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JP5112533B2 - 垂直磁気記録媒体、その製造方法、及び磁気記録再生装置 - Google Patents

垂直磁気記録媒体、その製造方法、及び磁気記録再生装置 Download PDF

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JP5112533B2 JP2011098303A JP2011098303A JP5112533B2 JP 5112533 B2 JP5112533 B2 JP 5112533B2 JP 2011098303 A JP2011098303 A JP 2011098303A JP 2011098303 A JP2011098303 A JP 2011098303A JP 5112533 B2 JP5112533 B2 JP 5112533B2
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Description

本発明の実施形態は、磁気記録技術を用いたハードディスク装置等に用いられる磁気記録媒体及び磁気記録再生装置に関する。
コンピュータを中心に利用されている情報記録、再生を行う磁気記憶装置(HDD)は、その大容量、安価性、データアクセスの速さ、データ保持の信頼性などの理由により、近年徐々に応用の幅を広げ、家庭用ビデオデッキ、オーディオ機器、車載ナビゲーションシステムなど様々な分野で利用されている。HDDの利用の幅が広がるにつれ、その記憶容量の高密度化の要求も増し、近年HDDの高密度化開発はますます激しさを増している。
現在市販されているHDDの磁気記録方式として、垂直磁気記録方式が、従来の面内磁気記録方式に代わる技術として近年急速に利用が広まっている。垂直磁気記録方式は、情報を記録する垂直磁気記録層を構成する磁性結晶粒子が、基板に対して垂直方向にその磁化容易軸を持つ。
垂直磁気記録媒体の記録密度の高密度化には、熱安定性を保ちながら低ノイズ化を実現する必要がある。ノイズ低減法としては、記録層の磁性結晶粒を膜面内で磁気的に孤立させ、磁性結晶粒子間の磁気的相互作用を低減させると同時に、磁性結晶粒子そのものの大きさを微細化する方法が一般に用いられている。具体的には、例えば、記録層にSiO2等を添加し、一個の磁性結晶粒子がこれらの添加物を主成分とする粒界領域に取り囲まれた、いわゆるグラニュラ構造を有する垂直磁気記録層を形成する方法が一般に用いられている。しかしながら、このような方法で低ノイズ化を追求すると、磁化反転体積の減少に伴って、熱安定性を確保するために磁性結晶粒子の磁気異方性エネルギー(Ku)を必然的に増加させる必要がある。しかしながら、磁性結晶粒子の磁気異方性エネルギーを増加させると、飽和磁界Hs、保磁力Hcもまた大きくなってしまうことから、書き込みの際の磁化反転に必要な記録磁界も大きくなってしまうため、記録ヘッドによる書込み能力(Writability)が低下し、その結果記録・再生特性が劣化するという問題が生じる。
この問題を克服するため、垂直磁気記録層部を微細加工によって磁性ドット化し、ドット間を磁気的に孤立させる、パターンド媒体が検討されている。パターンド媒体では、垂直磁気記録層の磁性結晶粒を、結晶粒単位ではなく、1ビットに相当する大きさである、結晶粒数個から数十個を含む磁性ドット単位で磁気的孤立化を行えばよいため、グラニュラ化の場合に比べて磁化反転体積を大きくすることができる。したがって、熱安定性を確保するために必要なKu値を下げることができるため、Hsや、Hcの増大を抑えることができ、磁化反転に必要な磁界(Switching Field)を抑制することができる。
一方、パターンド媒体では、ある設定された強度の記録磁界に対して指定された磁性ドットが確実に磁化反転をし、かつ隣接ドットの磁化反転を防ぐために、磁性ドットごとの反転磁界のばらつき(Switching Field Distribution, SFD)を極力小さくする必要がある。SFDが生じる大きな原因のひとつが、ドット間の静磁気相互作用の影響である。すなわち、あるドットに周囲のドットから生じる反磁界の大きさが、記録磁化パターンの違いによって変化してしまう。このため、実効的な反転磁界が記録パターンによって変化してしまう。ドット間の静磁気相互作用は、ドットピッチが小さくなるほど増大するため、高密度化によってSFDの増大を招いてしまう。
特許3886802号公報
本発明の実施形態は、磁性ドット間の静磁気相互作用の影響を抑制することによってドットごとの反転磁界のばらつきを低減し、熱揺らぎ耐性に優れ、高密度記録が可能なパターンド媒体及びこれを用いた磁気記録装置を提供することを目的とする。
実施形態にかかる磁気記録媒体は、
基板と、
該基板上に形成された補助層と、
該補助層上に形成され、鉄及びコバルトのうち1つの元素と、プラチナ及びパラジウムのうち1つの元素とを含有し、L1構造を有し、(001)面配向した合金材料からなる磁性ドットパターンを有する垂直磁気記録層と、
該垂直磁気記録層上に形成された保護層と
該保護層上に形成された潤滑剤層を具備し、
前記補助層は、前記磁性ドットパターンで覆われ、(100)面配向したニッケル及び鉄のうち1つの金属からなるドット状の第1の領域と、前記磁性ドットパターンで覆われていない、前記金属の酸化物を含有する第2の領域を有することを特徴とする。
