JP5126844B2 - 熱間プレス用鋼板およびその製造方法ならびに熱間プレス鋼板部材の製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、熱間プレス後において1300MPa以上の引張強度を確保するためには、熱間プレスに供する熱間プレス用鋼板に、焼き入れ後の強度を確保するために多量のCを含有させ、焼き入れ性を確保するために多量のMnやCrを含有させ、靭性を確保するためにBを含有させるなど、多量の合金元素の含有が必要となってくる。さらに、不純物として存在するNなどの悪影響を無害化するためにTiなどの含有が必要となってくる。これらの合金元素の多量含有により、熱間プレスに供する熱間プレス鋼板の引張強度(TS)、降伏点(YP)が上昇し、鋼板の平坦性が劣化したり、ブランク加工時においてシャー刃の摩耗が大きくなったり、ランクフォード値(r値)や曲げ加工性が低下したりするなどの問題が発生する。
(a)焼入れ性向上元素の含有量を低減させずに熱間プレス用鋼板の軟質化を図るには、硬質な低温変態生成相を含有しない組織とすること、すなわち、フェライトとセメンタイトとからなる鋼組織とすることが必要である。
本発明は上記知見に基づいてなされたものである。
(1)質量%で、C:0.18〜0.25%、Si:0.02〜0.3%、Mn:1.0〜2.0%、Cr:0.5%以下、B:0.0003〜0.0030%、P:0.025%以下、S:0.004%以下、Al:0.01〜0.06%およびN:0.006%以下を含有し、さらに下記式(1)を満足するTiを含有し、残部がFeおよび不純物からなるとともに、下記式(2)を満足する化学組成を有し、フェライトとセメンタイトとからなるとともに、前記セメンタイトの60面積%以上が球状化セメンタイトであり、前記球状化セメンタイトの平均粒径が1.0μm以下である鋼組織を有し、圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向のすべてにおいて、TS≦540MPa、YP≦320MPa、El≧26%、かつ限界曲げ半径≦0.5t(t:板厚)であり、さらに平均r値が0.80以上である機械特性を有することを特徴とする熱間プレス用鋼板。
0.002≦Ti−(48/14)N−(48/32)S≦0.04 (1)
Mn+Cr≦2.0 (2)
ここで、式(1)および(2)における元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
平均r値=(r0°値+2×r45°値+r90°値)/4 (6)
Mn+Cr+Mo+Cu+Ni≦2.0 (3)
ここで、式(3)における元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
(A)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の化学組成を含有するスラブを1200℃以上として粗熱間圧延を施して粗バーとする粗熱間圧延工程;
(B)前記粗バーを1080℃以上として仕上熱間圧延を施し、かつ850℃超980℃以下で仕上熱間圧延を完了し、熱間圧延鋼板とする仕上熱間圧延工程;
(C)前記熱間圧延鋼板に、前記仕上熱間圧延完了後に70℃/秒以下の平均冷却速度で冷却して、700℃超850℃以下で巻き取る冷却・巻取り工程;
(D)前記冷却・巻取り工程後の熱間圧延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(E)前記酸洗鋼板に冷圧率20%以上50%未満の冷間圧延を施して冷間圧延鋼板とする冷間圧延工程;および
(F)前記冷間圧延鋼板を590℃〜760℃の温度域で0.5〜20時間焼鈍し、その後600℃/時以下の冷却速度で室温まで冷却する焼鈍工程。
(1)C:0.18〜0.25%、
熱間プレスは、素材となる熱間プレス用鋼板を加熱することで軟質化させ、プレス成形を容易にすることが特徴の一つであるが、あわせて、プレス金型等で急冷することで鋼を焼き入れし、より高強度の成形品である熱間プレス鋼板部材を得ることも特徴である。鋼の焼き入れ後の強度は主にC含有量によって決定されるため、熱間プレス鋼板部材に要求される強度に応じてC含有量を設定する。C含有量が0.18%未満では、本発明が目的とする熱間プレス鋼板部材の引張強度を1300MPa以上とすることが困難となる。したがって、C含有量を0.18%以上とする。一方、C含有量が0.25%超では、熱間プレスに供する熱間プレス用鋼板が硬質となり、良好な深絞り性、曲げ加工性、鋼板平坦矯正性およびブランク加工性を確保することが困難となる。したがって、C含有量を0.25%以下とする。好ましいC含有量は0.20%〜0.23%であり、このようにすることにより、引張強度1400MPa以上で靭性劣化の少ない熱間プレス鋼板部材を安定して得ることができる。
