JP5179163B2 - 燃焼炉の燃焼制御システムおよびその燃焼制御方法 - Google Patents
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Description
(a)制御操作が行われる前記各制御対象に係る制御機構と、(b)プロセスデータが得られる前記各制御指標に係る測定手段と、(c)前記制御機構との間の制御信号および前記測定手段との間の出力信号を送受信する制御装置と、(d)前記制御対象に係る制御量あるいは/および制御指標についてのプロセスデータを解析して、境界条件あるいは炉内分布を作成する燃焼解析装置と、(e)前記制御量あるいは/およびプロセスデータを基に、特定の制御指標についてのシミュレーションを行い、シミュレーションデータを作成するシミュレーション装置と、を備え、
(ア)前記燃焼炉の最適の燃焼状態における、前記制御指標の境界条件Foあるいは炉内分布Moを設定する機能と、
(イ)実動条件における制御量あるいは/およびプロセスデータを基に、特定の制御指標nについてのシミュレーションを行い、得られたシミュレーションデータから、その境界条件Fnあるいは炉内分布Mnを作成する機能と、
(ウ)前記境界条件Fnあるいは炉内分布Mnを、前記境界条件Foあるいは炉内分布Moと比較し、所定の差異があれば、制御操作すべき制御対象を特定して制御操作する機能と、
(エ)前記制御操作後の実動条件における前記制御指標nに係るプロセスデータを、前記境界条件Fnと比較し、所定の差異があれば、制御操作すべき制御対象を特定して制御操作する機能と、
を有することを特徴とする。
(S1)燃焼制御システムを起動するステップと、
(S2)前記燃焼炉の最適燃焼状態の燃焼状態における、前記制御指標の境界条件Foあるいは炉内分布Moを設定するステップと、
(S3)実動条件における制御量あるいは/およびプロセスデータを基に、前記制御指標についてのシミュレーションを行い、シミュレーションデータを得るステップと、
(S4)該シミュレーションデータから、前記特定の制御指標nについての境界条件Fnあるいは炉内分布Mnを作成するステップと、
(S5)前記境界条件Fnあるいは炉内分布Mnを、前記境界条件Foあるいは炉内分布Moと比較するステップと、
(S6)該比較時に、所定の差異があれば、前記境界条件Fnあるいは炉内分布Mnが、前記境界条件Foあるいは炉内分布Moに近接するように、制御操作すべき制御対象T1を特定し、その操作量を設定するステップと、
(S7)前記制御対象T1について、前記操作量を制御操作するステップと、
(S8)前記制御操作後の実動条件における前記制御指標nに係るプロセスデータを、前記境界条件Fnと比較するステップと、
(S9)該比較時に、所定の差異があれば、実測の制御指標nが、前記境界条件Fnに近接するように、制御操作すべき前記制御対象T2を特定し、その操作量を設定するステップと、
(S10)前記制御対象T2について、前記操作量を制御操作するステップと、
を有することを特徴とする。
また、「シミュレーションデータ」とは、ここでいう「シミュレーション」、つまり、実動条件における具体的な制御指標となる特定の情報(プロセスデータ)を用い、理想の燃焼状態に近い燃焼状態を形成できるように制御対象における制御量を設定した場合の、該制御量のデータおよびそのときの制御指標のプロセスデータをいう。
本発明に係る燃焼炉の燃焼制御システム(以下「本燃焼システム」という)は、ストーカ式ごみ焼却炉(燃焼炉に相当し、以下「焼却炉」という)に対し、処理されるごみ(燃焼対象物に相当)および助燃用空気を入力とし、発生する熱量、排ガスおよび塵灰を出力とするとともに、少なくとも燃焼炉に投入されるごみの量、ごみの質、空気量、空気の温度、ストーカ速度のいずれかを制御対象とし、少なくとも炉内の温度、ガス濃度、ガス流れ方向、ガス流速、蒸発量のいずれかを制御指標として制御するもので、少なくとも
(a)制御操作が行われる各制御対象に係る制御機構と、(b)プロセスデータが得られる各制御指標に係る測定手段と、(c)制御機構との間の制御信号および測定手段との間の出力信号を送受信する制御装置と、(d)制御対象に係る制御量あるいは/および制御指標についてのプロセスデータを解析して、境界条件あるいは炉内分布を作成する燃焼解析装置と、(e)制御量あるいは/およびプロセスデータを基に、特定の制御指標についてのシミュレーションを行い、シミュレーションデータを作成するシミュレーション装置と、を備える。
