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JP5257561B1 - 音響再生装置 - Google Patents

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Abstract

音響再生装置は、超音波帯域の搬送波信号を可聴音信号により変調して変調搬送波信号を出力する出力端を有する変調器と、変調器の出力端に電気的に接続された超指向性スピーカと、超音波源とグランドとの間に電気的に接続されたキャパシタと、超指向性スピーカとキャパシタに流れる電流をそれぞれ検出する第1と第2の電流検出部と、第1の電流検出部で検出された電流の低周波数帯域の成分をカットして得られた濾波信号を出力するハイパスフィルタと、第2の電流検出部が検出した電流と濾波信号との差に応じた信号を出力する差動増幅部とを備える。超音波源は差動増幅部が出力する信号が一定になるように搬送波信号を出力する。この音響再生装置は、温度が変化しても音質の劣化を低減することができる。

Description

本発明は、超指向性スピーカを用いた音響再生装置に関する。
従来、音声情報に指向性を持たせるスピーカを用いて、音声情報が特定の対象者にのみ伝達される音響再生装置が開発されている。図6は特許文献1に記載されている音響再生装置500の構成概略図である。
搬送波選択手段101は搬送波信号の超音波の複数の周波数から1つの周波数を選択し、選択された周波数を超音波発振手段103に出力する。超音波発振手段103はその周波数の搬送波信号を発振し、搬送波変調手段105へ出力する。一方、可聴音を再生する再生信号発生手段107は可聴音信号を搬送波変調手段105へ出力する。搬送波変調手段105は可聴音信号で搬送波信号を変調して変調搬送波信号を出力する。この変調搬送波信号は超音波スピーカ109に入力され、超音波スピーカ109は変調搬送波信号に基づく指向性を持った音声を放出する。
次に、音響再生装置500の動作について説明する。図7Aは再生信号発生手段107が再生する可聴音信号111を示す。図7Bは超音波発振手段103にて生成される搬送波信号113を示す。図7Cは搬送波変調手段105にて生成される変調搬送波信号115を示す。搬送波変調手段105は、可聴音信号111で搬送波信号113を変調することにより変調搬送波信号115を作成する。変調搬送波信号115では、搬送波信号113の周期が可聴音信号111の振幅に合わせて変えられる。図7Cに示すように、変調搬送波信号115は振幅が一定で周期が部分的に異なる波形を有する。超音波スピーカ109は圧電素子を貼付した振動板を有する。変調搬送波信号115が超音波スピーカ109の圧電素子に入力されて振動板が振動し、空気の粗密状態が発生することで変調搬送波信号115による超音波が超音波スピーカ109から大気中へ出力される。この超音波が使用者の耳に到達すると、使用者は超音波帯域の空気の圧力振動を聞き取ることができないので、可聴音域の圧力振動のみを聞き取ることができる。ここで、超音波スピーカ109から出力される変調搬送波信号115は超音波帯域の周波数を有するので、ある狭い指向性をもって超音波が伝播する。従って、音響再生装置500の使用者は、変調搬送波信号115の伝播する狭い範囲内でのみ可聴音を聞くことができる。
音響再生装置500では、図7Cに示すように一定の振幅で超音波スピーカ109を駆動している。このような状態で長時間に亘り音響再生装置500を使用すると、超音波スピーカ109の圧電素子自身の発熱や、周囲温度の変化によって、変調搬送波信号115の周波数や振幅が変化する場合がある。その結果、音響再生装置500で再生される音圧が変化し音質が劣化する可能性がある。
特開2006−245731号公報
音響再生装置は、超音波帯域の搬送波信号を出力する超音波源と、搬送波信号を可聴音信号により変調して変調搬送波信号を出力する出力端を有する変調器と、変調器の出力端とグランドとの間に電気的に接続された圧電素子を有する超指向性スピーカと、圧電素子に流れる電流を検出する第1の電流検出部と、超音波源とグランドとの間に電気的に接続されたキャパシタと、キャパシタに流れる電流を検出する第2の電流検出部と、第1の電流検出部で検出された電流の低周波数帯域の成分をカットして得られた濾波信号を出力するハイパスフィルタと、第2の電流検出部が検出した電流と濾波信号との差に応じた信号を出力する差動増幅部とを備える。超音波源は差動増幅部が出力する信号が一定になるように搬送波信号を出力する。
この音響再生装置は、温度が変化しても音質の劣化を低減することができる。
