次の本発明に係るモータ及びその制御装置の様々な実施例について、図面を参照しながら説明する。
図1は単相のリラクタンスモータの例である。2はロータ,3はロータの突極,4はステータの突極であり,その断面EE〜EEは図3(a)の形状となっている。この図では12極の例を示している。6,7はロータの磁束通過用磁路,ステータの磁束通過用磁路であり,その断面ED〜EDは図3(b)の形状となっており,円筒状の曲面が対向していて磁束を通す機能であり,トルクの発生はない。5はステータ巻線であり,円周上に環状の巻線が複数回巻回されている。単純な形状であるため,高占積に巻回することができ,製作性も良い特徴がある。また,この巻線5の形状は,完全に円形である必要はなく,ステータ磁路,ロータ磁路をできるだけ広くとるなどの都合により,ロータ軸方向あるいはラジアル方向に波状にするなどの変形も可能である。1はロータ軸である。
図1のモータは,図3(a)の形状より解るように,電気角で180°の間の吸引力,すなわち電気角で180°の間の正あるいは負のトルクを発生することができるが,残りの180の間は思った方向のトルクを発生することができない。しかし,自動車のエンジンと並列に配置されて使用する場合には,駆動時の補助的なトルク発生,あるいは,制動時の回生すなわち発電が可能であり,エンジンとモータが並列に配置され駆動する,いわゆるハイブリッド自動車の燃費改善などの目的を達成することができる。そして,このような単相のリラクタンスモータは,従来の3相交流モータなどに比較して単純な構成なので,小型,低コストであるという特徴がある。また,単相のモータは連続トルクの発生は難しいが,磁路,巻線の利用率が高く,高効率という特徴もある。
図2の本発明モータの例は,巻線6がロータの凹んだ部分にまで入り込んでいて,導線を太くできるので,銅損を低減でき,高効率化が可能となり,連続定格トルクを増加できる。また,ロータ突極6Hとステータ突極7Hは,図1の6,7とは異なる形状としており,同一の機能ではあるが形状の変形は可能である。
図4の本発明モータの例は,ロータ突極9,ステータ突極10が追加された例である。前記の磁束通過用磁路6,7より磁気抵抗が大きくなるので,トルク定数は減少するが,トルク発生部が2箇所に増えるので,最大トルクは増加する特徴がある。
図5の本発明モータの例は,ロータ突極12,ステータ突極13をロータ軸方向に長くし,誘起する磁束MFの回転変化率d(MF)/dθを大きくし,トルク定数,最大トルクの増加を行った例である。巻線11は,前記変形に伴い,形状を変えている。
次に本発明の実施例である2相のリラクタンスモータを図6に示す。14はA相のロータの突極,15はステータの突極であり,その断面EA〜EAは図7(a)の形状となっている。6,7は,図1のモータ同様で,ロータの磁束通過用磁路,ステータの磁束通過用磁路であり,その断面ED〜EDは図3(b)の形状となっている。3はB相のロータの突極,4はステータの突極であり,その断面EE〜EEは図7(b)の形状となっている。A相とB相との位相差は電気角で180°となっている。
ロータの突極14とステータの突極15に電流起磁力を作用させる場合は,巻線16に通電すればよく,この時,ロータの磁束通過用磁路6とステータの磁束通過用磁路7との間の磁気抵抗が十分に小さければ,ロータの突極3とステータの突極4へはほとんど起磁力が作用しない。ロータの突極3とステータの突極4に電流起磁力を作用させる場合は,同様に,巻線17に通電すればよい。
このような構成で,ロータの回転位置に応じて,A相,B相,A相,B相と順次駆動することにより,丁度A相とB相とが切り替わる点ではトルクを発生することができないが,80%以上の領域でトルクを発生することができる。図6の2相リラクタンスモータは,2相なので連続トルクの出力は難しく,脈動的なトルクとなるが,図1のモータよりトルク脈動が少ない特徴がある。
図6のモータを一方向回転で使用する場合は,ステータ突極かロータ突極のどちらかの形状を変形することにより,2相のモ−タであっても,連続的な回転トルクが得ることができる。その具体的な例は図7の(c)に示すように,ステータ突極15に破線で示す補助的な磁極15Aを追加した形状である。ステータ突極15とロータ突極は,丁度,180°の位相差があり,この状態では励磁しても回転トルクが得られない。しかし,前記の補助的な磁極15Aを追加した形状であれば,大きな起磁力を印加することにより,ロータを反時計回転方向に回転トルクを発生させることができる。この場合には,トルク脈動を大幅に低減することができる。
図8に本発明の他の実施例である3相のリラクタンスモータを示す。18はA相のロータの突極,19はステータの突極であり,その断面EA〜EAは図9(a)の形状となっている。20はB相のロータの突極,21はステータの突極であり,その断面EB〜EBは図9(b)の形状となっている。22はC相のロータの突極,23はステータの突極であり,その断面EC〜ECは図9(c)の形状となっている。断面ED〜EDの部分は図9(d)の形状の磁束通過用磁路である。図1の単相リラクタンスモータと図6の2相リラクタンスモータを合成し,ステータとロータとの位相関係を,それぞれ120°の位相差となるように配置した構造である。ただし,この場合は前記両モータの間の相互作用を排除するため,前記両モータの間は磁気的に分離して配置する必要がある。
このような構成で,ロータの回転位置に応じて,A相,B相,C相と順次駆動することにより連続的なトルクの発生が可能であり,トルクリップルもモータの設計次第で低減が可能である。トルクの方向も正および負のトルク生成が可能であり,力行運転,回生運転が可能である。また,このモータの動作は,一つの相がトルクを発生できる範囲は,各突極の形状にもよるが突極幅が電気角で180°の場合は,180°の間において駆動可能であり,図8のモータではA相,B相,C相と順次駆動してトルクリップルの小さい平滑な駆動が可能である。また,この場合には,各相が120°以上の範囲において駆動することが可能なので,2相の境界部近傍では同時に2相を駆動できる領域もある。
次に,図8のモータの配置構成を変えた本発明例を図10に示す。図8のモータに比較して,A相とB相のロータの突極を同一形状として隣接させている。27はA相とB相共通のロータの突極である。28はA相のステータの突極であり,その断面EA〜EAは図11(a)の形状となっている。29はB相のステータの突極であり,その断面EB〜EBは図11(b)の形状となっている。
次に,図8のモータの配置構成を,図10とは逆に,ロータは図8と同じで,ステータ側の分離されたバックヨークを磁気的に接続することも,原理的には,可能である。しかし,この場合において,ロータは2個に磁気的に分離されている必要があるので,ロータ軸1は非磁性体であることが好ましい。このように,各磁極形状は各種の等価的な変形が可能である。
図12の(a)に本発明の他の実施例である3相のリラクタンスモータを示す。31はA相のロータの突極,32はステータの突極であり,その断面EA〜EAは図9(a)の形状となっている。35はB相のロータの突極,36はステータの突極であり,その断面EB〜EBは図9(b)の形状となっている。37はC相のロータの突極,38はステータの突極であり,その断面EC〜ECは図9(c)の形状となっている。33はロータの磁束通過用磁路,34はステータの磁束通過用磁路で,断面ED〜EDの部分は図9(d)の形状の磁束通過用磁路である。各相のロータ突極とステータ突極との相対位相は,A相,B相,C相において電気角で120°の位相差となっている。39はA相用の環状形状の巻線,40はB相用の環状形状の巻線,41はC相およびB相用の環状形状の巻線である。
このような構成で,ロータの回転位置に応じて,A相,B相,C相と順次駆動することにより連続的なトルクの発生が可能であり,トルクリップルもモータの設計次第で低減が可能である。A相の駆動は,巻線39に電流を通電することにより実現される,即ち,ロータ突極31,ステータ突極32,磁束通過用磁路36,46と磁束が誘起され一巡し,ロータ突極31とステータ突極32の間で吸引力が発生し,トルクが生成される。B相の駆動は巻線40と巻線41の両方へ逆方向の電流を通電することにより実現する。ロータ突極35,ステータ突極36,磁束通過用磁路36,46と磁束が誘起され一巡し,ロータ突極35とステータ突極36の間で吸引力が発生し,トルクが生成される。この時,C相のロータ突極37,ステータ突極38へは巻線40と巻線41に逆方向に通電される電流の合計が印加されるので,結局,C相へは起磁力が印加されず,トルクが生成されないことになる。C相の駆動は,巻線41に電流を通電することにより実現される,即ち,ロータ突極38,ステータ突極39,磁束通過用磁路36,46と磁束が誘起され一巡し,ロータ突極38とステータ突極39の間で吸引力が発生し,トルクが生成される。なおここで,磁束通過用磁路36と46の間は常に対向面積が広く磁気抵抗が小さいことを前提としている。
このように,ロータの回転位置に応じて,A相,B相,C相と順次駆動することによりトルクの方向も正および負のトルク生成が可能であり,力行運転,回生運転が可能である。また,このモータの動作は,一つの相がトルクを発生できる範囲は,各突極の形状にもよるが突極幅が電気角で180°の場合は,180°の間において駆動可能であり,図8のモータではA相,B相,C相と順次駆動してトルクリップルの小さい平滑な駆動が可能である。また,この場合には,各相が120°以上の範囲において駆動することが可能なので,2相の境界部近傍では同時に2相を駆動できる領域もある。また,図12の(a)では各突極のロータ軸方向幅が比較的小さな例を図示しているが,この磁極幅は広くした方がトルクを大きくできる。
なお,A相用,B相用,C相用の巻線39,40,41の形状は,図12の(a)で簡素な環状形状の巻線を示したが,種々の変形が可能であり,ステータ磁極の凹凸形状に合わせて蛇行した環状形状の巻線,一部の巻線がステータの外周部に配置された形状の巻線,分割されていて半周の折返し構造の巻線などが等価的に実現でき,本発明に含まれるものである。ステータコア,ロータコアについても種々の変形が可能である。
図79に,図12の(a)のモータモデルへ前記の方法で,ロータ回転位置に同期して順次,A相,B相,C相と制御する例について,コンピュータで非線形有限要素法を使用して,モータの3次元形状の磁界解析を行い,モータの出力トルクを計算した例を示す。モータ外径は165mm,各相のステータ突極のロータ軸方向幅15mm,円周方向のステータ突極の数12,エアギャップ0.5mmとした例である。横軸は電気角で,縦軸はモータの出力トルクである。トルクT−A,T−B,T−Cは,それぞれ,A相,B相,C相について該当する巻線へ電流を電気角で120°の範囲だけ流し,ロータ突極とステータ突極とが発生するトルクである。特に,B相のトルクT−Bについては,2つの巻線40,41へ逆向きの電流を流し,差動的に動作させているが,理論通りのトルクが得られることが確認できる。なお,電気角で120°周期のトルクリップルが見られるが,この程度であれば使用可能な用途も多い。また,このトルクリップルを低減する手段として,モータの磁極形状を改良する方法,各相の電流を電気角で120°〜180°の範囲でも流すことによりトルクの低下を低減する方法,電流の振幅で補正する制御的な方法など,多くのトルクリップル低減方法があり,改良が可能である。
図12の(b)は本発明の他の実施例である。図12の(a)に比較し,48,49の磁束通過用磁路がロータ軸方向端に配置されている。モータ内部に位置するロータ突極44,46を駆動する場合には,図12の(a)のロータ突極35の駆動と同様に,対象突極のロータ軸方向前後の巻線51,52に,それぞれ,正の電流と負の電流を通電すれば,その対象突極にだけトルクを発生させることができる。このように,電流の通電方法が変わるが,図12の(a)のモータ同様に,A相,B相,C相と順に平滑な駆動が可能である。
また,図12の(a)において,A相の巻線39,ロータ突極31,ステータ突極32を排除し,B相とC相の相対的位相差を120°から180°に変更すれば,B相とC相の構成による2相のリラクタンスモータを実現することができる。図6に示す2相リラクタンスモータに比較して磁束通過用磁路36,46の位置がロー多軸方向の中央部からロータ軸方向の端へ移動したことになる。電流の駆動方法は,図12の(a)の3相モータで説明したように,B相が差動的に駆動されることになる。
図13に本発明の他の実施例である3相のリラクタンスモータを示す。53はA相のロータの突極,54はステータの突極であり,その断面EA〜EAは図9(a)の形状となっている。55はB相のロータの突極,56はステータの突極であり,その断面EB〜EBは図9(b)の形状となっている。57はC相のロータの突極,58はステータの突極であり,その断面EC〜ECは図9(c)の形状となっている。各相のロータ突極とステータ突極との相対位相は,A相,B相,C相において電気角で120°の位相差となっている。59はA相用の環状形状の巻線,60はC相用の環状形状の巻線である。B相のロータ突極55を駆動する場合は,A相用の巻線59とC相用の巻線60へそれぞれ逆方向の電流を流す。
このような構成で,ロータの回転位置に応じて,A相,B相,C相と順次駆動することによりトルクの発生が可能である。ただし,図12の(a)の磁束通過用磁路33と34のような磁路はなく,駆動対象としている突極を通る磁束はその他の突極を通って一巡することとなり,前記その他の突極は逆方向のトルクを生成する関係となることから,トルク発生が困難な場所がある。また,トルクの脈動が発生する。
このトルクの脈動は,図14の(a)の横断面図の拡大図に示す,ステータの円周方向突極幅SB1とロータの円周方向突極幅RB1およびそれぞれのロータ軸方向形状により変化する。これらのSB1,RB1の大きさは,用途,求められる特性により選択できる。
特に,例えば図14の(a)の矢印に示す,一方向の連続的なトルクを重視する場合には,図14の(b)のエアギャップ面から見たロータ突極55,ステータ突極56の直線展開図に示すように,各突極のロータ方向磁極幅に狭い部分と広い部分を作ればよい。すなわち,トルクを発生する部位の突極のロータ軸方向幅は狭く,その他の突極のロータ軸方向幅を広くすれば良い。そのような構成とすることにより,一巡するトルクを発生する磁束の大きさは同じなので,駆動する部分の磁束密度は高く,その他の部分の磁束密度は低くなり,所望の回転方向のトルクを確実に得ることが可能となる。図14の(b)の状態では,A相のロータ突極53はステータ突極と電気角で120°対向しているが,その対向面積はC相のロータ突極57とステータ突極58との対向面積より小さく,A相を励磁することにより反時計回転方向の回転トルクが得られる。
図14の(b)に示した方法は,一方向のトルク発生について説明しており,回転方向については両方向の回転で機能させることができる。例えば,エアコンの圧縮機を駆動する用途では,反時計回転方向の力行運転で,主に,運転することができる。また,内燃機関に機械的に接続されて発電機として使用する場合は,時計回転方向に回生運転させ,ほぼ連続的なトルクを発生することができる。
図6の2相モータ,図13,図14の3相モータはいずれも巻線が2個で運転できるので,後に各種の駆動回路を説明するように,電流,電圧の駆動回路が簡素にすることができ,電力素子の数を少なくでき,モータと駆動回路の合計において低コストなことが最大の魅力である。また,常に半分の部分が駆動に寄与できるので,単位体積当たりのトルクの点でも優れたモータであると言える。
図15の(a)に本発明の他の実施例である4相のリラクタンスモータを示す。151はA相のロータの突極,152はステータの突極であり,その断面KA〜KAは図9(a)の形状となっている。153はB相のロータの突極,154はステータの突極であり,断面KB〜KBは前記断面KA〜KAに対してロータとステータの相対的関係が電気角で90°の位相差を持っている。155はC相のロータの突極,156はステータの突極であり,断面KC〜KCは前記断面KA〜KAに対してロータとステータの相対的関係が電気角で180°の位相差を持っている。157はD相のロータの突極,158はステータの突極であり,断面KD〜KDは前記断面KA〜KAに対してロータとステータの相対的関係が電気角で270°の位相差を持っている。159はステータの磁束通過用磁路,160はロータの磁束通過用磁路で,断面KP〜KPの部分は図9(d)の形状の磁束通過用磁路である。141,142,143,144はステータ磁極間に配置された巻線であり,これらの巻線の電流により各突極の磁極部に起磁力が作用し,回転トルクが生成される。
ロータ回転位置に同期して,A相,B相,C相,D相と順次駆動して,ロータにトルクを発生することができる。例えば,A相のロータ突極151とステータ突極152が図7の(b)の関係にある時,巻線141へ電流を通電すると,電磁気的な吸引力により,ロータに反時計回転方向のトルクを発生することができる。B相が図7の(b)の関係にあるときは,巻線141と142へ逆方向の電流を通電することにより,ロータ突極153とステータ突極154の間に吸引力が発生し,ロータに反時計回転方向のトルクを発生することができる。C相が図7の(b)の関係にあるときは,巻線143と144へ逆方向の電流を通電することにより,ロータ突極155とステータ突極156の間に吸引力が発生し,ロータに反時計回転方向のトルクを発生することができる。D相が図7の(b)の関係にあるときは,巻線144へ電流を通電することにより,ロータ突極157とステータ突極158の間に吸引力が発生し,ロータに反時計回転方向のトルクを発生することができる。
それぞれの相が電気角で180°に近い範囲でトルクを発生させることができるので,大半の区間では4相の内の2相がトルクを発生するように駆動制御することが可能である。また,後記するように,電流と電圧の駆動回路が簡略であり,モータと駆動装置の両方でのコスト的な特徴がある。なお,図15の(a)の例では,ステータの磁束通過用磁路159とロータの磁束通過用磁路160はロータ軸方向の中央部に配置しているが,この位置を変更することもできる。
次に,本発明の4相のリラクタンスモータの例を図15の(b)に示す。これは,図6に示す2相モータを,ロータ軸1に2組,位相差を90°の位相差を持たせて配置した構成のモータである。
