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JP5149750B2 - 交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法 - Google Patents

交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法 Download PDF

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JP5149750B2 JP2008240132A JP2008240132A JP5149750B2 JP 5149750 B2 JP5149750 B2 JP 5149750B2 JP 2008240132 A JP2008240132 A JP 2008240132A JP 2008240132 A JP2008240132 A JP 2008240132A JP 5149750 B2 JP5149750 B2 JP 5149750B2
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Description

本発明は、交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接において、ビード形状の希釈率を所望値に設定することができる溶接方法に関するものである。
インコネルの肉盛り溶接においては、ビード断面に占める溶け込み部の面積非である希釈率をワークに応じて適正化することが重要である。図11は、インコネルの肉盛り溶接におけるビード断面図である。母材2に対して溶け込み部11と余盛り部12が形成されている。溶け込み部の面積をSaとし、余盛り部の面積をSbとすると、希釈率Rk(%)は以下のように定義される。
Rk=(Sa/(Sa+Sb))×100
肉盛り溶接では、溶け込み深さは浅くて良いが、強度を保証するために適正値である必要があり、このためには上記の希釈率が適正値であることが必要になる。この希釈率を調整するために、インコネルの肉盛り溶接に交流パルスアーク溶接が使用される場合がある。交流パルスアーク溶接では、電極マイナス極性期間と電極プラス極性期間とを交互に切り換えて溶接を行っており、後述する電極マイナス極性電流比率Renを調整することによって、溶け込み部、余盛り部等のビード形状を調整することができる(例えば、特許文献1〜3を参照)。以下、この交流パルスアーク溶接について説明する。
図12は、交流パルスアーク溶接における一般的な電流・電圧波形図である。同図(A)は溶接電流Iwを示し、同図(B)は溶接電圧Vwを示す。同図において、0A及び0Vから上側が電極プラス極性EP時であり、下側が電極マイナス極性EN時である。溶接ワイヤは予め定めた送給速度で送給されている。以下、同図を参照して説明する。
電極マイナス極性期間Ten中は、同図(A)に示すように、予め定めた電極マイナス極性電流Ienが通電し、同図(B)に示すように、電極マイナス極性電圧Venが印加する。
電極プラス極性期間Tepは、ピーク期間Tpとベース期間Tbとに分かれる。このピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、溶滴移行をさせるために大電流値に予め定めたピーク電流Ipが通電し、同図(B)に示すように、ピーク電圧Vpが印加する。ベース期間Tb中は、同図(A)に示すように、溶滴を形成しないために小電流値に予め定めたベース電流Ibが通電し、同図(B)に示すように、ベース電圧Vbが印加する。
上記の電極マイナス極性期間Ten、上記のピーク期間Tp及び上記のベース期間Tbを1パルス周期Tfとして繰り返して溶接が行われる。上記の電極マイナス極性期間Ten及び上記のピーク期間Tpは予め定めた期間であり、上記のベース期間Tbはアーク長が適正になるようにフィードバック制御によって定まる期間である。このアーク長制御は、同図(B)に示す溶接電圧Vwの絶対値の平均値Vavが予め定めた電圧設定値Vr(図示は省略)と等しくなるようにベース期間Tbの長さが制御されることによって行われる。電極マイナス極性電流比率Ren(%)は以下のように定義される。
Ren=(Ten・|Ien|/(Ten・|Ien|+Tp・Ip+Tb・Ib))×100