図1Aは本発明の実施の形態1における音響再生装置のブロック回路図である。 図1Bは実施の形態1における音響再生装置の可聴音源が発生する可聴音信号を示す図である。 図1Cは実施の形態1における音響再生装置の超音波源で発生する搬送波信号を示す図である。 図1Dは実施の形態1における音響再生装置の変調器が発生する変調搬送波信号を示す図である。 図2は実施の形態1における音響再生装置の圧電素子の共振点近傍における等価回路図である。 図3は実施の形態1における音響再生装置の超指向性スピーカのアドミタンスの周波数特性図である。 図4は本発明の実施の形態2における音響再生装置のブロック回路図である。 図5は本発明の実施の形態3における音響再生装置のブロック回路図である。 図6は従来の音響再生装置の構成概略図である。 図7Aは従来の音響再生装置の再生信号発生手段が再生する可聴音信号を示す図である。 図7Bは従来の音響再生装置の超音波発振手段にて生成される搬送波信号を示す図である。 図7Cは従来の音響再生装置の搬送波変調手段にて生成される変調搬送波信号を示す図である。
(実施の形態1)
図1Aは本発明の実施の形態1における音響再生装置1001のブロック回路図である。図1Bから図1Dは音響再生装置1001の信号を示す。音響再生装置1001は、超音波源11と変調器19と可聴音源21と超指向性スピーカ25と電流検出部31、35とハイパスフィルタ37と差動増幅部39とを備える。超音波源11は超音波帯域の周波数を有する搬送波信号を出力するもので、基準周波数を生成して出力する基準信号源13と、基準信号源13に電気的に接続された周波数調整器15と、周波数調整器15に接続されたアンプ17とを有する。周波数調整器15は、基準周波数を基に超指向性スピーカ25の圧電素子27を駆動するために必要な超音波帯域の周波数を有する搬送波信号を出力する。周波数調整器15から出力される搬送波信号はアンプ17の入力端17Aに供給されアンプ17で増幅される。増幅された搬送波信号はアンプ17の出力端17Bから変調器19の入力端19Aに供給される。図1Cは超音波源11が発生する搬送波信号113Aの波形を示す。
変調器19は、図1Bに示す可聴音域の周波数を有する可聴音信号111Aを出力する可聴音源21とも電気的に接続されている。従って、変調器19の入力端19Bには可聴音信号も入力される。そして、変調器19は、搬送波信号を可聴音信号により変調して図1Dに示す変調搬送波信号115Aを出力端19Cから出力する。
変調器19の出力する変調搬送波信号は、超指向性スピーカ25の正極端子23を介して、超指向性スピーカ25に内蔵される圧電素子27の正極27Aと電気的に接続される。また、圧電素子27の負極27Bは超指向性スピーカ25の負極端子29および電流検出部31を介してグランド200と電気的に接続される。このような構成を換言すると、超指向性スピーカ25の圧電素子27と電流検出部31は接続点201Aで互いに直列に接続されて直列回路201を構成し、変調器19とグランド200との間には直列回路201が電気的に接続されている。電流検出部31は超指向性スピーカ25に流れる電流Iを検出するもので、シャント抵抗器やホール素子等が適用できる。実施の形態1では、電流検出部31として小型化が可能なシャント抵抗器を用いている。
超指向性スピーカ25は、圧電素子27に貼り付けられて圧電素子27の振動につれて振動する振動板27Cをさらに有する。変調器19から出力される変調搬送波信号が圧電素子27に入力されると、圧電素子27は変調搬送波信号に応じた振動を超指向性スピーカ25の振動板27Cに伝える。その結果、超指向性スピーカ25から図1Dに示す波形を有する超音波が放出される。使用者は超音波帯域の空気の圧力振動を聞き取ることができないので、この超音波が使用者の耳に到達すると可聴音域の圧力振動のみを聞き取ることができる。ここで、超指向性スピーカ25から出力される超音波は、ある狭い指向性をもって伝播する。従って、使用者はその超音波の伝播する狭い範囲内でのみ可聴音を聞くことができ、その範囲外ではその可聴音を聞くことはできない。
キャパシタ33と電流検出部35は互いに接続点202Aで直列に接続されて直列回路202を構成する。アンプ17の出力端17Bとグランド200との間には直列回路202が電気的に接続されている。ここで、キャパシタ33の容量値Ccは圧電素子27の容量値Cpと合わせて一致させてある(キャパシタ33の容量値Ccは圧電素子27の容量値Cpと合わせてばらつきや誤差の範囲内で一致させてある)。さらに、容量値Cpと容量値Ccにおける温度特性も合わせて一致させてある(容量値Cpと容量値Ccにおける温度特性も合わせてばらつきや誤差の範囲内で一致させてある)。また、電流検出部35はキャパシタ33に流れるキャパシタ電流Icを検出するもので、電流検出部31と同様にシャント抵抗器を用いている。
