JP5125652B2 - 低周波振動子及びそれを用いた無指向性型低周波水中音響波送受波器並びに円筒放射型低周波水中音響送受波器 - Google Patents
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例えば、下記特許文献1では、金属製の円筒体の軸方向に複数のスリットを設け、スリットによって形成された振動板の内面あるいは外面に圧電振動子を貼り付けた構造となっており、薄板状の振動板を使用することによって低周波化が図られている(特許文献1の第3頁、第1図並びに第3図等を参照)。
また、本発明の無指向性型低周波水中音響波送受波器並びに円筒放射型低周波水中音響送受波器によれば、上述の低周波振動子を用いて構成したものなので、大幅な低周波化を図ることができ、また、強固な強度及び小型軽量化が実現できる。
本実施形態の低周波振動子1について、図1〜5を用いて以下に詳細に説明する。
図1は本発明の基本要素となる低周波振動子の全体外観図を示すもので、図2は図1に示す低周波振動子の内部の構造を分かりやすくするため、図1の中心軸を通る平面で切断した状態を示す断面図である。図3は低周波振動子に用いられる円板状撓み振動子の外観図であり、図4は本発明の低周波振動子の動作説明図、図5は本発明の低周波振動子の原理説明図である。
また、図1に示す例の低周波振動子1は、3個の鼓状振動子1a、1b、1cを用い、鼓状振動子1aと鼓状振動子1bとの間を金属製線状連結部材3aで連結し、鼓状振動子1bと鼓状振動子1cとの間を金属製線状連結部材3bで連結することにより、各々の鼓状振動子1a、1b、1cを中心軸6で連結した構造とされている(図2の断面図も参照)。
また、図3に示す例では詳細な図示を省略しているが、円板状撓み振動子2a、2bに備えられるドーナツ状薄板圧電振動子9は、開放された上面側が正極、金属製円板10側の下面側が負極とされており、ドーナツ状薄板圧電振動子9の負極と金属製円板10とが電気的に接続された構成とされている。
ここで、図4(b)においては、各鼓状振動子1a、1b、1cに備えられるドーナツ状薄板圧電振動子9に正の電圧が印加されたためにドーナツ状薄板圧電振動子9の径が増大し、これによって各円板状撓み振動子2a、2bが、図示例のように膨らんだ状態を示している。一方、図4(c)においては、各鼓状振動子1a、1b、1cに備えられるドーナツ状薄板圧電振動子9に負の電圧が印加されたためにドーナツ状薄板圧電振動子9の径が縮小し、これによって各円板状撓み振動子2a、2bが、図示例のように凹んだ状態を示している。
このように、低周波振動子1は、図4(a)に示すように、信号線4に印加される電圧がゼロの場合には特に形状変化が起こらず、図4(b)に示すように、正の電圧が印加された場合には中心軸6の軸方向で全体が伸長し、また、図4(c)に示すように、負の電圧が印加された場合には中心軸6の軸方向で全体が収縮する動作を行い、信号線4に印加される電圧に応じて変形動作する。
ここで、図5(a)に示す共振子30は、端面Bが+の方向に変位した際に、端面Cは−(マイナス)の方向に変位して全体が伸び、逆に、端面Bが−(マイナス)の方向に変位した際に、端面Cは+の方向に変位して全体が縮み、伸び縮みの動作をおこなうものである。このような共振子30は、共振時には図5(b)に示すような正弦波の半分の振動分布となり、端面の振幅が最大となる所謂半波長共振を起こす。そして、このような共振子30を2個連結したものが、図5(c)に例示する共振子31であり、3個連結したものが、図5(e)に示す共振子32である。
図5(c)に示すような、共振子30を2個連結してなる共振子31、及び、図5(e)に示すような、共振子30を3個連結してなる共振子32は、これらが一体となって振動するため、それぞれ図5(d)及び図5(f)に示すような振幅分布となって振動し、これらの共振周波数は、図5(a)に示すような共振子30が1個の場合の共振周波数に比べ、それぞれ1/2及び1/3となる。このような原理に基づき、図1に示す本実施形態の低周波振動子1は、1つの鼓状振動子(1a、1b、1c)の共振周波数をf0とした場合、3個の鼓状振動子が連結されていることから全体の共振周波数は(1/3)f0となり、より低周波化される。
