JP7275792B2 - 高温安定性に優れる微粒子分散液および微粒子分散体 - Google Patents
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さらには、光や赤外線に代表される電磁波を吸収する機能性微粒子(本発明において「吸収微粒子」と記載する場合がある。)を含む分散液および分散体に関する。
日射光の制御の分野においては、カーテン、ブラインドやスモークフィルム等の、可視光線を含んだ日射光を遮蔽する物品がある。さらに、近年は、ミラーガラスやミラーフィルム等の日射光の大部分を反射して一部を透過する反射ガラス、反射フィルム、および光を吸収する機能性微粒子を分散した吸収ガラス、吸収フィルム等が、家屋やビル等の建築物の窓材や自動車等の窓材に用いられている。
反射ガラスの作製においては、まず、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)等の透明樹脂フィルムへ、金属、金属酸化物を蒸着等することにより反射層を形成し、反射層を形成した透明樹脂フィルムを作製する。そして、当該反射層を形成した透明樹脂フィルムを、2枚またはそれ以上のガラス板間において中間層として積層して作製される。
尤も、反射層を形成したフィルムを形成後にガラスへ貼りつける方法の他に、反射層をガラス板へ直接蒸着等で形成する方法もある。
また、ガラスの代わりに、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の透明な樹脂成形体を用いる方法もある。
当該反射フィルムの透明ガラス等への接着は、自ら行うことも可能だが、気泡の混入や曇りの発生等の問題があり、目的の性能を得るには相応の技術を有する専門の業者に施工を委託することが多い。当該施工に要するコストも反射フィルムのコストと併せて、反射フィルム普及の妨げになっている。
しかし、吸収ガラスが熱線を効率よく近赤外線を吸収するためには、多量の有機近赤外線吸収剤が必要となる結果、十分な可視光線の透過が得られない。加えて、当該有機近赤外線吸収剤は高温下や長期の耐候性が劣り、多量に添加すると中間層における変色やクラック等の劣化が生じる。
当該吸収フィルムの透明ガラス等への接着は、自ら行うことも可能だが、気泡の混入や曇りの発生等の問題があり、目的の性能を得るには相応の技術を有する専門の業者に施工を委託することが多い。当該施工に要するコストも吸収フィルムのコストと併せて、吸収フィルム普及の妨げになっている。
出願人は特許文献3として、これらの機能性微粒子のうちでも複合タングステン酸化物が、可視光波長域で透明性が高く、それ以外の広い波長域、特に長波長の赤外波長域において大きな光吸収特性を有することを開示した。
また出願人は特許文献6として、民生用において、日射光等からの赤外線を吸収する複合タングステン酸化物等の機能性微粒子を、アクリル樹脂やポリエステル樹脂等と混合して合成繊維とした近赤外線吸収繊維、およびこれを用いた繊維製品として発熱・保温用への応用を開示した。
さらに出願人は特許文献8として、前記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン微粒子を含む粘着樹脂層中に、金属イオンを補足する金属不活剤を添加することで、長期使用しても近赤外線遮蔽能が低下しないPDP用近赤外線吸収フィルターを開示した。
また、特許文献9には、特許文献8とは異なる金属不活化剤を添加したPDP用近赤外線吸収フィルターが開示されている。
また、特許文献9には、金属不活性化剤がセシウム・タングステン複合酸化物微粒子の触媒作用による(メタ)アクリル系樹脂粘着剤の酸化を抑制することで、高温高湿環境下で(メタ)アクリル系樹脂の近赤外域の透過率の上昇を防止する効果について記載し、80℃の高温またはR.H.95%の高湿環境下においても当該効果を発揮する旨が記載されている。
本発明は、上述の状況の下で為されたものであり、その解決しようとする課題は、優れた熱線遮蔽特性(赤外線吸収特性)を有し、当該優れた熱線遮蔽特性が高温環境下でも安定している分散液および分散体を提供することである。
前記吸収微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子、から選択される1種以上の酸化物微粒子であり、
前記金属不活性化剤は、下記の構造式(1)で示す化合物であることを特徴とする微粒子分散液。
そして、当該分散液の媒体は、室温で液状の水や有機溶剤、樹脂等が用いられる。一方、当該分散体の媒体は、室温で固形状やゲル状の無機物、有機物、熱硬化性の樹脂、紫外線硬化樹脂等が用いられる。
さらに、当該分散液および当該分散体の構成要素として、必要に応じ添加剤として、分散剤を用いることも可能である。
例えば、膜状であれば、前記分散液を、便宜な基材上に塗布して被膜を形成すれば良い。被膜の形成方法は、例えばスピンコート法、バーコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スクリーンコート法、ロールコート法、流し塗り等、分散液を平坦且つ薄く均一に塗布できる方法であればいずれの方法でも良い。前記方法で分散液を塗布後、大気中や真空中、常温や加熱の状態で静置して揮発成分を揮発する。分散液中に、例えば紫外線硬化樹脂が含まれる場合は紫外線照射にて、熱硬化性樹脂が含まれる場合は更に加熱等で膜を基材上に定着して分散体を得ることができる。さらに、インクジェット法による塗出や3Dプリンタ装置等による、パターン化された膜状であっても構わない。
