JP5129883B1 - 水圧転写用フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水圧転写用フィルムであって、インク受容層と基材層の少なくとも2層を含み、前記基材層の表面粗さRaが0.40μm以下、グロスが80以上である。
【選択図】なし
Description
さらにこれらの水圧転写用のフィルムは、その印刷面側でない側の面も直接水面に接するので、シワが発生しやすく、加えて被対象物を水面に押し入れる際に水の流動を生じてフィルムにシワを生じやすく、結果的に被対象物表面への水圧転写を確実に行うことが困難である。
1.水圧転写用フィルムであって、インク受容層と基材層の少なくとも2層を含み、前記基材層の少なくともインク受容層と触れるキャスト面の表面粗さRaが0.40μm以下、かつグロスが80以上であることを特徴とする、水圧転写用フィルム。
2.基材層のフィルム表面の濡れ張力が30〜46mN/mであることを特徴とする、1記載の水圧転写用フィルム。
3.前記基材層が白色であることを特徴とする、1又は2に記載の水圧転写用フィルム。
4.前記インク受容層が重合度1000〜4000、ケン化度70〜99モル%のポリビニルアルコールであることを特徴とする、1〜3のいずれかに記載の水圧転写用フィルム。
5.インクジェット印刷にて印刷画像を形成したことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の水圧転写用フィルム。
その結果、インク受容層の表面に印刷をした場合、インク受容層の表面で光が乱反射することなく、画像が劣化して見えることもない。なお、仮に基材層表面が平滑でなければ、インク受容層表面に光が乱反射することにより、画像も劣化して見える。
本発明は基材層の表面粗さRaを0.40μm以下、かつグロスを80以上、より好ましくはRa0.20μm以下、かつグロスを88以上にすることで、インク受容層の表面の画像が高精細になり、転写物表面の画像のシワも低減できる、水圧転写用フィルムとなる。インク受容層を基材層からシワを発生させずに剥離するためには、基材層の表面の濡れ張力が30〜46mN/mであれば、基材層とインク受容層との極性基の反発があるため可能である。
さらに被対象物に水圧転写を行うにあたり、被対象物を水面に浮かべた水圧転写用フィルムから剥離したインク受容層の印刷面側より押し入れる際に、インク受容層から均一に押圧力がかかることにより、水の流動に影響されず正確に水圧転写を行うことが可能である。
さらに基材層の濡れ張力は30〜46mN/mであり、インク受容層が重合度1000〜4000、ケン化度70〜99モル%のポリビニルアルコールから成り、濡れ張力30〜46mN/mの平滑な表面を有する基材であれば高精細な印刷像が得られること、更に基材層が白色であれば印刷により簡便に精細な印刷像が得られるか否かを確認できる水圧転写用PVAフィルムとして機能することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明におけるインク受容層は、水溶性もしくは水膨潤性を有するものが好ましく、従来から水圧転写用フィルムとして一般に使用されているフィルムの材料の中から適宜選択して用いることができる。
そのような材料である樹脂としては、例えばポリビニルアルコール樹脂、デキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、セラック、アラビアゴム、澱粉、蛋白質、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が混合されて用いられてもよい。なお、基材フィルムには、マンナン、キサンタンガム、グアーガム等のゴム成分が添加されていてもよい。
これらの材料のうち、特に生産安定性と水に対する溶解性及び経済性の点から、ポリビニルアルコールが好ましい。用いられるポリビニルアルコールは、未変性PVAであっても、あるいはPVAの主鎖中にエチレン、プロピレンなどのオレフィン類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、マレイン酸およびその塩またはエステル類、などのモノマーが1種類又は2種類以上共重合された変性PVAであってもよい。
中でも、本発明においては、ポリビニルアルコールの重合度は1000〜4000が好ましい。重合度が1000未満の場合、水圧転写をする際に溶解性が早く、十分なつきまわり性が得られない場合があり、水圧転写本来の機能を十分発揮できない恐れがある。一方、重合度が4000を越える場合には、フィルムの水溶性が遅く、経済的な水圧転写速度が得られないことがある。