(ア)燃焼炉の最適の燃焼状態(理想の燃焼状態)における、制御指標の境界条件Foあるいは炉内分布Moを設定する機能と、
(イ)実動条件における制御量あるいは/およびプロセスデータを基に、特定の制御指標nについてのシミュレーションを行い、得られたシミュレーションデータから、その境界条件Fnあるいは炉内分布Mnを作成する機能と、
(ウ)境界条件Fnあるいは炉内分布Mnを、境界条件Foあるいは炉内分布Moと比較し、所定の差異があれば、制御操作すべき制御対象を特定して制御操作する機能と、
(エ)制御操作後の実動条件における制御指標nに係るプロセスデータを、境界条件Fnと比較し、所定の差異があれば、制御操作すべき制御対象を特定して制御操作する機能と、を備える。
(a)制御機構OP
本燃焼システムの制御機構OPは、図1に示すように、
(a−1)ごみの投入量を制御操作するごみ供給装置4、
(a−2)ストーカ速度を制御操作するストーカ駆動装置3D、
(a−3)一次燃焼空気供給装置5に設けられ、一次燃焼空気の全量を制御操作する送風機5Fと、ストーカ3A,3B,3Cに対応するように各空気量を制御操作する調整弁5A,5B,5C、
(a−4)二次燃焼空気供給装置6に設けられ、二次燃焼空気の全量を制御操作する送風機6Fと、二次燃焼ゾーン2Bの下部,中部,上部に対応するように各空気量を制御操作するノズル6A,6B,6C、
(a−5)一次燃焼空気の温度を制御操作する一次燃焼空気予熱器5E、
(a−6)二次燃焼空気の温度を制御操作する二次燃焼空気予熱器6E
を有する。他に、図示していないが、一次燃焼空気ダンパ駆動装置、二次燃焼空気ダンパ駆動装置、還流ガスファン駆動装置などを制御機構としてもよい。燃焼空気供給の配置あるいは供給量は、炉内分布に大きな影響を与えることから、一次・二次燃焼空気量のバランスおよび一次燃焼空気の調整弁5A,5B,5Cや二次燃焼空気の第1,第2,第3空気ノズル6A,6B,6Cの配置とそこから供給する空気量のバランスを適切に制御することが必要となる。配置については、本燃焼システムの設計条件から、理想の燃焼状態を形成できるように設定され、空気量は、実動条件での燃焼状態から制御操作される。
本燃焼システムの測定手段SEは、図1に示すように、
(b−1)ホッパ1に投入されるごみの量と質を測定するセンサ部として、ごみ投入重量検出センサ12とレーザ距離計13とが設けられている。レーザ距離計13により、ごみ表面までの距離を測定して、投入されるごみ体積を測定する。ごみ投入重量検出センサ12は、ごみの重量を測定する。ごみの体積と重量を検出することにより、ごみの比重の変化を所定時間間隔で検出することができる。ごみ比重が分かれば、ある程度ごみ質を予測することができる。
(b−2)焼却炉10内の燃焼状態を検出するセンサ部が設けられている。つまり、ガス分布に関するプロセスデータを検出するセンサ部として、例えば、NOx濃度計14、O2濃度計15、CO濃度計16が二次燃焼ゾーン2B、一次燃焼ゾーン2Aの少なくとも一方に設けられている(図1では二次燃焼ゾーン2Bのみに設けた例を示す)。ここで、NOx濃度計14、O2濃度計15、CO濃度計16としては、レーザ発信器(図示せず)が波長をスキャンしながら強さ一定のレーザ光をガスに照射し、レーザ受信器によって残存のレーザ光を測定することにより、ガスの濃度や温度を検出する方式を採用してもよい。また、各ガスの濃度を検出する公知のセンサを使用しても良い。さらに、図1においては、ガス流れ方向に関するセンサ部として、ガス流速計17が例えば、一次燃焼ゾーン2Aに設けられ、温度分布に関するプロセスデータを検出するセンサ部として、赤外線放射温度計18が一次燃焼ゾーン2Aに設けられている。燃焼炉10の終端には、燃焼に伴うエネルギー量に相当する蒸発量を測定するセンサとして、ごみから生じる蒸気流量を検出する蒸気流量計19が設けられている。他のセンサ部としては、発電量検出計などを用いることが可能である。これらセンサ部からの各検出信号(検出情報)が、プロセスデータとしてそれぞれ制御装置20に入力される。
