼを不活性化し、分岐切断酵素により適切に加水分解することの出来ない「パノース前駆体」と呼ばれる短鎖のオリゴ糖の生成を減らす。温度が約60℃まで低くされ、グルコアミラーゼと分岐切断酵素が加えられる。この糖化工程は24-72時間続く。
普通、液化工程の後アルファ-アミラーゼを変性するとき、糖化生成物の約0.2-0.5%は、プルラナーゼで分解できない、分岐した3糖、Glcpα1-6Glcpα1-4Glc(パノース)である。液化工程由来の活性なアミラーゼが糖化の間に含まれる(つまり、変性されていない)場合、この水準は約1-2%の高さになり得、これは、糖化の収量を大きく下げるので非常に望ましくないものである。
所望の最終糖製品が、例えば、高フルクトース含有シロップであるとき、デキストロースシロップはフルクトースに変換され得る。糖化工程の後、pHは約6-8の範囲の値、例えば、pH7.5に上げられ、カルシウムがイオン交換により除去される。このデキストロースシロップは次に、例えば、固定化されたグルコース異性化酵素(例えば、Gensweet(登録商標)IGI-HF)を用いて高フルクトース含有シロップに変換される。
6. エタノール製造法
一般的に、穀粒全体からのアルコール生産(エタノール)は4個の主要工程に分けることが出来る。つまり、製粉、液化、糖化及び発酵である。
この穀粒は構造を割り、更に加工を受け得るように製粉される。一般的に用いられる2つの工程は湿式又は乾式製粉である。乾式製粉では、全穀粒が製粉され、工程の他の部分で使用される。湿式製粉は胚芽とミール(デンプン顆粒とタンパク質)を非常に良く分離し、少しの例外を除き、複数のシロップを平行して生産する場所に用いられる。
液化工程では、このデンプン顆粒は加水分解により可溶化され、大部分が4より高いDPのマルトデキストリンとする。この加水分解は酸処理又は酵素的にアルファ-アミラーゼにより行われても良い。酸加水分解は限定的に使用される。原料は、製粉された穀粒全体またはデンプン加工の副産物でも良い。酵素的液化は通常、3段階の高温スラリープロセスとして行われる。このスラリーは約60-95℃の間、普通、約80-85℃の間に加熱され、酵素が加えられる。次に、スラリーは約95-140℃の間、通常約105-125℃の間でジェットクックされ、約60-95℃に冷却され、最終加水分解を行うためさらに酵素が加えられる。液化工程は約pH4.5-6.5、通常約5.0と約6.0の間のpHで行われる。製粉、液化された穀粒は,マッシュとしても知られている。
酵母により代謝できる低分子量の糖DP1−3を生産するために、液化から得られるマルトデキストリンはさらに加水分解されなければならない。この加水分解は通常グルコアミラーゼ、またはアルファ-グルコシダーゼ、または酸アルファ-アミラーゼを用いて酵素的に行われる。十分な糖化工程は72時間続いても良く、しかし、通常40-90分の予備的糖化、次いで発酵の間に糖化(SSF)を完結させることが普通である。糖化は一般的に約30-65℃の温度、通常、約60℃、及び約pH4.5で行われる。
通常、サッカロミセス属の種由来の酵母がマッシュに加えられ、発酵が24-96時間、例えば、35-60時間続けられる。温度は、約26-34℃の間であり、通常、約32℃、pHは約pH3-6、普通、約pH4-5である。最も広く使用されている方法は糖化のための保持時間がない糖化・発酵同時製法(SSF)であり、酵母と酵素が共に加えられる。SSFを行うとき、発酵の直前に予備糖化工程を約50℃より高い温度で導入することが普通である。
発酵の後、マッシュはエタノールを取り出すために蒸留される。本開示の方法に従って得られるエタノールは、例えば燃料エタノール、飲用エタノール、つまり、飲用のニュートラルスピリッツ又は工業用エタノールとして使用されても良い。発酵の残りは、穀粒であり、通常、液体で又は乾燥させて動物飼料に使用される。液化、糖化、発酵、蒸留及びエタノールの回収を行う方法について更に詳細は、技術者に良く知られている。本開示の方法によれば、糖化と発酵は同時に又は別に行っても良い。
7. 洗剤組成物と用途
本明細書に開示されているアルファ-アミラーゼ変異種は洗濯、皿の洗浄、他の洗浄剤組成物で用いるため洗剤組成物に調合することができる。
7.1 洗濯、洗浄及び皿洗い組成物とその用途
一実施態様では、一以上のアルファ-アミラーゼ変異種は通常、洗剤組成物及び/又は洗剤添加物の成分でも良い。そういうものとして、これは、非ダスティング(non-dusting)顆粒、安定化された液体または保護された酵素の形態で、洗剤組成物中に含まれても良い。非ダスティング顆粒は、例えば米国特許第4,106,991号、第4,661,452号に開示されているとおりに、生産でき、普通、本技術分野で知られている方法によりコートされても良い。ロウ状のコーティング材料の例は、ポリ(エチレンオキシド、PEG)製品で;1,000から20,000の平均分子量をもつ(ポリエチレングリコール、PEG);16から50のエチレンオキシド単位をもつエトキシル化されたノニルフェノール;アルコールが12から20個の炭素原子を含み、かつ15から80個のエチレンオキシド単位を含むエトキシル化された脂肪族アルコール;脂肪族アルコール;脂肪酸;脂肪酸のモノ-及びジ-、トリグリセリドである。流動床技術の適用に適したフィルム形成コーティング材料の例は、例えば、英国特許番号第1483591号に与えられている。液体酵素調製物は、例えば、確立された方法に従ってプロピレングリコール、糖または糖アルコール、乳酸又はホウ酸のようなポリオールを加えることにより安定化されても良い。他の酵素の安定化剤は、本技術分野で良く知られている。保護された酵素は、例えば米国特許第5,879,920号(Genencor Int’l, Inc.)または欧州特許第238216号で開示されている方法により調製されてもよい。ポリオールは、タンパク質の溶解性を改善することと同時にタンパク質の安定化剤として長く知られてきた。例えば、Kaushikら”Why is trehalose an exceptional protein stabilizer? An analysis of the thermal stability of proteins in the presence of the compatible osmolyte trehalose” J.Biol.Chem. 278:26458-65(2003)及びその中の引用文献、及びM. Contiら”Capillary isoelectric focusing: the problem of protein solubility,” J. Chromatography 757:237-245(1997)参照。
洗剤組成物はいずれの便利な形態でよい。例えば、ゲル、粉末、顆粒、ペーストまたは液体。液体洗剤は水性でも良く、通常、約70%までの水と0%から約30%の有機溶媒を含む。またわずかに約30%の水を含むコンパクトゲルタイプの形態でも良い。
洗剤組成物は一以上の界面活性剤を含み、それらの各々はアニオン性、非イオン性、カチオン性または両性イオン性でも良い。洗剤は普通、0%から約50%のアニオン性界面活性剤を含み、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS);α-オレフィンスルホン酸塩(AOS);アルキル硫酸塩(脂肪族アルコール硫酸エステル塩)(AS);アルコールエトキシ硫酸塩(AEOS又はAES);二級アルカンスルホン酸塩(SAS);α-スルホ脂肪酸メチルエステル;アルキル-又はアルケニルコハク酸;または石鹸を含む。この組成物は、また、例えば、WO92/06154に述べられているような、アルコールエトキシレート(AEO又はAE)、カルボキシル化されたアルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシル化された脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、又はポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミドのような非イオン性界面活性剤を0%から約40%も含んでも良い。
この洗剤組成物は、さらに一以上の他の酵素、例えば、リパーゼ、クチナーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、パーオキシダーゼ、及び/又はラッカーゼをいずれの組み合わせで含んでも良い。
この洗剤は、約1%から約65%のゼオライト、ジリン酸塩、トリリン酸塩、ホスホン酸塩、クエン酸塩、ニトリロ3酢酸(NTA)、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン5酢酸(DTMPA)、アルキル-又はアルケニルコハク酸、可溶性ケイ酸塩、層化ケイ酸塩(例.HoechstのSKS-6)のような洗剤ビルダー又は錯体形成剤を含んでも良い。洗剤はビルダーが加えられなくても良い、つまり本質的に洗剤ビルダーを含んでいないものでも良い。酵素は酵素の安定性に適合するいずれかの組成物の中で使用され得る。酵素はカプセル化の既知の形態により、例えば、顆粒化又はヒドロゲル中での遮蔽化のように、一般的に有害な成分に対して保護され得る。デンプン結合領域を有する又は有さない酵素、具体的にはアルファ-アミラーゼは洗濯と皿洗用途に限定されず、しかし表面洗浄剤とデンプン又はバイオマスからのエタノール生産で使用されても良い。
この洗剤は一以上のポリマーを含んでも良い。例はカルボメトキシセルロース(CMC)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリカーボキシレート、例えばポリアクリレート、マレイン酸/アクリル酸コポリマー及びメタクリル酸ラウリル/アクリル酸コポリマーのようなものを含む。
洗剤は、漂白系を含んでも良く、これは、通常、TAED又はノナノイロキシベンゼンスルホン酸塩 (NOBS)のような過酸生成漂白活性化剤と組合わせた、過ホウ酸塩又は過炭酸塩のようなH2O2源を含んでも良い。または、この漂白系は、例えば、アミド、イミド、又はスルホンタイプの過酸を含んでも良い。この漂白系は、またWO2005/056783で述べられているような、ペルヒドロラーゼがパーオキシダーゼを活性化する酵素漂白系でも良い。
洗剤組成物の酵素は従来の安定化剤、例えば、ポリエチレングリコール又はグリセロール;糖又は糖アルコール;乳酸;ホウ酸又はホウ酸誘導体、例えば芳香族ホウ酸エステルのようなポリオールを用いて安定化されても良い。この組成物は、例えばWO92/19709とWO92/19708に述べられているように調合されても良い。
この洗剤は、例えば粘土、発泡剤、発泡抑制剤、抗腐食剤、汚れ懸濁剤、汚れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、光学的増白剤又は香料を含む布地調整剤のような他の従来の洗剤成分を含んでも良い。pH(使用濃度の水溶液で測定)は普通中性又はアルカリ性であり、例えば、pH約7.0から約11.0である。
アルファ-アミラーゼ変異種は洗剤に従来使用されている濃度で含まれても良い。この洗剤組成物中において、アルファ-アミラーゼ変異種は1リットルの洗浄液当たり0.00001-1.0mg(純粋な酵素タンパク質として計算)のアルファ-アミラーゼ変異種に対応する量で加えられても良い。アルファ-アミラーゼ変異種を含む特定の形態の洗剤組成物は、以下を含むように調製できる。
(1) 少なくとも600g/Lのバルク密度をもつ顆粒として調製される洗剤組成物であって、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算して)約7%から約12%;アルコールエトキシ硫酸塩(例.C12-18アルコール、1-2エチレンオキシド(EO))又はアルキル硫酸塩(例.C16-18)約1%から約4%;アルコールエトキシレート(例.C14-15アルコール、7EO)約5%から約9%;炭酸ナトリウム(例.Na2CO3)約14%から約20%;可溶性ケイ酸塩約2%から約6%;ゼオライト(例.NaAlSiO4)約15%から約22%;硫酸ナトリウム(例.Na2SO4)0%から約6%;クエン酸ナトリウム/クエン酸(例.C6H5Na3O7/C6H8O7)約0%から約15%、過ホウ酸ナトリウム(例.NaBO3H2O)約11%から約18%;TAED約2%から約6%;カルボキシメチルセルロース(CMC)0%から約2%;ポリマー(例.マレイン酸/アクリル酸コポリマー、PVP、PEG)0-3%;酵素(純酵素として計算)0.0001-0.1%タンパク質;及び少量の成分(例.発泡抑制剤、香料、光学的増白剤、光漂白剤(photobleach))0%から約5%含む洗剤組成物。
