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JP5157387B2 - 高変形能を備えた厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法 - Google Patents

高変形能を備えた厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法 Download PDF

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JP5157387B2 JP2007301778A JP2007301778A JP5157387B2 JP 5157387 B2 JP5157387 B2 JP 5157387B2 JP 2007301778 A JP2007301778 A JP 2007301778A JP 2007301778 A JP2007301778 A JP 2007301778A JP 5157387 B2 JP5157387 B2 JP 5157387B2
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Description

本発明は、高変形能を備え靭性に優れた鋼材の製造方法に関し、特に、強度レベルがAPIX70以上で、板厚20mm以上のUOEまたはプレスベンド法によって製造されるラインパイプ用鋼管用素材の製造方法として好適なものに関する。
天然ガス供給地の遠隔化に伴い、天然ガス輸送用パイプラインの長距離化が進み、輸送効率のための操業圧増加を考慮し、ラインパイプの管厚を増大したり、高強度グレードを採用する設計が進められ、厚肉高強度ラインパイプの需要が高まっている。
天然ガス輸送用パイプラインの場合は、脆性亀裂伝播防止の観点から、DWTT(Drop Weight Tear Test)と呼ばれる試験における延性破面率(SA(%))の値が高いことが望まれている。
一般に、鋼板の強度や板厚が増加すると、靭性は低下する傾向にあるため、厚鋼板の靭性を向上させる技術として、制御圧延や制御冷却、さらには、直接焼入れ−焼戻し技術などTMCP技術、また圧延後に行うオンラインの熱処理技術が開発されてきた。
靭性の向上には、結晶粒の微細化が有効であることが従来から知られており、様々な検討がなされている。合金設計や圧延時の加熱温度や圧延温度などの調整による細粒化の場合、現状、圧延−冷却で得られる厚鋼板のγ粒径は20〜30μm程度が限界である。
上記粒径は、圧延後の再加熱焼入れなどで得られる結晶粒径に比べても大きく、圧延−冷却ままあるいは、圧延−冷却−焼戻しプロセスでの靭性の向上には限界があり、特に20mmを超える厚肉材の場合、DWTT試験時のSA値を満足させることは難しい。
さらに、天然ガス輸送用パイプラインの場合、大地震や凍土地帯における地盤変動により、大変形が生じても、亀裂の発生防止が可能な高変形能を備えることも要求されるようになってきた。
鋼材の高変形能の指標として、降伏強度を引張強度で割った降伏比(YR(%))が使われ、低YR化されるほどパイプ座屈発生の限界歪が向上する。
鋼材のミクロ組織を軟質なフェライト相と、硬質なベイナイトやマルテンサイトなどが適度に分散した硬質相の2相組織とすることで、低YRとなることが知られており、例えば特許文献1には、上記のような軟質相の中に硬質相が適度に分散した組織を得る製造方法として、焼入れ(Q)と焼戻し(T)の中間に、フェライトとオーステナイトの2相域からの焼き入れ(Q´)を施す熱処理方法が開示されている。
また、特許文献2には、軟質相を加工フェライトとしたフェライト+ベイナイト+マルテンサイト組織により低YR化が達成されることが開示されている。
特開昭55−97425号公報 特開平08―209291号公報
しかしながら、特許文献1記載のQ−Q´−Tプロセスは圧延能率が著しく低下するので、ラインパイプ材などの量産材の生産には適用できず、大量生産には適しない。また、特許文献2のような圧延後の冷却制御によりフェライトを導入することは、20mmを超える厚肉材においては難しい。
上述したように、20mmを超える厚肉材を対象とした場合、生産性を損なわずに、靭性向上と低YR化の達成には限界があり、新たな製造プロセスが望まれている。