差動増幅部39は入力端39A、39Bと出力端39Cとを有する。差動増幅部39は差動増幅器56を有する。差動増幅器56は入力端39A、39Bに入力された信号の差を出力する出力端56Cを有する。差動増幅部39の出力端39Cは差動増幅器56の出力端56Cに接続されている。直列回路201における圧電素子27と電流検出部31との接続点201Aすなわち超指向性スピーカ25の負極端子29にはハイパスフィルタ37を介して差動増幅部39の入力端39Aが電気的に接続される。ここで、ハイパスフィルタ37は変調搬送波信号から低周波数帯域の成分(可聴音信号成分)をカットする特性を有する。ゆえに、ハイパスフィルタ37からは圧電素子27に流れる搬送波信号の電流に比例した電圧が濾波信号として出力され、この電圧が差動増幅部39の入力端39Aに入力される。
一方、直列回路202におけるキャパシタ33と電流検出部35との接続点202Aは差動増幅部39の入力端39Bと電気的に接続されている。従って、差動増幅部39の入力端39Bにはキャパシタ電流Icに比例した電圧が入力される。
差動増幅部39の差動増幅器56はオペアンプと周辺回路部品から構成され、差動増幅部39の出力端39Cは超音波源11の周波数調整器15と電気的に接続される。
次に、音響再生装置1001の動作について説明する。尚、変調器19で搬送波信号を可聴音信号により変調して変調搬送波信号を得て、超指向性スピーカ25から音波を放射する基本動作は上記した通りであるので、ここではそれ以外の動作について説明する。
搬送波信号の周波数は、効率的に音波を放射するために、超指向性スピーカ25の圧電素子27における共振周波数近傍に設定している。従って、基準信号源13は実質的に圧電素子27の共振周波数を出力する。
この共振周波数で超指向性スピーカ25の圧電素子27を駆動し続けると、圧電素子27の内部インピーダンスにより熱が発生する。この熱は共振周波数近傍の圧電素子27における電気機械変換損失に起因する。その詳細を以下に説明する。
図2は共振周波数近傍での圧電素子27の等価回路を示す。圧電素子27は、圧電素子容量41を有するキャパシタの構造を有する。特に共振周波数近傍では、等価回路では、互いに直列に接続されたインダクタンス成分43と容量成分45と抵抗成分47よりなる直列回路227が圧電素子容量41と並列に接続されている。従って、直列回路227の合成インピーダンスすなわち共振周波数近傍における圧電素子27の内部インピーダンスにより発熱が起こる。圧電素子27に流れる電流Iは、圧電素子容量41に流れる圧電素子容量電流Ieと直列回路227に流れる電気機械変換電流Imに分かれる。電気機械変換電流Imが直列回路227に流れることで直列回路227のインピーダンスにより電気機械変換損失が発生し、この電気機械変換損失により発熱が起こる。
この発熱に伴う音質劣化について以下に説明する。
図3は超指向性スピーカ25の圧電素子27を駆動する周波数fと内部インピーダンスの逆数であるアドミタンスYとの関係を示す。図3において、横軸は周波数fを示し、縦軸はアドミタンスYを示す。図3において、特性P1は圧電素子27の温度が20℃であるときのアドミタンスYの周波数特性を示し、特性P2は圧電素子27の温度が50℃であるときのアドミタンスYの周波数特性を示す。
図3に示すように、アドミタンスYは周波数fが高くなるにつれて増加してアドミタンスY1で極大点に至り、極大点(Y1)から減少してアドミタンスY3で極小点に至った後、再び増加する。ここで、極大点(Y1)における周波数fが圧電素子27の共振周波数である。圧電素子27の温度が20℃では、特性P1の極大点(Y1)の周波数f20が圧電素子27の共振周波数となる。極大点周波数f20の近傍ではアドミタンスY1は大きいので前述の内部インピーダンスが小さくなり、その結果、電気機械変換電流Imが大きくなる。ここで、電気機械変換電流Imは圧電素子27が変調搬送波信号に基づく音波を放射する際の、圧電素子27に貼付された振動板27Cの振幅に比例する。このことから、圧電素子27の共振周波数(極大点周波数f20)近傍で音波を放射することで、振幅が大きくなり音圧を大きくすることが可能となる。
一方で、共振周波数近傍では電気機械変換電流Imが大きくなるので圧電素子27の発熱(電気機械変換損失)も発生する。これは、発熱量が電気機械変換電流Imの二乗に比例するためである。その結果、共振周波数近傍で圧電素子27を駆動し続けると、圧電素子27の温度が上昇する。圧電素子27の温度が50℃まで上昇すると、圧電素子27のアドミタンスYは図3に示す特性P2に変わる。この場合に、周波数f20のままで圧電素子27を駆動し続けると、アドミタンスYは特性P2での周波数f20におけるアドミタンスY2まで急減する。その結果、インピーダンスが上昇するので電気機械変換電流Imが下がり、振動板27Cの振幅が小さくなる。ゆえに、音圧が低下し、温度が変化することによる音質劣化が発生する。尚、圧電素子27の温度が50℃まで上昇すると、共振周波数は特性P1での極大点での周波数f20から特性P2での極大点の周波数f50に低くなる。