インク受容層の厚さは15〜80μmが好ましく、より好ましくは20〜40μmである。15μm未満では基材層からインク受容層を剥がした際に、フィルムの腰が乏しく取り扱いに支障がでる。また、80μmより厚いとインク受容層の膨潤に時間がかかり水圧転写作業性が低下する問題がある。
また、ポリビニルアルコールは、それ以外の上記の水溶性高分子と混合してもよく、例えば、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、プルラン、メチルセルロース、ヒプロメロース、エチルセルロースなどを挙げることができる。水溶性高分子の添加量は、ポリビニルアルコール100重量部に対して、好ましくは20重量部以下である。
本発明における基材層としては、環境の温度、湿度変化による寸法安定性に優れる材料からなることが好ましく、かつ水圧転写フィルムが印刷時や裁断などの工程での取り扱いされることを考慮して柔軟性を有することが必要である。大きさ及び形状は問わないが、インク受容層への印刷工程を連続的に行う場合にはフィルムの移送性を考慮して柔軟なフィルムを採用することもできる。
そのような材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ポリ塩化ビニル、ナイロン等の樹脂フィルム、金属箔、紙等を使用することができる。なかでも、水圧転写用フィルム表面に印刷した後にその印刷の出来等を確認することを容易にするために、基材層に任意の白色顔料あるいはその他の顔料を添加しておくことや表面に白色を呈する層を形成しておくことができる。
一方、合成紙などのポリプロピレンの積層物や、表面を各種コート層で覆われたもののほか、紙の表面にポリプロピレンをコートしたものを使用できる。粗さの指標であるRaが0.40μmより大きい基材であると、その上に積層したPVAフィルムの基材と接していない側(エアー面側)にも、その粗さに起因すると思われる凹凸が再現されてしまう。そのため、PVAフィルム自体に粗さに由来する文様が浮かび上がったり、凹凸で光が乱反射するために得られる画像の光沢が低減してしまうため、高画質な画像を得ることが適わず、写真画像をそのままの高画質で立体の被対象物へ転写することができない問題がある。
更に、粗さRaが0.40μmより大きいと、凸凹のためPVAフィルムが白濁して見えることがある。その場合には、印刷画像の仕上がりを確認する際に邪魔になるほか、凸凹によりPVAフィルムの厚薄が不均一となり、特に薄いところが先に溶解するため水圧転写の作業時に印刷画像にシワが入ったり、適正な作業時間を確保できないことが問題となる。
そして、Raは好ましくは0.30μm以下、さらに好ましくは0.25μm以下、最も好ましくは0.20μm以下である。
また、グロスは好ましくは88以上、さらに好ましくは130以上、最も好ましくは150以上である。
Raの値と同様に、基材層表面のRzを小さくして最大の凹凸をより小さくすると、さらに本発明による効果を向上させることができる。そのため、Rzは3.00μm以下、好ましくは2.00μm以下が好ましい。
そのために、必要に応じてプラズマ処理やコロナ放電処理による親水化、表面処理剤の塗布など行うことにより上記の濡れ張力とすることができる。
本発明の水圧転写用フィルムを製造する方法としては、上記基材層を形成するフィルムにインク受容層を形成する方法を採用できる。
本発明の水圧転写フィルムはインク受容層と基材層を含む少なくとも2層のフィルムであれば良く、その製法は特に限定されるものではない。
例えばPETやPP等の基材層である基材フィルムの上に、ポリビニルアルコール等のインク受容層を形成する材料を溶解してなる水溶液を用いて、スプレーコートもしくは溶液流延法などの一般的な製膜手法によりインク受容層を形成し、加熱乾燥してフィルム化後、印刷手法により画像層を積層して得ることができる。もしくは、基材層に熱ラミネーションによりポリビニルアルコール等を有するインク受容層を積層しても良い。
中でも基材層にポリビニルアルコールの水溶液を溶液流延する手法が好ましく、ポリビニルアルコールの重合度によらずフィルム化することができる。
いずれの方法にしても、水圧転写時には基材層からインク受容層を剥離できるようにすることが必要である。このため、基材層とインク受容層は、剥離可能かつインク受容層に安定して印刷可能な程度の接着強度を有することが必要である。
濡れ張力は好ましくは34mN/m以上、及び/又は45mN/m以下である。
基材層の表面粗さはインク受容層の印刷面の粗さに影響するため、水圧転写に用いる場合には可能な限り平滑な方が好ましい。特にRaが0.40μm以下、かつグロスが80以上であればよく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリエチレン、合成紙などが挙げられる。
