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JP5145805B2 - ガス切断面性状および耐低温焼戻し脆化割れ特性に優れた耐磨耗鋼板 - Google Patents

ガス切断面性状および耐低温焼戻し脆化割れ特性に優れた耐磨耗鋼板 Download PDF

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JP5145805B2 JP2007194286A JP2007194286A JP5145805B2 JP 5145805 B2 JP5145805 B2 JP 5145805B2 JP 2007194286 A JP2007194286 A JP 2007194286A JP 2007194286 A JP2007194286 A JP 2007194286A JP 5145805 B2 JP5145805 B2 JP 5145805B2
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Description

本発明は、溶接後の熱影響部や、ガス切断、プラズマ切断など熱溶断後の熱影響部で、低温焼戻し脆化温度域に再加熱された領域において発生する割れの防止に優れる耐摩耗鋼板に関し、特に産業機械や運搬機器等のうち、溶接や溶断などの加工を受けて製造される部材用として好適なものに関する。
鋼材の耐摩耗性は、高硬度化することにより向上し、耐摩耗性が要求される部材には、C量を高くし、焼入れ熱処理や焼入れ−低温焼戻し熱処理を実施した耐磨耗鋼板が使用されている。
しかし、焼入れ熱処理や焼入れ−低温焼戻し熱処理により製造する耐磨耗鋼など高硬度な鋼材は300〜400℃程度の低温焼戻し脆化温度域に再加熱されると、常温に冷却後、遅れ破壊が発生する場合がある。溶接や、ガス切断、プラズマ切断など熱溶断で低温焼戻し脆化温度域に再加熱された部位が存在すると、常温に冷却後、遅れ破壊が発生しやすい。
耐磨耗鋼を使用する際には、溶接やガス切断などの加工が行われることが多く、ガス切断面近傍や、溶接熱影響部などでは、低温焼戻し脆化温度域に再加熱されることを回避することは不可能であり、上述した遅れ割れの発生防止に優れる耐摩耗鋼が要望されている。
特許文献1〜6等で提案されている耐遅れ破壊特性に優れる耐摩耗鋼は、製造ままの鋼板で、耐遅れ破壊特性を改善するもので、低温焼戻し脆化温度域に再加熱された後の遅れ破壊特性を改善しているわけではない。
特開2002−115024号公報 特開2002−80930号公報 特開平05−51691号公報 特開平01−255622号公報 特開昭63−317623号公報 特開2003−171730号公報
そこで、本発明は、溶接や溶断の熱影響により低温焼戻し脆化温度域に加熱された領域における、常温に冷却後の遅れ破壊が抑制された耐低温焼戻し脆化割れ特性に優れる耐磨耗鋼板を提供することを目的とする。
発明者らは、上記目的を達成するために、耐磨耗鋼における耐低温焼戻し脆化割れ特性に影響する各種要因について、鋭意検討し、Cを0.20〜0.30%添加し、Mnを1.2%以下、Pを0.010%以下、旧オーステナイト粒径を30μm以下とすることによって、優れた耐磨耗性を確保しつつ、耐低温焼戻し脆化割れ特性を著しく改善することが可能であることを見出した。
また、MoとWを0.05%未満とすることにより、ガス切断面性状が改善することを見出した。
耐低温焼戻し脆化割れ特性は、Mass%で、0.23%C−0.25%Si−0.2〜1.5%Mn−0.003〜0.030%P−0.02%Nb−0.01%Ti−0.001%Bを含み、Cu、Ni、Crを適宜添加し、Ceq*を0.50%と一定とした鋼片を供試鋼とし、32mmtに圧延後、空冷し、その後900℃に再加熱したのちに焼入れし、得られた鋼板について、図1に示すT形肉溶接割れ試験を実施した。溶接方法は、被覆アーク溶接、入熱17kJ/cmとし、3層6パスの溶接を実施した。
図2にT形隅肉溶接割れ試験結果を、Mn量、P量で整理した結果を示す。Mn量が1.2%を超えるか、または、P量が0.010%を超えると、割れが発生する。これらの鋼板の旧オーステナイト粒径は、全て30μm未満であり、割れの形態は、粒界破面であった。
本発明は、得られた知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