すなわち、この電極マイナス極性電流比率Renは、溶接電流の絶対値の平均値にしめる電極マイナス極性電流の比率を表している。
上式において、ピーク電流Ip、ベース電流Ibは所定値であり、ピーク期間Tpも所定値である。ベース期間Tbもアーク長が適正値にある定常状態では略所定値と見なせる。したがって、電極マイナス極性期間Ten及び/又は電極マイナス極性電流Ienを調整することによって電極マイナス極性電流比率Renを調整することができる。この電極マイナス極性電流比率Renを変化させると、溶け込み部及び余盛り部が変化してビード断面形状が変化することになり、結果として上記の希釈率Rkが変化することになる。すなわち、電極マイナス極性期間Ten及び/又は電極マイナス極性電流Ienを調整すると希釈率Rkが変化する。
特開平11−226730号公報 特開2001−259838号公報 特開2002−361416号公報
上述したように、交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接では、電極マイナス極性期間Ten及び/又は電極マイナス極性電流Ienを調整することによって電極マイナス極性電流比率Renを変化させ、ビード形状を変化させて希釈率Rkを変化させることができる。しかし、所望の希釈率Rkのビード形状を得るための電極マイナス極性期間Ten及び/又は電極マイナス極性電流Ienを設定するには、多くの予備試験を行う必要があり、生産準備に多大の工数がかかっていた。これは、電極マイナス極性期間Ten及び/又は電極マイナス極性電流Ienを調整して溶接を行い、ビード断面形状を計測して希釈率Rkを算出するという繰り返しを、所望の希釈率Rkが得られるまで行う必要があったためである。
そこで、本発明では、所望の希釈率のビード形状を簡単な操作によって形成することができる交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、第1の発明は、
インコネル製の溶接ワイヤを予め定めた送給速度で送給すると共に、電極マイナス極性期間中の電極マイナス極性電流と、電極プラス極性期間中のピーク電流及びベース電流とから形成される溶接電流を通電して溶接する交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法において、
希釈率を設定し、前記送給速度の設定値及び前記希釈率設定値を入力として予め定めた関数によって前記溶接電流の波形パラメータの値を算出して電極マイナス極性電流比率を変化させ、設定された希釈率のビード形状を形成する、
ことを特徴とする交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法である。
第2の発明は、前記関数が、前記送給速度の設定値及び前記希釈率設定値を入力として前記波形パラメータとして前記電極マイナス極性期間を算出する関数である、
ことを特徴とする第1の発明記載の交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法である。
第3の発明は、前記関数が、前記送給速度の設定値及び前記希釈率設定値を入力として前記波形パラメータとして前記電極マイナス極性電流値を算出する関数である、
ことを特徴とする第1の発明記載の交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法である。
第4の発明は、前記関数が、前記送給速度の設定値及び前記希釈率設定値を入力として前記波形パラメータとして前記電極マイナス極性期間及び前記電極マイナス極性電流値を算出する関数である、
ことを特徴とする第1の発明記載の交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法である。
本発明によれば、交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接において、所望の希釈率を設定するだけでそれに対応した溶接電流の波形パラメータが自動設定されて電極マイナス極性電流比率が適正化されるので、所望の希釈率のビード形状を容易に形成することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法を実施するための溶接電源のブロック図である。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