本発明の水圧転写フィルムはインク受容層表面に印刷層を形成した後に水圧転写に使用されるものであるが、その印刷に用いられるインクとしては、公知のインクを選択して使用することができる。
そのようなインクとしては、溶剤型のインクでも良く、あるいは紫外線硬化性や電子線硬化性のエネルギー線硬化型インクでも良い。
インクが水性の溶剤を有するインクである場合には、溶剤として水のみ、あるいは水と上記溶剤の中でも水溶性有機溶媒剤を選択・混合してなる混合溶剤を使用することができる。
ただし、上記のインクのなかで、水性溶剤を用いたものでも良いが、有機溶剤系のインクの方が耐水性に優れるため水圧転写に好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステル等の有機系化合物や、粒径0.2μm以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機質系化合物が挙げられ、また、光安定剤としては、例えばビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート等のヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ピペリジン系ラジカル捕捉剤等のラジカル捕捉剤などを挙げることができる。
なお、これら紫外線吸収剤や光安定剤の含有量は、それぞれ0.5〜10質量%程度である。
エネルギー線硬化型インクの場合には、顔料等の着色剤を任意に含み、かつエネルギー線の照射によって硬化する性質を備えたモノマーやオリゴマー等を含有するインクを使用することができる。
上記のインクを使用して印刷層を形成させる手段としては、オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷等の従来から水圧転写にて採用した印刷方法でも良いが、インクジェットのようにオンデマンド型の印刷でも良い。
インクジェット印刷を行う場合、出来上がりの印刷画像を確認するために、基材フィルムには白色であることが求められる。白色でないと、印刷後の画像に欠けや色ムラが無いか確認する作業が煩雑となり好ましくない。加えて、業務用のインクジェットプリンターでは光学センサーにて用紙を認識している機構もあり、その機構の場合には白色でないと通紙ができない。
活性剤は、水圧転写用フィルム上のインク受容層上に塗布することで、適度に印刷部分の少なくとも一部を溶解又は膨潤して軟化させる(活性化させる)ものであり、被転写体に印刷物が転写されるまでその状態を維持することができるものである。インク受容層上への塗布は水圧転写用フィルムを水面に浮かべた後に行ってもよく、浮かべる前でも良い。
本発明で用いる活性剤は、アルコール類、ケトン類、可塑剤及び沸点170℃以上のエステル類からなるものである。
フタル酸エステルとしては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソオクチルなどのフタル酸ジエステルが好ましく挙げられる。これらのうちフタル酸ジメチル及びフタル酸ジブチルがより好ましく、なかでもフタル酸ジメチルが活性状態を安定化させるのとともに、適度に他の溶剤とともに蒸発する点から好ましい。
脂肪族炭化水素としては、ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、オクタン、イソオクタンなどが挙げられ、これらのうちヘプタンが好ましい。
エーテル類としては、ブチルセロソルブ、イソアミルセロソルブなどが挙げられ、このうちブチルセロソルブが好ましい。
本発明の水圧転写フィルムは、広く使用されている水圧転写用装置を使用することができ、また被転写体も、水圧転写により模様等が形成される物体でよく、従来と同様の立体形状であればよい。該被転写体の材質も特に制限されるものではなく、樹脂、金属、木材等の任意の材質のものでよい。
画像印刷が済んだ水圧転写フィルムから、基材を剥離し、印刷面が上になるように水面にインク受容層のみを浮かべると、PVAフィルムが十分な水分を含み柔らかくなった頃合に、活性剤を噴霧した水面上の水圧転写フィルムを被転写体により水中に押し下げる。その結果、溶解及び/又は膨潤したインク受容層が水圧により付きまわりながら被転写体に転写されることになる。水中より取り出した被転写物を多量の水で洗い流すことで、表面に残存するPVAが除去され、被転写体への画像の転写が完了することとなる。
