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JP5129529B2 - モータ駆動装置とモータ回転制御方法 - Google Patents

モータ駆動装置とモータ回転制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、モータ駆動装置とモータ回転制御方法に関し、例えばHDD(ハードディスクドライバ)等の3相スピンドルモータの回転制御技術に利用して有効な技術に関するものである。
HDD装置のスピンドルモータの駆動方式としては通電相切替時に2相分PWMを行い、電流の急峻な変化を抑えたソフトスイッチ方式が採用されている。モータを回転させるためにはモータの位置検出が必要であるが、センサーレス方式としては、上記通電相の切替り後に無通電期間を設けてモータの逆起電圧(BEMF)を検出することが知られている。誘導負荷の電流ゼロクロスを検出するものとして、特開平10−341588号公報がある。モータ回転トルクの変動を低減したモータ駆動装置とモータ駆動用集積回路装置として特開平2005−102447号公報がある。
上記特許文献2は、本願発明者等において先に提案されたものである。上記特許文献1等における諸問題を解決すべく、特許文献2においては、パワーMOSFETに駆動電圧を供給するプリドライバを含む3相DCモータ出力段により3相コイルに出力電圧が供給される。上記パワーMOSFETのゲート,ソース間電圧が所定電圧以上であるか否かをモニタして電流のゼロクロスの検出が行われる。電流ゼロクロス検出の出力は、通電切替タイミングの制御を行うPLL制御に利用されて180度(deg)通電の駆動電圧が形成される。また、パワーMOSFETに駆動電圧を供給するプリドライバを含む3相DCモータ出力段は、3相コイルに出力電圧を供給し、電圧最小相をGNDとした下側フックと電圧最大相を電源とした上側フックを電気角60 deg毎に交互に繰り返したパターンとし、このパターンを一次関数の組み合わせで表現して正弦波状の駆動電圧を生成して正弦波状の電流を上記3相コイルに流すようにするものである。
特開平10−341588号公報 特開平2005−102447号公報
上記特許文献2の技術においては、図12に示すように適切なトルクで3相DCモータを駆動するために、直流シャント抵抗Rnfにより検出したモータ駆動電流を用い、これが電流指令と一致するようにPWMのデューティを制御しPWMCLKを出力する。直流シャント抵抗Rnfにより検出したモータ駆動電流はセンスアンプSAで増幅され、アナログ/デジタル変換器ADCでデジタル値に変換される。電流誤差検出部ではモータ駆動電流の検出値と電流指令(SPNCRNT)を減算して電流誤差が求められ、補償器によりPWMデューティ(Duty)を決定する。
PWM変調を行う出力制御部によりPWMデューティに応じたPWMCLKで各相が駆動される。一定トルク駆動の場合を考えると、モータ駆動電流が正弦波状の駆動電流で電気角60 deg毎に電圧パターンを切替えているため、直流シャント抵抗Rnfによる検出値には電気角60 deg周期の脈動が観測される。したがって電流誤差検出部において電流指示を直流のままにすると、電流検出誤差が周期的に発生し、PWMデューティに脈動が発生してしまう。一定トルク駆動を行うべく駆動電圧を正弦波状にしようとしても、脈動の影響で正確な正弦波電圧を得ることができなくなる。そこで一定トルク駆動を行う場合には電流誤差検出部において、直流の電流指示に予め期待される電流検出による脈動を加え、電流検出誤差が発生しないようにする。これにより電流検出において脈動があっても電流制御を正確に行い、かつ正確な正弦波電圧を得ることが可能になるようにする。
図13には、上記アナログ/デジタル変換器ADCをナイキストADCを用いた場合の相電流検出動作波形図が示されている。3相分の正弦波電圧をPWM変調することによりU,V,Wの3相電圧はPWMデューティが少しずつ変化した波形となる。このPWM動作により直流シャント抵抗Rnfの両端に現れる電圧は3相のオン/オフ状態で変化する。例えばU相が下側オン,V,W相が上側オンの場合にはU相を流れる電流が直流シャント抵抗Rnf両端電圧に現れる。ナイキストADCはPWM周期の中心でサンプリングして動作するので、ナイキストADCは3相の中のどれか1つの相の電流を検出することになり、これによりADC出力に電気角60deg 周期の脈動が観測される。