Siは、熱間プレス用鋼板の焼入れ性を高め、かつ熱間プレス鋼板部材の強度を安定して確保するのに有効な元素である。Si含有量が0.02%未満では、上記作用による効果を十分に得ることが困難となる。したがって、Si含有量を0.02%以上とする。好ましくは0.1%以上である。一方、Si含有量が0.3%を超えると、熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、Si含有量を0.3%以下とする。
Mnは、熱間プレス用鋼板の焼入れ性を高め、かつ熱間プレス鋼板部材の強度を安定して確保するのに非常に有効な元素である。Mn含有量を1.0%未満では、上記作用による効果を十分に得ることが困難となる。したがって、Mn含有量を1.0%以上とする。好ましくは1.1%以上である。一方、Mn含有量が2.0%を超えると、熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、Mn含有量を2.0%以下とする。好ましくは1.6%以下である。
Crは、不純物として鋼中に含有される元素であるが、熱間プレス用鋼板の焼入れ性を高め、かつ熱間プレス鋼板部材の強度を安定して確保するのに非常に有効な元素でもある。したがって、積極的に含有させてもよい。しかし、Cr含有量が0.5%を超えると、熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、Cr含有量を0.5%以下とする。好ましくは0.4%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Cr含有量を0.1%以上とすることが好ましい。
Bは、熱間プレス用鋼板の焼入れ性を高め、かつ熱間プレス鋼板部材の強度を安定して確保するのに非常に有効な元素である。B含有量が0.0003%未満では、上記作用による効果を十分に得ることが困難となる。したがって、B含有量を0.0003%以上とする。好ましくは0.0005%以上である。一方、B含有量が0.0030%を超えると、熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、B含有量を0.0030%以下とする。好ましくは0.0025%以下である。
Pは、不純物として鋼中に含有される元素であるが、熱間プレス用鋼板の焼入れ性を高め、かつ熱間プレス鋼板部材の強度を安定して確保するのに有効な元素でもある。したがって、積極的に含有させてもよい。しかし、P含有量が0.025%を超えると、熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となるとともに熱間プレス鋼板部材の靭性が劣化する。したがって、P含有量を0.025%以下とする。好ましくは0.020%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、P含有量を0.005%以上とすることが好ましい。
Sは、不純物として鋼中に含有され、鋼中に硫化物を形成することにより熱間プレス鋼板部材の靭性を劣化させる。したがって、S含有量は少ないほど好ましく、本発明においては0.004%以下とする。好ましくは0.0020%以下である。S含有量の下限は特に規定する必要はない。しかし、S含有量の過剰な低減は著しいコスト増を招く。したがって、S含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.0005%以上である。
Alは、製鋼工程において脱酸材として添加され、鋼材を健全化する作用を有する。Al含有量が0.01%未満では、上記作用による効果を十分に得ることが困難となる。したがって、Al含有量を0.01%以上とする。好ましくは0.02%以上である。一方、Al含有量が0.06%を超えると、鋼中に多量の酸化物を形成して熱間プレス鋼板部材の靭性を劣化させる。したがって、Al含有量を0.06%以下とする。好ましくは0.05%以下である。