インバータ回路INVは、3相200V等の交流商用電源(図示は省略)を入力として、整流及び平滑した直流電圧を、後述する電流誤差増幅信号Eiによるパルス幅変調制御によってインバータ制御を行い、高周波交流を出力する。インバータトランスINTは、高周波交流電圧をアーク溶接に適した電圧値に降圧する。2次整流器D2a〜D2dは、降圧された高周波交流を直流に整流する。電極プラス極性トランジスタPTRは後述する電極プラス極性駆動信号Pdによってオン状態になり、溶接電源の出力は電極プラス極性EPになる。電極マイナス極性トランジスタNTRは後述する電極マイナス極性駆動信号Ndによってオン状態になり、溶接電源の出力は電極マイナス極性ENになる。リアクトルWLは、リップルのある出力を平滑する。溶接ワイヤ1はインコネル製の溶接ワイヤである。この溶接ワイヤ1は、ワイヤ送給モータWMに結合された送給ロール5の回転によって溶接トーチ4内を送給されて、母材2との間にアーク3が発生する。
電圧検出回路VDは、溶接電圧Vwを検出して、電圧検出信号Vdを出力する。電圧平均化回路VAVは、この電圧検出信号Vdの絶対値を平均化(平滑化)して、電圧平均値信号Vavを出力する。電圧設定回路VRは、予め定めた電圧設定信号Vrを出力する。電圧誤差増幅回路EVは、上記の電圧設定信号Vrと電圧平均値信号Vavとの誤差を増幅して、電圧誤差増幅信号Evを出力する。電圧・周波数変換回路VFは、この電圧誤差増幅信号Evに比例した周波数の信号に変換して、この周波数ごとに短時間だけHighレベルになるパルス周期信号Tfを出力する。
希釈率設定回路RKは、予め定めた希釈率設定信号Rkを出力する。電極マイナス極性期間算出回路TNCは、この希釈率設定信号Rkを入力として、予め定めた期間設定関数によって電極マイナス極性期間を算出して、電極マイナス極性期間設定信号Tnrを出力する。この期間設定関数については、図3で後述する。ピーク期間設定回路TPRは、予め定めたピーク期間設定信号Tprを出力する。タイマ回路TMは、上記のパルス周期信号Tfが短時間Highレベルに変化するごとに、上記の電極マイナス極性期間設定信号Tnrによって定まる電極マイナス極性期間中はその値が1となり、続いて上記のピーク期間設定信号Tprによって定まるピーク期間中はその値が2となり、それ以後のベース期間中はその値が3となる、タイマ信号Tmを出力する。
電極マイナス極性電流設定回路INRは、予め定めた電極マイナス極性電流設定信号Inrを出力する。ピーク電流設定回路IPRは、予め定めたピーク電流設定信号Iprを出力する。ベース電流設定回路IBRは、予め定めたベース電流設定信号Ibrを出力する。切換回路SWは、上記のタイマ信号Tm=1のとき上記の電極マイナス極性電流設定信号Inrを電流設定信号Irとして出力し、タイマ信号Tm=2のとき上記のピーク電流設定信号Iprを電流設定信号Irとして出力し、タイマ信号Tm=3のとき上記のベース電流設定信号Ibrを電流設定信号Irとして出力する。電流検出回路IDは、溶接電流Iwの絶対値を検出して、電流検出信号Idを出力する。電流誤差増幅回路EIは、上記の電流設定信号Irと上記の電流検出信号Idとの誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。
2次側駆動回路DVは、上記のタイマ信号Tm=1のとき上記の電極マイナス極性駆動信号Ndを出力し、タイマ信号Tm=2又は3のとき上記の電極プラス極性駆動信号Pdを出力する。これによって、電極マイナス極性期間中は電極マイナス極性になり、ピーク期間中及びベース期間中は電極プラス極性になる。送給速度設定回路FRは、予め定めた送給速度設定信号Frを出力する。送給制御回路FCは、この送給速度設定信号Frを入力として、その値に対応した送給速度で溶接ワイヤ1を送給するための送給制御信号Fcを上記のワイヤ送給モータWMに出力する。
図2は、図1で上述した溶接電源の各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接電流Iwを示し、同図(B)はパルス周期信号Tfを示し、同図(C)はタイマ信号Tmを示し、同図(D)は電流設定信号Irを示し、同図(E)は電極マイナス極性駆動信号Ndを示し、同図(F)は電極プラス極性駆動信号Pdを示す。以下、同図を参照して説明する。