161はA相のロータの突極,162はステータの突極であり,その断面KA〜KAは図9の(a)の形状となっている。153はB相のロータの突極,154はステータの突極であり,断面KB〜KBは前記断面KA〜KAに対してロータとステータの相対的関係が電気角で90°の位相差を持っている。155はC相のロータの突極,156はステータの突極であり,断面KC〜KCは前記断面KA〜KAに対してロータとステータの相対的関係が電気角で180°の位相差を持っている。157はD相のロータの突極,158はステータの突極であり,断面KD〜KDは前記断面KA〜KAに対してロータとステータの相対的関係が電気角で270°の位相差を持っている。159はステータの磁束通過用磁路,160はロータの磁束通過用磁路で,断面KP〜KPの部分は図9の(d)の形状の磁束通過用磁路である。141,142,143,144はステータ磁極間に配置された巻線であり,これらの巻線の電流により各突極の磁極部に起磁力が作用し,回転トルクが生成される。
ロータ回転位置に同期して,A相,B相,C相,D相と順次駆動して,ロータにトルクを発生することができる。例えば,A相のロータ突極161とステータ突極162が図7の(b)の関係にある時,巻線173へ電流を通電すると,電磁気的な吸引力により,ロータに反時計回転方向のトルクを発生することができる。B相が図7の(b)の関係にあるときは,巻線174へ電流を通電することにより,ロータ突極163とステータ突極164の間に吸引力が発生し,ロータに反時計回転方向のトルクを発生することができる。C相が図7の(b)の関係にあるときは,巻線175へ電流を通電することにより,ロータ突極165とステータ突極166の間に吸引力が発生し,ロータに反時計回転方向のトルクを発生することができる。D相が図7の(b)の関係にあるときは,巻線176へ電流を通電することにより,ロータ突極167とステータ突極168の間に吸引力が発生し,ロータに反時計回転方向のトルクを発生することができる。
このように,図15の(b)のモータは,正方向回転,逆方向回転,力行,回生の運転を常時2相,あるいは1相がトルクを発生し,連続的に運転することができる。また,図15の(b)の構成は,各相を駆動する時に,それぞれの相を駆動する電流は該当する1個の巻線に電流を通電するだけで良く,電流の駆動効率が高く,銅損の小さなモータの一つである。また,図15の(b)のモータのA,B,C,Dの相の配置は,限定されるものではなく,配置を換えても良い。また,図15の(b)のモータの配置構成は,紙面で上下に磁気的に分離した項であるが,ロータ側あるいはステータ側のどちらかを磁気的に接続することも原理的には可能である。なお,ステータ側の上下のバックヨーク部を結合する場合は,ロータは2個に磁気的に分離されている必要があるので,ロータ軸1は非磁性体であることが好ましい。
また,本発明の4相の磁束通過用磁路を持つリラクタンスモータは,図15の(a),(b)の構成のほかに,図1〜14に示したモータ構成およびその変形を組み合わせた構成で,各相の位相差をほぼ90度とすることにより実現できる。また,4相以上の多相のモータを図15の(a),(b)の構成に相を追加し,それぞれの相対位相を相数に応じて変えることにより,5相以上の多相モータを実現することもできる。
図16に本発明の他の実施例である4相のリラクタンスモータを示す。61はA相のロータの突極,62はステータの突極であり,その断面EA〜EAは図9(a)の形状となっている。63はB相のロータの突極,64はステータの突極であり,断面EH〜EHは前記断面EA〜EAに対してロータとステータの相対的関係が電気角で90°の位相差を持っている。65はC相のロータの突極,66はステータの突極であり,断面EI〜EIは前記断面EA〜EAに対してロータとステータの相対的関係が電気角で180°の位相差を持っている。67はD相のロータの突極,68はステータの突極であり,断面EJ〜EJは前記断面EA〜EAに対してロータとステータの相対的関係が電気角で270°の位相差を持っている。
69,70,71はステータ磁極間に配置された巻線であり,これらの巻線の電流により各突極の磁極部に起磁力が作用し,回転トルクが生成される。
各突極の円周方向の幅は,図15の(a)の横断面図の拡大図に示すように,選択することができる。連続的に回転できる論理的に最も小さいステータ磁極幅SB1,ロータ磁極幅RB1は120°である。論理的に連続トルクの発生が可能なステータ磁極幅SB1,ロータ磁極幅RB1は,120°〜240°まで可能である。最適な磁極幅は,モータ全体の磁気インピーダンスと各巻線の電流で出力トルクが変化するので,求められるモータ仕様によってそれらの最適値は変わる。
図17は図16に示すモ−タのステータとロータ間のエアギャップ部近傍のステータ突極の円周方向形状を直線状に展開し,その隣にロータ突極の円周方向形状を直線状に展開し併記した図である。例えば,図17のA相のステータ突極62の形状はその隣に併記しているロータ突極61の形状と対向している状態を示す。図17の横軸は電気角である。図17の紙面の上側からA相,B相,C相,D相の順に各相のステータ突極とロータ突極が配置されていて,それらの間に環状巻線69,70,71が配置されている。そして,ロータが回転するときには,図17のロータ突極61,63,65,67が紙面で左右に移動する関係となっている。
今,図17の状態において,ロータが紙面の右から左の方向へトルクを発生する第1の方法について説明する。図の状態において,ステータ突極66とロータ突極65との間の吸引力を利用する場合,巻線70と巻線71に逆方向に電流を通電すれば,ステータ磁極66を通る磁束がステータのバックヨークを通り,その他のステータ突極とロータ突極を通り,ロータのバックヨークを通ってロータ突極63へ戻ってくる。この状態においてはステータ突極66とロータ突極65の間の磁束密度が他よりも最も高い値となるので,モータ全体として,ロータが紙面の右から左の方向へトルクを発生することになる。
次に,図17における第2のトルクを発生する方法について説明する。図の状態において,ステータ突極64とロータ突極63との間の吸引力を利用する場合,巻線69と巻線70へ逆方向の電流を通電すれば,ステータ磁極64を通る磁束がステータのバックヨークを通り,その他のステータ突極とロータ突極を通り,ロータのバックヨークを通ってロータ突極63へ戻ってくる。この状態においても,ステータ突極64とロータ突極63の間の磁束密度が最も高い値となるので,モータ全体として,ロータが紙面の右から左の方向へトルクを発生することになる。
次に,図17における第3のトルクを発生する方法について説明する。図の状態において,ステータ突極66とロータ突極65との間の吸引力とステータ突極64とロータ突極63との間の吸引力を利用する方法とがあるので,ステータ磁極66を通る磁束がステータのバックヨークを通り,ステータ突極64とロータ突極ロータ突極63を通り,ロータのバックヨークを通ってロータ突極65へ戻ってくるように各巻線の電流の値を決めればよい。この時,ステータ突極66とロータ突極65を通る磁束が発生するトルクの方向とステータ突極64とロータ突極63を通る磁束が発生するトルクの方向とは同一方向であり,一巡する磁束が2個所で同一方向トルクを発生することになり,効果的である。
また,この時,ステータ突極64とロータ突極63とがエアギャップを介して対向する部分の面積をTK43とし通過する磁束をMF43とし,ステータ突極66とロータ突極65とがエアギャップを介して対向する部分の面積をTK65とし通過する磁束をMF65とすると,面積TK43は面積TK65より大きく,前記磁束MF43は前記磁束MF65より大きくなるので,その差分の磁束MFD135≒MF43−MF65は他のステータ突極62,68を通ってロータのバックヨークを通ってロータ突極63へ戻ってくるように作用する。
この時の具体的な電流の例としては,巻線70に電流C70を通電し,巻線69と巻線71へは電流C70とは逆方向の電流C69とC71とを通電すればよい。この時,これらの電流C70,C69,C71の振幅は,単純論理的には,電流C70の振幅が電流C69の振幅と電流C71振幅の和であることが好ましい。例えば,電流C69の振幅と電流C71の振幅とが同じであれば,C70の電流振幅は電流C69の電流振幅の2倍となり,C70=−C69−C71となる。
なお,各相の電流値はこれらの値に限定されるわけではなく,前記趣旨の範囲で各電流C69,C70,C71の値は多少の自由度があり,各磁極部の各磁気抵抗と各電流が発生する起磁力で決められる。従って,トルクを発生させたい磁極に大きな起磁力が作用するように各相の電流値を決定すればよい。
図16,17に示す4相のリラクタンストルクを利用するモータは,各相のステータ突極とステータ突極とが対向していて円周方向に複数配置された磁気抵抗部がロータ軸方向に4相分の4組が配置される。この時,それぞれの磁気抵抗はロータの回転とともに変化し,トルクの発生方向は正方向と負方向の2値がある。そして,各巻線は4組の各ステータ突極のロータ軸方向の間に3個配置されている。図16,17に示すモータは,このように,受動素子であって,回転位置とともに変化し,かつ極性がある前記磁気抵抗と3組の電流との関係で電磁気的作用を行い,トルクを発生する機構であり,幾通りもの駆動方法が可能である。しかし,簡単に考えれば,ある特定のロータ回転位置に置いては,3個の巻線の3個の電流値を決定するだけである。そして,各ロータ回転位置において,3個の巻線の3個の電流値を決定すれば,この4相のリラクタンストルクを利用するモータを全周にわたって回転することができる。前記の第1〜第3のトルクを発生する方法では,その代表的な例を示したが,その時に3個の電流値を多少変化させてもおおよそのトルク発生は可能であり,それらも本発明に含むものである。
また,ステータ突極SJXとその対向するロータ突極RJXとが,トルクを発生させたい方向とは逆の方向の吸引力を発生する位置関係にある場合,SJXとRJXとの間にもある程度の磁束が発生し逆方向のトルクが発生することになる。モータが最終的に発生するトルクは,発生させたい方向のトルクとこの逆方向トルクの差のトルクとなる。
さらには,図16に示すモータの駆動法としては,前記の第1の方法,第2の方法,第3の方法を,ロータの回転位置に応じて切り替えながら制御することも可能であり,より効果的な方法である。
また,前記の環状巻線69,70,71の各電流通電方向は,各々,正方向,逆方向,正方向と交互の電流方向とすれば,図16,図17に示すモータの前記の説明に合致する電流を,各巻線についてそれぞれ一方向の電流で制御することができ,電流駆動の都合上,都合がよい。具体的には,制御装置の簡素化ができ,制御装置の小型化と低コスト化が実現できる。なお,各電流の通電方法については,後に,モータの制御装置の構成例とその動作例とともに示す。
次に,図16のモータ,図17の各ロータ突極とステータ突極の関係における第3のトルクを発生する方法において,二つの相が同一の方向にトルクを発生させる方法について考えてみる。この時,大半の領域において,二つの相の両方がトルクを発生できない領域が少しあり,その程度は各突極の形状にも左右される特性となっている。片方向回転の使用が主である用途では,特性を改善する方法がある。例えば,図17においてステータ突極を紙面で右側から左側へ駆動する場合は,ステータ突極68のように紙面で左側を太くし,ロータ突極67のように紙面で右側を太くすればよい。このようにすれば,二つの相の片方のトルクが小さくなる領域において,駆動しようとするステータ突極とロータ突極との対向面積より,駆動されない他の2組のステータ突極とロータ突極の対向面積の方が広くなり,その磁気的なインピーダンス差により磁束密度の差が発生し,正トルクと負トルクの差が大きくなり,結果として,モータの出力トルクを大きくすることができる。
次に,図18のモータは,本発明の5相のモータの例である。図16に比較し,ステータ突極,ロータ突極,巻線がそれぞれ1個ずつ増加している。181はA相のロータの突極,182はステータの突極であり,その断面EA〜EAは図9(a)の形状となっている。183はB相のロータの突極,184はステータの突極であり,断面EK〜EKは前記断面EA〜EAに対してロータとステータの相対的関係が電気角で72°の位相差を持っている。185はC相のロータの突極,186はステータの突極であり,断面EL〜ELは前記断面EA〜EAに対してロータとステータの相対的関係が電気角で144°の位相差を持っている。187はD相のロータの突極,188はステータの突極であり,断面EM〜EMは前記断面EA〜EAに対してロータとステータの相対的関係が電気角で216°の位相差を持っている。189はE相のロータの突極,190はステータの突極であり,断面EN〜ENは前記断面EA〜EAに対してロータとステータの相対的関係が電気角で288°の位相差を持っている。
19A,19B,19C,19Dはステータ磁極間に配置された巻線であり,これらの巻線の電流により各突極の磁極部に起磁力が作用し,回転トルクが生成される。
各突極の円周方向の幅は,図15の(a)の横断面図の拡大図に示すように,選択することができる。連続的に回転できる論理的に最も小さいステータ磁極幅SB1,ロータ磁極幅RB1は120°である。論理的に連続トルクの発生が可能なステータ磁極幅SB1,ロータ磁極幅RB1は,120°〜240°まで可能である。最適な磁極幅は,モータ全体の磁気インピーダンスと各巻線の電流で出力トルクが変化するので,求められるモータ仕様によってそれらの最適値は変わる。
図19は図18に示すモ−タのステータとロータ間のエアギャップ部近傍のステータ突極の円周方向形状を直線状に展開し,その隣にロータ突極の円周方向形状を直線状に展開し並記した図である。例えば,図19のA相のステータ突極182の形状はその隣に並記しているロータ突極181の形状と対向している状態を示す。図19の横軸は電気角である。図19の紙面の上側からA相,B相,C相,D相,E相の順に各相のステータ突極とロータ突極が配置されていて,それらの間に環状巻線19A,19B,19C,19Dが配置されている。そして,ロータが回転するときには,図19のロータ突極181,183,185,187,189が紙面で左右に移動する関係となっている。
今,図19の状態において,ロータが紙面の右から左の方向へトルクを発生する第1の方法について説明する。図の状態において,ステータ突極186とロータ突極185との間の吸引力F185を利用する場合,巻線19Bと巻線19Cへ逆方向に電流を通電すれば,ステータ磁極186を通る磁束がステータのバックヨークを通り,その他のステータ突極とロータ突極を通り,ロータのバックヨークを通ってロータ突極185へ戻ってくる。この状態においてはステータ突極186とロータ突極185の間の磁束密度が他よりも最も高い値となるので,モータ全体として,ロータが紙面の右から左の方向へトルクを発生することになる。
次に,図19における第2のトルクを発生する方法について説明する。図の状態において,ステータ突極184とロータ突極183との間の吸引力F183を利用する場合,巻線19Aと巻線19Bへ逆方向の電流を通電すれば,ステータ磁極184を通る磁束がステータのバックヨークを通り,その他のステータ突極とロータ突極を通り,ロータのバックヨークを通ってロータ突極183へ戻ってくる。この状態においても,ステータ突極184とロータ突極183の間の磁束密度が最も高い値となるので,モータ全体として,ロータが紙面の右から左の方向へトルクを発生することになる。
次に,図19における第3のトルクを発生する方法について説明する。図の状態において,ステータ突極186とロータ突極185との間の吸引力とステータ突極184とロータ突極183との間の吸引力を利用する方法とがあるので,ステータ磁極186を通る磁束がステータのバックヨークを通り,ステータ突極184とロータ突極ロータ突極183を通り,ロータのバックヨークを通ってロータ突極185へ戻ってくるように各巻線の電流の値を決めればよい。この時,ステータ突極186とロータ突極185を通る磁束が発生するトルクの方向とステータ突極184とロータ突極183を通る磁束が発生するトルクの方向とは同一方向であり,一巡する磁束が2個所で同一方向トルクを発生することになり,効果的である。
また,この時,ステータ突極184とロータ突極183とがエアギャップを介して対向する部分の面積をTK183とし通過する磁束をMF183とし,ステータ突極186とロータ突極185とがエアギャップを介して対向する部分の面積をTK185とし通過する磁束をMF185とすると,面積TK183は面積TK185より大きく,前記磁束MF183は前記磁束MF185より大きくなるので,その差分の磁束MFD235≒MF183−MF185は他のステータ突極182,188,190を通ってロータのバックヨークを通ってロータ突極183へ戻ってくるように作用する。
この時の具体的な電流の例としては,巻線19Bに電流C19Bを通電し,巻線19Aと巻線19Cへは電流C19Bとは逆方向の電流C19AとC19Cとを通電すればよい。この時,これらの電流C19A,C19B,C19Cの振幅は,単純論理的には,電流C19Bの振幅が電流C19Aの振幅と電流C19Cの振幅の和であることが好ましい。すなわち,C19B=−C19A−C19Cとなる。例えば,電流C19Aの振幅と電流C19Cの振幅とが同じであれば,C19Bの電流振幅は19Aの電流振幅の2倍となる。
なお,各相の電流値はこれらの値に限定されるわけではなく,前記趣旨の範囲で各電流C19A,C19B,C19Cの値は多少の自由度があり,各磁極部の各磁気抵抗と各電流が発生する起磁力で決められる。従って,トルクを発生させたい磁極に大きな起磁力が作用するように各相の電流値を決定すればよい。
また,ステータ突極SJXとその対向するロータ突極RJXとが,トルクを発生させたい方向とは逆の方向の吸引力を発生する位置関係にある場合,SJXとRJXとの間にもある程度の磁束が発生し逆方向のトルクが発生することになる。モータが最終的に発生するトルクは,発生させたい方向のトルクとこの逆方向トルクの差のトルクとなる。
図19の第3の方法の時,前記の環状巻線19A,19B,19Cの各電流通電方向は,各々,逆方向,正方向,逆方向と交互の電流方向とすれば,図18,図19に示すモータの前記の説明に合致する電流を,各巻線についてそれぞれ一方向の電流で制御することができ,電流駆動の都合上,都合がよい。具体的には,制御装置の簡素化ができ,制御装置の小型化と低コスト化が実現できる。なお,各電流の通電方法については,後に,モータの制御装置の構成例とその動作例とともに示す。