これに対し、本発明に係る低周波振動子では、上記構成により、低周波化が容易であり、また、非常に強固な強度が得られるとともに、小型軽量化が可能となる。
本実施形態の無指向性型低周波水中音響送受波器50について、図6及び図7を用いて以下に詳細に説明する。図6は上述した本発明に係る低周波振動子を用いてなる無指向性型低周波水中音響送受波器の全体外観図であり、図7は図6に示すA−A面の断面図である。
なお、以下の説明において、上述した本実施形態の低周波振動子と共通する構成については同じ符号を付与するとともに、その詳しい説明を省略する。
また、図6及び図7に示す例の無指向性型低周波水中音響波送受波器50は、円筒状ケース12の側面12cに水密型コネクタ13が取付けられた構成とされている。
ここで、図10(b)においては、各鼓状振動子51a、51bに備えられるドーナツ状薄板圧電振動子9に正の電圧が印加されたためにドーナツ状薄板圧電振動子9の径が増大し、これによって各円板状撓み振動子2a、2bが膨らみ、これに伴って各鼓状振動子51a、51bが円筒状ケース12内を滑動し、音響油14a、14bが充填された空間を覆う半球状音響ゴムカバー11a、11bが図示例のように膨らんだ状態を示している。一方、図10(c)においては、各鼓状振動子51a、51bに備えられるドーナツ状薄板圧電振動子9に負の電圧が印加されたためにドーナツ状薄板圧電振動子9の径が縮小し、これによって各円板状撓み振動子2a、2bが凹み、これに伴って各鼓状振動子51a、51bが円筒状ケース12内を滑動し、音響油14a、14bが充填された空間を覆う半球状音響ゴムカバー11a、11bが図示例のように凹んだ状態を示している。その他、本実施形態の無指向性型低周波水中音響送受波器50の動作形態については、上述した低周波振動子1と同様である。
本実施形態の円筒放射型低周波水中音響送受波器60について、図8及び図9を用いて以下に詳細に説明する。図8は上述した本発明に係る低周波振動子を用いてなる円筒放射型低周波水中音響送受波器の全体外観図であり、図9は図8に示すB−B面の断面図である。
なお、以下の説明において、上述した本実施形態の低周波振動子あるいは無指向性型低周波水中音響送受波器と共通する構成については同じ符号を付与するとともに、その詳しい説明を省略する。
また、鼓状振動子61a、61bの信号線42は、図2に示す低周波振動子1や、図7に示す無指向性型低周波水中音響送受波器50と同様、信号線取り出し孔82を通じて引き出され、図9に示すような密封端子18に接続されている。また、グランド52は、鼓状振動子61aの金属部分、図示例においては円筒状ケース22aに接続されており、さらに、金属製線状連結部材3aを介して鼓状振動子61bの円板状撓み振動子2に接続されている。
ここで、図11(b)においては、各鼓状振動子61a、61bに備えられるドーナツ状薄板圧電振動子9に正の電圧が印加されたためにドーナツ状薄板圧電振動子9の径が増大し、これによって各円板状撓み振動子2a、2bが膨らみ、これに伴って各鼓状振動子61a、61bが円筒状ケース22a、22b内を滑動し、音響油14が充填された空間を広めて円筒状音響ゴムカバー17が図示例のように凹んだ状態を示している。一方、図11(c)においては、各鼓状振動子61a、61bに備えられるドーナツ状薄板圧電振動子9に負の電圧が印加されたためにドーナツ状薄板圧電振動子9の径が縮小し、これによって各円板状撓み振動子2a、2bが凹み、これに伴って各鼓状振動子61a、61bが円筒状ケース22a、22b内を滑動し、音響油14が充填された空間を狭めて円筒状音響ゴムカバー17が図示例のように膨らんだ状態を示している。その他、本実施形態の円筒放射型低周波水中音響送受波器60の動作形態については、上述した低周波振動子1と同様である。