本発明の水圧転写フィルムを用いて水圧転写を行う際に、粗さRa0.40μm以下、かつグロスが80以上である基材を用いると、その上にある印刷層のPVA等のフィルムの表面、つまり水圧転写後に表面となる側の層も凹凸が小さく、グロスの高いフィルムが得られる。そのため、そのPVA等の表面に印刷された画像もグロスの高い水圧転写が可能である。PVAフィルムの凹凸が少ないことから、PVAフィルムの溶解時間も均一となり、安定した品質を持つ、高画質な水圧転写を簡便な作業により得ることができる。
また、基材層の凹凸によりポリビニルアルコールフィルムの表面積が増加し、水面に浮かべた際に水と接触する面積が多く、フィルムの膨潤挙動が早くなる傾向にあるため細かいシワが入りやすくなる。
そのため、得られる転写後のフィルム表面にシワが残存する原因と考えられている。故に、基材層の表面粗さRaを0.40μm以下に抑制することで、印刷層の表面の画像が高精細になり、転写物表面の画像のシワが低減された水圧転写用フィルムを得ることができる。
印刷層が基材層から剥離するためには、基材層の表面の濡れ張力が30〜46mN/mであれば、基材層と印刷層との極性基の反発により容易に剥離できる。
以上のことから、本発明は基材層とインク受容層を有する水圧転写用フィルムであって、基材層の表面粗さがRa0.40μm以下である場合、インクジェット印刷により簡便に高画質な水圧転写画像を得ることができる。
○表面粗さ評価
23℃−50%RHの雰囲気下で、粗さ計(accretech社製:Handysurf E-35A)でRa、Rzを測定した。グロスはグロス計(日本電色工業社製:GrossMeterVG7000)で測定した。
A4サイズの基材に積層したPVAからなる印刷受容層を手により引き剥がし、剥離具合を評価した。
剥離性を以下の基準で2段階に分類する。
基材から、手で剥がす際に抵抗なく剥離できる場合・・・○
上記以外(手で触れる前に剥離している、剥離できない、剥離後のPVAフィルム中に目視で確認できる筋が入る)の場合 ・・・×
10cm×10cm角の水圧転写用フィルムの基材から剥離したPVAフィルムを水面上に浮かべ、その印刷受容層が膨潤し、60秒以内に溶解しないかを目視にて観察した。
溶解性を以下の2段階に分類する。
60秒以内に溶解しない場合・・・○
60秒以内に溶解した場合 ・・・×
A4サイズの写真画像を印刷済みの印刷受容層を水面に浮かべ、60秒後にそのフィルムの上面より、ABS製の白色成形体に水圧転写を実施した。その後、その画像のシワを目視にて観察した。
シワの様子を以下の2段階に分類する。
シワが無い場合 ・・・○
シワがある場合 ・・・×
剥離性が“○”かつ溶解性が“○”、転写画像が“○”の場合・・・○
剥離性が“○”かつ溶解性が“○”、転写画像が“×”の場合・・・×
剥離性が“○”かつ溶解性が“×”、転写画像が“○”の場合・・・×
剥離性が“×”かつ溶解性が“○”、転写画像が“○”の場合・・・×
剥離性が“○”かつ溶解性が“×”、転写画像が“×”の場合・・・×
剥離性が“×”かつ溶解性が“○”、転写画像が“×”の場合・・・×
剥離性が“×”かつ溶解性が“×”、転写画像が“○”の場合・・・×
剥離性が“×”かつ溶解性が“×”、転写画像が“×”の場合・・・×
しかしながら、ユポGFGはRaの値は本発明の範囲内であるが、グロスの値が範囲外であるため、剥離性は良好であるものの、溶解性及び転写性が不良であった。
さらにRa及びグロスの値が共に本発明の範囲外であると、剥離性、溶解性さらに転写画像のいずれも不良であった。
これらの結果によれば、本発明は基材を採用することに加えて、特にその基材の表面を特定のRa及びグロスの範囲とすることにより、水圧転写を円滑に、かつ確実に行うことができ、転写された画像も良好であるという効果を発揮できることがわかる。
Claims (5)
- 水圧転写用フィルムであって、ポリビニルアルコールからなるインク受容層と基材層の少なくとも2層を含み、前記基材層の少なくともインク受容層と触れる表面の表面粗さRaが0.14μm以上0.4μm未満、かつグロスが80以上であることを特徴とする、水圧転写用フィルム。
- 基材層の前記表面の濡れ張力が30〜46mN/mであることを特徴とする、請求項1記載の水圧転写用フィルム。
- 前記基材層が白色であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水圧転写用フィルム。
- 前記インク受容層が重合度1000〜4000、ケン化度70〜99モル%のことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の水圧転写用フィルム。
- インクジェット印刷にて印刷画像を形成したことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の水圧転写用フィルム。
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