次に,図19における第4のトルクを発生する方法について説明する。図の状態において,ステータ突極186とロータ突極185との間の吸引力F185とステータ突極184とロータ突極183との間の吸引力F183とに加え,ステータ突極182とロータ突極181との間の吸引力F181も利用する方法である。
今,ステータ突極182とロータ突極181とがエアギャップを介して対向する部分の面積をTK181とし,通過する磁束をMF181とする。リラクタンストルクは作用する磁束の方向には関係なく発生するので,前記磁束MF181,MF183,MF185の極性を選択する自由度がある。しかし,図19の回転位置の状態では,磁束MF181とMF183が同一の磁束方向ではそれらの磁束の経路を考えると,負のトルクを発生するロータ突極188,189を通る磁束が増加するので,不可能ではないが所望のトルク発生上効果的ではない。そこで,この第4の方法では,MF183を正方向とし,MF181とMF185を負方向とする方法について考える。なお,この3つの磁束で正の値と負の値とでバランスがとれない磁束分は,その他のステータ突極とロータ突極を通過する。
図19の第4の方法の具体的な例は,図19の第3の方法における差分の磁束MFD235≒MF183−MF185がステータ突極182を通ってロータのバックヨークを通ってロータ突極183へ戻ってくるように各相の電流を制御するものである。そのように制御すれば,逆方向のトルクを発生するステータ突極188,190を通る磁束が低減するので,モータ全体のトルクを増加することができる。
この時の具体的な電流の例は,巻線19Bに電流C19Bを通電し,巻線19Aと巻線19Cへは電流C19Bとは逆方向の電流C19AとC19Cとを通電する。
今,ロータ突極181とステータ突極182に印加したい起磁力の電流絶対値をHH12,ロータ突極183とステータ突極184に印加したい起磁力の電流絶対値をHH34,ロータ突極185とステータ突極186に印加したい起磁力の電流絶対値をHH56とすると,各電流は次のようになる。
C19A=−HH12−HH34
C19B=HH34+HH56
C19C=−HH56
また,図19において,紙面でステータ突極182の上側に他の磁気回路MGCがある場合には,ステータ突極182と磁気回路MGCとの間に流すべき電流C19Zは次のようになる。
C19Z=HH12
これらの式の関係は,あるロータ突極とステータ突極との間に印加したい起磁力を得るためには,図19の紙面において,そのロータ突極とステータ突極との上下に同一振幅で逆方向の電流を流す関係になっている。例えば,ロータ突極183とステータ突極184に印加したい起磁力の電流絶対値はHH34なので,紙面でその上下に−HH34と+HH34を通電し,ロータ突極185とステータ突極186に印加したい起磁力の電流絶対値はHH56なので,紙面でその上下に+HH56と−HH56を通電する。そしてこの時,電流C19Bとしてこれらの電流合成値であるHH34+HH56の電流が流されることになる。
また,この時,各ステータ突極を通る磁束量のバランスを考えると,前記電流絶対値HH12を他の電流絶対値より相対的に小さめにした方が,逆方向のトルクを発生するステータ突極188,190を通る磁束が低減するので,モータ全体のトルクを増加することができる。
図19の第4の方法の時,前記の環状巻線19A,19B,19Cの各電流通電方向は,各々,逆方向,正方向,逆方向と交互の電流方向とすれば,図18,図19に示すモータの前記の説明に合致する電流を,各巻線についてそれぞれ一方向の電流でモータを制御することができ,電流駆動の都合上,都合がよい。具体的には,制御装置の簡素化ができ,制御装置の小型化と低コスト化が実現できる。なお,各電流の通電方法については,後に,モータの制御装置の構成例とその動作例とともに示す。
次に,図19における第5のトルクを発生する方法について説明する。図の状態において,ステータ突極186とロータ突極185との間の吸引力F185とステータ突極184とロータ突極183との間の吸引力F183とに加え,ステータ突極182とロータ突極181との間の吸引力F181も利用する方法である。この点では前記の第4の方法と同じであるが,この第5の方法ではステータ突極182の磁束の方向を逆方向にする。このことにより,ステータの正方向磁束と負方向磁束とのバランスが改善し,モータの総合トルクを増加することができる。ただし,後で説明するように,電流の制御は,一つの巻線について正と負の両方の電流を制御する必要があるので,制御装置が少し複雑となり,コストは増加する。
今,ステータ突極182とロータ突極181とがエアギャップを介して対向する部分の面積をTK181とし,通過する磁束をMF181とする。リラクタンストルクは作用する磁束の方向には関係なく発生するので,前記磁束MF181,MF183,MF185の極性を選択する自由度がある。ここで,この第5の方法では,MF183とMF185とを正方向とし,MF181を負方向とする方法について考える。なお,この3つの磁束で正の値と負の値とでバランスがとれない磁束分は,その他のステータ突極とロータ突極を通過する。
図19の第5ステータ突極184,186を通る磁束MF183,MF185がステータ突極182を通ってロータのバックヨークを通ってロータ突極183へ戻ってくるように各相の電流を制御するものである。そのように制御すれば,逆方向のトルクを発生するステータ突極188,190を通る磁束が前記の第4の方法よりも低減するので,モータ全体のトルクを増加することができる。
この時の具体的な電流の例は,巻線19Aに電流C19AAを通電し,巻線19CCへは電流C19AAとは逆方向の電流C19CCを通電するというものである。巻線19Bへは電流を流さなくても良い。今,ロータ突極181とステータ突極182に印加したい起磁力の電流絶対値をHHH12,ロータ突極183とステータ突極184に印加したい起磁力の電流絶対値をHHH34,ロータ突極185とステータ突極186に印加したい起磁力の電流絶対値をHHH56とすると,各電流は次のようになる。
C19AA=HHH12+HHH56
C19B=0
C19C=−HHH56
また,図19において,紙面でステータ突極182の上側に他の磁気回路MGCがある場合には,ステータ突極182と磁気回路MGCとの間に流すべき電流C19ZZは次のようになる。
C19ZZ=−HHH12
なお,この時,各ステータ突極を通る磁束量のバランスを考えると,前記電流絶対値HHH12を他の電流絶対値より相対的に小さめにした方が,逆方向のトルクを発生するステータ突極188,190を通る磁束が低減するので,モータ全体のトルクを増加することができる。
図19の第5の方法の時,前記の環状巻線19A,19B,19Cの各電流通電方向は,ロータの回転とともに正方向と逆方向に変化し,両方極性の電流を流す必要が出てくるため,第4の方法に比較して,その点の工夫が必要である。なお,各電流の通電方法については,後に,モータの制御装置の構成例とその動作例とともに示す。
さらには,図18に示すモータの駆動法としては,前記の第1の方法,第2の方法,第3の方法,第4の方法を,ロータの回転位置に応じて切り替えながら制御することも可能であり,より効果的な方法である。
また,各巻線19A,19B,19Cの電流方向として正負の値を自在に通電できる場合には,前記の第1の方法,第2の方法,第3の方法,第4の方法および第5の方法を,ロータの回転位置に応じて切り替えながら制御することも可能であり,より効果的な方法である。
図18,19に示す5相のリラクタンストルクを利用するモータでは,各相のステータ突極とステータ突極とが対向していて円周方向に複数配置された磁気抵抗部がロータ軸方向に5相分の5組が配置される。この時,それぞれの磁気抵抗はロータの回転とともに変化し,トルクの発生方向は正方向と負方向の2値がある。そして,各巻線は5組の各ステータ突極のロータ軸方向の間に4個配置されている。図18,19に示すモータは,このように,受動素子であって,回転位置とともに変化し,かつ極性がある前記磁気抵抗と4組の電流との関係で電磁気的作用を行い,トルクを発生する機構であり,幾通りもの駆動方法が可能である。しかし,簡単に考えれば,ある特定のロータ回転位置に置いては,4個の巻線の4個の電流値を決定するだけである。そして,各ロータ回転位置において,4個の巻線の4個の電流値を決定すれば,この5相のリラクタンストルクを利用するモータを全周にわたって回転することができる。前記の第1〜第5のトルクを発生する方法では,その代表的な例を示したが,その時に4個の電流値を多少変化させてもおおよそのトルク発生は可能であり,それらも本発明に含むものである。
前記の本発明のリラクタンスモータにおいて,各突極の円周方向磁極幅は電気角で180度を中心として増加,減少が自在であり,モータに求められる要求性能に応じて選択できる。そして,これらの各相の突極の円周方向磁極幅は同じである必要はなく,例えば,銅損を少なく設計する場合では,2巻線の電流で駆動される相の突極の円周方向磁極幅は小さく,逆に,1巻線の電流で駆動できる相の突極の円周方向磁極幅は大きな構成とすることができる。また,各相がトルクを発生して駆動できる範囲は,隣の相がトルクを発生可能な領域とオーバーラップしていることが多く,2つ以上の相が同時に同一方向のトルクを生成することが可能であり,2つ以上の相での並列駆動を実現することができる。これらの点も図87に示すような従来のスウィッチトリラクタンスモータとは異なる点である。
また,5相,7相,11相などの奇数相は,大きな素数なので,モータ全体としての各相の高調波がキャンセルされる確率が高く,トルクリップルの小さなモータ運転を実現することができる。例えば,3相モータは60°周期の高調波が出易く,6相のモータもその程度は低減するが60°周期の高調波が出易い。4相のモータは素数が2なので,多くの高調波が発生し易く,モータ設計時には,高調波低減の工夫が必要となる。この点,5相のモータは,低次の高調波がキャンセルされる確率が高く,モータ各部の固有振動数にも起因した共振振動が低減され,モータの振動低減が可能となる。その結果,低騒音,低振動で高品位なモータを実現することができる。自動化,あるいは無人化された産業機械,生産ラインで使用されるモータとは異なり,自動車など,人間の聴覚,触覚に近い部位に使用される場合は,特にモータの静粛性は大変重要な特性である。
図20の(a)に本発明の他の実施例である3相のリラクタンスモータを示す。このモータの磁路構成は,図12の(a)に示したモータの磁路構成と全く同じであるが,巻線の構成が異なる。31はA相のロータ突極,32はA相のステータ突極,T1はA相の巻線である。33はロータの磁束通過用磁路,34はステータの磁束通過用磁路である。35はB相のロータ突極,36はB相のステータ突極である。37はC相のロータ突極,38はC相のステータ突極である。T2とT3はほぼ環状形状の巻線であって,相互に逆方向に巻回され直列に接続されている。その結果,T2,T3の巻線へ電流を流すことにより,B相のロータ突極35とステータ突極36を励磁することができる。T4はC相の巻線である。このような構成で,ロータの回転位置に応じて,A相,B相,C相と順次駆動することにより連続的なトルクの発生が可能である。
次に,図20の(b)に本発明の他の実施例である3相のリラクタンスモータを示す。このモータの磁路構成は,図12の(b)に示したモータの磁路構成と全く同じであり,また,図20の(a)のモータを変形した例である。42はA相のロータ突極,43はA相のステータ突極,44はB相のロータ突極,45はB相のステータ突極,46はC相のロータ突極,47はC相のステータ突極,48はロータの磁束通過用磁路,49はステータの磁束通過用磁路である。T7はA相の巻線である。T8とT9はほぼ環状形状の巻線であって,相互に逆方向に巻回され直列に接続されている。その結果,T8,T9の巻線へ電流を流すことにより,B相のロータ突極44とステータ突極45を励磁することができる。T10とT11はほぼ環状形状の巻線であって,相互に逆方向に巻回され直列に接続されている。その結果,T10,T11の巻線へ電流を流すことにより,C相のロータ突極48とステータ突極49を励磁することができる。このような構成で,ロータの回転位置に応じて,A相,B相,C相と順次駆動することにより連続的なトルクの発生が可能である。
このような図20の(a),(b)のようなモータ構成とすると,一つの相のロータ突極とステータ突極とを励磁してトルクを発生させる動作を単独の巻線に電流を通電するだけで励磁できるので,考え方が解りやすく,後記するが,駆動回路も簡単となる。ただし,同一スロット内の巻線が分割されるので,抵抗値が大きくなる巻線もあり,モータ効率の点ではやや不利な面がある。
図21に本発明の4相のモータの例を示す。このモータは,図16の4相のモータの巻線を変形した例である。A,B,C,D相の各ステータ突極61,63,65,67および各ロータ突極62,64,66,68は,図16と同じ構成である。T13はA相のロータ突極61とステータ突極62を励磁する巻線である。T14とT15は相対的に逆方向に巻回し,直列に接続された巻線であり,これらの巻線に電流を流すことによりB相のロータ突極63とステータ突極64を励磁することができる。T16とT17は相対的に逆方向に巻回し,直列に接続された巻線であり,これらの巻線に電流を流すことによりC相のロータ突極65とステータ突極66を励磁することができる。T18はD相のロータ突極67とステータ突極68を励磁する巻線である。
図21のこのような構成のモータは,各相のロータ突極とステータ突極とそれらを励磁する巻線とが固定されているので,単独で一組のロータ突極とステータ突極を励磁するときに一つの巻線に電流を流せばよく,解りやすい構成である。
図21のモータを,ロータの回転位置に応じて,1相ずつ順次駆動する場合は,各相のロータ軸方向の配置順は限定されない。例えば,ロータ突極とステータ突極との相対位相の順にA相,B相,C相,D相である時,図21の紙面の上側からA相,D相,B相,C相の順に配置しても,ロータの回転位置に同期してA相,B相,C相,D相の順に電流を流せば連続的なトルクを出力することができる。また,電流の向きおよび各ステータ磁極の磁束の向きについても限定されず,どちらの向きへも設定することができる。
次に,図21のモータで,二組のロータ突極とステータ突極を励磁して両方の相で同じ方向のトルクを発生させる場合は,各ステータ突極の磁束の方向が問題となる。今,ロータ突極とステータ突極との相対位相の順がA相,B相,C相,D相である時,二つの相が同一方向のトルクが発生する組み合わせは,A相とB相,B相とC相,C相とD相,D相とA相の組み合わせである。したがって,相対位相の順に磁束の方向が,図21に示すように,正方向と負方向とが交互になっていればよい。このように決めれば,各巻線の電流の方向も必然的に決まる。また,各相のロータ軸方向の配置は,図21の例では紙面の上から順になっているが,他の並び順でもモータを構成することができる。
図21のモータで,二組の相を順次駆動する方法では,2組の相がトルクを発生できない領域もあるため,単純にはトルクリップルが発生することになるが,電流の振幅補正を行うなどの方法でトルクリップルを低減することもできる。なお,図21のモータは駆動アルゴリズムが簡潔であるが,モータ効率の点では,図16のモータの方が巻線抵抗を小さくできるので,図16のモータの方が優れている。
また,図21のモータで示した構成,方法は,種々の応用,変形が可能であり,例えば,図15のモータへ図21のモータの巻線の手法を適用することができ,その他のモータへも適用することができる。また,図18などの5相以上の多相のモータへも適用することができる。
次に,本発明の他のモータ例を図22および図23に示す。図22のモータのロータ突極,ステータ突極,巻線の円周方向形状を直線状に展開した形状が図23で,横軸は電気角である。各ステータ突極T32,T34,T36,T38,T40,T42は円周方向の同一の角度位置に配置されている。第1相のロータ突極T31と第2相のロータ突極T33は同一位相に配置され,巻線T19と巻線T19の半分の巻回数でかつ逆方向に巻回された巻線T20と直列に接続されている。その結果,巻線T19と巻線T20へ電流を流すことにより,第1相からバックヨークを介して第2相を通る磁束が励磁され,この時,他の相への電磁気的影響は少ない。なお,図22の断面EA〜EAは,図9の(a)の形状となっている。
第3相のロータ突極T35と第4相のロータ突極T37は同一位相に配置され,第1の相のロータ磁極T31とは電気角で120°の位相差がある。巻線T22と巻線T22の半分の巻回数でかつ逆方向に巻回された巻線T21と巻線T23とは直列に接続されている。その結果,巻線T22と巻線T21と巻線T23へ電流を流すことにより,第3相からバックヨークを介して第4相を通る磁束が励磁され,この時,他の相への電磁気的影響は少ない。
第5相のロータ突極T39と第6相のロータ突極T41は同一位相に配置され,第1の相のロータ磁極T31とは電気角で240°の位相差がある。巻線T25と巻線T25の半分の巻回数でかつ逆方向に巻回された巻線T24と直列に接続されている。その結果,巻線T25と巻線T24へ電流を流すことにより,第5相からバックヨークを介して第6相を通る磁束が励磁され,この時,他の相への電磁気的影響は少ない。
この構成のモータは,ロータの回転位置に同期して第1相と第2相,第3相と第4相,第5相と第6相の順に電流を流せば連続的なトルクを出力することができる。そして電流の種類は3種類と少なく,電流の駆動回路が簡素にできる特徴がある。なお,この時,モータ内の3種類の電流の相対的な向きはおよび3組の各ステータ磁極の磁束の向きについては限定されず,どちらの向きへも設定することができる。
次に,図22,図23のモータにおいて,前記の電流通電方法を第1の方法とし,それとは異なる巻線の接続方法,通電方法である第2の方法について説明する。具体的には,巻線T20と巻線T21を同一方向の電流とし,巻線を1個の巻線T45に統合することにより巻線抵抗を小さくし,巻線T20へ流すべき電流と巻線T21へ流すべき電流を加算した電流を流す。このことにより,第1の方法に比較し,巻線T20と巻線T21の銅損に対応する巻線T45の銅損を2/3に低減することができる。巻線T23とT24についても同様な構成とし,巻線T46とすることができ,銅損を2/3とすることができる。ただし,電流の種類は5種類となり,駆動回路は増加する。なお,この時,巻線T19,T22,T25の巻線の向き,電流の向きは同一方向となる。