同図(A)に示すように、時刻t1〜t2は電極マイナス極性期間Tenとなり、時刻t2〜t3は電極プラス極性のピーク期間Tpとなり、時刻t3〜t4はベース期間Tbとなる。同図(B)に示すように、パルス周期信号Tfは、時刻t1及び時刻t4において短時間Highレベルになるトリガ信号である。この時刻t1〜t4の周期がパルス周期となる。同図(C)に示すように、タイマ信号Tmは、時刻t1において上記のパルス周期信号TfがHighレベルになった時点から図1の電極マイナス極性期間設定信号Tnrによって定まる期間(時刻t1〜t2の期間)はその値が1となり、時刻t2から図1のピーク期間設定信号Tprによって定まる期間(時刻t2〜t3の期間)はその値が2となり、時刻t3から上記のパルス周期信号TfがHighレベルになる時刻t4までの期間はその値が3となり、時刻t4においてその値は1に戻る。したがって、時刻t1以前のベース期間中はその値は3となる。同図では、タイマ信号Tmの値の変化を階段状に示している。
同図(D)に示すように、電流設定信号Irは、上記のタイマ信号Tmの値によって変化し、時刻t1以前はベース電流設定信号Ibrの値となり、時刻t1〜t2の期間は電極マイナス極性電流設定信号Inrの値となり、時刻t2〜t3の期間はピーク電流設定信号Iprの値となり、時刻t3〜t4の期間はベース電流設定信号Ibrの値となり、時刻t4以後の期間は電極マイナス極性電流設定信号Inrの値となる。電流設定信号Irの値は全て正の値である。同図(E)に示すように、電極マイナス極性駆動信号Ndは、時刻t1〜t2の期間及び時刻t4以後の期間中出力されて、図1の電極マイナス極性トランジスタNTRをオン状態にする。同図(F)に示すように、電極プラス極性駆動信号Pdは、時刻t1以前の期間及び時刻t2〜t4の期間中出力されて、図1の電極プラス極性トランジスタPTRをオン状態にする。
図3は、上述した電極マイナス極性期間算出回路TNCに内蔵されている期間設定関数の一例を示す図である。同図の横軸は希釈率設定信号Rk(%)を示し、縦軸は電極マイナス極性期間設定信号Tnr(ms)を示す。また、特性上の()内の数字は電極マイナス極性電流比率Renを示す。同図の溶接条件は以下のとおりである。溶接ワイヤ:インコネル1.2mmφ、シールドガス:100%アルゴンガス、送給速度:10m/min、溶接速度:10cm/min、ウィービング幅:10mm、ウィービング周波数:1Hz、ピーク期間Tp:1.5ms、ピーク電流Ip:400A、ベース電流Ib:65A、電極マイナス極性電流Ien:100A。
同図に示すように、希釈率設定信号Rk=8.0〜0.3%の変化に大して、電極マイナス極性電流比率Ren=0〜40%の範囲で変化し、その時の電極マイナス極性期間設定信号Tnr=0〜6msの範囲で変化する。したがって、所望値の希釈率設定信号Rkが入力されると、同図に示す期間設定関数によって対応する電極マイナス極性期間設定信号Tnrが出力される。
上述した実施の形態1によれば、交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接において、所望の希釈率を設定するだけでそれに対応した電極マイナス極性期間が自動設定されて電極マイナス極性電流比率が適正化されるので、所望の希釈率のビード形状を容易に形成することができる。
[実施の形態2]
図4は、本発明の実施の形態2に係る交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法を実施するための溶接電源のブロック図である。同図において上述した図1と同一のブロックには同一符号を付してそれらの説明は省略する。同図は、図1の電極マイナス極性期間算出回路TNCを破線で示す送給速度対応電極マイナス極性期間算出回路FTNに置換したものである。以下、このブロックについて説明する。
送給速度対応電極マイナス極性期間算出回路FTNは、希釈率設定信号Rkに加えて送給速度設定信号Frを入力として、図5で後述する送給速度対応期間設定関数によって電極マイナス極性期間設定信号Tnrを出力する。同図における各信号のタイミングチャートは、上述した図2と同一であるので省略する。
