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JP5193116B2 - 電子機器、電子機器の電力制御方法、およびコンピュータが実行するためのプログラム - Google Patents

電子機器、電子機器の電力制御方法、およびコンピュータが実行するためのプログラム Download PDF

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JP5193116B2
JP5193116B2 JP2009090432A JP2009090432A JP5193116B2 JP 5193116 B2 JP5193116 B2 JP 5193116B2 JP 2009090432 A JP2009090432 A JP 2009090432A JP 2009090432 A JP2009090432 A JP 2009090432A JP 5193116 B2 JP5193116 B2 JP 5193116B2
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Description

本発明は、電子機器、電子機器の電力制御方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムに関し、詳細には、電子機器を構成する各リソースの消費電力を、演算量を抑えつつ高精度に推定することが可能な電子機器、電子機器の電力制御方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムに関する。
近年、各種の電子機器の分野では装置の小型化に伴いバッテリ駆動型の装置が種々登場しており、バッテリ駆動時間に対するユーザの要求は年々大きくなっている。かかるバッテリ駆動型の電式機器では、種々の省電力機能を駆使して駆動時間の長時間化を図る方法が提案されている。
例えば、特許文献1では、非使用状態にある機能部への電源の停止を行う技術が提案されている。特許文献2では、ポータブル・コンピュータにおいて電力関係データをモニタして収集し、収集したデータに基づいて必要なアクションを行って、バッテリを再充電するまでの期間、ユーザの介入を最小にしてポータブル・コンピュータを使用できる時間量を最大にする技術が提案されている。特許文献3では、ユーザによる動作環境の設定を行うこと無く、バッテリ駆動時には省電力動作、AC電源駆動時には高性能動作させる技術が提案されている。特許文献4では、電池残量が少ないときに付加機能を停止して使用時間を延長する技術が提案されている。特許文献5では、現在の動作可能時間を表示し、使用者が動作時間の延長、短縮または消費電力の制御対象の変更を指示するとこれに応答して制御対象の消費電力を制御する技術が提案されている。
特許文献6では、所望する作業が現時点での電池残量で実行可能かどうかをユーザに通知し、実行不可能であれば、使用デバイスの設定を変更して、予想作業時間を確保する技術が提案されている。特許文献7では、希望使用時間が指定されたとき、動作可能時間がそれ以上である機能組み合わせが記憶されていると判定された場合に、該当する機能組み合わせとそれに対応付けられた動作可能時間とを表示する技術が提案されている。
特許文献8では、バッテリ残量と消費電力とに基づいて処理の実施可否を判断し、実施不可と判断した場合に、制限運用情報に登録されている機能のうち優先度が最も低い機能を代替対象機能として選択し、代替対象機能と同じ構成要素を利用し且つ消費電力が代替対象機能よりも低い機能を代替機能として選択し、制限運用情に登録されている代替対象機能を代替機能に変更すると共に、その優先度を高い値に変更する技術が提案されている。特許文献9では、使用アプリケーションごとにプロファイルを登録し、ユーザの使用状態に応じて必要な機器だけに電源供給を行う技術が提案されている。
特開平5−324139号公報 特開平6−83491号公報 特開平5−233551号公報 特開2000−253142号公報 特開平11−312029号公報 特開2002−62955号公報 特開平10−268987号公報 特開2005−293519号公報 特開2006−48630号公報
ところで、ポータブル・コンピュータ等の電子機器では、デバイスの増設や使用状況によって消費電力が大きく変動するため、高精度に省電力制御を行うためには、デバイス毎に消費電力を検出し、各デバイスに対して、省電力制御を行うことが望ましい。しかしながら、上記特許文献1〜9では、各デバイスの消費電力を推定する技術に関して、何ら記載されていない。
本願出願人は、特願2007−261373(出願継続中、未公開)において、与えられた目標消費電力で機器を動作させるために、消費電力をリソース使用率でリアルタイムに重回帰分析することによって、システム構成変更後の消費電力の予測を行う方法を提案した。
かかる方法によれば、使用状況の変化による電力変動の把握が正確に行え、装着された各種デバイスの電力データを事前に持っていなくてもそれぞれのデバイスの着脱前後の電力消費が予測できる。一方、この方法では、着脱されるデバイスの種類が増加するに伴って、独立変数が増加し、処理すべき演算量が増えてしまう場合がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、電子機器を構成する各リソースの消費電力を、演算量を抑えつつ高精度に推定することが可能な電子機器、電子機器の電力制御方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、機器内に電力を供給する電源を備え、かつ、1または複数のデバイスを着脱可能に構成された電子機器において、前記機器の全消費電力を検出する消費電力計測手段と、リソース使用量を検出するリソース使用量計測手段と、前記消費電力計測手段で検出された機器の全消費電力および前記リソース使用量計測手段で検出されたリソース使用量を重回帰分析して、前記リソースの消費電力を推定する消費電力推定手段と、を備え、前記消費電力推定手段は、前記デバイスの装着状態が変更された場合に、必要な係数だけを取り出して前記リソースの消費電力を計算することを特徴とする。