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JP5138900B2 - ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

ゴム組成物及び空気入りタイヤ Download PDF

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Description

本発明は、ゴム組成物に関し、さらに詳しくは、耐摩耗性を損なうことなく低転がり抵抗性と湿潤路面での制動性能をバランスよく両立することができるゴム組成物、及びこれをトレッドに適用した空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤのトレッドに用いられるゴム組成物は、低燃費性の市場ニーズから転がり抵抗の低減要求が強く、また安全性の面からの湿潤路面での制動性能や操縦安定性(以下、ウエット性能という)の向上が求められ、さらに耐久性、経済性の点で優れた耐摩耗性が求められている。
上記転がり抵抗とウェット性能とは二律背反の関係にあり、両特性のバランスが得られやすいシリカを配合したゴム組成物が、従来よりのカーボンブラック配合に代えてタイヤトレッドに使用されるようになっている。
ところが、シリカは、親水性を有し、表面が極性の高いシラノール基に覆われているため強い自己凝集性を持ち、ゴム中へ混合する際にゴム中への分散が容易でなく、シランカップリング剤の併用や、ゴムの混練時間を長くしたり、混合ステップ数を増したりし対策されているが、それでもシリカ分散性は未だ十分とは言えず、分散不良に伴う加工性やゴム特性を低下させ、シリカ配合のゴム特性は十分活かされていない。
このようなシリカ配合の改良を図るため、シランカップリング剤の改良(特許文献1、2)やポリマーの改良、例えばエポキシ化ポリマーの利用が提案されている(特許文献3、4)。
特開2000−336209号公報 特開2005−2065号公報 特許第3599215号公報 特開平7−149955号公報
しかしながら、シランカップリング剤の改良によっても、シリカの分散性向上には未だ改善すべき余地がある。また、上記特許文献3、4に記載の改良による効果は認められるものの、天然ゴムやスチレンブタジエンゴムなどガラス転移温度の高いエポキシ化ポリマーを使用した場合転がり抵抗の低減効果は必ずしも十分ではなく、シリカ配合の低転がり抵抗性とウェット性能とのバランスのよい両立、或いは強度、モジュラスなどゴム特性のさらなる向上が求められている。
本発明は、上記の点に鑑みてなしたものであり、シリカの分散性を優れたものとして加工性を改善し、耐摩耗性を損なわずに低転がり抵抗性とウェット性能のバランスに優れたゴム組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、エポキシ化率の低い低ガラス転移温度を有するポリマーをゴム成分として添加使用することで、シリカの分散性を改善し、かつゴム成分のガラス転移温度の上昇を招くことなく転がり抵抗性能が改良されることを見出し本発明に到達したものである。
すなわち、本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム成分100重量部に対してシリカを30〜120重量部、及びシランカップリング剤を1〜8重量部含むゴム組成物であって、前記ゴム成分がジエン部のエポキシ化率が0.05〜5モル%であるエポキシ化ブタジエンゴムを0.01〜10重量部含んでなることを特徴とする。
前記エポキシ化ブタジエンゴムは、数平均分子量が100,000以上、1,4−シス構造の含有率が90%以上、ガラス転移温度が−70℃以下のブタジエンゴムをエポキシ化して得られたものが好ましい。
本発明にかかる空気入りタイヤは、前記のゴム組成物をトレッドに適用したものである。
本発明のゴム組成物によれば、エポキシ化率の低いブタジエンゴムを少量で添加使用することでシリカ配合ゴム組成物のガラス転移温度の上昇を抑制し、シリカの分散性を優れたものとして加工性を改善することができ、耐摩耗性を損なわずにシリカ配合の特長を活かした低転がり抵抗性とウェット性能のバランスに優れたゴム組成物が得られ、それをトレッドに適用した燃費性、安全性、経済性に優れる空気入りタイヤを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分としてジエン系ゴムが使用される。ジエン系ゴムとは、天然ゴム(NR)及びジエン系合成ゴムからなる。
