JP5147190B2 - アルカリ蓄電池、それに用いる正極の製造方法 - Google Patents
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Description
これら用途のうち、とくにハイブリッド自動車や電気自動車のような車両関係の用途においては、現に各種のアルカリ蓄電池が使用されているが、それらは高出力であることが要求される。また、車両関係の用途においては、高出力であることと並んで耐久性に優れることが要求されているが、この耐久性に関しては、焼結式正極が組み込まれている蓄電池の方が、非焼結式正極を組み込んだ蓄電池よりも有利である。
ついで、このスラリーを導電性芯体の表面に塗着する。導電性芯体としては、通常、鋼板に所定厚みのニッケルめっきが施されたニッケルめっき鋼板が使用される。また、スラリーの各成分の混合割合やスラリーの塗着量は、最終的に正極に充填されるべき活物質の量との関係で適宜決められる。
この焼結処理時にスラリー中の増粘剤や水は揮散し、ニッケル粉末が相互に焼結することによって、スラリーは所定厚みの多孔質ニッケル焼結体に転化し、この多孔質ニッケル焼結体でニッケルめっき鋼板の表面が被覆されている多孔質ニッケル焼結基板が製造される。このときの焼結温度は当然ながらニッケルの融点より低い温度であり、通常800〜1100℃の温度が採用されている。
まず、正極と例えば水素吸蔵合金電極から成る負極とを、例えばポリプロピレン製の不織布から成るセパレータを介して重ね合わせて全体を渦巻き状に巻回して電極群を製造する。
ついで、この電極群の正極と負極のそれぞれに正極集電体と負極集電体を取り付けたのち、この電極群を負極端子も兼ねる有底の外装缶の中に収納し、更に例えば水酸化カリウム水溶液のようなアルカリ電解液を所定量注液する。そして外装缶の開口部に封口体を配置したのち、例えば加締加工を行なって開口部を密閉することによりアルカリ蓄電池が組立られる。
しかしながら、その後の研究において、正極の厚みが薄くなると、低温充電時に電圧が上昇せず、そのため充電カットを制御することが困難であるという問題の生ずることが判明した。このような現象は、過充電を招く原因にもなり、安全性を重視する車両関係の用途にとっては解決しなければならない問題である。
そして、本発明者らは、この正極活物質中のFeは、正極の製造時における焼結処理の過程で導電性芯体であるニッケルめっき鋼板から表面のニッケルめっき層を通過してニッケル焼結体に熱拡散し、そこに存在する正極活物質中に析出しているとの推論を立てた。
すなわち、本発明は、低温充電時でも充電カットを容易に制御することができ、過充電の恐れがなく、安全性の高いアルカリ蓄電池と、それに組み込む焼結式正極の製造方法の提供を目的とする。
極と、負極と、セパレータと、アルカリ電解液とを外装缶の中に具備するアルカリ蓄電池において、前記正極に充填されている前記活物質の量が850g/m2以下であり、かつ、前記ニッケルめっき鋼板におけるめっき厚が4.0μm以上であり、前記ニッケルめっき鋼板におけるリンの量が110ppm以下であり、かつマンガンの量が800ppm以下であることを特徴とするアルカリ蓄電池が提供される。
更に、ニッケルめっき鋼板のP量とMn量をそれぞれ110ppm以下、800ppm以下と規制することにより、正極へのFeの混入を抑制し、もって低温充電特性の向上が可能となる。
用いる正極において、まず、表面の多孔質ニッケル焼結体に充填される活物質の量が正極の単位面積(m2)当たり850g以下に規定されている。
また、正極の導電性芯体としてはニッケルめっき鋼板が使用されるが、その場合のニッケルめっきの厚みは4.0μm以上に設定される。
ニッケルのめっき厚が4.0μmよりも薄い場合は、正極の製造時における焼結処理の過程で、コアである鋼板からのFeの熱拡散を有効に阻止するバリアとしての機能が低下し、その結果、活物質中へのFeの析出が増量して組み立てた蓄電池の低温充電特性が劣化する。
また、芯体であるニッケルめっき鋼板としては、鋼板におけるP量とMn量がそれぞれ110ppm以下、800ppm以下であるものを用いる必要がある。