実施形態に係る磁気記録媒体の一例を表す断面図である 実施形態に係る磁気記録媒体の他の一例を表す断面図である 実施形態に係る磁気記録媒体のさらに他の一例を表す断面図である 実施形態に係る磁気記録媒体のさらに他の一例を表す断面図である 実施形態に係る磁気記録媒体のさらに他の一例を表す断面図である 実施形態にかかる磁気記録再生装置の一例を一部分解した斜視図である
実施形態にかかる磁気記録媒体は、基板、基板上に形成された補助層、補助層上に形成された少なくとも一層の垂直磁気記録層を含む。
垂直磁気記録層は、磁性ドットパターンを有する。
垂直磁気記録層は、鉄及びコバルトのうち1つの元素と、プラチナ及びパラジウムのうち1つの元素とを含有する合金材料からなる。また、この合金材料はL1構造を有し、(001)面配向している。
補助層は、磁性ドットパターンで覆われたドット状の第1の領域と、磁性ドットパターンで覆われていない第2の領域を有する。第1の領域は、(100)面配向したニッケル及び鉄のうち1つの金属からなる。第2の領域は、第1の領域に用いられた金属の酸化物を含有する。
垂直磁気記録層上に保護層を形成することができる。あるいは、垂直磁気記録層上に潤滑剤層を形成することができる。保護層は、垂直磁気記録層と潤滑剤層の間に形成することができる。
実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法は、基板上に、(100)面配向したニッケル及び鉄のうち1つの金属を成膜し、補助層を形成する工程、補助層上に鉄及びコバルトのうち1つの元素と、プラチナ及びパラジウムのうち1つの元素とを含有し、L1構造を有し、(001)面配向した合金からなる垂直磁気記録層を形成する工程、垂直磁気記録層を磁性ドットパターンに加工し、補助層を部分的に露出させる工程、及び垂直磁気記録層上に保護層を成膜する工程とを含む。
保護層を形成する前、例えば磁性ドットパターンを形成している間、または磁性ドットパターンを形成した後、磁性ドットパターンと補助層を酸化雰囲気に曝露させ、磁性ドットパターンをマスクとして、部分的に露出された補助層を酸化せしめる。これにより、補助層中に、前記磁性ドットパターンに覆われた(100)面配向したニッケル及び鉄のうち1つの金属をからなるドット状の第1の領域と、磁性ドットパターンで覆われていない第1の領域に使用される金属の酸化物を含有する第2の領域とを形成する。
実施形態によれば、磁性ドットごとの反転磁界のばらつきを低減し、熱揺らぎ耐性に優れる垂直磁気記録媒体が得られ、高密度記録が可能となる。
図1は、実施形態に係るパターンド媒体の一例を表す断面図である。
図示するように、このパターンド媒体10は、基板1上に、補助層2と、垂直磁気記録層3と、保護層4と潤滑剤層5とが順に積層されている。垂直磁気記録層3は硬磁性ドットが微細に配列されたパターンを有する。補助層2はNiまたはFeからなる第1の領域2−1が、その酸化物からなる第2の領域2−2に、二次元的に囲まれた構造を有する。NiまたはFeからなる第1の領域2−1上に硬磁性ドット3が積層されている。
実施形態に使用される非磁性基板としては、ガラス基板、Al系の合金基板あるいは表面が酸化したSi単結晶基板,セラミックス,及びプラスチック等を使用することができる。さらに,それら非磁性基板表面にNiP合金などのメッキが施されている場合でも同様の効果が期待される。
(磁性ドットのパターン化加工法(ミリング))
垂直磁気記録層は、パターン化加工により微細に配列した磁性ドットパターンを形成することができる。パターン化加工方法としては、例えば、媒体表面にSOG(Spin On Glass)等のマスク材料を塗布した後、磁性ドットパターンが転写されたスタンパを用いてナノインプリント法によりマスクに凹凸パターンを形成し、これをArイオンミリングにより垂直磁気記録層のエッチングを行ったうえ、CFガスを用いて反応性イオンミリング(RIE)によりSOGマスクを除去するという方法が挙げられる。
(記録層材料)
実施形態にかかる磁気記録媒体の磁性ドットパターンは、磁化容易軸が基板に対して垂直方向を向い硬磁性結晶粒からなっている。実施形態における硬磁性結晶粒材料としては、外部磁界、浮遊磁界等に対して逆磁区の発生を抑制するため適度な保磁力Hc,核生成磁界Hnを発揮するとともに、十分な熱揺らぎ耐性を得るため高い一軸結晶磁気異方性定数Kuを有する材料が好ましい。
硬磁性結晶材料として、L1構造を持ち、かつ磁性金属元素及び貴金属元素を主成分とするものが用いられる。磁性金属は、Fe,Coから選択される少なくとも1種であり、貴金属元素は、Pt,Pdからなる群より選択される少なくとも1種である。具体的には、磁性元素:貴金属元素の原子数比が、4:6ないし6:4の範囲にあるFe−Pt、Co−Pt、Fe−Pd合金を用いることができる。これらの材料は、L1構造をとって規則合金化した場合に、c軸方向に10erg/cc以上と非常に高いKuを発揮しうるため、熱揺らぎ耐性に優れる傾向がある。さらに、これらの材料は、貴金属元素の組成が40ないし60%と非常に高いため、後述する酸化工程の際に優れた耐酸化性を示す傾向がある。磁性記録層を構成する硬磁性結晶粒子がL1構造をもっているかどうかは、X線回折装置で確認することができる。(001)、(003)といった、不規則面心立方格子(FCC)では観測されない面を表わす規則格子反射のピークがそれぞれの面間隔に一致する回折角度で観察できればL1構造が存在していることがわかる。また、硬磁性結晶粒子が完全なL1構造に近い構造をとっているかを評価する指標として、規則度Sが一般に用いられる。S=1の場合は完全なL1構造であり、S=0の場合は完全な不規則構造を意味する。上述の合金の場合、一般に規則度が高いほどKuが高くなる。規則度Sの評価にはX線回折測定によって得られた、(001)、(002)それぞれのピークの積分強度を用い、次式で評価できる。