Nは、不純物として鋼中に含有され、鋼中にTiN、BN、AlNなどの窒化物を形成することにより熱間プレス鋼板部材の靭性を劣化させる。したがって、N含有量は少ないほど好ましく、本発明においては0.006%以下とする。好ましくは0.0020%以下である。N含有量の下限は特に規定する必要はない。しかし、N含有量の過剰な低減は著しいコスト増を招く。したがって、N含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.0005%以上である。
上述したように、MnとCrはともに熱間プレス用鋼板を硬質にする作用を有するので、MnとCrの合計含有量が2.0%超であると熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、MnおよびCrの含有量を、下記式(2)を満足させるようにする。
Mn+Cr≦2.0 (2)
ここで、式(2)における元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
上述したBによる作用効果は固溶状態にあるBによってもたらされるため、また、鋼中におけるBNやAlNの形成は熱間プレス鋼板部材の靭性を劣化させるため、鋼中におけるBNやAlNの形成を抑制する必要がある。Tiは、BおよびAlよりも窒化物形成能が高いので、Tiを十分に含有させることにより鋼中におけるBNやAlNの形成を抑制することが可能となる。Tiは、鋼中のNおよびSと結合してTiNおよびTiSを形成するので、これらを考慮してTi含有量を下記式(4)を満足させるようにする。
0.002≦Ti−(48/14)N−(48/32)S (4)
一方、Ti含有量が過剰であると、Tiが鋼中のCと結合してTiCを多量に形成してしまうので、熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、Ti含有量を下記式(5)を満足させるようにする。
Ti−(48/14)N−(48/32)S≦0.04 (5)
ここで、式(5)における元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
Nbは、熱間プレスに際しての熱間プレス用鋼板の加熱時におけるオーステナイトの粒成長を抑制し、熱間プレス鋼板部材の旧オーステナイト粒径を細粒化することにより、熱間プレス鋼板部材の靭性を向上させる作用を有する。したがって、積極的に含有させてもよい。しかし、Nb含有量が0.03%を超えると熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、Nb含有量を0.03%以下とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Nb含有量を0.005%以上とすることが好ましい。
Mo、CuおよびNiは、いずれも熱間プレス用鋼板の焼入れ性を高め、かつ熱間プレス鋼板部材の強度を安定して確保するのに有効な元素である。したがって、これらの元素から選ばれる1種または2種以上を積極的に含有させてもよい。しかし、それぞれ0.5%を超えて含有させても上記作用による効果は飽和してしまい、徒にコストの増加を招くのみである。したがって、Mo、CuおよびNiの含有量を、それぞれ0.5%以下とする。
Mn+Cr+Mo+Cu+Ni≦2.0 (3)
REM(希土類元素)、MgおよびCaは、いずれも鋼中の介在物の形態を微細化する作用を有し、介在物による熱間プレス時の割れを防止するのに有効な元素である。したがって、これらの元素から選ばれる1種または2種以上を積極的に含有させてもよい。しかし、REMについては0.1%を超えて、MgおよびCaについては0.5%を超えてそれぞれ含有させても上記作用による効果は飽和してしまい、徒にコストの増加を招くのみである。したがって、REMの含有量は0.1%以下、MgおよびCaの含有量をそれぞれ0.005%以下とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、これらの元素の合計含有量を0.0005%以上とすることが好ましく、いずれかの元素の含有量を0.0005%以上とすることがさらに好ましい。
本発明に係る熱間プレス用鋼板の鋼組織は、フェライトとセメンタイトとからなるとともに、前記セメンタイトの60面積%以上が球状化セメンタイトであり、前記球状化セメンタイトの平均粒径が1.0μm以下とする。
