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JP5138162B2 - エキスの製造方法 - Google Patents

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本発明は、スープ・ソースなどの香り・風味を向上させるエキスの製造方法に関するものである。
手作りのスープやソースでは、ベースとなるブイヨンやフォンを、大量の肉や野菜を長時間かけてじっくり煮込むことで、香りと風味を豊かに仕上げる。
一方、加工食品や調味料においては、香りと風味をアップするために、原料として手作りと同様に肉や野菜、又はこれらを抽出処理して得られるエキス類などを使用するが、コスト制約や品質保持の点から、これら原料を多く使用することは困難であった。
この改善策として、少量でも効果の強い原料を用いることが挙げられる。
そのため、例えば、野菜等を加熱し、それを別に加熱しておいた他の原料を混合することでコクを強くすることが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
しかしながら、この方法では、加熱を別々に行い、それを混ぜ合わせる必要があり、手間と時間がかかるなどという問題がある。
また、油脂を一緒に加熱することで風味の矯正効果のある原料を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、この方法の場合、使用する油脂の含量が高いため、製品形状や用途の制約が大きくなるという問題がある。
一方、野菜エキスなど糖を多く含む原料を予めアルカリ下で処理した後に、肉エキスと混合加熱することでコクを強くする方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
この方法の場合、製造に時間はさほどかからないものの、pHを調整する必要があり、pHが高くなり過ぎると褐変が進行し過ぎ色が濃くなり過ぎると共に苦味が強くなり、一方、pHが低過ぎると香りや風味を強くするのに時間を要す、といったように、pHの調整度合いにより品質が振れ、コントロールが難しいという問題がある。
特開平10−304852号公報 特開平11−196810号公報 特開2004−298102号公報 特許第3496489号
本発明は、上記した問題点を解消し、細かな条件コントロール等を要することなく、しかも肉や野菜を一緒に煮込むことで生じる香り及び風味を強く有するエキスを効率的に製造することを目的とするものである。
本発明者は、加工食品におけるブイヨンやフォンの位置付けとなるエキスの品質をより向上させるべく検討を行い、本発明を完成させたものである。本発明者は、上記した問題点を解消するため鋭意検討を重ねた結果、肉類、鳥ガラ及び魚介類、並びにこれらから抽出されたエキスよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含む第1群と、野菜類及び果実類並びにこれらから抽出乃至搾汁されたエキス・ジュースよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含む第2群とを、合わせて固形分濃度が40質量%以上になるように混合し、高濃度下で加熱を行うことにより上記課題を解決しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
即ち、請求項1に係る本発明は、油脂を用いることなく、肉類、鳥ガラ及び魚介類、並びにこれらから抽出されたエキスよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含む第1群のエキス類と、野菜類及び果実類、並びにこれらから抽出乃至搾汁されたエキスよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含む第2群のエキス類との2つの群のエキス類を、これらを混合した混合エキス類の固形分濃度が40〜60質量%となるように、かつ、混合エキス類全体に対し、第1群のエキス類が固形分として10〜50質量%、第2群のエキス類が固形分として10〜60質量%となるように混合した後、80〜120℃の温度で15分間〜8時間加熱することを特徴とするエキスの製造方法を提供するものである。
本発明によれば、細かな条件コントロール等を要することなく、しかも肉や野菜を一緒に煮込むことで生じる香りと風味、つまりブイヨン等に感じられる香りと風味の豊かなエキスを効率的に得ることができる。
即ち、本発明によれば、別々に加熱したものを混合するといった手間や時間を要することなく、一つの工程で短時間に、香りと風味の豊かなエキスを得ることができる。
また、本発明によれば、細かな条件コントロールを要することなく、香りと風味の豊かなエキスを得ることができる。
さらに、本発明の方法は、製品形状や用途の制約がなく、少量でも効果が強い。
本発明について更に詳細に説明する。