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記消費電力推定手段は、前記デバイスの装着状態が変更された場合に、計算の一貫性を保持するためにデータを補正することが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記消費電力推定手段は、前記デバイスの装着状態が変更された場合に、過去の統計データのうち、監視すべきリソースに係わる統計データのみを利用して、前記リソースの消費電力を計算することが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記電源は、バッテリであり、さらに、ユーザ操作に応答して、前記バッテリの希望動作時間を設定する希望動作時間設定手段と、前記バッテリの残量を検出するバッテリ残量検出手段と、前記希望動作時間設定手段で設定されたバッテリの希望動作時間と、前記バッテリ残量検出手段で検出されたバッテリ残量に基づいて、目標消費電力の範囲を算出し、前記検出手段で検出した全消費電力が前記目標消費電力の範囲外の場合には、前記全消費電力が、前記目標消費電力の範囲内となるように、前記消費電力推定手段で推定した各デバイスの消費電力に基づいて、各デバイスの動作状態を制御する消費電力制御手段と、を備えることが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記消費電力推定手段で推定した各デバイスの消費電力に基づいて、各電力モードでの全消費電力の予測値を算出し、当該全消費電力の予測値に基づいて各電力モードでのバッテリ使用可能時間を推定して表示画面に表示するバッテリ使用可能時間提示手段を備えることが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記消費電力推定手段で推定したデバイスの消費電力に基づいて、当該デバイスへの電力の供給を停止させた場合のバッテリ延長時間を算出して、表示画面に表示する第1のバッテリ延長時間提示手段を備えることが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、各プロセスについてデバイスの利用状況をモニタし、前記消費電力推定手段で推定した各デバイスの消費電力に基づいて、各プロセスを停止させた場合に延長できるバッテリ延長時間を算出して、表示画面に表示する第2のバッテリ延長時間提示手段を備えることが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、時間帯と、当該時間帯の上限消費電力を設定する上限消費電力設定手段を備え、前記消費電力制御手段は、前記上限消費電力設定手段で設定された時間帯の消費電力が、設定された上限消費電力内になるように制御することが望ましい。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、機器内に電力を供給する電源を備え、かつ、1または複数のデバイスを着脱可能に構成された電子機器の電力制御方法において、前記機器の全消費電力を検出する消費電力計測工程と、リソース使用量を検出するリソース使用量計測工程と、前記消費電力計測手段で検出された機器の全消費電力および前記リソース使用量計測手段で検出されたリソース使用量を重回帰分析して、前記リソースの消費電力を推定する消費電力推定工程と、を含み、前記消費電力推定工程では、前記デバイスの装着状態が変更された場合に、必要な係数だけを取り出して前記リソースの消費電力を計算することを特徴とする電子機器の電力制御方法。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、機器内に電力を供給する電源を備え、かつ、1または複数のデバイスを着脱可能に構成された電子機器に搭載されるプログラムにおいて、前記機器の全消費電力を検出する消費電力計測工程と、リソース使用量を検出するリソース使用量計測工程と、前記消費電力計測手段で検出された機器の全消費電力および前記リソース使用量計測手段で検出されたリソース使用量を重回帰分析して、前記リソースの消費電力を推定する消費電力推定工程と、をコンピュータに実行させ、前記消費電力推定工程では、前記デバイスの装着状態が変更された場合に、必要な係数だけを取り出して前記リソースの消費電力を計算することを特徴とする。
本発明にかかる機器内に電力を供給する電源を備え、かつ、1または複数のデバイスを着脱可能に構成された電子機器において、前記機器の全消費電力を検出する消費電力計測手段と、リソース使用量を検出するリソース使用量計測手段と、前記消費電力計測手段で検出された機器の全消費電力および前記リソース使用量計測手段で検出されたリソース使用量を重回帰分析して、前記リソースの消費電力を推定する消費電力推定手段と、を備え、前記消費電力推定手段は、前記デバイスの装着状態が変更された場合に、必要な係数だけを取り出して前記リソースの消費電力を計算することとしたので、電子機器を構成する各デバイスの消費電力を、演算量を抑えつつ高精度に推定することが可能な電子機器を提供することが可能になるという効果を奏する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる電子機器の機能構成を示す図である。 図2は、新たなデバイス装着に伴う分散行列の拡張を説明するための模式図である。 図3は、デバイスの分離後の電力変動を説明するための図である。 図4は、表1のデータによる消費電力の実測値と推測値の比較を示す図である。 図5は、デバイスの装着状態の変化に対応した部分行列の作成を説明するための模式図である。 図6は、実施例に係るノート型パソコンの概略のハードウェア構成例を示す図である。 図7は、パワーマネージャの動作を説明するためのフローチャートである。 図8は、バッテリ希望動作時間設定画面の一例を示す図である。 図9は、電力モード(プロファイル)選択画面およびデバイス・プロセス消費電力画面の一例を示す図である。 図10は、電力管理画面の一例を示す図である。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる電子機器、電子機器の電力制御方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムの好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態および実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態および実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態にかかる電子機器の機能構成を示す図である。本実施の形態にかかる電子機器は、図1に示すように、消費電力制御手段1、消費電力推定手段2、リソース使用量計測手段3、消費電力計測手段4、電源5、CPU6、ディスプレイ7、ハードディスク8、ネットワークカード9、外部ポート10等を備えている。
電源5は、例えば、ACアダプタ、DC/DCコンバータ、バッテリ等で構成されており、電子機器の各部に電力を供給する。CPU6は、各種演算処理を実行して、電子機器の各部を制御する。ディスプレイ7は、ユーザ情報等を表示する。HDD(ハードディスク)8は、CPU6が実行するための各種プログラムを格納する。ネットワークカード7は、無線でデータ通信を実行する。外部ポート10は、外部機器10a〜10cを接続するためのインターフェースである。外部ポート10に接続される外部機器10a〜10cには、電源5から電力が供給される。
消費電力制御手段1、消費電力推定手段2、リソース使用量計測手段3、および消費電力計測手段4は、プログラムモジュールまたはハードウェアモジュールで構成することができる。ここで、「リソース」とは、コンピュータのシステムを構成し、稼働させるハードウェア(デバイスだけでなく、メモリの空き容量や通信回線の空き帯域なども含む)やソフトウェアを言い、ハードウェア資源およびソフトウェア資源を含むものである。