S= 0.72(I001/I0021/2
ここでI001,I002はそれぞれ(001),(002)面による回折ピークの積分強度である。
また、硬磁性結晶材料が(001)面配向(c軸配向)しているかどうかも、一般的なX線回折装置で確認することができる。
(垂直磁気記録層膜厚)
垂直磁気記録層の合計の厚さはシステムの要求値によって決定され、例えば、0.5nm以上30nm未満にすることができる。さらには、5nm以上10nm未満にすることができる。0.5nmより薄いと記録再生特性における信号強度が著しく低下する傾向がある。また、30nm以上であると前述のパターン化加工が困難となる傾向がある。
(垂直磁気記録層の製法)
上述の硬磁性材料の成膜の際、基板温度を250℃ないし700℃に加熱すると、規則合金化が促進される傾向がある。さらには、300℃ないし400℃の範囲に加熱することができる。基板温度が250℃未満であると規則度Sが低下し、700℃を超えると、基板に、割れ等の劣化が生じる傾向がある。
また、上述の硬磁性材料をスパッタリング法で成膜する場合、Ar等のスパッタリングガス圧力を3Paないし12Paの範囲で成膜すると、規則度Sが向上する傾向がある。5Paないし10Paの範囲では更に好ましい。
(補助層)
実施形態にかかる磁気記録媒体には、垂直磁気記録層の下に、(100)面配向させたNiまたはFeと、その酸化物との混合材料からなる補助層を設けている。図1のように、(100)面配向したNi及びFeから選択される少なくとも一種を含む単体金属または合金は、主として磁性ドットパターンに覆われた領域に形成されており、その酸化物は主として硬磁性ドットに覆われていない領域に形成されている。(100)面配向したNiまたはFeは、後述の硬磁性結晶粒材料との格子整合性が比較的良好なため、上層に形成される硬磁性結晶粒をc軸配向させ、磁化容易軸を基板に対して垂直方向に向けることができる。
実施形態にかかる補助層に用いられるNiまたはFeは強磁性金属であり、その酸化物は反強磁性または弱磁性体である。磁性ドットパターンは、補助層との界面において直下に存在するFeまたはNiと接しているため、両者の間には強い交換相互作用が働いている。一方、補助層中の強磁性金属結晶粒は周りを反強磁性または弱磁性の酸化物で囲まれているため、強磁性金属結晶粒間に働く交換相互作用は弱められている。この結果、隣接硬磁性ドット間には、硬磁性ドット−強磁性金属結晶粒間の強い交換相互作用と、酸化物領域内の弱い交換相互作用が直列に働くため、弱い交換相互作用が生じることになる。このときドットに働く弱い交換磁界は周囲の硬磁性ドットからの反磁界を常に相殺する向きに働くため、反磁界の影響を低減することができ、このため、前述のSFDを効果的に低減することが可能となる。このとき、NiまたはFe同士が直接接すると、硬磁性ドット間の交換相互作用を弱める機能が低下する傾向があるため、上述の酸化物は補助層の全膜厚に亘って形成されている必要がある。NiまたはFeの酸化物が硬磁性ドットに覆われていない領域に形成されているかどうか、補助層の全膜厚に亘って形成されているかどうかは、例えば媒体断面を透過型電子顕微鏡(TEM)観察にエネルギー分散型X線分析法(EDX)を併用したTEM−EDX分析によって確認することができる。
(補助層の製法)
このような補助層を形成する方法としては、例えば、基板上にFeまたはNi、垂直磁気記録層を順次成膜した後、垂直磁気記録層パターン加工におけるArミリングまたはマスク除去後に、媒体表面を酸化雰囲気に曝露することによって、硬磁性ドットに覆われていない金属部分を酸化させる方法が挙げられる。これにより、図1のように、硬磁性ドットに覆われている硬磁性ドットの下側では強磁性金属が酸化されず保たれ、覆われていない領域にのみ酸化物が形成されることになる。この場合、酸化物領域については、結晶面が一方向に配向していなくても構わない。
酸化雰囲気に曝露方法としては、媒体を酸素雰囲気中で例えば200℃以上に加熱する熱酸化法や、素プラズマや酸素イオンを照射する方法を用いることができる。一方、媒体表面を室温で大気中に曝露する方法は、酸化の進行が遅く、長時間に亘るプロセスが必要となる傾向がある。
このような酸化処理では、補助層表面のみならず、ミリングされた磁性ドットパターンの各ドットの側面も酸化雰囲気に曝されることになるが、実施形態にかかる磁気記録媒体では前述のL1規則合金材料を磁性ドットパターン材料として用いているため、磁性ドットパターンの酸化による磁気特性の劣化を抑制することができる。
(補助層膜厚)
補助層膜厚は、0.5nmないし15nmの範囲にすることができる、さらには、1nmないし5nmの範囲にすることができる。0.5nm未満では、前述のSFD低減効果が現れにくく、15nmを超えると、強磁性金属結晶粒の自身の反磁界が大きくなり、垂直磁気記録層のHnが劣化する傾向がある。
(下地層)
図2は、実施形態に係るパターンド媒体の別な一例を表す断面図である。