制御装置20は、図2に示すように、制御機構OPとの間の制御信号および測定手段SEとの間の出力信号を送受信するとともに、この測定手段SEからのプロセスデータを取得するプロセスデータ取得部20Aと、燃焼解析装置30からの解析データに基づいて制御機構OPを制御操作する操作量を算出する操作量算出部20Bとを備える。
つまり、プロセスデータ取得部20Aで取得されたデータは、燃焼解析装置30へ送信される。また、操作量算出部20Bには、操作量を決定するための「規則」を記憶する規則記憶部20Cが設けられ、「規則」に基づき、燃焼解析装置30からの、理想の燃焼状態における境界条件Foあるいは炉内分布Moと、(シミュレーションによって作成された)実動の燃焼状態における境界条件Fnあるいは炉内分布Mnとの差異に対応した、操作量が算出されるとともに、制御機構OPが制御操作される。規則記憶部20Cに記憶されている「規則」には、制御操作すべき制御対象の操作量を決定するための演算条件、演算式などがある。
このとき、演算前にプロセスデータに対し次のような所定の処理を行うことが好ましく、こうした処理機能を有することが好ましい。具体的には、(c1)所定時間あるいは所定数のデータの平均処理、特に移動平均処理、(c2)いわゆるスパイクノイズを削除するために、所定時間内のデータあるいは所定数のデータから上位値および下位値を削除して平均する、(c3)特定のプロセスデータを基準にし、他のプロセスデータの時間遅れを補正する(詳細は後述する)ことによって、より正確な演算処理を行うことができる。
燃焼解析装置30は、図2に示すように、制御装置20からのプロセスデータを取得するプロセスデータ記憶部30Aと、境界条件あるいは炉内分布を作成する境界条件設定部30Bと、理想燃焼状態算出部30Cと、現実燃焼状態算出部30Dとを備えている。
境界条件設定部30Bは、境界条件あるいは炉内分布を作成するための、制御対象に係る制御量あるいは/および制御指標についてのプロセスデータを解析する演算条件、演算式などが記憶され、本燃焼システムの設置条件や要求仕様あるいは設計条件が入力可能に記憶される。例えば、要求蒸発量や法規制の対象となる排ガス中のCOやNOx等の濃度なども記憶される。
理想燃焼状態算出部30Cは、本燃焼システムの設計条件等(制御対象に係る制御量あるいは制御指標についてのプロセスデータを含む)から、理想の燃焼状態における境界条件Foあるいは炉内分布Moを算出し作成する。このとき、解析手段としては、多変量解析法やARアルゴリズムを用いた自己回帰推定法などを基本とし、本燃焼システムにおける模擬試験あるいは実装試験の結果や従前の炉内燃焼実績などに合致するように、修正された手法を用いることが好ましい。現実燃焼状態算出部30Dは、制御対象に係る制御量および制御指標についてのプロセスデータを解析して、実動の燃焼状態における境界条件Fnあるいは炉内分布Mnを算出し作成する。このとき、特定の制御指標nについてのシミュレーションを行い、後述するシミュレーション装置40において得られたシミュレーションデータから、その境界条件Fnあるいは炉内分布Mnを作成される。また、1次制御操作後の実動条件における制御指標nに係るプロセスデータを、境界条件Fnと比較し、所定の差異があれば、2次制御操作すべき制御対象を特定して制御操作する。
このとき、上記(c)と同様、演算前にプロセスデータに対し所定の処理(c1)〜(c3)を行うことが好ましく、理想燃焼状態算出部30Cおよび現実燃焼状態算出部30Dには、こうした処理機能を有することが好ましい。
シミュレーション装置40は、予め設定した、実動条件における制御量あるいは/およびプロセスデータを基に、特定の制御指標についてのシミュレーションを行い、シミュレーションデータを作成するとともに、得られたシミュレーションデータから、その境界条件Fnあるいは炉内分布Mnを作成する。このとき、制御対象あるいは/および制御指標を基に、物理化学モデルを作成し、該物理化学モデルを用いてシミュレーションを行うことが可能であり、詳細は後述する。このとき、上記(c),(d)と同様、演算前にプロセスデータに対し所定の処理(c1)〜(c3)を行うことが好ましく、こうした処理機能を有することが好ましい。