次に,図22,図23のモータにおいて,巻線の接続方法,通電方法の異なる第3の方法について説明する。具体的には,巻線T20と巻線T21へ逆方向の電流が流れるように,巻線T19の電流の向きと巻線T22の電流の向きとを逆方向とする。そして,巻線T20と巻線T21を1個の巻線T47に統合し,巻線T20へ流すべき電流と巻線T21へ流すべき電流を加算した電流を巻線T47へ流す。この構成では,巻線T20の電流と巻線T21の電流とが同時に流れるべき期間では,両電流が反対方向の電流なので,キャンセルされて電流が零となり,さらにこの巻線T47の銅損を低減できることになる。このことにより,第1の方法に比較し,巻線T20と巻線T21の銅損に対応する巻線T45の銅損を1/1.732へ低減することができる。巻線T23とT24についても同様な構成とし,巻線T48とすることができ,銅損を1/1.732へ低減できる。ただし,電流の種類は5種類となり,さらには,巻線T47と巻線T48の電流は正負の電流を流す必要があり,駆動回路は増加する。なお,この時,巻線T19,T22,T25の巻線の向き,電流の向きは正,負,正と交互の電流の向きとなる。
次に,本発明の3相モータの例を図24に示す。このモータは,図4に示した単相モータをロータ軸方向に3相分,3組配置し,A相,B相,C相の各相のロータ突極とステータ突極との相対位相を電気角で120°ずつ異なるように配置したモータである。A相のロータ突極T51はロータ突極T53と同じ回転位置に配置され,これらと対向するステータ突極T52はステータ突極T54と同一回転位置にあり,巻線T63に電流を流すことによりこれらの一巡する磁気回路励磁することができる。B相のロータ突極T55はロータ突極T57と同じ回転位置に配置され,これらと対向するステータ突極T56はステータ突極T58と同一回転位置にあり,巻線T64に電流を流すことによりこれらの一巡する磁気回路励磁することができる。C相のロータ突極T59はロータ突極T61と同じ回転位置に配置され,これらと対向するステータ突極T60はステータ突極T62と同一回転位置にあり,巻線T65に電流を流すことによりこれらの一巡する磁気回路励磁することができる。そして,A相とB相とC相との間には,空間あるいは磁気抵抗の大きい材質で構成された中間部材T66,T68並びにロータ側のT67,T69が配置されている。図24の断面EA〜EAは,図9の(a)の形状となっている。そして,B相,C相の断面形状は,図9の(b),(c)の形状となっている。また,図24のモータのロータ突極,ステータ突極の円周方向形状を直線状に展開した形状は,図23に示すロータ突極とステータ突極の関係でもある。
図24のモータの動作は,ロータの回転に同期して,A相の巻線T63,B相の巻線T64,C相の巻線T65へ,順次,電流を流すことにより連続的なトルクを得ることができる。各相の間には,磁気抵抗の大きな中間部材T66,T68並びにロータ側のT67,T69が配置されているので,各相の電磁気的な干渉は小さく,簡潔な動作を実現することができる。ただし,前記中間部材T66,T68,T67,T69が必要であり,大きさとコストに関して不利な面もある。
図25に示すモータは,図24のモータの中間部材T66とT68を排除し,各相のステータのバックヨーク部を同一軟磁性体で連結した構成のモータである。この構成のモータにおいても,ロータ側の中間部材T67,T69が配置されているので各相の磁気的な干渉は小さく,図24のモータと同様な動作を行わせることができる。なお,図24のモータにおいて,前記の中間部材T66,T68を排除せず,ロータ側の中間部材T67,T69を排除しても図25のモータと同様な動作をすることができる。
次に,本発明のモータにおいて,ステータの巻線を,ステータ内部だけでなく,巻線の一部を,ロータ側のスペースを活用して,ロータ側へ出っ張った形状として配置でき,巻線抵抗をより小さな値とできることを示す。本発明のリラクタンス型のモータでは,磁気抵抗の小さい軟磁性体の部分と比透磁率の小さい物質の部分あるいは空間部で磁気回路を構成する。その結果,ロータ側の各相の突極の磁極間に磁束の方向を制約するための空間が必要である。特に,ロータ側のこの空間部を活用してステータの巻線を配置するものである。
図1,図5のモータは,巻線5がステータ4,7のある外径側に配置されていて,ロータ2の方へは出っ張っていない。一方,図2,図4,図6,図8,図10,図12,図13などでは,各巻線がロータ側へ出っ張っていて,ロータスペースも活用して巻線が配置されている。このような構成とすることにより,巻線スペースが広く確保され,巻線を太くし巻線抵抗を小さくできるので,銅損を低減することができ,モータの効率を向上することができる。当然,モータ効率が向上できることから,小型化,低コスト化も可能となる。
次に,本発明の他の例を図28に示す。246はロータ軸,247はロータの固定板,248はロータの各相の磁極を保持する非磁性の円筒部材,軸受けは省略している。内径側と外径側にステータが配置され,ロータが2つのステータ部の中間部に配置されている。232,233はA相のステータ突極で,231はA相のロータ突極である。その断面GA〜GAは図29の(a)に示すような形状をしている。238,239はB相のステータ突極で,237はB相のロータ突極である。その断面GB〜GB2は,断面GA〜GAのロータとステータとの回転方向位置関係が相対的に電気角で120°異なる形状となっている。241,242はC相のステータ突極で,240はC相のロータ磁極である。その断面GB〜GB2は,断面GA〜GAのロータとステータとの回転方向位置関係が相対的に電気角で240°異なる形状となっている。235,236は各相共通の磁束を通過させるステータ磁路で,234は磁束を通過させるロータ磁路である。その断面GD〜GDは,図29の(b)に示すような形状をしている。24Aと24Bは同一相の巻線,24Cと24Dは同一相の巻線,24Eと24Fは同一相の巻線である。
この例では,片側の巻線だけでも駆動することができるが,2個の巻線を同一相に配置,即ち,両方のステータのスペースを利用して両側に配置している。特に,外周側のステータ巻線24A,24Bを省略すると,外周側ステータを、モータケースを兼ねた単純で簡素な構成の磁気回路とすることができる。
図28のモータの基本的な電磁気作用は,図12の(a)のモータの電磁気的作用とほとんど同じである。性能的に図12のモータと最も異なる点は,一つの相のトルクを発生する部分がロータ突極の内径側と外径側の両方にあるため,電磁気的な最大限界トルクが図12のモータに比較して,単純論理的には,2倍のトルクを発生できる点である。
また,図28のモータの234,235,236を237,238,239と同じ構成にすれば,図16のモータへ図28の技術を適用した4相のモータを構成することができる。この場合にも,各相のトルクはロータの内径側と外径側の2個所で発生されるため,各相の発生する最大限界トルクは図16のモータに比較して,単純論理的には,2倍となる。このように,図28のモータ技術を本発明の他のモータへも適用することができ,最大限界トルクの大きなモータを実現することができる。また,図28,図30のモータは,ロータとステータの関係を逆にする,あるいは,ロータの支持方法を変えるなど種々の変形も可能である。
図30のモータは,図12の(a)モータを図12の(b)のモータに変形したように,図28の234,235,236の各相共通の磁束を通過させるステータおよびロータの磁路をロータ軸方向端に移動した構成である。図28の234,235,236の各相共通の磁束を通過させる磁路のエアギャップが無くなるので,磁気抵抗を小さくすることができ,トルクの増加が可能である。また,固定子が単純化され,251は磁路とモータケースを兼ねることができるので,モータの構成も容易化できる。図28のモータと同様に,外径側あるいは内径の巻線のどちらかを省略してステータ構成を簡略化することもできる。
次に本発明の他の実施例である3相のモータを図32に示す。このモータのトルクに作用する磁束の方向は,ロータ軸方向を通る。この点が今までに説明したモータとは異なる。270,271,272,273はロータの突極であり,各相の断面EG−EGは図33の(a)に示すように,円周方向に軟磁性部と空間部とが交互配置された構造である。270,271,272,273の軟磁性体の円周方向位置は,全て同一の円周方向位置に配置されている。274はA相のステータの突極,276はB相のステータの突極,278はC相のステータの突極であり,円周方向に軟磁性部と空間部とが交互配置された,図33の(b)に示すような構造である。274,276,278の軟磁性体の円周方向位置は,電気角で120度ずつ位相差が設けてある。275はA相の環状形状の巻線,277はB相の環状形状の巻線,279はC相の環状形状の巻線である。280はモータのケースであり,電磁気的な動作上,非磁性体が好ましい。
図32のモータの動作は,ロータの回転位置に同期して,A相,B相,C相の電流を,電気角で120°の幅ずつ,順次流すことにより連続的なトルクを出力することができる。図32のモータは各相の動作が各相独立に作用するので,図12に示すモータ等に比較して,トルク発生メカニズムが単純である。
図32のモータの特徴は,トルクを発生する部分の磁束の方向が,ロータ軸方向を向いていて,ロータ突極とステータ突極が対向する面積を広くとることができ,磁束の回転変化率も大きくとれるので,トルクと電流の比であるトルク定数を大きくとれる点にある。また,一つの相のトルクを発生するロータ突極の部分が,ロータ軸方向に2個所設けられているので,電磁気的な最大限界トルクを大きくできる。
なお,3相のモータについて説明したが,単相,2相,4相以上のモータについても同様に実現することができる。
次に本発明の他の実施例である3相のモータを図34に示す。このモータは図32のモータのステータ突極とロータ突極とが逆の関係となったモータである。290,291,292,293はステータの突極であり,円周方向に軟磁性部と空間部とが交互配置された,図35の(a)に示すような構造である。290,291,292,293の軟磁性体の円周方向位置は,全て同一の円周方向位置に配置されている。294はA相のロータの突極,296はB相のロータの突極,298はC相のロータの突極であり,円周方向に軟磁性部と空間部とが交互配置された,図35の(b)に示すような構造である。294,296,298の軟磁性体の円周方向位置は,電気角で120度ずつ位相差が設けてある。295はA相の環状形状の巻線,297はB相の環状形状の巻線,299はC相の環状形状の巻線である。モータの前フランジ300,後ろフランジ301,ロータ軸1は,電磁気的な動作上,非磁性体である方が好ましい。
図34のモータの動作は,図32のモータと同じであり,ロータの回転位置に同期して,A相,B相,C相の電流を,電気角で120°の幅ずつ,順次流すことにより連続的なトルクを出力することができる。
なお,ステータ突極290と293はステータのロータ軸方向端に配置されているので,モータの前フランジ300および後ろフランジ301と兼用させて小型化,低コスト化が可能である。具体的には,図34において,軸受け303をステータ突極290と293の内径側に配置すればよい。ただし,軸受け303には磁束が貫通しないような配慮は必要である。また,図32,図34のステータとロータの関係を逆にする構造のモータ,4相以上の多相のモータとする等の種々の応用,変形が可能である。
次に本発明の他の実施例である3相のモータを図38に示す。このモータは図32のモータの関係を,ステータ突極とロータ突極とがラジアル方向に配置される関係としたモータである。330,331,332,333はステータの突極であり,円周方向に軟磁性部と空間部とが交互配置された構造となっており,その断面ES〜ESは図39に示すような構造である。330,331,332,333の軟磁性体の円周方向位置は,全て同一の円周方向位置に配置されている。334はA相のロータの突極,336はB相のロータの突極,338はC相のロータの突極であり,円周方向に軟磁性部と空間部とが交互配置された,図39に示すような構造である。334,336,338の軟磁性体の円周方向位置は,電気角で120度ずつ位相差が設けてある。335はA相の環状形状の巻線,337はB相の環状形状の巻線,339はC相の環状形状の巻線である。ロータ支持部342は,電磁気的な動作上,非磁性体である方が好ましい。341はロータ軸,343はステータである。
図38のモータの動作は,図32のモータと類似しており,ロータの回転位置に同期して,A相,B相,C相の電流を,電気角で120°の幅ずつ,順次流すことにより連続的なトルクを出力することができる。
次に本発明の他の実施例である3相のモータを図40に示す。このモータは,A相,B相,C相の各相の構造がロータ軸方向に並んで配置され,それぞれの相のステータ突極とロータ突極とはラジアル方向に配置され,それぞれの相のトルクを発生する部分の磁束はほぼラジアル方向に通る構造としたモータである。
350,351はA相のステータの突極,352はA相のロータ突極,353はA相の巻線である。354,355はB相のステータの突極,356はB相のロータ突極,357はB相の巻線である。358,359はC相のステータの突極,35AはC相のロータ突極,35BはC相の巻線である。35Cはロータ軸である。36D,36E,36Fはロータの支えで,これらの材質は非磁性体であることが好ましい。図40の断面HA〜HAを図42に示す。
図40のモータの基本的な動作は,図32のモータと類似しており,ロータの回転位置に同期して,A相,B相,C相の電流を,電気角で120°の幅ずつ,順次流すことにより連続的なトルクを出力することができる。A相,B相,C相の各相の磁気回路が独立に作用できる。
図40のモータの特徴は,各相の磁気回路が独立しているので,前記のようにそれぞれの相を駆動するために1個の巻線へ電流を通でするだけで良く,図32のモータに比較して銅損を低減できる点である。また,図32のモータは,磁束がロータ軸方向へ通るので,ロータ軸方向の吸引力が作用し,よってロータ軸方向吸引力のアンバランスに備えた慎重なモータ設計が必要であるが,図40のモータに作用する吸引力はラジアル方向なので,吸引力のアンバランス対応が従来の普通のモータ程度で良く,設計,製作が容易である。
次に本発明の他の実施例である3相のモータを図41に示す。このモータは,図40のモータに比較し,B相とC相の構造が異なる変形例である。A相,B相,C相の各相の構造がロータ軸方向に並んで配置され,それぞれの相のステータ突極とロータ突極とはラジアル方向に配置され,それぞれの相のトルクを発生する部分の磁束はほぼラジアル方向に通る構造としたモータである。364,365はB相のステータの突極,366はB相のロータ突極,367はB相の巻線である。368,369はC相のステータの突極,36AはC相のロータ突極,36BはB相とC相の両方の駆動に使用する巻線である。35Cはロータ軸である。
36D,36E,36Fはロータの支えで,これらの材質は非磁性体であることが好ましい。
図41のモータの基本的な動作は,図40のモータと類似しており,ロータの回転位置に同期して,A相,B相,C相のステータ突極とロータ突極の間に作用する電磁力を,電気角で120°の幅ずつ作用させて回転トルクを得る。各相の電流の流し方は,A相とC相については図40のモータと同じである。しかし,B相を駆動するときの電流は,巻線367と36Bへ逆向きの電流を流し,B相のステータ突極とロータ突極の間でトルクが発生し,C相のステータ突極とロータ突極との間にはトルクが発生しないように電磁気的作用をさせる必要がある。このようにして,A相,B相,C相のトルクを順次発生させることにより連続的な回転トルクを得ることができる。なお,電流の通電角度幅,電流の値については基本的な考え方からある程度の修正を施して,より滑らかな回転,効率良い回転を得ることができる。
次に本発明の他の実施例である3相のモータを図43に示す。このモータは,図40のモータに比較すると,各相のステータ突極とロータ突極がラジアル方向に2重に構成されている点が異なる。この構成は,電磁気的な最大限界トルクを増加させる効果がある。また,モータの内径側の部分も活用するため,トルクが増加する効果がある。このモータは,A相,B相,C相の各相の構造がロータ軸方向に並んで配置され,それぞれの相のステータ突極とロータ突極とはラジアル方向に配置され,それぞれの相のトルクを発生する部分の磁束はほぼラジアル方向に通る構造としたモータである。
380,381,382はA相のステータの突極,383,384はA相のロータ突極,385,386はA相の巻線である。387,388,389はB相のステータの突極,390,391はB相のロータ突極,392,393はB相の巻線である。394,395,396はC相のステータの突極,397,398はC相のロータ突極,399,39AはC相の巻線である。39Eはロータ軸である。39F,39Gはロータの支えで,39Hはステータのスペーサであり,これらの材質は非磁性体であることが好ましい。
図43のモータの基本的な動作は,図40のモータと類似しており,ロータの回転位置に同期して,A相,B相,C相の電流を,電気角で120°の幅ずつ,順次流すことにより連続的なトルクを出力することができる。A相,B相,C相の各相の磁気回路は独立に作用できる。
また,図43の39B,39C,39Dを軟磁性体として,各相の磁気回路をラジアル方向に独立に2組設ける構成とし,外径側の磁気回路の磁束が大きくとれる構成としてトルクを増大することもできる。なお,この場合には,モータの外径側と内径側に2個のモータを効果的に配置した複合モータとみることもできる。複合化の容易なモータ構造なので,さらに,ラジアル方向に3重以上の構造のモータとすることもできる。また,このようなモータ技術を本発明の他のモータへ適用することができる。
図31は本発明モータのロータ突極の構造を一体化し,強化した構成を示す図である。円周方向に配置されたロータ突極261がつなぎ部263により連結され,同相のロータ突極が円周方向につながって一体化され,強固な構成となっている。262は図25の非磁性の円筒部248とつながっている非磁性の部材である。ロータの円周上の突極部分が円周方向に繋がっていて,各ロータ突極が物理的に一体化されていることは,ロータの強度上,製作上ともに好ましい。