本発明に係る吸収微粒子とは、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子から選択される1種以上の酸化物微粒子である。
即ち、吸収微粒子とは、上述したタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子のいずれか、または、両方の酸化物微粒子である。
特に、前記Mの元素のうち、六方晶の結晶構造を構成するCs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snの各元素から選択される1種類以上の元素を含む複合タングステン酸化物の微粒子が好ましく、さらには高い電磁波吸収と波長400nm~780nmの可視光域における透過が優れているCsが好ましい。
一方、酸素の存在量Zは、z/yの値で2.0以上3.0以下が好ましい。典型的な例としてはCs0.33WO3、Rb0.33WO3、K0.33WO3、Ba0.33WO3、Cs0.03Rb0.30WO3等を挙げることが出来る。尤も、x、y、zの値が上述の範囲に収まるものであれば、有用な電磁波吸収特性を得ることができる。
本発明に係る分散液に用いる液状の媒体、分散体に用いる固形状やゲル状の媒体について、1.液状の媒体、2.固形状やゲル状の媒体、の順に説明する。
本発明に係る分散液の媒体としては、室温で液状である、例えば水、トルエンやヘキサン等の有機溶剤、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等の液状の有機樹脂、油脂、媒体樹脂用の液状可塑剤、高分子単量体、または、これらの混合物等があげられる。当該液状媒体は、本発明に係る分散液を用いて作製される分散体に応じて種々選択され、特に限定されるものではない。
アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、
3-メチル-メトキシ-プロピオネート等のエステル系溶剤、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、
フォルムアミド、N-メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類、
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、
エチレンクロライド、クロルベンゼン等が使用可能である。
そして、これらの有機溶剤中でも、特に、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n-ブチル等が好ましい。
また、市販の石油系溶剤も油脂として用いることができ、アイソパーE、エクソールHexane、エクソールHeptane、エクソールE、エクソールD30、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD95、エクソールD110、エクソールD130(以上、エクソンモービル社製)等を挙げることができる。
可塑性を備えた分散体を製造する為に用いる分散液においては、前記液状可塑剤を液状媒体とすることで、分散体の可塑性を向上させることができるからである。そして、得られた可塑性を備えた分散体を、例えば2枚以上の少なくとも可視光線を透過する透明基材の間に挟み込んで合わせ構造体を構成することができる。
中でも、トリエチレングリコールジヘキサネート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-オクタネート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノネート等のトリエチレングリコールの脂肪酸エステルが好適である。
本発明に係る分散体に用いる媒体は、室温で固形状またはゲル状の媒体である。具体的には、ガラス等の無機化合物、ポリカーボネート樹脂やPET樹脂等の高分子有機化合物等、種々選択出来る。
尤も、後述する「[c]添加剤」として亜リン酸エステル系化合物を用いる場合、分散体の媒体としては、当該亜リン酸エステル系化合物と相溶性が高いポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、アクリル樹脂(PMMA樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、ポリエチレン樹脂(PE樹脂)、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、ポリアミド樹脂(PA樹脂)、およびポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)等の高分子が好ましい。
本発明に係る添加剤は、本発明に係る分散液および分散体の耐候性を向上させ、例えば120℃という高温下においても、優れた熱線遮蔽特性を安定的に発揮させる目的で添加するものである。
本発明に係る添加剤について、1.所定の構造を有する金属不活性化剤、2.前記金属不活性化剤とは異なる構造を有する安定剤、の順に説明する。
本発明に用いる金属不活性化剤は下記構造式(1)で示す化合物であって、R10に炭素数1~20のアルキレン基、炭素数5~15の脂環族基、炭素数7~13のアラルキレン基またはアリレン基を持つものである。