ジエン系合成ゴムとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。これらのジエン系ゴムは、単独使用でも2種類以上のブレンド使用でもよい。
上記ジエン系合成ゴムとしては、その分子量やミクロ構造などは特に制限されない。その重合方法やスチレン量、ビニル含量などのミクロ構造、分子量、或いは水酸基やアミノ基等の官能基による末端変性の有無などにより制限されず使用することができる。
本発明のゴム組成物に使用されるシリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸),乾式シリカ(無水ケイ酸),ケイ酸カルシウム,ケイ酸アルミニウム等が挙げられるが、中でも破壊特性の改良効果並びに低転がり抵抗性とウェット性能の両立効果が良好である湿式シリカが好ましく、また生産性に優れる点からも好ましい。
上記シリカは、窒素吸着比表面積(BET)が50〜300m/g、DBP吸油量が150〜300ml/100gにあるものが好ましく、BETが50m/g未満であるとシリカの補強効果が得られにくくなり、300m/gを超えるとシリカの分散性が著しく低下し、加工性(混合、押出性)が悪化する傾向にある。また、DBP吸油量を150〜300ml/100gとすることで分散性を良好に維持することができる。このようなシリカとしては、日本シリカ工業(株)製のニップシールAQ、VN3、トクヤマ(株)製のトクシールUR、U−13、デグサ社製のウルトラジルVN3などの市販品が使用できる。なお、シリカのBETはISO 5794に記載のBET法に、DBP吸油量はJIS K6221に記載の方法に準拠し測定される。
さらに、シリカとしてはアミン類や有機高分子などで表面処理しポリマーとの親和性を改善した表面処理シリカなどを用いてもよい。
上記シリカの配合量はゴム成分100重量部に対して30〜120重量部である。シリカの配合量が30重量部未満ではシリカ配合による補強性、低発熱性などの特長が発揮されず本発明の目的が達せられず、120重量部を超えると本発明によりシリカの分散性を向上したとしてもゴムのムーニー粘度や硬度が上昇し加工性改良が及ばず、また耐摩耗性も低下し好ましくない。
本発明で用いられるシランカップリング剤は、ゴム用のシランカップリング剤であれば特に制限無く使用することができるが、分子中にスルフィド結合を有する化合物からなるシランカップリング剤が好ましい。これらのシランカップリング剤は2種類以上を用いてもよい。
このようなシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ポリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルプチル)ポリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ポリスルフィドなどが挙げられる。中でも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドやビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが好ましく、市販品としては、デグサ社の「Si−69」、「Si−75」などを使用することができる。
かかるシランカップリング剤の配合量はゴム成分100重量部に対して1〜8重量部であり、好ましくは2〜6重量部の範囲で使用される。シランカップリング剤の配合量が1重量部未満ではカップリング効果が充分でなく、8重量部を超えるとゴム組成物自体が軟化し、グリップ性能、補強性、耐摩耗性を低下させる原因となる。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、ジエン部のエポキシ化率が0.05〜5モル%であるエポキシ化ブタジエンゴム(以下、Ep−BRという)が含まれる。
このようなEp−BRは、従来より公知の方法により製造することができ、ブタジエンゴム(BR)のジエン部二重結合の一部をエポキシ化して得られる。エポキシ化率はエポキシ化成分の仕込み量により調整することができる。
Ep−BRの調製法としては、例えば、反応容器中でBRをトルエンなどの有機溶媒に溶解させ、ギ酸、過酸化水素を添加して所定温度で所定時間反応させ、反応後エタノールなどにポリマーを析出させて分離、乾燥し得ることができる。
