JP5169863B2 - 複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法、および当該分散体を用いた成形体の製造方法、並びに成形体 - Google Patents
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Description
光線透過能が低下してしまうという課題を有している。だからといって熱線反射機能を有する粒子の添加量を少なくすると、可視光線透過機能は高まるものの、今度は熱線遮蔽機能が低下してしまう。結局の所、熱線遮蔽機能と可視光線透過機能とを同時に満足させることが困難であるという問題があった。また、熱線反射機能を有する粒子を多量に添加すると、成形体を構成する透明樹脂の物性、特に耐衝撃強度や靭性が低下するという強度面からの問題も有している。
具体的には、上述の方法で製造し最終的に得られる成形体が、優れた熱線遮蔽機能を有してはいるものの、ヘイズ(曇り度)が高くなり意匠性が低下してしまうという課題が見出された。一般的に、当該意匠性の観点から、成形体においてヘイズが低いことが求められる。
即ち、優れた熱線遮蔽能を有しながら、ヘイズが低く意匠性に優れた成形体を製造できる複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法、および当該分散体を用いた成形体の製造方法、並びに成形体を提供することにある。
そして、複合タングステン酸化物の微粒子と、炭化水素溶剤とを混合したスラリーに、エステル基を有する高分子化合物を添加した混合物を、例えば、媒体攪拌ミルにより解砕処理することで、エステル基を有する高分子化合物被覆複合タングステン酸化物の微粒子分散液を調製した。
一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物の微粒子を、炭化水素溶剤に分散させて、スラリーを得る工程と、
当該スラリーにエステル基を有する高分子化合物を添加した後、解砕して、エステル基を有する高分子化合物で表面被覆された複合タングステン酸化物の微粒子の分散液を得る工程と、
当該分散液に凝集防止剤を添加し、その後、当該分散液から前記炭化水素溶剤を揮散さ
せ、複合タングステン酸化物微粒子分散体を得る工程と、
前記炭化水素溶剤を揮散する工程と並行して、または、前記炭化水素溶剤を揮散する工程の後に、当該複合タングステン酸化物微粒子分散体を解砕する工程と、を具備する複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法であって、
前記凝集防止剤は、前記炭化水素溶剤に可溶で、且つ、メチルメタクリレートを主成分とする単量体に相溶性を有するアクリル高分子化合物であり、
前記凝集防止剤の添加量が、前記エステル基を有する高分子化合物1重量部に対して1.14〜14重量部であることを特徴とする複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法である。
前記複合タングステン酸化物の微粒子の分散粒子径が、500nm以下であることを特徴とする第1の発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法である。
前記炭化水素溶剤の溶解度パラメータが、8.5〜9.1(cal/cm3)1/2であることを特徴とする第1の発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法である。
前記エステル基を有する高分子化合物が、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、4−ヒドロキシドデカン酸から選択される少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸と、6ヒドロキシへキサン酸とを、繰り返し単位としたポリカルボニルアルキレンオキシ鎖を側鎖に有し、構造中にアミノ基を有するグラフト共重合体であることを特徴とする第1の発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法である。
前記エステル基を有する高分子化合物の添加量が、前記複合タングステン酸化物1重量部に対して0.01重量部〜5重量部であることを特徴とする第1の発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法である。
前記凝集防止剤であるアクリル高分子化合物が、(メタ)アクリル酸と、炭素数1〜13の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、スチレンとの共重合体であることを特徴とする第1の発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法である。
前記凝集防止剤の添加量が、前記複合タングステン酸化物1重量部に対して、0.46〜50重量部であることを特徴とする第1の発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法である。