図12は、本発明に係る低周波振動子の屈曲性を説明するための模式図である。図12(a)は外力が加わらない状態、図12(b)は外力が加わって屈曲した状態を示している。
本発明に係る低周波振動子は、鼓状振動子に備えられる円板状撓み振動子の振動面の間を金属製線状連結部材によって連結したものなので、円板状撓み振動子の振動面及び金属製線状連結部材の弾性により、図12(b)に示すように、容易に屈曲できる構造とされている。このような屈曲性は、上述したような本実施形態の円筒放射型低周波水中音響送受波器60において、その効果を発揮することができ、屈曲性に優れた送受波器を容易に構成することが可能となる。
以下に、本発明に係る低周波振動子及び無指向性型低周波水中音響波送受波器並びに円筒放射型低周波水中音響送受波器の製造方法について、図面を適宜参照しながら説明する。
次いで、図2に示すように、円板状撓み振動子2aの正極側に信号線4を接続し、円板状撓み振動子2aを金属製円筒7の上端7aに取り付け、さらに、円板状撓み振動子2bの正極側にも信号線4を接続し、信号線4を信号線取り出し孔8に挿通させた後、円板状撓み振動子2bを金属製円筒7の下端7bに取付けることにより、鼓状振動子1aを作製する。
まず、無指向性型低周波水中音響送受波器を構成する低周波振動子を、上述と同様の方法によって作製するが、本例においては、図7に示すように、2個の鼓状振動子51a、51bからなる低周波振動子51を作製する。また、この際、図7に示すように、鼓状振動子1a、1bは、外周に環状溝15が形成された金属製円筒71を使用する。また、3個以上の鼓状振動子を連結した低周波振動子を作製する場合には、中心軸6の軸方向において両端側に配される鼓状振動子として外周に環状溝15が形成された金属製円筒71を用い、他の鼓状振動子の金属製円筒は、両端側の鼓状振動子の金属製円筒71の外径よりも小さな外径のものを用いる。
次いで、円筒状ケース12の両端部12a、12bを覆うように半球状音響ゴムカバー11a、11bを取り付け、また、その内部に被せてその内部に音響油14a、14bを注入して充填する。この際の音響油14a、14bの注入方法としては、例えば、低周波振動子51が組み込まれた円筒状ケース12の両端部12a、12bを音響油に浸し、この状態で半球状音響ゴムカバー11a、11bを取り付けるという方法が挙げられるが、特に限定されず、適宜採用することができる。
なお、本実施形態においては詳細な説明並びに図示を省略しているが、半球状音響ゴムカバー11a、11bの内部に注入された音響油14a、14bが外に漏れ出さないように、半球状音響ゴムカバー11a、11bの外側からバンド等を用いて、円筒状ケース12に締め付けることが好ましい。
上記方法により、本実施形態の無指向性型低周波水中音響送受波器50が得られる。
まず、円筒放射型低周波水中音響送受波器を構成する低周波振動子を、上述と同様の方法によって作製するが、本例においては、図9に示すように、2個の鼓状振動子61a、61bからなる低周波振動子61を作製する。この際、上述した無指向性型低周波水中音響送受波器と同様、鼓状振動子61a、61bは、外周に環状溝15が形成された金属製円筒72を使用する。
次いで、鼓状振動子61a、61bの環状溝15に弾性体滑動リング16を嵌めこみ、鼓状振動子61aを円筒状ケース22aに、鼓状振動子61bを円筒状ケース22bに滑り込ませて装入し、信号線42を密封端子18に接続し、グランド線56を鼓状振動子61aの金属部、図示例では円板状撓み振動子2aに接続する
そして、円筒状ケース22aと円筒状ケース22bの間に円筒状音響ゴムカバー17を取り付け、その内部に音響油14を注入して充填する。
上記方法により、本実施形態の円筒放射型低周波水中音響送受波器60が得られる。
