JP5151128B2 - 電動式ステアリング装置 - Google Patents
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Description
図1は、本発明の一実施形態を示す電動式ステアリング装置の概略構成図である。この電動式ステアリング装置1は、いわゆる首振りチルト方式を採用しており、ステアリングホイール2から延びてステアリングギア(図示せず)に連結されたステアリングシャフト3をその軸の周りに回転可能に保持する三つのステアリングコラム、すなわち、アッパコラム4,ミドルコラム5,ロアコラム6を備えている。そして、各コラム4,5,6の相対位置を適宜調節することによって、ステアリングシャフト3、ひいてはステアリングホイール2が所望の位置に保持される。
伸縮ロッド装置72から延びるアクチュエータロッド72aは、ブラシレスモータ71の回転に応じて伸縮される。
伸縮ロッド装置82の前端部は、ロアコラム6に固定されたブラケット62にピン63で枢着されており、ヒンジを構成している。アクチュエータロッド82aの後端部は、ミドルコラム5のフォーク部51に固定されたブラケット55にピン56で枢着されており、ヒンジを構成している。
一方、伸縮ロッド装置82内にアクチュエータロッド82aを収納すれば、ミドルコラム5がロアコラム6に繰り込まれることになり、ステアリングホイール2を前進させることができる。
ここで、ブラシレスモータ71及び81は、モータ駆動回路90A及び90Bを内蔵している。これらモータ駆動回路90A及び90Bは、図3に示すように、後述する制御装置100から入力されるスタート及びストップを表す信号ST/SPと、回転方向を指示する回転方向信号CW/CCWと、速度指令を表すパルス幅変調信号PWMと、ブラシレスモータ71及び81の例えばホール素子で構成される位置検出素子91u〜91wの出力を2値信号に変換するシュミットトリガ回路92u〜92wから入力される回転位置信号とが入力され、これらに基づいてブラシレスモータ71及び81を駆動する三相駆動信号を形成する三相分配回路93と、この三相分配回路93から出力される三相駆動信号が入力されてインバータ回路96を構成する電界効果トランジスタQua〜Qwbのゲートを駆動するFETゲート駆動回路95と、一対の電界効果トランジスタ(FET)Qua,Qub、Qva,Qvb及びQwa,Qwbを直列に接続してブラシレスモータ71及び81の各相コイルLu、Lv及びLwに対応する3組のFET回路を並列に接続したインバータ回路96とを備えている。
そして、モータ駆動回路90A及び90Bが制御装置100によって駆動制御される。この制御装置100は、図2に示すように、車両に搭載されたバッテリ101からのバッテリ電圧VBがヒューズ102を介して入力されるレギュレータ103と、通信回線を介して車両に搭載した走行状態検出手段としての車速センサ104で検出した車速検出値を他の制御系から取得する通信インタフェース105と、レギュレータ103から出力される制御電圧Vcによって作動される演算処理装置(CPU)106と、この演算処理装置106に接続された不揮発性メモリなどで構成される記憶装置107と、前記ヒューズ102とモータ駆動回路90A及び90Bのバッテリ電圧入力端との間に制御装置100内で介挿されたスイッチング部としてのリレー回路108とを備えている。
また、電動テレスコピック機構8による電動テレスコ制御範囲は、図5に示すように、退避側となる縮み側のメカニカルストッパ位置PMSと伸び側のメカニカルストッパ位置PMLとで決定されるチルト機構の最大移動範囲RMAXに対してメカニカルストッパ位置PMUから内側に所定距離LSとった位置を電動テレスコ制御範囲RTEの伸び側制御開始位置PTES1として設定し、この位置を記憶装置107の電動テレスコ制御範囲記憶領域に記憶すると共に、この縮み側制御開始位置PTES1から電動テレスコ制御範囲RTEを採った位置を電動テレスコ制御範囲RTEの伸び側制御開始位置PTES2として設定し、これを同様に記憶装置107の電動テレスコ制御範囲記憶領域に記憶する。