図31の円周方向に複数個配置されたロータ突極部261は,この図では,つなぎ部263により円周方向に連結されているが,ロータ突極の凹凸の高さが小さくなる問題もあり,同一円周上ではない側面で連結するなど他の形状であっても良い。また,図31のロータ突極261の外径側突部と内径側突部が電気角で180°位相がずれていても良い。また,例えば,つなぎ部263の幅の大きい電磁鋼板およびつなぎ部263の幅の小さい電磁鋼板等がロータ軸方向に積層されていても良い。
また,図26のロータの突極261では,ロータの外径側突極部と内径側突極部の両方が一体化されているが,内径側の突極部が分離されていて着脱が可能な構造とし,非磁性部材262とロータ突極261との組み立てが容易な構造となっていても良い。なお,このような同一円周上の同相の突極を同一部材で結合する構造は,本発明で示す他の各モータの突極へも適用できる。
次に,ステータ突極とロータ突極の形状とトルクTの関係について説明する。モータの磁気回路への入力電力Pは,次のように表される。
P=V×I ・・・(1)
V=dΨ/dt=dΨ/dθ×dθ/dt ・・・(2)
Ψ=NN×φ ・・・(3)
Pm=T×dθ/dt ・・・(4)
Vは電圧,Ψは磁束鎖交数,φは磁束,θはロータの回転角,NNは巻線の巻回数,Tはトルク,Pmはモータの機械的出力で,巻線抵抗,鉄損などは無視している。さらに,今,問題を簡略化するため,磁気回路の磁気エネルギが小さく無視できると仮定すると,(1),(2),(3),(4)式より次のようになる。
T≒NN×dφ/dθ×I ・・・(5)
したがって,モータのトルクTを大きくするにはdφ/dθを大きくすると効果的である。これは,モータの磁気飽和において,ステータ突極とロータ突極の対向する部分のロータ軸方向長さTBを大きくすると,dφ/dθが大きくなり,トルクが増加することを意味している。
図1〜図4のモータなどでは,ステータ突極とロータ突極の対向する部分のロータ軸方向長さは,その他の磁路の幅と同じ幅で図示している。一方,図5,図15,図21,図28,図25には,ステータ突極とロータ突極の対向する部分のロータ軸方向長さTBが他の磁路部分のロータ軸方向長さより大きい構成の図を示している。前記のようにTBを大きくするとトルクが大きくなるので,他の点で不都合なことがない限り,前記TBを大きくした方がトルクが大きくなり,有利である。
次に,図26に本発明の3相モータの例を示す。このモータの基本構造は,図12の(a)のモータのステータとロータを逆にし,ロータを外径側へ,ステータを内径側に配置したモータである。いわゆるアウターロータモータといわれる構造のモータである。
図26において,212はA相のロータの突極,211はステータの突極であり,その断面FA〜FAは図27の(a)の形状となっていて,円周方向に軟磁性体部と空間部が交互に配置され,軟磁性体部はロータ軸方向にその他のロータの軟磁性体部と磁気的につながっている。212の円周方向側面の空間部は円筒形状に穴が明いたような形状となっている。また,212の内周側は凹凸の突極となっていて,21の外周側は全周が覆われた形であっても良い。216はB相のロータの突極,215はステータの突極であり,その断面FB〜FBは図27の(a)の形状においてステータ突極とロータ突極との相対位相が120°異なる配置構造となっている。218はC相のロータの突極,217はステータの突極であり,その断面FC〜FCは図27の(a)の形状においてステータ突極とロータ突極との相対位相がA相に対して240°異なる配置構造となっている。断面FD〜FDの部分は図27(b)の形状の磁束通過用磁路である。各相のロータ突極とステータ突極との相対位相は,A相,B相,C相で相互に電気角で120°の位相差となっている。219はA相用の環状形状の巻線,220はB相用の環状形状の巻線,221はC相およびB相用の環状形状の巻線である。222はロータ軸,223はロータ支持円板である。
このような構成で,ロータの回転位置に応じて,A相,B相,C相と順次駆動することにより連続的なトルクの発生が可能であり,トルクリップルもモータの設計次第で低減が可能である。A相の駆動は,巻線219に電流を通電することにより実現する。即ち,ロータ突極212,ステータ突極211,磁束通過用磁路213,214と磁束が誘起され一巡し,ロータ突極212とステータ突極211の間で吸引力が発生し,トルクが生成される。B相の駆動は,巻線220と巻線221の両方へ逆方向の電流を通電することにより実現する。即ち,ロータ突極216,ステータ突極215,磁束通過用磁路213,214と磁束が誘起され一巡し,ロータ突極216とステータ突極215の間で吸引力が発生し,トルクが生成される。この時,C相のロータ突極218,ステータ突極217へは巻線220と巻線221に逆方向に通電される電流の合計が印加されるので,結局,C相へは起磁力が印加されず,トルクが生成されないことになる。C相の駆動は,巻線221に電流を通電することにより実現する。即ち,ロータ突極218,ステータ突極217,磁束通過用磁路213,214と磁束が誘起され一巡し,ロータ突極218とステータ突極217の間で吸引力が発生し,トルクが生成される。なおここで,磁束通過用磁路213と214の間は,常に対向面積が広く磁気抵抗が小さいことを前提としている。
このように,ロータの回転位置に応じて,A相,B相,C相と順次駆動することにより,トルクの方向も正および負のトルク生成が可能であり,力行運転,回生運転が可能である。また,このモータの動作において,一つの相がトルクを発生できる範囲は各突極の形状にもよるが,突極幅が電気角で180°の場合は180°の間において駆動可能であり,図8のモータではA相,B相,C相と順次駆動してトルクリップルの小さい平滑な駆動が可能である。また,この場合には,各相が120°以上の範囲において駆動することが可能なので,2相の境界部近傍では同時に2相を駆動できる領域もある。
また,図26のモータを変形して4相のアウターロータ型のモータを実現することができる。図26の前記の磁束通過用磁路213,214をステータ突極215,ロータ突極216と同じ形状の磁極へ置き換え,紙面で上側から順にA相,B相,C相,D相の4相とし,各相のステータ突極とロータ突極の相対位相を電気角で90°ずつ位相差を持たせた構造とすればよい。その4相のモータの動作は,図16に示した4相のモータの動作と同じ関係となる。さらに,同様構造で,5相以上の多相のアウターロータ型のモータも実現できる。
次に本発明の他の実施例である3相のモータを図36に示す。このモータは図32のモータの外径側が回転するロータとし,各環状形状の巻線は内径側のステータに取り付け固定したモータである。いわゆるアウターロータモータといわれる構造のモータである。310,311,312,313はステータの突極であり,円周方向に軟磁性部と空間部とが交互配置された,図37の(a)に示すような構造である。310,311,312,313の軟磁性体の円周方向位置は,全て同一の円周方向位置に配置されている。314はA相のロータの突極,316はB相のロータの突極,318はC相のロータの突極であり,円周方向に軟磁性部と空間部とが交互配置された,図37の(b)に示すような構造である。314,316,318の軟磁性体の円周方向位置は,電気角で120度ずつ位相差が設けてある。315はA相の環状形状の巻線,317はB相の環状形状の巻線,319はC相の環状形状の巻線である。ロータの円筒部材321は,電磁気的な動作上,非磁性体である方が好ましい。322はロータ軸,323はロータ軸である。
図36のモータの動作は,図32のモータと同じであり,ロータの回転位置に同期して,A相,B相,C相の電流を,電気角で120°の幅ずつ順次流すことにより,連続的なトルクを出力することができる。
特に,本発明のモータのアウターロータ型の構造では,各相のほぼ環状形状の巻線が内径側に配置されることになり,巻線長が短くなるので,巻線材料費が低減でき,銅損も低減でき,コスト,効率の両方の点で優れている。さらに,電磁気的なトルク発生作用を行う部分がモータの外周側となるので,作用点の半径が大きくなり,大きなトルクを発生できる効果もある。また,ロータの半径が大きくなり,イナーシャが大きくなりやすい。ロータが外周側に配置されているので,用途によっては危険防止用のカバーがモータ外周に必要となる場合もある。
なお,図21〜図44において,モータの特性を改善するいくつかの技術について,主に3相のリラクタンスモータの例で説明したが,これらの技術は単相から4相以上のリラクタンスモータへも適用できる。また,多相のN相リラクタンスモータの構成は,N以下の相数のモータを組み合わせた種々の構成が可能であり,本発明に含むものである。
本発明で示した各種のモータにおいて,ステータ突極とロータ突極の形状は種々の変形が可能である。これらの本発明モータは,主としてリラクタンストルクであり,軟磁性体を通過する磁束の分布状態により特性が変化する。主な問題点は,力を発生しない部分の磁気飽和の問題,大トルクを発生させるために大電流を巻線に通電した場合のトルクに寄与しない磁束の問題である。力を発生しない途中の磁路が磁気飽和すると,その部分に起磁力Hがかかることになり,その分トルク発生部の起磁力Hが低下し,トルクが減少する問題がある。なお,ステータ突極とロータ突極とが対向している部分およびその近傍が大きな磁束密度となることは問題ではない。また,特に,トルクに寄与しない磁束で,かつ,ステータ突極とロータ突極が対向している部分以外の空間スペースを通る磁束を「漏れ磁束成分φL」と言うことにする。以下,これらの問題を低減する各種の方法について説明する。
まず,基本的なトルクの発生の例について説明する。図45は外径側のステータ突極401と内径側のロータ突極402とが対向していて,これらの部分に起磁力が作用すると,矢印で示すような磁束φRSが通る場合を図示している。この場合には,ロータに反時計方向のトルクが発生する。そして,徐々に反時計方向にロータが回転し,ステータ突極401とロータ突極402とが真正面に向かい合う位置でトルクが零となり,トルク発生が無くなる。もしその位置よりさらに反時計回転側へロータが回転すると,逆の方向の時計回転方向のトルクがロータに発生する。
ステータ突極401とロータ突極402がわずかに対向している場合,通過する磁束は少ないので,一巡する磁路での磁気飽和の問題は無く,また,(2)式のdΨ/dθは大きな値となることが期待できる。しかし,この時においても,ステータ突極401とロータ突極402とが対向している部分以外にも周辺の空間を通る漏れ磁束成分φLが存在している。次に,図45のロータ突極402が反時計方向に回転し,ステータ突極401とロータ突極402とが対向する位置の手前まで回転した場合,磁束φRSは増加し,さらに,前記の漏れ磁束成分φLも加わることになり,両突極の対向している部分より突極の根元部の部分の磁束が大きくなり,磁気飽和を起こしやすくなる。
図46に示すように,ステータ突極403の円周方向の幅TB3とロータ突極404の円周方向の幅TB4は,そのモータの運転方法などに関わって選択でき,TB3とTB4とが同じ値である必然性はない。
図47では,ステータの突極幅TB6に対し,その根元に円周方向幅TB5を大きくし,ステータ突極405の根元部の磁気飽和を避ける構造としている。ロータ突極406の円周方向幅TB7についても,根元の円周方向幅TB8は相対的に大きな値とし,ロータ突極406の根元部の磁気飽和を避ける構造としている。このような構造とすることにより,ステータ突極405とロータ突極406とがトルクを発生する円周方向の範囲を広くすることができる。
次に,ロータ突極の先端部において磁束を制限,磁束の通る磁路を制限する方法を図48に示す。431はステータ突極,432はロータ突極である。ロータ突極432には,一部に設けられた四角形状の穴433,丸穴435などの穴を設けることができ,ロータ突極432を通過する磁束を制限することができる。長穴434は,ロータ突極を通る磁束を制限するだけでなく,ロータ突極内の磁束の経路も制約するので漏れ磁束成分φLを低減する効果もある。これらの構造とすることにより,ステータ側の磁気飽和を低減することができ,ステータ突極405とロータ突極406とがトルクを発生する円周方向の範囲を広くすることができる。あるいは,ロータ突極表面の磁束分布を均一化でき,モータの発生トルクが均一である回転範囲を広く取れるようにすることができる。
またこれらの穴には,透磁率の低い樹脂などを充填しても良い。またこれらの穴は,ステータ側に設けることもできる。
さらには,図50,図51に示すように永久磁石436を配置して,ロータ突極432の磁気特性を変えることができる。永久磁石436の配置,場所,傾きなどは,図50,図51の各例に示すように,種々の方法がある。これらの例では,永久磁石によりロータ突極内の磁束の分布が変化し,ロータ突極406に対してトルクを発生する円周方向の範囲を広くすることができる。あるいは,ロータ突極表面の磁束分布を均一化でき,モータの発生トルクが均一である回転範囲を広く取れるようにすることができる。
次に,漏れ磁束成分φLを,永久磁石を使用して低減する方法を図52に示す。図52の中に,いくつかの方法を部分的に記載している。472は,効率良くトルクを発生することができる磁束成分である。磁束471,474は,矢印で示すロータのトルク発生に貢献はするが,有害な効果も発生する磁束であり,特に磁気回路各部で磁気飽和が起きる原因となる磁束成分である。そして,トルク発生の原理上は,排除しても良い磁束成分である。473は永久磁石であり,磁束471を低減する極性の向きに配置されている。磁石480も磁束474が低減する向きに配置されている。低減する向きとは,ステータ突極,ロータ突極に作用する起磁力と反対方向に永久磁石の起磁力が作用する方向である。
このように,永久磁石を利用することにより不要な磁束を低減する構成が可能なのは,リラクタンストルクを応用するモータでは,トルクは,その作用する磁束の方向に関係が無いので,意図的にモータ内の磁束の方向を揃えることにより,永久磁石を利用した漏れ磁束の低減が可能となるからである。したがって,永久磁石を使用したブラシレスモータなどにおいては,ステータの各部分に作用する起磁力の方向が回転と共に正と負の値に交流的に変化するので,永久磁石で漏れ磁束を低減させることは困難である。
永久磁石で漏れ磁束を低減することの効果は,モータが大きなトルクを発生するときに顕著である。不要な磁束を排除することにより,ステータ,ロータの各突極および磁路の磁束が低減され,磁気飽和が起き難くなるので大きなピークトルクを得ることができる。また,不要な磁束が減るので,漏れインダクタンスが減少することになり,力率を改善することができ,効率の改善にもつながる。力率を改善できることから,モータを駆動するパワートランジスタの電流容量を低減することができ,駆動装置の小型化,低コスト化も可能である。さらには,本発明のモータ,ステッピングモータ,スウィッチトリラクタンスモータ等の多極化の限界の一因は,前記の漏れ磁束であり,漏れ磁束を低減することにより多極化の限界を上げることができ,トルクを向上することができる。また,永久磁石で漏れ磁束を低減できる場合には,磁気抵抗の大小を作るため各突極の凹凸の高さを小さくすることも可能となり,その効果によるモータの小型化,あるいは,高トルク化を実現することもできる。
モータの用途,モータの使い方にもよるが,モータのピークトルクは非常に重要な特性であり,モータの小型化の限界と密接に関わることが多い。当然,モータのコストにも関わる。
また,前記の永久磁石473,480は,475,476,477,478のように短くするなど形状の変更も可能である。漏れ磁束は,47A,47Bの方向へも発生し,有害な磁束となっている。各突極の円周方向の両側およびバックヨーク側へも漏れ磁束低減用の永久磁石を配置することにより,より効果的にすることもできる。
なお,ロータ側は,遠心力が作用することから,ステータ側の突極だけに永久磁石を配置することもできる。また,前記の長穴479等も併設することができる。特に高速回転のモータにおいては,ロータ側に永久磁石を使用せず,磁束の制約を長穴479で実現する方法も有効である。
図54に,ステータ突極の先端部で,ロータに対向する部分をのぞいた全部の方向へ漏れ磁束低減用の永久磁石を配置した例を示す。ステータ571において,ステータ突極の円周前後に永久磁石573を配置し,ステータ突極とステータ突極の間であってブックヨーク側へは永久磁石57Aを配置し,ステータ突極のロータ軸方向前後には永久磁石574を配置している。それぞれの磁石の向きは,巻線の電流が発生する起磁力とは反対方向の永久磁石起磁力を発生する方向であって,回転トルクを発生する磁束577の方向の磁束を妨げる方向にしている。ロータ572側も同様に,永久磁石575,57B,576を配置し,漏れ磁束を低減している。ステータとロータの間で磁束が通過する場所を,ステータ突極の先端部とロータ突極の先端部に限定している。このような構造とすることにより,不要で有害な磁束を低減することができ,特にモータのピークトルクを増大させることができる。
図55に示すモータは,図54のモータに装着した永久磁石の中,各突極近傍の磁石を一部削除したモータである。永久磁石583,584,585,586の径方向の長さが短くなっている。各突極の先端部近傍には,巻線の電流による大きな起磁力が作用するため,永久磁石の減磁が起きやすい。その点で,永久磁石の厚さなどの量的な問題,コスト的な問題があり,突極の先端部近傍には永久磁石を配置しない例である。また,突極の先端部近傍の磁束はトルク発生に有効に作用している比率が大きいことも,図55のモータ構成とする理由の一つである。
このような漏れ磁束を低減する永久磁石の配置は,空間を通過する磁束成分を対象としており,その永久磁石を含む磁路の磁気抵抗が大きいので,必ずしも,前記の永久磁石を軟鉄部へ密着させる必要はない。図52の永久磁石473,480のように永久磁石を軟鉄部から浮かせて配置することも可能である。ステータ突極の周辺に磁石の支持部材を配置し,磁石を固定することができる。具体的な一つの例には,ステータ突極の周辺の凹凸部の凹部へ樹脂を磁石と共に充填する方法がある。ロータ側も同様である。
また,電気自動車,ハイブリッド自動車の駆動用モータの場合,前方への駆動トルクは大きな値が必要とされるが,回生トルクはそれほど大きくない場合には,図52のモータの場合であって,永久磁石473,480は取り付けるが,各突極の反対側へは永久磁石を取り付けないという選択も可能である。これは,所望性能は満たし,コストは低くする構成も現実的な構成である。