炭素数5~15の脂環族基としては、例えばシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、1-メチルシクロペンチレン基、1-メチルシクロヘキシレン基、1-メチル-4-i-プロピルシクロヘキシレン基等が挙げられる。
炭素数7~13のアリレン基としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基、2-メチルフェニレン基、4-メチルフェニレン基、2,4-ジメチルフェニレン基、2,6-ジメチルフェニレン基等が挙げられる。
金属不活性化剤の添加量が吸収微粒子100重量部に対して10重量部以上の場合、例えば120℃という高温下においても、優れた熱線遮蔽特性を安定的に発揮させることが出来る。
一方、金属不活性化剤の添加量が吸収微粒子100重量部に対して10000重量部以下の場合、120℃の高温の大気雰囲気下での保持特性には大きな影響は見られないが、分散液の粘度上昇等による加工性の悪化と可視光透過率の低下を回避することが出来る。
本発明に係る金属不活性化剤として、「1.金属不活性化剤」にて説明した化合物へさらに加えて、「1.金属不活性化剤」にて説明した化合物とは異なる構造を有する安定剤を添加することもできる。当該異なる構造を有する安定剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド系安定剤、亜リン酸エステル類や3価や5価のリンを含むリン系官能基を備えたリン系安定剤、等を使用することができる。
これらの安定剤は、高温保持環境下において樹脂から生成するラジカルを捕捉する効果やラジカル反応により生成する過酸化物を分解する効果を有する。これらの安定剤が効果を発揮するメカニズムの詳細は解明されていないが、前記金属不活化剤と複合的に作用して、吸収微粒子の電磁波吸収特性の低下を相乗効果的に抑制するものであると考えられる。
スルフィド系安定剤の例としては、硫黄系着色防止剤として用いられる分子内に2価の硫黄を有する化合物を好ましく挙げることができる。具体例としては、構造式(2)に示すアデカスタブ(登録商標)AO-412S(株式会社ADEKA製)や、構造式(3)に示すアデカスタブ(登録商標)AO-503(株式会社ADEKA製)などが挙げられる。
本発明に係る分散液や分散体には、媒体中および/または分散液中へ吸収微粒子を均一に分散させる為に、分散剤を用いることが出来る。
分散剤は、上述した媒体や分散液に応じて種々選択することが出来る。そして、本発明に記載の吸収微粒子は一般式WyOzで表されるタングステン酸化物微粒子、一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物微粒子であることから、官能基に、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、スルホ基等を有する分散剤であることが好ましい。これらの官能基は、吸収微粒子の表面に吸着し、吸収微粒子の凝集を防ぎ、分散体の媒体や分散液中でも吸収微粒子を均一に分散させる効果を持つ。
ビックケミー・ジャパン(株)製Disperbyk(登録商標)-101、103、107、108、109、110、111、112、116、130、140、142、145、154、161、162、163、164、165、166、167、168、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2095、2150、2155、Anti-Terra-U、Anti-Terra-203、Anti-Terra(登録商標)-204、BYK(登録商標)-P104、P104S、220S、6919等、
BASFジャパン(株)製EFKA(登録商標)4008、4046、4047、4015、4020、4050、4055、4060、4080、4300、4330、4400、4401、4402、4403、4500、4510、4530、4550、4560、4585、4800、5220、6230、JONCRYL(登録商標)67、678、586、611、680、682、690、819、-JDX5050等、
東亞合成(株)製アルフォン(登録商標)UC-3000、UF-5022、UG-4010、UG-4035、UG-4070等、
味の素ファインテクノ(株)製アジスパー(登録商標)PB-711、PB-821、PB-822、等が挙げられる。
分散剤の添加量が上記範囲にあれば、吸収微粒子が、媒体中で均一に分散するからである。
本発明に係る吸収微粒子を、上述した液状の媒体中に混合・分散したものが、本発明に係る分散液である。
吸収微粒子の分散方法は、微粒子を分散液中へ均一に分散する方法であれば特に限定されない。また、分散と同時に吸収微粒子の粉砕も同時に行うことが出来る方法であれば、吸収微粒子を上述の好ましい分散粒子径に制御しつつ分散可能となるので好ましい。
具体的には、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザー等の装置を用いた、所定時間の粉砕・分散処理方法が挙げられる。その中でも、ビーズ、ボール、オタワサンドといった媒体メディアを用いる、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー等の媒体攪拌ミルで粉砕、分散させることは、所望とする分散粒子径を得る為に要する時間が短いことからより好ましい。