そして、演算処理装置106は、例えばレギュレータ103から制御電圧Vcが入力されたときやスリープ状態で停止中に通信インタフェース105への入力があったときなどに、図6に示すモータ制御処理を実行する。
このステップS6では、テレスコ位置が記憶装置107のテレスコ位置記憶領域に記憶されているか否かを判定し、テレスコ位置が記憶されているときにはステップS7に移行して、前回のモータ制御処理終了時に設定された電動テレスコ制御範囲RTEの縮み側制御開始位置PTES1から記憶されたテレスコ位置まで電動テレスコピック機構8を伸張させる速度指令値を図7と同様の図示しないテレスコピック用のモータ制御部に出力してからステップS8に移行し、テレスコ位置が記憶されていないときには前回のモータ制御処理終了時に設定された電動テレスコ制御範囲RTEの縮み側制御開始位置PTES1を維持して直接ステップS8に移行する。
ステップS15では、キースイッチ113から出力されるキースイッチ信号KSを読込み、次いでステップS16に移行して、キースイッチ信号KSがオフ状態即ち運転者が降車する可能性がある状態であるか否かを判定し、キースイッチ信号KSがオン状態を継続しているときには運転者が降車の可能性が略ないものと判断して前記ステップS8に戻り、キースイッチ信号KSがオフ状態となるとステップS17に移行する。
このステップS19では、現在のテレスコ位置は記憶装置107のテレスコ位置記憶領域に記憶されているテレスコ位置と一致するか否かを判定し、両者が一致しない場合には、ステップS20に移行して、現在のテレスコ位置を記憶装置107のテレスコ位置記憶領域に更新記憶してからステップS21に移行し、両者が一致する場合には、そのままステップS21に移行する。
また、演算処理装置106は、上記モータ制御処理で速度指令値が出力されると、この速度指令値を図7のブロック線図で示すチルト用のモータ制御部120及びこれと同様の構成を有する図示しないテレスコピック用のモータ制御部に出力する。
チルト用のモータ制御部120は、図7に示すように、演算処理装置106から出力される速度指令値が入力されて目標電圧指令値Vmtを出力するフィードフォワード制御部121と、このフィードフォワード制御部121から出力される目標電圧指令値Vmtとモータ駆動回路90Aから出力される回転位置検出信号FG1及びFG2に基づいて外乱負荷を推定する外乱負荷推定部122とを有し、この外乱負荷推定部で推定した外乱負荷推定値T^Lを、理想的なモータコイル要素128の伝達関数の逆数(Lms+Rm)を乗算した一時遅れのローパスフィルタ123及びトルク定数K^Tの逆数を乗算する乗算器124を通してフィードフォワード制御部121の出力側に設けた加算器125に正帰還するように構成されている。
また、指令電圧変換部129の伝達関数GVT(s)は、電動モータ71の理想インダクタンスをLmとし、理想抵抗をRmとしたときに、前述したモータコイル要素131と同様にGVT(s)=1/(Lms+Rm)に設定されている。
ところで、図7において、ブラシレスモータ71の入力側の電圧指令値及び出力側の回転速度間の伝達関数を求めると、
GM(s)=K^T/{Rm(Jms+Dm)} …………(1)
で表される。
GV(s)=1/(T3s+1) …………(2)
とする必要がある。
このため、フィードフォワード制御部121で、下記(3)式で表されるモータの伝達関数GM(s)の逆数に時定数T3のローパスフィルタをかける伝達関数GF(s)とすることにより、前記(2)式の目標速度の伝達関数を得ることができる。
さらに、前述したモータ制御処理における電動チルト機構7及び電動テレスコピック機構8に対する速度指令値θVを算出する際に、駆動開始(加速)時及び駆動停止(減速)時を含む目標速度指令を三角関数で与えることにより、円滑な加速及び減速指令を得ることができる。
θVA(t)=[sin(3π/2+πt/tA)+1]V0/2 …………(4)