図5は、上述した送給速度対応電極マイナス極性期間算出回路FTNに内蔵されている送給速度対応期間設定関数の一例を示す図である。同図は、上述した図3と対応しており、横軸は希釈率設定信号Rk(%)を示し、縦軸は電極マイナス極性期間設定信号Tnr(ms)を示す。同図において、L1は送給速度設定信号Fr=10m/minのときであり、L2はFr=12m/minのときであり、L3はFr=8m/minのときである。したがって、L1は上述した図3と同一である。その他の溶接条件は図3と同一である。
同図から、送給速度設定信号Fr及び希釈率設定信号Rkを入力として、これらの値に対応する電極マイナス極性期間設定信号Tnrが算出される。送給速度設定信号Frの値が、特性L1とL2との中間値にあるときは、L1及びL2の値から算出する。この特性群は、最低送給速度から最高送給速度までの全範囲において所定間隔ごとに予め算出されている。
上述した実施の形態2によれば、期間設定関数が希釈率設定信号及び送給速度設定信号を入力として電極マイナス極性期間設定信号を算出するので、送給速度が変化しても、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
[実施の形態3]
従来技術の項で上述したように、電極マイナス極性電流比率Ren(%)は以下のように定義される。
Ren=(Ten・|Ien|/(Ten・|Ien|+Tp・Ip+Tb・Ib))×100
上式において、ピーク電流Ip、ピーク期間Tp及びベース電流Ibは所定値である。ベース期間Tbもアーク長が適正値にある定常状態では略所定値と見なせる。したがって、実施の形態1〜2のときとは異なり電極マイナス極性期間Tenを所定値に固定すると、電極マイナス極性電流Ienを調整することによって電極マイナス極性電流比率Renを調整することができる。本実施の形態3では、この電極マイナス極性電流比率Renの設定を、電極マイナス極性電流Ienによって行う場合である。
図6は、本発明の実施の形態3に係る交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法を実施するための溶接電源のブロック図である。同図において上述した図1と同一のブロックには同一符号を付してそれらの説明は省略する。同図は、図1の電極マイナス極性期間算出回路TNCを破線で示す電極マイナス極性期間設定回路TNRに置換し、図1の電極マイナス極性電流設定回路INRを破線で示す送給速度対応電極マイナス極性電流算出回路FINに置換したものである。以下、これらブロックについて説明する。
電極マイナス極性期間設定回路TNRは、予め定めた電極マイナス極性期間設定信号Tnrを出力する。したがって、この電極マイナス極性期間設定信号Tnrの値は、所定値となる。送給速度対応電極マイナス極性電流算出回路FINは、希釈率設定信号Rkに加えて送給速度設定信号Frを入力として、図7で後述する送給速度対応電流設定関数によって電極マイナス極性電流設定信号Inrを出力する。同図における各信号のタイミングチャートは、上述した図2と同一であるので省略する。
図7は、上述した送給速度対応電極マイナス極性電流算出回路FINに内蔵されている送給速度対応電流設定関数の一例を示す図である。同図は、上述した図5と対応しており、横軸は希釈率設定信号Rk(%)を示し、縦軸は電極マイナス極性電流設定信号Inr(A)を示す。同図において、L4は送給速度設定信号Fr=10m/minのときであり、L5はFr=12m/minのときであり、L6はFr=8m/minのときである。その他の溶接条件は図3と同一である。但し、実施の形態3では、電極マイナス極性期間Tenが所定値(3ms)となり、電極マイナス極性電流Ienが変化することになる。
同図から、送給速度設定信号Fr及び希釈率設定信号Rkを入力として、これらの値に対応する電極マイナス極性電流設定信号Inrが算出される。送給速度設定信号Frの値が、特性L4とL5との中間値にあるときは、L4及びL5の値から算出する。この特性群は、最低送給速度から最高送給速度までの全範囲において所定間隔ごとに予め算出されている。