(2) 少なくとも600g/Lのバルク密度をもつ顆粒として調製される洗剤組成物であって、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算して)約6%から約11%;アルコールエトキシ硫酸塩(例.C12-18アルコール、1-2EO)又はアルキル硫酸塩(例.C16-18)約1%から約3%;アルコールエトキシレート(例.C14-15アルコール、7EO)約5%から約9%;炭酸ナトリウム(例.Na2CO3)約15%から約21%;可溶性ケイ酸塩約1%から約4%;ゼオライト(例.NaAlSiO4)約24%から約34%;硫酸ナトリウム(例.Na2SO4)4%から約10%;クエン酸ナトリウム/クエン酸(例.C6H5Na3O7/C6H8O7)約0%から約15%;約11%から約18%;カルボキシメチルセルロース(CMC)0%から約2%;ポリマー(例.マレイン酸/アクリル酸コポリマー、PVP、PEG)1-6%;酵素(純酵素として計算)0.0001-0.1%;及び少量の成分(例.発泡抑制剤、香料)0%から約5%含む洗剤組成物。
(3) 少なくとも600g/Lのバルク密度をもつ顆粒として調製される洗剤組成物であって、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算して)約5%から約9%;アルコールエトキシレート(例.C12-15アルコール、7EO)約7%から約14%;脂肪酸として石鹸(例.C16-22脂肪酸)約1から約3%;炭酸ナトリウム(例.Na2CO3)約10%から約17%;可溶性ケイ酸塩約3%から約9%;ゼオライト(例.NaAlSiO4)約23%から約33%;硫酸ナトリウム(例.Na2SO4)0%から約4%;過ホウ酸ナトリウム(例.NaBO3H2O)約8%から約16%;TAED約2%から約8%;ホスホネート(例.EDTMPA)0%から約1%;カルボキシメチルセルロース(CMC)0%から約2%;ポリマー(例.マレイン酸/アクリル酸コポリマー、PVP,PEG)0-3%;酵素(純酵素タンパク質として計算)0.0001-0.1%;及び少量の成分(例.発泡抑制剤、香料、光学的増白剤)0%から約5%含む洗剤組成物。
(4) 少なくとも600g/Lのバルク密度をもつ顆粒として調製される洗剤組成物であって、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算して)約8%から約12%;アルコールエトキシレート(例.C12-15アルコール、7EO)約10%から約25%;炭酸ナトリウム(例.Na2CO3)約14%から約22%;可溶性ケイ酸塩約1%から約5%;ゼオライト(例.NaAlSiO4)約25%から約35%;硫酸ナトリウム(例.Na2SO4)0%から約10%;カルボキシメチルセルロース(CMC)0%から約2%;ポリマー(例.マレイン酸/アクリル酸コポリマー、PVP,PEG)1-3%;酵素(純酵素として計算)0.0001-0.1%;及び少量の成分(例.発泡抑制剤、香料)0%から約5%含む洗剤組成物。
(5) 水性液体洗剤組成物であって、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算して)約15%から約21%;アルコールエトキシレート(例.C12-15アルコール、7EOまたはC12-15アルコール、5EO)約12%から約18%;脂肪酸として石鹸(例.オレイン酸)約3%から約13%;アルケニルコハク酸(C12-C14)0%から約13%;アミノエタノール約8%から約18%;クエン酸約2%から約8%;ホスホネート0%から約3%;ポリマー(例.PVP,PEG)0%から約3%;ホウ砂(例.B4O7)0%から約2%;エタノール0%から約3%;プロピレングリコール約8%から約14%;酵素(純酵素タンパク質として計算)0.0001-0.1%;及び少量の成分(例.分散剤、発泡抑制剤、香料、光学的増白剤)0%から約5%含む洗剤組成物。
(6) 水性液体洗剤であって、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算して)約15%から約21%;アルコールエトキシレート(例.C12-15アルコール、7EOまたはC12-15アルコール、5EO)3-9%;脂肪酸として石鹸(例.オレイン酸)約3%から約10%;ゼオライト(NaAlSiO4)約14%から約22%;クエン酸カリウム約9%から約18%;ホウ砂(例.B4O7)0%から2%; カルボキシメチルセルロース(CMC)0%から約2%;ポリマー(例.PEG、 PVP)0から約3%;アンカーリングポリマー(anchoring polymers)(例.メタクリル酸ラウリル/アクリル酸コポリマー)モル比 25:1、MW 3800)0%から約3%;グリセロール0%から約5%;酵素(純酵素として計算)0.0001-0.1%;及び少量の成分(例.分散剤、発泡抑制剤、香料、光学的増白剤)0%から約5%含む洗剤組成物。
(7) 少なくとも600g/Lのバルク密度をもつ顆粒として調製される洗剤組成物であって、脂肪族アルコール硫酸塩約5%から約10%;エトキシル化脂肪酸モノエタノールアミド約3%から約9%;脂肪酸として石鹸0-3%;炭酸ナトリウム(例.Na2CO3)約5%から約10%;可溶性ケイ酸塩約1%から約4%;ゼオライト(例.NaAlSiO4)約20%から約40%;硫酸ナトリウム(例.Na2SO4)約2%から約8%;過ホウ酸ナトリウム(例.NaBO3H2O)約12%から約18%;TAED約2%から約7%;ポリマー(例.マレイン酸/アクリル酸コポリマー、PEG)約1%から約5%;酵素(純酵素タンパク質として計算)0.0001-0.1%;及び少量の成分(例.光学的増白剤、発泡抑制剤、香料)0%から約5%を含む洗剤組成物。
(8) 顆粒として調製された洗剤組成物であって、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算)約8%から約14%;エトキシル化脂肪酸モノエタノールアミド約5%から約11%;脂肪酸として石鹸約0%から約3%;炭酸ナトリウム(例.Na2CO3)約4%から約10%;可溶性ケイ酸塩約1%から約4%;ゼオライト(例.NaAlSiO4)約30%から約50%;硫酸ナトリウム(例.Na2SO4)約3%から約11%;クエン酸ナトリウム(例.C6H5Na3O7)約5%から約12%;ポリマー(例.PVP、マレイン酸/アクリル酸コポリマー、PEG)約1%から約5%;酵素(純酵素タンパク質として計算)0.0001-0.1%;少量の成分(例.発泡抑制剤、香料)0%から約5%を含む洗剤組成物。
(9) 顆粒として調製された洗剤組成物であって、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算される)約6%から約12%;非イオン性界面活性剤約1%から約4%;脂肪酸としての石鹸約2%から約6%;炭酸ナトリウム(例.Na2CO3)約14%から約22%;ゼオライト(例.NaAlSiO4)約18%から約32%;硫酸ナトリウム(例.Na2SO4)約5%から約20%;クエン酸ナトリウム(例.C6H5Na3O7)約3%から約8%;過ホウ酸ナトリウム(例.NaBO3H2O)約4%から約9%;漂白活性化剤(例.NOBS又はTAED)約1%から約5%;カルボキシメチルセルロース(CMC)0%から約2%;ポリマー(例.ポリカーボキシレート又はPEG)約1%から約5%;酵素(純酵素タンパク質として計算)0.0001-0.1%;および少量の成分(例.光学的増白剤、香料)0%から約5%を含む洗剤組成物。
(10)水性液体洗剤組成物であって、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算して)約15%から約23%;アルコールエトキシ硫酸塩(例.C12-15アルコール、2-3EO)約8%から約15%;アルコールエトキシレート(例.C12-15アルコール、7EO、またはC12-15アルコール、5EO)約3から約9%;脂肪酸として石鹸(例.ラウリル酸)0%から約3%;アミノエタノール約1%から約5%;クエン酸ナトリウム約5%から約10%;ヒドロトロープ(例.トルエンスルホン酸ナトリウム)約2%から約6%;ホウ砂(例.B4O7)0%から2%; カルボキシメチルセルロース(CMC)0%から約1%;エタノール約1%から約3%;ポリエチレングリコール約2%から約5%;酵素(純酵素タンパク質として計算)0.0001-0.1%;及び少量の成分(例.ポリマー、分散剤、発泡抑制剤、香料、光学的増白剤)0%から約5%含む洗剤組成物。
(11)水性液体洗剤組成物であって、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(酸として計算して)約20%から約32%;アルコールエトキシレート(例.C12-15アルコール、7EO、またはC12-15アルコール、5EO)6から12%;アミノエタノール約2%から約6%;クエン酸約8%から約14%;ホウ砂(例.B4O7)約1%から約3%;ポリマー(例.マレイン酸/アクリル酸コポリマー、アンカーリングポリマー、例えば、メタクリル酸ラウリル/アクリル酸コポリマー)約0%から約3%;グリセロール約3%から約8%;酵素(純酵素タンパク質として計算)0.0001-0.1%;及び少量の成分(例.ヒドロトロープ、分散剤、香料、光学的増白剤)0%から約5%含む洗剤組成物。
(12)少なくとも600g/Lのバルク密度をもつ顆粒として調製された洗剤組成物であって、アニオン性界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル、アルカンスルホン酸塩、石鹸)約25%から約40%;非イオン性界面活性剤(例.アルコールエトキシレート)約1%から約10%;炭酸ナトリウム(例.Na2CO3)約8%から約25%;可溶性ケイ酸塩約5%から約15%;硫酸ナトリウム(例.Na2SO4)0%から約5%;ゼオライト(NaAlSiO4)約15%から約28%;過ホウ酸ナトリウム(例.NaBO34H2O)0%から約20%;漂白活性剤(TAED又はNOBS)約0%から約5%;酵素(純酵素タンパク質として計算)0.0001-0.1%;少量の成分(例.香料、光学的増白剤)0%から約3%含む洗剤組成物。
(13)上記、組成物1)−12)で述べられた洗剤組成物であって、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩の全てまたは一部が(C12-C18)アルキル硫酸塩により置き換えられたものである洗剤組成物。
(14)少なくとも600g/Lのバルク密度をもつ顆粒として調製された洗剤組成物であって、(C12-C18)アルキル硫酸塩約9%から約15%;アルコールエトキシレート約3%から約6%;ポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド約1%から約5%;ゼオライト(例.NaAlSiO4)約10%から約20%;層化ジケイ酸塩(例.HoechstのSK56)約10%から約20%;炭酸ナトリウム(例.Na2CO3)約3%から約12%;可溶性ケイ酸塩約0%から約6%;クエン酸ナトリウム約4%から約8%;過炭酸ナトリウム約13%から約22%;TAED約3%から約8%;ポリマー(例.ポリカーボキシレートとPVP)0%から約5%;酵素(純酵素タンパク質として計算)0.0001-0.1%;少量の成分(例.光学的増白剤、フォトブリーチ、香料、発泡抑制剤)0%から約5%を含む洗剤組成物。
(15)少なくとも600g/Lのバルク密度をもつ顆粒として調製された洗剤組成物であって、(C12-C18)アルキル硫酸塩約4%から約8%;アルコールエトキシレート約11%から約15%;石鹸約1%から約4%;ゼオライトMAPまたはゼオライトA約35%から約45%;炭酸ナトリウム(例.Na2CO3)約2%から約8%;可溶性ケイ酸塩約0%から約4%;過炭酸ナトリウム約13%から約22%;TAED1-8%;カルボキシメチルセルロース(CMC)0%から約3%;ポリマー(例.ポリカーボキシレートとPVP)0%から約3%;酵素(純酵素タンパク質として計算)0.0001-0.1%;少量の成分(例.光学的増白剤、ホスホネート、香料)0%から約3%を含む洗剤組成物。
(16)上記1)−15)で述べられた洗剤調合物であって、安定化された又はカプセル充填された過酸を、追加成分として又は先に示した漂白系の代替物として含む洗剤調合物。
(17)上記1)、3)、7)、9)と12)で述べられた洗剤組成物であって、過ホウ酸塩が過炭酸塩に置き換えられている洗剤組成物。
(18)上記1)、3)、7)、9)、12)、14)及び15)で述べられた洗剤組成物であって、さらにマンガン触媒を含む洗剤組成物。
(19)非水性洗剤液として調製された洗剤組成物であって、液体非イオン性界面活性剤、例えば、直鎖アルコキシ1級アルコール、ビルダー系(例.ホスホネート)、酵素及びアルカリを含む非水性洗剤液。この洗剤はまた、アニオン性界面活性剤及び/又は漂白系を含んでも良い。
別の実施態様では、2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素を洗剤組成物に組み入れることが出来、家庭及び/又は工業的繊維工場/洗濯場に付着したバイオフィルムの除去/洗浄に使用できる。