圧電素子27の温度が上昇しても振動板27Cの振幅が大きく変化しないようにすることで、音質劣化を低減することができる。ここで、上記したように、振幅は電気機械変換電流Imに比例するので、圧電素子27の温度が上昇しても電気機械変換電流Imの振幅が一定になるように制御することで、振動板27Cの振幅を変化させないようにすることができる。
そこで、実施の形態1における音響再生装置1001では、電気機械変換電流Imの変化に応じて搬送波信号の周波数を周波数調整器15で調整するフィードバック制御を行なうように動作する。しかし、電気機械変換電流Imは図2に示す等価回路での電流であるので、圧電素子容量電流Ieから分けて検出することはできない。図1Aに示す音響再生装置1001において、直列回路201における圧電素子27と電流検出部31との接続点201Aの電圧V201は電流検出部31で検出される電流Iに相当する。一方、直列回路202におけるキャパシタ33と電流検出部35との接続点202Aの電圧V202は、電流検出部35で検出されるキャパシタ電流Icに相当する。
上記したように、キャパシタ33の容量値Ccは図2に示す圧電素子27における圧電素子容量41の容量値Cpと合わせて一致させてある(キャパシタ33の容量値Ccは図2に示す圧電素子27における圧電素子容量41の容量値Cpと合わせてばらつきや誤差の範囲内で一致させてある)ので、電流検出部35で検出されるキャパシタ電流Icは、圧電素子容量電流Ieと同等になる。ゆえに、電流検出部31で検出される電流Iに相当する電圧V201と、電流検出部35で検出されるキャパシタ電流Icに相当する電圧V202とを差動増幅部39の入力端39A、39Bにそれぞれ入力することで、差動増幅部39の出力端39Cからは電流Iからキャパシタ電流Icを引いて得られた差すなわち電気機械変換電流Imに相当する電圧が出力される。
但し、電流Iは可聴音源21から入力された可聴音信号も含まれるので、可聴音信号の影響を低減するために、電流検出部31により検出される電流Iに相当する電圧V201はハイパスフィルタ37を通されて可聴音信号に対応する成分が電圧V201から除去される。これにより、可聴音信号の影響が低減された電流Iに相当する電圧が差動増幅部39に入力される。その結果、差動増幅部39から出力される値の電気機械変換電流Imに対する精度が向上する。
差動増幅部39の出力は、超音波源11の周波数調整器15に入力される。一方、基準信号源13からの出力も周波数調整器15に入力される。これらの入力により、周波数調整器15は基準信号源13から出力される超音波帯域の基準周波数(例えば上記した極大点の周波数f20)を差動増幅部39の出力に応じて調整し、搬送波信号の周波数として出力する。具体的には、まず図3で述べたように圧電素子27の温度が上昇するほど極大点周波数f20におけるアドミタンスY1は小さくなるので、差動増幅部39の出力に相当する電気機械変換電流Imが小さくなる。従って、圧電素子27の温度上昇が発生しても、振動板27Cの振幅を一定にするためには、電気機械変換電流Imの振幅を一定にすればよい。そのためには図3に示すようにアドミタンスYを上げて、アドミタンスY1となるようにすればよい。ゆえに、例えば圧電素子27の温度が50℃に上昇すれば、周波数調整器15は、出力する搬送波信号の周波数fを極大点周波数f50になるように調整する。
このような動作をまとめると、周波数調整器15は、差動増幅部39の出力が小さくなれば搬送波信号の周波数fを低くするように調整する。このようなフィードバック制御により、常時、電気機械変換電流Imの振幅を一定としている。換言すれば、超音波源11の周波数調整器15は差動増幅部39の出力が一定になるように搬送波信号の周波数を調整する。
その結果、圧電素子27の温度が変化しても振動板27Cの振幅が一定となるので、音圧の変化が少なくなり音質劣化を低減することができる。さらに、上記したようにハイパスフィルタ37により差動増幅部39から出力される電気機械変換電流Imの精度が向上するので、さらなる音質劣化の低減が可能となる。