燃焼状態比較表示装置50は、理想と現実の2つの解析結果データを対比させて表示されるために設けられる。例えば、後述するような炉内分布(図4参照)を可視化することによって、制御量やプロセスデータを基に燃焼状態の適否を判断するだけではなく、燃焼炉全体の動きから燃焼状態の適否を判断することができる。起動時あるいは実動運転時に定期的に点検確認作業を行うときに有用である。また、こうした表示からセンサの配置や本燃焼システムの制御方法全体の見直しを図ることが可能となる。
図3は、燃焼制御システムの処理例を示すフローチャートであり、これに基づいて本燃焼制御システムによる処理方法(燃焼炉の燃焼制御方法、以下「本燃焼方法」という)を説明する。処理プロセスは、ごみ焼却炉を具体例とし、以下のステップ(S1)〜(S10)からなる。
まず、燃焼制御システムを起動し、焼却炉10、制御装置20、燃焼解析装置30、シミュレーション装置40および燃焼状態比較表示装置50が、各装置が機能する状態を形成する。
本燃焼システムの設置条件や要求仕様あるいは設計条件などから、最適燃焼状態を形成するための、理想の燃焼状態の境界条件Foあるいは炉内分布Moを設定する。つまり、
(S2−1)本燃焼システムが稼動するごみ投入量(ごみの重量およびごみ供給装置4の供給速度)、ごみ質(ごみの組成あるいは供給熱量)、および要求される蒸発量や規制される排ガス中の特定成分(COやNOx等)の濃度を燃焼解析装置30に入力すると、
(S2−2)理想燃焼状態算出部30Cにおいて、予め設定された解析方法(解析ソフトなど)によって、制御対象および制御指標の境界条件Foあるいは炉内分布Moが設定される。
(S2−3)設定された境界条件Foあるいは炉内分布Moは、境界条件設定部30Bに記憶される。
実動条件の燃焼状態において、特定の制御対象について、具体的な制御指標となる特定のプロセスデータを用いてシミュレーションを行い、各制御指標についてのシミュレーションデータを得る。つまり、
(S3−1)実動条件におけるごみ投入量およびごみ質に関するプロセスデータが、測定手段(b)からプロセスデータ取得部20Aを介してプロセスデータ記憶部30Aに記憶されるとともに、シミュレーション装置40に入力されると、
(S3−2)上記(S2)と同様、予め設定されたシミュレーション方法(シミュレーションソフトなど)によって、最適となる、一次・2次燃焼空気量などの制御量と、発熱量および加熱温度などの制御指標についてのシミュレーションデータが作成される。
(S3−3)作成されたシミュレーションデータは、シミュレーション装置40に記憶される。
シミュレーションデータから、特定の制御指標nについての境界条件Fnあるいは炉内分布Mnを作成する。つまり、上記(S3)で述べたように、シミュレーションデータは時々刻々変化するとともに、制御操作に伴う時間的遅れも各制御指標のデータごとに異なることから、そのまま制御量を設定し制御操作を行うことはできない。理想の燃焼状態に近い燃焼状態を形成するために、上記(S3)において得られたシミュレーションデータを用いて、上記境界条件Foあるいは炉内分布Moと対比できる境界条件Fnあるいは炉内分布Mnを作成して、これを基に制御操作を行うことが必要となる。
(S4−1)シミュレーションデータとして得られた一次・2次燃焼空気量などの制御量に関するデータは、現実燃焼状態算出部30Dを介して操作量算出部20Bに伝達され、実際に制御機構OPが制御操作される。
(S4−2)その結果、発熱量や加熱温度などのプロセスデータが、プロセスデータ取得部20Aを介してプロセスデータ記憶部30Aに記憶されるとともに、シミュレーション装置40に入力される。
(S4−3)シミュレーションデータとしての制御指標のデータと相違する場合には、そのシミュレーションデータになるように、再度その制御量に関するデータが、現実燃焼状態算出部30D、操作量算出部20Bを介して、関連する制御対象に対して伝達され、実際に制御機構OPが制御操作される。
(S4−4)このときの制御量および操作後のプロセスデータを、現実燃焼状態算出部30Dにおいて、新たな境界条件Fnとするとともに、この境界条件Fnに基づき炉内分布Mnを作成する。炉内分布Mnは、上記(S2)における炉内分布Moと同様、「ガスの流れ」について図4(B−a)、「CO濃度」について図4(B−b)、「温度分布」について図4(B−c)に例示する。などのような設定を行うことができる。