そこで、本発明は、圧延−加速冷却ままプロセスにおいて、γ粒を著しく微細化してDWTT特性を改善し、その後、γからの変態を制御して靭性に悪影響を及ぼすことなく低YR化を達成する厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するため、γ粒径に及ぼす圧延時の加熱・冷却・圧下パターンに着目して鋭意検討し、再結晶温度域圧延後、未再結晶域圧延を行い、再度、再結晶温度域へ急速加熱した場合、微細なγが得られ、その後の圧延・冷却条件の組合せにより、優れた靭性、高強度および低YR特性が得られることを見いだした。
すなわち、1.圧延時の加熱温度と再結晶域圧延により初期γ粒径の粗大化を防止して均一なγ粒を得、その後の未再結晶域での圧延(一次圧延)を所定の累積圧下率で行い、Ar変態点以上の温度から再度、再結晶温度域に短時間で加熱することにより微細な再結晶γ粒が得られる。
2.得られた微細な再結晶γ粒を、冷却過程における未再結晶温度域で圧延(二次圧延)すると一層の組織の微細化が図られ、3.その後、Ar変態点以上から開始する加速冷却によってベイナイト変態を促進し、ベイナイト変態途中で加速冷却を停止した後、ただちに再加熱することで未変態オーステナイトから硬質なMA(島状マルテンサイト)が生成し、低YR特性が得られるベイナイト+MAの2相組織が得られることを見出した。
本発明は得られた知見をもとに更に検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
1.質量%で、
C:0.03〜0.09%、
Si:0.01〜0.50%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.030%以下、
S:0.010%以下、
sol.Al:0.003〜0.100%、
Nb:0.005〜0.1%、
Ti:0.005〜0.05%
を含有し、さらに、
Cu:0.01〜1.0%、
Ni:0.01〜2.0%、
Cr:0.01〜1.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
V:0.003〜0.1%
B:0.0004〜0.003%、
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、
さらに、下記(1)式で計算されるCeq値が0.36〜0.60であり、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、
1000℃以上1250℃以下に加熱し、再結晶温度域において圧延後、未再結晶温度域において累積圧下率40%以上の圧延を行う一次圧延を実施し、その後、Ar変態点以上の温度から再結晶温度以上に2℃/sec以上の昇温速度で加熱後冷却し、再度、オーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率40%以上の圧延を行う二次圧延を実施し、Ar変態点以上の温度から冷却速度10℃/s以上80℃/s未満で400〜600℃に加速冷却後、直ちに600℃以上700℃未満に再加熱することを特徴とする高変形能を備えた厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法。
Ceq(%)=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5 (1)
各元素は質量%での値とする。
2.前記鋼素材は、さらに、質量%で
Ca:0.0001〜0.0060%、
Mg:0.0001〜0.0060%、
REM:0.0001〜0.0200%、
Zr:0.0001〜0.0100%
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、1記載の高変形能を備えた厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法。
3.一次圧延において、未再結晶温度域で累積圧下率40%以上の圧延を行う前に、再結晶温度域圧延中または圧延後に水冷を実施して、前記未再結晶温度域まで冷却することを特徴とする、1または2に記載の高変形能を備えた厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法。