上述したように、可聴音源21は可聴音信号を出力する。超音波源11は超音波帯域の搬送波信号を出力する。変調器19は、搬送波信号を可聴音信号により変調して変調搬送波信号を出力する出力端19Cを有する。超指向性スピーカ25は、変調器19の出力端19Cとグランド200との間に電気的に接続された圧電素子27と、圧電素子27で駆動される振動板27Cとを有する。電流検出部31は圧電素子27に流れる電流を検出する。キャパシタ33は超音波源11とグランド200との間に電気的に接続されている。電流検出部35はキャパシタ33に流れる電流を検出する。ハイパスフィルタ37は、電流検出部31で検出された電流の低周波数帯域の成分をカットして得られた濾波信号を出力する。差動増幅部39は、電流検出部35が検出した電流と濾波信号との差を出力する差動増幅器56を有して、差に応じた信号を出力する。超音波源11は差動増幅部39が出力する信号が一定になるように搬送波信号を出力する。実施の形態1では、差動増幅部39が出力する信号は差動増幅器56が出力する差であり、超音波源11は差動増幅器56が出力する差が一定になるように搬送波信号を出力する。
また、超指向性スピーカ25の圧電素子27と電流検出部31とは互いに接続点201Aで直列に接続されて直列回路201を構成する。直列回路201は変調器19の出力端19Cとグランド200との間に電気的に接続されている。キャパシタ33と電流検出部35とは接続点202Aで互いに直列に接続されて直列回路202を構成する。直列回路202は超音波源11とグランド200との間に電気的に接続されている。差動増幅器56は、接続点201Aに接続された入力端39Aと、接続点202Aに接続された入力端39Bとを有する。
以上のような構成、動作により、圧電素子27の発熱により温度が変化しても、それにより変化する圧電素子27の電流Iに基づいて電気機械変換電流Imを求める。これにより、電気機械変換電流Imが一定になるように、すなわち、音圧が一定となるように超音波源11が搬送波信号の周波数fを調整するので、音質の劣化を低減することが可能な音響再生装置1001を実現できる。
なお、実施の形態1では、圧電素子27の容量値Cpとキャパシタ33の容量値Ccの温度特性を合わせて一致させている(圧電素子27の容量値Cpとキャパシタ33の容量値Ccの温度特性を合わせてばらつきや誤差の範囲内で一致させている)が、周囲温度がほぼ一定の環境で音響再生装置1001を使用する場合は、これらの温度特性を特に合わせず一致させなくてもよい。
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2における音響再生装置1002のブロック回路図である。図4において、図1Aに示す実施の形態1における音響再生装置1001と同じ部分には同じ参照符号を付す。実施の形態2における音響再生装置1002は、温度センサ51、53と温度補償器55をさらに備える。
温度センサ51は超指向性スピーカ25の圧電素子27にできるだけ近づけて配される。温度センサ51は超指向性スピーカ25の周囲温度を出力するが、超指向性スピーカ25には圧電素子27が内蔵されるので、超指向性スピーカ25の周囲温度は圧電素子27の周囲温度とほぼ同等である。温度センサ51の出力は圧電素子27の周囲温度である圧電素子温度Tpである。
温度センサ53はキャパシタ33にできるだけ近づけて配される。温度センサ53はキャパシタ33の周囲温度であるキャパシタ温度Tcを出力する。
差動増幅部39は温度補償器55をさらに有する。具体的には、差動増幅器56の出力端56Cと超音波源11との間に温度補償器55が電気的に接続されている。尚、差動増幅部39は、実施の形態1と同様に、周辺回路部品も内蔵している。温度補償器55は温度センサ51、53とも電気的に接続される。
温度センサ51、53は、いずれも温度に対する抵抗値変化が大きく感度が高いサーミスタを用いている。尚、温度センサ51、53はサーミスタに限定されるものではなく、熱電対など他の種類の温度センサであっても良い。
次に、音響再生装置1002の動作について説明する。以下の説明において、実施の形態1における音響再生装置1001と同じ動作の詳細な説明を省略し、温度センサ51、53と温度補償器55の動作について特に説明する。
温度補償器55は、圧電素子温度Tpとキャパシタ温度Tcの2つの変数に対応する予め求められた差動増幅器56の出力補正量ΔIhの値を記憶する。温度補償器55は、温度センサ51の出力により得られる圧電素子温度Tpと温度センサ53の出力により得られるキャパシタ温度Tcに応じて出力補正量ΔIhを得て、差動増幅器56の出力を出力補正量ΔIhで補正することで温度補償を行なう。
以下に、温度補償の動作の詳細について説明する。
圧電素子27の容量値Cpは圧電素子27の周囲温度である圧電素子温度Tpに依存する温度特性を有する。実施の形態2では、圧電素子温度Tpが高くなるほど容量値Cpは小さくなる。
同様に、キャパシタ33における容量値Ccも、キャパシタ33の周囲温度であるキャパシタ温度Tcに依存する温度特性を有する。実施の形態2では、キャパシタ温度Tcが高くなるほど容量値Ccは小さくなる。