しかしながら、特許文献2においては、負荷であるモータのコイルがばらついた場合までは想定しておらず、仮に想定しようとしても負荷である個々のモータのばらつきに対応した脈動を加えることなど不可能であることから、その影響を抑制することができない。HDD装置の記録密度の向上に伴いモータ回転のさらなる低振動化も必要なことから、スピンドルモータにばらつきがあってもトルクリップルを劣化させることなくモータを駆動できるようにすることは極めて重要である。
この発明の目的は、簡単な構成で高性能で高機能のモータ駆動装置とモータ回転制御方法を提供することにある。この発明の他の目的は、モータのばらつきを含めたトルクリップルの低減を可能としたモータ駆動装置とモータ回転制御方法を提供することにある。この発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
本願の実施例の1つを簡単に説明すれば下記の通りである。モータ駆動装置は、以下の手段を有する。多相DCモータ出力段は、多相コイルに出力電圧を供給するパワー素子と、かかるパワー素子に駆動電圧を供給するプリドライバとにより構成される。抵抗手段は、上記パワー素子に流れる電流を検出する。電源電流検出部は、上記抵抗手段で発生した電圧信号を高速ADCと移動平均フィルタを用いて電源電流を検出する。出力制御部は、回転速度を指示する電流信号と上記電源電流検出部で検出された検出電流とが一致するように上記高速ADCの周波数よりも低い周波数とされたPWM信号を形成して上記出力段に伝える。
本願の実施例の他の1つを簡単に説明すれば下記の通りである。多相DCモータ出力段は、プリドライバにより駆動電圧を形成し、それにより駆動されるパワー素子により多相コイルに出力電圧を供給する。抵抗手段により上記パワー素子に流れる電流を検出する。上記抵抗手段で発生した電圧信号から高速ADCと移動平均フィルタを用いて電源電流を検出し、回転速度を制御するための電流指示と上記検出された電源電流とが一致するように上記高速ADCの周波数よりも低い周波数とされたPWM信号を形成して上記出力段に伝えてモータを駆動することで回転速度の制御を行う。
モータが定常回転の状態では電源電流とモータトルクとはほぼ一対一に対応しており、かかる電源電流を検出して回転制御に用いることにより、モータのコイルばらつきを含めたトルクリップルの低減が可能になる。
図1には、この発明に係るモータ駆動装置における180 deg通電による一定トルク駆動方式の一実施例の電流制御系ブロック図が示されている。電流制御部は、適切なトルクで3相DCモータを駆動するために、直流シャント抵抗Rnfにより検出した電流検出値を用い、これが電流指令と一致するようにPWMのデューティを制御してPWMCLKを出力する。直流シャント抵抗Rnfにより検出したモータ駆動電流は、センスアンプSAで増幅され、アナログ/デジタル変換器(以下、Δ−ΣADCという)で高速にデジタル値に変換される。Δ−ΣADCの出力は、PWM周波数に伝送零点を持つ移動平均フィルタによりPWM周波数成分が除去され、この出力Ipsが電流誤差検出に用いられる。
移動平均フィルタの出力Ipsは、直流シャント抵抗Rnfを流れる電流の平均値になるため検出値は電源電流に相当する。つまり、上記Δ−ΣADCと移動平均フィルタは、電源電流検出部を構成する。電流誤差検出部では、上記移動平均フィルタ出力Ipsと電流指令SPNCRNTを減算して電流誤差が求められ、補償器によりPWMデューティPWMDが決定される。PWM変調を行う出力制御部は、PWMデューティPWMDと180deg 通電を行うための波形プロファイルに応じたPWM信号で各相を駆動する。
前記特許文献2と同様に、波形プロファイルは、180deg 通電波形プロファイル生成部で作られる。このプロファイル生成部にはシリアルポートよりレジスタ設定された位相設定パラメータと波形プロファイルの傾き設定パラメータが入力され、PWMパターン生成とSP1,2パターン生成により3相分の波形プロファイルが生成される。以上のような電流制御ループにより電源電流Ipsが一定となるように動作しモータを駆動する。
図2には、モータに正弦波電流を流すための印加電圧波形図が示されている。図2(A)で示した3相駆動電圧において電圧最小相を "0" とした場合(GND接地)の3相駆動電圧は図2(B)のようになる。一方、3相駆動電圧において電圧最大相を "電源" とした場合(電源接地)の3相駆動電圧は図2(C)のようになる。ここで電気角60 deg毎に図2(D)のようにGND接地と電源接地を交互に用いた駆動電圧とすると、電気角60 deg毎に接地点はGND,電源と交互に繰り返されるが、電圧波形は60 deg毎に繰り返し波形となる。したがって、図2(D)の場合には、電気角60deg 分の駆動電圧が生成できれば3相の正弦波電圧が実現でき、波形プロファイル生成部はこの波形に対応したプロファイルを生成している。