4.一次圧延後、Ar変態点以上の温度から再結晶温度域に加熱後に得られる再結晶後平均γ粒径が15μm以下であることを特徴とする、1乃至3の何れか一つに記載の高変形能を備えた厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法。
5.1乃至4の何れか一つに記載の方法により製造され、再結晶後平均γ粒径が15μm以下、強度レベルが降伏強度485MPa以上および引張強度565MPa以上で、降伏比が80%以下で、−40℃におけるシャルピー吸収エネルギーが300J以上かつDWTT試験で得られた延性破面率SA値が80%以上、板厚20mm以上であることを特徴とするラインパイプ用鋼管用素材。
本発明によれば、圧延−加速冷却ままプロセスを用いて、従来材と比較して、DWTT試験における75%SAが得られる温度(SATT)が20℃以上低温となる優れた靭性と降伏比80%以下の低降伏比特性を備えた、板厚20mm以上の高変形能を備えた厚肉高強度高靭性鋼管素材が生産性を損なわずに得られ、産業上極めて有用である。
本発明は、特定成分の鋼を再結晶温度域で圧延後、未再結晶温度域で圧延する一次圧延を行った後、再度、再結晶温度域へ急速加熱を行い、その後の冷却過程における未再結晶域で圧延する二次圧延後、加速冷却を開始し、ベイナイト変態途中で冷却を停止後、再加熱し、ベイナイト組織中にMAが分散した微細組織とすることを特徴とする。以下、本発明を詳細に説明する。尚、成分組成における%は質量%とする。
[成分組成]
C:0.03〜0.09%
CはAPIX70以上の強度を確保するため、少なくとも0.03%は必要である。一方、0.09%を越えて添加すると加速冷却後に形成される硬質相がマルテンサイトとなり、母材シャルピー吸収エネルギーが低下するため、0.03%以上、0.09%以下(以下、0.03〜0.09%)とする。降伏比を十分さげるためにMAを必要なだけ生成させ、且つ優れた母材吸収エネルギーを得るためには0.05〜0.07%以上とすることが好ましい。
Si:0.01〜0.50%
Siは脱酸に必要な元素であるが、0.01%未満ではその効果は少なく、0.50%を越えて添加すると溶接性および母材部のシャルピー吸収エネルギーを著しく低下させるため、0.01〜0.50%とする。母材部のシャルピー吸収エネルギーを向上させる場合、0.01〜0.10%とすることが好ましい。
Mn:1.0〜3.0%
MnはCと同様に鋼板の強度を確保するために必要であり、特にAPIX70以上の強度を確保するためには1.0%以上は必要である。一方、3.0%を超えて添加すると鋳造時に不可避的に形成される偏析部に特に濃化し、当該偏析部がDWTT特性劣化の原因となるため、1.0〜3.0%とする。高強度と優れたDWTT特性を確保する場合は、1.5〜2.0%とすることが好ましい。
P:0.030%以下、S:0.010%以下
P、Sは不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、鋼母材や、溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、経済性を考慮して可能な範囲で低減する事が好ましく、P:0.030%以下、S:0.010%以下とする。特に母材の中心偏析部の靭性を向上させる場合は、P:0.08%以下、S:0.001%以下とすることが好ましい。
Al:0.003〜0.100%
Alは脱酸元素であり、0.003%未満ではその効果は十分ではなく、過剰に添加すると靭性の劣化をもたらすため、0.003〜0.100%以下とする。特に、母材において優れたシャルピー吸収エネルギーを確保ためには、0.01〜0.04%とすることが好ましい。尚、Alはsol.Alとする。
Nb:0.005〜0.1%
Nbはオーステナイト未再結晶温度域を高温側に拡大する働きをするため、後述するオーステナイト未再結晶温度域での40%以上の累計圧下率を十分確保するために、少なくとも0.005%添加する必要がある。また、同時に焼入れ性向上効果があり、加速冷却後の組織を変態強化するが、0.1%以上の添加は組織を過剰に硬化して、母材のシャルピー吸収エネルギーの低下をもたらすため、0.005〜0.1%とする。母材の、高強度と優れたシャルピー吸収エネルギーを両立させる場合、0.010〜0.04%とすることが好ましい。