1.質量%で、C:0.20〜0.30%、Si:0.05〜0.40%、Mn:0.45〜1.2%、Cr:0.1〜1.0%、Nb:0.005〜0.024%、Ti:0.005〜0.05%、B:0.0003〜0.0030%、Al:0.1%以下、P:0.010%以下、S:0.005%以下、Mo:0.05%未満、W:0.05%未満を含有し、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜1.0%、V:0.005〜0.10%、の1種または2種以上を含有し、(1)式で示されるCeq*が0.55%以下、(2)式で示されるDI*が50以上で、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、かつ、ミクロ組織が旧オーステナイト粒径が30μm以下のマルテンサイトを基地相とするガス切断面性状および耐低温焼戻し脆化割れ特性に優れた耐磨耗鋼板。
Ceq*=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5+W/10
・・・・・(1)
DI*=33.85×(0.1×C)0.5 ×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(1.5×W+1)・・・・・(2)
2.1記載の組成に、さらに、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0050%の1種または2種を含有し、(1)式で示されるCeq*が0.55%以下、(2)式で示されるDI*が50以上であり、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、かつ、ミクロ組織が旧オーステナイト粒径が30μm以下のマルテンサイトを基地相とするガス切断面性状および耐低温焼戻し脆化割れ特性に優れた耐磨耗鋼板。
Ceq*=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5+W/10
・・・・・(1)
DI*=33.85×(0.1×C)0.5 ×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(1.5×W+1)・・・・・(2)
3.表面硬度がブリネル硬さで400HBW10/3000以上を有する1または2記載のガス切断面性状および耐低温焼戻し脆化割れ特性に優れた耐磨耗鋼板。
本発明によれば、ガス切断面性状に優れ、溶接やガス切断による熱影響で低温焼き戻しされた領域における遅れ破壊の抑制に優れた耐磨耗鋼板を製造することができ、産業上格段の効果を奏する。
まず、本発明の鋼板の組成を規定した理由について説明する。なお、以下の%表示は、いずれも質量%で表す。
C:0.20〜0.30%
Cは、マトリクス硬度を高硬度化させ耐磨耗性を向上させる元素である。耐磨耗性を著しく改善するためには、0.20%以上の添加が必要である。一方、0.30%を超えて添加すると、溶接性が劣化する。したがって、0.20〜0.30%とした。なお、好ましくは、0.20〜0.28%である。
Si:0.05〜1.0%
Siは、脱酸元素として有効な元素であり、このような効果を得るためには0.05%以上の含有を必要とする。また、Siは、鋼に固溶して固溶強化により高硬度化に寄与する有効な元素であるが、1.0%を超える含有は、延性、靭性を低下させ、さらに介在物量が増加する。このため、Siは0.05〜1.0%の範囲に限定する。なお、より好ましくは0.05〜0.40%である。
Mn:0.45〜1.2%
Mnは、Pの粒界偏析を助長し、遅れ破壊を発生しやすくする。ミクロ組織の旧オーステナイト粒径が30μm以下の場合、1.2%以下とすることにより粒界破壊発生を抑制できる。
一方、焼入れ性確保のためには、一定量を添加することが望ましく、また、合金コスト低減の観点からも、Mn添加は望ましく、Mn量は0.45〜1.2%の範囲に限定する。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸材として添加し、その効果は、0.0020%以上の含有で認められるが、0.1%を超える多量の含有は、鋼の清浄度を低下させる。このため、Alは0.1%以下とする。
Nb:0.005〜0.024%
Nbは、炭窒化物あるいは炭化物として析出し、組織を微細化し、遅れ破壊発生を抑制する効果を有する。その効果を得るためには0.005%以上必要である。0.024%を超えて添加すると粗大な炭窒化物が析出し、破壊の起点となることがあるため、0.024%以下とする。
Ti:0.005%〜0.05%
Tiは、Nを固定することにより、BN析出を抑制しBの焼入れ性向上効果を助長する効果を有する。その効果を得るためには、0.005%以上の添加が必要である。一方、0.05%を超えて添加すると、TiCを析出し母材靭性を劣化させるため、0.005〜0.05%とする。