図1では省略されているが、一定トルク駆動時に生成する繰り返し電圧パターンは、上記のような一定トルク駆動制御部で生成するが、前記図12に示したように起動初期のようにトルクを稼ぐため一定電流でスイッチング駆動を行うような場合(一定トルク駆動を行わない場合)には、信号SINENAを用いてスイッチを切替えて(0側にして)電流制御により得られたPWMデューティそのままで動作させ、電流誤差検出も直流電流の制御に切替えるようにしてもよい。
スピンドルモータの電力Pwは電源電流Ips、電源電圧Vps、モータの角周波数ω、トルクT、コイル抵抗Rm、モータ駆動電流Ispn、PWMによるスイッチングロスPswを用いて次式(1)のように表される。
Pw=Vps×Ips=T×ω+Ispn2 ×Rm+Psw ……(1)
電源電流Ipsが一定となるように電流制御を行うと上式(1)の右辺が一定となるように動作する。定常回転状態では上式右辺第1項(T×ω)が支配的であるためこの電流制御によりトルクTが一定となるように動作することができる。これによりモータにばらつきがあってもトルクリップルを小さく抑えたモータ駆動を実現することができる。
図3には、図1のΔ−ΣADC及び移動平均フィルタの一実施例のブロック図が示されている。Δ−ΣADCは、例えば20MHz程度の高速サンプリング動作を行うことでビット精度を向上させた1ビット2次Δ−ΣADCが用いられる。Δ−ΣADCの構成としては必要なビット精度、PWM周期に対するオーバサンプル比から適切な構成が選択される。
ADC出力は、まず64回平均程度の移動平均フィルタ1に入力される。これは折り返しノイズによるビット精度の劣化を防ぐために挿入されるものであり、電流検出に必要なビット精度から平均回数が選択される。上記移動平均フィルタ1の出力信号は、PWM周期に同期した移動平均フィルタ2に入力される。PWM周期はカウンタで生成しているためカウンタのリセット信号DIFを移動平均フィルタ2の更新に用いることで検出量に含まれるPWM周波数成分を完全に除去することができる。
移動平均フィルタ全体の遅れ時間としては初段の平均回数分が小さいのでほぼPWM周期の半分のみで電源電流Ipsの検出が可能になる。この移動平均フィルタは、電流制御ループの中にあるため遅れ時間が少ない分、電流制御の高帯域化が図れ、電源電流脈動すなわちトルク脈動の抑制効果を高くすることができる。
図4には、図3の移動平均フィルタの周波数特性図が示されている。図3の移動平均フィルタのPWM周波数が40KHzの場合の周波数特性であり。PWM周波数に伝送零点があるためPWM周波数成分(40KHz)を完全に除去することができる。このように、直流シャント抵抗Rnfを流れる電流の平均値になるため検出値Ipsには、PWM成分が含まれなくすることができる。
図5には、図1のΔ−ΣADCを用いた電源電流検出動作波形図が示されている。3相分の正弦波電圧をPWM変調することによりU,V,Wの3相電圧はPWMデューティが少しずつ変化した波形となる。PWM動作により直流シャント抵抗Rnfの両端に現れる電圧は3相のオン/オフ状態で変化する。例えばU相が下側オン、V,W相が上側オン場合にはU相を流れる電流が直流シャント抵抗Rnf両端電圧に現れる。
Δ−ΣADCは20MHzで動作するのでPWM周波数が40KHzの場合にはADCのオーバサンプル信号としては1PWM期間で500回のADC動作が行われる。移動平均フィルタによりPWM周波数成分が完全に除去されるため移動平均フィルタの出力は、前記図13に示したようにナイキストADCで相電流を検出した場合のような電気角60deg 周期の脈動はなく、電源電流を正確に検出することができる。モータばらつきによりトルクに脈動が生じると電源電流Ipsに脈動が現れるため、この電流Ipsが一定となるように電流制御を行い、トルクリップルを小さく抑えるように動作する。つまり、前記式(1)において、電源電圧Vpsが一定であり、T×ω≫Ispn2 ×Rm+Pswであることから、電源電流IpsとトルクTが一対一に対応することとなる。つまり、電源側から供給される電気エネルギー(Vps×Ips)が、回転エネルギー(T×ω)に変換されることになる。