第1〜第7のいずれかの発明に記載の製造方法で得られた複合タングステン酸化物微粒子分散体と、ラジカル重合開始剤とを、メチルメタクリレートを主成分とする単量体に溶解させ分散液を得る工程と、当該分散液を鋳型内で重合することにより成形体を得る工程と、を具備することを特徴とする成形体の製造方法である。
第8の発明に記載の製造方法で得られた成形体であって、当該成形体の可視光透過率を
60%以上に設定したときのヘイズが5%以下であることを特徴とする成形体である。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法について、まず、個々の原料について説明し、次に、製造工程と操作上のポイントとについて説明する。
本発明に用いる複合タングステン酸化物の微粒子(A)は、熱線遮蔽効果を発現する成分であり、一般式MxWyOz(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0)で示される複合
タングステン酸化物の微粒子である。
が好ましく、更に好ましくは0.33付近が好ましい。これは六方晶の結晶構造から理論
的に算出されるx/yの値が0.33であり、この前後の添加量で好ましい光学特性が得
られるからである。一方、酸素の存在量Zは、z/yで2.2以上3.0以下が好ましい。典型的な例としてはCs0.33WO3、Rb0.33WO3、K0.33WO3、Ba0.33WO3などを挙げることができるが、x,y,zが上記の範囲に収まるものであれば、有用な近赤外線吸収特性を得ることができる。
るのを回避できる。即ち、分散粒子の分散粒子径が200nm以下になると、上記幾何学散乱もしくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になるからである。当該レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し、透明性が向上するからである。さらに、分散粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、分散粒子径が小さい方が好ましく、分散粒子径が1nm以上であれば工業的な製造は容易である。
本発明に用いる炭化水素溶剤(B)は、炭素と水素から構成される溶剤であって、所定範囲の溶解パラメータを有している。
正則溶液理論では、「溶媒−溶質分子間に作用する力は分子間力のみである。」とモデル化されているので、液体分子を凝集させる相互作用は分子間力のみであると考えられる。液体の凝集エネルギーは蒸発エンタルピーと等価であることから、モル蒸発エンタルピーΔHvとモル容積Vmとより、溶解パラメータが定義される。すなわち、溶解パラメータは、1モル体積の液体が蒸発するために必要な蒸発熱の平方根(cal/cm3)1/2から計算される。
実際の溶液が正則溶液であることは稀であり、溶媒−溶質分子間には水素結合などの分子間力以外の力も作用し、2つの成分が混合するか相分離するかはそれらの成分の混合エンタルピーと混合エントロピーとの差で熱力学的に決定される。しかし経験的に、溶解パラメータが近い物質は混ざりやすい傾向を持つ。そのため溶解パラメータ(SP値)は溶質と溶媒の混ざりやすさを判断する目安ともなっている。
δS=(ΔHv/Vm−RT)1/2(cal/cm3)1/2 (1)
δp=(ρΣG)/M (cal/cm3)1/2 (2)
(ここで、ΔHv:モル蒸発エンタルピー、Vm:溶媒のモル容積、 G:smallの
方法により与えられる原子及び原子団の凝集エネルギー定数、M:高分子の構造分子量、ρ:密度、R:気体定数、T:温度)
(新版溶剤ポケットハンドブック(編集:社団法人有機合成化学協会 発行:オーム社)、特性別にわかる実用高分子材料(著者:井出文雄 発行:工業調査会)参照)
上記範囲に溶解度パラメータを有する炭化水素溶剤(B)の具体例としては、トルエン、キシレン等を例示することができる。
上記の複合タングステン酸化物の微粒子(A)は、エステル基を有する高分子化合物(C)によって表面が被覆されていることが必要である。
具体的には、まず、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、及び4−ヒドロキシドデカン酸から選択される少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸と、6ヒドロキシへキサン酸とを繰り返し単位としたポリカルボニルアルキレンオキサイドを合成する。
次に、当該ポリカルボニルアルキレンオキサイドへ、ポリエチレンイミンを加え、ポリエチレンイミンのアミノ基と、ポリカルボニルアルキレンオキサイドのカルボキシル基との、脱水反応を利用することで、本発明に係るエステル基を有する高分子化合物(C)の1例である、ポリカルボニルアルキレンオキシ鎖を側鎖に有し、構造中にアミノ基を有するグラフト共重合体を得ることが出来る。
このような、エステル基を有する高分子化合物(C)として、商品名:Solsperse24000GR(日本ルーズリゾーブ社製)、商品名:Solsperse32000(日本ルーズリゾーブ社製)等を例示することができる。
本発明に用いる凝集防止剤(D)について説明する。
本発明に用いる凝集防止剤(D)は、炭化水素溶剤(B)に可溶性を有し、メチルメタクリレートを主成分とする単量体との相溶性を有するアクリル高分子化合物である。