Ti:0.005〜0.05%
Tiは鋼中で窒化物を形成し、特に0.005%以上添加されていると、窒化物のピンニング効果でγ粒の粗大化を防ぐ働きをするため母材の靭性確保や溶接熱影響部での靭性確保の観点で有効である。0.05%を超えて添加するとTiCの析出強化により靭性の著しい低下をもたらすため、0.005〜0.05%とする。γ粒を微細化し、析出硬化を抑制するためには、0.008〜0.016%とすることが好ましい。
本発明では、強度調整の観点からCu,Ni,Cr,Mo,V、Bの1種または2種以上を選択元素として添加することを必須とする。
Cu:0.01〜1.0%
Cuは強度を増加させるための元素で0.01%以上でその効果を発揮し、1.0%を超えて添加すると熱間脆性により鋼板表面の性状を劣化するため、添加する場合は、0.01〜1.0%とする。
Ni:0.01〜2.0%
Niは母材の強度を増加させつつ靭性も向上させることが可能であり、0.01%以上で効果を発揮するが、2.0%を超えると効果が飽和し経済的を損なうため、添加する場合は、0.01〜2.0%とする。
Cr:0.01〜1.0%
Crは強度を増加するのに有効であり、0.01%以上でその効果を発揮し、1.0%を越えて添加すると靭性を劣化させるため、添加する場合は、0.01〜1.0%とする。
Mo:0.01〜1.0%
Moは強度を増加するのに有効であり、0.01%以上でその効果を発揮し、1.0%を越えて添加すると著しく靭性を劣化させるとともに経済性を損なうため、添加する場合は、0.01〜1.0%とする。
V:0.003〜0.1%
Vは炭化物形成により強度を増加するのに有効であり、0.003%以上の添加で効果を発揮する。ただし、0.1%を越えると過剰な炭化物量となり靭性の低下を招くおそれがあるため、添加する場合は、0.003〜0.1%とする。
B:0.0004〜0.003%
Bは0.0004%以上添加すると、γ粒界に偏析して粒界フェライトの変態生成を抑制し、高強度化に有効である。0.003%を超えて添加してもその効果は飽和するので、添加する場合は0.0004〜0.003%とする。
Ceq(%):0.36〜0.60
Ceq(%)=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5)、各元素は含有量(質量%)とし、板厚25mmの鋼板でAPIX70以上の強度を達成するため、0.36以上とする。一方、Ceq(%)が0.60を超えるような添加を行った場合、溶接性が劣化し特にパイプの円周溶接時の低温割れを防止できなくなるため、上限を0.60とする。尚、添加しない元素は0とする。
本発明の基本成分組成は以上であるが、必要に応じて、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%、Zr:0.0001〜0.0100%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することができる。
Ca,Mg,REM,Zrは鋼中のSを固定して鋼板の靭性を向上させる働きがあり、0.0001%以上の添加で効果がある。一方、それぞれ0.0060%、0.0060%、0.0200%、0.0100%を越えて添加すると鋼中の介在物量が増加し靭性を劣化させるようになる。従って、添加する場合は、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%、Zr:0.0001〜0.0100%とする。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
[製造条件]
上記組成を有する溶鋼を、転炉、電気炉等の溶製手段で常法により溶製し、連続鋳造法または造塊〜分塊法等で常法によりスラブ等の鋼素材とする。なお、溶製方法、鋳造法については上記した方法に限定されるものではない。その後、所望の形状に特定の条件で圧延し、圧延中または圧延後に、特定の条件で冷却および加熱を行う。
1.スラブ加熱
鋳造後、スラブ温度が室温まで低下してからあるいは高温の状態で、加熱炉に挿入して1000℃以上に加熱する。
加熱温度は、靭性確保の観点からはより低温が好ましいが、1000℃未満ではスラブ厚中央の未厚着ザクが残存して1/2t性能を劣化させる可能性があり、また、Nb,Vなどを十分に固溶させるため、1000℃以上とする。