実施の形態1における音響再生装置1001では、上記したように、容量値Cpと容量値Ccの温度特性を合わせて一致させている(容量値Cpと容量値Ccの温度特性を合わせてばらつきや誤差の範囲内で一致させている)。したがって、キャパシタ33と圧電素子27の周囲温度が変化しても、それによる容量値Cpと容量値Ccの変化は差動増幅器56で相殺され、電気機械変換電流Imに相当する出力のみが得られ、温度補償器55は不要である。
しかし、容量値Cpと容量値Ccの温度特性が異なる場合、実施の形態1における音響再生装置1001では電気機械変換電流Imに相当する出力に、周囲温度の変化による誤差が含まれる。そのため、周囲温度が変化すると、実施の形態1で述べた音圧を一定にする調整動作にこの誤差が影響し、音質劣化の低減が十分に図れない可能性がある。
実施の形態2における音響再生装置1002では、温度センサ51と温度センサ53が圧電素子温度Tpとキャパシタ温度Tcをそれぞれ検出し、温度補償器55が温度Tp、Tcに応じた出力補正量ΔIhとの相関関係から差動増幅器56の出力を補正する。
次に、圧電素子温度Tpとキャパシタ温度Tcの2変数に対応した差動増幅器56の出力補正量ΔIhの相関関係について述べる。
この相関関係は、次のようにして得られる。まず、圧電素子温度Tpとキャパシタ温度Tcを、音響再生装置の使用温度範囲内で、かつ、周囲温度が変化する際の最大温度勾配における音響再生装置1002の構造上の温度バラツキ範囲内で、独立して変化させる。様々な圧電素子温度Tpの値とキャパシタ温度Tcの値に対して、圧電素子27が発熱しない音声再生の初期段階における差動増幅器56の出力を求め、これを出力補正量ΔIhとして求める。これにより、圧電素子27とキャパシタ33の配置や放熱条件により、周囲温度の変化途中で圧電素子温度Tpとキャパシタ温度Tcが異なる場合も、その状態での出力補正量ΔIhを求めることになるので、音響再生装置の構造上の温度バラツキを含めた前記相関関係が実験的に求められる。この相関関係を温度補償器55に記憶しておくことで、圧電素子温度Tpとキャパシタ温度Tcを検出すれば出力補正量ΔIhを得ることができる。
尚、この相関関係は図4に示す回路構成や図2に示す等価回路、圧電素子27とキャパシタ33の温度特性等から、周囲温度、および、周囲温度の変化時における温度勾配に応じてシミュレーションにより求めるようにしても良い。
以上のようにして求められた相関関係を用いて、温度補償器55は圧電素子温度Tpとキャパシタ温度Tcから出力補正量ΔIhを得て、差動増幅部39は差動増幅器56の出力から出力補正量ΔIhを差し引いて出力端39Cから出力する。これにより、温度補償器55は圧電素子27とキャパシタ33の温度に応じて、差動増幅器56の出力を温度補償し、これを差動増幅部39の出力端39Cからの信号として超音波源11の周波数調整器15に出力する。その結果、周波数調整器15は、温度補償された差動増幅部39の出力に基づいて搬送波信号の調整を行なうので、周囲温度の影響が低減され、その分、音質劣化のさらなる低減が可能となる。
上述のように、実施の形態2における音響再生装置1002では、温度センサ51が超指向性スピーカ25に配される。温度センサ53がキャパシタ33に配される。差動増幅部39は、温度センサ51、53で検出された温度で差動増幅器56が出力する差を補償する温度補償器55を有する。実施の形態2では、差動増幅部39が出力する信号は、温度補償器55で補償された差であり、超音波源11は温度補償器55で補償された差が一定になるように搬送波信号を出力する。
以上のような構成、動作により、圧電素子27の発熱による温度変化に加え、周囲温度が変化しても、超指向性スピーカ25から一定の音圧で音波を放射できるので、さらなる音質劣化の低減が可能な音響再生装置1002を実現できる。
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3における音響再生装置1003のブロック回路図である。図5において、図1Aと図2に示す実施の形態1、2における音響再生装置1001、1003と同じ部分には同じ参照符号を付す。
実施の形態3における音響再生装置1003では、超指向性スピーカ25とキャパシタ33とは同一の基板57上に実装される。尚、超指向性スピーカ25とキャパシタ33はできるだけ近傍に配される。
基板57には温度センサ59が配される。具体的には、温度センサ59は基板57において、超指向性スピーカ25とキャパシタ33とのできるだけ近傍に配される。ここで、超指向性スピーカ25とキャパシタ33が互いに近傍に配されており、かつ同一の基板57上に実装されることで、基板57により両者が熱接続されるので、両者の温度はほぼ同等である。従って、温度センサ59は超指向性スピーカ25に内蔵される圧電素子27とキャパシタ33の温度(以下、周囲温度Tという)を検出する。