上記においては、希釈率設定信号Rk及び送給速度設定信号Frの値を入力として予め定めた関数によって電極マイナス極性電流設定信号Inrの値を算出する場合を説明した。ここで、、ワークが定まればそれに適した送給速度が決まるので、このように送給速度を固定して使用する場合には、希釈率設定信号Rkのにを入力として予め定めた関数によって電極マイナス極性電流設定信号Inrを算出するようにしても良い。すなわち、例えば送給速度設定信号Frの値が10m/minで固定の場合には、同図に示すL4の関数のみを記憶しておくようにすれば良い。
上述した実施の形態3によれば、電極マイナス極性電流を変化させて電極マイナス極性電流比率を調整する場合でも、実施の形態1及び2と同様の効果を奏することができる。すなわち、実施の形態3によれば、交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接において、所望の希釈率を設定するだけでそれに対応した電極マイナス極性電流が自動設定されて電極マイナス極性電流比率が適正化されるので、所望の希釈率のビード形状を容易に形成することができる。さらに、実施の形態3によれば、電流設定関数が希釈率設定値及び送給速度設定値を入力として電極マイナス極性電流設定値を算出するので、送給速度が変化しても、上記の効果を奏することができる。
[実施の形態4]
従来技術の項で上述したように、電極マイナス極性電流比率Ren(%)は以下のように定義される。
Ren=(Ten・|Ien|/(Ten・|Ien|+Tp・Ip+Tb・Ib))×100
上式において、ピーク電流Ip、ピーク期間Tp及びベース電流Ibは所定値である。ベース期間Tbもアーク長が適正値にある定常状態では略所定値と見なせる。したがって、実施の形態1〜3のときとは異なり電極マイナス極性期間Ten及び電極マイナス極性電流Ienの両方を調整することによって電極マイナス極性電流比率Renを調整することができる。本実施の形態3では、この電極マイナス極性電流比率Renの設定を、電極マイナス極性期間Ten及び電極マイナス極性電流Ienの両方によって行う場合である。
図8は、本発明の実施の形態4に係る交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法を実施するための溶接電源のブロック図である。同図において上述した図1及び図6と同一のブロックには同一符号を付してそれらの説明は省略する。同図は、図6を基本として、図6の電極マイナス極性期間設定回路TNRを破線で示す第2送給速度対応電極マイナス極性期間算出回路FTN2に置換し、図6の送給速度対応電極マイナス極性電流算出回路FINを第2送給速度対応電極マイナス極性電流算出回路FIN2に置換したものである。以下、これらブロックについて説明する。
第2送給速度対応電極マイナス極性期間算出回路FTN2は、希釈率設定信号Rk及び送給速度設定信号Frを入力として、図9で後述する第2送給速度対応期間設定関数によって電極マイナス極性期間設定信号Tnrを出力する。第2送給速度対応電極マイナス極性電流算出回路FIN2は、希釈率設定信号Rk及び送給速度設定信号Frを入力として、図10で後述する第2送給速度対応電流設定関数によって電極マイナス極性電流設定信号Inrを出力する。同図における各信号のタイミングチャートは、上述した図2と同一であるので省略する。
図9は、上述した第2送給速度対応電極マイナス極性期間算出回路FTN2に内蔵されている第2送給速度対応期間設定関数の一例を示す図である。同図は、上述した図5と対応しており、横軸は希釈率設定信号Rk(%)を示し、縦軸は電極マイナス極性期間設定信号Tnr(ms)を示す。同図において、L7は送給速度設定信号Fr=10m/minのときであり、L8はFr=12m/minのときであり、L9はFr=8m/minのときである。その他の溶接条件は図3と同一である。但し、実施の形態4では、電極マイナス極性期間Ten及び電極マイナス極性電流Ienも変化する。
同図から、送給速度設定信号Fr及び希釈率設定信号Rkを入力として、これらの値に対応する電極マイナス極性期間設定信号Tnrが算出される。送給速度設定信号Frの値が、特性L7とL8との中間値にあるときは、L7及びL8の値から算出する。この特性群は、最低送給速度から最高送給速度までの全範囲において所定間隔ごとに予め算出されている。上述した図5に示す関数と同図の関数では、希釈率設定信号Rk及び送給速度設定信号Frの両値が同一値であっても、算出される電極マイナス極性期間設定信号Tnrの値は異なる。これは、電極マイナス極性電流比率を、電極マイナス極性期間Ten及び電極マイナス極性電流Ienの両方を変化させて調整しているためである。