本洗剤組成物は、例えば、汚れた布地の前処理に適した洗濯用の添加組成物や濯ぎ時に加える布地柔軟剤組成物を含む、手洗い用又は機械洗い用洗剤組成物として調合されても良く、又は、一般的家庭用の堅い表面の洗浄用洗剤組成物として調合されても良く、又は、手洗い用又は機械洗い用の皿洗いのために調合されても良い。
具体的な面では、この洗剤組成物は2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素、一以上のアルファ-アミラーゼ変異種、一以上の他の洗浄酵素、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カーボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、酸化酵素、ラッカーゼ、及び/又はパーオキシダーゼ、及び/又はそれらの組み合わせを含むことが出来る。一般的に選択された酵素の性質は選択された洗剤に適合すべきである(例.pH-最適、他の酵素及び非酵素的成分等と適合)。この酵素は有効量で含まれるべきである。
プロテアーゼ:適したプロテアーゼは、動物、植物又は微生物由来のものを含む。化学的に修飾された又はタンパク質工学で操作された変異種も適している。プロテアーゼはセリンプロテアーゼまたはメタロプロテアーゼ、例えば、アルカリ性微生物プロテアーゼ又はトリプシン様プロテアーゼでも良い。アルカリ性プロテアーゼの例はスブチリシン、特にバチルス属の種由来のもの、例えば、スブチリシンNovo、スブチリシンCarlsberg、スブチリシン309(例えば、米国特許第6,287,841号参照)、スブチリシン147及びスブチリシン168(例えば、WO89/06279参照)である。トリプシン様プロテアーゼの例はトリプシン(例.ブタ又はウシ由来)とフザリウムプロテアーゼ(例えば、WO89/06270とWO94/25583)である。プロテアーゼは、またWO92/19729とWO98/20115で述べられた変異種も非限定的に含む。適した市販のプロテアーゼ酵素は、Alcalase(登録商標)、Savinase(登録商標)、Primase(商標)、Duralase(商標)、Esperase(登録商標)及びKannase(商標)(Novo Nordisk A/S);Maxatase(登録商標)、Maxacal(商標)、Maxapem(商標)、Properase(商標)、Purafect(登録商標)、Purafect OxP(商標)、FN2(商標)、及びFN3(商標)(Genencor International,Inc)を含む。
リパーゼ:適したリパーゼは細菌又は菌類由来のものを含む。化学的に修飾された、又はタンパク質工学的に操作された変異種が含まれる。リパーゼの例は、フミコラ(テルモマイセスの同義語)、例えば、H.ラヌギノサ(T・ラヌギノスス)(例えば、欧州特許第258068号と305216号参照)及びH.インソレンス(例えばWO96/13580参照);シュードモナス・リパーゼ(例えば、P.アルカリゲネス又は、P.シュードアルカリゲネス由来、欧州特許第218272号参照)、P・セパシア(例えば、欧州特許第第331376号参照)、P・スツットゼリ(例えば、GB1,372,034号参照)、P・フルオレセンス、シュードモナス属の種の株SD705(例えばWO95/06720とWO96/27002参照)、P・ウィスコンシネンシス(例.WO96/12012参照);バチルスリパーゼ(例えば、B・スブチリス由来;例えば、Dartoisら、Biochemica Biophysica Acta,1131:253-360(1993))、B・ステアロテルモフィルス(例えば、JP64/744992参照)、またはB・プミルス(例えば、WO91/16422参照)を非限定的に含む。本調合剤での使用が考えられている他のリパーゼ変異種は、例えば、WO92/05249、WO94/01541、WO95/35381、WO96/00292、WO95/30744、WO94/25578、WO95/14783、WO95/22615、WO97/04079、WO97/07202、欧州特許第407225号と260105号で述べられているものを含む。いくつかの市販されているリパーゼ酵素は、Lipolase(登録商標)とLipolase(登録商標)Ultra(Novo Nordisk A/S)を含む。
ポリエステラーゼ:適したポリエステラーゼは、WO01/34899(Genencor International, Inc.)とWO01/14629(Genencor International, Inc.)に記載されているものを、非限定的に含み、本明細書で述べられている他の酵素とのいずれかの組合わせに使用できる。
アミラーゼ:本組成物は他のアルファ-アミラーゼ、例えば非-変異アルファ-アミラーゼと組み合わせることが出来る。これらは、市販のアミラーゼ、例えば、Duramyl(登録商標)、Termamyl(商標)、Fungamyl(登録商標)とBAN(商標)(Novo Nordisk A/S)、Rapidase(登録商標)、及びPurastar(登録商標)(Genencor International, Inc)を非限定的に含む。
セルラーゼ:セルラーゼを本組成物に加えることができる。適したセルラーゼは、細菌又は菌類由来を含む。化学的に修飾された、またはタンパク質工学的に操作された変異種が含まれる。適したセルラーゼは、バチルス属、シュードモナス属、フミコラ属、フサリウム属、シエラビア属、アクレモニウム属由来のセルラーゼ、例えば、米国特許第4,435,307号;第5,648,263号;第5,691,178号;第5,776,757号;及びWO89/09259に開示されているフミコラ・インソレンス、ミセリオフソラ・テルモフィラとフサリウム・オキシスポルムから産生される菌類のセルラーゼを含む。使用が意図されているセルラーゼの例は、繊維の色に良い効果のあるものである。そのようなセルラーゼの例は、例えば欧州特許第495,257号と531,372号;WO99/25846(Genencor International,Inc)、WO96/34108(Genencor International,Inc)、WO96/11262;WO96/29397;及びWO98/08940に述べられているセルラーゼである。他の例は、セルラーゼ変異種であり、例えば、WO94/07998;WO98/12307;WO95/24471;PCT/DK98/00299;欧州特許第531315号(Novo Nordisk);米国特許第5,457,046号;第5,686,593号;及び第5,763,254号に述べられているものである。市販されているセルラーゼは、Celluzyme(登録商標)とCarezyme(登録商標)(Novo Nordisk A/S);Clazinase(商標)とPuradax(登録商標)HA(Genencor International, Inc.);KAC-500(B)(商標)(Kao Corporation)を含む。
パーオキシダーゼ/ 酸化酵素:本組成物での使用が考えられている、適したパーオキシダーゼ/酸化酵素は、植物、細菌又は菌類由来のものを含む。化学的に修飾された、またはタンパク質工学的に操作を受けた変異種が含まれる。有用なパーオキシダーゼの例は、コプリヌス属由来のパーオキシダーゼを含み、例えば、WO93/24618、WO95/10602、及びWO98/15257で述べられているようなC・シネレウス及びそれらの変異種由来のものを含む。市販されているパーオキシダーゼは、例えば、Guardzyme(商標)(Novo Nordisk A/S)を含む。
洗剤酵素は、一以上の酵素を含む添加物を別々に加えることにより、またはこれらの酵素の全てを含む、添加物の組合わせを加えることにより、洗剤組成物に含まれても良い。洗剤添加物、つまり、各添加物又は添加物の組み合わせは、顆粒、液体、スラリー等として調合できる。適した顆粒状の洗剤添加物調合剤は、非ダスティング顆粒を含む。
非ダスティング顆粒は、例えば米国特許第4,106,991号と第4,661,452号に開示されているようにして生産されても良く、通常は、本技術分野で知られている方法によりコートされても良い。ロウ状のコーティング原料の例は、1,000から20,000の平均モル重量をもつポリ(エチレンオキシド)製品(例えば、ポリエチレングリコール、PEG)、16個から50個のエチレンオキシド単位からなるエトキシル化されたノニルフェノール、アルコールが12個から20個の炭素原子を含み、15個から80個のエチレンオキシド単位があるエトキシル化された脂肪族アルコール、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪酸のモノ、ジ、トリグリセリドである。流動床技術の適用に適したフィルムを形成するコーティング原料の例は、例えばGB1483591に与えられている。液体酵素調製物は、確立された方法に従い、例えば、プロピレングリコール、糖、糖アルコール、乳酸、ホウ酸のようなポリオールを加えることにより安定化されても良い。保護された酵素は欧州特許第238216号で開示された方法に従い調製されても良い。
洗剤組成物は、いずれかの好適な形態、例えば、バー、錠剤、ゲル、粉末、顆粒、ペースト、液体であっても良い。液体洗剤は、水性でも良く、通常は、約70%までの水、と0から約30%までの有機溶媒を含む。30%以下の水を含むコンパクト洗剤ゲルも考えられている。この洗剤組成物は一以上の界面活性剤を含み、これらは非イオン性、半極性、アニオン性、カチオン性又は両性、またはこれらの組み合わせのいずれでも良い。これらの界面活性剤は通常は、重量で0.1%から60%の水準で含まれる。
本明細書で使用する場合、洗剤は通常、約1%から約40%のアニオン性界面活性剤、例えば直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩(脂肪族アルコール硫酸塩)、アルコールエトキシ硫酸塩、二級アルカンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル、アルキル-またはアルケニルコハク酸、または石鹸を含む。
本明細書で使用する場合、洗剤は普通、アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシル化脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、ポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド、又はグルコサミンのN-アシル-N-アルキル誘導体(「グルカミド」)のような約0.2%から約40%の非-イオン性界面活性剤を含む。
洗剤は、ゼオライト、2リン酸塩、3リン酸塩、ホスホン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、ニトリロ3酢酸、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン5酢酸、アルキル-またはアルケニルコハク酸、可溶性ケイ酸塩又は層化ケイ酸塩(例.ヘキストのSKS-6)のような洗剤ビルダー又は錯体形成剤を0%から約65%含んでも良い。
洗剤は一以上のポリマーを含んでも良い。例には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピリジン-N-オキシド)、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリカーボキシレート、例えば、ポリアクリレート、マレイン酸/アクリル酸コポリマー、及びメタクリル酸ラウリル/アクリル酸コポリマーがある。
洗剤はH2O2源、例えば、過ホウ酸又は過炭酸を含んでも良い漂白系を含んでも良く、これは過酸形成漂白活性化剤と組み合わされても良い(例.テトラアセチルエチレンジアミン、又はノナノイロキシベンゼンスルホン酸塩)。または、漂白系は過オキシ酸(例.アミド-、イミド-またはスルホン型の過オキシ酸)を含んでも良い。この漂白系はまた、酵素的漂白系でも良い。
洗剤組成物の酵素は従来の安定化剤、例えばポリオール(例.ポリエチレングリコールまたはグリセロール)、糖、糖アルコール、乳酸、ホウ酸、ホウ酸誘導体(例.芳香族ホウ酸エステル)または、ホウ酸フェニル誘導体(例.4−ホルミルフェニルホウ酸)を用いて安定化されえる。この組成物はWO92/19709とWO92/19708で述べられているように調合されても良い。
本洗剤は、例えば、布地柔軟剤、粘土、発泡剤、発泡抑制剤、抗腐食剤、汚れ懸濁剤、汚れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、光学的増白剤、ヒドロトロープ、変色防止剤または香料のような他の従来の洗剤成分を含んで良い。
洗剤組成物では、酵素変異種は洗浄液1リットル当たり酵素タンパク質約0.01から約100mg、特に洗浄液1リットル当たり酵素タンパク質約0.05から約5.0mgに相当する量、さらに、洗浄液1リットル当たり特に0.1から約1.0mgの酵素タンパク質で加えられても良い。