温度センサ59の出力は温度補償器55と電気的に接続される。従って、温度補償器55には1つだけの温度センサ59が接続される。
基板57には超指向性スピーカ25の正極端子23と負極端子29が設けられる。さらに、基板57にはキャパシタ33の正極と接続されるキャパシタ正極端子61、キャパシタ33の負極と接続されるキャパシタ負極端子63、および温度センサ59と接続される温度センサ端子65が設けられる。
上記以外の構成は図4に示す実施の形態2における音響再生装置1002と同じである。
温度センサ59は実施の形態2における温度センサ51、53と同様、サーミスタを用いている。
次に、音響再生装置1003の動作について説明する。尚、動作についても実施の形態1と同じ動作は詳細な説明を省略し、特徴となる動作である温度センサ59の出力に応じた温度補償器55の動作を説明する。
温度補償器55は、周囲温度Tの1つの変数に対応する予め求められた差動増幅器56の出力補正量ΔIhの値を記憶する。温度補償器55は、温度センサ59の出力により得られる周囲温度Tに対応した出力補正量ΔIhを得て、差動増幅器56の出力を出力補正量ΔIhで補正することで温度補償を行なう。
以下に、この温度補償の動作の詳細について説明する。
実施の形態3における音響再生装置1003では、実施の形態2で述べたように、圧電素子27の容量値Cpにおける温度特性と、キャパシタ33の容量値Ccにおける温度特性が異なる。従って、周囲温度Tが変化すると、実施の形態1における音響再生装置1001での音圧を一定にする調整動作に誤差が影響し、音質劣化の低減が十分に図れない可能性がある。
実施の形態3における音響再生装置1003では、温度補償器55が周囲温度Tに応じた出力補正量ΔIhとの相関関係から差動増幅器56の出力を補正する。ここで、上記したように、超指向性スピーカ25、キャパシタ33、および温度センサ59は、同一の基板57上で互いに近傍に配されるので、これらの温度はほぼ同等となる。従って、実施の形態2における音響再生装置1002と異なり、実施の形態3における音響再生装置1003では超指向性スピーカ25に内蔵される圧電素子27の温度とキャパシタ33の温度は、温度センサ59で検出される周囲温度Tとなる。
次に、周囲温度Tに対応した差動増幅器56の出力補正量ΔIhの相関関係について述べる。
この相関関係は、音響再生装置1003全体をある温度に保った状態で、温度センサ59が検出する周囲温度Tを求めるとともに、圧電素子27が発熱しない音声再生の初期段階における差動増幅器56の出力を求め、これを出力補正量ΔIhとして求めることで得られる。
これを様々な周囲温度Tの値毎に差動増幅器56の出力である出力補正量ΔIhの値を求めることで、この相関関係を実験的に求めることができる。従って、実施の形態2における音響再生装置1002と比べ簡単に相関関係を得ることができる。この相関関係を温度補償器55に記憶しておくことで、周囲温度Tを検出すれば出力補正量ΔIhを得ることができる。
尚、この相関関係は図5に示す回路構成や図2に示す等価回路、圧電素子27とキャパシタ33の温度特性等から周囲温度T毎にシミュレーションで求めるようにしても良い。
以上のようにして求められた相関関係を用いて、温度補償器55は周囲温度Tから出力補正量ΔIhを得て、差動増幅器56の出力から出力補正量ΔIhを差し引く。これにより、温度補償器55は圧電素子27とキャパシタ33の温度、すなわち周囲温度Tに応じて、差動増幅器56の出力を温度補償し、これを差動増幅部39の出力端39Cからの信号として超音波源11の周波数調整器15に出力する。その結果、周波数調整器15は、温度補償された差動増幅部39の出力に基づいて搬送波信号の調整を行なうので、周囲温度Tの影響が低減され、その分、音質劣化のさらなる低減が可能となる。
実施の形態3における音響再生装置1003では、基板57に超指向性スピーカ25とキャパシタ33とが実装されている。温度センサ59が基板57に配されている。差動増幅部39は、差動増幅器56が出力する差を温度センサ59で検出された温度で補償する温度補償器55を有する。実施の形態3では、差動増幅部39が出力する信号は、温度補償器55で補償された差であり、超音波源11は温度補償器55で補償された差が一定になるように搬送波信号を出力する。