請求項1に係る本発明は、エキスの製造方法に関し、油脂を用いることなく、肉類、鳥ガラ及び魚介類、並びにこれらから抽出されたエキスよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含む第1群のエキス類と、野菜類及び果実類、並びにこれらから抽出乃至搾汁されたエキスよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含む第2群のエキス類との2つの群のエキス類を、これらを混合した混合エキス類の固形分濃度が40〜60質量%となるように、かつ、混合エキス類全体に対し、第1群のエキス類が固形分として10〜50質量%、第2群のエキス類が固形分として10〜60質量%となるように混合した後、80〜120℃の温度で15分間〜8時間加熱することを特徴とするものである。
本発明によるエキスとは、加工食品等のスープ・ソースやブイヨンなどに配合することで、好ましい香り及び風味を付与する原料である。
形状としては、液状、ペースト状、粉末状等がある。
一般に、スープやソース等の品質において、ベースとなるブイヨンやフォンの品質が重要になってくる。シェフは多くの原料を使い、じっくりと時間をかけることで、品質の良いベースを作り上げている。
請求項1に係る本発明においては、原料として2種以上のエキス類を用いる。
ここでエキス類としてあるのは、原料としてはエキスそのものだけに限定されず、肉類、鳥ガラ及び魚介類、或いは野菜類及び果実類をも含む趣旨である。これらの原料は、通常一緒に用いられている水と共に混合されることにより、水抽出エキスとなる。
そのような2種以上のエキス類としては、大きく2群に分けられ、具体的には請求項2に記載したように、肉類、鳥ガラ及び魚介類、並びにこれらから抽出されたエキスよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含む第1群と、野菜類及び果実類、並びにこれらから抽出乃至搾汁されたエキスよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含む第2群とがある。
第1群を構成するエキス類としては、アミノ酸を多く含む畜肉、魚肉等の肉類、鳥ガラ及び魚介類、並びにこれらから抽出されたエキスよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上のものが挙げられる。
ここで畜肉としては、例えば牛肉、豚肉、鶏肉などを挙げることができ、また、魚肉としては、例えば鰹、鮪、鰯などを挙げることができる。鳥ガラとしては、例えば廃鶏ガラ、ブロイラーガラなどを挙げることができ、魚介類としては、例えばアワビ、ホタテ、アサリ、カキ、エビ、イカなどを挙げることができる。
肉類、鳥ガラ及び魚介類は、そのまま、或いは予めミンチにしても構わず、特に形状にはこだわらない。また、第1群のエキス類には、生臭さ等を消すためにニンニクやショウガ等の香辛料類を加えることも可能である。
第2群を構成するエキス類としては、野菜類及び果実類、並びにこれらから抽出乃至搾汁されたエキスよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上のものが挙げられる。なお、ここで「野菜類及び果実類から抽出乃至搾汁されたエキス」とは、「野菜類及び果実類から抽出乃至搾汁されたジュース」を含む概念である。
ここで野菜類及び果実類としては、特に糖類を多く含む野菜類及び果実類が用いられ、例えばタマネギ、セロリ、ニンジン、ニンニク等の野菜類や、リンゴ、バナナ、パイン等の果実類を挙げることができる。
野菜類や果実類は、そのままでも、或いは予め粉砕しても構わず、特に形状にはこだわらない。また、予め加熱等の処理を行い、ペースト状にしたものを用いても構わない。また、第2群として、上記エキス類の他に、砂糖、乳糖、ブドウ糖、果糖、異性化糖などの糖類を使用することも可能である。
請求項1に係る本発明においては、上記したような2種以上のエキス類を、固形分濃度が40質量%以上、好ましくは50質量%以上になるように混合することが必要である。
ここで固形分濃度が40質量%未満であると、香りと風味の豊かなエキスを得ることはできない。
なお、固形分濃度の上限値は、実用的には80質量%程度までであるが、特に限定されるものではない。
第1群を構成するエキス類と第2群を構成するエキス類とを混合して用いる場合、両群の混合割合自体は特に限定されない。求めるエキスの香り、風味などに応じて適宜比率で混合すればよい。
但し、原料の混合については、混合エキス類全体に対し、第1群を構成するエキス類は固形分として10〜50質量%、好ましくは15〜40質量%配合することが風味上好ましく、第2群を構成するエキス類は固形分として10〜60質量%、好ましくは20〜50質量%配合することが風味上好ましい。
このような混合割合とするため、通常、第1群を構成する肉系のエキス類と第2群を構成する野菜系のエキス類は、各々比較的高い固形分濃度で混合される。
なお、原料としては、この他に、通常、水や油脂などを用いることもできる。
請求項1に係る本発明においては、2種以上のエキス類を、固形分濃度が40質量%以上になるように混合した後、加熱する。