消費電力計測手段4は、電子機器全体の消費電力Pを定期的に計測する。リソース使用量計測手段3は、電子機器の各リソースのリソース使用量を計測する。消費電力推定手段2は、リソース使用量計測手段3で計測されたリソース使用量と消費電力計測手段4で計測された全体の消費電力Pとに基づいて、各リソースの消費電力を推定する。消費電力制御手段1は、消費電力推定手段2で推定された各リソースの消費電力に基づいて、各リソースの消費電力を制御する。
消費電力推定手段2による各リソースの消費電力の推定方法について説明する。ここでは、電子機器の消費電力Pがアイドル電力Pと様々なリソース使用量に比例する成分の和として近似できることを前提とする。観測するリソース使用量をI(j=1,…,q)、リソース使用量に対する比例係数をpとすると、電子機器の消費電力Pとリソース使用量の関係は下式(1)で表すことができる。
Figure 0005193116
このとき、消費電力Pとリソース使用量Iを繰り返し観測することにより、アイドル電力Pと比例係数pの最尤値を統計的に推定することができる。すなわち、マトリクスS,ベクトルTを下式(2)のように定義する。
Figure 0005193116
ここで、I(t)、P(t)は、それぞれ、リソース使用量I、電子機器の消費電力Pの時刻tでの測定値を表す。また、式の単純化のため、p=P,I(t)=1(for all n)とした。このとき、アイドル時電力及び比例係数の推定値は、下式(3)により表すことができる。
Figure 0005193116
上記特願2007−261373の方法を利用すると、デバイスの使用状況が過去の履歴と大きな変化がない場合にきわめてよい推計を与えることができる。しかし、デバイスの着脱が頻繁に行われると、着脱されるデバイスの種類が増加するに伴って、独立変数が増加して演算量が増え、保存すべきデータ量が増加すると共に、推計値が収束し難い場合がある。
例えば、CPU、HDD、ネットワークを備えたポータブル・コンピュータで消費電力を推定するのにCPU使用率、HDD読み込みバイト数、書き込みバイト数、送信バイト数、受信バイト数の5つのデータが必要になるとする。この後、マウスが装着されるとマウスの有無が統計データとして必要になり、外付けのHDDが装着されると装着の有無のほかに読み書きバイト数も必要とされるようになる。この時点で、独立変数は9つに、計算量はその2乗のオーダーで増加する。さらに多種のデバイスが着脱するとそのたびに計算量が増大していく。計算はリアルタイムに行われるため、処理量の増加はCPU使用率の増加につながり、レスポンス悪化や消費電力の増加を招く虞がある。また、より最近のデータを重視するために、単純平均の代わりに加重移動平均を使用して統計分析を行うと、長い間使われていないデバイスに関するデータは減衰し、無駄に誤差を増やすだけになってしまう。そこで、本実施の形態では、以下のようにして、デバイスの装着状態が変更された場合でも演算量を低減し、また、推計値が早く収束するようにしている。
まず、デバイスの装着状態が変更された場合に、計算の一貫性を保持するためにデータを補正する場合について説明する。デバイス(外部装置)が新たに装着されると、これに関連したリソースの使用状況が監視対象に加わる。新たな説明変数群で重回帰分析を行うためには、このリソースに関わる行列要素をSとTに追加すればよい。図2は、新たなデバイス装着に伴う分散行列の拡張を説明するための模式図である。同図に示す例は、1つのデバイスが追加された場合を示している。
このリソースに関わる過去のデータは全て「0」であるので、追加された行列要素(図2の斜線部分)を「0」に初期化し、以後は実測値を代入する。デバイスが装着解除された後は、測定値に再び「0」を代入して平均すればよい。
しかし、装着解除後の電力推定にこの斜線で示す部分の計算は本来必要ではない。図2に示す例では、独立変数が1つだけ増えた場合を示しているが、多くのデバイスの装着・解除を繰り返した場合、行列のほとんどの要素が不要となる場合もあり、計算の効率を悪化させる。これを回避するために、デバイスが装着解除された時点から、不要部分の計算を停止し、必要最低限の要素だけを計算する方法を以下に説明する。
上記式(2)において、マトリクスSの行列要素のうち、このデバイスに無関係な部分(図の白い部分)はデバイスの有無によって影響を受けない。したがって、デバイス装着中のマトリクスSのデータはそのまま用いることができる。しかし、ベクトルTは、消費電力Pがデバイスの装着によって変化したため、すべての要素が影響を受けており、装着解除されたデバイスによる影響を取り除く必要がある。図3は、デバイスの分離後の電力変動を説明するための図である。
図3において、このデバイスに関連したリソースをIとすると、その電力寄与分Pは上記式(1)より、P=pで近似され、このデバイス以外の部分の電力はP−Pとなる。装着解除後に図2の白い部分だけで計算を行うためには、デバイス装着中のベクトルTのデータをPではなくP−Pとすればよい。上記(2)式において、PをP−Pに置換し、補正されたベクトルT’の要素T’を求めると、下式(4)のように表すことができる。
Figure 0005193116
すなわち、デバイス装着中のデータに関して、Tからpjqを減じる補正を行うことで、不要部分の計算を行う必要がなくなる。具体的な計算例として、CPUとハードディスクの使用状況によって消費電力が変動するシステムに、CD−ROMドライブを一時的に装着する場合を説明する。一時的に、CD−ROMドライブが装着されたシステムのリソース使用状況と消費電力の測定値の一例を下記表1に示す。
Figure 0005193116
表1において、CD−ROMドライブは時刻16に装着され、時刻t40に装着解除されたとする。時刻t0〜時刻t15までと、時刻t41以降にはCD−ROMドライブに関するデータは存在しない。CD−ROMドライブが装着される以前の時刻t15までは、I=1、I=CPU使用率、I=HDD使用率、I=HDD読み込みバイト数、I=HDD書き込みバイト数として、上記式(2)に代入すると、マトリクスSとベクトルTは下式のようになる。
Figure 0005193116
そして、上記式に表1の時刻t15までのデータを代入すると、以下のようになる。
Figure 0005193116
時刻t15までのデータではシステムのアイドル電力は19.1W,CPU使用率1%あたりの電力は68mW,HDD使用率1%あたりの電力は14mW,HDD読み込みバイト数1kByte当たり0.4mW,HDD書き込みバイト数1kByte当たり−0.1mWの推定が得られる。時刻t16のCD−ROMドライブの装着以降では、CD−ROMドライブに関わる以下に示す指標を追加する必要がある。
Figure 0005193116
ここで、IはCD−ROMドライブの装着の有無を表し、CD−ROMドライブの待機電力に対応する指標である。I〜Iまでの指標を加えて時刻t40までのデータを計算すると、以下のようになる。
Figure 0005193116
これにより、新たにCD−ROMドライブに関する電力推定データを得ることができる。CD−ROMドライブの待機電力は約1.3Wであり、使用率1%あたり24mW,読み込み1kByte当たり1mWの電力を消費すると推定される。