以上のような構成、動作により、圧電素子27の発熱による温度変化に加え、周囲温度Tが変化しても、超指向性スピーカ25から一定の音圧で音波を放射できるので、さらなる音質劣化の低減が可能な音響再生装置1003を実現できる。また、超指向性スピーカ25、キャパシタ33、および温度センサ59を同一の基板57上で互いに近傍に配したことで、温度センサ59を1つのみとすることができ、さらに周囲温度Tの1変数のみから出力補正量ΔIhを得るための相関関係も簡単になるので、温度補償器55における温度補償処理が容易になる。これらのことから、実施の形態2における音響再生装置1002に比べ実施の形態3における音響再生装置1003は構成が簡単になる。
尚、実施の形態3では、超指向性スピーカ25、キャパシタ33、および温度センサ59を同一の基板57上に実装するが、これに限定されるものではなく、他の回路構成要素の一部、または全部を基板57に実装するようにしても良い。この場合、音響再生装置1003の小型化が図れる。
本発明にかかる音響再生装置は、圧電素子の温度に起因した音質の劣化を低減することができるので、特に、特定の聴取者に対し音声信号を再生する超指向性スピーカを用いた音響再生装置等として有用である。
11 超音波源
19 変調器
21 可聴音源
25 超指向性スピーカ
27 圧電素子
27C 振動板
31 電流検出部(第1の電流検出部)
33 キャパシタ
35 電流検出部(第2の電流検出部)
37 ハイパスフィルタ
39 差動増幅部
51 温度センサ(第1の温度センサ)
53 温度センサ(第2の温度センサ)
55 温度補償器
56 差動増幅器
57 基板
59 温度センサ

Claims (8)

  1. 超音波帯域の搬送波信号を出力する超音波源と、
    前記搬送波信号を可聴音信号により変調して変調搬送波信号を出力する出力端を有する変調器と、
    前記変調器の前記出力端とグランドとの間に電気的に接続された圧電素子と、前記圧電素子で駆動される振動板とを有する超指向性スピーカと、
    前記圧電素子に流れる電流を検出する第1の電流検出部と、
    前記超音波源とグランドとの間に電気的に接続されたキャパシタと、
    前記キャパシタに流れる電流を検出する第2の電流検出部と、
    前記第1の電流検出部で検出された前記電流の低周波数帯域の成分をカットして得られた濾波信号を出力するハイパスフィルタと、
    前記第2の電流検出部が検出した前記電流と前記濾波信号との差を出力する差動増幅器を有して、前記差に応じた信号を出力する差動増幅部と、
    を備え、
    前記超音波源は前記差動増幅部が出力する前記信号が一定になるように前記搬送波信号を出力する、音響再生装置。
  2. 前記超指向性スピーカの前記圧電素子と前記第1の電流検出部とは互いに第1の接続点で直列に接続されて第1の直列回路を構成し、
    前記第1の直列回路は前記変調器の前記出力端と前記グランドとの間に電気的に接続され、
    前記キャパシタと前記第2の電流検出部とは第2の接続点で互いに直列に接続されて第2の直列回路を構成し、
    前記第2の直列回路は前記超音波源と前記グランドとの間に電気的に接続され、
    前記差動増幅器は、前記第1の接続点に接続された第1の入力端と、前記第2の接続点に接続された第2の入力端とを有する、請求項1に記載の音響再生装置。
  3. 前記差動増幅部が出力する前記信号は、前記差動増幅器が出力する前記差である、請求項1に記載の音響再生装置。
  4. 前記超指向性スピーカに配した第1の温度センサと、
    前記キャパシタに配した第2の温度センサと、
    をさらに備え、
    前記差動増幅部は、前記第1の温度センサで検出された温度と前記第2の温度センサで検出された温度とで前記差動増幅器が出力する前記差を補償する温度補償器をさらに有し、
    前記差動増幅部が出力する前記信号は、前記温度補償器で補償された前記差である、請求項1に記載の音響再生装置。
  5. 前記超指向性スピーカと前記キャパシタとを実装する基板と、
    前記基板に配された温度センサと、
    をさらに備え、
    前記差動増幅部は、前記差動増幅器が出力する前記差を前記温度センサで検出された温度で補償する温度補償器をさらに有し、
    前記差動増幅部が出力する前記信号は、前記温度補償器で補償された前記差である、請求項1に記載の音響再生装置。
  6. 前記温度センサは前記超指向性スピーカと前記キャパシタの温度を検出する、請求項5に記載の音響再生装置。
  7. 前記圧電素子は、直列に接続された抵抗成分とインダクタンス成分と容量成分よりなる直列回路と、前記直列回路と並列に接続された圧電素子容量とを有し、
    前記キャパシタの容量値は前記圧電素子容量の容量値と合わせている、請求項1に記載の音響再生装置。
  8. 前記可聴音信号を出力する可聴音源をさらに備えた、請求項1に記載の音響再生装置。
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