本明細書で述べられたこのアルファ-アミラーゼ変異種は、例えば皿の洗浄に使用する洗剤組成物、または他の洗浄剤組成物に調合できる。これらは、ゲル、粉末または液体であり得る。この組成物はアルファ-アミラーゼ変異種のみ、他のデンプン分解性酵素、他の洗浄酵素及び洗浄剤組成物に共通の他の成分を含むことが出来る。
従って、皿洗い洗剤組成物は界面活性剤を含み得る。この界面活性剤はアニオン性、非イオン性、カチオン性、両性又はそれらのタイプの混合物でも良い。この洗剤は重量で0%から約90%までの非イオン性界面活性剤(例えば、低-から非-発泡性エトキシル化プロポキシル化直鎖アルコール)を含み得る。
洗剤の用途では、アルファ-アミラーゼ変異種は普通、プロピレングリコールを含む液体組成物で普通使用される。このアルファ-アミラーゼ変異種は、例えば10%塩化カルシウムを含有する25%容量/容量プロピレングリコール溶液中で回転することによりプロピレングリコール中に溶解できる。
この皿洗い洗剤組成物は、無機及び/または有機型の洗剤ビルダー塩を含んでも良い。この洗剤ビルダーはリン含有型と非リン含有型に分けることが出来る。この洗剤成分は普通、約1%から約90%の洗剤ビルダーを含む。使用する場合、リン含有無機アルカリ金属洗剤ビルダーの例には、水溶性塩、特にアルカリ金属の、ピロリン酸塩、オルトリン酸塩及びポリリン酸塩を含む。使用する場合、リン含有有機アルカリ金属洗剤ビルダーの例は、水溶性のホスホン酸の塩を含む。使用する場合、非リン含有無機ビルダーの例は水溶性アルカリ金属炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩及び種々のタイプの水不溶性結晶性または非晶性アルミノケイ酸であり、これらの中でゼオライトが最も良く知られている。
適した有機ビルダーの例はアルカリ金属;アンモニウムと置換アンモニウム;クエン酸塩;コハク酸塩;マロン酸塩;脂肪酸スルホン酸塩;カルボキシメトキシコハク酸塩;アンモニウムポリアセテート;カーボキシレート;ポリカーボキシレート;アミノポリカーボキシレート;ポリアセチルカーボキシレート;とポリヒドロキシスルホン酸塩を含む。
他の適した有機ビルダーは、ビルダーの性質を持つことが知られているより高分子量のポリマーとコポリマー、例えば、適したポリアクリル酸、ポリマレイン酸とポリアクリル酸/ポリマレイン酸コポリマー、及びそれらの塩を含む。
洗剤組成物は、塩素/臭素型又は酸素型の漂白剤を含んでも良い。無機塩素/臭素タイプの漂白剤の例は次亜塩素酸リチウム、ナトリウムまたはカルシウム及び次亜臭素酸リチウム、ナトリウムまたはカルシウム、及び塩素化されたリン酸3ナトリウムである。有機塩素/臭素型漂白剤は、例えば、トリクロロイソシアヌル酸、トリブロモイソシアヌル酸、ジブロモイソシアヌル酸およびジクロロイソシアヌル酸のような複素環N-臭化-とN-塩化イミドであり、また、カリウムとナトリウムのような水溶性のカチオンとのそれらの塩である。ヒダントイン化合物も適している。
洗浄剤組成物は、例えば、無機過酸の塩の形態で、普通漂白剤前駆体と共にまたはペルオキシ酸化合物として酸素漂白剤を含んでも良い。適したペルオキシ漂白化合物の典型的な例は、過ホウ酸アルカリ金属塩で、4水和物と1水和物、アルカリ金属の過炭酸塩、過ケイ酸塩、過リン酸塩である。適した活性化物質はテトラアセチルエチレンジアミン(TAED)とグリセロールトリアセテートを含む。酵素的漂白活性化系も存在し、例えば、例えば、WO2005/056783に開示されているような、過ホウ酸または過炭酸、グリセロールトリアセテートとペルヒドロラーゼがある。
本洗浄剤組成物は、酵素の従来の安定化剤、例えば、プロピレングリコール、糖または糖アルコール、乳酸、ホウ酸、ホウ酸誘導体(例.芳香族ホウ酸エステル)のようなポリオールを用いて安定化されても良い。本洗浄剤組成物は、また他の従来の洗剤成分、例えば、解こう剤、増量剤、発泡抑制剤、腐食防止剤、汚れ懸濁剤、イオン遮蔽剤、汚れ再付着防止剤、脱水剤、染料、殺菌剤、蛍光剤、増粘剤及び香料も含んでも良い。
最後に本アルファ-アミラーゼ変異種が、本明細書に開示されたアルファ-アミラーゼ変異種が記載の特許や公開された出願に開示されているいずれのアルファ-アミラーゼの替わりに、又は加えて使用されることを考えて、従来の皿洗い洗剤、例えば、以下の特許公開に述べられた洗剤のいずれにおいて使用されても良い。CA2006687、GB2200132、GB2234980、GB2228945、DE3741617、DE3727911、DE4212166、DE4137470、DE3833047、DE4205071、WO93/25651、WO93/18129、WO93/04153、WO92/06157、WO92/08777、WO93/21299、WO93/17089、WO93/03129、欧州特許第第481547号、第530870号、第533239号、第554943号、第429124号、第346137号、第561452号、第318204号、第318279号、第271155号、第271156号、第346136号、第518719号、第518720号、第518721号、第516553号、第561446号、第516555号、第530635号、第414197号と米国特許第5,112,518号、5,141,664号及び5,240,632号。
7.2 洗剤組成物を評価する方法
多くのアルファ-アミラーゼ洗浄性能評価法がある。洗浄性能の試験の例は以下に述べられている。「見本」は、汚れを付着させた布のような物質の一片である。この物質は、例えば綿、ポリエステル又は天然繊維と合成繊維の混合物でも良い。または、この物質は紙、例えば、ろ紙またはニトロセルロース、又は硬い物質の一片、例えば、陶磁器、金属又はガラスであり得る。アルファ-アミラーゼについては、汚れはデンプンに基づくものであるが、血液、ミルク、インク、草、茶、ワイン、ホウレン草、肉汁、チョコレート、卵、チーズ、粘土、色素、油、又はこれらの化合物の混合物をも含み得る。一実施態様では、α-アミラーゼ変異種はBMI(血液/ミルク/インク)評価法で試験される。
「小見本」は、例えば、単孔パンチ、あるいは特注の96孔のパンチ(多数の孔のパンチの配列パターンは標準96ウェルマイクロタイタープレートに適合する)で切り抜かれた見本片、又は他の方法で見本から切り取られた見本片である。この見本は繊維、紙、金属又は他の適した物質が素材でも良い。この小さい見本は24-、48-、または96-ウェルマイクロタイタープレートの孔に入れられる前または後に汚れを付着させることができる。小さい見本はまた、汚れを物質の小片に付着させることによっても作ることができる。例えば、小さい見本は直径5/8”または0.25”の汚れのついた見本片でも良い。特注で作られたパンチは96ウェルプレートの全ての孔に同時に96個の見本を入れるようにデザインされている。この装置は、単に同じ96ウェルプレートを複数回、載せることにより1孔当たり2個以上見本を入れることが出来る。多数孔パンチは、24ウェル、48ウェル及び96ウェルプレートを非限定的に含む、いずれの形式のプレートにも同時に見本を入れるように考えることもできる。別の考えられる方法は、汚れた試験片は、汚れでコートされた金属、プラスチック、ガラス、陶磁器又は他の適した物質のビーズでも良い。1個以上のコートされたビーズは、その後に、適した緩衝液または酵素を含む、96-、48-、24-ウェルプレートまたはさらにウェルの多い形式のプレートの孔に入れられる。この場合、上澄液は直接の吸光度測定により、又は二次的な発色反応後に、遊離した汚れについて試験され得る。遊離した汚れの分析は、また質量スペクトル分析で行える。
一実施態様では、処理プロトコールは、汚れの固定の程度を調節する定めを設ける。結果として、例えば、試験を受ける酵素がない場合に洗浄したとき、種々の量の汚れを遊離する見本を作ることが可能である。汚れ固定見本の使用は、洗浄評価においてシグナル-ノイズ比の劇的な向上をもたらした。さらに、汚れ固定の程度を変えることにより、種々の洗浄条件下で最適の結果を与える汚れを作ることができる。
種々のタイプの物質に既知の「強度」の汚れを有する見本は、市販され(EMPA, St. Gallen, Switzerland; Testgewebe GmbH, Krefeld Germany;またはCenter for Test Materials, Vlaardingen, The Netherlands)及び/または試験者が作ることができる(Morris and Prato, Texitile Research Journal 52(4):280-286,1982)。見本は、例えば、血液/ミルク/インク(BMI)、ホウレン草、草またはチョコレート/ミルク/ススで作られた汚れを含む、綿含有の布を含み得る。BMIの汚れは、例えば0.0003%から0.3%の過酸化水素で綿に固定できる。他の組み合わせは0.001%から1%のグルタルアルデヒドで固定された草またはホウレン草、0.001%から1%のグルタルアルデヒドで固定されたゼラチンとクーマシー汚れ、または0.001%から1%グルタルアルデヒドで固定されたチョコレート、ミルク及びススを含む。
見本は酵素と/または洗剤調合物とともに定温放置されている間に撹拌することもできる。洗浄性能データは孔、特に96ウェルプレートの孔中での見本の向き(水平対垂直)により変わる。これは定温放置の間、混合が不十分であることを示すのであろう。定温放置の間、十分な撹拌を確保する多くの方法があるが、マイクロタイタープレートが2枚のアルミニウムの板に挟まれるプレートホルダーを作ることができる。これは、例えば、孔を付着性プレートシーラーで覆い、適当な、市販のクランプを使って96ウェルプレートを2枚のアルミニウムの板で挟むような単純なものである。次にこれは、市販の定温振とう器に入れられる。約400rpmに振とう器を設定すると非常に効率的な混合ができ、漏れや交差汚染はこのホルダーにより効率的に防ぐことが出来る。
トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)は洗浄液中のアミノ基の濃度を定量するために使用できる。これは見本から除かれたタンパク質量の尺度として役に立つ。(例えば、Cayot and Tainturier, Anal. Biochem. 249:184-200,1997参照)しかし、洗剤または酵素サンプルが非常に小さいペプチド断片を形成する場合(例えば、サンプル中のペプチダーゼの存在により)、実際より大きいTNBSシグナル、つまり、より多くの「ノイズ」を得ることになる。
血液/ミルク/インクの洗浄機能を測定する他の手段は、洗浄液の吸光度を測定することにより定量化され得るインク遊離に基づく。吸光度は350nmと800nmの間のいずれの波長でも測定できる。一実施態様では、この波長は410nm又は620nmで測定される。洗浄液はまた、草、ホウレン草、ゼラチン又はクーマシー汚れを含む汚れに対する洗浄性能を決定するために試験されても良い。
これらの汚れに適した波長はホウレン草または草については670nm、ゼラチンとクーマシーについて620nmである。例えば、洗浄液の一部(例えば、通常、96ウェルのマイクロプレートから100-150μL)が採取され、セルまたは多数孔のマイクロプレートに入れられる。これは、次に分光光度計に入れられ、吸光度は適当な波長で読み取られる。このシステムも、例えば、布、プラスチック又は陶磁器のような適した物質上の血液/ミルク/インクを使用して、皿洗いに適した酵素及び/又は洗剤組成物を決定するために使用できる。
一面では、BMI汚れは0.3%過酸化水素を30分25℃でBMI/綿見本に添加すること、または0.03%過酸化水素を30分、60℃でBMI/綿に添加することにより綿に固定される。約0.25”のより小さい見本はBMI/綿見本から切り抜かれ、96ウェルマイクロタイタープレートの孔に入れられる。各孔へ、洗剤組成物と変異タンパク質のような酵素の、既知の混合物が入れられる。このマイクロタイタープレートの上へ付着性のプレートシーラーを置いた後、マイクロタイタープレートはアルミニウム板で挟まれ、約10分から60分間、約250rpmで、オービタル振とう器上で撹拌を受ける。この時間経過後、上澄液が新しいマイクロタイタープレートの孔へ移され、620nmでインクの吸光度が測定される。これは0.01%グルタルアルデヒドをホウレン草/綿見本、又は、草/綿見本に25℃で30分添加することにより綿に固定されたホウレン草または草の汚れについて、同様に試験できる。チョコレート、ミルク及び/またはススの汚れに関しても同じことができる。
8. 繊維脱糊組成物と用途
1以上のアルファ-アミラーゼ変異種を使用する布地の処理(例.繊維の脱糊のため)の組成物と方法もまた考えられている。このアルファ-アミラーゼ変異種はいずれの布地処理法で使用できるが、これは本技術分野で良く知られている(例えば、米国特許第6,077,316号参照)。例えば、一面では、布地の感触と外観は溶液中で酵素変異種と布地を接触させることを含む方法により向上される。一面では、この布地は加圧下、この溶液で処理される。