図示するように、このパターンド媒体20は、基板1上に、非磁性下地層6と、補助層2と、垂直磁気記録層3と、保護層4と潤滑剤層5とが順に積層されている。垂直磁気記録層3は硬磁性ドットが微細に配列されたパターンを有する。補助層2はNiまたはFeからなる第1の領域2−1が、その酸化物からなる第2の領域2−2に、二次元的に囲まれた構造を有する。NiまたはFeからなる第1の領域2−1上に硬磁性ドット3が積層されている。
補助層及び垂直磁気記録層の配向分散を低減させる目的で、非磁性材料からなる下地層少なくとも1層を、補助層と基板との間に設けることができる。また、非磁性下地層を設けることにより、後述する軟磁性下地層を用いる際に問題となる、補助層及び垂直磁気記録層との間の交換相互作用を低減させることができる。
具体的な材料としては、(100)面配向させたMgO、TiN、Crを好ましく用いることができる。これらの材料を用いることにより、補助層の強磁性金属結晶粒の(100)面配向分散を低減させることができる。
(下地層膜厚)
非磁性下地層の膜厚は、例えば1nmないし50nmの範囲にすることができる。さらには、5nmないし10nmの範囲にすることができる。1nm未満では、上述の配向分散低減効果が顕著に現れず、50nmを超えると、下地層の結晶粒径肥大化に伴う表面凹凸が顕著となる傾向がある。
(シード層)
図3は、実施形態に係るパターンド媒体のさらに別な一例を表す断面図である。
図示するように、このパターンド媒体30は、基板1上に、非晶質シード層7と、非磁性下地層6と、補助層2と、垂直磁気記録層3と、保護層4と潤滑剤層5とが順に積層されている。垂直磁気記録層3は硬磁性ドットが微細に配列されたパターンを有する。補助層2はNiまたはFeからなる第1の領域2−1が、その酸化物からなる第2の領域2−2に、二次元的に囲まれた構造を有する。NiまたはFeからなる第1の領域2−1上に硬磁性ドット3が積層されている。
非磁性下地層と基板との間に、Niを含有する非晶質合金からなるシード層を用いると、非磁性下地層の(100)面配向分散が向上する傾向がある。ここでいう非晶質とは、必ずしもガラスのような完全な非晶質を意味するものではなく、局所的に2nm以下の粒径の微細結晶がランダムに配向した状態の膜でも良い。このようなNiを含有する合金としては、例えばNi−Nb、Ni−Ta、Ni−Zr、Ni−W、Ni−MoまたはNi−V合金といった合金系を用いることができる。これらの合金中のNi含有量は、20から70原子パーセントの範囲であれば、非晶質になりやすい傾向がある。さらに、シード層表面を酸素を含む雰囲気中に曝露させることができる。
非晶質シード層の膜厚は、1nmないし50nmの範囲にすることができる。非晶質シード層の膜厚は、さらには5nmないし10nmの範囲にすることができる。1nm未満では、上述の配向分散低減効果が顕著に現れず、50nmを超えると、後述の軟磁性下地層と垂直磁気記録層との磁気的な空間が広がりすぎ、記録・再生特性におけるwritabilityが低下する傾向がある。
(軟磁性下地層)
図4は、本発明に係るパターンド媒体の別な一例を表す断面図である。
図示するように、このパターンド媒体40は、基板1上に、軟磁性下地層8と、非晶質シード層7と、非磁性下地層6と、補助層2と、垂直磁気記録層3と、保護層4と潤滑剤層5とが順に積層されている。垂直磁気記録層3は硬磁性ドットが微細に配列されたパターンを有する。補助層2はNiまたはFeからなる第1の領域2−1が、その酸化物からなる第2の領域2−2に、二次元的に囲まれた構造を有する。NiまたはFeからなる第1の領域2−1上に硬磁性ドット3が積層されている。
非磁性下地層と基板との間に高透磁率な軟磁性下地層を設けることにより、いわゆる垂直二層媒体が構成される。この垂直二層媒体において、軟磁性下地層は、垂直磁気記録層を磁化するための磁気ヘッド例えば単磁極ヘッドからの記録磁界を、水平方向に通して、磁気ヘッド側へ還流させるという磁気ヘッドの機能の一部を担っており、磁界の記録層に急峻で充分な垂直磁界を印加させ、記録再生効率を向上させる役目を果たし得る。
このような軟磁性層として、例えばCoZrNb,CoB, CoTaZr, FeSiAl,FeTaC,CoTaC,NiFe,Fe,FeCoB,FeCoN,FeTaN,CoIr等が挙げられる。
軟磁性下地層は、二層以上の多層膜であっても良い。その場合、それぞれの層の材料、組成、膜厚が異なっていても良い。また、軟磁性下地層二層を薄いRu層を挟んで積層させた三層構造としても良い。軟磁性下地層の膜厚は、OW特性とSNRのバランスにより適宜調整される。
(密着層)
図5は、本発明に係るパターンド媒体の別な一例を表す断面図である。
図示するように、このパターンド媒体50は、基板1上に、密着層9と、軟磁性下地層8と、非晶質シード層7と、非磁性下地層6と、補助層2と、垂直磁気記録層3と、保護層4と潤滑剤層5とが順に積層されている。垂直磁気記録層3は硬磁性ドットが微細に配列されたパターンを有する。補助層2はNiまたはFeからなる第1の領域2−1が、その酸化物からなる第2の領域2−2に、二次元的に囲まれた構造を有する。NiまたはFeからなる第1の領域2−1上に硬磁性ドット3が積層されている。
また、基板と軟磁性下地層との機械的な密着性を向上させる目的で、例えばCrやTi、それらの合金等の密着層を設けても良い。
実施形態にかかる垂直磁気記録層上には、保護層を設けることができる。保護層としては、例えばC,ダイアモンドライクカーボン(DLC),SiNx,SiOx,CNxがあげられる。