エキス類の混合加熱手段は、第1群、第2群の原料及びその他原料を均一に混合加熱できるものであればよく、例えば蒸気ジャケット式加熱釜、斜軸加熱攪拌ニーダー、横軸加熱攪拌ニーダー等を用いることができる。
加熱条件としては、80〜120℃の温度で15分間〜8時間、好ましくは90〜110℃の温度で30分間〜5時間加熱を行う。
加熱条件が、各々上記条件範囲(温度と時間)の下限に満たないと、好ましい香り・風味の発現が不十分となりやすい。一方、各々の上限を超えると、加熱が強過ぎて、焦げ風味が生じる等でエキスの品質を損ないやすい。
また、加熱条件については、使用する原料の組合せに応じて、各々最適な条件を設定することで、特徴あるエキスを得ることができる。
加熱終了後、エキスに固形物がある場合は、必要に応じ濾過や遠心分離等の方法で固形物を除去することができる。また、エキス分に油脂がある場合は、必要に応じ遠心分離や静置分離等の方法で油脂を除去することができる。
このようにして、目的とするエキスを得ることができる。
加熱後、得られたエキスは、そのまま液体状で使用できることはもちろんのこと、加熱や減圧・真空等の濃縮処理を行うことでペースト状にしたり、また、噴霧乾燥、ドラム乾燥や凍結乾燥等の乾燥処理を行うことで粉末状にしたりするなど、使用する製品にあった形状にすることが可能である。
このようにして得られたエキスは、スープ、ソース、ブイヨン又はルーの製造用などに用いることができる。
スープ、ソース、ブイヨン又はルーを得る方法については、常法により行えばよい。
本発明を以下の実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
固形分濃度80質量%のビーフエキス1質量部に固形分濃度70質量%のタマネギエキス1質量部を加え、合計の固形分濃度が75質量%の混合エキスを調製した。
この混合エキスを水で希釈し、固形分濃度が各々30,40,50,60質量%の混合エキスを調合した。
次いで、各混合エキスを98℃、30分間同じ条件下で加熱処理を行ってエキスを得た。
その後、各々の加熱処理エキスの固形分濃度が1質量%になるように熱湯で希釈したものについて、香り、風味、濃厚感、持続性の4項目に関して官能評価を行った。このとき加熱前の混合エキス(未加熱品)をコントロールとして、次のようにして評価を行った。結果を表1に示す。
[評価基準]
未加熱品(コントロール)に対して、
差なし :±
やや強い :+
強い :++
非常に強い:+++
Figure 0005138162
表1に示す通り、加熱前の固形分濃度が40質量%以上の場合、加熱後にブイヨン風味の複雑味とまとまり感が増し、更に、濃厚感と持続性が強くなることで、後味のあつみと広がりが強くなり、エキスの味覚品質が向上した。
実施例2
固形分濃度50質量%の丸鶏抽出エキス1質量部に固形分濃度50質量%の野菜エキス(タマネギ、セロリ、ニンジンの混合エキス)2質量部を加え、合計の固形分濃度が50質量%の混合エキスを調製した。
この混合エキスを水で希釈し、固形分濃度が各々30,40,50質量%の混合エキスを調合した。
次いで、各混合エキスを95℃、1時間同じ条件下で加熱処理を行ってエキスを得た。
その後、各々の加熱処理エキスの固形分濃度が1質量%になるように熱湯で希釈したものについて、香り、風味、濃厚感、持続性の4項目に関して官能評価を行った。このとき加熱前の混合エキス(未加熱品)をコントロールとして、実施例1に記載したと同じ評価基準により評価した。結果を表2に示す。
Figure 0005138162
表2に示す通り、加熱前の固形分濃度が40質量%以上の場合、加熱後に鶏と野菜の好ましい煮込み香が増すと共に、ブイヨン風味のまとまりと、更に、濃厚感が強くなることで、まろやかさが強くなり、エキスの味覚品質が向上した。
本発明によれば、細かな条件コントロール等を要することなく、しかも肉や野菜を一緒に煮込むことで生じる香りと風味、つまりブイヨン等に感じられる香りと風味の豊かなエキスを効率的に得ることができる。
従って、本発明は、食品産業において有効に利用することができる。

Claims (1)

  1. 油脂を用いることなく、肉類、鳥ガラ及び魚介類、並びにこれらから抽出されたエキスよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含む第1群のエキス類と、野菜類及び果実類、並びにこれらから抽出乃至搾汁されたエキスよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含む第2群のエキス類との2つの群のエキス類を、これらを混合した混合エキス類の固形分濃度が40〜60質量%となるように、かつ、混合エキス類全体に対し、第1群のエキス類が固形分として10〜50質量%、第2群のエキス類が固形分として10〜60質量%となるように混合した後、80〜120℃の温度で15分間〜8時間加熱することを特徴とするエキスの製造方法。
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