時刻t40以降もI〜Iまでの全てを含むS,Tから係数を推定することが可能である。このようにして、時刻t53までのデータから求めた係数は、以下のようになる。
Figure 0005193116
この計算では8×8行列Sの逆行列と8列のベクトルTの積によって係数を求めているが、時刻t41以降でCD−ROMドライブに関するデータを計算することに意味はなく、上記式(4)による補正を行うことで計算量を削減することができる。時刻t40での全体のベクトルTは、以下のようになる。
Figure 0005193116
CD−ROMドライブの関連成分を無視し、TからTにp,p,pについて上記式(4)の補正を行うと、以下のようになる。
Figure 0005193116
時刻t41以下ではこの補正後のベクトルを使用して計算を行うことで、5行5列の計算だけで済ませることができ、計算量は全体で計算する場合の半分以下となる。この補正を行って時刻t53までのデータから係数ベクトルを計算すると、以下のようになる。
Figure 0005193116
図4は、この例について、消費電力の実測値、全体計算による推測値、および補正による簡略化計算の推測値(本実施の形態による計算方法の場合)をグラフに纏めたものである。同図において、横軸は時刻、縦軸は消費電力を示しており、実測値(一点鎖線)、全体計算による推定値(波線)、および補正計算による推定値(実線)をプロットしている。図4に示すように、補正の効果は時刻t40以降に現れるはずであるが、行列全体を計算した場合と電力推測値にほとんど違いがないことが分かり、本実施の形態の補正による簡略化計算の有用性が確認された。この例では、1つのデバイスがある時刻で装着された後に取り外されるという単純な動作であるが、多種のデバイスが着脱を繰り返す環境ではより多くの計算が省略でき、この補正計算の効果はさらに大きくなる。
つぎに、デバイスの装着状態を変更した際、過去の統計データを利用して以後の電力推計に必要な統計データを算出する方法について説明する。CPUやディスプレイ等は、周波数や輝度毎に複数の電力状態を有する。かかるデバイスでは、電力状態毎に異なるデバイスとして取り扱い、電力状態の変更はデバイスの着脱と解釈する。しかしながら、電力状態の変更は実際のデバイスの着脱よりも頻繁に起き、上述の補正計算が複雑化する可能性がある。これを単純化するため、デバイスごとに補正を行わずにデバイス状態の変更の度にベクトルTを推計することが有効である。全体のマトリクスSと係数行列pから、変更後のデバイス状態に関連した係数だけを抜き出して部分行列を作成する。この場合、補正されたベクトルT’は上記式(1)より、下式(5)のように表すことができる。
Figure 0005193116
ここで、添え字kに関する和は全体の行列要素に対してではなく、現在装着されているデバイスに係る要素についてのみ行うものとする。こうして求められた部分行列S’とベクトルT’を合わせてワーキングセットとする。図5は、デバイスの装着状態の変化に対応した部分行列S’の作成を説明するための模式図である。
以後のデータ更新、計算はこのワーキングセットに対してのみ行う。なお、S,T,pの定義から、上記式(4)と上記式(5)は等価である。再度、デバイスの装着状態の変更があった場合には、現在のワーキングセットのデータを全体の行列に書き戻し、データの更新を行った上で、新たな状態に対応したワーキングセットを用意する。
具体的な計算例として、CPUとDisplayとハードディスクドライブによって消費電力が支配されるシステムのデータを取り上げる。ここで、CPUは、低・高の2つの周波数で動作し、周波数毎にアイドル電力、動作時電力が異なるものとする。また、ディスプレイも輝度「0」と「1」の2つの状態をとることができ、消費電力も輝度によって変化するものとする。表2は、複数の電力状態をとるデバイスを含むシステムのリソース使用率と消費電力の一例を示している。
Figure 0005193116
表2のデータ全体で通常の重回帰分析を行うと、CPU周波数、周波数低のCPU使用率、周波数低のCPU使用率、Displayディスプレイ輝度、HDD使用率、HDD読み込みバイト数、HDD書き込みバイト数に対応する比例定数とアイドル電力を含めて8個の未知数を求めることになる。ただし、CPU周波数は実際の周波数ではなく、アイドル状態での消費電力の差異を示す変数で、周波数が低の場合は「0」、高の場合は「1」とする。この計算結果を下記表3に示す。
Figure 0005193116
上記式(5)によるベクトルTの推計を容易にするため、表2のデータをCPU周波数とDisplay輝度を基準に以下のようなステートに分割する。
State0:CPU周波数低、Display輝度0
State1:CPU周波数低、Display輝度1
State2:CPU周波数高、Display輝度0
State3:CPU周波数高、Display輝度1
上記式(2)のIに代入すべきデータは、下記のようになる。
Figure 0005193116
全体で分析する場合よりも変数が多いのは各ステートのアイドル電力が独立ではなく、周波数による消費電力の差分と輝度「0」と「1」の差分から計算可能であることによる。各ステートで問題にすべき変数はそれぞれ、
State0:I0,I4,I6,I7,I8
State1:I1,I4,I6,I7,I8
State2:I2,I5,I6,I7,I8
State3:I3,I5,I6,I7,I8
の5つであり、5行5列の行列で計算ができる。
ここでは、表2の時刻t47におけるステートの変化に注目して、上記(5)式の推計について説明を行う。時刻t46までのデータから、マトリクスSと係数ベクトルpの全体は、以下のように計算される。
Figure 0005193116
時刻t47でステートは「3」となったため、ステート3に関連した部分行列だけを取り出すと、以下のようになる。
Figure 0005193116
時刻t47以降では、ここで算出したからなるワーキングセットのみをアップデートすればよい。この方法によって時刻t53までのデータを処理すると以下のようになる。
Figure 0005193116
上記計算例は、単純化しているため効果が限定されているが、実際の応用では遙かに大きな効果が期待できる。最近のCPUは5〜6個の周波数を設定することができ、複数のSleep状態が実装されている。従って、電力の推定の精度を保つにはCPUの使用率だけでなく、各Sleep状態に存在する割合も必要となり、最低でも周波数あたり3つ程度のデータを取得する必要がある。また、Displayの輝度も8〜16段階で制御するのが普通である。アイドル電力も変数として考えると、CPUについては4×6=24個、Displayについて16個の変数が必要であり、合計40に達する。上記方法でステートに分離して計算すれば、それぞれの状態の中ではわずかに4個の変数だけを取り扱えばよい。ディスクドライブやネットワークといった他のリソースに係わる変数が10個程度あるとすると、行列を分離せずに計算する場合には50×50のオーダーの計算が必要とされるのに対し、ステート毎に分離してしまうと14×14のオーダーの計算量で済ませることができる。リアルタイムで電力予測を行う用途では、この違いは極めて大きなものとなる。