(S4−5)作成された境界条件Fnあるいは炉内分布Mnは、境界条件設定部30Bに記憶される。
実動条件の燃焼状態を理想の燃焼状態に近づけるには、その制御量および制御指標においてできる限り一致することが好ましく、
(S5−1)上記(S4)によって作成された実動条件の燃焼状態における境界条件Fnあるいは炉内分布Mnを、上記(S3)によって設定された理想の燃焼状態における境界条件Foあるいは炉内分布Moと比較する。
(S5−2)境界条件Fnが、上記のような境界条件Foの各範囲内にあれば差異なしとして扱い、所定の差異があれば、次のステップ(S6)にて制御操作される。一方、炉内分布Mnについては、CO濃度の炉内分布を例にとると、例えば図4(B−b)におけるCO100ppmの領域の最上端Pbと二次燃焼ゾーンの境界面Lとの距離が、図4(A−b)における最上端Paと境界面Lとの距離に対し、所定値(例えば10%)以内の場合には差異なしとして扱い、それを超える場合には所定の差異ありとして、次のステップ(S6)にて制御操作される。差異の判断は、CO濃度のピークではなく、図4(B−b)および図4(A−b)におけるCO100ppmの領域の面積の比率、あるいは炉内のCOの総量の比率など任意に設定することができるが、こうした規制の臨界値など重要な意義を有する数値を基準にすることが好ましい。
上記(S5)において、所定の差異があれば、境界条件Fnあるいは炉内分布Mnが、境界条件Foあるいは炉内分布Moに近接するように、
(S6−1)制御操作すべき制御対象T1を特定し、
(S6−2)その操作量を設定する。
(i)物理的には、一次燃焼空気量、特に調整弁5Bからの供給量が多いために吹き上げられたことが挙げられる。
(ii)燃焼反応からは、一次燃焼空気の温度が低い、あるいはごみ質が不燃性の成分を多く含むこと、などから未燃焼の排ガスの絶対量が多いことが挙げられる。
ここで、ガスの流れの炉内分布を示す図4(A−a)と(B−a)とを比較すると、実動条件での二次燃焼ゾーン入口近傍右側のガスの流れGbが、理想状態の同位置のガスの流れGaよりも大きいことが判る。また、炉内の温度分布を示す図4(A−c)と(B−c)とを比較すると、実動条件での炉右側上部の温度Tbが、理想状態の同位置の温度Taよりも高いことが判る。つまり、上記要素(i)が、その原因として強いとの判断ができることから、その対応として、まず、調整弁5Bからの供給量を減少させ、一次燃焼ゾーンでの温度が低下する場合には、調整弁5Bから供給する空気の温度を上げる方法を挙げることができる。こうした目視での判断と同様の判断機能を燃焼解析装置に備えることは可能であり、制御量の設定において、優先順位に従い制御対象T1を特定し、その制御量を設定することによって、安定した制御を行うことができる。
制御対象T1が特定され、その制御量を設定されれば、
(S7−1)実際に制御対象T1について、制御操作を行う。
(S7−2)このとき、制御量のデータおよび各制御指標におけるプロセスデータは、プロセスデータ記憶部30Aに記憶される。
制御操作後の実動条件における制御指標nに係るプロセスデータを、境界条件Fnと比較する。つまり、上記(S5)同様、
(S8−1)制御操作後のプロセスデータを、上記(S4)において作成された境界条件Fnと比較する。
(S8−2)制御操作後のプロセスデータと境界条件Fnとの差異が、上記のような境界条件Foの各範囲内にあれば差異なしとして扱い、
所定の差異があれば、次のステップ(S9)にて制御操作される。
上記(S8)において、所定の差異があれば、実測の制御指標nが、境界条件Fnに近接するように、
(S9−1)制御操作すべき制御対象T2を特定し、
(S9−2)その操作量を設定する。
このとき、上記(S6)同様、演算用のテーブルを用いて制御対象を特定し正負の制御量を設定するとともに、その制御順位を明確にすることが好ましい。
制御対象T2が特定され、その制御量を設定されれば、
(S10−1)実際に制御対象T2について、制御操作を行う。
(S10−2)このとき、制御量のデータおよび各制御指標におけるプロセスデータは、プロセスデータ記憶部30Aに記憶される。