この現象は、鋼板のP量とMn量が多い場合には、正極の製造時における焼結過程でニッケルめっき層に粒界割れが発生してその粒界割れから鋼板が部分的に露出し、活物質の充填過程で用いるニッケル塩溶液やアルカリ水溶液にFeが溶解し、更に、活物質中に析出するからであると考えられる。
まず、上記したニッケルめっき鋼板の表面に、常法に従ってニッケル粉末と増粘剤と水を混錬して成るスラリーを塗着する。
このときのそれぞれの成分の混練割合やスラリーの塗着量は、活物質の目標充填量との関係で適宜調整されることは従来の場合と同様である。
すなわち、スラリーが塗着されているニッケルめっき鋼板を、例えばN2雰囲気炉に挿入して加熱する。そのとき、鋼板の表面温度が1051℃以下となるように、ニッケルめっき鋼板の加熱温度が調整される。
焼結時間は、格別限定されるものではないが、通常5〜8分間程度であればよい。
そしてその正極とセパレータから電極群を製造し、それをアルカリ電解液とともに外装缶の中に密封することにより、本発明のアルカリ蓄電池が得られる。
公称容量6.0Ahのニッケル水素蓄電池に組込むべき正極を次のようにして製造した。
まず、幅は同じであるが、厚みと長さが異なる値に制御されている複数の鋼板(SPCC−1B)を用意した。そして、各鋼板の両面にニッケルめっきを施こし、表1で示した厚み(片面の厚みを表示)のニッケルめっき層が形成されているニッケルめっき鋼板を製造した。
このスラリーをニッケルめっき鋼板に塗着したのち、N2雰囲気炉中で焼結処理を行なった。このとき、鋼板の表面温度が表1で示した温度になるように炉運転を行なった。処理時間は6分間とした。
ついで、硝酸ニッケルと硝酸コバルトが溶解している水溶液(比重1.75、ニッケルとコバルトの濃度は原子比で10:1)を調製し、ここに、各焼結基板を浸漬してその細孔内に硝酸ニッケルと硝酸コバルトを保持させた。
各焼結基板につき、容量6.0Ahに相当する活物質量が充填されるまで上記した一連の操作を反復し、充填されている活物質の絶対量は全て同じである各種の正極を製造した。
すなわち、後述するようにして蓄電池を組立てたのち、当該電池を解体して正極のみを取出し、ついで当該正極を所定寸法(50mm×50mm)に切断し、その切断片を、マスプラット液(酢酸アンモニウム1mol/L、アンモニア水5mol/Lの混合水溶液)に浸漬して活物質を溶出させ、浸漬前後における質量差を測定し、その値を切断片の表面積で除算した。その結果を表1に示した。
組成がNd0.9Mg0.1(Ni0.9Co0.03Al0.07)3.5となるように各金属原料を秤量して全体を混合し、その混合物を高周波溶解炉で溶解したのち冷却して水素吸蔵合金のインゴットを製造した。
なお、この合金粉末は、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて重量積分50%にあたる平均粒径(D50値)を測定したところ25μmであった。
そしてこのスラリーをパンチングニッケルシートに塗着し、室温で乾燥したのち圧延、裁断して負極を製造した。
芯材がポリプロピレンから成り、鞘材が低融点ポリエチレンからなる熱接着性の芯鞘型複合繊維と、高強度ポリプロピレン繊維とを用いて漉きあげたウェブを約130℃の乾燥温度(結合温度)で乾燥させる湿式法で、目付量50g/m2の不織布を製造し、これをセパレータとして用いた。
4.ニッケル水素蓄電池の組立て
各正極と負極の間にセパレータを介装した状態で渦巻状に巻回して電極群を製造した。
この電極群の一端から突出するニッケルめっき鋼板の端部には、面内に多数の開口を有する円板状の正極集電体を溶接して取付け、他端から突出するパンチングニッケルシートの端部には、同じく多数の開口を有する円板状の負極集電体を溶接して取付けた。
この電極群を、負極集電体を下にして上部が開口する有底外装缶の中に収納し、外装缶の底面に負極集電体を溶接した。ついで、濃度30質量%の水酸化カリウム水溶液を電解液として外装缶に減圧注液したのち、正極リードの上面に、蓋板、絶縁ガスケット、弁体、圧縮コイルばね、および正極端子を備えている封口体を配置し、蓋板と正極リードの上面を溶接した。
5.測定
(1)高率放電特性の評価
表1の各正極が組込まれているニッケル水素蓄電池につき、下記の仕様で出力を測定し、各蓄電池の高率放電特性を評価した。