本実施の形態によれば、電子機器の全消費電力を検出する消費電力計測手段4と、リソース使用量を検出するリソース使用量計測手段3と、消費電力計測手段4で検出された電子機器の全消費電力およびリソース使用量計測手段3で検出されたリソース使用量を重回帰分析して、リソースの消費電力を推定する消費電力推定手段2と、を備え、消費電力推定手段2は、デバイスの装着状態が変更された場合に、必要な係数だけを取り出してリソースの消費電力を計算することとしたので、電子機器を構成するリソースの消費電力を、演算量を抑えつつ高精度に推定することが可能となる。
また、消費電力推定手段2は、デバイスの装着状態が変更された場合に、計算の一貫性を保持するためにデータを補正することとしたので、デバイスの装着状態の変更に伴う演算量の増加を低減することが可能となる。
また、消費電力推定手段2は、デバイスの装着状態が変更された場合に、過去の統計データのうち、監視すべきリソースに係わる統計データのみを利用して、リソースの消費電力を計算することとしたので、デバイスの装着状態の変更に伴う演算量の増加を低減することが可能となる。
(実施例)
図6〜図10を参照して、上記実施の形態の電子機器をノート型パソコンに適用した場合について説明する。図6は、実施例に係るノート型パソコンのハードウェア構成例を示す図である。
実施例に係るノート型パソコンは、同図に示すように、CPU11、ROM12、RAM13、HDD(ハードディスク)14、ディスプレイ15、ネットワークカード17、入力部18、USBポート19、バッテリ20、パワーコントローラ21、DC−DCコンバータ22、およびACアダプタ23等を備えており、各部はバスを介して接続されている。
CPU11は、バスを介して接続されたHDD14に格納されたマルチタスクOS14aによりノート型パソコン全体の制御を行うとともに、HDD14に格納された各種のプログラムに基づいて処理を実行する機能を司る。ROM12は、BIOS12aやデータ等を格納している。RAM13は、CPU11による各種プログラムの実行時にワークエリアとして利用されるメモリ機能を有している。
ディスプレイ15は、液晶ディスプレイ、バックライト、バックライトを駆動するインバータ、液晶ディスプレイを駆動するドライバ回路、ビデオコントローラ等を備えている。液晶ディスプレイは、CPU11の各種の処理に伴うメニュー、ステータス、表示遷移等を表示する機能を有している。ビデオコントローラは、CPU11の制御に従って、インバータを制御してバックライトの輝度の調整や、ビデオ信号をドライバ回路に送出して、液晶ディスプレイの表示を制御する。
ネットワークカード17は、インターネット等のネットワークに接続してデータ通信を行ったり、赤外線で他の機器と通信する機能を司る。
入力部18は、ユーザが入力操作を行うためのユーザインターフェースであり、文字、コマンド等を入力する各種キーより構成されるキーボードや画面上のカーソルを移動させたり、各種メニューを選択するスライスパッドを備えている。USBポート19には、着脱可能な外部機器(例えば、CD−ROMドライブ26、DVDドライブ27、HDDドライブ28等)が装着可能となっている。
HDD(ハードディスク)14は、ノート型パソコン全体の制御を行うためのマルチタスクOS14a、各種ドライバ14b、ノート型パソコンの消費電力を制御するパワーマネージャ14c、各種アプリケーションプログラム14d等を記憶する機能を有している。
ACアダプタ23は、商用電源に接続して、AC電圧をDC電圧に変換してDC−DCコンバータ22に出力する。DC−DCコンバータ22は、ACアダプタ23から供給されるDC電圧を所定の電圧に変換して各部に電力を供給し、また、バッテリ20の充電を行う。バッテリ20は、DC−DCコンバータ22により充電され、充電した電圧を各部に供給する。パワーコントローラ21は、バッテリ20およびDC−DCコンバータ22の動作を制御する。パワーコントローラ21は、パワーマネージャ14cからバッテリ20の残存バッテリ容量および全消費電力Pの計測要求を受け付けると、バッテリ20の残存バッテリ容量およびノート型パソコンの全消費電力Pを計測して、計測結果をパワーマネージャ14cに出力する。バッテリ20は、ACアダプタ23が商用電源に接続されていない場合に使用される。
CPU11が、HDD14に格納されるパワーマネージャ14cを読み出して実行することにより実現される機能について図3〜図5を参照しながら説明する。CPU11が、パワーマネージャ14cを実行することにより、上記図1の消費電力制御手段1、消費電力推定手段2、リソース使用量計測手段3、消費電力計測手段4、およびバッテリ残量検出手段として機能し、上記実施の形態の方法を使用して、各リソースの消費電力を推定する。以下の説明では、CPU11がパワーマネージャ14cを実行することにより実現される機能について、パワーマネージャ14cを動作主体として説明する。
[実施例1]
図6のノート型パソコンのバッテリ駆動時の実施例を説明する。図7は、バッテリ駆動時のパワーマネージャ14cの動作を説明するためのフローチャートである。図8は、パワーマネージャ14cがディスプレイ15に表示するバッテリ希望動作時間設定画面の一例を示す図である。ディスプレイ15の表示画面のディスクトップに表示される不図示のボタンまたはアイコンが選択されると、パワーマネージャ14cは、ディスプレイ15にバッテリ希望動作時間設定画面を表示する。バッテリ希望動作時間設定画面では、図8に示すように、現在の残存バッテリ容量、現在の消費電力、目標消費電力、残バッテリ時間、バッテリ希望使用時間入力欄30が表示されている。ユーザは、入力部18を操作して、希望動作時間入力欄30でバッテリ希望使用時間を入力して、バッテリ希望使用時間を設定する。入力可能なバッテリ希望動作時間の上限は、アイドル状態での消費電力によって制限され、ユーザが不快感を抱かずに作業できる最低限の電力は確保されなければならない。なお、ユーザによる入力ではなく、ノート型パソコン内のスケジュール帳と連動して、ユーザのバッテリ希望使用時間を推定してもよい。
図7において、ノート型パソコンの電源状態の変化(電源の投入、レジューム、ACアダプタの切り離し等)によってバッテリ駆動が開始されると、パワーマネージャ14cが起動する。パワーマネージャ14cは、起動と同時に、デバイスの動作状況を示すデバイス情報および全消費電力Pを一定の時間間隔(1〜数秒程度)で収集するためにタイマを起動するとともに(ステップS1)、バッテリ希望使用時間を取得する(ステップS2)。
パワーマネージャ14cは、タイマイベントが発生すると、パワーコントローラ21を介して、残存バッテリ容量と全消費電力Pを検出するとともに、リソース使用量としてデバイス情報(CPU動作周波数、CPU使用率、HDD使用率、HDD読み取りバイト数、HDD書き込みバイト数等)を取得する(ステップS3)。
パワーマネージャ14cは、検出した残存バッテリ容量とバッテリ希望使用時間とに基づいて、目標消費電力(予定消費電力)の上限と下限を決定する(ステップS4)。例えば、目標消費電力の上限=(残存バッテリ容量−予備電力)/バッテリ希望使用時間、予定消費電力の下限=予定消費電力の上限×95%とすることができる。