B:0.0003%〜0.0030%
Bは、微量添加により、焼入れ性を著しく改善する。その効果を得るためには、0.0003%以上必要である。一方、0.0030%を超えて添加すると溶接性が劣化するため、0.0003%〜0.0030%とする。
P:0.010%以下
Pは、粒界に偏析し、遅れ破壊発生の起点となるため、0.010%以下とする。
S:0.005%以下
Sは、MnSを形成し、破壊の発生起点となるため、0.005%以下とする。
Mo:0.05%未満、W:0.05%未満
MoやWは、ガス切断時に高融点酸化物を形成し、溶融鉄の流動性を劣化させるため、ガス切断面性状が劣化する。そのため、添加しないことが望ましく、各々、0.05%未満に限定する。Mo,Wともに含有しないことが好ましい。
Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜1.0%、V:0.005〜0.10%のうち、1種または2種以上
Cu:0.1〜1.0%
Cuは、固溶することにより焼入れ性を向上させる元素であり、この効果を得るために0.1%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える含有は、熱間加工性を低下させる。このため、Cuを添加する場合は、0.1〜1.0%範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.5%である。
Ni:0.1〜2.0%
Niは、固溶することにより焼入れ性を向上させる元素であり、このような効果は0.1%以上の含有で顕著となる。一方、2.0%を超える含有は、材料コストを著しく上昇させる。このため、Niを添加する場合は0.1〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜1.0%である。
Cr:0.1〜1.0%
Crは、焼入れ性を向上させる効果を有し、このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とするが、1.0%を超える含有は、溶接性を低下させる。そのため、Crを添加する場合は0.1〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.80%である。
V:0.005〜0.10%
Vは、焼入れ性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上必要とするが、0.10%を超えて含有すると溶接性を低下させる。そのため、Vは、0.005〜0.10%の範囲に限定することが好ましい。
Ca、REM:0.0005〜0.0050%
CaやREMは、Sと結合し、MnS生成を抑制する。この効果を得るためには、0.0005%以上必要であるが、0.0050%を超えると、鋼の清状度を劣化させる。そのため、CaやREMは、0.0005〜0.0050%とする。
Ceq*(=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5+W/10):0.55%以下
Ceq*が0.55%を超えると、溶接性が劣化する。そのため、0.55%以下とした。
DI*(=33.85×(0.1×C)0.5 ×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(1.5×W+1)):45以上
DI*が45未満の場合、板厚表層からの焼入れ深さが10mmを下回り、耐磨耗鋼としての寿命が短くなる。そのため、DI*は45以上とする。
表面硬度がブリネル硬さで400HBW10/3000以上
表面硬度がブリネル硬さで400HBW10/3000未満の場合には、耐摩耗鋼としての寿命が短くなる。そのため、表面硬度をブリネル硬さで400HBW10/3000以上とすることが望ましい。次に、製造方法について説明する。
[製造方法]
本発明に係る耐摩耗鋼板は、上記した組成の溶鋼を、公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法により、所定寸法のスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。
次いで得られた鋼素材を、冷却することなく直後に、または冷却した後に950〜1250℃に再加熱したのち、熱間圧延し、所望の板厚(肉厚)の鋼板とする。熱間圧延直後、あるいは、再加熱して焼入れを行う。必要に応じて300℃以下での焼戻しを実施する。
表1に示す組成の溶鋼を、真空溶解炉で溶製し、小型鋼塊(150kg)(鋼素材)とした。これら鋼素材を、1050〜1250℃に加熱したのち、熱間圧延を施して板厚6〜32mmとし、一部の鋼板については、圧延直後に焼入れ(DQ)し、その他の鋼板については、圧延後空冷し、900℃に再加熱後焼入れ(RQ)を行った。