また、等速領域では、一定速度V0を目標速度関数θVI(t)(=V0)として設定し、さらに、減速領域の目標速度関数θVD(t)としては、減速開始から減速終了までを規定する減速時間をtDとしたときに下記(5)式で与える。
このように、加減速時の目標速度関数θVA(t)及びθVD(t)を正弦波関数として設定することにより、図8に示すように、加速時に正弦波の−90度から90度の範囲を使用し、減速時に正弦波の90度から270度の範囲を使用することにより、滑らかな加速及び減速を行うことができる。このときの加速時間tA及び減速時間tDを規定することで、加速時間と減速時間を調整することができる。これら加速時間tA及び減速時間tDはマニュアル制御時と自動制御時とで個別に変更するようにしてもよい。そして、加速開始時は、マニュアルチルトスイッチ部115又はマニュアルテレスコスイッチ部116をオンとすること又は自動チルト制御又は自動テレスコ制御のトリガ信号により規定され、減速開始時は、マニュアルチルトスイッチ部115又はマニュアルテレスコスイッチ部116をオフとすること又は自動チルト制御又は自動テレスコ制御の終了信号により規定される。
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、イグニッションスイッチ111及びキースイッチ113がオフ状態であって、車両が停車していて運転者が降車しているものとし、この状態では、前回の降車時の自動チルト制御及び自動テレスコ制御によって、電動チルト機構7ではステアリングシャフト3が上方に傾斜されてステアリングホイール2が運転者から上方に離間した上側制御開始位置PTIS1となり、且つ電動テレスコピック機構8では車両前方側に収縮して、ステアリングホイール2が運転者の膝より前方位置に離間した縮み側制御開始位置PTES1となっており、運転席シートの上前方に広い空間が形成されているものとする。
この状態で、運転者が運転席に着座してからイグニッションスイッチ111をオン操作することにより、イグニッション信号IGがオン状態となると、先ず、チルト位置が記憶装置107に記憶されているか否かを判定し、チルト位置が記憶装置107に記憶されているときには設定されたチルト位置まで、電動チルト機構7でステアリングシャフト3を下降させて、ステアリングホイール2を運転者の操作位置となるように速度指令値をモータ制御部120に出力する。
この電動チルト機構7のブラシレスモータ71の駆動状態では、モータ制御部120における外乱推定部122で、外乱オブザーバによって、モータ駆動回路90Aから入力される回転位置検出信号FG1及びFG2に基づいてモータの回転方向を判別して、その回転方向に応じた正負の符号付けを行ったモータ回転速度を算出し、これに負荷トルク算出部127で電動機部134の逆伝達関数でローパスフィルタを組込んだモータ設計値を乗算することにより、電動チルト機構7の固有負荷及び外乱負荷を含む負荷トルクを算出する。
そして、この外乱負荷推定値T^Lをローパスフィルタ123で1次遅れのフィルタ処理をしてから乗算器124でトルク定数K^Tの逆数を乗算することにより電圧指令値に変換して、フィードフォワード制御部121の出力側の加算器125に正帰還させることにより、ブラシレスモータ71に生じた電動チルト機構7の固有負荷や外乱負荷を含む負荷TLの影響を除去することができ、滑らかなチルト動作を確保することができる。
しかしながら、キースイッチ113がオフ状態となると、図6の処理においてステップS16からステップS17に移行し、現在のチルト位置が記憶装置107のチルト位置記憶領域に記憶されているチルト位置と一致するか否かを判定し、チルト位置が記憶されていないので、現在のチルト位置がチルト位置記憶領域に記憶される(ステップS18)。
次いで、電動チルト機構7を上方の上側制御開始位置PTIS1に移動させる目標速度指令値が出力されて、これに基づいてブラシレスモータ71が上記とは逆方向に自動チルト制御されて、ステアリングホイール2が上方の上側制御開始位置PTIS1に退避され、次いで電動テレスコピック機構8を収縮させる目標速度指令値が出力されてブラシレスモータ81が自動テレスコ制御されて、ミドルコラム5が収縮されてステアリングホイール2が車両前方側の縮み側制御開始位置PTES1に退避され、運転者の前部に移動空間が形成されて、運転者が乗降を容易に行うことができる。