一方、1250℃を超える温度に加熱すると初期γ粒が粗大化し、靭性が劣化するので、上限を1250℃とする。
2.1次圧延
1次圧延は、スラブ等の鋼素材を、所望の形状とするために行い、再結晶域温度で1パス以上の圧下を行い、引き続き、未再結晶温度域で累積圧下率40%以上の圧延を行う。
再結晶域圧延は加熱時のγ粒をある程度まで均一微細化するのに必要であり、1パス以上、好ましくは累積で20%以上の圧下を行う。
未再結晶域圧延は、圧下率が小さいと、その後に再結晶域まで再加熱する急速加熱後のミクロ組織微細化効果が発揮できないため、40%以上確保する。圧下率は高い方が好ましいが、工業的には80%程度が上限となる。
また、再結晶域圧延後、未再結晶域圧延開始温度まで、自然放冷(空冷)で待ってもよいが、再結晶域圧延中あるいは圧延後に水冷し、未再結晶域圧延開始までの待ち時間を短縮することが、効率的にも、また、再結晶γの成長を抑制する効果の点からも好ましく、微細化により有効である。
3.1次圧延後急速加熱
未再結晶域圧延の後、Ar変態点以上の温度域から、再結晶温度域までを2℃/sec以上の昇温速度で加熱する。加熱方法は特に限定しないが、高周波加熱装置が好ましい。加熱後、特に保持などは行う必要はない。
加熱開始温度がAr変態点を下回ると、フェライト変態が起こり、再加熱時に逆変態によりγは微細化される。しかし、その後の再加熱温度域までの加熱温度代が大きくなり効率および経済性が損なわれるとともに、Nb炭化物などの析出・粗大化が促進され、混粒組織となりやすく靭性低下の原因となる。
従って、Ar変態点以上の温度から昇温を開始する。加熱温度は再結晶温度以上が必要で、再結晶温度+100℃以下の低温が好ましい。温度が高くなるとγ粒が成長し、γ粒の微細化効果が得られないためである。
昇温速度は、2℃/sec以上とする。2℃/sec未満では、再結晶の前に加工組織の回復や、NbやTiなどの炭化物の加工誘起析出が起こり、靭性が劣化する。加熱後の保持は行ってもよいが、再結晶が完了するとその後粒成長が起こるため、必要以上の保持は行うべきではなく、短時間が好ましい。
スラブ加熱温度で初期γ粒を制御した上で未再結晶域圧延の累積圧延率を確保し、再結晶温度域に急速に再加熱することにより、γの微細化が達成されるため、再結晶後のγ粒として平均粒径15μm以下や10μm以下のγ粒が得られる。本発明では再結晶後のγ粒の平均粒径を再結晶後平均γ粒径と称する。
4.2次圧延
急速加熱によって15μm以下までγ粒が再結晶細粒化した鋼板を、γ未再結晶域に空冷または水冷し、以降、2次圧延として累計で少なくとも40%以上の圧下率の圧延を行う。さらにγ粒が微細化され、DWTT特性が向上する。板厚中央にわたりγ粒の微細化効果を得るため、60%以上の累計圧下率とすることが好ましい。
5.加速冷却
加速冷却は、APIX70以上の強度を確保するために、母相をベイナイト組織化する目的で、Ar3変態点以上の温度から冷却速度10℃/s以上80℃/s未満で、400℃以上600℃以下の温度まで行う。
Ar3変態点未満の温度から加速冷却を行った場合、圧延終了から加速冷却開始までの間に、フェライトが変態生成し、これらのフェライトは十分細粒化されないことからDWTT特性の劣化を引き起こす。
加速冷却の冷却速度はベイナイト主体の組織にするために10℃/s以上とする。10℃/s未満の場合、板厚中央部でフェライト変態が生じて強度が低下する。一方、冷却速度が80℃/s以上でも効果が飽和するため、加速冷却の冷却速度は、10℃/s以上80℃/s未満とする。
加速冷却停止温度が400℃未満の場合、ベイナイト変態がほとんど終了するため、後述する加速冷却後の再加熱時に第2相としてMAが生成しない。一方、600℃を超える場合、第2相がパーライトとなり、ベイナイト主体の組織とすることが難しくなることから、加速冷却の停止温度は400〜600℃とする。
加速冷却後ただちに鋼板を再加熱する。加速冷却のベイナイト変態途中で再加熱する際、再加熱温度600℃以上とすると、未変態オーステナイトにCが濃化しMAが生成する。
一方、700℃以上の温度に加熱すると、一部α→γ逆変態が生じ、再変態部がその後の空冷過程でフェライトとなり、強度低下の原因となるため、再加熱温度は600℃以上700℃未満とする。