図10は、上述した第2送給速度対応電極マイナス極性電流算出回路FIN2に内蔵されている第2送給速度対応電流設定関数の一例を示す図である。同図は、上述した図7と対応しており、横軸は希釈率設定信号Rk(%)を示し、縦軸は電極マイナス極性電流設定信号Inr(A)を示す。同図において、L10は送給速度設定信号Fr=10m/minのときであり、L11はFr=12m/minのときであり、L12はFr=8m/minのときである。その他の溶接条件は図3と同一である。但し、実施の形態4では、電極マイナス極性期間Ten及び電極マイナス極性電流Ienも変化する。
同図から、送給速度設定信号Fr及び希釈率設定信号Rkを入力として、これらの値に対応する電極マイナス極性電流設定信号Inrが算出される。送給速度設定信号Frの値が、特性L10とL11との中間値にあるときは、L10及びL11の値から算出する。この特性群は、最低送給速度から最高送給速度までの全範囲において所定間隔ごとに予め算出されている。上述した図7に示す関数と同図の関数では、希釈率設定信号Rk及び送給速度設定信号Frの両値が同一値であっても、算出される電極マイナス極性電流設定信号Inrの値は異なる。これは、電極マイナス極性電流比率を、電極マイナス極性期間Ten及び電極マイナス極性電流Ienの両方を変化させて調整しているためである。
上述した図9及び図10においては、希釈率設定信号Rk及び送給速度設定信号Frの値を入力として予め定めた関数によって電極マイナス極性期間設定信号Tnr及び電極マイナス極性電流設定信号Inrの値を算出する場合を説明した。ここで、、ワークが定まればそれに適した送給速度が決まるので、このように送給速度を固定して使用する場合には、希釈率設定信号Rkのにを入力として予め定めた関数によって電極マイナス極性期間設定信号Tnr及び電極マイナス極性電流設定信号Inrを算出するようにしても良い。すなわち、例えば送給速度設定信号Frの値が10m/minで固定の場合には、図9の関数はL7のみを記憶し、図10の関数はL10のみを記憶すれば良い。
上述した実施の形態4によれば、電極マイナス極性期間及び電極マイナス極性電流を変化させて電極マイナス極性電流比率を調整する場合でも、実施の形態1及び2と同様の効果を奏することができる。すなわち、実施の形態4によれば、交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接において、所望の希釈率を設定するだけでそれに対応した電極マイナス極性期間及び電極マイナス極性電流が自動設定されて電極マイナス極性電流比率が適正化されるので、所望の希釈率のビード形状を容易に形成することができる。さらに、実施の形態4によれば、期間設定関数が希釈率設定値及び送給速度設定値を入力として電極マイナス極性期間設定値を算出し、かつ、電流設定関数が希釈率設定値及び送給速度設定値を入力として電極マイナス極性電流設定値を算出するので、送給速度が変化しても、上記の効果を奏することができる。
上述した実施の形態1〜4において、期間設定関数及び電流設定関数の入力信号として、さらに、溶接ワイヤの直径、溶接速度、ウィービング幅、ウィービング周波数等を加えても良い。
本発明の実施の形態1に係る交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法を実施するための溶接電源のブロック図である。 図1の溶接電源の各信号のタイミングチャートである。 図1の期間設定関数を例示する図である。 本発明の実施の形態2に係る交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法を実施するための溶接電源のブロック図である。 図4の送給速度対応期間設定関数を例示する図である。 本発明の実施の形態3に係る交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法を実施するための溶接電源のブロック図である。 図6の送給速度対応電流設定関数を例示する図である。 本発明の実施の形態4に係る交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法を実施するための溶接電源のブロック図である。 図8の送給速度対応第2期間設定関数を例示する図である。 図8の送給速度対応第2電流設定関数を例示する図である。 インコネルの肉盛り溶接におけるビード形状を示す図である。 従来技術における交流パルスアーク溶接の電流・電圧波形図である。