Ep−BRのエポキシ化率が0.05モル%以下ではシリカとの親和性が得られずエポキシ化による作用効果が十分発揮されず、5モル%を超えるとポリマーのガラス転移温度が上昇し、その結果シリカ配合のガラス転移温度も上昇することで転がり抵抗性能が悪化する。
前記Ep−BRは、エポキシ化される前のポリマーとして、数平均分子量が100,000以上、ミクロ構造の1,4−シス構造含有率が90%以上、ガラス転移温度が−70℃以下のBRであることが好ましい。
BRの数平均分子量が100,000以上であると、高分子量のポリマー中に高極性のエポキシ基を有することで、シリカをポリマーマトリックス中に分散させることができ、低分子量ではその効果が十分でない。
BRのミクロ構造は、1,4−シス構造含有率が90%以上であり、ポリマー中に1,2−ビニル構造や1,4−トランス構造が増えると反発弾性が悪化し転がり抵抗性能や耐摩耗性の低下を招くことになる。
また、BRのガラス転移温度が−70℃より高くなると、やはり転がり抵抗性能を悪化させる。
上記Ep−BRの使用量は、ゴム成分100重量部中の0.01〜10重量部である。Ep−BRが0.01重量部未満では、シリカとの親和性が得られずEp−BRによる作用効果が十分発揮されず、10重量部を超えるとゴム組成物のガラス転移温度が上昇し耐摩耗性が悪化傾向を示し、またコストアップを伴い好ましくない。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、1,4−シス構造の含有率が90%以上であるBRを10〜50重量部含むことが好ましい。ガラス転移温度の低いBRをゴム成分に含むことで、Ep−BRによるガラス転移温度上昇の抑制効果を相乗させ、転がり抵抗性をさらに改善することができる。
また、本発明のゴム組成物においては、補強性充填剤として上記シリカと併用してカーボンブラックを用いてもよい。カーボンブラックを配合することで、補強性や耐摩耗性を向上し、シリカによる混合時の発熱(スコーチ)の問題や加工性の低下を抑えることができる。
カーボンブラックとしては、ゴム組成物の低温性能、耐摩耗性やゴムの補強性などの観点から、窒素吸着比表面積(N SA)が70m /g以上、DBP吸油量が105ml/100g以上であるものが好ましく、さらにはN SAが80〜200m /g、DBP吸油量が110〜150ml/100gであるものが一層好ましく、これらの値が低くなるとゴム強度やモジュラスが低下し、逆にN SAが高くなると耐摩耗性が低下し好ましくない。具体的にはSAF,ISAF,HAF級のカーボンブラックが例示され、その配合量としてはゴム成分100重量部に対してシリカとの合計量で30〜120重量部の範囲で使用される。
本発明のゴム組成物には、上記ゴム成分とシリカ、シランカップリング剤の他に、ゴム工業において通常に用いられる硫黄などの加硫剤、加硫促進剤、プロセスオイル、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫助剤などの各種配合剤を、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じ適宜配合し用いることができる。
本発明のゴム組成物は、上記ゴム成分に各種配合剤を配合しバンバリーミキサー、ロール、ニーダーなどの各種混練機を使用して常法に従い作製することができ、空気入りタイヤのトレッド、サイドウォール、ビード部などに使用できる。特に、トレッドに好適である。
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
[Ep−BRの調製]
実施例に使用したEp−BR(A)〜(E)は、反応容器中で固形BR(宇部興産(株)「BR150B」、数平均分子量=16万、1,4−シス含量=重量97%、ガラス転移温度=−107℃)100gをトルエン1リットルに溶解し、ギ酸(変量)を投入した後濃度30重量%の過酸化水素水(変量)を滴下し、温度50℃で3時間攪拌しながら反応させ、炭酸カルシウム水溶液を投入しポリマー溶液をpH7に調整してエタノールにポリマーを析出させ、ポリマーを分離し乾燥させ、エポキシ化率を変更したEp−BRを調製した。得られたEp−BRのエポキシ化率は下記の通りである。
なお、Ep−BRのエポキシ化率は、H−NMRにより決定した。
[Ep−BR]
・Ep−BR(A):エポキシ化率=0.01モル%
・Ep−BR(B):エポキシ化率=0.05モル%