以上の説明において、鋼材温度は、鋼材の表面と中心部の平均温度とする。再結晶温度やAr変態点は成分によって異なり、本願で規定する鋼の化学組成の範囲内では、再結晶温度(再結晶を起こす限界温度)は概ね800〜950℃の範囲に、Ar変態点は概ね700〜800℃の範囲にある。
表1に示す組成の鋳片を、表2に示す熱間圧延条件により20〜38mm厚の厚鋼板とした。
Figure 0005157387
Figure 0005157387
表1において、鋼種No.G,H,I,J,K、Lの供試鋼は成分組成のいずれかが本発明範囲外となっている。
得られた厚鋼板について、API−5Lに準拠した全厚引張試験片を採取し、引張試験を実施し、降伏強度、引張強度および降伏比(降伏強度と引張強度の比)を求めた。
シャルピ−衝撃試験は、板厚方向1/4の位置からJIS Z 2202(1998改訂版)に準拠したVノッチ標準寸法のシャルピ−衝撃試験片を採取して、JIS Z 2242(1998改訂版)に準拠して−40℃でシャルピー衝撃試験を実施し、吸収エネルギーを求めた。
また、API−5Lに準拠したDWTT試験片を採取し、−40℃で試験を行い、SA値を求めた。
未再結晶域圧延後、再加熱後の再結晶後平均γ粒径は、表2の圧延条件のうち、再加熱までの工程は同一で、再加熱後10秒の保持時間経過後、水焼入した鋼板の一部からγ粒径測定用小型圧延試料を採取した。
当該試料の板厚1/4位置よりミクロ組織観察用試料を採取し、試料の板厚方向断面を鏡面研磨ののちピクリン酸エッチング処理を行ってから、光学顕微鏡を用いて400〜1000倍の範囲でγ粒界が見える写真を撮影し、画像解析にてその平均粒径を算出した。
表3に、調査した厚鋼板の再結晶後平均γ粒径および機械的性質を示す。
本実施例において、本発明範囲は、再結晶後平均γ粒径が15μm以下、APIX70の下限降伏強度485MPaおよび下限引張強度565MPa以上、降伏比80%以下、−40℃におけるシャルピー吸収エネルギーが250J以上かつDWTT試験で得られた延性破面率SA値が80%以上とする。
Figure 0005157387
本発明に適合した発明例No.1〜9は、いずれも再結晶後平均γ粒径が15μm以下となっており、かつ、APIX70の下限降伏強度485MPaおよび下限引張強度565MPaを上回る高強度を達成しており、さらに、−40℃におけるシャルピー吸収エネルギーが300J以上かつDWTT試験で得られた延性破面率SA値が80%以上と優れた靭性が認められた。APIX70はAPI−5L X70を指すものとする。
一方、比較例10は、鋼の化学組成は適合しているものの、未再結晶域圧延後の再加熱を行わずそのまま加速冷却と加速冷却後の再加熱を実施したので、再結晶後平均γ粒径が上限とする15μmを超えており、シャルピー吸収エネルギーおよびDWTTの破面率が低下した。
比較例11は、未再結晶域圧延後の再加熱において、昇温速度が下限を下回ったので、加熱時のオーステナイト粒の回復が起きて、再結晶細粒化が起こらず、再結晶後平均γ粒径が上限とする15μmを超え、シャルピー吸収エネルギーおよびDWTTの破面率が低下した。
比較例12は、1次圧延時の未再結晶域での累積圧下量が40%未満で、圧下量が不足しているため再加熱後の再結晶細粒化が不十分であり、再結晶後平均γ粒径が上限とする15μmを超えており、シャルピー吸収エネルギーとDWTTの破面率が低下した。
一方、比較例13は、オーステナイト再結晶を促進する再加熱を行った後の、2次圧延時の未再結晶域での累積圧下量が40%未満であったため、再結晶後平均γ粒径は9μmまで細粒化したものの、未再結晶域圧延による加工γからの変態組織が十分微細でなくシャルピー吸収エネルギーとDWTTの破面率が低下した。
比較例14は、加速冷却の冷却停止温度が下限を下回ったため、加速冷却直後の段階で未変態オーステナイトがほとんど残らず、再加熱後に生成するMAの量が足りず、降伏比が80%を超えた。
比較例15は、加速冷却直後の再加熱温度が下限を下回ったため、再加熱時の未変態オーステナイトへの炭素の濃化が不十分で、その後に生成するMAの量が足りず、降伏比が80%を超えた。
比較例16は、鋼の化学組成においてC量が下限を下回ったため、MA生成量が少なく、引張強度および降伏比が目標を下回った。
比較例17は、Si量が上限を上回ったため、母材シャルピー吸収エネルギーが目標を下回った。比較例18は、Mn量が上限を上回ったため、DWTTの破面率が目標を下回った。