図6には、本願発明を説明するための1の動作波形図が示されている。同図は、前記図12に示した相電流制御におけるコンピュータシミュレーションで作成された動作波形図であり、本願発明による電源電流制御との比較のために示されている。同図は、モータコイルにばらつきなし、具体的には逆起電圧にばらつきなしの例である。同図において、上段からU相電圧、U相逆起電圧、U相電流、電源電流、トルク、ADC出力、直流シャント抵抗Rnfに流れる電流が示されている。
各相は図2(D)の波形プロファイルに対応した駆動電圧をPWM変調した信号で動作するためU相電圧は同図に示したようなPWM波形となる。上記のようにU相の駆動電圧を正弦波とし逆起電圧が正弦波であるためU相電流も正弦波状の電流となる。逆起電圧にばらつきがない場合には電源電流、トルク共にリップルを小さく抑え動作している。直流シャント抵抗Rnfに流れる電流は各相PWMの状態によって流れる電流が決まり、ADC出力は前述したように電気角60deg 周期の脈動が存在する。前記図12の相電流制御では、かかる脈動がSPNCRNT(折線近似)で補正される。
図7には、本願発明を説明するための他の1の動作波形図が示されている。同図も、前記図12に示した相電流制御におけるコンピュータシミュレーションで作成された動作波形図であり、モータコイルにばらつき有りの場合、具体的にはU相のみ逆起電圧が小さい場合はその相のトルク定数が下がるため相電流を一定にしても電源電流及びトルクが一定とならず、ばらつきがない場合に対して電源電流リップル及びトルクリップルが劣化する。
図8には、本願発明に係る電源電流制御を説明する1の動作波形図が示されている。同図は、前記図1に示した相電流制御におけるコンピュータシミュレーションで作成された動作波形図である。同図は、前記図6に対応してモータコイルにばらつきなし、具体的には逆起電圧にばらつきなしの例である。同図において、上段からU相電圧、U相逆起電圧、U相電流、電源電流、トルク、ADC出力、直流シャント抵抗Rnfに流れる電流が示されている。電源電流に対応する移動平均フィルタ出力が一定になるように電流制御を行うことで電源電流リップル及びトルクリップルを抑えることができる。
図9には、本願発明に係る電源電流制御を説明する他の1の動作波形図が示されている。同図も、前記図1に示した相電流制御におけるコンピュータシミュレーションで作成された動作波形図である。同図は、前記7に対応してモータコイルにばらつき有りの場合、具体的にはU相のみ逆起電圧が小さい場合である。電源電流制御では、電源電流に対応する移動平均フィルタ出力が一定になるように電流制御を行うことでモータにばらつきがあっても前記図7に比べて電源電流リップル及びトルクリップルを抑えることが可能となることが示されている。モータのばらつきによるリップルの成分としては逆起電圧のn倍の成分として発生するため本発明の電源電流検出は遅れ時間が少ない分電流制御帯域を高くでき良好なトルクリップルの低減効果が得られる。
図10には、この発明に係るモータ駆動装置の一実施例の全体ブロック図が示されている。この実施例は、180 deg通電による多相モータとしての3相モータの一定トルク駆動に向けられている。3相モータコイルはパワーMOSFETM1〜M6等のパワー素子からなる出力段と出力プリドライバによりパルス幅変調(PWM)信号により駆動される。出力プリドライバは駆動電圧プロファイル生成部で生成した正弦波状の駆動電圧を出力制御部でPWM変調した信号UP,UN,VP,VN,WP,WNを入力として動作する。
スピンドル出力電圧U,V,Wは、セレクタSEL1でBEMF検出相が選択され、モータの中性点CTとの差電圧がプリアンプSA1で生成される。このプリアンプSA1で生成された差電圧は、プリフィルタPFLでフィルタリングされた後に、電圧比較器CP1で基準電圧Vref1と比較されてBEMFのゼロクロスが検出される。
下側パワーMOSFETM2、M4、M6のゲート電圧UL,VL,WLはセレクタSEL2で電流ゼロクロス検出を行う相が選択される。セレクタSEL1の出力が電圧比較器CP3で基準電圧Vref3と比較され、交差するタイミングすなわち出力電圧が遷移している期間においてセレクタSEL2の出力をS/Hによりサンプルホールドし、電圧比較器CP2により、上記サンプルホールド電圧と基準電圧Vref2の比較により電流のゼロクロスが検出される。