このとき、各ステップの間に10分間の休止期間を設け、各放電ステップを実施したのち10分間の休止を置いて10秒間ずつ放電を行ない、この10秒間経過点における電池電圧を放電電流に対してプロットし、最小2乗法に基づいて求めた直線が0.9Vに達するときの電流値を出力とした。
(2)正極活物質中のFe量の測定
各正極から表面層の部分(ニッケル焼結体の部分)を1.5g採取し、これを塩酸で完全に溶解したのち、溶解液を100mLに希釈した。そしてこの希釈液を原子吸光分析にかけ、Fe量を定量した。
(3)低温充電特性の測定
各蓄電池を温度−10℃の環境に3時間放置したのち、1Itの充電電流で電池容量の100%まで充電した。SOC40%充電時における電圧V1と、ピーク電圧V2との電圧差をΔVとして算出した。
製造ロットが異なる鋼板(SPCC−1B)を3種類用意した。各鋼板の表面に、厚み3.98μmのニッケルめっきを施し、ニッケルめっき鋼板にした。
ついで、各ニッケルめっき鋼板を水素雰囲気中で表面温度を1051℃に保持した状態で5分間加熱したのち、冷却をまって表面状態をEPMAで観測し、Fe/Ni比を測定した。結果を表2に示した。
以上のことから次のことが明らかである。
(1)まず、表1の正極1,正極2,正極3を対比して明らかなように、単位面積当たりの活物質の量が少なくなればなるほど、それを組み込んだ蓄電池の高率放電特性は向上している。
そして、高出力特性が要求される、例えば自動車関連用途を考えると、活物質の量が1400g/m2である正極1を用いた蓄電池では高率放電特性が不足している。このようなことから、正極における活物質の量は、正極1を用いた蓄電池に比べて160以上の高率放電特性を発揮させるために、850g/m2以下に設定されるべきである。
(2)表1から明らかなように、正極中のFe量はニッケルめっき鋼板のめっき厚と焼結処理時の表面温度の影響を受けている。すなわち、正極中のFe量は焼結処理時の表面温度が高くなるほど、まためっき厚が薄くなるほど増加している。
(3)表1から明らかなように、ΔV値は正極中のFe量、ニッケルめっき鋼板のめっき厚、焼結処理時の表面温度の影響を受けている。
このようなことから、低温充電特性を高めるためには、正極中のFe量を低減することが必要であり、それはめっき厚を厚くし、また焼結処理時に表面温度が低い状態で焼結することが必要であることがわかる。
そして、また、図2から明らかなように、めっき厚は4.0μm以上で、焼結処理時の表面温度は1051℃以下に制御されるべきであることがわかる。
Claims (2)
- ニッケルめっき鋼板を導電性芯体とする多孔質ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主体とする活物質が充填されている正極と、負極と、セパレータと、アルカリ電解液とを外装缶の中に具備するアルカリ蓄電池において、
前記正極に充填されている前記活物質の量が850g/m2以下であり、かつ、前記ニッケルめっき鋼板におけるめっき厚が4.0μm以上であり、
前記ニッケルめっき鋼板におけるリンの量が110ppm以下であり、かつマンガンの量が800ppm以下であることを特徴とするアルカリ蓄電池。 - ニッケル粉末と増粘剤と水とを混練してスラリーを調製し、前記スラリーをニッケルめっき鋼板に塗着し、ついで還元性雰囲気中で焼結処理を施して多孔質ニッケル焼結基板を製造したのち、前記多孔質ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主体とする活物質を充填する正極の製造方法において、
前記焼結処理時における温度を、前記多孔質ニッケル焼結基板の表面温度が1051℃以下となるように調整しており、
前記正極に充填されている前記活物質の量が850g/m 2 以下であり、かつ、前記ニッケルめっき鋼板におけるめっき厚が4.0μm以上であり、
前記ニッケルめっき鋼板におけるリンの量が110ppm以下であり、かつマンガンの量が800ppm以下であることを特徴とするアルカリ蓄電池用正極の製造方法。
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