本燃焼方法においては、シミュレーションデータの作成や、境界条件Fo,Fnあるいは炉内分布Mo,Mnを設定,作成する機能が重要な役割を果たしている。ここで、制御対象あるいは/および制御指標を基に、物理化学モデルを作成し、該物理化学モデルに用いて、こうしたシミュレーションや境界条件あるいは炉内分布の作成を行うことが好ましい。本燃焼システムにおいては上記のような種々の制御対象や制御指標(要素)が関与する。そこで各要素を単純化し、相関関係を明確にすることによって、いわゆる「物理化学モデル」を作成することが可能となり、燃焼制御の優先度、あるいは特定の要素に対して制御操作することによる他の要素への影響を明確にすることができるとともに、物理化学モデルを用いてより正確なシミュレーションを行うことが可能となる。物理化学モデルとしては、例えば、ボイラモデル、燃焼室モデル、ストーカモデルなどが考えられるが、具体的には、図5(A)に例示するような「ごみ焼却炉の燃焼シミュレーションにおける物理化学モデル」を挙げることができる。「燃焼反応モデル」を中心として、物質の収支を主にモデル化する「物質移動モデル」および関連する「ガス状態モデル」と「塵灰モデル」、エネルギーの収支を主にモデル化する「エネルギー移動モデル」および関連する「輻射・伝熱モデル」が、相互に結びつき物理化学モデルを構成する。さらに、これを利用して、図5(A)に例示するように、本燃焼システムにおける制御対象(括弧内はそれに関連する制御指標を示す)を体系的に表すことができる。
本燃焼方法であっては、より正確な演算処理を行うために、予め各制御対象の制御操作に伴うプロセスデータの変化の時間遅れを演算あるいは実測してメモリしておき、境界条件Foあるいは炉内分布Moの設定、シミュレーションデータおよび境界条件Fnあるいは炉内分布Mnの作成時に、該時間遅れを補正することが好ましい。ごみの質(組成)や含有水分量などが時々刻々変化するごみ焼却炉にあっては、1つの制御対象の操作と他の制御対象の操作によって、同一の制御指標であってもプロセスデータの時間遅れが異なることがあるとともに、各制御指標間においてもプロセスデータの時間遅れが異なることがある。こうした時間遅れを、予め演算あるいは実測して把握するととともに、プロセスデータ記憶部30Aにメモリし、境界条件Foあるいは炉内分布Moの設定、シミュレーションデータおよび境界条件Fnあるいは炉内分布Mnの作成時に、時間遅れを補正することによって、より正確な燃焼制御が可能となる。また、時間遅れとは、ズレ時間(Td)と応答遅れ(例えば最終応答の90%までの時間として「T90」で表す)の2つの要素があり、各制御対象の変動に対応する1の制御指標の時間遅れを記憶し、多変量に対する補正を行うことが好ましい。
2 炉本体
2A 一次燃焼ゾーン
2B 二次燃焼ゾーン
3 ストーカ
3A 乾燥ストーカ
3B 燃焼ストーカ
3C 後燃焼ストーカ
3D ストーカ駆動装置
4 ごみ供給装置
5 一次燃焼空気供給装置
5A,5B,5C 調整弁
5D 一次空気ダクト
5E 一次燃焼空気予熱器
5F,6F 送風機
6 二次燃焼空気供給装置
6A 第1空気ノズル
6B 第2空気ノズル
6C 第3空気ノズル
6D 二次空気ダクト
6E 二次燃焼空気予熱器
7 灰排出部
8 排ガス排出部
10 燃焼炉
12 ごみ投入重量検出センサ
13 レーザ距離計
14 NOx濃度計
15 O2濃度計
16 CO濃度計
17 ガス流速計
18 赤外線放射温度計
19 蒸気流量計
20 制御装置
20A プロセスデータ取得部
20B 操作量算出部
20C 規則記憶部
30 燃焼解析装置
30A プロセスデータ記憶部
30B 境界条件設定部
30C 理想燃焼状態算出部
30D 現実燃焼状態算出部
40 シミュレーション装置
50 燃焼状態比較表示装置
OP 制御機構
SE 測定手段
Claims (5)
- 少なくとも燃焼炉に投入される燃焼対象物の量、燃焼対象物の質、空気量、空気の温度、ストーカ速度のいずれかを制御対象とし、少なくとも炉内の温度、ガス濃度、ガス流れ方向、ガス流速、蒸発量のいずれかを制御指標とするとともに、少なくとも