逆に,前記永久磁石を,図54,図55に示すように軟鉄部に密着することもできる。具体的には,焼結された永久磁石を接着剤で貼り付けることができる。また,粉状の磁石に樹脂等を加えたいわゆるボンド磁石を軟鉄部に貼り付けることもできる。特に,小型のモータにおいては,型を用いて成形して永久磁石を貼り付ける方法は効果的である。具体的には,プラスチック等の射出成型機あるいは類した成型機の活用が可能であり,量産性,生産コストの点でも実用的である。
図53に示すモータの永久磁石484,485,486,487は,ステータ磁極とロータ磁極が対向するエアギャップ部の近傍に永久磁石が配置されている例である。効果的にトルクを発生する磁束483への直接的作用は少なく,不要な磁束481,482が低減するような配置となっている。なお,各永久磁石の保持は,具体的には,樹脂で磁石を含めてモールドする方法が考えられる。その他にも,種々の固定手段が考えられる。
次に,図52のモータの永久磁石473,475,476などをステータ突極のコア内部へ配置した例,永久磁石480,477,478などをロータ突極のコア内部へ配置した例を図56に示す。不要な磁束495,496を低減する磁石493,494が,それぞれ,ステータ突極のコア内部,ロータ突極のコア内部へ配置されている。具体的には,磁気的には大きな影響与えない程度の細い軟鉄部分49F,49Gにより永久磁石494,493が支持される構造となっている。このような構造とすることにより永久磁石を容易に固定することができる。他の磁石498,499,49Bの例などもコアの内部に配置して示している。
また,図53のモータの永久磁石484,485,486,487などをステータ突極のコア内部へ配置した例を図57に示す。永久磁石503,505,504,506が細い軟鉄部501,502の内側に配置されていて,各磁石の固定が容易である。
図52〜図57に示すように,永久磁石を利用して不要な漏れ磁束を低減することにより,モータの突極部およびバックヨークなどの磁束を低減し,磁気飽和を緩和することによりモータの最大限界トルクを向上することができる。また,不要な磁束が低減されるので,モータの力率を向上させることにもなる。また,永久磁石を配置することにより,突極の凸部,凹部の高さを小さくできる場合は,モータの小型化を実現することも可能である。
次に,図52に示す不要な磁束471,474を低減する他の方法について説明する。それは,473,480などを,永久磁石ではなく,導体の板あるいはリングあるいは閉じた巻線とする方法である。その作用は,473の部分を磁束が変化する時,磁束の変化を妨げるように導体に渦電流が流れ,磁束の変化を妨げる作用を利用するものである。モータが低速で回転するときには,磁束の変化率が小さいのであまり効果がないが,ある程度以上の回転数では磁束の変化率が高くなり,効果的に磁束473,474などを低減することができる。図53,図54,図55,図56,図57のモータにおいても,各永久磁石を導体に置き換え,同様の効果を得ることができる。
図59に本発明の他の例を示す。本発明の例として,(a)のモータについて考えると,ロータ突極31およびステータ突極32は,図52のロータ突極432およびステータ突極431に相当し,環状形状の巻線39へ大きな電流を流すと,図52の471,474などのような不要な磁束も各突極周辺に発生する問題がある。すなわち,環状巻線は簡単な形状とすることができ,製作性の容易化,銅損の低減の点では効果的だが,漏れ磁束成分φLが増加する問題がある。
この問題を低減する一つの方法として,図52の環状形状の巻線39とは別に,図56に示すような各突極511に巻回し,直列に接続した巻線512を付加することができる。巻線512へ電流を通電した時には,図52の有効な磁束成分472と共に巻線512に鎖交する漏れ磁束も発生するが,ロータ側からステータ側へ貫通する不要な磁束471,474は比較的少ない特徴がある。逆に,巻線512は巻線長が長くなり,銅損が増加する問題がある。
巻線512への電流の通電方法には,環状巻線39と直列に接続しておき,両方の巻線でステータ突極とロータ突極の間に起磁力を作用させ,トルクを得,不要な磁束成分を低減する方法がある。他の方法には,巻線39へ大きな電流を流す時だけ,巻線512へも電流を流す方法がある。その他の方法として,通常は巻線39でモータを駆動し,大電流の時には駆動装置を巻線39から巻線512へ切り替えてモータを駆動する方法もある。
次に本発明モータを高速回転で運転する場合の風損を低減する方法について説明する。図49に示すように,ステータ突極の内径側に部材441を追加し,ステータの内面を滑らかな円筒形とすればよい。あるいは,ロータの外径側に部材442を追加し,ロータの外周面を滑らかな円筒形とすればよい。両方の部材441と442を付加しても良い。また,部材441,442を電磁気的な弊害が問題とならない程度に細くし,ステータコア443あるいはロータコア444と同一の材料で製作する方法もあり,この場合にはそれぞれのコア製作と同時に作ることができるので,コスト的に有利である。図55に示すような磁石の配置も可能であり,磁石の支持部は支持が可能な程度に強固な構造にすることもできる。
次に,モータの回転方向の中,特に片方向の回転トルクが改善されるモータ構成について説明する。図13の3相リラクタンスモータについて図14の(b)に示すようなロータ突極の形状とステータ突極の形状とにすることにより,片方向の回転能力が向上することについては先に説明した。また,図16の4相リラクタンスモータについては,図17のロータ突極67,ステータ突極68に示すように,相互に反対方向のロータ軸方向突極幅を広くすることにより,片方向の回転能力が向上することについて説明した。このように,片方向の出力トルクを向上するためには,ロータ突極とステータ突極の形状を円周方向に不等形状にして両突極間の磁気インピーダンスを回転位置によって変化を与え,かつ,その時の他相のロータ突極とステータ突極との磁気インピーダンスとの相対差を作り出すことにより,リラクタンストルクを向上させることができる。なお,各突極の磁気特性は,単純に突極の形状を変えるだけでなく,くぼみを持たせたりして,透磁率の異なる材質とすることでも可能である。
次に,本発明のモータにおいて,モータ効率を改善する方法について,図58に示し,説明する。図58のモータは,図57のモータに,永久磁石611,612を追加した構成である。永久磁石611,612の磁石の向きは,内周側から外周側へN極が向いた永久磁石であり,巻線の電流によって磁束613を励起する方向に向いている。このように永久磁石を,磁束が励起される方向へ向けて配置することにより,例えば,図12の(a)のモータの場合,巻線39,40,41に通電する電流を低減することができる。モータの磁気回路の励磁電流の一部を永久磁石が負担することになる。モータの力率も改善されることになる。
なお,電流が零の時の永久磁石に起因するコギングトルクは,A相,B相,C相の磁気的なバランスをとることにより平滑化可能である。一般的には,大電流時の効果よりも,低負荷時の低電流時の銅損低減の効果が大きく,軽負荷の時間的比率が高くかつ効率が重要視される用途では特に効果的である。
この特性は,本発明モータを高速回転での定出力制御の運転で活用する場合には,特に重要な特性である。例えば,使用回転数範囲が0〜10000rpmのモータで,2500rpmを基底回転数とすると,2500rpmで定格電圧となるので,7500rpmの時には1/3の平均磁束で運転制御しなければならない。このような状況では,リラクタンスモータは磁気エネルギーとコエネルギーの関係より力率が低下しがちである。もし,この運転領域において,永久磁石でモータの磁束を負担することができれば,このような高速回転での力率を改善することができる。
次に,本発明モータの高トルク化,高出力化の方法について説明する。本発明モータのトルクは,(1)〜(5)式に示すように,dφ/dθに比例する。このdφ/dθを大きくする具体的なモータ構造例として,図12の(a)のモータのロータ突極31,33,35とステータ突極32,34,36を変形した例を図60,図61に示す。各相の突極を通過する磁束φを大きくするためには,軟磁性体の飽和磁束密度BMが有限なので,ステータ突極とロータ突極との対向面積が広いこととその他の部分のモータの磁気回路が磁気飽和しない構造とすることが条件となる。
図60のモータは,ロータ突極521,523,525とステータ突極522,524,526とのそれぞれの対向面積を広くするために,ステータ突極のロータ軸方向断面形状を図60に示すように凸型形状とし,ロータ突極のロータ軸方向断面形状を図60に示すように凹型形状としている。このような構造とすることにより,図12の(a)のモータに比較し,図60のモータはステータ突極とロータ突極との対向面積が広くなり,dφ/dθを大きくすることができ,トルクの増大が可能となる。
図61に示すモータは,ロータ突極531,533,535とステータ突極532,534,536のロータ軸方向断面形状が図61に示すように三角形状に近い台形形状となっている。この構造においても,単純論理的には,図60に示した例と同様の効果があり,さらに,ロータ突極部およびロータ突極部の近傍の磁気飽和を考える時,図61の形状の方が磁気飽和しにくいという点で優れている。
次に本発明のモータにおいて,モータの磁路の磁気飽和を低減する方法について説明する。図62の上側の図はステータコアの側面図,図62の下側の図はその下面図である。541はステータ突極,542はその突極の根元が太くなった形状542,543を示している。このように,ステータ突極541の円周方向を利用して磁路断面積を拡大することにより磁路の磁気抵抗を低減している。さらに,拡大した部分542,543のロータ軸方向形状はステータ突極の中央部に近い部分を主とし,ロータ軸方向両端はステータ突極541より凹ませることにより,対向するロータ突極との漏れ磁束を低減し,また,他の相の磁気回路がロータ軸方向に隣接して配置されるときの隣接磁気回路との漏れ磁束も過大にならない形状としている。
なお,図60,図61に示すような溝型の磁極形状と図62の形状および考え方を複合した構造の磁極も製作することができる。
次に,本発明のモータを電磁鋼板を金型で絞り加工した部品で製作する例を図63に示し,説明する。電磁気的な基本構成は図12の(a)のモータと同じである。551はA相のロータ突極,553はA相のステータ突極,552は相互の間のエアギャップ部である。554は磁束通過用磁路,555はB相のステータ突極,556はC相のステータ突極であり,円周方向形状はそれらの側面形状が図9の形状をなしており,図63では破線で示している。
図63のモータの例は,各ステータ突極,ステータバックヨーク,ロータ磁極,ロータバックヨークが成形された各電磁鋼板とロータ軸1で構成されている。各電磁鋼板は,電磁鋼板の成形のし易さから,継ぎ目557,558,559等で分離されていて,突き合わされている形状である。各部の磁路は2枚の電磁鋼板で構成されていて,前記の突き合わせ部は隣接する電磁鋼板の突き合わせ部と一致しない構成として,突き合わせ部のエアギャップによる磁気抵抗の変化に対して磁束が隣接する電磁鋼板からも回り込める構成とし,磁気抵抗の増大,突き合わせ精度のばらつきによる磁気抵抗ばらつきを低減している。
55A,55B,55Cは各相の巻線であり,それらの作用は図12の(a)のモータと同様であり,電磁気的作用も原理的に同じである。
なお,ロータ側の電磁鋼板をロータ軸1へ組み付け後に,ボビンを装着し,各巻線をその外周からボビンへ巻き込む方法であれば,前記の突き合わせ部をロータから排除することもできる。その他にも,巻線コイルの組み込み順と電磁鋼板の成形の方法を工夫して,前記突き合わせ部を排除することも可能である。
図63に示すようなモータ構成は,金型を使用して電磁鋼板を切断加工,絞り加工を行うことにより製作することができるので,生産性が高く,コストを低減することができる。小型のモータで,各磁路の厚みが電磁鋼板1枚で構成できる大きさのモータの場合は特に生産性が高い。なお,使用される電磁鋼板の特性としては,電磁気的特性だけでなく,成形性に優れた材質である必要がある。また,図63は1例にすぎず,電磁鋼板で製作される各部品は,絞り加工の容易さ,ロータ軸1,巻線553,その他,軸受け,モータケースなどの組み立ての都合などを配慮した構造、形状とすることができる。また,各部の電磁鋼板の枚数を3枚以上の構成とすることもできる。
次に,本発明モータを構成する軟磁性材料について,図64に示し,説明する。図64の(a)は,アモルファスの積層体である。アモルファスは非晶質金属とも言われ,鉄損が小さいので高周波特性に優れている。しかし,その性格上,25マイクロメータ程度の薄膜の軟磁性体なので,接着剤などによりある程度積層して厚みを持たせて積層体561として加工,組み立てを行った方がモータの製作効率がよい。アモルファスの積層体561の片側あるいは両側に通常の電磁鋼板562を貼り合わせて図64の(b)あるいは(c)の形状として加工,組み立てを行っても良い。アモルファス積層体561と電磁鋼板562を貼り合わせた複合材料とする,即ち,ある程度の強度を持つ電磁鋼板562を基板としてアモルファスを積層することができる。また,この複合材料は、金型を使用して打ち抜き加工する時の打ち抜き性がよい。また,モータとして完成したときの特性として,磁束密度が高いという電磁鋼板562の特性と低鉄損のアモルファス積層体561の特性とが複合された特性を得ることができるなどの特徴がある。
また,3次元の方向の磁路を実現する具体策として,本発明モータの軟磁性体材料として,磁束の方向に制限がない圧粉磁心を使用することが挙げられる。
図26のモータにおいて,ステータコア224には冷却用の通路225が設けてある。この冷却用通路225へは,空気,ガスなどの気体,水,油などの液体,あるいはミストなどの混合物を通し,モータを冷却することができる。
特に,アウターロータ型のモータの場合,ステータ巻線がモータの中心に近い部分に配置されているので,モータの中心近傍に簡単な冷却手段を設けて,低コストで効果的なモータ冷却を実現することができる。また,アウターロータ型のモータは,発熱部がモータの内側に配置されているので,一般的に,冷却効率が悪いという面があり,その解消方法としても有力である。冷却媒体を低温に冷却して冷却用通路225へ通せば,より効果的にモータを冷却することができる。また,冷却用通路225は,金属あるいは樹脂などのパイプで構成されていても良い。また,自動車へモータを取り付けて駆動する場合には,モータと駆動装置を一体化する,あるいは近傍に配置することも多く,駆動装置の冷却とモータの冷却を直列に接続することもできる。
図26には,巻線219,220が,その断面が円形の金属パイプで構成された例が図示されている。そして,この金属パイプの中央の穴に冷却用の気体あるいは液体あるいはミストなどの混合物を通してモータを冷却することができる。
金属パイプの材料は,銅,アルミニュームなどが適している。銅は導電率が高いが比重が大きいので,軽量化の必要性が高い場合はアルミニュームあるいはアルミニューム合金を使用して軽量化する。アルミニュームの導電率は銅ほど高くないので,発熱の問題を金属パイプと冷却媒体でカバーする方法がある。図26の巻線221は,四角形状の金属パイプの例である。円形の金属パイプに比較して,四角の金属パイプは,巻線間スロットのスペースをより効果的に活用することができる。
図87に示すような従来のモータの場合,巻線に銅パイプの使用することは,巻線の太さが細いのであまり現実的ではなかった。図87のモータを多極化する場合には,その断面図から容易に想像できるように,巻線の配置されるスロットのスペースはさらに狭くなっていく。しかし,本発明のモータの場合,構造的にモータの多極化が容易であり,多極化しても環状の巻線を配置するスロット形状は狭くなることはなく,変化しない。また,巻線の電圧は,(2)式より,磁束鎖交数Ψの角度変化率dΨ/dθに比例するので,多極化すると極数に比例して磁束鎖交数Ψの角度変化率dΨ/dθが大きくなり,各相の巻線の巻回数を小さくする必要性が出てくる。結果として,本発明モータを多極化した場合には巻線の巻回数が少なくなり,図26の各スロットに巻回する巻線は,従来のモータに比較して,太い巻線とすることができる。また,本発明モータの巻線形状は,簡素な環状形状とすることができる。それらの結果,本発明モータでは金属パイプで冷却機構を兼ねた巻線を実用的に実現できる。なお,金属パイプによって,電流の通電と冷却の両方を行う方法は,本発明の種々モータへ適用することができる。
なお,金属パイプの導体を活用した冷却の方法では,電気絶縁の問題があり,電気絶縁性の高い冷却媒体を使用する必要がある。高圧空気を冷却媒体とする場合には,異物の混入を避けるためのフィルターが必要である。冷却水を使用する場合には,水の電気伝導度を低く保つ工夫が必要である。冷却油を循環させる場合は,油の電気伝導度は低いので,比較的容易である。また,巻線の端には,電流の供給線への接続に加え,電気絶縁を保ちながら,冷却媒体の注入,排出を行うための処理が必要である。
次に,本発明モータの各相のステータ磁極のロータ軸方向長さMLPについて説明する。図65,図66に,図15に示す4相のモータのステータ突極形状とロータ突極形状と各巻線の形状を変形した例を示す。図65のMLはステータのロータ軸方向長さである。655はA相ステータ突極,656はB相ステータ突極,658はC相ステータ突極,659はD相ステータ突極であり,ここには概その配置を示していて,具体的な形状は図66に示している。図66は,ステータとロータが対向するエアギャップ面の各部の円周方向形状を,直線上に展開した図であり,水平軸は回転角θを電気角で表し,縦軸はロータ軸方向を示している。図66に示すように,各相のステータ磁極のロータ軸方向形状が図65に示した形状より大きくなり,隣接したステータ磁極側へ互い突き出た形状となっている。各ステータ磁極のロータ軸方向長さはMLPであり,相数Nは4として,MLP>ML/N=MLP/4の関係となっている。図65に示す断面図では,巻線のスペースが必要であることから,MLP<ML/N=MLP/4となるが,隣接したステータ磁極側へ互い突き出ることによってMLPを大きくしている。なお,図66の各ステータ突極上の正負のマークは磁束の通過する方向を示している。