また、上記実施形態においては、図6のモータ制御処理で、車両が停車状態であるときにのみ電動チルト機構7及び電動テレスコピック機構8の位置制御を行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、任意の時点で電動チルト機構7及び電動テレスコピック機構8の位置制御を行うようにしてもよく、さらには運転席に乗員が着座しているか否かを検出する着座センサを設け、この着座センサで運転者の着座を検出したときに、電動チルト機構7及び電動テレスコピック機構8を退避位置からチルト位置及びテレスコ位置に自動チルト制御及び自動テレスコ制御するようにしてもよく、着座センサで着座を検出している状態でドアスイッチ114からドア開状態を表すスイッチ信号DSが入力されたときに、運転者が降車するものと判断して電動チルト機構7及び電動テレスコピック機構8を夫々退避位置に自動チルト制御及び自動テレスコ制御するようにしてもよい。
なおさらに、上記実施形態においては、姿勢調整機構として電動チルト機構7及び電動テレスコピック機構8の双方を設けた場合について説明したが、何れか一方を省略してもよい。
なおさらに、上記実施形態においては、加減速時の目標速度指令値θVA(t)及びθVD(t)を正弦波関数で算出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、加減速時の目標速度指令値θVA(t)及びθVD(t)を正弦波関数で算出することを省略し、加減速時に目標速度指令値θVA(t)及びθVD(t)をステップ状に変化させるようにしても、フィードフォワード制御部121に1/(T3s+1)のローパスフィルタを備えているので、このローパスフィルタで目標速度指令値θVA(t)及びθVD(t)が積分されることにより、滑らかに加減速制御を行うことができる。
Claims (3)
- 運転席側にステアリングホイールが装着されるステアリング機構と、該ステアリング機構の傾動位置及び伸縮位置の少なくとも一方を位置調整する電動モータを有する姿勢調整機構と、前記姿勢調整機構の位置調整のための速度指令を出力する速度指令部と、該速度指令部から出力される速度指令が入力に基づいて目標速度を得る伝達関数が設定されたフィードフォワード制御部を有して前記電動モータを制御するモータ制御部と、前記モータ制御部で前記電動モータを制御したときに、当該電動モータの速度情報に基づく負荷トルクと前記速度指令に基づく指令トルクとの偏差から外乱負荷を推定する外乱負荷推定手段とを備え、前記外乱負荷推定手段で推定した外乱負荷推定値相当の指令値を前記フィードフォワード制御部の出力側に正帰還させると共に、当該フィードフォワード制御部の伝達関数を前記電動モータの入力側の電圧指令値から出力側のモータ速度までの伝達関数の逆数に,1次遅れのローパスフィルタ成分を乗算した伝達関数に設定したことを特徴とする電動式ステアリング装置。
- 前記外乱負荷推定手段は、前記フィードフォワード制御部から出力される指令値にトルク定数を乗算して指令トルクを算出する指令トルク算出部と、前記電動モータの速度にモータ逆伝達関数を乗算して負荷トルクを算出する負荷トルク算出部と、前記指令トルク算出部から出力された指令トルクと負荷トルク算出部で算出した負荷トルクとの偏差を算出して外乱負荷を推定する外乱負荷推定部とを有する外乱オブザーバで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動式ステアリング装置。
- 前記速度指令部は、加減速度指令出力時に速度指令を、所定の定速度指令値に加減速時間を加味した三角関数を乗算して算出するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動式ステアリング装置。
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