次に、パワーマネージャ14cは、デバイス情報の計測値から前述のマトリクスS、ベクトルTの値を更新するとともに(ステップS5)、全消費電力Pが目標消費電力の範囲内(目標消費電力の下限≦全消費電力P≦目標消費電力の下限)にあるか否かを判断する(ステップS6)。全消費電力Pが目標消費電力の範囲内にある場合には(ステップS6の「Yes」)、ステップS3に戻り、次のタイマイベントまで動作を休止する。
パワーマネージャ14cは、全消費電力Pが目標消費電力の範囲内にない場合には(ステップS6の「No」)、各デバイスの推定電力を求めるための比例係数(p=S−1T)を算出し、それぞれのデバイス情報に対応して、CPU使用率1%当たりの消費電力、HDD使用率1%当たりの消費電力、HDD読みとり1バイト当たりの消費電力といった、各デバイス(リソース)に関連する詳細な消費電力を推定する(ステップS7)。
つづいて、パワーマネージャ14cは、全消費電力P>目標消費電力の上限であるか否かを判断し(ステップS8)、全消費電力P>目標消費電力の上限である場合には(ステップS8の「Yes」)、消費電力減少制御を実行する(ステップS10)。
消費電力減少制御では、例えば、以下の(1)〜(4)の処理を行って、消費電力を削減する。
(1)パフォーマンスの低下によって消費電力を制御できるデバイスの動作状態を変更する(例えば、ディスプレイ輝度、CPU周波数の調整)。(2)利用されていないデバイスをパワーダウンする。
上記(1)、(2)では、各デバイスの消費電力の推定結果に基づいて、動作状態の変更による消費電力の削減量を事前に予測できるため、ユーザへの影響が小さいものから順に目標消費電力に到達するまで、デバイスを選択してその動作状態を変更する。
(3)上記(1)、(2)の全てを行っても目標消費電力を達成できない場合には、動作中のプロセスのCPU11やI/Oの使用率を求め、プロセス毎の消費電力を推定する。メンテナンスタスクなどユーザの生産性に影響の少ないバックランドプロセスで消費電力の大きいものがある場合、これらのプロセスの実行を一時停止する。
(4)上記(3)で目標消費電力を達成できない場合、CPU11、HDD14、およびネットワークカード17等の使用率を、目標消費電力の範囲内に収まるように制御する。各使用率を過去の履歴に従って配分し、目標消費電力から逆算して算出することができる。この場合、フォアグランドでユーザが使用しているプロセスへ資源を優先的に割り当てる。
パワーマネージャ14cは、全消費電力P>目標消費電力の上限でない場合には(ステップS8の「No」)、すなわち、全消費電力P<目標消費電力の下限の場合には、消費電力増加制御を実行する(ステップS9)。消費電力増加制御では、上記(1)〜(4)の処理と逆の処理を行って、パフォーマンスを向上させる。バッテリ希望使用時間が経過した場合、または、ACアダプタ23が商用電源に接続されて、AC駆動に変更された場合に、パワーマネージャ14cは動作を停止する。
実施例1によれば、パワーマネージャ14cは、機器の全消費電力および各デバイスの動作状態を示すデバイス情報を、定期的に検出し、検出した機器の全消費電力および各デバイスのデバイス情報に基づいて、各デバイスの消費電力をリアルタイムに推定することとしたので、バッテリ駆動型の電子機器において、電子機器を構成する各デバイスの消費電力を高精度に推定することが可能となる。付言すると、デバイスの増設や使用状況によって消費電力が大きく変動した場合であっても、デバイスごとの消費電力と使用状態の変化による電力変動を正確に推測して、定量的な電力制御を行うことが可能となる。
また、実施例1によれば、パワーマネージャ14cは、ユーザが設定したバッテリ20の希望動作時間とバッテリ残量に基づいて、目標消費電力の範囲を算出し、全消費電力Pが目標消費電力の範囲外の場合には、全消費電力Pが、目標消費電力の範囲内となるように、推定した各デバイスの消費電力に基づいて、各デバイスの動作状態を制御することとしたので、デバイスの増設や使用状況によって消費電力が大きく変動した場合であっても、定量的に動的な電力制御を行うことが可能となる。付言すると、実施例1では、リアルタイムにデバイスの消費電力を推定しているので、パフォーマンスや実行する作業量を動的に変化させることによって、ユーザの必要とするバッテリ駆動時間に応じた最良のパフォーマンスを提供することができる。また、急な電力制御で不足した電力を、実行中のプロセスの一時的な中断や遅延、電力消費の大きなデバイスに対するアクセス制限などで補うことができる一方、目標消費電力を実際の消費電力が下回る場合は、余剰電力をシステムの機能向上に利用することが可能となる。
実施例1では、パワーマネージャ14cは、計測した全消費電力Pが目標消費電力の範囲内にない場合には、全消費電力Pが目標消費電力の範囲内になるように消費電力を自動的に制御することにした。これに対して、実施例2では、パワーマネージャ14cは、電力モード毎のバッテリ使用可能時間や、デバイスやプロセス毎の消費電力をユーザに提示して、バッテリ使用時の消費電力に関するユーザ設定を容易にするものである。
[実施例2]
図2のノート型パソコンのバッテリ駆動時の他の実施例を説明する。実施例1では、パワーマネージャ14cは、計測した全消費電力Pが目標消費電力の範囲内にない場合には、全消費電力Pが目標消費電力の範囲内になるように消費電力を自動的に制御することにした。これに対して、実施例2では、パワーマネージャ14cは、電力モード毎のバッテリ使用可能時間や、デバイスやプロセス毎の消費電力をユーザに提示して、バッテリ使用時の消費電力に関するユーザ設定を容易にするものである。「プロセス」とは、プログラムやサービスをいい、以下、同様である。
実施例2では、CPU11が、パワーマネージャ14cを実行することにより、バッテリ使用可能時間提示手段、第1のバッテリ延長時間提示手段、第2のバッテリ延長時間提示手段として機能する。実施例2において、パワーマネージャ14cは、バッテリ駆動が開始されると、実施例1と同様に、タイマを起動し、デバイス情報と全消費電力Pを一定の時間間隔で収集し、デバイス情報と全消費電力Pの計測値からマトリクスSおよびベクトルTをリアルタイムで計算し、比例係数(p=S−1T)、各デバイスの消費電力を推定する。
図9は、電力モード(プロファイル)選択画面およびデバイス・プロセス消費電力画面の一例を示す図である。ディスプレイ15の表示画面のディスクトップには、電力状態を変更するための不図示のボタンまたはアイコン(R)が表示されているものとする。ユーザがバッテリ駆動時間を延長したい場合やパソコンのパフォーマンスに不満がある場合には、このボタンまたはアイコン(R)を、入力部18を操作して選択すると、パワーマネージャ14cは、電力モード選択画面P1を表示する。電力モード選択画面P1には、各電力モード(第1モード〜第6モード)におけるバッテリ使用可能時間(予測値)の一覧41と、デバイス・プロセス電力消費画面を表示するための詳細情報ボタン42が表示されている。例えば、第6モード(Maximum Battery Life)を選択した場合のバッテリ使用可能時間(予測値)は、3h35mとなる。