得られた鋼板について、旧オーステナイト粒径測定、表面硬度測定、T形肉溶接割
れ試験を下記の要領で実施した。
[旧オーステナイト粒径測定]
得られた鋼板の1/4・t(板厚)部における粒径を測定した。光学顕微鏡で400倍
で観察し、100個の旧オーステナイト粒の各々の円相当粒径を測定し、それらの平均値
を旧オーステナイト粒径とした。
[表面硬度測定]
JIS規格Z2243(1998)に準拠し、表層下の表面硬度を測定した。測定は、
10MMのタングステン硬球を使用し、荷重は3000Kgfとした。
[T形隅肉溶接割れ試験]
図1のとおりに実施した。溶接方法は、被覆アーク溶接、入熱17kJ/cmとし、3
層6パスの溶接を実施し、試験溶接部長は200mmである。
[ガス切断面性状調査]
切断面の粗さをWES2801に準拠した等級で評価した。ガス切断条件は、以下のと
おりとした。
切断酸素圧:5kgf/mm、プロパン圧:4kgf/mm,切断速度:350mm/min.得られた結果を表2に示す。
本発明例(鋼板No.1,2,3,4)は、表面硬度が400HBW10/3000以上を有し、かつ、T形隅肉溶接割れ試験で割れが発生せず、また、ガス切断面等級が1等級の優れたガス切断面性状を有している。
一方、比較例(鋼板No.5,6、7,8、9)は、T形隅肉溶接割れ試験において、割れが発生し、またはガス切断面等級が2等級で本発明例と比較してガス切断面性状に劣る。
尚、表2のT形肉溶接割れ試験の表示で「無」は割れの発生が認められなかったもの、「有」は割れの発生が認められたことを示す。
Figure 0005145805
Figure 0005145805
T形隅肉溶接割れ試験を説明する図。 T形隅肉溶接割れ試験結果に及ぼすMn量、P量の影響を示す図。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.20〜0.30%、Si:0.05〜0.40%、Mn:0.45〜1.2%、Cr:0.1〜1.0%、Nb:0.005〜0.024%、Ti:0.005〜0.05%、B:0.0003〜0.0030%、Al:0.1%以下、P:0.010%以下、S:0.005%以下、Mo:0.05%未満、W:0.05%未満を含有し、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、V:0.005〜0.10%、の1種または2種以上を含有し、(1)式で示されるCeq*が0.55%以下、(2)式で示されるDI*が50以上で、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、かつ、ミクロ組織が旧オーステナイト粒径が30μm以下のマルテンサイトを基地相とするガス切断面性状および耐低温焼戻し脆化割れ特性に優れた耐磨耗鋼板。
    Ceq*=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5+W/10
    ・・・・・(1)
    DI*=33.85×(0.1×C)0.5 ×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(1.5×W+1)・・・・・(2)
  2. 請求項1記載の組成に、さらに、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.
    0005〜0.0050%の1種または2種を含有し、(1)式で示されるCeq*が0
    .55%以下、(2)式で示されるDI*が50以上であり、残部Feおよび不可避的不
    純物からなる組成を有し、かつ、ミクロ組織が旧オーステナイト粒径が30μm以下のマ
    ルテンサイトを基地相とするガス切断面性状および耐低温焼戻し脆化割れ特性に優れた耐磨耗鋼板。
    Ceq*=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5+W/10
    ・・・・・(1)
    DI*=33.85×(0.1×C)0.5 ×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(1.5×W+1)・・・・・(2)
  3. 表面硬度がブリネル硬さで400HBW10/3000以上を有する請求項1または2記載のガス切断面性状および耐低温焼戻し脆化割れ特性に優れた耐磨耗鋼板。
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