これは、吸収微粒子の分散粒子径が800nm以下になると、幾何学散乱もしくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になるからである。そして、当該レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し、透明性が向上する。さらに、分散粒子径が200nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましく、100nm以下になると更に好ましい。光の散乱を回避する観点からは、分散粒子径が小さい方が好ましい。一方、分散粒子径が10nm以上であれば工業的な製造は容易である。
本発明に係る吸収微粒子と、媒体樹脂の粉粒体またはペレット、および必要に応じて他の添加剤を均一に混合したのち、ベント式一軸若しくは二軸の押出機で混練し、一般的な溶融押出されたストランドをカットする方法によりペレット状に加工することによって、マスターバッチを得ることが出来る。この場合、マスターバッチの形状として円柱状や角柱状のものを挙げることができる。また、溶融押出物を直接カットするいわゆるホットカット法を採ることも可能である。この場合、マスターバッチは球状に近い形状をとることが一般的である。尚、マスターバッチは、本発明に係る分散体の一例である。
得られたマスターバッチは、媒体樹脂を追加して混練することにより分散体に含まれる吸収微粒子の分散状態が維持されたまま、その分散濃度を調整出来る。
樹脂媒体としてアイオノマー樹脂等の、架橋により硬化する樹脂を用いる場合も、上述したアクリル樹脂を用いた場合と同様に、分散液に架橋反応させることで分散体を得ることができる。
本発明に係る分散液は、光熱変換を利用した様々な用途に用いられる。
例えば、本発明に係る吸収微粒子を適宜な媒体中に分散した後、未硬化の熱硬化性樹脂を添加することにより、硬化型インク組成物を得ることが出来る。硬化型インク組成物は、所定の基材上に設けられ、赤外線等の電磁波を照射されて硬化した際、当該基材への密着性に優れたものである。
そして、当該硬化型インク組成物は、従来のインクとしての用途に加え、所定量を塗布し、ここへ赤外線等の電磁波を照射して硬化させて積み上げ後、3次元物体を造形する光造形法に最適な硬化型インク組成物となる。
本発明に係る分散体を、シート状、ボード状またはフィルム状に加工することで様々な用途に適用できる。シート状、ボード状またはフィルム状の分散体を、少なくとも可視光線を透過する2枚以上の透明基材の板ガラスまたはプラスチックの材質からなる複数枚の透明基材間によって挟持される中間層の構成部材として介在させることで、可視光線を透過しつつ電磁波吸収機能を備えた電磁波吸収合わせ構造体を得ることが出来る。電磁波吸収用中間膜は、本発明に係る分散体の一例である。
以上、説明したように本発明に拠れば、例えば120℃という高温下においても、優れた熱線遮蔽特性を安定的に発揮する吸収微粒子が分散された樹脂成形体を得ることが出来る。すなわち、高温環境下であっても長期使用に耐え、優れた近赤外線吸収効果を示す透明な窓材や屋根材等を安価に製造することが出来る。加えて、部材にガラスを使用せず、本発明に係る分散液を透明な樹脂に混合し混練して得られた成形体を使用した場合は、ガラスでは得られない耐衝撃性と軽量化に加えて、優れた近赤外線吸収効果を併せ持つことが出来る。さらに、本発明に係る分散液を用いて作製する分散体は、当該分散液から作製されたマスターバッチを成形時にドライブレンドする方法、または、分散液を直接媒体に添加する等の安価な製造方法で得ることが出来、透明であるにもかかわらずレーザー光や赤外光等の光を熱に変換出来るので、部材同士の接合にも有効に作用する。
は、従来であれば、紫外線ランプの使用等、人体に好ましからざる方法を用いていた抗菌・除菌・殺菌等の用途においても、少ないエネルギーまたは日射光やランプ光等の、環境光を用いたゼロエネルギーで透明な対菌用の媒体を実現することができる。
尚、実施例および比較例における吸収微粒子の結晶子径の測定には、分散液から液状の媒体を除去して得られる吸収微粒子を用いた。そして、当該吸収微粒子のX線回折パターンを、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製X’Pert-PRO/MPD)を用いて粉末X線回折法(θ―2θ法)により測定し、得られたX線回折パターンからリートベルト法を用いて結晶子径を算出した。
また、実施例および比較例に係る赤外線吸収シートの光学特性は、分光光度計(日立製作所株式会社製 U-4100)を用いて測定し、可視光透過率と日射透過率とは、JISR3106に従って算出した。
また、実施例および比較例におけるヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩株式会社製 HM-150)を用いてJISK7105従って測定した。