これらのゼロクロス出力はセレクタSEL3によってどちらの情報を利用するか選択されるが、180deg 通電駆動方式を行う場合には電流ゼロクロス検出結果を用い、それ以外の場合はBEMFゼロクロス結果を用いるようにする。これはモータの回転が不安定な低回転時ではBEMF検出による安定な起動方式を利用することを目的とする。
上記セレクタSEL3の出力であるゼロクロス検出結果は、位相誤差検出部PDへ入力され、補償器PLL、通電タイミングカウンタCNT、出力制御部OUTC(PWM)、プリドライバ段PDV、パワーMOSFETM1〜M6、モータからなるPLL制御ループによって低回転ジッタでのモータ駆動を実現する。上記PLL制御ループは電流ゼロクロスを用いる場合にループゲインを調整する機能を有する。
位相誤差検出に電流ゼロクロスを用いるとBEMFを検出する時のような無通電期間が不要なため、180deg 通電を実現することができ、正弦波状の駆動電圧によりトルクリップルの少ないほぼ一定トルクでのモータ駆動が実現できる。一方、電流電流の検出については直流シャント抵抗Rnfを用いて行う。直流シャント抵抗Rnfで検出された電圧はセンスアンプSA2により増幅され、高速でオーバサンプル動作を行うΔ−ΣADC(ADC2)へ入力される。Δ−ΣADC出力はPWM周波数に伝送零点を持つ移動平均フィルタFLに入力され、PWM周波数成分が完全に除去されて電源電流Ipsを検出することができる。
電源電流に対応した移動平均フィルタFLの出力Ipsは、電流制御誤差検出部IEDで電流指示SPNCRNTとから誤差が計算され、電流制御補償器IC、出力制御部OUTC(PWM)、プリドライバ段PDV、パワーMOSFETM1〜M6、モータからなる電流制御ループによって電源電流Ipsが一定となるように制御が行われる。前記電流制御誤差検出部IEDで電流指示SPNCRNTとから誤差が計算され、電流制御補償器IC、出力制御部OUTC(PWM)は、前記図1に詳細なブロック図が示されている。
モータの速度制御については出力制御部OUTCより回転数に比例した周期信号のPHASE信号が出力され、マイクロコンピュータ又はマイクロプロセッサMPUにて目標速度との比較が行われ、速度に応じた電流指示SPNCRNTが作成されてシリアルポートSPORTを通して入力される。
マイクロコンピュータ又はマイクロプロセッサMPUとのインターフェースは上記シリアルポートSPORTで行われ、各種パラメータPM1〜PM5がレジスタPREGにより設定される。電流指示(SPNCRNT)、電流制御、PLL、180deg 通電駆動電圧プロファイル等の各種パラメータがレジスタにより設定される。スピンドル部システムとしてはモータ停止状態からの起動の制御を行うCOMSENS制御部COMCや内部の動作を制御するシーケンサLOGも有する。COMSENS制御部COMCには、上記プリフィルタPFLの出力がADC1によりデジタル変換されて入力される。上記PM1は、COMSENS制御用パラメータである。上記PM2は、ループゲイン調整用パラメータである。上記PM3は、電流制御用パラメータである。上記PM4は、PLL制御用パラメータである。
図11は、本発明を適用したモータ駆動制御回路を用いたスピンドルモータ制御系の他、ボイスコイルモータ制御系および磁気ヘッド駆動制御系を有する磁気ディスクシステムの一例としてのハードディスク装置全体の一構成例をブロック図で示したものである。図11において、310は磁気ディスク300を回転させるスピンドルモータ、320は先端に磁気ヘッド(書込み磁気ヘッドおよび読出し磁気ヘッドを含む)HDを有するアーム、330はこのアーム320を回動可能に保持するキャリッジで、上記ボイスコイルモータ340はキャリッジ330を移動させることで磁気ヘッドを移動させるとともに、磁気ヘッドの中心をトラックの中心に一致させるようにモータ駆動制御回路410がサーボ制御を行う。
モータ駆動制御回路410は、前記実施例で説明したような機能を有するスピンドルモータ駆動制御回路と磁気ヘッドをディスクの径方向へ移動させるボイスコイルモータ駆動制御回路とが一体となった半導体集積回路であり、コントローラ420から供給される制御信号に従って動作し、磁気ヘッドを所望のトラックへシーク移動させたり磁気ヘッドの相対速度を一定にしたりするように、ボイスコイルモータ340とスピンドルモータ310をサーボ制御する。この場合、前記パワーMOSFETM1〜M6は、外付素子で構成してもよいし、半導体集積回路に内蔵するものであってもよい。駆動電流が大きなものは、半導体集積回路に内蔵することが難しくなるので、上記のように外付素子で構成することが望ましい。