符号の説明
1 溶接ワイヤ
2 母材
3 アーク
4 溶接トーチ
5 送給ロール
D2a〜D2d 2次整流器
DV 2次側駆動回路
EI 電流誤差増幅回路
Ei 電流誤差増幅信号
EN 電極マイナス極性
EP 電極プラス極性
EV 電圧誤差増幅回路
Ev 電圧誤差増幅信号
FC 送給制御回路
Fc 送給制御信号
FIN 送給速度対応電極マイナス極性電流算出回路
FIN2 第2送給速度対応電極マイナス極性電流算出回路
FR 送給速度設定回路
Fr 送給速度設定信号
FTN 送給速度対応電極マイナス極性期間算出回路
FTN2 第2送給速度対応電極マイナス極性期間算出回路
Ib ベース電流
IBR ベース電流設定回路
Ibr ベース電流設定信号
ID 電流検出回路
Id 電流検出信号
Ien 電極マイナス極性電流
INR 電極マイナス極性電流設定回路
Inr 電極マイナス極性電流設定信号
INT インバータトランス
INV インバータ回路
Ir 電流設定信号
Ip ピーク電流
IPR ピーク電流設定回路
Ipr ピーク電流設定信号
Iw 溶接電流
L1〜L12 特性
Nd 電極マイナス極性駆動信号
NTR 電極マイナス極性トランジスタ
Pd 電極プラス極性駆動信号
PTR 電極プラス極性トランジスタ
Ren 電極マイナス極性電流比率
RK 希釈率設定回路
Rk 希釈率設定信号
SW 切換回路
Tb ベース期間
Ten 電極マイナス極性期間
Tep 電極プラス極性期間
Tf パルス周期(信号)
TM タイマ回路
Tm タイマ信号
TNC 電極マイナス極性期間算出回路
TNR 電極マイナス極性期間設定回路
Tnr 電極マイナス極性期間設定信号
Tp ピーク期間
TPR ピーク期間設定回路
Tpr ピーク期間設定信号
VAV 電圧平均化回路
Vav 電圧平均値信号
Vb ベース電圧
VD 電圧検出回路
Vd 電圧検出信号
Ven 電極マイナス極性電圧
VF 電圧・周波数変換回路
Vp ピーク電圧
VR 電圧設定回路
Vr 電圧設定(値/信号)
Vw 溶接電圧
WL リアクトル
WM ワイヤ送給モータ

Claims (4)

  1. インコネル製の溶接ワイヤを予め定めた送給速度で送給すると共に、電極マイナス極性期間中の電極マイナス極性電流と、電極プラス極性期間中のピーク電流及びベース電流とから形成される溶接電流を通電して溶接する交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法において、
    希釈率を設定し、前記送給速度の設定値及び前記希釈率設定値を入力として予め定めた関数によって前記溶接電流の波形パラメータの値を算出して電極マイナス極性電流比率を設定変化させ、設定された希釈率のビード形状を形成する、
    ことを特徴とする交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法。
  2. 前記関数が、前記送給速度の設定値及び前記希釈率設定値を入力として前記波形パラメータとして前記電極マイナス極性期間を算出する関数である、
    ことを特徴とする請求項1記載の交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法。
  3. 前記関数が、前記送給速度の設定値及び前記希釈率設定値を入力として前記波形パラメータとして前記電極マイナス極性電流値を算出する関数である、
    ことを特徴とする請求項1記載の交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法。
  4. 前記関数が、前記送給速度の設定値及び前記希釈率設定値を入力として前記波形パラメータとして前記電極マイナス極性期間及び前記電極マイナス極性電流値を算出する関数である、
    ことを特徴とする請求項1記載の交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法。
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