実施形態に用いられる潤滑剤としては、例えばパーフルオロポリエーテル(PFPE)を用いることができる。
各層の成膜法としては真空蒸着法、スパッタリング法、化学気相成長法、レーザーアブレーション法を用いることができる。スパッタリング法として、コンポジットターゲットを用いた単元のスパッタリング法及びそれぞれの物質のターゲットを用いた、多元同時スパッタリング法を用いることができる。
図6に、実施形態にかかる磁気記録再生装置の一例を一部分解した斜視図を示す。
実施形態にかかる磁気記録再生装置は、上述のパターンド媒体と記録再生ヘッドとを具備する。
実施形態にかかる磁気記録再生装置60において、実施形態にかかる情報を記録するための剛構成の磁気ディスク62はスピンドル63に装着されており、図示しないスピンドルモータによって一定回転数で回転駆動される。磁気ディスク62にアクセスして情報の記録を行う記録ヘッド及び情報の再生を行うためのMRヘッドを搭載したスライダー64は、薄板状の板ばねからなるサスペンション65の先端に取付けられている。サスペンション65は図示しない駆動コイルを保持するボビン部等を有するアーム66の一端側に接続されている。
アーム66の他端側には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ67が設けられている。ボイスコイルモータ67は、アーム66のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、それを挟み込むように対向して配置された永久磁石および対向ヨークにより構成される磁気回路とから構成されている。
アーム66は、固定軸の上下2カ所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ67によって回転揺動駆動される。すなわち、磁気ディスク62上におけるスライダー64の位置は、ボイスコイルモータ67によって制御される。なお、図6中、61は筐体を示している。
以下、実施例を示し、実施形態をより具体的に説明する。
(実施例1)
2.5インチハードディスク形状の非磁性ガラス基板(OHARA社製TS−10SX)を、ANELVA社製c−3010型スパッタリング装置の真空チャンバー内に導入した。
スパッタリング装置の真空チャンバー内を1×10−5Pa以下に排気した後、密着層としてCr−50%Tiを10nm、軟磁性下地層としてCo−5%Zr−5%Nb合金を50nm、に非磁性下地層としてMgOを5nm、補助層としてFeを5nm成膜した。赤外線ランプヒーターを用いて基板を300℃に昇温した後、垂直磁気記録層としてFe50Pt50を5nm成膜した。
垂直磁気記録層層形成後、以下の要領で垂直磁気記録層を硬磁性結晶粒ドットにパターン加工した。基板をスパッタリング装置から取り出し、媒体表面にSOG(Spin On Glass)等のマスク材料を塗布した後、17nmピッチドットパターンが転写されたスタンパを用いてナノインプリント法によりマスクに凹凸パターンを形成した。その後基板を再度スパッタリング装置内に導入し、イオンガンチャンバーArイオンミリングにより垂直磁気記録層のエッチングを行ったうえ、反応性イオンミリング(RIE)チャンバーにてCFガスを用いてRIEによりSOGマスクを除去した。マスクの除去後,赤外線ランプヒーターを用いて基板を200℃に加熱した後、媒体を1Paの酸素ガス中に10秒間曝露し、酸化処理を行った。その後保護膜としてCを6nm成膜し,潤滑剤層としてパーフルオロポリエーテルをディップ法で塗布することでパターンド媒体を作製した。
Cr−50%Ti、Co−5%Zr−5%Nb、MgO、Fe及びCの成膜時のAr圧力は0.7Pa,Fe50Pt50成膜時のAr圧力は5Paで行った。スパッタリングターゲットはそれぞれ直径164mmのCr−50%Ti、Co−5%Zr−5%Nb、MgO、Fe、Fe50Pt50,Cターゲットを用い、MgOはRFスパッタリング法で、それ以外はDCスパッタリング法で成膜した。各ターゲットへの投入電力は全て500Wで行った。ターゲットと基板の間の距離は50mmで行った。
このほか、補助層のFeの代わりにNiを、Fe50Pt50の代わりに、Co50Pt50、Fe50Pd50をそれぞれ用いた媒体も作製した。
(比較例1)
比較例として、酸化処理を行わないパターンド媒体を実施例1と同様にして作製した。
(比較例2)
比較例として、補助層を設けないこと以外は実施例1と同様にして作製した。
得られた各パターンド媒体について、Philips社製 X線回折装置 X‘pert−MRDを用いて、Cu−Kα線を加速電圧45kV、フィラメント電流40mAの条件で発生させ、θ−2θ法により、結晶構造及び結晶面配向を評価した。
各パターンド媒体について、加速電圧400kVのTEM−EDXを用いて断面の組成分析を行った。
各パターンド媒体の垂直磁気記録層の膜垂直方向の磁気特性は、米国ADE社製振動試料型磁力計(VSM)model−10にて、最大印加磁界20kOeの条件で残留磁化曲線測定にて行った。各パターンド媒体のSFDは、得られた残留磁化曲線を印加磁界について微分し、その半価幅にて評価した。
各パターンド媒体について、磁性ドットの記録安定性を調べるため、VSM装置を用いて媒体をAC消磁し、磁気力顕微鏡(MFM)によりAC状態での磁化状態を評価した。
XRD評価の結果、いずれの硬磁性ドットも結晶質であり、磁性結晶粒子はいずれもL1構造をとり、(001)面配向していることが分かった。