・Ep−BR(C):エポキシ化率=1モル%
・Ep−BR(D):エポキシ化率=5モル%
・Ep−BR(E):エポキシ化率=15モル%
[ゴム組成物の調製]
容量20リットルの密閉式バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合処方(重量部)に従い、各ゴム組成物を調製した。表1記載の各ゴム成分、及び共通配合成分(配合量)は以下の通りである。
[ゴム成分]
・スチレンブタジエンゴム(SBR):JSR(株)「SBR1502」
・ブタジエンゴム(BR):宇部興産(株)「BR150B」
[共通配合成分]
・シリカ:60重量部;東ソーシリカ工業(株)「ニップシールAQ」
・シランカップリング剤:5重量部;デグサ社「Si−69」
・亜鉛華:3重量部;三井金属鉱業(株)「亜鉛華1号」
・ステアリン酸:1重量部;花王(株)「ルナックS20」
・アロマオイル:30重量部;ジャパンエナジー(株)「プロセスX−140」
・硫黄:2重量部;細井化学工業(株)「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」
・加硫促進剤CZ:2重量部;大内新興化学工業(株)「ノクセラーCZ」
[評価]
得られた各ゴム組成物を用いてキャップ/ベース構造のトレッドを有するタイヤのキャップトレッドに適用し、205/65R15 94Hの空気入りラジアルタイヤを常法に従い製造し、ウェット性能、転がり抵抗性、耐摩耗性を評価した。各評価方法は次の通りである。結果を表1に示す。
[ウェット性能]
2000ccの国産FF車に各タイヤを4本装着し、2〜3mmの水深で水をまいたアスファルト路面上を走行し、時速90kmでABSを作動させて20km/hまで減速時の制動距離を測定した。比較例1の値を100とした指数で表示し、指数が大きいほどウェット性能に優れることを示す。
[転がり抵抗性]
使用リムを15×6.5JJとしてタイヤを装着し、空気圧230kPa、荷重450kgfとして、転がり抵抗測定用の1軸ドラム試験機にて23℃で80km/hで走行させたときの転がり抵抗を測定した。比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、転がり抵抗が小さく、従って燃費性に優れることを示す。
[耐摩耗性]
各タイヤ4本を2000ccの国産FF車に装着し、乾燥アスファルトの一般路面において5,000Km毎にローテイションしながら、2万Km走行後のトレッド残溝深さから摩耗量を求めた。結果を比較例1を100とした指数で表1に示した。指数の大きいものほど優れる。
Figure 0005138900
表1の結果に示されるように、本発明にかかる各実施例は耐摩耗性を損なわずにウェット性能と転がり抵抗性を向上することができる。これに対して、エポキシ化率の低いEp−BR(A)を用いた比較例2、及びEp−BR(C)の添加量が少ない比較例3では改良効果が得られず、一方Ep−BR(C)の添加量が10重量部を超える比較例4、またゴム成分中のBR分をEp−BRに置換して高添加とした比較例5では、ウェット性能と転がり抵抗性は向上するが耐摩耗性の悪化が大きくなる。また、エポキシ化率の高いEp−BR(E)を用いた比較例6もガラス転移温度の上昇により耐摩耗性が低下する。
本発明のゴム組成物は、空気入りタイヤの各部位に使用することができるが、特に、トレッドに好適である。

Claims (3)

  1. ジエン系ゴム成分100重量部に対してシリカを30〜120重量部、及びシランカップリング剤を1〜8重量部含むゴム組成物であって、
    前記ゴム成分がジエン部のエポキシ化率が0.05〜5モル%であるエポキシ化ブタジエンゴムを0.01〜10重量部含んでなり、
    前記エポキシ化ブタジエンゴムが、数平均分子量が100,000以上、1,4−シス構造の含有率が90%以上、ガラス転移温度が−70℃以下のブタジエンゴムをエポキシ化して得られたものである
    ことを特徴とするゴム組成物。
  2. 前記シリカの窒素吸着比表面積(BET)が50〜300m 2 /gである
    ことを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のゴム組成物をトレッドに適用した
    ことを特徴とする空気入りタイヤ。
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