一面では、酵素は布を織っている間または後、脱糊段階で、または一以上の別の布地処理段階で使用される。布を織っている間は、糸にはかなりの機械的緊張が与えられる。機械織機で織る前に、縦糸は、その引っ張り強さを増し、破断を防ぐために糊用デンプンまたはデンプン誘導体でコートされることが多い。アルファ-アミラーゼ変異種はこれらの糊用デンプンまたはデンプン誘導体を除くために使用できる。布地が織られた後、布地は、脱糊処理を受けることができる。これに一以上の追加の処理段階が続く。脱糊は布地から糊を除く行為である。布を織った後、均一な、洗いに耐えるものになるよう、次の処理に移る前に糊のコーティングは除去されなければならない。また、酵素変異種の作用による糊の酵素的加水分解を含む脱糊の方法も提供される。
アルファ-アミラーゼ変異種は、綿含有布地等の布地の糊を除くために、それのみで又は他の脱糊化学試薬、及び/または脱糊酵素とともに、例えば水性組成物の洗剤添加剤として、使用できる。アルファ-アミラーゼ変異種はインジゴで染めたデニム地と衣服をストーンウオッシュ風にする組成物と方法でも使用できる。布の製造では、生地は切り取られ、布や衣服に縫い上げられ、その後仕上げを受ける。特に、デニム製のジーンズの製造では、異なる酵素的仕上げ法が開発された。デニムの衣服の仕上げは普通酵素的脱糊段階で始まり、その間衣服はデンプン分解酵素の作用を受け、布地に柔軟性を与え、綿がその後の酵素的仕上げをより受けやすくする。アルファ-アミラーゼ変異種はデニムの衣服の仕上げ(例.「バイオストーニング法」)、酵素的脱糊、布地に柔軟性を与える工程、及び/または仕上げ工程の方法で使用できる。
この開示は以下の実施例で更に詳細に述べられるが、特許請求の範囲を限定する意図は全くない。添付した図は、述べてきた明細、記述の一部である。引用した全ての刊行物は、刊行物で述べられた全てについて引用により、それぞれ本明細書に組みいれられる。以下の実施例は説明のために提供され、請求の範囲を限定するためではない。
9.バイオフィルム除去組成物と用途
本組成物は主要な酵素製分として1個のアルファ-アミラーゼ、例えば、バイオフィルムの除去に使用する単一成分組成物を含み得る。または、本組成物は、複数の酵素活性、例えば、複数個のアミラーゼ、またはアミノペプチダーゼ、アミラーゼ(βまたはα又はグルコ-アミラーゼ)、カーボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ハロパーオキシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、酸化酵素、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、パーオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、及び/又は、キシラナーゼ、または、 バイオフィルムを除去するためのそれらのいずれかの混合物を含む酵素のカクテルを含んでも良い。他の酵素はアスペルギルス属に属する微生物、例えば、A・アクレアツス、A・アワモリ、A・ニゲルまたはA・オリゼ、または、トリコデルマ属、フミコラ属、例えば、H・インソレンス、または、フザリウム属、例えば、F・バクトリディオイデス、F・セレアリス、F・クルックウェレンス、F・クルモルム、F・グラミネアルム、F・グラミヌム、F・ヘテロスポルム、F・ネグンジ、F・オキシスポルム、F・レチクラツム、F・ロゼウム、F・サンブシヌム、F・サルコクロウム、F・スルフレウム、F・トルロセウム、F・トリコテシオイデス、またはF・ベネナツムにより産生され得る。
アルファ-アミラーゼ変異種を含む組成物は、本技術分野で知られている方法に従い調製され得、液体又は乾燥組成物の形態でも良い。例えば、アルファ-アミラーゼ変異種を含む組成物は顆粒または微小顆粒(microgranulate)の形態でも良い。本組成物に含まれるポリペプチドは本技術分野で知られている方法に従い安定化されても良い。
ポリペプチド組成物の使用例は下記に与えられている。アルファ-アミラーゼ変異種を含む組成物の使用量と本組成物を使用する他の条件は本技術分野で既知の方法に基づき決定され得る。アルファ-アミラーゼ変異種は、さらに2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素またはその変異種とともに組成物中で使用することが考えられている。
一局面はバイオフィルムの分解及び/又は除去である。用語「分解」は本明細書では、バイオフィルムの中で個々の微生物細胞を接触させ、結合しているバイオフィルムマトリックスの多糖の加水分解として理解されるべきであり、その際この微生物の細胞はこのバイオフィルムから遊離、除去されえる。バイオフィルムは表面に存在する。バイオフィルムの分解はこの表面を水性溶媒と接触させること、例えば、浸す、覆う又は掛けることにより達成できる。この際、水性溶媒はアルファ-アミラーゼ変異種と任意に、バイオフィルムを分解できる一以上の他の酵素(2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素を非限定的に含む)を含む。本組成物は、ヘドロ、例えばパルプ製紙工業の白水中のヘドロを加水分解するため使用できる。
本アルファ-アミラーゼ変異種は0.0001から10000mg/L、0.001-1000mg/L、0.01-100mg/L、またはさらに0.1-10mg/Lの量で含まれても良い。追加の酵素と酵素変異種は同様の量またはそれより少なく含まれ得る。本法は、周囲の温度から約70℃までの温度で行われても良い。適した温度範囲は約30℃から約60℃、例えば約40℃から約50℃である。
バイオフィルムの加水分解に適したpHは約3.5から約8.5の範囲内にある。特に適したpH範囲は、約5.5から約8、例えば、約6.5から約7.5である。バイオフィルムを効率的に除去する酵素変異種の接触時間と反応時間は、バイオフィルムの性質、及び表面がこの酵素変異種のみで、または他の酵素、例えば、2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素と組合わせて処理を受ける頻度により相当変わる。しかし、適当な反応時間は、約0.25から約25時間の範囲にある。特に適した反応時間は約1から約10時間、例えば、約2時間である。
セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、他のアルファ-アミラーゼ等の他のアミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、及び/又はペクチナーゼを非限定的に含む追加の酵素が、アルファ-アミラーゼ変異種と2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素と組み合わせることができる。これらの酵素はさらに、酵素性または非酵素性殺菌剤のような抗生剤と組み合わせることができる。酵素性殺菌剤は酸化還元酵素、例えば、ラッカーゼまたはパーオキシダーゼ、特に、ハロパーオキシダーゼ、と任意に、増強剤、例えば、WO97/42825とDK97/1273に記載されているアルキルシリンゲートを含む組成物でも良い。
バイオフィルムが除去されるべき及び/又は洗浄で除かれるべき表面は堅い表面であり、これを定義すれば、微生物が本質的に浸透できないいずれの表面でも良い。例として、金属製の表面、例えば、ステンレス鋼合金、プラスチック/合成ポリマー、ゴム、板、ガラス、木材、紙、織物、コンクリート、岩、大理石、石膏及び陶磁器であり任意に塗料、エナメル、ポリマー等で被膜されても良い。従って、この表面は、水供給システム、食品加工システム、冷却システム、化学処理システム、医薬品処理システムまたは、パルプ及び/または製紙工業で見出される木材処理システムのような、水溶液を貯留、輸送、処理又は接触するシステムの一つである。従って、酵素変異種とこの酵素変異種を含む組成物は、従来の組み立てた状態で洗浄する(C-I-P)システムで有用である。この表面はパイプ、タンク、ポンプ、膜、フィルター、熱交換器、遠心分離機、蒸発濃縮器、混合機、スプレー塔、弁、反応装置のようなシステム装置の一つでも良い。この表面は、医療科学と医療産業で使用される器具またはその一部でも良く、例えば、汚染された内視鏡、運動機能補充物又は医療用移植物でも良い。
バイオフィルム除去用の組成物は、また金属の表面、例えば、パイプラインが微生物のバイオフィルムにより攻撃されたときに、発生するいわゆる、生物的腐食を予防するためにも用いることも考えられている。この組成物はバイオフィルムを分解し、それによりバイオフィルムの微生物細胞が、付着した金属表面を腐食させるようなバイオフィルムの環境を作ることを予防する。
9.1 口腔衛生組成物
抗バイオフィルム組成物の追加の適用は口腔衛生である。よって、対象表面は歯垢のついた歯を含む。従って、変異酵素は組成物例えば、練り歯磨きに使用でき、ヒトまたは動物の歯の上に付いた歯垢の分解用の酵素変異種を含む医薬を作る方法に使用できる。さらに粘膜からバイオフィルムを分解除去にも使用される。例えば、嚢胞性線維症を罹患する患者の肺のバイオフィルムである。対象表面は、また生物の他の表面でも良く、例えば、皮膚、歯、髪、爪、または汚染されたコンタクトレンズでも良い。
口腔衛生組成物で有用な他の酵素は、2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、グルコース酸化酵素、L-アミノ酸酸化酵素、パーオキシダーゼ(例.コプリヌス属の種、WO95/10602に記載されたパーオキシダーゼ、またはラクトパーオキシダーゼ、ハロパーオキシダーゼ、特にクルブラリア属(Curvularia)の種のハロパーオキシダーゼ、特に、C・ベルクロサ(C.verruculosa)とC・イネクアリス(C.inaequalis))、ラッカーゼ、パパインのようなプロテアーゼ、酸性プロテアーゼ、(例えば、WO95/02044に記載の酸性プロテアーゼ)、エンドグルコシダーゼ、リパーゼ、アミログルコシダーゼ、例えば、AMG(商標)(Novo Nordisk A/S)を含むアミラーゼ、抗菌性酵素、及びそれらの混合物を含む。この口腔衛生用製品は、任意に米国特許第6,207,149号に開示されたようなデンプン結合領域を含んでも良い。
口腔衛生組成物はいずれかの適した形態を持っても良く、例えば、粉末、ペースト、ゲル、液体、軟膏、錠剤等でも良い。「口腔衛生組成物」は、ムシ歯の予防、歯垢と歯石形成の予防、歯垢と歯石の除去、歯の疾病の予防及び/または治療等によるヒトや動物の口の衛生の維持改善のために使用できる組成物を含む。口腔衛生組成物は、また義歯、人工の歯等の洗浄用製品も含む。口腔衛生組成物の例は練り歯磨き、歯のクリーム、ゲル、歯磨き粉、ゾウゲ質の口腔洗浄液、歯磨き前、後の濯ぎ液、チューインガム、薬用ドロップ、キャンディーを含む。練歯磨きと歯のゲルは通常、研磨用物質、発泡剤、調味料、湿潤材、結合材、増粘材、甘味料、増白/漂白/汚れ除去剤、水、任意に酵素を含む。歯垢除去液等の口腔洗浄剤は、通常水/アルコール溶液、調味料、湿潤剤、甘味料、発泡剤、冷却剤、任意に酵素を含む。
また、口腔衛生組成物には、研磨用物質が含まれても良い。従って、研磨剤はアルミナとその水和物(例えば、α-アルミナ3水和物)、3ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、ケイ酸アルミニウム(例えば、焼成したケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム)、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウムを含むことができる。また、粉末プラスチック、(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、粉末ポリエチレン)、シリカキセロゲル、ヒドロゲル及びエアロゲル等も含むことが出来る。また、研磨剤としては、カルシウムピロリン酸、水不溶性メタリン酸アルカリ金属塩、リン酸ジカルシウム及び/又はその2水和物、オルソリン酸ジカルシウム、リン酸トリカルシウム、ヒドロキシアパタイト粒子等も適している。これらの物質の混合物を用いることもまた可能である。口腔衛生組成物により、研磨剤は重量で約0%から約70%、例えば約1%から約70%含まれる。練り歯磨きでは、この研磨剤の含量は通常、最終練り歯磨き製品の重量の10%から70%の範囲にある。
湿潤剤は、例えば練歯磨きからの水分の損失を防ぐために用いられる。口腔衛生組成物に使用する適した湿潤剤はグリセロール;ポリオール;ソルビトール;ポリエチレングリコール(PEG);プロピレングリコール;1,3−プロパンジオール;1,4−ブタンジオール;水素添加された部分的に加水分解された多糖等、及びそれらの混合物を含む。湿潤剤は、一般的に練り歯磨きの重量の0%から約80%又は約5%から約70%含まれる。