このように,ステータ突極のロータ方向長さMLPを大きくする理由は,各ステータ突極および各巻線に鎖交する磁束φの回転変化率dφ/dθを大きくし,モータの発生トルクを大きくするためである。ここまでに示した本発明の各モータのステータ磁極形状についても,同様にステータ磁極形状を変形することが可能である。
657と65Eは円筒状形状が小さなエアギャップを介して互いに対向した形状であり,ステータのバックヨークからロータのバックヨークまで磁束が比較的容易に通過できるような構成とした磁束通過用磁路である。
651はロータで,652,653は,図9に示したようなロータの突極であり,図66の場合にはロータ突極の円周方向位相は同一である。また,1組のロータ突極が2組のステータ突極に対向していて,共用されている。図66の652Zは,ロータ突極652,654の突部である範囲を示す図である。
図66は,各巻線の形状に関し,巻線65B,75Cは単純な環状の巻線であることを示しているが,巻線65A,65Dの形状は隣接するステータ磁極がそれぞれロータ軸方向へ突き出た形状となっているので,ロータ軸方向に波状の凹凸のある環状の巻線形状となっている。巻線65A,65Dの長さが長くなるが,鎖交する磁束φの回転変化率dφ/dθを大きくすることができる。
次に,図67,図68に,図24に示す6相のモータのステータ突極形状とロータ突極形状と各巻線の形状を変形した例を示す。なお磁束の方向が逆の方向を向くステータ磁極を同一の相であると定義すると,3相のモータと解釈することもできる。672はA相,D相のステータ磁極,675はB相,E相のステータ磁極,672はC相,F相のステータ磁極である。図68はステータとロータが対向するエアギャップ面の各部の円周方向形状を,直線上に展開した図であり,水平軸は回転角θを電気角で表し,縦軸はロータ軸方向を示している。図68に示すように,各相のステータ磁極のロータ軸方向形状が図67に示すステータのロータ軸方向長さMLの約1/3となっている。各ステータ磁極のロータ軸方向長さはMLPであり,相数Nは6として,MLP>ML/N=MLP/6の関係となっている。
図68において,巻線673,676,679の形状は隣接するステータ磁極がそれぞれロータ軸方向へ突き出た形状となっているので,ロータ軸方向に波状の凹凸のある環状の巻線形状となっている。67A,67B,67C,67Dは非磁性体で,ロータ軸方向の磁気的な作用を分断している。
次に,図69,図70に,図67,図68に示す6相のモータをさらに変形した例を示す。69Dはロータで,691はロータ突極であり,図67において配置されていたロータ内の非磁性体を排除し,ロータのロータ軸方向形状を全長にわたって同一としている。701はロータの突部の範囲を示している。672はA相,D相のステータ磁極,675はB相,E相のステータ磁極,672はC相,F相のステータ磁極である。69A,69Cは非磁性体である。693,696,699は巻線である。
各ステータ突極と巻線の形状は,その展開図70に示す形状となっている。各ステータ突極のロータ軸方向長さMLPは,図68に示した例に比較してさらに大きくなっていて,磁束φの回転変化率dφ/dθを大きくすることができる。
次に,図18,図19に示した5相のモータを変形した例を図71に示す。711はA相のステータ突極,712はB相のステータ突極,713はC相のステータ突極,714はD相のステータ突極,715はE相のステータ突極である。
次に,図66のモータを6相に変形した構成例を図72に示す。721はA相のステータ突極,722はD相のステータ突極,723はC相のステータ突極,724はF相のステータ突極,725はE相のステータ突極,726はB相のステータ突極である。727は各相のステータ突極に共通の磁束通過用磁路である。
728,729,72A,72B,72C,72Dは各巻線である。この構成のモータは,前記したように,各ステータ突極に対して差動的に電流を通電することにより,各相のステータ磁極を他相に影響することなく単独に励起することができる。その結果,図68,図70に示した例に比較して,図72に示すモータはリラクタンス型のモータでありながら,ステータ磁極を密に配置することが可能である。また,6相の中,2相もしくは3相が同時にトルクを発生することができ,よって効果的にトルクを発生することができる。
また,図72において,磁束通過用磁路727と巻線72Aを排除した構成のモータとすることもでき,それは,図71の5相のモータを6相化したモータでもある。
次に,ステータ磁極間の漏れ磁束を,巻線の形状と巻線の配置により低減する方法について,図73,74に示し,説明する。図73は図71のRJ〜RJの断面図であり,同一部は同一符号で示している。
71Aはステータのバックヨークである。712はB相のステータ突極の断面図,714はD相のステータ突極の断面図である。716,717,718,719は各巻線の断面図である。これらの巻線の形状は,図73,図74の(a)に示すように,平板状の形状をした導体を3ターン巻回した例である。
これらの各相の巻線は,各相のステータ磁極を遮るように配置されており,各巻線が各相のステータ磁極へ作用する起磁力は,各相のステータ磁極の先端部近傍に作用する構成とされ,各ステータ磁極からロータ側へ前記起磁力が作用する構成とされている。その結果,他相のステータ磁極との間の漏れ磁束を大幅に低減することができる。また,例えば図74の(a)に示す巻線718のように平板状の巻線形状をしているので,矢印71Bで示すような漏れ磁束が増加するとき,矢印71Cに示すような渦電流が誘起され,この渦電流が前記磁束71Bの増加を妨げる効果があるので,他の相とのステータ磁極間の漏れ磁束71Bを低減させることができる。
なお,本発明モータの巻線形状は,図74の(a)等に限定されるわけではなく,図74の(b)のようにラジアル方向に分割されていても良い。また,通常の丸線,より線でも可能である。なお,巻線718の各部分に流れる電流は,矢印71Cのような渦電流と巻線718に通電される相電流との合成電流となる。また,各相の巻線形状は,図73に示すような形状に限定されるわけではなく,各巻線がステータ磁極のオープニング部の近傍まで配置されていれば,他の相のステータ磁極間の漏れ磁束を低減する効果がある。
図1〜図74のモータおよび本文の説明で本発明モータについて示したが,それらのモータを組み合わせて複合モータとすることができる。例えば,ロータ軸方向に複数個のモータを並列に取り付け,かつ,位相を変えることにより多相モータを構成することができる。あるいは,モータの外径側と内径側に異なる2個のモータを配置し,モータ内部のスペースをより効果的に活用することができる。
また,図26〜図74に示すモータ構成技術を図1〜図25のモータへ適用した構成とすることができ,それぞれの効果を得ることができる。一部の組み合わせ構成例について示したが,全組み合わせについて記述すると記述量が膨大となり,現実的ではない。
例えば,図12の(b)あるいは図30あるいは図32のモータにおいて,さらにモータ出力トルクを大きくする方法例として次のような方法がある。ロータステータ間のエアギャップを小さくする。多極化する。図52に示すような,漏れ磁束を低減するための永久磁石477,478等を形状を変えて配置する。図61,図65〜72のように,ステータ突極のロータ軸方向長さMLPを大きくする。図73,74に示すように,ステータ磁極間の巻線を平板化し,かつ,ステータ磁極間の漏れ磁束を遮るように配置する。より強力な永久磁石,高磁束密度で低鉄損の軟磁性体を使用する。1個のモータの中に,内径側と外径側のように,複数組のモータを組み込む。以上のような技術を組み合わせ,重ね合わせることにより大きなモータ出力トルクを実現することができる。
以上、本発明に関する種々形態の例について説明したが、それらを種々変形することも可能であり、そのような変形例も本発明に含まれる。例えば、相数,極数については,例で示したモータより大きな相数,極数への展開が可能であり,特に極数はトルクと直接的に関係が強い。
モータの形態については,エアギャップ形状が円筒形であるインナーロータ型モータを主に説明したが,アウターロータ型モータ、エアギャップ形状が円盤状であるアキシャルギャップ型モータ等に変形できる。また、エアギャップ形状が円筒形状をややテーパ状に変形したモータ形状も可能であり、特にこの場合には、ステータとロータとを軸方向に移動させることによりエアギャップ長を変化させることができ、界磁の大きさを変化させモータ電圧を可変することが可能である。このギャップ可変により定出力制御を実現することが可能である。
また,説明した本発明モータでは,各巻線がロータ軸方向に発生する起磁力は,3相正弦波交流のように電流総和が零になるようにバランスしていないことがある。したがって,モータの動作状態によっては,ロータ軸が磁化されて鉄粉が付着するなどの問題を発生することがある。この問題を解決する方法として,ロータ軸の同軸上に巻線を付加し,アンバランス起磁力をキャンセルする電流を通電することもできる。
また、2個のモータを、ロータ軸に起磁力が残らないように電磁気的に対称に配置構成することにより前記起磁力の問題を解消することも可能である。例えば、ステータ磁極の配置順を逆に設定し巻線の電流方向を逆に設定すれば、トルクの発生方向は同一で巻線に流すべきアンバランスな電流分の起磁力を反対方向に作り出すことができ、2個のモータのアンバランスな起磁力が相互に相殺される構成とすることができる。さらに、3個以上の電磁気的にアンバランスなモータを同軸上に配置して電磁気的なバランスを保つこともできる。
また、複数のモータを複合化する場合、あるいは、モータの応用機器と組み合わせる場合、部品の共用などによる簡素化も可能である。また、本発明モータの一部を省略して削除した構造も可能である。
軟磁性体としては通常の珪素鋼板を使用する他に、アモルファス電磁鋼板、粉状の粉末軟鉄を圧縮成形した圧紛磁心等の使用が可能である。特に小型のモータにおいては、電磁鋼板を打ち抜き加工、折り曲げ加工、鍛造加工することにより3次元形状部品を形成し、前述の本発明モータの一部の形状と成さしめることもできる。
モータの巻線については、ループ状の巻線を多く記述したが、必ずしも円形である必要はなく、楕円形、多角形、磁気回路の都合などによりロータ軸方向に部分的な凹凸形状が設けられた形状等の多少の変形は可能である。また,例えば180°位相の異なるループ状巻線がステータ内にある場合は、半円状の巻線として180°位相の異なる半円状巻線に接続して閉回路とすることにより、ループ状巻線を半円状巻線に変形することも可能である。さらに分割して、円弧状巻線に変形することも可能である。
また、各ループ状巻線はスロットの中に配設された構成のモータについて説明したが、スロットのない構造でステータのロータ側表面近傍に薄型の巻線を配置した構造のモータ、いわゆるコアレスモータとすることも可能である。
また,ステータ磁極,ロータ磁極の円周方向配置については,同相の部分は電気角的に同一の位置に配置される構造を基本として説明したが,トルクリップル,振動,騒音を低減するため,円周上に配置される各部分を高調波がキャンセルされるように円周方向あるいはロータ軸方向にシフトして配置することが効果的である。具体的には,対象となるモータ部について,例えばAグループとBグループに二分し,問題となる高調波の周期の1/2だけ片方のAグループのモータ部を円周方向に位置をシフトすれば,前記の問題となる高調波をキャンセルすることができる。
これらの種々変形したモータのついても、本発明モータの趣旨の変形技術は本発明に含むものである。
次に,本発明モータを駆動制御する駆動回路および駆動方法について説明する。
図75は,3個の巻線737,738,739を持つリラクタンスモータの駆動回路として広く使用されている回路を示す。3個の巻線737,738,739へ,片方向の電流ではあるが,自在な電流を流すことができるので種々の駆動法に活用することができる。731,732,733,734,735,736は,電流のオン,オフ制御が可能な電力制御素子で,いわゆる,IGBT,パワーFETなどである。各電力素子には逆方向電流を通電するダイオードが接続されていて,前記各電力素子がオフとなるときに電流を通電するダイオードである。この時,各ダイオードは,モータ内および配線部の磁気エネルギーの電源への回生,モータおよびモータ負荷の運動エネルギーの電源への回生を行うこともできる。730は直流電源である。
図87に示すスウィッチトリラクタンスモータも図13の制御回路を用いて制御することができる。
図75の駆動回路を使用して前記の図8のモータを駆動する制御について図77に示す。図8のA相巻線24は図57の巻線737,巻線25は巻線738,巻線26は巻線739である。図61の横軸はロータの回転位置を電気角で示し,各電力素子の制御タイミングを示している。縦軸はその各電力素子の制御および非制御を示しており,「1」は「制御する範囲」であることを示しており,「0」は「非制御の範囲」を示している。前記の「制御する範囲」とは,電力素子をパルス幅変調制御いわゆるPWM制御し,巻線に電流を通電することを指している。したがって,「制御する範囲」と「非制御の範囲」は,巻線に電流を「通電する範囲」と「通電しない範囲」という言葉に置き換えても良い。また,「非制御の範囲」では該当する電力制御素子は電流を流してはいけないわけではなく,例えば,3巻線737,738,739の全てに常に電流を流すが,その電流大きさが異なるように制御するという制御であっても良い。この電流制御は,具体的には,あるロータ回転位置の範囲の間は一定値の電流とする,電流値を徐々に増加する,台形状にする,正弦波状にする等種々の制御が可能であり,もちろん電流の大きさも可変とすることができる。また,電流制御ではなく,電圧制御でモータを駆動することもできる。また,PWMの電流変調には種々の方法を使用することができる。
図77において,電力素子731は図77の(a)が1の範囲で制御することを示し,それぞれ,732は(b),733は(c),734は(d),735は(e),736は(f)が1である範囲で制御されることを示している。この時,図8のモータのA相のロータ突極18とステータ突極19は,例えば図77の0〜120°の範囲で図45に示すようなロータ突極18とステータ突極19の配置関係にあり,図75の電力素子731,732によって巻線737へ電流を通電すれば図8のモータがトルクを発生する関係である。その状態で,ロータが回転すると回転位置に応じて各動作すべき電力素子,モータのロータ突極とステータ突極が,A相,B相,C相,A相・・・・と順次変わっていく。整理すると,電気角で0〜120°の範囲では,電力素子731と732が制御されて巻線737に図77の(g)の電流CC1が通電され,図8のモータのロータ突極18とステータ突極19が図45のような位置関係にあって,前記電流による起磁力が印加され磁束が誘起されて反時計回転方向のトルクがロータに発生する。電気角で120〜240°の範囲では,電力素子733と734が制御されて巻線738に図77の(h)の電流CC2が通電され,図8のモータのロータ突極20とステータ突極21が図45のような位置関係にあって,前記電流による起磁力が印加され磁束が誘起されて反時計回転方向のトルクがロータに発生する。そして,電気角で240〜360°の範囲では,電力素子735と736が制御されて巻線739に図77の(i)の電流CC3が通電され,図8のモータのロータ突極22とステータ突極23が図45のような位置関係にあって,前記電流による起磁力が印加され磁束が誘起されて反時計回転方向のトルクがロータに発生する。
また,図77の電流の制御範囲には,2組の相が同時に駆動できる領域も多く,図77に破線で示すように制御範囲を広げることもできる。また,図8のモータでトルクの方向が反対で,時計回転方向のトルクを発生するときは,図45の関係から容易に想像できるように,図45のロータ突極とステータ突極とが対向する部分が,それぞれ,円周方向の逆方向の端になり,ロータ回転位置と電流の通電範囲の関係が大きく変わる。
次に,図12の(a)に示すモータの電流の駆動法について説明する。図8のモータの場合には,A相,B相,C相の電磁気的な動作は各相が独立の関係であったが,図12の(a)のモータはB相とC相とが電磁気的に干渉するので,制御の方法が変わる。制御回路は図75に示すものであって,図12の(a)のA相巻線39は図57の巻線737,巻線40は巻線738,巻線41は巻線739である。各電力素子の動作範囲は,図78のようになる。
電気角で0〜120°の範囲では,電力素子731と732が制御されて巻線737に図78の(g)の電流CC4が通電され,図12の(a)のモータのロータ突極31とステータ突極32が図45のような位置関係にあって,前記電流による起磁力が印加され磁束が誘起されて反時計回転方向のトルクがロータに発生する。
電気角で120〜240°の範囲では,電力素子733と734が制御されて巻線738に図78の(h)の電流CC5が通電され,同時に,電力素子735と736が制御されて巻線739へ巻線738の電流とは逆向きの図78の(i)の電流CC6=−CC5が流される。この時,図12の(a)のモータのロータ突極20とステータ突極21が図45のような位置関係にあって,前記電流による起磁力が印加され磁束が誘起されて反時計回転方向のトルクがロータに発生する。そしてこの時,ロータ突極37とステータ突極38の間には前記電流CC5+CC6=CC5−CC5=0が発生する起磁力が印加されるが,2つの電流の和は零なので起磁力が作用しないことになる。その結果,この時,ロータ突極37とステータ突極38の間での磁束の誘起は小さく,トルクは発生しないことになる。
電気角で240〜360°の範囲では,電力素子735と736が制御されて巻線739に電流CC7が通電され,図12の(a)のモータのロータ突極37とステータ突極38が図45のような位置関係にあって,前記電流による起磁力が印加され磁束が誘起されて反時計回転方向のトルクがロータに発生する。
なお,図12の(a)の巻線40について,巻線39の電流とは逆向きに電流を流したが,この巻線40に逆向きの電流を流すということは,巻線の巻回方向を逆にするということと同じことである。また,制御回路から巻線への接続を逆にするということとも同じことである。