本発明に係る熱間プレス用鋼板は、機械特性として、JIS5号試験片における圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向のすべてにおいて、TS≦540MPa、YP≦320MPa、El≧26%、かつ限界曲げ半径≦0.5t(t:板厚)であり、さらに平均r値が0.8以上であることを備える。
平均r値=(r0°値+2×r45°値+r90°値)/4 (6)
本発明に係る熱間プレス用鋼板は、上記の化学組成、鋼組織、および機械特性を有するのであれば、いかなる製造方法により製造されてもよいが、次の製造方法を採用することにより、本発明に係る鋼板を効率的かつ安定に製造することが実現される。
粗熱間圧延に供するスラブ温度が1200℃未満では、仕上熱間圧延前のオーステナイトが細粒となり、その結果、巻取後のフェライトも細粒となり、熱間圧延鋼板の強度が高くなる。熱間圧延鋼板の強度が高くなると、その後に冷間圧延および焼鈍を施して得られる熱間プレス用鋼板の強度も高くなり、軟質化することが困難となる。したがって、粗熱間圧延に供するスラブの温度は1200℃以上とする。
粗熱間圧延に供するスラブ温度の上限は特に規定する必要はないが、過度に高温となると生産性が低下するので、1350℃以下とすることが好ましい。
仕上熱間圧延に供する粗バーの温度が1080℃未満では、仕上熱間圧延前のオーステナイトが細粒となり、上述した粗熱間圧延に供するスラブ温度が1200℃未満である場合と同様の問題が生じる。したがって、仕上熱間圧延に供する粗バーの温度を1080℃以上とする。
仕上温度が850℃以下では、巻取後のフェライトが細粒となり、上述した粗熱間圧延に供するスラブ温度が1200℃未満である場合と同様の問題が生じる。したがって、仕上温度は850℃超とする。
巻取温度が700℃以下では、フェライトの粒成長が不十分となり、さらにTiCやTi−Nb−Cといった析出物が微細に分散するため、熱間圧延鋼板の強度が高くなる。熱間圧延鋼板の強度が高くなると、その後に冷間圧延および焼鈍を施して得られる熱間プレス用鋼板の強度も高くなり、軟質化することが困難となる。したがって、巻取温度は700℃超とする。
仕上熱間圧延完了から巻取りまでの平均冷却速度が70℃/秒超では、硬質相の生成が促進され、熱間圧延鋼板の強度が高くなる。熱間圧延鋼板の強度が高くなると、その後に冷間圧延および焼鈍を施して得られる熱間プレス用鋼板の強度も高くなり、軟質化することが困難となる。したがって、仕上熱間圧延完了から巻取りまでの平均冷却速度は70℃/秒以下とする。仕上熱間圧延完了から巻取りまでの冷却は、水冷、空冷およびガス冷のいずれであっても構わない。平均冷却速度の下限は特に限定する必要はないが、生産性の観点から5℃/秒以上とすることが好ましい。
熱間圧延工程により得られた熱延鋼板には、表面に形成されたスケールを除去するために酸洗が施される。酸洗は常法で構わない。
酸洗工程により得られた酸洗鋼板には冷間圧延が施されるが、このときの冷圧率が20%未満では、冷圧率が低すぎるために板幅方向や長手方向の板厚の変動が大きくなる。板厚の変動が大きいと、熱間プレス時の変形態様が不均一となって寸法精度が低下したり、金型との接触が不均一となって焼入れの程度に変動が生じ、硬度分布が大きくなる場合がある。したがって、冷圧率は20%以上とする。
焼鈍温度が590℃未満では、フェライトの再結晶が不十分となり、熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、焼鈍温度は590℃以上とする。一方、焼鈍温度が760℃超では、球状化セメンタイトの平均粒径が1.0μm超となってしまい、熱間プレスに供する際の加熱工程においてオーステナイト中にCを均一に分散させることが困難となり、熱間プレス鋼板部材の引張強度を1300MPa以上とすることが困難となる場合がある。したがって、焼鈍温度は760℃以下とする。
焼鈍時間が0.5時間未満では、セメンタイトに占める球状化セメンタイトの面積割合を60%以上とすることが困難となり、熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、焼鈍時間は0.5時間以上とする。
焼鈍後室温まで冷却する際の平均冷却速度が600℃/時超では、冷却速度が速すぎるため熱間プレス用鋼板が硬質となり、軟質化が困難となる。したがって、焼鈍後室温まで冷却する際の平均冷却速度は600℃/時以下とする。本発明は低温変態相を含有させるものではないので、平均冷却速度の下限は特に限定する必要はないが、通常5℃/時以上である。