430は上記磁気ヘッドHDによって検出された磁気の変化に応じた電流を増幅して読出し信号を信号処理回路(データチャネルプロセッサ)440へ送信したり信号処理回路440からの書込みパルス信号を増幅して磁気ヘッドHDの駆動電流を出力したりするリード・ライトICである。
450は信号処理回路440から送信されてくる読出しデータを取り込んで誤り訂正処理を行ったりホストからの書込みデータに対して誤り訂正符号化処理を行って信号処理回路440へ出力したりするハードディスク・コントローラである。上記信号処理回路440は、デジタル磁気記録に適した変調/復調処理や磁気記録特性を考慮した波形整形等の信号処理を行うとともに、上記磁気ヘッドHDの読出信号から位置情報を読み取る。
460は本システムと外部装置との間のデータの受渡しおよび制御等を行うインタフェース・コントローラで、上記ハードディスク・コントローラ450はインタフェース・コントローラ460を介してパソコン本体のマイクロコンピュータなどのホストコンピュータに接続される。470は磁気ディスクから高速で読み出されたリードデータを一時的に記憶するバッファ用のキャッシュメモリである。マイクロコンピュータからなるシステムコントローラ420は、ハードディスク・コントローラ450からの信号に基づいて、いずれの動作モードか判定し、動作モードに対応してシステム各部の制御を行うとともに、ハードディスク・コントローラ450から供給されるアドレス情報に基づいてセクタ位置などを算出したりする。
以上の実施例においては、前記特許文献2でも説明されているように、PWM動作をしている出力電圧の遷移期間中において、出力パワーMOSFETのゲート,ソース間電圧Vgsの有無を判定することにより電流波形のゼロクロスを検出し、これを利用することでモータの無通電期間の無い180 deg通電を実現することができる。また、PLL制御における位相誤差検出で出力遷移期間中の上記ゲート,ソース間電圧Vgsの有無による検出結果を利用し、誤差検出期間内において駆動電流の極性判定結果の回数差に比例した量を位相誤差として利用することにより実動作で生じる検出オフセットや駆動電流リップルの影響を受けないようにPLL制御を行うことが可能になる。さらにはモータのばらつきに対応した電源電流制御を実現し、モータ駆動時のトルクリップルを大幅に低減することができる。
モータの位置情報としてBEMFのゼロクロスあるいは電流のゼロクロスを選択するためにセレクタを設けることで、モータの回転が不安定な低回転時には従来のBEMF検出による駆動方式で安定に起動させることが可能になる。また、PLL制御におけるゲイン調整機能を有することでゼロクロス情報としてBEMFあるいは電流のどちらを用いても同じループ特性で動作させることが可能になり、回転ジッタ等の劣化を抑えることが可能になる。駆動電圧に対して電気角60 deg毎の繰り返しパターンとし、またパターンを直線近似で表現することで簡易な構成で精度の高い正弦波状の駆動電圧を得ることが可能になり、一定トルクでのモータ駆動が実現できる。
電気角60 deg毎の繰り返しパターンにより電流波形の上下対称性を良好にすることができ、トルクリップルの2次歪成分の発生を抑えることが可能になる。位相設定レジスタ及び傾き設定レジスタを設けることでモータによらず駆動電圧位相や駆動電圧歪を調整することができ、最適なトルクでモータを駆動することが可能になる。また、電気角60 deg毎の繰り返しパターンの傾きを変えるという駆動電圧歪の調整方法は6次歪を挿入することが容易であるため、BEMFに存在する歪成分(主に5次と7次の合成)の影響を補償する上で有効な方法となるものである。そして、駆動電流制御において電流指示に予め期待される脈動成分を重畳させることで、電流検出による誤差を発生させることなく電流制御を行うことができ、これにより正弦波状の駆動電流を実現することが可能になる。
この発明が適用されたモータ駆動装置では、無通電期間のない180 deg通電を実現し、電源電流を検出して回転制御を行うことにより、モータばらつきに対してもトルクリップルを低減することができ、モータの低騒音、低振動化が可能になる。180 deg通電となることでHDD装置の電源電流リップルを低減することも可能になり、電源に対しより多くのHDDを接続することが可能になる。検出オフセットや駆動電流リップルの影響を受けない位相誤差検出方法により、ディスク枚数の少ないモータや回転数の低いモータ等の駆動電流が比較的小さいモータでも180 deg通電を実現することが可能となるものである。