シリカ、デンプン、トラガカントガム、キサンタンガム、アイリッシュモス(Irish moss)の抽出物、アルギネート、ペクチン、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒドロキシプロピルセルロース)、ポリアクリル酸及びその塩、ポリビニルピロリドンは、練り歯磨き製品を安定化する適した増粘剤と結合剤の例である。増粘剤は練り歯磨きクリームやゲルに、重量で約0.1%から約20%で含まれても良く、結合剤は最終製品の重量で約0.01%から約10%で含まれても良い。
石鹸、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性界面活性剤等の発泡剤も使用できる。これらは、最終製品の重量の0%から約15%、約0.1%から約13%、さらに最終製品の重量の約0.25%から約10%の水準で含まれても良い。界面活性剤は、この酵素を不活性化しない量までなら、適している。界面活性剤は脂肪族アルコール硫酸塩、スルホン化されたモノグリセリドの塩又は10から20個の炭素原子をもつ脂肪酸の塩、脂肪酸-アルブミン縮合体、脂肪酸アミドとタウリンの塩及び/又はイセチオン酸の脂肪酸エステルの塩を含む。
適した甘味料は調合剤での使用に適したサッカリンを含む。スペアミントのような調味料も普通、少量、例えば重量で約0.01%から約5%、特に約0.1%から約5%で含まれる。増白剤/漂白剤はH2O2を含み、最終製品の重量により計算して約5%未満又は約0.25%から約4%の量で加えられても良い。増白剤/漂白剤は酵素であり、例えば、酸化還元酵素である。適した歯の漂白酵素の例はWO97/06775(Novo Nordisk A/S)に述べられている。普通、水がこの組成物(例.練り歯磨き)に流動性を与える量で加えられる。水溶性の殺菌剤、例えば、クロロヘキシジン、ジグルコネート、ヘキセチジン、アレキシジン、Triclosan(登録商標)、4級アンモニウム抗菌化合物と、亜鉛、銅、銀、錫(例.塩化、銅、塩化スズと硝酸銀)のようなある金属イオンの水溶性の化合物もまた加えられても良い。使用可能な追加の化合物はフッ素イオン源、染料/着色剤、保存料、ビタミン、pH-調整剤、ムシ歯予防剤、脱感作剤等を含む。
酵素は、また上記の口腔組成物でも有用である。酵素は、口腔の洗浄で使用するときいくつかの利点がある。プロテアーゼは唾液のタンパク質を分解する。このタンパク質は歯の表面に付着され、皮膜を形成し、歯垢の最初の層となる。リパーゼとプロテアーゼは、細菌の細胞壁と膜の構造成分を形成するタンパク質と脂質を分解することにより細菌を分解する。デキストラナーゼと他のカーボヒドラーゼ(例えば、2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素)は細菌により作られた有機物の骨格で細菌が付着するマトリックスとなるものを分解する。プロテアーゼとアミラーゼは歯垢の形成を防ぐだけでなく、カルシウムを結合する炭水化物-タンパク質複合体を破壊することにより鉱化の進行を防ぐ。
練り歯磨きは通常以下の成分を含んでも良い(最終練り歯磨き組成物の重量%で)。約70%までの研磨剤;0%から約80%までの湿潤剤;増粘剤;約0.1%から約20%;結合剤;約0.01%から約10%;甘味料:約0.1%から約5%;発泡剤:0%から約15%;増白剤;0%から約5%;及び酵素;約0.0001%から約20%。一実施態様では、練り歯磨きは約6.0から約8.0の範囲のpHをもち、約10%から約70%の研磨剤、0%から約80%の湿潤剤、0.1%から約20%の増粘剤、0.01%から約10%の結合剤、約0.1%から約5%の甘味料、0%から約15%の発泡剤、0%から約5%の増白剤、約0.0001%から約20%の酵素を含む。これらの酵素はアルファ-アミラーゼ変異種をそれのみで、または、2,6-β-D-フルクタン加水分解酵素のような他の酵素と合わせて含み、任意に先に述べた他の種類の酵素を含む。
口腔洗浄剤は、通常、以下の成分を含んでも良い(最終口腔洗浄剤組成物の重量%で)。0%から約20%の湿潤剤;0%から約2%の界面活性剤;0%から約5%の酵素;0%から約20%のエタノール;0%から約2%の他の成分(例.調味料、甘味料、フッ化物のような活性成分)を含んでも良い。この組成物はまた、約0%から約70%の水も含み得る。口腔洗浄組成物は適当な緩衝剤(例.クエン酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウム)で、約6.0から約7.5のpH範囲で緩衝作用を受けても良い。口腔洗浄剤は非稀釈型、つまり使用前に薄めるものでも良い。口腔衛生組成物は口腔衛生の技術分野に知られているいずれかの従来の方法を使用して作られても良い。
実施例
実施例1−変異種の構築
野生型LAT配列のS239Q変異が部位指向変異法を使用して構築された。変異誘導の鋳型は、New England Biolabs(Berverly, MA)のdam-メチラーゼを使用して得られたメチル化されたpHPLT-LAT(図1)であった。Integrated DNA Technologies社により(Coralvile, IA)、5位の1級炭素をリン酸化した相補的な配列のフォワード及びリバースプライマーが合成され、TE緩衝液で50μMに稀釈された(Integrated DNA Technologies, Coralville,IA)。変異種はStratagene QuikChange Multi Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene,LaJolla,CA)で、239の残基で、上流、下流の配列に挟まれたグルタミン変異のCAAコドンを含むオリゴヌクレオチドを用いて作成された。239のセリン(S)残基がグルタミン(Q)に変異された。変異のプライマーは、
Figure 0005259723
である。
QuikChange反応
この反応は、13μLの滅菌蒸留H2O、キット付属の2.5μLの10X緩衝液、キット付属の1μLのdNTP、(50μLのうち)0.25μLのフォワードプライマー、(50μLのうち)0.25μLのリバースプライマー、鋳型として7μLのpHPLT-LATプラスミドDNA(約98ng)、及びキット付属の1μLの酵素混合物で計25μLからなる。
サイクル条件
サイクル条件は、DNA Engine Dyad thermocycler (Bio-Rad, Hercules,CA)中で95℃、1分を1回、次いで95℃で1分、55℃で1分、65℃で10分30秒を30サイクル行うものである。
QuikChange反応が行われた後、反応混合物に1μLのDpnI(10U/μl)が反応混合物に加えられ、37℃、18時間、定温静置され、さらに0.5μLが加えられさらに3時間、定温静置された。
2マイクロリットルのDPnI切断反応物がTempliphi増幅キット(GE Healthcare、Piscataway,NJ)によるローリングサークル増幅(rolling circle amplification)の鋳型として使用され、この反応はメーカーのプロトコールに従い行われた。1マイクロリットルのローリングサークルDNAは100μlのバチルス・スブチリス適合細胞を形質転換し(2個のプロテアーゼが欠失されたB・スブチリス株(ΔaprE、ΔnprE、degUHy32、oppA、ΔspoIIE3501、amyE::xylRPxylAcomK-phleo))、37℃で1時間振とうされた。全形質転換株は、次にLA+10ppmネオマイシン+1%不溶性デンプンプレート(1プレート上に25μL、別のプレート上に75μL)に接種された。コロニーPCRがIllustra PureTaq Ready-To-Go PCR ビーズ(GE Healthcare, Piscataway, NJ)と遺伝子の5’と3’末端を挟むオリゴヌクレオチドプライマーを用いて行われた。コロニーPCRプライマーは、TE緩衝液で50μMまで稀釈された(Integrated DNA Technologies, Coraville, IA)。コロニーPCRに使用されたPCRは、
Figure 0005259723
である。
反応物は、1.5mLの試験管に24μLの無菌蒸留水H2O、(50μLのうち)0.5μLのフォワードプライマー、(50μLのうち)0.5μLのリバースプライマー、極少量の目的コロニーが全て混合されたものであった。これらの混合物はPCRビーズに加えられた。
コロニーPCRのサイクル条件
サイクル条件は、DNA Engine Dyad thermocycler (Bio-Rad, Hercules, CA)で、95℃で10分を1回、次に、95℃で1分、53℃で1分、72℃で2分、25サイクル、次に72℃、1分の最終段階である。
PCR産生物は、ExoSAP-IT(USB Corp., Cleveland, OH)を用い、10μLのPCR産生物を4μLのExoSAP-ITと混合し、その後、15分間、37℃で定温静置され、次いで80℃で15分間定温静置して過剰のdNTPとプライマーを除くために洗浄された。洗浄されたコロニーPCR産生物はQuintaraBiosciences社(Berkeley,CA)で配列分析された。
LAT-S239SEL:
239のセリン残基の位置評価ライブラリーが合成的にDNA2.0社(Menlo Park,CA)により作られた。この変異種はpHPLT-LATプラスミドに作られ、B・スブチリス宿主を形質転換した(2個のプロテアーゼ欠失(ΔaprE、ΔnprE、ΔspoIIE、amyE::xylRPxylAcomK-phleo))。行われたアミノ酸置換は、A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、L、P、Q、R、S、T、V、W及びYである。
実施例2−変異種の発現、精製及びキャラクタリゼーション
このLAT S239変異種は、125μlのLB+10ppmネオマイシンを含む96ウェルのミクロ-タイタープレートに加えられ、対照サンプルとともにquad フォーマットに並べられた。この並べられたミクロタイタープレートは37℃、6時間、250rpmで培養された。複製ツール(Enzyscreen, Leiden, The Netherlands)を用いて、このミクロタイター培養プレートは、タンパク質発現用(G. Vogtentanzら、A Bacillus subtilis fusion protein system to produce soybean Bowman-Birk protease inhibitor, Prot.Expr.& Purif., 55:40-52)に175μlのMBD培地を含み、10ppmネオマイシンと5mMCaCl2が加えられた新しいマイクロタイタープレート(Enzyscreen, Leiden, The Netherlandsのマイクロタオイタープレートとプレートの蓋)に接種するために使用された。発現プレートは37℃、250rpm、70%湿度で64時間培養された。発現培地は次にマイクロフィルタープレート(0.22μm、Millipore,Billerica, MA)でろ過された。
アミラーゼを得るための発酵は、1%(w/v)Soytoneを加えた最小MOPS培地(NeidhardtらJ.Bacteriol.,119(3):736-747,1974)で、37℃、60時間500mL振とうフラスコで行われた。
S239Q変異種と野生型アルファ-アミラーゼ(それぞれSEQIDNOS:2 と4)は、Phenyl SEPHAROSE 6 Fast Flow(high sub)(GE healthcare,17-0973-05)により疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いて発酵培養液から精製された。簡単にいえば、液体培地は10倍に濃縮され、1M硫酸アンモニウムを含む50mM MES、2mM CaCl2、pH6.8で稀釈され、12.5cmグラスファイバーフィルター(Watman, 1825-125)を用いて無菌ろ過された。サンプルは、予め同じ緩衝液で平衡にされたフェニルセファロースFF高密度カラム(20x95mm; Amersham, GE Healthcare Bio-Sciences, Sweden)に加えられた。非アミラーゼタンパク質が、カラムの10倍量の硫酸アンモニウムを含まない同じ緩衝液で洗い流され、続いてカラムの5倍量の水で洗浄された。最後に、目的の酵素が40%プロピレングリコールを含む50mM MES、2mMCaCl2、pH6.8で溶出された。
タンパク質濃度は標準的定量的SDS pageゲルデンシトメトリー法、またはMegazyme社(Wicklow,Ireland)の標準的アミラーゼ定量キットを使った活性定量法により決定された。
実施例3−変えられた性質の決定
この実施例は本明細書に述べられた変異種が野生型アルファ-アミラーゼB・リケニフォルミスと比較して変わった性質を有することを示す。変異種について高効率の熱安定性スクリーニングが行われた。