上記の本発明に係る熱間プレス用鋼板、好ましくは上記の製造方法により得られた熱間プレス用鋼板を、次の方法で熱間プレスすることによって、本発明に係る熱間プレス鋼板部材が得られる。
上記熱間プレス用鋼板を熱間プレスに供する際にオーステナイト単相状態となるように加熱を施す。
熱間プレスを施す温度が700℃未満であったり、冷却速度が10℃/秒未満であったりすると、熱間プレスの途中やその後の冷却過程においてフェライトが生成し始めるため、熱間プレス鋼板部材の強度を1300MPa以上とすることが困難となる。また、冷却を350℃以上の温度で停止してしまったのでは、マルテンサイト以外の相や組織が生成してしまい、熱間プレス鋼板部材の強度を1300MPa以上とすることが困難となる。したがって、700℃以上の温度で熱間プレスを施し、10℃/秒以上の冷却速度で350℃未満の温度域まで冷却する。
1.熱間プレス鋼板部材の製造
表1に示す化学組成を有する鋼を試験転炉で溶製し、試験連続鋳造機にて連続鋳造を実施し、スラブとした。その後、試験熱間圧延機にて、得られたスラブを表2に示す条件にて、加熱した後、熱間圧延を実施した。熱延鋼板の板厚は、4.1〜2.4mmの範囲で実施した。その後、ラボにて酸洗を行い、試験冷間圧延機で冷圧率を変更し板厚2.0mm冷延鋼板とした。冷延鋼板はその後、焼鈍試験装置にて焼鈍を実施した。冷間圧延および焼鈍条件を表2に併せて示す。得られた冷延鋼板を300mm角に切り出し、平板の熱間プレス試験装置を用いて、熱間プレスを行い、熱間プレス鋼板部材を得た。このときの熱間プレスは、供試材を900℃に4分間保持し、保持終了後3秒後に850℃の温度でプレスを施し、50℃/秒で100℃まで冷却する条件で行った。
焼鈍後の熱間プレス用鋼板および熱間プレスを施して得られた熱間プレス鋼板部材について以下の試験を行った。
(A)鋼組織
鋼板の圧延方向に平行な断面について、ナイタールエッチングを施し、走査型電子顕微鏡を用いて、5000倍の倍率で20視野の鋼組織を観察した。球状化セメンタイトは、アスペクト比が3.0未満で大きさ0.1μm以上のセメンタイトとして、全セメンタイトに占める面積割合と平均粒径を求めた。球状化セメンタイトの平均粒径は、ドットによる画像解析にて個々の球状化セメンタイトの面積を求め、そこから得られた面積を有する真円の直径を求めて、これらを平均化することにより求めた。セメンタイトのアスペクト比は、個々のセメンタイトの形状から長径を求め、その長径に直角な方向の径を短径とし、長径/短径の比として求めた。
得られた鋼板に対して、引張試験および限界曲げ試験を実施した。
(a)引張試験
各鋼板の圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向からJIS5号引張試験を採取し、JISZ2241に準じて引張試験を行い、降伏点YP、引張強さTS、全伸びElおよびr値を測定した。また、上記3方向のr値から平均r値を求めた。
各鋼板の圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向から、300L×30Wの曲げ試験片を採取し、板厚の3倍(3t)〜密着まで0.5tピッチ(t:板厚)で、JISZ2248に記載されている方法に準拠して曲げ試験を実施した。そして、鋼板の曲げ部に目視で割れが認められない最小の板厚を限界曲げ半径とした。ただし、密着状態でも割れが認められない場合には「密着」とした。なお、評価にあたっては、3方向の限界曲げ試験のうち最も劣った結果をその鋼板の限界曲げ半径とした。
(A)機械特性
(a)引張試験
熱間プレス後の熱間プレス鋼板部材について、上記熱間プレス用鋼板の場合と同様に引張試験を行い、引張強度を求めた。
熱間プレス鋼板部材からシャルピー試験片を切り出してシャルピー衝撃試験を実施した。
評価結果を表3に示す。
本発明である供試材No.1〜15は、圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向のすべてにおいて、TS≦540MPa、YP≦320MPa、El≧26%、限界曲げ半径≦0.5tであり、かつ平均r値が0.80以上であり、加工性に優れている。
供試材No.16は、スラブ加熱温度が1180℃と本発明外であった。そのため、熱間プレス用鋼板が硬質となり、TSおよびYPが高く、Elおよび平均r値が低く、曲げ性に劣っていた。