以上本発明者によってなされた発明を、前記実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、高速ADCはPWM周波数に対して十分速いサンプリングで所望のbit精度が得られればよく、本実施例では1bit2次Δ―ΣADCを用いているが、bit数や次数は必要な特性に応じて変更できる。また移動平均フィルタについてもPWM周波数成分を完全に除去できればよいためPWM周波数に伝送零点を持つフィルタであれば他の方式のフィルタでもかまわない。
また、180deg通電の実現に対しては電流ゼロクロスの検出は、下側パワーMOSFETM2、M4及びM6のゲート,ソース間電圧Vgsの有無を判定するものの他、上側のパワーMOSFETM1、M3、M5のゲート,ソース間電圧Vgsを判定するものであってもよい。この場合、出力段の端子UU−U、VU−V、WU−W間の電圧が、前記のようなMOSFETのしきい値電圧Vthよりも大きいか否かで判定すればよい。前記のようにパワーMOSFETは、モータ駆動用集積回路に内蔵させるもの、あるいは外付け素子で構成するもののいずれであってもよい。
駆動方式に対しては、無通電期間のない180deg通電だけでなく、BEMFの零クロス検出を行うためにわずかな期間(10deg程度)だけ無通電期間を設けた駆動方式であっても、上記電源電流を検出して回転制御を行うことによりモータばらつきに対するトルクリップル低減の効果を得ることができる。さらにはモータの位置検出に関して前記のような電流ゼロクロスを用いるもの他、ホール素子のようなセンサを用いるものであってもよい。尚パワー素子としてのパワーMOSFETはバイポーラトランジスタ等他の素子を用いたものでもよい。
この発明は、モータ駆動装置及びモータ回転制御方法として広く利用できる。
この発明に係るモータ駆動装置における180 deg通電による一定トルク駆動方式の一実施例の電流制御系ブロック図である。 この発明におけるモータに正弦波電流を流すための印加電圧波形図である。 図1のΔ−ΣADC及び移動平均フィルタの一実施例のブロック図である。 図3の移動平均フィルタの周波数特性図である。 図1のΔ−ΣADCを用いた電源電流検出動作波形図である。 本願発明を説明するための1の動作波形図である。 本願発明を説明するための他の1の動作波形図である。 本願発明に係る電源電流制御を説明する1の動作波形図である。 本願発明に係る電源電流制御を説明する他の1の動作波形図である。 この発明に係るモータ駆動装置の一実施例の全体ブロック図である。 本発明を適用したモータ駆動制御回路を用いたハードディスク装置全体の一構成例のブロック図である。 従来技術の一例のブロック図である。 図12における相電流検出動作波形図である。
符号の説明
M1〜M6…パワーMOSFET、SEL1〜SEL3…セレクタ、ADC2…Δ−ΣADC、PFL…プリフィルタ、CMP1〜CMP3…電圧比較器、SA2…センスアンプ、SA1…プリアンプ、S/H…サンプリングホールド回路、Rnf…直流シャント抵抗、IED…電流制御誤差検出部、IC…電流制御補償器、OUTC…出力制御部、PVD…プリドライバ段、COMC…COMSENS制御部、MPU…マイクロコンピュータ又はマイクロプロセッサ、SPORT…シリアルポート、PREG…レジスタ、LOG…シーケンサ、
300…磁気ディスク、310…スピンドルモータ、320…アーム、330…キャリッジ、340…ボイスコイルモータ、410…モータ駆動制御回路、420…コントローラ、430…リード・ライトIC、440…信号処理回路、450…ハードディスク・コントローラ、460…インタフェース・コントローラ、470…キャッシュメモリ。

Claims (14)

  1. 多相コイルに出力電圧を供給するパワー素子と、かかるパワー素子に駆動電圧を供給するプリドライバとからなる多相DCモータ出力段と、
    上記パワー素子に流れる電流を検出する抵抗手段と、
    上記抵抗手段で発生した電圧信号をDCとデジタルフィルタを用いて電源電流として検出する電源電流検出部と、
    回転速度を制御するための電流指示と上記電源電流検出部で検出された検出電流とが一致するように上記DCのサンプリング周波数よりも低い周波数とされたPWM信号を形成して上記出力段に伝える出力制御部とを備えたモータ駆動装置。
  2. 請求項1において、