Cs/W(モル比)=0.33の六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末CWO(住友金属鉱山株式会社製YM-01(登録商標))5質量%とポリアクリレート系分散剤5質量%とトルエン90質量%とを混合し、得られた混合液を、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、10時間粉砕・分散処理した。そして、上述した六方晶セシウムタングステンブロンズ100重量部に対して、金属不活性化剤として、構造式(4)に示すアデカスタブCDA-6(登録商標)(株式会社ADEKA製)を130重量部添加し、攪拌混合することで実施例1に係る分散液を得た。ここで、得られた分散液中の吸収微粒子の結晶子径を測定したところ32nmであった。
得られた実施例1に係る赤外線吸収シートの光学特性を測定したところ、可視光透過率が79.6%、日射透過率が48.6%、ヘイズは0.9%であった。
この結果より、実施例1に係る赤外線吸収シートは120℃という高温下においても、優れた熱線遮蔽特性を安定的に発揮することが判明した。
これらの結果を表1に記載する。尚、表1には、実施例2~9、比較例1~2で得られた結果についても併せて記載する。
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末100重量部に対して、アデカスタブCDA-6を340重量部(実施例2)、680重量部(実施例3)、1020重量部(実施例4)、1360重量部(実施例5)添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~5に係る分散液、赤外線吸収シートを得た。
得られた実施例2~5に係る分散液、赤外線吸収シートの光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該実施例2~5に係る製造条件と評価結果とを、表1に記載する。
この結果より、実施例2~5に係る赤外線吸収シートは120℃という高温下においても、優れた熱線遮蔽特性を安定的に発揮することが判明した。
実施例1に係る分散粉とポリカーボネート樹脂とを、六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末100重量部に対する金属不活性化剤の添加量が10000重量部となり、且つ、吸収微粒子の濃度が0.05質量%となるようにブレンダーで均一に混合した後、二軸押出機で溶融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、吸収微粒子含有マスターバッチを得た。尚、吸収微粒子含有マスターバッチは本発明に係る分散体の一例である。
得られた実施例6に係る赤外線吸収プレートの光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該実施例6に係る製造条件と評価結果とを、表1に記載する。
この結果より、実施例6に係る赤外線吸収プレートは120℃という高温下においても、優れた熱線遮蔽特性を安定的に発揮することが判明した。
Cs/W(モル比)=0.33の六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末(住友金属鉱山株式会社製)5質量%とポリアクリレート系分散剤5質量%とトルエン90質量%とを混合し、得られた混合液を、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、10時間粉砕・分散処理した。そして、上述した六方晶セシウムタングステンブロンズ100重量部に対してアデカスタブCDA-6を340重量部、および、ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、構造式(5)に示すIRGANOX1010(登録商標)(BASF SE社製)を150重量部添加し、攪拌混合することで実施例7に係る分散液を得た。
得られた実施例7に係る分散液中の吸収微粒子の結晶子径と、赤外線吸収シートの光学特性とを、実施例1と同様に測定、評価した。当該実施例7に係る製造条件と評価結果とを、表1に記載する。
この結果より、実施例7に係る赤外線吸収シートは120℃という高温下においても、優れた熱線遮蔽特性を安定的に発揮することが判明した。
IRGANOX1010の代わりに、リン系酸化防止剤として構造式(6)に示すアデカスタブ2112(登録商標)(株式会社ADEKA製)を150重量部用いた以外は、実施例7と同様にして、実施例8に係る分散液と赤外線吸収シートとを得た。
得られた実施例8に係る分散液中の吸収微粒子の結晶子径と、赤外線吸収シートの光学特性とを、実施例1と同様に測定、評価した。当該実施例8に係る製造条件と評価結果とを、表1に記載する。
この結果より、実施例8に係る赤外線吸収シートは120℃という高温下においても、優れた熱線遮蔽特性を安定的に発揮することが判明した。
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末(住友金属鉱山株式会社製)の代わりにマグネリ相のW18O49を用いた以外は、実施例2と同様にして、実施例9に係る分散液と赤外線吸収シートとを得た。
得られた実施例9に係る分散液中の吸収微粒子の結晶子径と、赤外線吸収シートの光学特性とを、実施例1と同様に測定、評価した。当該実施例9に係る製造条件と評価結果とを、表1に記載する。
この結果より、実施例9に係る赤外線吸収シートは120℃という高温下においても、優れた熱線遮蔽特性を安定的に発揮することが判明した。