さらに、上記凝集防止剤(D)が、メチルメタクリレートを主成分とする単量体と相溶性を有していることで、上記樹脂組成物を用いた成形体のヘイズ(曇り度)が抑制され意匠性が高まることを知見した。
そして本発明者等は、上記凝集防止剤(D)の添加量が、前記エステル基を有する高分子化合物(C)1重量部に対して1.14〜14重量部であるとき、当該効果が発現することを知見したものである。具体的には、凝集防止剤(D)の添加量が1.14重量部以上あれば上述の効果が発現し、添加量が14重量部以下であればヘイズ値の上昇を回避できる。
クリル611(BASF社製)、商品名:ダイヤナールBR−87(三菱レイヨン製)等を例示することができる。
本発明において、メチルメタクリレートを主成分とする単量体(E)とは、メチルメタクリレート単独、または、メチルメタクリレート50〜100重量部に対し、メチルメタクリレートと共重合可能な不飽和単量体を50〜0重量部含む混合物のことを示す。
例えば、(ポリ)エチレングリコールジアクリレート、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレートのごときアルキルジオールジアクリレートやアルキルジオールジメタクリレート類、
トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレートのごとき多価アルコールのメタクリレートやメタクリレート類、
ジビニルベンゼン、ジアリルフタレートのごとき芳香族多官能単量体、
アリルグリジシルエーテル、グリジシルアクリレート、グリジシルメタクリレートなどのエポキシ基含有単量体、などがある。これらの単量体は、2種以上併用することができる。
本発明に用いるラジカル重合開始剤(F)は、一般的に使用されているラジカル開始剤であれば、特に制限されない。例えば、2、2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、ラウリルパーオキサイド等の有機過酸化物等を挙げることができる。これらラジカル開始剤を2種類以上併用することもできる。
まず、複合タングステン酸化物の微粒子(A)を、炭化水素溶剤(B)に混合分散してスラリー化する。これに、エステル基を有する高分子化合物(C)を添加し、媒体攪拌ミルで解砕する。これによりエステル基を有する高分子化合物(C)で被覆された複合タングステン酸化物の微粒子(A)を含む分散液が得られる。尚、上記解砕処理に適用される方法として、超音波ホモジナイザーやボールミル(ビーズミル)といった媒体攪拌ミルを用いる湿式粉砕法が好ましい。
上述したエステル基を有する高分子化合物で被覆された複合タングステン酸化物の微粒子分散液へ、炭化水素溶剤に可溶でメチルメタクリレートを主成分とする単量体との相溶性を有するアクリル樹脂凝集防止剤(D)を添加混合し混合液とする。そして、得られた当該混合液から前記炭化水素溶剤(B)を揮散させる。このとき、得られた混合液から炭化水素溶剤(B)を揮散する工程と並行して、または、当該炭化水素溶剤(B)を揮散する工程の後に、らいかい機等の汎用的に用いられる粉砕・解砕機を用いて残留物を解砕することにより粉状の複合タングステン酸化物微粒子分散体を得ることができる。一方、上記炭化水素溶剤(B)を揮散させた後に、残留物を解砕することにより粉状の複合タングステン酸化物微粒子分散体を得ることもできる。
上述した2.、3.の工程おいて、エステル基を有する高分子化合物(C)と、凝集防止剤(D)との混合比率を、最適化しておくことが好ましい。
具体的には、エステル基を有する高分子化合物(C)の添加量を、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、0.01〜5重量部とすることが好ましい。より好ましくは、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、0.1〜3重量部である。
形体中で、前記複合タングステン酸化物の微粒子(A)の凝集体が生成しないことを、実現することが出来た。
本発明に係る成形体は、上記製造方法で得られた、複合タングステン酸化物の微粒子(A)とエステル基を有する高分子化合物(C)と凝集防止剤(D)とを含む粉状の分散体を、メチルメタクリレートを主成分とする単量体(E)に溶解させた後、ラジカル重合開始剤(F)存在下、鋳型内で重合させて成形し、得られる成形体である。
(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等を、挙げることができる。
尚、上述したメチルメタクリレートを主体とする単量体の部分重合体とは、メチルメタクリレートを主体とする単量体の重合体を、メチルメタクリレートを含む単量体に溶解し
たもの、または、メチルメタクリレートを主体とする単量体の一部を予め重合したもの、等のことである。
当該成形体を、建築物の屋根材、壁材、自動車、電車、航空機などの開口部に使用される窓材、アーケード、天井ドーム、カーポート等に利用するに際して、成形体の可視光透過率が60%以上のときにヘイズが5%以下であれば、上記用途で不可欠な意匠性が保たれ、好ましい。
ここで、本発明に係る成形体は、可視光透過率を60%以上に設定した時に、ヘイズが5%以下であるという特徴を有している。