加熱ストレスを加えた後、変異を受けていない野生型酵素(SEQ ID NO:4)がストレスを受ける前の活性の約40%(つまり、加熱ストレス後の活性/加熱ストレス前の活性、が約0.4であった。)を示すように加熱ストレス条件が検討、選択された。変異種のライブラリーが4度繰り返してスクリーニングされ、残った株が加熱ストレス後に原野生型酵素の平均残存活性よりも少なくとも標準偏差の2倍分大きい残存活性を示すものとして同定された。
アミラーゼの発現は発現プレートの培養上澄み液で約100ppmであった。加湿されたシェーカー(250rpmで70%相対湿度)で37℃で60-65時間の培養後、培養上澄液はフィルタープレートを用いて細胞物質を除くためにろ過された。澄んだ上澄み液は50mMNaOAc、2.6mMCaCl2、0.002%TWEEN20、pH5.8を含む緩衝液により10倍に稀釈され約10ppmの最終濃度とされた。上澄液の一部がさらに稀釈され0.02ppmとされ、酵素変異種の活性が蛍光標識とうもろこしデンプン基質(Invitrogen、San Diego CA、E33651)を用いて下記のように決定された。この上澄み液の第二の一部はサーモサイクラー中で95℃で30分間加熱ストレスを受け、その後50mMNaOAc、2.6mMCaCl2、0.002%TWEEN20、pH5.8中で0.02ppmに稀釈され、下記の同一のケイ光基質と定量法を用いて、残存活性が測定された。
アルファ-アミラーゼ活性はメーカーにより述べられているのと本質的に同様にしてアミラーゼEnzCheck定量法を用いて決定された(Invitrogen, San Diego, CA)。定量法におけるアミラーゼの最終濃度は約0.02ppmであった。定量緩衝液は50mMNaOAc、2.6mMCaCl2、0.002%TWEEN20、pH5.8であった。基質は、BODIPYケイ光染料と共役しているトウモロコシの100μg/mL DQ(商標)デンプン(Invitrogen, Eugene, OR)であった。ケイ光の増大(アミラーゼ活性を示す)がSpectomax M2(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を使用して測定された。反応が室温で5分間、速度測定モードで装置で記録してモニターされた。励起波長は485nm;発光が515nmの遮断フィルターを使い520nmでモニターされた。
野生型LATは95℃で30分間熱ストレスを受けた後に約43-55%残存活性を示した。LATS239Q変異種は同一の熱ストレス条件(LAT-QはS239Qまたは239Qと相互に替えて使用される)下で約73-75%残存活性を維持した。このLAT S239A変異種は同一の熱ストレス条件下約61%の残存活性を保持した。図2参照。これらの残存活性測定は、S239QとS239A変異種が野生型アルファ-アミラーゼよりも熱的に安定であることを示す。
表1:95℃で30分間熱ストレスを受けた後、各変異種サンプルの残存活性のパーセント
Figure 0005259723
さらに、このLAT S239変異種は生化学的に特徴付けられた。典型的な生化学的定量法を以下に述べる。酵素は50mM酢酸ナトリウム、pH5.8中で0.2mg/mLとして調製された。基質は、0.2mlのPCR型チューブストリップで40μLの7.5%(w/v)の馬鈴薯のアミロペクチン(Sigma-Fluka 10118)を10μLの250mM酢酸ナトリウム、pH5.8と混合して調製された。酵素反応は10μLの稀釈酵素サンプルを予め保温された基質に加えボルテックスにより短時間混合して開始された。定温静置が、PCR型サーモサイクラーヒートブロックで50℃、加熱された(80℃) 蓋を用いて行われた(Mastercycler Gradient, Eppendorf)。反応は60μl 0.1N NaOHを加え、短時間ボルテックスで混合することにより、丁度4分後に終了された。全ての反応は2本の同一サンプルで行われた。反応中の総還元糖量が以下のようにしてDNS法を用いて決定された。20μlのサンプルが0.2mL管PCR型96ウェルプレートで40μLの水と混合された。60μlのDNS試薬(2.5N NaOH、43.8mM 3-5ジニトロサリチル酸[Sigma D-0550]、1.06M酒石酸カリウムナトリウム[Sigma S6170])が各管内で、ピペットで吸い上げ、排出を繰り返し完全に混合された。プレートが2分間、95℃で保温され、その後PCR型サーモサイクリングヒートブロックを用いて25℃まで迅速な冷却を行った。各管の100μlの混合物が96ウェルの平底マイクロタイタープレートに移され、全プレートの吸光度が543nmで決定された。
LAT S239Q変異種と野生型LATの残存活性は、異なる緩衝液中で測定された。10マイクロリットルの300mM酢酸ナトリウム緩衝液pH3.5、4.0、4.5、5.0、5.25、5.5、5.75及び6.25がPCR型チューブストリップの8本の0.2mL管のそれぞれに加えられた。各酵素用に4本のストリップが調製され(合計8ストリップ)、氷冷された。酵素は0.005%TWEEN 80を含む水で、0.12mg/mlに調製された。50マイクロリットルの各酵素が4本のチューブストリップに分けられ、キャップがされ、ボルテックスにより短時間撹拌された。各酵素について、3本が予熱された85℃のヒートブロック(先にのべたもの)に置かれた。正確に30、60、120秒後、各酵素の1ストリップがこのヒートブロックから取り出され、氷冷に戻された。全てのチューブの活性が50℃、pH5.8で上記の5%アミロペクチン法から遊離される還元糖総量から決定された。加熱処理を受けたチューブ中の活性が氷冷で保存されていたチューブの活性と比例していることが報告された。0.1mg/mlの両酵素は、緩衝液中で85℃で2分までpH5以上で、定温静置された後、同様の安定性/残存活性を示すがLATS239Q変異種は低いpHでより高い残存活性を示す(図3)。
LAT S239Q変異種と野生型LATの基質における残存活性は以下の例外を除き上記と全く同様に決定された。酵素ごと5本(合計10本)のチューブストリップが調製された。40マイクロリットルの7.5%アミロペクチンが、全てのチューブ中で緩衝液と混合された。0.005%TWEEN80を含む水に0.6mg/mlで含まれる10マイクロリットルの酵素が全てのチューブに加えられ、混合され、氷冷された。チューブは上記のように加熱処理された。ただし、各酵素4本は85℃で1.25、2.5、5、10分間保温された。全てのチューブ中の内容物は、メーカーの指図書(Invitrogen)に従いBodipy定量法を用いて活性を定量する前に、50mM酢酸ナトリウム、pH5.8で1:10に稀釈された。先の結果と同様、LAT S239Q変異種は5%アミロペクチン、0.1mg/ml総タンパク質で定温静置した場合、低pHで高い残存活性を示した。アミロペクチンが存在すると安定性/残存活性を大きくするようである(図4)。
S239Q変異種と野生型LATの間のpHプロファイルを比較するために、10マイクロリットルの、先に述べた範囲の300mM緩衝液が8本のPCR型チューブストリップの各チューブに加えられた。40マイクロリットルの7.5%アミロペクチンが全てのチューブに加えられ、短く混合され、次に先に述べたように85℃に予熱された。反応は10μLの0.15mg/mlの酵素をすばやく加え、ボルテックスで短く撹拌して開始された。反応は先に述べたように45秒後に停止された。全ての反応は3回繰り返された。総還元糖量は先に述べたようにDNS定量法で決定された。結果はLAT S239Q変異種は野生型LATよりもpH<5.0でより高い活性を持つようである(図5)。
LATS239Q変異種と野生型LATの両者の温度プロファイルが評価された。10マイクロリットルの250mM酢酸ナトリウム,pH5.8がPCR型0.2mlチューブストリップの6本全てのチューブに加えられた。12本のストリップが調製された。40マイクロリットルの7.5%アミロペクチンが全てのチューブで混合された。グラジエントPCRヒートブロック(Mastercycler Gradient, Eppendorf)が5℃刻みで45-99℃の温度範囲に近づくようにプログラムされた。酵素が50mM酢酸ナトリウム,pH5.8で0.15mg/mlに調製された。200μLの各酵素は酵素貯留のため0.2mlのチューブの6本のチューブのうち3本に加えられた。基質/緩衝液混合物を含むチューブは1-2分間望む温度で予備保温を受けた。酵素反応は貯留チューブから10μlの各酵素を加えることにより開始され(3個の同一反応を行うことになる)、すばやく短時間混合した。反応は先のように30秒後に停止された。還元糖の総量が先に述べたようにDNS定量法を用いて決定された。種々の温度(安定性にとり最適なpHと見えるpH、pH5.8において)で酵素安定性と反応速度を区別するため、30秒の短い定温静置時間が使用された。不運にも、このような短い保温は繰り返し実験のデータに比較的高いバラツキ、低い再現性が生じた。反応は3回行い、標準偏差が報告データ(図6)の誤差範囲で示されている。両酵素は温度プロファイルにおいては互いに殆ど同一であるが、LATS239Q変異種はより高い特異的活性をもつように見える(これは酵素が純粋であり、両酵素が等量の水準で加えられたことによるように見えるが)。90℃で両酵素の活性の有意な増強は興味深い。LATS239Q変異種は、また、90℃より高い温度で野生型LATよりも比較的高い活性を保持しているようである。
実施例4−変化した性質の決定:DSC
S239Q変異種と野生型アルファ-アミラーゼ(それぞれ、SEQ ID NOS:2と4)は疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いてフラスコ発酵液体培地(実施例2参照)から精製された。タンパク質は、40%プロピレングリコールと2mMCaCl2を含む50mM MES、pH6.8を用いて精製された形態でカラムから溶出された。
過剰熱容量曲線が超高感度走査高効率マイクロ熱量測定計、VP-Cap DSC(MicroCal, Inc., Northampton,MA)を用いて測定された。DSC測定の標準的手順と技術に関する理論は既に公表されている(Freire, E.(1995)Differential Scanning Calorimetry, Methods. Mol. Biol. 41,191-218)。約500μLの0.5mg/mlのLAT、LAT S239Q、及びSPEZYME(登録商標)Fred(Genencor)は、種々の濃度の塩化カルシウム(0、0.1、0.15、0.2、0.5、1及び2mM)の存在下で30-125℃の温度で走査された。同一のサンプルは、その後この過程の可逆性を確認するために再走査された。アルファ-アミラーゼについては、熱的な折りたたみ構造の解けは非可逆的である。使用された緩衝液は10mM酢酸ナトリウム、pH5.5である。200℃/時間走査速度が凝集から生じるかもしれない人為的結果を最小にするために使用された。DSC曲線の中間点(Tm)が熱安定性の指標として使用された。
さらに、LAT S239Q変異種と野生型LATの熱的折り畳みの解けのプロファイルは、カルシウムのない条件、2mMのカルシウムが存在する条件、及び2mMのアカルボースの存在下で比較された。アカルボース、アルファアミラーゼの基質類似物はアルファ-アミラーゼに結合する基質の潜在的な安定化効果に似ている。表2は試験を受けたアミラーゼタンパク質の融点を示す。
塩化カルシウムのない条件と2mM塩化カルシウムの存在する条件においてS239Q変異種の熱的な折りたたみの解けは、野生型LATのそれと比較したときに、変異種の融点の相当の上昇を示す。塩化カルシウムを加えない場合、LATは90.1℃の融点;S239Q変異種は109.1℃である。従って、S239Q置換は19℃のTmの上昇となる。
2mM塩化カルシウムの存在下では、特徴付けられたLATは102.1℃の融点を有し、S239Q変異種は110.2℃である。従って、2mM塩化カルシウムの存在下、両タンパク質は、Tm値の上昇を示した。LATとS239Q変異種のTmの上昇は、それぞれ12℃と1.1℃であった。これはS239Q変異種は安定性に関しカルシウムヘの依存性の低いことを示している。
2mMのアカルボーズの存在下、特徴付けられたLATは95.2℃の融点をもつ。S239QのTmは109.8℃である。従って、2mMのアカルボース存在下では、両タンパク質はTmが上昇を示し、これは、アカルボースが構造的にアルファアミラーゼを安定化できることを示す。LATとS239Q変異種のTmの上昇は、それぞれ5.1℃と0.7℃であった。これは、S239Q変異種の熱安定性はアカルボースの存在に影響をより受けにくいことを示唆している。
これはS239Q変異種の熱力学的性質がLATのそれと異なることを示唆し、用途研究(実施例5-6参照)での性能の向上と整合している。このTmの変化とカルシウム結合曲線はLAT S239Q変異種が野生型LATよりも固有に熱的に安定であり、その熱安定性は野生型LATよりもカルシウムに依存しないことを示す。