    上記DCは、上記PWM信号の周波数に対し高い周波数でオーバサンプル動作を行うΔ−ΣADCであるモータ駆動装置。
  3. 請求項1において、
    上記デジタルフィルタは、上記PWM信号の周波数に伝送零点を設けた移動平均フィルタであるモータ駆動装置。
  4. 請求項2において、
    上記デジタルフィルタは、上記PWM信号の周波数に伝送零点を設けた移動平均フィルタであるモータ駆動装置。
  5. 請求項4において、
    上記パワー素子は、電源電圧側に接続された上側パワー素子と、接地電位側に接続された下側パワー素子からなり、
    上記抵抗手段は、上記下側パワー素子の共通接続点と接地電位との間に設けられた直流シャント抵抗であるモータ駆動装置。
  6. 請求項4において、
    上記パワー素子を駆動する電圧が所定電圧以上であるか否かをモニタして電流のゼロクロス検出を行う電流ゼロクロス検出部と、
    上記電流ゼロクロス検出部の出力を通電切替タイミングの制御を行う位相ロックドループ制御に利用して180度通電の駆動電圧を生成するプロファイル生成部とを有し、
    上記出力制御部は、上記プロファイル生成部で形成された駆動電圧を受けて上記出力段に伝えるPWM信号を形成するモータ駆動装置。
  7. 請求項6において、
    無通電相を選択し、逆起電圧のゼロクロスを検出する逆起電圧検出部と、
    モータの回転が不安定な低回転時には上記逆起電圧検出部を選択して上記位相ロックドループ制御に伝え、モータの回転が安定領域となる上記低回上転時よりも回転数の多い高回転時には上記電流ゼロクロス検出部を選択して上記位相ロックドループ制御に伝えるセレクタとを備えてなるモータ駆動装置。
  8. 請求項7において、
    上記電流ゼロクロス検出部は、上記下側のパワー素子のゲート,ソース間電圧とそのしきい値電圧以下であって、0Vよりも大きな基準電圧とを比較するコンパレータを備えるモータ駆動装置。
  9. 請求項8において、
    上記位相ロックドループ制御における位相誤差検出は、位相誤差検出期間内における駆動電流の極性判定結果の回数差に比例した量を位相誤差として用いるモータ駆動装置。
  10. 請求項9において、
    上記多相DCモータ出力段は、3相コイルを有する3相DCモータ出力段であり、
    上記プロファイル生成部は、電圧最小相をGNDとした下側フックと電圧最大相を電源とした上側フックを電気角60度毎に交互に繰り返したパターンとし、このパターンを直線近似で表現して正弦波状の駆動電圧を生成するモータ駆動装置。
  11. 多相コイルに出力電圧を供給するパワー素子と、かかるパワー素子に駆動電圧を供給するプリドライバとからなる多相DCモータ出力段と、
    上記パワー素子に流れる電流を検出する抵抗手段とを有し、
    上記抵抗手段で発生した電圧信号をDCとィルタを用いて電源電流として検出し、回転速度を制御するための電流指示と上記検出された電源電流とが一致するように上記DCのサンプリング周波数よりも低い周波数とされたPWM信号を形成して上記出力段に伝えて回転速度の制御を行い、
    上記フィルタは、上記PWM信号の周波数に伝送零点を設けられるモータ回転制御方法。
  12. 多相コイルに出力電圧を供給するパワー素子と、かかるパワー素子に駆動電圧を供給するプリドライバとからなる多相DCモータ出力段と、
    上記パワー素子に流れる電流を検出する抵抗手段と、
    上記抵抗手段で発生した電圧信号をオーバサンプル動作を行うアナログ/デジタル変換器とデジタルフィルタを用いて電源電流として検出する電源電流検出部と、
    回転速度を制御するための電流指示と上記電源電流検出部で検出された検出電流とが一致するように上記アナログ/デジタル変換器のサンプリング周波数よりも低い周波数とされたPWM信号を形成して上記出力段に伝える出力制御部とを備え
    上記デジタルフィルタは、上記PWM信号の周波数に伝送零点を設けられるモータ駆動装置。
  13. 請求項12において、
    上記アナログ/デジタル変換器は、上記PWM信号の周波数に対し高い周波数でオーバサンプル動作を行うΔ−ΣADCであるモータ駆動装置。
  14. 請求項12において、
    上記デジタルフィルタは、上記PWM信号の周波数に伝送零点を設けた移動平均フィルタであるモータ駆動装置。
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