ここで、全光線透過率とヘイズの評価方法としては、例えば市販のヘイズメーターを使用し、全光線透過率(Tt)(単位:%)に関しては、JIS K 7361に準じ、ヘイズ(H)(単位:%)に関してはJIS K 7136に準拠する方法を挙げることができる。
このため、当該複合タングステン酸化物微粒子分散体を使用した成形体は、優れた熱線遮蔽能を有し、ヘイズも5%以下と低く良好である。加えて、複合タングステン酸化物の微粒子(A)の分散性が良好であること、および、凝集防止剤(D)を使用していることから、屋外で使用中に受ける雨水などに対する耐候性も良好である。したがって、建築物の屋根材、壁材、自動車、電車、航空機などの開口部に使用される窓材、アーケード、天井ドーム、カーポート等に広く利用されるアクリル樹脂成形体に優れた熱線遮蔽能に加えて意匠性を付与することができるため、幅広い分野で利用することができる。
複合タングステン酸化物の微粒子(A)として粒径1〜3μmの複合タングステン酸化物Cs0.33WO3170gと、炭化水素溶剤(B)としてトルエン1762gとを、攪拌して混合物とした。当該混合物へ、エステル基を有する高分子化合物(C)としてS24000GR(日本ルーブリゾール社製)68gを添加し、スラリーを調製した。このスラリーをビーズとともに媒体攪拌ミルに投入し、スラリーを循環させて粉砕分散処理を行い、エステル基を有する高分子化合物で被覆された複合タングステン酸化物の微粒子分散液を得た(以下、α液と略記する)。当該エステル基を有する高分子化合物で被覆された複合タングステン酸化物の微粒子の分散粒子径は90nmであった。
上記α液10gと、β液6.5gとを混合した。そして、得られた混合液からトルエンを揮散させて、アクリル樹脂凝集防止剤中に、エステル基を有する高分子化合物で被覆さ
れた複合タングステン酸化物の微粒子を均一に分散している分散体を得た(以下、γ液と略記する)。
上記γ液からの炭化水素溶剤(B)の揮散は、当該炭化水素溶剤(B)の沸点以下の温度で加熱しながら5kPa以下の雰囲気下で減圧蒸留し、当該炭化水素溶剤(B)を揮散させた。
当該分散体には複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)が0.4重量部、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が2.6重量部含有されている。そして、当該複合タングステン酸化物微粒子分散体をらいかい機で解砕し粉状物にした。
当該溶解物を真空脱気した後、2枚のガラス板とポリ塩化ビニルのガスケットとで作製したキャスト用セルに注入した。そして、当該キャスト用セルを65℃の湯浴中で6時間保持して溶解物を重合させ、さらに、120℃の空気浴中で2時間重合させ、60×50×2mmのシート状成形体を得た。
尚、上述した、溶解物中の複合タングステン酸化物の微粒子(A)の含有量を0.06質量%としたのは、当該得られたシート状成形体の可視光透過率を75%となるように設定する為である。得られたシート状成形体における複合タングステン酸化物含有量は、0.06質量%であった。
得られた成形体の光学特性として、ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。当該評価結果を、表1に示す。
実施例1にて説明したα液10gと、β液14gとを混合し、実施例1と同様の操作を行って分散体を得た。当該分散体において、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)が0.4重量部、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が5.6重量部含有されている。
当該分散体に対し、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
実施例1にて説明したα液10gと、β液1.14gとを混合し、実施例1と同様の操作を行って分散体を得た。当該分散体において、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)が0.4重量部、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が0.46重量部含有されている。
当該分散体に対し、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
エステル基を有する高分子化合物(C)としてS32000(日本ルーブリゾール社製)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形
体を得た。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
凝集防止剤(D)としてダイヤナールBR−87を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
エステル基を有する高分子化合物(C)の添加量を680gに変更する以外は、実施例1と同様の方法で複合タングステン酸化物微粒子分散液を得た(以下α’液とする)。