本実施形態においては、低周波振動子として、図1及び図2に示すような3個の鼓状振動子1a、1b、1cを用いた低周波振動子1を例に挙げて説明し、また、無指向性型低周波水中音響送受波器として、図6及び図7に示すような2個の鼓状振動子51a、51bを用いた無指向性型低周波水中音響送受波器50を、円筒放射型低周波水中音響送受波器として、図8及び図9に示すような円筒放射型低周波水中音響送受波器60を例に挙げて説明しているが、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
例えば、本発明の低周波振動子、及び、無指向性型低周波水中音響波送受波器並びに円筒放射型低周波水中音響送受波器に用いられる鼓状振動子の数は、上記形態には限定されず、n個の鼓状振動子を、n−1個の金属製線状連結部材で直線状に連結した構成であれば良く、適宜決定することが可能である。
Claims (3)
- ドーナツ状薄板圧電振動子が金属製円板に対して中心点を合わせて貼り合わせられてなる円板状撓み振動子が、金属製円筒の上端および下端の両端に、それぞれの向きを逆向きにすることで、前記ドーナツ状薄板圧電振動子が前記金属性円筒の内部で各々対向するように取付けられてなる鼓状振動子を複数備え、
前記円板状撓み振動子に備えられるドーナツ状薄板圧電振動子は、開放された上面側が正極、金属製円板側の下面側が負極とされ、前記ドーナツ状薄板圧電振動子の負極と金属製円板とが電気的に接続されており、
前記複数の鼓状振動子の何れかに備えられる一方の前記円板状撓み振動子の中心部と、他の前記鼓状振動子に備えられる一方の前記円板状撓み振動子の中心部とを金属製線状連結部材で各々連結することにより、前記複数の鼓状振動子の各々が中心軸上に連結されてなることを特徴とする低周波振動子。 - ドーナツ状薄板圧電振動子が金属製円板に対して中心点を合わせて貼り合わせられてなる円板状撓み振動子が、金属製円筒の上端および下端の両端に、前記ドーナツ状薄板圧電振動子が前記金属性円筒の内部で各々対向するように取付けられてなる鼓状振動子を複数有し、前記複数の鼓状振動子の何れかに備えられる一方の前記円板状撓み振動子の中心部と、他の前記鼓状振動子に備えられる一方の前記円板状撓み振動子の中心部とを金属製線状連結部材で各々連結することにより、前記複数の鼓状振動子の各々が中心軸上に連結され、さらに、中心軸方向において両端側に配される前記鼓状振動子の前記金属製円筒の外周に環状溝を設け、該環状溝に弾性体滑動リングが取り付けられてなる低周波振動子を備え、
前記低周波振動子を、前記弾性体滑動リングにより滑動でき且つ密封できる内径とされた円筒状ケースの内部に装入し、前記円筒状ケースの両端部を半球状音響ゴムカバーで覆うように封止するとともに、前記低周波振動子の両端側に配される前記鼓状振動子と前記半球状音響ゴムカバーとの間に設けられた空間に音響油が注入されてなることを特徴とする無指向性型低周波水中音響波送受波器。 - ドーナツ状薄板圧電振動子が金属製円板に対して中心点を合わせて貼り合わせられてなる円板状撓み振動子が、金属製円筒の上端および下端の両端に、前記ドーナツ状薄板圧電振動子が前記金属性円筒の内部で各々対向するように取付けられてなる鼓状振動子を複数有し、前記複数の鼓状振動子の何れかに備えられる一方の前記円板状撓み振動子の中心部と、他の前記鼓状振動子に備えられる一方の前記円板状撓み振動子の中心部とを金属製線状連結部材で各々連結することにより、前記複数の鼓状振動子の各々が中心軸上に連結され、さらに、中心軸方向において両端側に配される前記鼓状振動子の前記金属製円筒の外周に環状溝を設け、該環状溝に弾性体滑動リングが取り付けられてなる低周波振動子を備え、
前記低周波振動子の両端側に配される前記鼓状振動子を、前記弾性体滑動リングにより滑動でき且つ密封できる内径とされた一対の円筒状ケースの内部に各々装入するとともに、前記一対の円筒状ケースの間には前記低周波振動子を覆うように円筒状音響ゴムカバーを設け、
前記一対の円筒状ケース及び前記円筒状音響ゴムカバーの内部において、前記低周波振動子の両端側に配される前記鼓状振動子の間に設けられる空間に音響油が注入されてなることを特徴とする円筒放射型低周波水中音響送受波器。
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