実施例1、比較例1の媒体の補助層のFeまたはNiは(100)面配向していることが分かった。
いずれの媒体も軟磁性下地層は非晶質であることが分かった。
磁性下地層はいずれも(100)面配向していることが分かった。
TEM−EDX評価の結果、実施例1の媒体の補助層は、FeとFe酸化物、またはNiとNi酸化物がともに存在しており、硬磁性ドットに覆われた領域にFeまたはNiが存在し、硬磁性ドットに覆われていない領域に酸化物が存在することが分かった。酸化物は、深さ方向には補助層と同じ5nmに亘って存在していることがいることが分かった。一方、比較例1の媒体の補助層にはそのような酸化物が存在せず、FeまたはNiのみからなることが分かった。
MFMによりAC消磁後の磁化状態を観察したところ、実施例1及び比較例2の媒体においては、硬磁性ドット複数個に亘って磁気ドメインの形成は認められず、硬磁性ドット単位での磁化反転が可能であることが分かった。一方、比較例1の媒体では、直径数十nm以上の大きな磁気ドメインの形成が確認され、FeまたはNi補助層によって硬磁性ドット間に強い交換相互作用が働いていることが示唆された。従って、硬磁性ドット単位での磁化反転は困難であり、パターンド媒体に適さないことが分かった。
表1に、VSM測定によって得られた残留保磁力Hr及びSFD、XRD評価によって得られたFe(100)面配向分散Δθ50(Fe)またはNi(100)面配向分散Δθ50(Ni)、FePt(001)面配向分散Δθ50(Mag)、及びその規則度Sをそれぞれ示す。
Figure 0005112533
比較例2と比較して、実施例1の媒体はSFDが顕著に低減していることが確認できた。硬磁性ドット材料をFe50Pt50の代わりに、Co50Pt50、Fe50Pd50をそれぞれ用いた媒体も同様な傾向を示した。なお、比較例1の媒体は見かけのSFDが低減しているが、これは上述のようにドット間に強い交換相互作用が働いていることが原因であると考えられる。
(実施例2)
NiO層を形成した後の基板加熱温度を200℃から750℃の範囲で変化させた以外は、実施例1と同様の要領で、パターンド媒体を作製した。
XRD評価の結果、いずれの媒体の硬磁性ドットも結晶質であり、磁性結晶粒子はいずれもL1構造をとり、(001)面配向していることが分かった。
また、いずれの媒体も補助層のFeは(100)面配向していることが分かった。
いずれの媒体も軟磁性下地層は非晶質であることが分かった。
非磁性下地層はいずれも(100)面配向していることが分かった。
TEM−EDX評価の結果、いずれの媒体の補助層も、FeとFe酸化物がともに存在しており、硬磁性ドットに覆われた領域にFeが存在し、硬磁性ドットに覆われていない領域にFe酸化物が存在することが分かった。Fe酸化物は、深さ方向には補助層膜厚と同じ5nmに亘って存在していることがいることが分かった。
MFMによりAC消磁後の磁化状態を観察したところ、いずれの媒体においても、硬磁性ドット複数個に亘って磁気ドメインの形成は認められず、硬磁性ドット単位での磁化反転が可能であることが分かった。
表2に、VSM測定によって得られた残留保磁力Hr及びSFD、XRD評価によって得られたFe(100)面配向分散Δθ50(Fe)、FePt(001)面配向分散Δθ50(Mag)、及びその規則度Sをそれぞれ示す。
Figure 0005112533
基板温度が250℃以上で規則度Sが顕著に向上し、さらには、300℃ないし400℃の範囲であればより向上することが分かった。
(実施例3)
垂直磁気記録層成膜時のAr圧力を、0.5ないし15Paの範囲で変化させた以外は、実施例1と同様の要領でパターンド媒体を作製した。
XRD評価の結果、いずれの媒体の硬磁性ドットも結晶質であり、磁性結晶粒子はいずれもL1構造をとり、(001)面配向していることが分かった。
また、いずれの媒体も補助層のFeは(100)面配向していることが分かった。
いずれの媒体も軟磁性下地層は非晶質であることが分かった。
非磁性下地層はいずれも(100)面配向していることが分かった。
TEM−EDX評価の結果、いずれの媒体の補助層も、FeとFe酸化物がともに存在しており、硬磁性ドットに覆われた領域にFeが存在し、硬磁性ドットに覆われていない領域にFe酸化物が存在することが分かった。Fe酸化物は、深さ方向には補助層膜厚と同じ5nmに亘って存在していることがいることが分かった。
MFMによりAC消磁後の磁化状態を観察したところ、いずれの媒体においても、硬磁性ドット複数個に亘って磁気ドメインの形成は認められず、硬磁性ドット単位での磁化反転が可能であることが分かった。
表3に、VSM測定によって得られた残留保磁力Hr及びSFD、XRD評価によって得られたFe(100)面配向分散Δθ50(Fe)、FePt(001)面配向分散Δθ50(Mag)、及びその規則度Sをそれぞれ示す。
Figure 0005112533
垂直磁気記録層の成膜圧力が3Paないし12Paの範囲で規則度Sが顕著に向上する傾向があり、5Paないし10Paの範囲では更に良好となることが分かった。
(実施例4)
マスク除去後の酸化処理方法を、以下の方法に変更した以外は、実施例1と同様にしてパターンド媒体を作製した。
マスク除去後、イオンガンチャンバーにて、室温で媒体表面に酸素イオンを、加速電圧500Vの条件で10秒間照射し、酸化処理を行った。