上記α’液10gと実施例1にて説明したβ液125gとを混合し、実施例1と同様の操作を行って分散体を得た。当該分散体において、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)が4重量部、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が50重量部含有されている。
当該分散体に対し、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
実施例6にて説明したα’液10gと、β液137.5gを混合し、実施例1と同様の操作を行って分散体を得た。当該分散体において、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)が4重量部、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が55重量部含有されている。
当該分散体に対し、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
エステル基を有する高分子化合物(C)の添加量を59.5gに変更する以外は、実施例1と同様の方法で複合タングステン酸化物微粒子分散液を得た(以下α’’液とする)。
上記α’’液10gと実施例1にて説明したβ液1gとを混合し、実施例1と同様の操作を行って分散体を得た。当該分散体において、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)が0.35重量部、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が0.40重量部含有されている。
当該分散体に対し、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
凝集防止剤(D)を添加しない以外は、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
尚、当該例に用いられた分散体には、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)が0.4重量部含有されている。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
凝集防止剤(D)を添加しない以外は、実施例4と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
エステル基を有する高分子化合物(C)の代わりに、アクリル樹脂凝集防止剤(D)のジョンクリル611を添加し、複合タングステン酸化物微粒子分散液を得る以外は、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
尚、当該例に用いられた分散体には、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が3.0重量部含有されている。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
エステル基を有する高分子化合物(C)の代わりに、アクリル樹脂凝集防止剤(D)のダイヤナールBR−87を添加し、複合タングステン酸化物微粒子分散液を得る以外は、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
尚、当該例に用いられた分散体には、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が3.0重量部含有されている。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
実施例1にて説明したメチルメタクリレート単量体との相溶性を有するアクリル樹脂凝集防止剤(D)(BASF製:ジョンクリル611)を、メチルメタクリレートを主成分とする単量体との相溶性を有するものの、トルエンに不溶であるアクリル樹脂凝集防止剤(D2)(東亞合成製:UC−3910)へ代替した以外は、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
尚、当該例に用いられた分散体には、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)が0.4重量部、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が2.6重量部含有されている。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
実施例1から3においては、まず、本発明に係る複合タングステン酸化物の微粒子を、トルエン中に分散させて、スラリーを得、当該スラリーにS24000GR0.4重量部を添加した後、解砕して、エステル基を有する高分子化合物で表面被覆された複合タングステン酸化物の微粒子の分散液を得た。そして当該分散液にジョンクリル611を、実施例1では2.6重量部(S24000GR1重量部に対して、6.5重量部)、実施例2では5.6重量部(S24000GR1重量部に対して、14重量部)、実施例3では0.46重量部(S24000GR1重量部に対して、1.15重量部)添加した。当該[凝集防止剤の添加量/エステル基を有する高分子化合物の添加量]の重量部比率は、いずれも本発明の範囲内である。