比較例19は、Nb量が下限を下回ったため、比較例20は、Ti量が下限を下回ったため、母材シャルピー、DWTT両方とも目標を下回った。
Ceq値が下限を下回った比較例21は、目標とする降伏強度、引張強度いずれも目標を満足できなかった。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.03〜0.09%、
    Si:0.01〜0.50%、
    Mn:1.0〜3.0%、
    P:0.030%以下、
    S:0.010%以下、
    sol.Al:0.003〜0.100%、
    Nb:0.005〜0.1%、
    Ti:0.005〜0.05%
    を含有し、さらに、
    Cu:0.01〜1.0%、
    Ni:0.01〜2.0%、
    Cr:0.01〜1.0%、
    Mo:0.01〜1.0%、
    V:0.003〜0.1%
    B:0.0004〜0.003%、
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、
    さらに、下記(1)式で計算されるCeq値が0.36〜0.60であり、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、
    1000℃以上1250℃以下に加熱し、再結晶温度域において圧延後、未再結晶温度域において累積圧下率40%以上の圧延を行う一次圧延を実施し、その後、Ar変態点以上の温度から再結晶温度以上に2℃/sec以上の昇温速度で加熱後冷却し、再度、オーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率40%以上の圧延を行う二次圧延を実施し、Ar変態点以上の温度から冷却速度10℃/s以上80℃/s未満で400〜600℃に加速冷却後、直ちに600℃以上700℃未満に再加熱することを特徴とする高変形能を備えた厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法。
    Ceq(%)=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5 (1)
    各元素は質量%での値とする。
  2. 前記鋼素材は、さらに、質量%で
    Ca:0.0001〜0.0060%、
    Mg:0.0001〜0.0060%、
    REM:0.0001〜0.0200%、
    Zr:0.0001〜0.0100%
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1記載の高変形能を備えた厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法。
  3. 一次圧延において、未再結晶温度域で累積圧下率40%以上の圧延を行う前に、再結晶温度域圧延中または圧延後に水冷を実施して、前記未再結晶温度域まで冷却することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の高変形能を備えた厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法。
  4. 一次圧延後、Ar変態点以上の温度から再結晶温度域に加熱後に得られる再結晶後平均γ粒径が15μm以下であることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一つに記載の高変形能を備えた厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法。
  5. 請求項1乃至4の何れか一つに記載の方法により製造され、再結晶後平均γ粒径が15μm以下、強度レベルが降伏強度485MPa以上および引張強度565MPa以上で、降伏比が80%以下で、−40℃におけるシャルピー吸収エネルギーが300J以上かつDWTT試験で得られた延性破面率SA値が80%以上、板厚20mm以上であることを特徴とするラインパイプ用鋼管用素材。
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