アデカスタブCDA-6の代わりに何も添加せずにした以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る分散液と赤外線吸収シートを得た。
得られた比較例1に係る分散液中の吸収微粒子の結晶子径と、赤外線吸収シートの光学特性とを、実施例1と同様に測定、評価した。当該比較例1に係る製造条件と評価結果とを、表1に記載する。
アデカスタブCDA-6の代わりに何も添加しなかった以外は実施例9と同様にして、比較例2に係る分散液、赤外線吸収シートを得た。
得られた比較例2に係る分散液中の吸収微粒子の結晶子径と、赤外線吸収シートの光学特性とを、実施例1と同様に測定、評価した。当該比較例2に係る製造条件と評価結果とを、表1に記載する。
実施例1~9に係る分散液から製造した赤外線吸収シートまたは赤外線吸収プレートは、いずれも優れた熱線遮蔽特性を有し、120℃という高温下においても、当該優れた熱線遮蔽特性を安定的に発揮することが判明した。
Claims (13)
- 液状の媒体と、前記媒体中に分散された吸収微粒子と、金属不活性化剤とを含む微粒子分散液であって、
前記吸収微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子、から選択される1種以上の酸化物微粒子であり、
前記金属不活性化剤は、下記の構造式(1)で示す化合物であり、
前記金属不活性化剤の含有量が、前記吸収微粒子100重量部に対して、130重量部以上10000重量部以下であり、
前記微粒子分散液から液状媒体が除去された吸収微粒子分散粉が、ポリカーボネート樹脂に分散されることを特徴とする微粒子分散液。
- さらに、前記構造式(1)で示す化合物とは異なる構造を有する金属不活性化剤として、リン系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド系安定剤から選ばれる1種類以上の安定剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の微粒子分散液。
- 前記吸収微粒子が、一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子であり、前記Mが、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の微粒子分散液。
- 前記吸収微粒子が、六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の微粒子分散液。
- 前記吸収微粒子の結晶子径が、1nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の微粒子分散液。
- 前記吸収微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alのいずれか1種類以上の元素を含有する化合物で被覆されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の微粒子分散液。
- 前記吸収微粒子を分散する媒体が、高分子単量体であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の微粒子分散液。
- 媒体と、前記媒体中に分散された吸収微粒子と、金属不活性化剤とを含む微粒子分散体であって、
前記吸収微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子、から選択される1種以上の酸化物微粒子により構成され、
前記金属不活性化剤は、下記の構造式(1)で示す化合物であり、
前記金属不活性化剤の含有量が、前記吸収微粒子100重量部に対して、130重量部以上10000重量部以下であり、
前記媒体が、ポリカーボネート樹脂であることを特徴とする微粒子分散体。
- さらに、前記構造式(1)で示す化合物とは異なるなる構造を有する金属不活性化剤として、リン系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド系安定剤から選ばれる1種類以上の安定剤を含むことを特徴とする請求項8に記載の微粒子分散体。
- 前記吸収微粒子が、一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子であり、Mが、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上であることを特徴とする請求項8または9に記載の微粒子分散体。
- 前記吸収微粒子が、六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子であることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の微粒子分散体。
- 前記吸収微粒子の結晶子径が、1nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載の微粒子分散体。
- 前記吸収微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alのいずれか1種類以上の元素を含有する化合物で被覆されていることを特徴とする請求項8から12のいずれかに記載の微粒子分散体。
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