ユーザは、この一覧41で電力モードを選択することができる。パワーマネージャ14cは、各電力モードで規定されるデバイス設定に現在の使用状況(デバイス情報、各デバイスの消費電力の推定値)を適用して、各電力モードでの全消費電力の予測値を求めて、バッテリ使用可能時間を推定し、各電力モード(第1モード〜第6モード)のバッテリ使用可能時間(予測値)を一覧41に表示する。これにより、ユーザは、バッテリ使用可能時間を考慮して電力モードを選択することが可能となる。
詳細情報ボタン42を選択すると、デバイス・プロセス消費電力画面が表示される。デバイス・プロセス消費電力画面では、選択ボタンでデバイスとプロセスの表示切り替えが可能となっており、デバイスが選択された場合には、デバイス・プロセス消費電力画面P2が表示され、プロセスが選択された場合には、デバイス・プロセス消費電力画面P3が表示される。
デバイス・プロセス消費電力画面P2では、着脱可能なデバイス(=電力の供給を停止可能なデバイス)の推定消費電力および脱着した場合のバッテリ持続時間が表示されている。パワーマネージャ14cは、着脱可能なデバイスの現在の使用状況(デバイス情報、消費電力の推定値)に基づいて、その取り外しによるバッテリ持続時間を算出する。例えば、同図に示す例では、ネットワークカード17を脱着した場合には、消費電力3.2Wの節約になり、バッテリ持続時間を45min延長することが可能となる。また、デバイス・プロセス消費電力画面P2では、パワーマネージャ14cは、ディスプレイ15のバックライトの輝度やCPU11のパフォーマンスなどの設定の変更による消費電力とバッテリ持続時間の変化を表示する。ユーザは、ボリュームを操作することで、ディスプレイ15のバックライトの輝度やCPU11のパフォーマンスを設定することができる。
デバイス・プロセス消費電力画面P3では、プロセスの実行による消費電力およびそのプロセスの停止に伴うバッテリ持続時間が表示されている。パワーマネージャ14cは、各プロセスについてデバイスの利用状況をモニタし、その推定消費電力およびプロセスを停止させたときに延長できるバッテリ持続時間を算出して表示する。例えば、アプリBを停止させた場合には、消費電力3.2Wの節約になり、バッテリ持続時間を45min延長することが可能となる。
このように、ユーザに、デバイス・プロセス消費電力画面P2、P3を提示することにより、ユーザは、必要なバッテリ持続時間に応じたパフォーマンスを設定することができる。例えば、バッテリ持続時間を延長したい場合には、不要なデバイスを取り外し、CPU11のパフォーマンスやバックライト15の輝度を低下させ、また、不要なプロセスを停止させることにより、消費電力を低減することが可能となる。
実施例2によれば、パワーマネージャ14cは、推定した各デバイスの消費電力に基づいて、各電力モードでの全消費電力の予測値を算出し、当該全消費電力の予測値に基づいて各電力モードでのバッテリ使用可能時間を推定して表示画面に表示することとしたので、ユーザが電力モードを選択する場合の基準が明確となる。
また、実施例2によれば、パワーマネージャ14cは、推定したデバイスの消費電力に基づいて、当該デバイスへの電力の供給を停止させた場合のバッテリ延長時間を算出して、表示画面に表示することとしたので、ユーザは、消費電力の大きいデバイスの取り外し等を行って、不要な電力を削減することが可能となる。
また、実施例2によれば、パワーマネージャ14cは、各プロセスについてデバイスの利用状況をモニタし、推定した各デバイスの消費電力に基づいて、各プロセスを停止させたときに延長できるバッテリ延長時間を算出して表示画面に表示することとしたので、ユーザは、電力消費の大きいプロセスを停止させて、不要な電力消費を削減することが可能となる。
[実施例3]
図10のノート型パソコンのACアダプタ使用時またはバッテリ使用時の実施例を説明する。図10は、パワーマネージャ14cがディスプレイ15に表示する電力管理設定画面の一例を示す図である。ディスプレイ15の表示画面のディスクトップに表示される不図示のボタンまたはアイコンが選択されると、パワーマネージャ14cは、ディスプレイ15に、電力管理設定画面を表示する。この電力管理設定画面では、図10に示すように、現在の消費電力、時間帯入力欄51、時間帯入力欄51で指定される時間帯の上限消費電力入力欄52が表示されている。ユーザは、入力部18を操作して、時間帯入力欄51で時間帯を入力し、さらに、当該入力した時間帯の上限消費電力を上限消費電力入力欄52に入力して、指定した時間帯の上限消費電力を設定する。例えば、ネットワーク管理者が、ネットワークに接続される電子機器の当該時間帯および上限消費電力を設定することにより、ネットワーク上での電子機器の消費電力管理を行う場合に有用である。
パワーマネージャ14cは、ACアダプタまたはバッテリによる駆動時に、指定された時間帯の消費電力が設定された上限消費電力以内になるように電力を制御する。消費電力を削減する場合は、実施例1の消費電力減少制御を行うことができる。
実施例3によれば、ユーザは、電力管理設定画面において、時間帯および当該時間帯の上限消費電力を設定し、パワーマネージャ14cは、ACアダプタまたはバッテリによる駆動時に、指定された時間帯の消費電力が設定された上限消費電力以内になるように電力を制御することとしたので、ユーザは、指定した時間帯に消費電力を低減することが可能となる。
なお、上記実施例では、本発明に係る電子機器の一例として、ノート型パソコンについて説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、全ての電子機器に適用可能であり、例えば、PDA、携帯端末、デジタルカメラ等の電子機器に適用可能である。
本発明に係る電子機器、電子機器の電源制御方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムは、電子機器において、省電力化を図る場合に有用である。
1 消費電力制御手段
2 消費電力推定手段
3 リソース使用量計測手段
4 消費電力計測手段
5 電源
6 CPU
7 ディスプレイ
8 ハードディスク
9 ネットワークカード
10 外部ポート
10a〜10c 外部機器
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 HDD(ハードディスク)
14c パワーマネージャ
15 ディスプレイ
17 ネットワークカード
18 入力部
19 USBポート
20 バッテリ
21 パワーコントローラ
22 DC−DCコンバータ
23 ACアダプタ

Claims (9)

  1. 機器内に電力を供給する電源を備え、かつ、1または複数のデバイスを着脱可能に構成された電子機器において、
    前記機器の全消費電力を検出する消費電力計測手段と、
    リソース使用量を検出するリソース使用量計測手段と、
    前記消費電力計測手段で検出された機器の全消費電力および前記リソース使用量計測手段で検出されたリソース使用量を重回帰分析して、前記リソースの消費電力を推定する消費電力推定手段と、
    を備え、