表2:Tm(℃)により反映されている熱的な折りたたみ構造の解け
Figure 0005259723
実施例5−活性プロファイル
本実施例はS239Q変異種(SEQ ID NO:2)が、野生型アルファ-アミラーゼ(SEQ ID NO:4)だけでなく、工業的標準SPEZYME(登録商標)Fred(Genencor)と比較しても活性プロファイルが変化していることを示す。タンパク質の決定は、精製された又はプレートサンプルで行った。実験の変異種と野生型アルファ-アミラーゼの両者は等タンパク質濃度で使用された。
プレート又は精製された変異種はリンゴ酸緩衝液、pH5.6を使用して約20ppmに稀釈された。基質は、同一の50mMのリンゴ酸緩衝液、pH5.6中の15%トウモロコシ澱粉からなる。400マイクロリットルのデンプン懸濁液は70℃で2.5分間平衡にされた。ついで7μLの稀釈酵素が迅速に平衡にされたデンプンへ加えられた(最終タンパク質濃度:約0.36ppm)。反応混合物は次に85℃で予熱された振とう加熱ブロックに置かれ、300rpmで混合された。予め定めた時間間隔で、反応は、50μLの125mM NaOHで停止された。反応管は次に遠心分離され、上澄み液は、10mMNaOHに加えられ 10倍に稀釈され、HPACE-PADによりDPプロファイルが分析された。HPACE-PADは約DP1-DP40の大きさの範囲にある糖重合体を分離し、定量する感度の高い方法である。
反応は、4、10、20分に設定された。DP2からHPLCの最後までの総ピーク面積が積分され、この面積が総タンパク質量と反応時間で除され、任意の尺度による相対的な活性を表す値が求められた。
4分の反応は酵素がどの程度早く基質を分解し始めるかを示す。10分の反応は酵素の熱的活性の指標を与える。20分は酵素の熱安定性の指標である。結果は表3に与えられている。

表3.野生型LAT、LAT S239Q変異種及びFREDの活性プロファイル
Figure 0005259723
実施例6−ジェットクッカーでの液化
35%DCデンプンスラリーは20%炭酸ナトリウム溶液でpH5.8に調節された。二酸化硫黄がカルシウムを伴わずに100ppmになるよう加えられた。このスラリーは、ジャケットのついた釜で水と蒸気を使って70℃(158°F)に加熱された。液化酵素、LAT S239Q変異種(SEQID NO:2)とSPEZYME(登録商標)Fred(Genencor)が加えられ、このスラリーは10LUs/gのDSとなった。この混合物は約10分かけて85℃(185°F)に加熱された。85℃でさらに10分保温した後、このスラリーは、大型パイロットプラントジェット(Hydro-thermal Corp., Waukesha, WisconsinのM103ハイドロ-ヒーターが備えられている)を使用し、3分の保持時間で、108.4℃に維持されたジェットクッカーを通された。液状化物が、ジェットから集められ85℃の水浴に入れられた。二度目の液化酵素がジェット処理後に加えられた。液状化物は、継続して撹拌され、95℃で120分間、維持された。サンプルが0、30、60、90、120分で収集された。全てのサンプルは、ジェット処理後、DEと粘度が試験された。DEはSchoorls’法(請求により利用できる方法)で試験された。
LAT S239Q変異種のDE進行に関する傾斜はFredに匹敵した。Fredは野生型LATよりも有意に熱的に安定である工業的標準酵素である。ベンチクッカーの温度はLATS239Q変異種とFredの熱的安定性を研究するために115℃に上昇された。DEの進行はFredとLAT S239Q変異種について同様の割合で低下し(10DEに達する時間に基づき、Fredについては50%、LAT S239Q変異種について66%)、Fredに匹敵する熱安定性を示した。図7参照。
LAT S239Q変異種のDE形成は3つの異なるpH5.8、5.5及び5.2でベンチクッカーを通してFredと比較された。このpHでのDE進行についてLAT S239QとFredの間で違いは観察されず、低pHでの同等の安定性を確認した。 図8参照。
デンプンスラリーでのカルシウム濃度の効果を測定するために、LATS239QのDE形成が、pH5.6でベンチクッカーを通してFredと比較された。使用されたデンプンスラリーは、pH3.0で3回洗浄を受け、カルシウムとナトリウム含有量を低下させ、試験のためpH5.6に戻された。約90%の遊離カルシウムがこの洗浄手順により除去され、約3ppmの遊離カルシウム濃度となった。結果は、図9に示すように、LAT S239Q変異種は低カルシウム及び低めのpH(5.6) (野生型LAT(データは示されていない)の性能に非常に有害な条件である。)を耐える点でFredと同様に良好であることを示す。

Claims (45)

  1. 親B・リケニフォルミス アルファ-アミラーゼの変異種であり、当該変異種はSEQ ID NO:4と少なくとも 90%配列が同一であるアミノ酸配列を有し、SEQ ID NO:4に対応するS239Qの置換を含み、かつ当該変異種がアルファ-アミラーゼ活性を示す変異種。
  2. 請求項1の変異種であって、前記変異種は、SEQ ID NO:2を含む変異種。
  3. 請求項1の変異種であって、前記変異種は、SEQ ID NO:2からなる変異種。
  4. 請求項1の変異種であって、前記変異種はSEQIDNO:4と少なくとも 95%の配列の同一性を有する変異種。
  5. 請求項の変異種であって、前記変異種はSEQIDNO:4と少なくとも 98%の配列同一性を有する変異種。
  6. 請求項1の変異種であって、前記変異種はSEQ ID NO:4のアルファ-アミラーゼと比較して融点が変化している変異種。
  7. 請求項の変異種であって、前記変異種がSEQ ID NO:4のアルファ-アミラーゼと比較して融点が上昇している変異種。
  8. 請求項の変異種であって、前記変異種の融点の上昇には追加のカルシウムを必要としない変異種。
  9. 親B・リケニフォルミス アルファアミラーゼの変異種をコードする単離された核酸であって、前記変異種は、SEQID NO:4に対応するS239Q置換とSEQIDNO:4と少なくとも 90%配列の同一性を有し、かつ前記変異種がアルファ-アミラーゼ活性を示すものである核酸。
  10. 請求項の単離された核酸であって、前記変異種はSEQIDNO:2を含むものである核酸。
  11. 請求項1からのいずれかの請求項の変異種をコードする単離された核酸。
  12. 請求項9から11のいずれかの請求項の単離された核酸を含むベクター。
  13. 請求項9から11のいずれかの請求項の単離された核酸を含む単離された宿主細胞。
  14. 請求項12のベクターを含む単離された宿主細胞。
  15. 請求項13または14のいずれかの単離された宿主細胞であって、当該宿主細胞は細菌又は菌類である細胞。
  16. 請求項15の単離された宿主細胞であり、当該細菌はバチルス・スブチリス、B・リケニフォルミス、B・レンツス、B・ブレビス、B・ステアロテルモフィルス、B・アルカロフィルス、B・アミロリケファシエンス、B・コアグランス、B・サーキュランス、B・ラウツス、B・スリンギエンシス、ストレプトマイセス・リビダンス及びS・ムリヌスからなる群から選択されたグラム陽性細菌、またはグラム陰性細菌であり、前記グラム陰性細菌はエシェリキア・コリまたはシュードモナス属の種である宿主細胞。
  17. 請求項1からのいずれかの請求項の変異種を含むデンプンを液化する組成物であって、前記組成物が溶液であるもの。
  18. 請求項17の組成物を、デンプンを液化するために十分な時間、すりつぶしたトウモロコシ又はデンプンスラリーに作用させることを含むデンプンを液化する方法。
  19. 請求項18の方法であって、前記組成物が 40-60μg/g乾燥固体で当該すりつぶしたトウモロコシまたはデンプンスラリーに加えられる方法。
  20. 請求項18の方法であって、当該すりつぶしたトウモロコシはコーンスターチ溶液である方法。
  21. 請求項18の方法であって、すりつぶしたトウモロコシまたはデンプンスラリーが 85℃から 105℃で液化される方法。
  22. 請求項18の方法であって、当該すりつぶしたトウモロコシまたは当該デンプンスラリーが pH4.5から pH6.5で液化される方法。
  23. 請求項18の方法であって、さらに液化物を発酵させエタノールを生産することを含む方法。
  24. 請求項23の方法であって、前記発酵は、野生型よりも少なくとも 2.5%v/vエタノール多く生産する方法。
  25. 請求項23の方法であって、前記液化と前記発酵は同一の反応容器で同時に行われる方法。
  26. 請求項18の方法であって、カルシウムが追加されない方法。
  27. 請求項1からのいずれかの請求項の変異種を含むデンプンを糖化する、溶液である組成物。
  28. 前記デンプンを糖化するために十分な時間、請求項27の組成物を作用させることを含むデンプンを糖化する方法。
  29. 請求項28の方法であって、カルシウムを追加しない方法。
  30. 請求項1からのいずれかの請求項の変異種を含む洗剤添加物。
  31. 請求項30の洗剤添加物であり、さらにセルラーゼ、プロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カーボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ハロパーオキシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、酸化酵素、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、パーオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、カラゲナーゼまたはそれらのいずれかの組み合わせ、からなる群から選択された酵素を含む洗剤添加物。
  32. 非ダスティング(non-dusting)顆粒、微小顆粒(microgranulate)、安定化された液体、又は保護された酵素の形態である請求項30の洗剤添加物。
  33. 請求項30の洗剤添加物を含む洗剤組成物。
  34. 請求項33の洗剤組成物であって、さらにセルラーゼ、プロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カーボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ハロパーオキシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーセ、リパーゼ、マンノシダーゼ、酸化酵素、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、パーオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、カラゲナーゼ及びこれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択された一以上の酵素を含む洗剤組成物。
  35. 請求項1からのいずれかの請求項の変異種と界面活性剤を含む洗剤組成物
  36. 請求項30の洗剤添加物を含む洗濯洗剤組成物であり、さらに、界面活性剤、洗剤ビルダー、錯体形成剤、ポリマー、漂白系、安定化剤、発泡促進剤、泡抑制剤、腐食防止剤、汚れ懸濁剤、汚れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、ヒドロトロープ、光学的増白剤、布地柔軟仕上げ剤、香料のうち1以上を含む組成物。
  37. 請求項1からのいずれかの請求項の変異種を含む、水溶液の布地脱糊組成物であり、任意に少なくとも1個の追加の酵素を含む組成物。
  38. 前記布地を脱糊に十分な時間、請求項37の布地脱糊組成物を作用させることを含む布地を脱糊する方法。
  39. 請求項38の方法であって、カルシウムが追加されない方法。
  40. 請求項1から8のいずれかの請求項の変異種を含むデンプン処理組成物。
  41. 請求項40のデンプン処理組成物であって、さらにグルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、フィターゼまたはそれらの組み合わせを含む組成物。
  42. 前記デンプンを処理するために十分な時間、請求項40のデンプン処理組成物を作用させることを含むデンプンを処理する方法。
  43. 請求項42の方法であって、カルシウムが追加されない方法。
  44. 請求項1からのいずれかの請求項の変異種を含む、溶液またはゲルであるベーキング組成物。
  45. 請求項44のベーキング組成物を作用させることを含む、ベーキングの方法。
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