図79に,図12の(a)のモータモデルへ図78の通電モードで,ロータ回転位置に同期して順次,A相,B相,C相と制御する例について,コンピュータで非線形有限要素法を使用して,モータの3次元形状の磁界解析を行い,モータの出力トルクを計算した例を示す。横軸は電気角で,縦軸はモータの出力トルクである。トルクT−A,T−B,T−Cは,それぞれ,A相,B相,C相について該当する巻線へ電流を電気角で120°の範囲だけ流し,ロータ突極とステータ突極とが発生するトルクである。特に,B相のトルクT−Bについては,2つの巻線40,41へ逆向きの電流を流し,差動的に動作させているが,理論通りのトルクが得られることが確認できる。なお,電気角で120°周期のトルクリップルが見られるが,この程度であれば使用可能な用途も多い。また,このトルクリップルを低減する手段として,モータの磁極形状を改良する方法,各相の電流を電気角で120°〜180°の範囲でも流すことによりトルクの低下を低減する方法,電流の振幅で補正する制御的な方法など,多くのトルクリップル低減方法があり,改良が可能である。
次に,3相の巻線の片方向の電流を制御する他の回路を図76に示す。直流電源730の他に,同様の直流電源あるいは単にコンデンサで構成される第2の直流電源73Dを備え,73Dに蓄えられたエネルギーを直流電源730へ移動可能なDC−DCコンバータ73Eを備えた2電源方式である。この制御回路は公知の制御回路であり,図87のスウッチトリラクタンスモータを駆動することもできる。
巻線737の電流を電力素子732で制御し,電力素子732がオフとされると電流はダイオード73Aを介して第2の直流電源73Dへ回生され,巻線738の電流を電力素子734で制御し,電力素子734がオフとされると電流はダイオード73Bを介して第2の直流電源73Dへ回生され,巻線739の電流を電力素子736で制御し,電力素子736がオフとされると電流はダイオード73Cを介して第2の直流電源73Dへ回生される。この方式で磁気エネルギーの回生が可能となるためには,第2の直流電源73Dの電圧が直流電源730に比較して無視できない程度に大きくなければならない。そうでないと,回生時間を短くすることができない。例えば,直流電源730の電圧が200Vの時,第2の直流電源73Dの電圧が50V以上というような値である。
図76の制御回路の特徴は,各巻線の通電に直接的に必要な電力素子の数が少ないことである。DC−DCコンバータ73Eは,各種の構成が可能であり,比較的簡単な構成とすることもできる。そして,このDC−DCコンバータ73Eは,複数のモータの制御回路に共通に使用することができ,例えば,5個のモータを制御するときにもDC−DCコンバータ73Eは1個の構成とすることもできる。したがって,モータ1個あたりの制御回路としてDC−DCコンバータのコスト,制御装置スペースを低減することができる。そして,図76の制御回路で,図77,図78に示した電流制御を行うことができる。
次に,電力素子4個で3巻線の電流を制御する制御回路を図80に示す。巻線775の電流は電力素子771と772で制御し,巻線776の電流は電力素子771と774で制御し,巻線777の電流は電力素子773と774で制御する。今,図12の(a)に示すモータを駆動する場合について考えてみる。図12の(a)の巻線39,40,41は,それぞれ,図80の巻線775,776,777である。電力素子771の制御する領域は図81の(a),電力素子772の制御する領域は図81の(b),電力素子773の制御する領域は図81の(c),電力素子774の制御する領域は図81の(d)である。
図81に示すように,モータの円周方向の電気角に応じて,0°から120°の間では電力素子771と772で制御し巻線775の図81の(g)に示す電流を制御する。
120°から240°の間では電力素子771と774と773で制御し巻線776と巻線777の図81の(h),(i)に示す電流を制御する。
240°から360°の間では電力素子773と774で制御し巻線777の図81の(i)に示す電流を制御する。
図80の制御回路で図81の(g),(h),(i)に示す電流を制御する場合,電流の切り替えタイミングで,ある巻線に電流が流れている時,その巻線の磁気エネルギー,電流を実害のない程度に直流電源730へ回生してから次の巻線の通電を開始しなければならないので,動作が少し遅れる。例えば,巻線775へ電流が流れているときに電力素子771,772をオフした場合,その電流はダイオード77A,77Bを介して直流電源730へ回生されることとなり,巻線775の両端の電位が変化し,逆転するので,次に通電する巻線776の制御に不都合となる。時間的には0.001秒から0.01秒のオーダーの短い時間ではあるが,モータの出力トルクが断続的になる。低速回転では,電流が欠落する時間は,比率的にも小さく,問題とならないことが多いが,高速回転においては,動作遅れの時間が平均トルクを低下させることになる。
また,電力素子774には,巻線776の電流と巻線777の電流とが同時に流れることになり,電力素子774の電流容量を約2倍にする必要もある。
図80に示す制御回路の特徴は,電力素子の数が4個で済み,コスト,スペースを小さくできる点である。
また,ダイオード778の追加により,巻線776へ流れる逆流電流を防止することもできる。小型モータで,巻線抵抗が十分に大きければ,図81に示した回生動作のタイミングを取らずに制御することも可能である。
次に,図12の(a)に示すモータの駆動において,2個の巻線へ電流を通電しても電流容量を大きくせずに構成できる方法について示す。巻線40,41は,図81の電気角で120°〜240°の間は同時に電流を通電しなければならないので,図80の制御回路で,それぞれ,巻線775,777で駆動させ,巻線39を図80の巻線776に配置する。このようにすれば,巻線40,41へ同時に電流を通電しても,各電力素子の電流はそれぞれ均一となり,電力素子の電流容量を2倍とする必要がなくなる。ただし,この場合には,前記の区間において,電力素子771と774とが同時にオン状態とならないように制御する必要がある。電力素子771と774とが同時にオンとなった場合には,120°〜240°の区間で巻線776へ電流が流れることになり,不都合である。
また,前記の回生時間の問題を解決する他の方法としては,図76に示した第2の直流電源73Eを追加し,ダイオード77A,77Cを第2の直流電源73Eへ接続する構成とする方法が挙げられる。この場合は,ダイオード77A,77Cを介して電磁エネルギーを第2の直流電源73Eへ回生する構成となるので,前記の回生時間を取る必要がなくなり,図78の(g),(h),(i)に示すような電流の制御が可能となる。
なお,図80の構成の制御回路は,図12の(b)に示すモータ,図16に示す4相のモータの制御へも適用できる。また,図80の構成の制御回路は,図87に示すスウィッチトリラクタンスモータの駆動も可能である。また,図80の制御回路は,電力素子の配置を直流電源730の正方向と負方向とが対称的に反対となった構成としても,論理的に成り立つ。よって,その構成も本発明に含まれる。
次に,電力素子4個で3巻線の電流を制御する制御回路を図82に示す。なお,この制御回路では,図80の制御回路のように,電流が特定の電力素子に集中することはなく,電流容量を増加させる必要はない。
巻線795の電流は電力素子791と792で制御し,巻線796の電流は電力素子793と792で制御し,巻線797の電流は巻線796と直列に電力素子793と792で制御し,通電する。なお,ここで,巻線797と巻線796とを直列に接続して電圧をかけ,制御する狙いは,両巻線が差動的にあるステータ磁極を励磁する場合,両巻線に誘起される電圧の和が一定値を超えない関係とし,後記するように,多くの場合,片側の巻線の誘起電圧は零となるように制御するためである。
今,図12の(a)に示すモータを駆動する場合について考えてみる。図12の(a)の巻線39,40,41は,それぞれ,図82の巻線795,777,776である。電力素子791の制御する領域は図83の(a),電力素子792の制御する領域は図83の(b),電力素子793の制御する領域は図83の(c),電力素子794の制御する領域は図83の(d)である。
図83に示すように,モータの円周方向の電気角に応じて,0°から120°の間では,電力素子791と792で制御し,巻線795の図83の(g)に示す電流とする。
120°から240°の間では電力素子793と792で制御し,巻線796と巻線797へ直列に電流を通電し,図83の(h)に示す電流とする。この時,図12の(a)に示すモータでは,巻線40と41へ逆方向の電流を通電することを意味し,これらの両巻線に鎖交する磁束の和がステータ突極36を通過する磁束φbと等しくなる。従って,両巻線に誘起される電圧の和は,磁束φbの変化率dφb/dtであって,例えば,C相のステータ突極38を励起する時に巻線41に発生する電圧振幅と同じ値になる。その結果,巻線796と巻線797とを直列に駆動しても,電圧的には問題ないことになる。
240°から360°の間では電力素子793と794で制御し,巻線796の図83の(i)に示す電流とする。
図82の制御回路で図83の(g),(h),(i)に示す電流を制御する場合,電流の切り替えタイミングで,ある巻線に電流が流れている時,その巻線の磁気エネルギー,電流を,実害のない程度に直流電源730へ回生してから次の巻線への通電を開始しなければならないので,動作が少し遅れる。例えば,巻線795へ電流が流れているときに電力素子791,792をオフとした場合,その電流はダイオード77A,77Bを介して直流電源730へ回生されることとなり,巻線795の両端の電位が変化し,逆転するので,次に通電する巻線797の制御に不都合となる。時間的には0.001秒から0.01秒のオーダーの短い時間ではあるが,モータの出力トルクが断続的になる。低速回転では,電流が欠落する時間は,比率的にも小さく,問題とならないことが多いが,高速回転においては,動作遅れの時間が平均トルクを低下させることになる。
また,各電力素子791,792,793,794へは,図80の例のように2つの巻線の電流が重複しないように制御することができ,よって特定の電力素子の電流容量を約2倍にする必要がなく,好都合である。そして,図82に示す制御回路の特徴は,電力素子の数が4個で済み,コスト,スペースを小さくできる点である。
また,ダイオード778の追加により,巻線797へ流れる逆流電流を防止することもできる。小型モータで,巻線抵抗が十分に大きければ,図81に示した回生動作のタイミングを取らずに制御することも可能である。
また,前記の回生時間の問題を解決する他の方法としては,図76に示した第2の直流電源73Eを追加し,ダイオード77A,77Cを第2の直流電源73Eへ接続する構成とする方法が挙げられる。この場合は,ダイオード77A,77Cを介して電磁エネルギーを第2の直流電源73Eへ回生する構成となるので,前記の回生時間を取る必要がなくなり,図78の(g),(h),(i)に示すような電流の制御が可能となる。
なお,図80の構成の制御回路は,図12の(b)に示すモータ,図16に示す4相のモータの制御へも適用できる。巻線50,51,52が図82の巻線795,797,796になる。A相を駆動するときは巻線795に通電し,B相を駆動するときは巻線795と巻線797に直列に通電し,C相を駆動するときは巻線796と巻線797に直列に通電する。この時,巻線797の電流の方向が反転することには注意を要する。
図80の制御回路は,電力素子の配置を直流電源730の正方向と負方向とを対称的に,即ち反対にした構成でも,論理的に成り立ち,その構成も本発明に含まれる。
次に,電力素子4個で3巻線の電流を制御する制御回路を図84に示す。なお,この制御回路では,図80の制御回路のように,電流が特定の電力素子に集中することはなく,電流容量を増加させる必要はない。また,図82の制御回路で図12の(b)に示すモータを駆動する時の,ある巻線の電流方向がロータの回転途中に反転することもない。
巻線815の電流は電力素子811と812で制御し,巻線816の電流は電力素子813と812あるいは電力素子813と814で制御し,巻線817の電流は巻線815あるいは巻線816と直列に電力素子811と814あるいは電力素子813と814で制御し,通電する。なお,ここで,直列に接続する2個の巻線は,両巻線に誘起される電圧の和が一定値を超えない関係になっており,多くの場合,片側の巻線の誘起電圧が零となるように制御されている。したがって,2個の巻線が直列ではあっても,電圧的な問題はない。
今,図12の(a)に示すモータを駆動する場合について考えてみる。図12の(a)の巻線39,40,41は,それぞれ,図82の巻線811,817,816である。電力素子811の制御する領域は図85の(a),電力素子812の制御する領域は図85の(b),電力素子813の制御する領域は図85の(c),電力素子814の制御する領域は図85の(d)である。
図85に示すように,モータの円周方向の電気角に応じて,0°から120°の間は電力素子811と812で制御し,巻線815の図85の(g)に示す電流とする。
120°から240°の間は電力素子813と814で制御し,巻線816と巻線817へ直列に電流を通電し,図85の(h)に示す電流とする。この時,図12の(a)に示すモータでは,巻線40と41へ逆方向の電流を通電することを意味し,これらの両巻線に鎖交する磁束の和がステータ突極36を通過する磁束φbと等しくなる。従って,両巻線に誘起される電圧の和は,磁束φbの変化率dφb/dtであって,例えば,C相のステータ突極38を励起する時に巻線41に発生する電圧振幅と同じ値になる。その結果,巻線816と巻線817とを直列に駆動しても,電圧的には問題ないことになる。
240°から360°の間は電力素子813と812で制御し,巻線816の図85の(i)に示す電流とする。
図84の制御回路で図85の(g),(h),(i)に示す電流を制御する場合,電流の切り替えタイミングで,ある巻線に電流が流れている時,その巻線の磁気エネルギー,電流を,実害のない程度に直流電源730へ回生してから次の巻線への通電を開始しなければならないので,動作が少し遅れる。例えば,巻線815へ電流が流れているときに電力素子811,812をオフとした場合,その電流はダイオード77A,77Bを介して直流電源730へ回生されることとなり,巻線815の両端の電位が変化し,逆転するので,次に通電する巻線816,817の制御に不都合となる。時間的には0.001秒から0.01秒のオーダーの短い時間ではあるが,モータの出力トルクが断続的になる。低速回転では,電流が欠落する時間は,比率的にも小さく,問題とならないことが多いが,高速回転においては,動作遅れの時間が平均トルクを低下させることになる。
また,各電力素子811,812,813,814へは,図80の例のように2つの巻線の電流が重複しないように制御することができ,よって特定の電力素子の電流容量を約2倍にする必要がなく,好都合である。そして,図82に示す制御回路の特徴は,電力素子の数が4個で済み,コスト,スペースを小さくできる点である。
また,ダイオード778の追加により,巻線797へ流れる逆流電流を防止することもできる。小型モータで,巻線抵抗が十分に大きければ,図81に示した回生動作のタイミングを取らずに制御することも可能である。
また,前記の回生時間の問題を解決する他の方法としては,図76に示した第2の直流電源73Eを追加し,ダイオード77A,77Cを第2の直流電源73Eへ接続する構成とする方法が挙げられる。この場合は,ダイオード77A,77Cを介して電磁エネルギーを第2の直流電源73Eへ回生する構成となるので,前記の回生時間を取る必要性が緩和される。
なお,図80の構成の制御回路は,図12の(b)に示すモータ,図16に示す4相のモータの制御へも適用できる。巻線50,51,52が図82の巻線815,817,816になる。A相を駆動するときは巻線815に通電し,B相を駆動するときは巻線815と巻線817に直列に通電し,C相を駆動するときは巻線816と巻線817に直列に通電する。
図80の制御回路は,電力素子の配置を直流電源730の正方向と負方向とを対称的に、即ち反対とした構成でも,論理的に成り立ち,その構成も本発明に含まれる。
以上,本発明のモータとその制御回路について説明したが,これらに種々の変形を加えることが可能である。それらの変形例であって,本発明の趣旨の範囲内のものは,本発明に含まれる。例えば,図80,82,84の制御回路で,一部の素子の位置を変更したり,モータの相数が増加した場合であって素子を追加したものも本発明の範囲内である。また,巻線電流として正負の両方向の電流が必要な場合は,直流電動機を駆動する場合の代表的な回路である図86の制御回路で駆動することもできる。835は巻線,831,832,833,834は電力素子で,逆並列にダイオードが接続されている。
本発明では,永久磁石を使用しない非常に簡素な形態を実現することができ,よって低コストなモータを実現することができる。また,巻線が概略環状の構造となっているので,巻線の製作が容易である。その巻線をロータ軸方向に凹凸を持たせた形状とする場合でも,型などを使用して変形させることも容易である。また,本発明では,巻線の占積率を高く製作することも容易である。また,ロータが簡素で強固な形状をしているので,高速回転を実現することも可能である。また円周上にほぼ等間隔に配置されたステータでは,吸引力がラジアル方向にほぼ全周にわたって発生するため,ステータの変形がきわめて小さく,低振動,低騒音のモータを実現することができる。巻線と共に,モータ全体の構成も,ロータ軸方向に分割して各部品を製作し,ロータ軸方向に組み付けることが可能な構成とすることができるため,組み立てを容易化することも可能である。また,永久磁石を活用して漏れ磁束を低減するなどの種々技術を活用して大きなトルクを発生させることも可能である。また,簡素な構成の制御回路のモータ駆動制御装置を実現することも可能であり,これにより、低コストなモータ・システムが実現され得る。
本出願は、特願2005−131808(2005年4月28日出願)、特願2005−144293(2005年5月17日出願)、特願2005−151257(2005年5月24日出願)及び特願2005−208358(2005年7月19日出願)に基づくものであり、これらの出願による開示のすべては、参照により本出願に組み入れられる。
また、本出願にかかる発明は、請求の範囲によってのみ特定され、明細書や図面に記載された実施の態様等に限定的に解釈されることはない。