    前記消費電力推定手段は、前記デバイスの装着状態が変更された場合に、必要な係数だけを取り出して前記リソースの消費電力を計算し
    前記全消費電力をP、アイドル時消費電力をP 、リソース使用量をI (j=1,…,q)、リソース使用量に対する比例係数をp とした場合、前記全消費電力Pを、下式(1)で定義し、また、I (t )を時刻t でのリソース使用量I の計測値、P(t )を消費電力Pの時刻t での計測値とした場合、マトリクスS、ベクトルTを下式(2)のように定義し、下式(3)より、各リソースの消費電力を算出し、
    Figure 0005193116

    新たなデバイスが装着された場合には、上記式(1)〜(3)において、対応するリソース使用量I および比例係数p を追加し、当該新たなデバイスが脱着された場合には、当該新たなデバイスに関連するリソースをI 、その電力寄与分をP とした場合、下式(4)に示す補正後のベクトルT’を使用することを特徴とする電子機器。
    Figure 0005193116
  2. 前記消費電力推定手段は、前記デバイスの装着状態が変更された場合に、過去の統計データのうち、選択したリソースに関わる統計データのみを利用して、前記リソースの消費電力を計算し、下式(5)に示す補正後のベクトルT’を使用することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
    Figure 0005193116
  3. 前記電源は、バッテリであり、
    さらに、
    ユーザ操作に応答して、前記バッテリの希望動作時間を設定する希望動作時間設定手段と、
    前記バッテリの残量を検出するバッテリ残量検出手段と、
    前記希望動作時間設定手段で設定されたバッテリの希望動作時間と、前記バッテリ残量検出手段で検出されたバッテリ残量に基づいて、目標消費電力の範囲を算出し、前記検出手段で検出した全消費電力が前記目標消費電力の範囲外の場合には、前記全消費電力が、前記目標消費電力の範囲内となるように、前記消費電力推定手段で推定した各デバイスの消費電力に基づいて、各デバイスの動作状態を制御する消費電力制御手段と、
    を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
  4. 前記消費電力推定手段で推定した各デバイスの消費電力に基づいて、各電力モードでの全消費電力の予測値を算出し、当該全消費電力の予測値に基づいて各電力モードでのバッテリ使用可能時間を推定して表示画面に表示するバッテリ使用可能時間提示手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の電子機器。
  5. 前記消費電力推定手段で推定したデバイスの消費電力に基づいて、当該デバイスへの電力の供給を停止させた場合のバッテリ延長時間を算出して、表示画面に表示する第1のバッテリ延長時間提示手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の電子機器。
  6. 各プロセスについてデバイスの利用状況をモニタし、前記消費電力推定手段で推定した各デバイスの消費電力に基づいて、各プロセスを停止させた場合に延長できるバッテリ延長時間を算出して、表示画面に表示する第2のバッテリ延長時間提示手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の電子機器。
  7. 時間帯と、当該時間帯の上限消費電力を設定する上限消費電力設定手段を備え、
    前記消費電力制御手段は、前記上限消費電力設定手段で設定された時間帯の消費電力が、設定された上限消費電力内になるように制御することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の電子機器。
  8. 機器内に電力を供給する電源を備え、かつ、1または複数のデバイスを着脱可能に構成された電子機器の電力制御方法において、
    前記機器の全消費電力を検出する消費電力計測工程と、
    リソース使用量を検出するリソース使用量計測工程と、
    前記消費電力計測手段で検出された機器の全消費電力および前記リソース使用量計測手段で検出されたリソース使用量を重回帰分析して、前記リソースの消費電力を推定する消費電力推定工程と、
    を含み、
    前記消費電力推定工程では、前記デバイスの装着状態が変更された場合に、必要な係数だけを取り出して前記リソースの消費電力を計算し
    前記全消費電力をP、アイドル時消費電力をP 、リソース使用量をI (j=1,…,q)、リソース使用量に対する比例係数をp とした場合、前記全消費電力Pを、下式(1)で定義し、また、I (t )を時刻t でのリソース使用量I の計測値、P(t )を消費電力Pの時刻t での計測値とした場合、マトリクスS、ベクトルTを下式(2)のように定義し、下式(3)より、各リソースの消費電力を算出し、
    Figure 0005193116
    新たなデバイスが装着された場合には、上記式(1)〜(3)において、対応するリソース使用量I および比例係数p を追加し、当該新たなデバイスが脱着された場合には、当該新たなデバイスに関連するリソースをI 、その電力寄与分をP とした場合、下式(4)に示す補正後のベクトルT’を使用することを特徴とする電力制御方法。
    Figure 0005193116
  9. 機器内に電力を供給する電源を備え、かつ、1または複数のデバイスを着脱可能に構成された電子機器に搭載されるプログラムにおいて、
    前記機器の全消費電力を検出する消費電力計測工程と、
    リソース使用量を検出するリソース使用量計測工程と、
    前記消費電力計測手段で検出された機器の全消費電力および前記リソース使用量計測手段で検出されたリソース使用量を重回帰分析して、前記リソースの消費電力を推定する消費電力推定工程と、
    をコンピュータに実行させ、
    前記消費電力推定工程では、前記デバイスの装着状態が変更された場合に、必要な係数だけを取り出して前記リソースの消費電力を計算し
    前記全消費電力をP、アイドル時消費電力をP 、リソース使用量をI (j=1,…,q)、リソース使用量に対する比例係数をp とした場合、前記全消費電力Pを、下式(1)で定義し、また、I (t )を時刻t でのリソース使用量I の計測値、P(t )を消費電力Pの時刻t での計測値とした場合、マトリクスS、ベクトルTを下式(2)のように定義し、下式(3)より、各リソースの消費電力を算出し、
    Figure 0005193116
    新たなデバイスが装着された場合には、上記式(1)〜(3)において、対応するリソース使用量I および比例係数p を追加し、当該新たなデバイスが脱着された場合には、当該新たなデバイスに関連するリソースをI 、その電力寄与分をP とした場合、下式(4)に示す補正後のベクトルT’を使用することを特徴とするコンピュータが実行可能なプログラム。
    Figure 0005193116
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