(a)制御操作が行われる前記各制御対象に係る制御機構と、(b)プロセスデータが得られる前記各制御指標に係る測定手段と、(c)前記制御機構との間の制御信号および前記測定手段との間の出力信号を送受信する制御装置と、(d)前記制御対象に係る制御量あるいは/および制御指標についてのプロセスデータを解析して、境界条件あるいは炉内分布を作成する燃焼解析装置と、(e)前記制御量あるいは/およびプロセスデータを基に、特定の制御指標についてのシミュレーションを行い、シミュレーションデータを作成するシミュレーション装置と、を備え、
(ア)前記燃焼炉の最適の燃焼状態における、前記制御指標の境界条件Foあるいは炉内分布Moを設定する機能と、
(イ)実動条件における制御量あるいは/およびプロセスデータを基に、特定の制御指標nについてのシミュレーションを行い、得られたシミュレーションデータから、その境界条件Fnあるいは炉内分布Mnを作成する機能と、
(ウ)前記境界条件Fnあるいは炉内分布Mnを、前記境界条件Foあるいは炉内分布Moと比較し、所定の差異があれば、制御操作すべき制御対象を特定して制御操作する機能と、
(エ)前記制御操作後の実動条件における前記制御指標nに係るプロセスデータを、前記境界条件Fnと比較し、所定の差異があれば、制御操作すべき制御対象を特定して制御操作する機能と、
を有することを特徴とする燃焼炉の燃焼制御システム。 - 前記制御対象あるいは/および制御指標を基に物理化学モデルを作成する機能を有し、該物理化学モデルを用いてシミュレーションを行うことを特徴とする請求項1記載の燃焼炉の燃焼制御システム。
- 少なくとも燃焼炉に投入される燃焼対象物の量、燃焼対象物の質、空気量、空気の温度、ストーカ速度のいずれかを制御対象とし、少なくとも炉内の温度、ガス濃度、ガス流れ方向、ガス流速、蒸発量のいずれかを制御指標として、燃焼状態を制御する燃焼炉の燃焼制御方法であって、少なくとも
(S1)燃焼制御システムを起動するステップと、
(S2)前記燃焼炉の最適の燃焼状態における、前記制御指標の境界条件Foあるいは炉内分布Moを設定するステップと、
(S3)実動条件における制御量あるいは/およびプロセスデータを基に、前記制御指標についてのシミュレーションを行い、シミュレーションデータを得るステップと、
(S4)該シミュレーションデータから、前記特定の制御指標nについての境界条件Fnあるいは炉内分布Mnを作成するステップと、
(S5)前記境界条件Fnあるいは炉内分布Mnを、前記境界条件Foあるいは炉内分布Moと比較するステップと、
(S6)該比較時に、所定の差異があれば、前記境界条件Fnあるいは炉内分布Mnが、前記境界条件Foあるいは炉内分布Moに近接するように、制御操作すべき制御対象T1を特定し、その操作量を設定するステップと、
(S7)前記制御対象T1について、前記操作量を制御操作するステップと、
(S8)前記制御操作後の実動条件における前記制御指標nに係るプロセスデータを、前記境界条件Fnと比較するステップと、
(S9)該比較時に、所定の差異があれば、実測の制御指標nが、前記境界条件Fnに近接するように、制御操作すべき前記制御対象T2を特定し、その操作量を設定するステップと、
(S10)前記制御対象T2について、前記操作量を制御操作するステップと、
を有することを特徴とする燃焼炉の燃焼制御方法。 - 前記ステップ(S6)において設定された制御対象T1の操作量を基に、前記ステップ(S3)〜(S6)を繰返し、前記制御指標についての所定の差異をなくすステップ、および/または前記ステップ(S10)において設定された制御対象T2の操作量を基に、前記ステップ(S8)〜(S10)を繰返し、前記制御指標についての所定の差異をなくすステップ、を有することを特徴とする請求項3記載の燃焼炉の燃焼制御方法。
- 予め各制御対象の制御操作に伴うプロセスデータの変化の時間遅れを演算あるいは実測してメモリしておき、前記境界条件Foあるいは炉内分布Moの設定、シミュレーションデータおよび境界条件Fnあるいは炉内分布Mnの作成時に、該時間遅れを補正することを特徴とする請求項3または4記載の燃焼炉の燃焼制御方法。
Priority Applications (1)
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