供試材No.27は、焼鈍後の冷却速度が640℃/時と本発明外であった。そのためセメンタイトではなくパーライトが生成し、熱間プレス用鋼板が硬質となった。したがってTSおよびYPが高く、Elおよび平均r値が低く、曲げ性に劣っていた。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.18〜0.25%、Si:0.02〜0.3%、Mn:1.0〜2.0%、Cr:0.5%以下、B:0.0003〜0.0030%、P:0.025%以下、S:0.004%以下、Al:0.01〜0.06%およびN:0.006%以下を含有し、さらに下記式(1)を満足するTiを含有し、残部がFeおよび不純物からなるとともに、下記式(2)を満足する化学組成を有し、
フェライトとセメンタイトとからなるとともに、前記セメンタイトの60面積%以上が球状化セメンタイトであり、前記球状化セメンタイトの平均粒径が1.0μm以下である鋼組織を有し、
圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向のすべてにおいて、TS≦540MPa、YP≦320MPa、El≧26%、かつ限界曲げ半径≦0.5t(t:板厚)であり、さらに平均r値が0.80以上である機械特性を有することを特徴とする熱間プレス用鋼板。
0.002≦Ti−(48/14)N−(48/32)S≦0.04 (1)
Mn+Cr≦2.0 (2)
ここで、式(1)および(2)における元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示す。 - 前記化学組成が、Feの一部に代えて、Nb:0.03質量%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱間プレス用鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Mo:0.5%以下、Cu:0.5%以下およびNi:0.5%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有するとともに、下記式(3)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の熱間プレス用鋼板。
Mn+Cr+Mo+Cu+Ni≦2.0 (3)
ここで、式(3)における元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示す。 - 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、REM:0.1%以下、Mg:0.005%以下およびCa:0.005%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱間プレス用鋼板。
- 下記工程(A)〜(F)を備えることを特徴とする熱間プレス用鋼板の製造方法:
(A)請求項1〜4のいずれかに記載の化学組成を含有するスラブを1200℃以上として粗熱間圧延を施して粗バーとする粗熱間圧延工程;
(B)前記粗バーを1080℃以上として仕上熱間圧延を施し、かつ850℃超980℃以下で仕上熱間圧延を完了し、熱間圧延鋼板とする仕上熱間圧延工程;
(C)前記熱間圧延鋼板に、前記仕上熱間圧延完了後に70℃/秒以下の平均冷却速度で冷却して、700℃超850℃以下で巻き取る冷却・巻取り工程;
(D)前記冷却・巻取り工程後の熱間圧延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(E)前記酸洗鋼板に冷圧率20%以上50%未満の冷間圧延を施して冷間圧延鋼板とする冷間圧延工程;および
(F)前記冷間圧延鋼板を590℃〜760℃の温度域で0.5〜20時間焼鈍し、その後600℃/時以下の冷却速度で室温まで冷却する焼鈍工程。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の熱間プレス用鋼板を850〜1000℃の温度域に3分間以上保持し、当該保持終了後30秒間以内に700℃以上の温度域でプレスを施し、10℃/秒以上の冷却速度で350℃未満の温度域まで冷却することを特徴とする熱間プレス鋼板部材の製造方法。
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