この他、RIEチャンバーにて、室温で媒体表面に酸素プラズマを、基板バイアス電力100W、酸素圧力1Paの条件で10秒間照射し、酸化処理を行ったものも作製した。
(比較例3)
比較例として、酸化処理をマスク除去後の酸化処理方法を、以下の方法に変更した以外は、実施例1と同様の要領で作製した。
マスク除去後、基板をスパッタリング装置から取り出し、室温で媒体表面を大気中に1時間曝露し、酸化処理を行った。
XRD評価の結果、いずれの硬磁性ドットも結晶質であり、磁性結晶粒子はいずれもL1構造をとり、(001)面配向していることが分かった。
いずれの媒体の補助層のFeまたはNiも(100)面配向していることが分かった。
いずれの媒体も軟磁性下地層は非晶質であることが分かった。
非磁性下地層はいずれも(100)面配向していることが分かった。
TEM−EDX評価の結果、実施例4の媒体の補助層は、FeとFe酸化物、またはNiとNi酸化物がともに存在しており、硬磁性ドットに覆われた領域にFeまたはNiが存在し、硬磁性ドットに覆われていない領域に酸化物が存在することが分かった。酸化物は、深さ方向には補助層と同じ5nmに亘って存在していることがいることが分かった。一方、比較例3の媒体の補助層では酸化物の存在が明瞭に確認できなかった。
MFMによりAC消磁後の磁化状態を観察したところ、実施例4の媒体においては、硬磁性ドット複数個に亘って磁気ドメインの形成は認められず、硬磁性ドット単位での磁化反転が可能であることが分かった。一方、比較例3の媒体では、直径数十nm以上の大きな磁気ドメインの形成が確認され、FeまたはNi補助層に酸化物がほとんど存在しないためよって硬磁性ドット間に強い交換相互作用が働いていることが示唆された。従って、硬磁性ドット単位での磁化反転は困難であり、パターンド媒体に適さないことが分かった。
表4に、VSM測定によって得られた残留保磁力Hr及びSFD、XRD評価によって得られたFe(100)面配向分散Δθ50(Fe)またはNi(100)面配向分散Δθ50(Ni)、FePt(001)面配向分散Δθ50(Mag)、及びその規則度Sをそれぞれ示す。
Figure 0005112533
実施例1の媒体と同様に、実施例4の媒体でもSFD低減効果が認められた。硬磁性ドット材料をFe50Pt50の代わりに、Co50Pt50、Fe50Pd50をそれぞれ用いた媒体も同様な傾向を示した。なお、比較例3の媒体は見かけのSFDが低減しているが、これは上述のようにドット間に強い交換相互作用が働いていることが原因であると考えられる。
(実施例5)
非磁性下地層として、MgOの代わりに、TiN,Cr,NiOを用いた以外は、実施例1と同様の要領で作製した。
XRD評価の結果、いずれの硬磁性ドットも結晶質であり、磁性結晶粒子はいずれもL1構造をとり、(001)面配向していることが分かった。
いずれの媒体の補助層のFeまたはNiは(100)面配向していることが分かった。
いずれの媒体も軟磁性下地層は非晶質であることが分かった。
非磁性下地層はいずれも(100)面配向していることが分かった。
TEM−EDX評価の結果、いずれの媒体の補助層は、FeとFe酸化物、またはNiとNi酸化物がともに存在しており、硬磁性ドットに覆われた領域にFeまたはNiが存在し、硬磁性ドットに覆われていない領域に酸化物が存在することが分かった。酸化物は、深さ方向には補助層と同じ5nmに亘って存在していることがいることが分かった。
MFMによりAC消磁後の磁化状態を観察したところ、いずれの媒体においても硬磁性ドット複数個に亘って磁気ドメインの形成は認められず、硬磁性ドット単位での磁化反転が可能であることが分かった。
表5に、VSM測定によって得られた残留保磁力Hr及びSFD、XRD評価によって得られたFe(100)面配向分散Δθ50(Fe)またはNi(100)面配向分散Δθ50(Ni)、FePt(001)面配向分散Δθ50(Mag)、及びその規則度Sをそれぞれ示す。
Figure 0005112533
実施例1の媒体と同様に、実施例4の媒体でもSFD低減効果が認められた。硬磁性ドット材料をFe50Pt50の代わりに、Co50Pt50、Fe50Pd50をそれぞれ用いた媒体も同様な傾向を示した。
(実施例6)
実施例5と同様の要領で軟磁性下地層成膜後に、非晶質シード層としてNi−40%Taを5nm成膜した後、チャンバー内圧力が5×10−2PaとなるようにAr−1%O2ガスを導入し、このAr/O雰囲気中に非晶質シード層表面を5秒間曝露した。その後非磁性下地層としてCrを5nm成膜し、実施例4と同様の要領でFe成膜、基板加熱、垂直磁気記録層成膜、パターン加工、酸化処理、保護層成膜、潤滑剤塗布を順次行った。 非晶質シード層として、Ni−40%Nb,Ni−40%Zr,Ni−40%Mo, またはNi−40%Vを用いた媒体もそれぞれ作製した。
XRD評価の結果、いずれの硬磁性ドットも結晶質であり、磁性結晶粒子はいずれもL1構造をとり、(001)面配向していることが分かった。
いずれの媒体の補助層のFeまたはNiは(100)面配向していることが分かった。
いずれの媒体も軟磁性下地層は非晶質であることが分かった。
いずれの媒体も非磁性下地層のCrはいずれも(100)面配向していることが分かった。
いずれの媒体のシード層も、非晶質であることが分かった。
TEM−EDX評価の結果、いずれの媒体の補助層は、FeとFe酸化物、またはNiとNi酸化物がともに存在しており、硬磁性ドットに覆われた領域にFeまたはNiが存在し、硬磁性ドットに覆われていない領域に酸化物が存在することが分かった。酸化物は、深さ方向には補助層と同じ5nmに亘って存在していることがいることが分かった。