実施例4は、S24000GRをS32000に代替した以外は実施例1と同様である。
実施例5は、ジョンクリル611をダイヤナールBR−87に代替した以外は実施例1と同様である。
さらに、実施例6から8においては、実施例1から3と同様ではあるが、実施例6ではジョンクリル611を50重量部(S24000GR1重量部に対して、12.5重量部)、実施例7では55重量部(S24000GR1重量部に対して、13.8重量部)、実施例8では0.40重量部(S24000GR1重量部に対して、1.17重量部)添加した。当該[凝集防止剤の添加量/エステル基を有する高分子化合物の添加量]の重量部比率は、いずれも本発明の範囲内である。
が判明した。
さらに、凝集防止剤の添加量が本明細書(0052)段落で説明した、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、0.40〜55重量部の範囲であると、分散液中で複合タングステン酸化物の微粒子の凝集体が形成され難く、分散性が十分となり、得られる複合タングステン酸化物微粒子分散体を用いて得られた成形体の機械的強度の低下や、屋外で使用する際の耐候性の悪化が見られず、好ましい。さらに、複合タングステン酸化物1重量部に対して0.46〜50重量部の範囲にある実施例1から6に係る成形体においては、ヘイズが0.6〜0.7%と非常に低い値に低減し、特に優れた意匠性を有することが判明した。
Claims (9)
- 一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物の微粒子を、炭化水素溶剤に分散させて、スラリーを得る工程と、
当該スラリーにエステル基を有する高分子化合物を添加した後、解砕して、エステル基を有する高分子化合物で表面被覆された複合タングステン酸化物の微粒子の分散液を得る工程と、
当該分散液に凝集防止剤を添加し、その後、当該分散液から前記炭化水素溶剤を揮散させ、複合タングステン酸化物微粒子分散体を得る工程と、
前記炭化水素溶剤を揮散する工程と並行して、または、前記炭化水素溶剤を揮散する工程の後に、当該複合タングステン酸化物微粒子分散体を解砕する工程と、を具備する複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法であって、
前記凝集防止剤は、前記炭化水素溶剤に可溶で、且つ、メチルメタクリレートを主成分とする単量体に相溶性を有するアクリル高分子化合物であり、
前記凝集防止剤の添加量が、前記エステル基を有する高分子化合物1重量部に対して1.14〜14重量部であることを特徴とする複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法。 - 前記複合タングステン酸化物の微粒子の分散粒子径が、500nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法。
- 前記炭化水素溶剤の溶解度パラメータが、8.5〜9.1(cal/cm3)1/2であることを特徴とする請求項1に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法。
- 前記エステル基を有する高分子化合物が、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、4−ヒドロキシドデカン酸から選択される少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸と、6ヒドロキシへキサン酸とを、繰り返し単位としたポリカルボニルアルキレンオキシ鎖を側鎖に有し、構造中にアミノ基を有するグラフト共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法。
- 前記エステル基を有する高分子化合物の添加量が、前記複合タングステン酸化物1重量部に対して0.01重量部〜5重量部であることを特徴とする請求項1に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法。
- 前記凝集防止剤であるアクリル高分子化合物が、(メタ)アクリル酸と、炭素数1〜13の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、スチレンとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法。
- 前記凝集防止剤の添加量が、前記複合タングステン酸化物1重量部に対して、0.46〜50重量部であることを特徴とする請求項1に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法で得られた複合タングステン酸化物微粒子分
散体と、ラジカル重合開始剤とを、メチルメタクリレートを主成分とする単量体に溶解させ分散液を得る工程と、当該分散液を鋳型内で重合することにより成形体を得る工程と、を具備することを特徴とする成形体の製造方法。 - 請求項8に記載の製造方法で得られた成形体であって、当該成形体の可視光透過率を60%以上に設定したときのヘイズが5%以下であることを特徴とする成形体。
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