MFMによりAC消磁後の磁化状態を観察したところ、いずれの媒体においても硬磁性ドット複数個に亘って磁気ドメインの形成は認められず、硬磁性ドット単位での磁化反転が可能であることが分かった。
表6に、VSM測定によって得られた残留保磁力Hr及びSFD、XRD評価によって得られたFe(100)面配向分散Δθ50(Fe)またはNi(100)面配向分散Δθ50(Ni)、FePt(001)面配向分散Δθ50(Mag)、及びその規則度Sをそれぞれ示す。
Figure 0005112533
非晶質シード層を用いると、補助層の(100)面配向分散及び硬磁性結晶粒の(001)面配向分散が顕著に低減し、SFDが顕著に低減する傾向があることが分かった。硬磁性ドット材料をFe50Pt50の代わりに、Co50Pt50、Fe50Pd50をそれぞれ用いた媒体も同様な傾向を示した。
これらの実施形態又は実施例によれば、磁性ドットごとの反転磁界のばらつきを低減し、熱揺らぎ耐性に優れ、高密度記録が可能なパターンド媒体が得られ、高密度記録が可能となることがわかる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…基板、2…補助層、2−1…第1の領域,2−2…第2の領域、3…垂直磁気記録層、4…保護層、5…潤滑剤層、6…非磁性下地層、7…非晶質シード、8…軟磁性下地層、9…密着層、

Claims (11)

  1. 基板と、
    該基板上に形成された補助層と、
    該補助層上に形成され、鉄及びコバルトのうち1つの元素と、プラチナ及びパラジウムのうち1つの元素とを含有し、L1構造を有し、(001)面配向した合金材料からなる磁性ドットパターンを有する垂直磁気記録層とを具備し、
    前記補助層は、前記磁性ドットパターンで覆われ、(100)面配向したニッケル及び鉄のうち1つの金属からなるドット状の第1の領域と、前記磁性ドットパターンで覆われていない、前記金属の酸化物を含有する第2の領域を有することを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 前記第2の領域の金属の酸化物は、(100)面配向したニッケル及び鉄のうち1つの金属からなる層を、前記磁性ドットパターンをマスクとして、酸化雰囲気で酸化させて形成される請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 前記基板と前記補助層との間に、非磁性下地層をさらに設けた請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
  4. 前記非磁性下地層が、(100)面配向したニッケル酸化物, マグネシウム酸化物, チタン窒化物,及びクロムからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項3に記載の磁気記録媒体。
  5. 前記非磁性下地層と、前記基板との間に、Ni−Nb合金、Ni−Ta合金、Ni−Zr合金、Ni−Mo合金、及びNi−V合金からなる群から選択される少なくとも1種の合金を含む非晶質シード層をさらに設けた請求項3または4に記載の磁気記録媒体。
  6. 前記基板と前記非磁性下地層の間に、軟磁性下地層をさらに設けた請求項3ないし5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  7. 基板上に、(100)面配向したニッケル及び鉄のうち1つの金属を成膜し、補助層を形成する工程と、
    該補助層上に鉄及びコバルトのうち1つの元素と、プラチナ及びパラジウムのうち1つの元素とを含有し、L1構造を有し、(001)面配向した合金からなる垂直磁気記録層を形成する工程と、
    該垂直磁気記録層を磁性ドットパターンに加工し、前記補助層を部分的に露出させる工程と、
    該垂直磁気記録層上に保護層を成膜する工程とを具備し、
    前記保護層を形成する前に、前記磁性ドットパターン及び前記補助層を酸化雰囲気に曝露させ、前記磁性ドットパターンをマスクとして、部分的に露出された補助層を酸化せしめることにより、前記補助層中に、前記磁性ドットパターンに覆われた前記金属からなるドット状の第1の領域と、前記磁性ドットパターンで覆われていない前記金属の酸化物を含有する第2の領域とを形成する磁気記録媒体の製造方法。
  8. 前記垂直磁気記録層材料の形成工程において、前記基板を250℃ないし700℃の範囲に加熱する請求項7に記載の方法。
  9. 前記垂直磁気記録層の成膜に、3Paないし12Paの圧力でのスパッタリング法を用いることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
  10. 前記磁性ドットパターン及び前記補助層を酸化雰囲気に曝露させる工程は、酸素プラズマ照射、酸素イオンビーム照射、及び酸素雰囲気中での加熱から選択される工程である請求項7ないし9のいずれか1項に記載のパターンド媒体の製造方法。
  11. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体と、記録再生ヘッドとを具備することを特徴とする磁気記録再生装置。
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